特許第6496948号(P6496948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496948
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】表面保護方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/06 20060101AFI20190401BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20190401BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20190401BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   C09J5/06
   C09J7/38
   C09J133/06
   G02B1/04
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-152299(P2014-152299)
(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2016-30766(P2016-30766A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】堀米 克彦
(72)【発明者】
【氏名】富永 知親
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−129227(JP,A)
【文献】 特開2007−246848(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/066435(WO,A1)
【文献】 特開2011−124480(JP,A)
【文献】 特開平09−330940(JP,A)
【文献】 特開2005−244118(JP,A)
【文献】 特開平11−017158(JP,A)
【文献】 特開平08−027239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00〜201/10
H01L21/304、27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材又は電子部材のいずれかであり、加熱処理される被保護部材の表面を、表面保護フィルムで保護する表面保護方法であって、
前記表面保護フィルムは、基材と、該基材の一方の面に設けられ、エネルギー線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えるものであり、エネルギー線照射後に、80℃で1時間加熱した際の粘着力上昇率が1.0倍以上1.5倍以下であり、
前記表面保護フィルムは、エネルギー線照射前の粘着力が1100〜20000mN/25mmであるとともに、エネルギー線照射後の粘着力が200〜1000mN/25mmであり、
前記表面保護フィルムを前記粘着剤層を介して前記被保護部材の表面に貼付し、その表面に貼付した表面保護フィルムの粘着剤層をエネルギー線で硬化した後、前記表面保護フィルムが貼付されている被保護部材を加熱処理し、
前記加熱処理において、前記表面保護フィルムが貼付されている被保護部材を80℃以上に加熱する表面保護方法。
【請求項2】
前記表面保護フィルムは、エネルギー線照射前の初期粘着力が10000mN/25mm未満である請求項1に記載の表面保護方法。
【請求項3】
前記エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)を含む請求項1又は2に記載の表面保護方法。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体(A)が、側鎖に不飽和基を含有するエネルギー線硬化型アクリル系重合体を含む請求項に記載の表面保護方法。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体(A)が、少なくともアルキル基の炭素数が1又は2であるアルキル(メタ)アクリレートを5〜50質量%含むとともに、カルボキシル基含有モノマーを含まず又は5質量%未満含むモノマー成分を共重合したものである請求項又はに記載の表面保護方法。
【請求項6】
前記アクリル系共重合体(A)が、共重合体成分として、アルキル基の炭素数が3以上であるアルキル(メタ)アクリレートを、30〜85質量%含むモノマー成分を共重合したものである請求項のいずれか1項に記載の表面保護方法。
【請求項7】
前記エネルギー線硬化型粘着剤組成物が、エネルギー線重合性化合物を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の表面保護方法。
【請求項8】
前記被保護部材が、撮像モジュールである請求項1〜のいずれか1項に記載の表面保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の一方の面に粘着剤が積層されてなる表面保護フィルムを、各種の光学部材や電子部材の表面に貼付して、その表面を保護する表面保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラのレンズユニット、通信・センサーモジュール、バイブレーター等のモーターユニット、撮像モジュール等、例えばユニット化した光学部材や電子部材は、加工、組立、検査、輸送などの際、表面の傷付きを防止するために、露出面に表面保護フィルムが貼着されることがある。表面保護フィルムは、表面保護の必要がなくなった時点で、光学部材や電子部材から剥離される。
【0003】
上記光学部材や電子部材は、表面保護フィルムが貼付されたまま、基板等の他の部材に取り付けられることがあるが、その取り付けには熱硬化性の接着剤が使用されることがある。このとき、光学部材や電子部材は、接着剤硬化のために、表面保護フィルムが貼付されたまま加熱されることになる。しかし、表面保護フィルムは、高温加熱下に置かれると、粘着力が高くなって被着体から剥離するのが難しくなることがある。
したがって、従来、加熱しても粘着性能が大きく変化しないものが求められており、そのような要求特性に合致させるために、例えば、粘着剤層に、アクリル系共重合体を主剤として窒素含有モノマーを含む粘着剤を使用することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−332419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される表面保護フィルムは、粘着力の変化率が抑えられているものの、加熱されることにより粘着力がある程度大きくなることには変わりはなく、加熱後の剥離性能を十分に向上させることができない。したがって、表面保護フィルムの剥離性能等を十分に向上させつつ、電子部材や光学部材の表面を良好に保護できる表面保護方法が求められている。
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、表面保護フィルムの剥離性能を良好にしつつ、光学部材又は電子部材の表面を表面保護フィルムで適切に保護できる表面保護方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、表面保護フィルムの粘着剤にエネルギー線硬化型を使用するとともに、表面保護フィルム加熱前に粘着剤層をエネルギー線硬化することにより、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
(1)光学部材又は電子部材のいずれかであり、加熱処理される被保護部材の表面を、表面保護フィルムで保護する表面保護方法であって、
前記表面保護フィルムは、基材と、該基材の一方の面に設けられ、エネルギー線硬化粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えるものであり、
前記表面保護フィルムを前記粘着剤層を介して前記被保護部材の表面に貼付し、その表面に貼付した表面保護フィルムの粘着剤層をエネルギー線で硬化した後、前記表面保護フィルムが貼付されている被保護部材を加熱処理する表面保護方法。
(2)前記表面保護フィルムは、エネルギー線照射前の粘着力が1100〜20000mN/25mmであるとともに、エネルギー線照射後の粘着力が200〜1000mN/25mmである上記(1)に記載の表面保護方法。
(3)前記表面保護フィルムは、エネルギー線照射前の初期粘着力が10000mN/25mm未満である上記(1)又は(2)に記載の表面保護方法。
(4)前記表面保護フィルムは、エネルギー線照射後に、80℃で1時間加熱した際の粘着力上昇率が1.5倍以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面保護方法。
(5)前記エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)を含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面保護方法。
(6)前記アクリル系共重合体(A)が、側鎖に不飽和基を含有するエネルギー線硬化型アクリル系重合体を含む上記(5)に記載の表面保護方法。
(7)前記アクリル系共重合体(A)が、少なくともアルキル基の炭素数が1又は2であるアルキル(メタ)アクリレートを5〜50質量%含むとともに、カルボキシル基含有モノマーを含まず又は5質量%未満含むモノマー成分を共重合したものである上記(5)又は(6)に記載の表面保護方法。
(8)前記アクリル系共重合体(A)が、共重合体成分として、アルキル基の炭素数が3以上であるアルキル(メタ)アクリレートを、30〜85質量%含むモノマー成分を共重合したものである上記(5)〜(7)のいずれかに記載の表面保護方法。
(9)前記エネルギー線硬化型粘着剤組成物が、エネルギー線重合性化合物を含む上記(1)〜(8)のいずれかに記載の表面保護方法。
(10)前記加熱処理において、前記表面保護フィルムが貼付されている被保護部材を80℃以上に加熱する上記(1)〜(9)のいずれかに記載の表面保護方法。
(11)前記被保護部材が、撮像モジュールである上記(1)〜(10)のいずれかに記載の表面保護方法。
(12)光学部材又は電子部材に貼付し、その表面を保護するために使用される表面保護フィルムであって、
基材と、該基材の一方の面に設けられるとともに、エネルギー線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層とを備え、
エネルギー線照射前の粘着力が1100〜20000mN/25mmであるとともに、エネルギー線照射後の粘着力が200〜1000mN/25mmである表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、表面保護フィルムの剥離性能を良好にしつつ、光学部材又は電子部材の表面を表面保護フィルムで適切に保護できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の記載において、「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、本明細書中の記載において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0009】
以下、本発明について実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
[表面保護方法]
本発明の表面保護方法は、光学部材又は電子部材のいずれかであり、加熱処理される被保護部材の表面を表面保護フィルムで保護する方法であって、基材と、基材の一方の面に設けられ、エネルギー線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層とを備える表面保護フィルムを、粘着剤層を介して、被保護部材の表面に貼付しその表面を保護するものである。本方法においては、被保護部材の表面に貼付した表面保護フィルムの粘着剤層を、エネルギー線を照射して硬化した後に、表面保護フィルムが貼付されている被保護部材を加熱処理するものである。
【0010】
本発明においては、このように、加熱処理前に粘着剤層をエネルギー線で硬化することで、加熱時に粘着剤層の粘着力が重くなるのを防止し、加熱処理後であっても表面保護フィルムを被保護部材から容易に剥離することが可能になるため、剥離不良や糊残りが起こりにくくなる。また、表面保護フィルムは、後述するようにエネルギー線照射後でもある程度の粘着力を有することで、エネルギー線硬化後や加熱処理後でも、表面保護フィルムの保護性能を大きく損なうことがない。さらに、表面保護フィルムは、加熱処理前には、高い接着力で被保護部材に接着しているため、例えば大きな振動や衝撃が加熱処理前の被保護部材に加えられても、表面保護フィルムが被保護部材から不意に剥離するのを防止し、保護性能が良好になる。
【0011】
本発明の表面保護方法は、表面保護フィルムを被保護部材の表面に貼付して、各種処理がなされる被保護部材の表面を保護するものである。具体的には、表面保護フィルムが貼付された被保護部材(以下、単に表面保護フィルム付き部材ともいう)は、加工され、他の部材に取り付けられ、検査され、又は搬送等されるものであるが、表面保護フィルムは、例えばこれらの工程のうちいずれかを含む一連の工程において、光学部材又は電子部材の表面を保護する。また、本発明においては、表面保護フィルム付き部材は、一連の工程のうちいずれかにおいて加熱処理されるとともに、その加熱処理前に表面保護フィルムに、公知の照射装置からエネルギー線が照射され、粘着力が低下させられるものである。
なお、エネルギー線は、通常、基材側から基材を介して粘着剤層に照射される。また、エネルギー線としては、具体的には、紫外線、電子線等が挙げられるが、紫外線を使用することが好ましい。
【0012】
上記加熱処理する際の加熱温度は、特に限定されないが、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。本発明では、エネルギー線照射により加熱前に粘着力が低下させられ、かつ架橋や硬化によって粘着ポリマーの運動性を抑制し、粘着ポリマーと被着体の相互作用を抑制している。そのため、加熱により粘着剤層の粘着力が高くなることが防止され、表面保護フィルムを被保護部材から剥離する際の剥離不良や、糊残り等が起こりにくくなる。加熱処理における加熱温度の上限は、特に限定されないが、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。また、表面保護フィルム付き部材が上記加熱温度で加熱される時間は、通常1〜120分程度、好ましくは30〜100分程度である。
【0013】
また、本発明では、表面保護フィルム付き部材が基板等の他の部材に取り付けられる工程において上記加熱処理が行われることが好ましい。具体的には、表面保護フィルム付き部材は、例えば熱硬化性接着剤により基板等の他の部材に取り付けられる際に、その接着剤を硬化させるために、上記した加熱処理が行われることが好ましい。
さらに、本発明においては、表面保護フィルム付き部材が加熱処理される前に表面保護フィルムにエネルギー線が照射され、粘着剤層が硬化されるものであるが、表面保護フィルム付き部材は、そのエネルギー線照射前に、加工され、搬送され、検査され、又は他の部材に取り付けられる工程等が行われることが好ましい。エネルギー線照射前のこれら工程において、表面保護フィルム付き部材に衝撃が加えられたとしても、表面保護フィルムは、強固に被保護部材に接着して剥がれたりすることがないので、被保護部材を適切に保護することが可能である。
【0014】
[被保護部材]
本発明において表面保護フィルムによって保護される被保護部材は、光学部材又は電子部材である。光学部材又は電子部材としては、1又は2以上のレンズとCCD、CMOS等の撮像センサが筺体又はパッケージ内部に収納された撮像モジュール;複数のレンズがレンズ鏡筒に保持され、必要に応じて筺体又はパッケージ内に収納されたレンズユニット;LED等の発光素子を有する発光素子ユニット;バイブレーター等のモーターユニット;通信モジュール、センサーモジュール等が挙げられる。これら光学部材や電子部材は、基板等の他の部材に取り付けられて使用される部材であることが好ましい。
【0015】
なお、光学部材とは、光を受光若しくは発光し、または光を伝送する光学部品を備えるものをいい、上記のうち撮像モジュール、レンズユニット、発光素子ユニット、光信号等を送信又は受信する通信モジュール、光センサーモジュール等が光学部材の具体例として挙げられる。また、電子部材とは、通常、電気回路の少なくとも一部を構成し、電気信号を送信又は受信する電子部品、電気信号を処理する電子部品、電気信号や電力により作動する電子部品等を備えるものが挙げられ、上記のうち撮像モジュール、発光素子ユニット、バイブレーター等のモーターユニット、電気信号を送信又は受信する通信モジュール、各種のセンサーモジュール等が電子部材の具体例として挙げられる。なお、光信号等を送信又は受信する通信モジュール、光センサーモジュール、撮像モジュール及び発光素子ユニット等は、通常、電子部材であるとともに、光学部材でもある部材である。
また、光学部材や電子部材は、例えば上記電子部品や光学部品がパッケージや筐体内部に収納され、あるいは支持部材に支持されたものであることが好ましい。また、電子部品や光学部品の一部が表面に露出させたものであることが好ましく、表面保護フィルムは例えば、その露出した部品を保護するために使用される。
【0016】
また、表面保護フィルムは、これらの中では、撮像モジュールを保護することが好ましい。撮像モジュールは、通常、その一面に外部からの光を受光し、その光をモジュール内部のレンズを介して撮像素子に導くための受光部が設けられる。受光部は、撮像モジュールの一面の一部(例えば、中央)に設けられ、ガラスや透明樹脂からなる。表面保護フィルムは、撮像モジュールの受光部が設けられた一面に、受光部を覆うように貼付されることが好ましい。表面保護フィルムは、受光部、及び受光部周囲の筺体又はパッケージの表面に高い粘着力で接着することで、撮像モジュールの一面に設けられた受光部を適切に保護することが可能である。
【0017】
[表面保護フィルム]
次に、本発明で使用される表面保護フィルムについて説明する。
【0018】
本発明の表面保護フィルムは、エネルギー線照射前の粘着力が1100〜20000mN/25mmであるとともに、エネルギー線照射後の粘着力が200〜1000mN/25mmであることが好ましい。
本発明では、エネルギー線照射前の粘着力が1100mN/25m以上であることで、表面保護フィルムの光学部材や電子部材に対する接着力が高くなり、その保護性能が良好になる。また、20000mN/25mm以下とすることで、エネルギー線照射後の粘着力を所望の大きさにしやすくなる。このような観点からエネルギー線照射前の粘着力は、4000〜16000mN/25mmであることがより好ましい。エネルギー線照射前の粘着力は、後述するように、アルキル(メタ)アクリレート等の粘着成分を構成するモノマーの種類および配合比、架橋剤の使用量等により調整することが可能である。
【0019】
また、エネルギー線照射後の粘着力が200mN/25mm以上とすることで、表面保護フィルムは、エネルギー線照射後もある程度の接着力で被保護部材に接着することが可能になる。したがって、本発明では、表面保護フィルムはエネルギー線照射後、粘着力が低下した後も、被保護部材に一定期間接着して被保護部材を保護することになるが、その保護性能を良好に維持することが可能になる。また、エネルギー線照射後の粘着力を1000mN/25mm以下とすることで、エネルギー線照射後に、表面保護フィルムを被保護部材から比較的小さい剥離力で剥離することが可能になる。これら観点から粘着剤層は、エネルギー線照射後の粘着力が250〜850mN/25mmであることがより好ましい。エネルギー線照射後の粘着力は、エネルギー線重合性化合物(B)の種類や量、アクリル系共重合体等に導入される不飽和基の量、官能基モノマーの量等により制御可能である。
【0020】
また、表面保護フィルムは、エネルギー線照射後において、80℃で1時間加熱した際の粘着力上昇率が1.5倍以下であることが好ましく、1.4倍以下であることがより好ましい。このように、粘着力上昇率が低く抑えられると、エネルギー線照射後の加熱による粘着力変化が抑えられるため、表面保護フィルムを剥離する際の剥離性が良好になる。粘着力上昇率の下限は特に限定されないが、通常1.0倍以上である。
粘着力上昇率は、例えば、後述するように、アクリル系粘着剤においては、例えば官能基モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを使用せず又は含有量を抑え、また、ヒドロキシル基含有モノマーを使用することで上記したように、低く抑えることが可能である。
【0021】
また、粘着剤層のエネルギー線照射前の初期粘着力は、10000mN/25mm未満であることが好ましい。初期粘着力をこのように比較的低い値とすることで、表面保護フィルムの貼り直しが容易となり、リワーク性が向上する。初期粘着力の下限値は、特に限定されないが、通常、500mN/25mm以上である。初期粘着力は、3000〜9500mN/25mmであることがより好ましい。
なお、初期粘着力は、アルキル(メタ)アクリレートの種類および配合比、官能基含有モノマーの種類および配合比、架橋剤の使用量等により調整することが可能である。
また、上記した粘着力、粘着力上昇率、初期粘着力の測定方法は、実施例に記載した方法に基づいて測定した値である。
【0022】
次に、本発明の表面保護フィルムの各構成についてより詳細に説明する。
<粘着剤層>
粘着剤層は、エネルギー線硬化型粘着剤組成物からなるものである。エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、上記したようにエネルギー線を照射されることにより硬化して粘着力が低下するものである。エネルギー線硬化型粘着剤組成物を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0023】
エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、いわゆるX型のものが好ましい態様として使用される。X型のエネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、粘着剤の粘着成分を構成するメインポリマー自体がエネルギー線硬化性を有するものであり、例えばポリマーの側鎖に不飽和基を有するものである。また、エネルギー線硬化型粘着剤組成物としては、別の好ましい態様としてY型のエネルギー線硬化型粘着剤組成物が挙げられる。Y型のエネルギー線硬化型粘着剤組成物は、粘着成分を構成するメインポリマーとは別に、エネルギー線重合性化合物が配合されることでエネルギー線硬化性が付与されたものである。さらに、エネルギー線硬化型粘着剤組成物としては、X型とY型を併用した、すなわち、エネルギー線硬化性を有しかつ粘着成分を構成するメインポリマーに、さらに別のエネルギー線重合性化合物を配合したもの(以下X−Y型という)も好ましい態様として使用可能である。
【0024】
以下、粘着剤としてアクリル系粘着剤が使用される場合についてより詳細に説明する。
粘着剤としてアクリル系粘着剤が使用される場合、エネルギー線硬化型粘着剤組成物としては、アクリル系共重合体(A)を含むエネルギー線硬化型粘着剤組成物が使用される。
【0025】
アクリル系共重合体(A)は、粘着成分を構成するメインポリマーである。アクリル系共重合体(A)は、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー成分(以下、「共重合体成分」ともいう)を共重合したものである。アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が1〜18のものが挙げられ、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)メタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アクリル系共重合体(A)は、共重合体成分としてアルキル(メタ)アクリレートを、共重合体成分全量に対して、通常50質量%以上、好ましくは50〜99.8質量%、さらに好ましくは75〜99.5質量%含有する。
【0026】
また、アクリル系共重合体(A)は、共重合体成分として、アルキル(メタ)アクリレートのうち、アルキル基の炭素数が3以上であるアルキル(メタ)アクリレートを、共重合体成分全量に対して30〜85質量%含有することが好ましい。アルキル基の炭素数が3以上であるアルキル(メタ)アクリレートの含有量をこのような範囲とすることで、適切な粘着性能と剥離性能を表面保護フィルムに付与しやすくなる。このような観点から、アルキル基の炭素数が3以上であるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、40〜80質量%であることがより好ましく、45〜75質量%であることがさらに好ましい。
【0027】
上記アルキル基の炭素数が3以上のアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素数が3〜8であるアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキルアクリレートがさらに好ましい。具体的には、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート等が好ましい。
【0028】
また、アクリル系共重合体(A)は、共重合体成分として、アルキル基の炭素数が1又は2であるアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。この場合、アルキル基の炭素数が1又は2であるアルキル(メタ)アクリレートは、共重合体成分全量に対して5〜50質量%含有することが好ましく、10〜40質量%含有することがより好ましく、15〜35質量%含有することがさらに好ましい。
アクリル系共重合体(A)は、共重合体成分として、上記したように、低炭素数のアルキル(メタ)アクリレートを所定量含有することで、粘着力や初期粘着力を良好なものにしやすくなる。
アルキル基の炭素数が1又は2であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらの中では、メチルアクリレート、メチルメタクリレートが好ましい。
【0029】
アクリル系共重合体(A)は、共重合体成分として、アルキル(メタ)アクリレート以外の重合性モノマーを含有することが好ましく、具体的には官能基含有モノマーを含有することが好ましい。官能基含有モノマーは、後述する不飽和基含有化合物をアクリル系共重合体(A)に結合させるためや、後述する架橋剤との反応のために必要な官能基を提供する。官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーである。
【0030】
アクリル系共重合体(A)は、官能基含有モノマーを共重合体成分全量に対して0.2〜40質量%含む共重合体成分を共重合したものであることが好ましい。官能基含有モノマーの含有量が上記範囲内となることで、アクリル系共重合体(A)は後述する架橋剤で適切に架橋することが可能になる。
また、官能基含有モノマーの上記含有量は、0.2〜30質量%であることがより好ましく、0.5〜20質量%であることがさらに好ましい。官能基含有モノマーをこのような範囲とすると、適切な粘着性能を確保しつつ、後述する不飽和基含有化合物を適切に側鎖に導入でき、さらには架橋剤でアクリル系共重合体(A)を適切に架橋することが可能になる。
また、例えば、X型において、官能基含有モノマーの含有量を上記したように20質量%以下としつつ、後述するように不飽和基含有化合物の量も例えば85当量以下とすると、エネルギー線照射後の粘着力をより適切な値としやすくなる。
【0031】
官能基含有モノマーとしては、上記した中では、ヒドロキシル基含有モノマーが好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが用いられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
アクリル系共重合体(A)は、共重合体成分として、カルボキシル基含有モノマーを含まず、又はカルボキシル基含有モノマーを含有していても、その含有量は、共重合体成分全量に対して5質量%未満となることが好ましい。カルボキシル基含有モノマーを5質量%未満とすることで、粘着剤層は、エネルギー線照射後の粘着力や初期粘着力を適切な値として、剥離性能やリワーク性を良好にしやすくなる。
これらの観点から、共重合体成分におけるカルボキシル基含有モノマーの含有量は、3質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、さらには、カルボキシル基含有モノマーを共重合体成分として含有しないことが最も好ましい。なお、カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が挙げられる。
官能基含有モノマーは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
アクリル系共重合体(A)は、上記のモノマーの他にも、アルキル(メタ)アクリレートおよび官能基含有モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルアセテート等を共重合体成分として含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能基含有モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキレンオキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、アクリル酸テトラヒドロフランフルフリル、ポリエーテルとアクリル酸とのエステルであるジアクリレート類等を用いてもよい。
また、ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等が用いられる。ジアルキル(メタ)アクリルアミドは、エネルギー線硬化型粘着剤組成物が後述するX−Y型である際に使用されることが好ましい。ジアルキル(メタ)アクリルアミドを構成モノマーとすることによって、極性の高いウレタン系アクリレート等のエネルギー線重合性化合物(B)に対するエネルギー線硬化型アクリル系共重合体の相溶性が向上する。
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは100,000以上であり、より好ましくは100,000〜1,500,000であり、さらに好ましくは150,000〜1,000,000である。
【0034】
アクリル系粘着剤をなすエネルギー線硬化型粘着剤組成物がX型である場合、アクリル系共重合体(A)自体がエネルギー線硬化性を有する。具体的には、アクリル系共重合体(A)の少なくとも一部を、側鎖に不飽和基を有するエネルギー線硬化型アクリル系共重合体とするものである。エネルギー線硬化型アクリル系共重合体は、上記したアクリル系共重合体に、不飽和基含有化合物を反応させることにより得られるものである。
【0035】
不飽和基含有化合物は、アクリル系共重合体を構成する官能基含有モノマーの官能基に反応しうる置換基を有する。この置換基は、官能基モノマーが有する官能基の種類により様々である。たとえば、官能基がヒドロキシル基の場合、置換基としてはイソシアネート基、エポキシ基等が好ましく、官能基がカルボキシル基の場合、置換基としてはイソシアネート基、エポキシ基等が好ましく、官能基がアミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基等が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはカルボキシル基が好ましいが、置換基としてはこれらの中ではイソシアネート基が好ましい。上記置換基は、不飽和基含有化合物1分子毎に一つずつ含まれている。
【0036】
不飽和基含有化合物には、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。このような不飽和基含有化合物の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。また、ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0037】
また不飽和基含有化合物としては、下記式(1)のような重合性基含有ポリアルキレンオキシ化合物も使用することができる。
【化1】
【0038】
式中、R1は水素またはメチル基、好ましくはメチル基であり、R2〜R5はそれぞれ独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくは水素であり、またnは2以上の整数であり、好ましくは2〜4である。複数存在するR2〜R5は互いに同一であっても異なっていてもよい。すなわち、nが2以上であるため、上記(1)式で表される重合性基含有ポリアルキレンオキシ基には、R2が2以上含まれる。この際、2以上存在するR2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R3〜R5についても同様である。NCOはイソシアネート基を示す。
【0039】
不飽和基含有化合物の量は、アクリル系共重合体が有する官能基100当量に対し、通常10〜100当量程度であるが、官能基の当量より少なくすることで架橋剤による架橋が適切に行えるため、好ましくは15〜95当量程度の割合で用いられる。また、より好ましくは20〜85当量の割合で用いられる。85当量以下とすることで、アクリル系重合体が有する不飽和基の数を少なくして、エネルギー線照射後の粘着力を比較的大きくしやすくなる。また、20当量以上とすることでエネルギー線照射後に加熱した際の粘着力の上昇率を抑えやすくなる。
不飽和基含有化合物としては、(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物が好ましく用いられ、具体的には(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
【0040】
アクリル系粘着剤をなすエネルギー線硬化型粘着剤組成物がY型である場合には、エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)とは別に、エネルギー線重合性化合物(B)が配合されることでエネルギー線硬化性が付与されたものである。
【0041】
エネルギー線重合性化合物(B)としては、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系などのエネルギー線重合性のオリゴマーや、エネルギー線重合性モノマーが用いられる。
エネルギー線重合性モノマーとしては、分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する2官能基以上の低分子量化合物が用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどが用いられる。
【0042】
これらの中でも特に、ウレタンアクリレート系オリゴマーが好ましく用いられる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、イソシアナートユニットとポリオールユニットとを含み、末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。ウレタンアクリレート系オリゴマーとしては、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール等の末端にヒドロキシル基を有するポリオールと、ポリイソシアナートとの反応により末端イソシアナートウレタンオリゴマーを生成し、その末端の官能基に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。このようなウレタンアクリレート系オリゴマーは、(メタ)アクリロイル基の作用により、エネルギー線硬化性を有する。
【0043】
ウレタンアクリレート系オリゴマーにおいて使用されるポリイソシアナートとしては、たとえば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートなどが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
さらに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸の部分エステル等も挙げられる。
【0044】
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する2官能基以上のものが好ましいが、X型と併用しない場合には、3官能基以上のものが好ましく、4官能基以上のものがより好ましい。3官能基以上のものを使用することで、硬化後の粘着力を適切にしやすくなる。また、エネルギー線照射後の表面保護フィルムの剥離性能が良好になりやすい。また、ウレタンアクリレート系オリゴマーは、通常12官能基以下のものが使用される。
また、ウレタンアクリレート系オリゴマーは、重量平均分子量が1000〜15000のものが好ましく、1500〜8500がより好ましい。
エネルギー線重合性化合物(B)は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、通常1〜150質量部配合されるが、X型と併用しない場合には、20〜100質量部が好ましく、35〜75質量部であることがより好ましい。エネルギー線重合性化合物(B)の含有量をこれらの範囲とすることで、エネルギー線照射前及び照射後の粘着剤層の粘着力を適切に保ちやすくなる。また、上記のように75質量部以下とエネルギー線重合性化合物(B)の量を比較的少なくことで、エネルギー線照射後の粘着力を比較的高めに設定することが可能で、エネルギー線照射後の保護性能を良好にしやすくなる。さらに、35質量部以上とすることで、エネルギー線硬化後に加熱した際、粘着力が上昇しにくくなる。
【0045】
アクリル系粘着剤において、X−Y型である場合のエネルギー線硬化型粘着剤組成物は、アクリル系重合体(A)に加えてエネルギー線重合性化合物(B)を含有するとともに、アクリル系共重合体(A)の少なくとも一部を側鎖に不飽和基を有するエネルギー線硬化型アクリル系共重合体とするものである。X−Y型である場合、粘着剤層の破断強度及び破断伸度が良好となり、表面保護フィルムを剥離する際の被着体への糊残りが減少しやすくなる。
X−Y型である場合に使用されるエネルギー線硬化型アクリル系共重合体は、上記したX型で使用されるものと同様のものが使用される。
【0046】
また、エネルギー線重合性化合物(B)も、上記したY型で使用されたものと同様のものが使用され、ウレタンアクリレート系オリゴマーが好ましいが、その際のポリイソシアナートとしては、イソホロンジイソシアナート、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート等が用いられることがより好ましい。また、ウレタンアクリレート中のポリオールユニットを形成するポリオールとしては、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等が使用されることが好ましく、これらのポリオールの数平均分子量は、300〜2000が好ましく、500〜1000が特に好ましい。
また、ポリオールは、粘着剤層の破断応力及び破断伸度をより良好にするために、2種類以上のポリオールを含んでいることがさらに好ましく、そのポリオールとしては、PPGとPEGとを含んでいることが特に好ましく、PPGとPEGのみからなることが最も好ましい。PPGとPEGのモル比は、9:1〜1:9であることが好ましく、9:1〜1:4であることがより好ましく、4:1〜3:2であることがさらに好ましく、7.5:2.5〜6.5:3.5であることが最も好ましい。
さらに、X−Y型におけるウレタンアクリレート系オリゴマーとしては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能基のものが好ましい。2官能基のものを使用することで、剥離性能や粘着性を良好にしつつ、破断強度及び破断伸度を高いものにしやすくなる。
また、X−Y型においてエネルギー線重合性化合物(B)は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
【0047】
粘着剤層は、アクリル系共重合体(A)等のメインポリマーが架橋された架橋構造を有していてもよい。架橋のためにエネルギー線硬化型粘着剤組成物に含有される架橋剤(C)としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物等が挙げられ、これらの中では、有機多価イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましい。
【0048】
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0049】
有機多価イソシアネート化合物のさらなる具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4'−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物などが挙げられる。
【0050】
有機多価エポキシ化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
【0051】
有機多価イミン化合物の具体的な例としては、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0052】
架橋剤(C)の含有量は、アクリル系共重合体(A)等のメインポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部、特に好ましくは0.5〜8質量部の比率で用いられる。架橋剤(C)の含有量を上記上限以下とすると、粘着剤層が過度に架橋するのを防止し、適切な粘着力が得られやすくなる。また、架橋剤の使用量を上記下限値以上とすることで、電子部材や光学部材に粘着剤が残着することが防止される。
【0053】
エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示できる。光重合開始剤(D)を配合することで、硬化のためのエネルギー線の照射時間及び照射量を少なくすることができる。
光重合開始剤(D)の含有量は、特に限定されないが、アクリル系共重合体(A)等のメインポリマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
【0054】
また、表面保護フィルムの光透過率が50%未満となるように、粘着剤層が着色されていてもよい。粘着剤層は着色されることにより、表面保護フィルムの視認性が向上するため、例えば人手により表面保護フィルムを後述する剥離シートから剥離しやすくなる。なお、表面保護フィルムの光透過率とは、波長600nmにおいて株式会社島津製作所製 分光光度計 UV−3600により測定されたものである。上記光透過率は、好ましくは10〜40%程度である。
粘着剤層を着色するために、エネルギー線硬化型粘着剤組成物には、通常、染料、顔料が含有されており、中でも青色染料、青色顔料が含有されることが好ましい。
また、エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等の上記成分以外の成分が適宜含有されてもよい。
粘着剤層の厚みは特に限定されず、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲内にあることで、被着体に対する密着性を高めやすくなる。
【0055】
<基材>
基材の材質には特に限定はなく、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルム等のフィルムが使用可能である。また、これらの架橋フィルム、積層フィルムであっても良い。
【0056】
なお、基材は、使用するエネルギー線の波長に対して透過性を有する必要がある。すなわち、エネルギー線として紫外線を用いる場合においては、基材は光透過性フィルムが使用される。また、エネルギー線として電子線を用いる場合においては、基材は光透過性である必要はなく、着色が施されたフィルムを用いても良い。また、基材の厚さは、表面保護フィルムに要求される性能等に応じて調整され、好ましくは10〜300μmであり、特に好ましくは30〜150μmである。
【0057】
表面保護フィルムのフィルム面積は、100mm2以下であることが好ましく、より好ましくは10〜80mm2程度である。表面保護フィルムは、光学部材及び電子部材に応じてサイズが小さくなるが、上述したように剥離性能が良好であるため、サイズが小さくなっても手作業によって剥離しやすくなる。また、表面保護フィルムは、その形状は限定されないが、例えば、円形、正方形、矩形等に加工される。
【0058】
表面保護フィルムの粘着剤層側は、剥離シートが貼付されて、剥離シートにより保護されていてもよい。剥離シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフィルムの片面にシリコーン樹脂等の剥離剤で剥離処理を施したもの等が使用できるが、これらには限定されない。なお、表面保護フィルムは、表面保護フィルムよりも十分に大きいサイズの1枚の剥離シートの上に複数個設けられてもよい。
【0059】
粘着剤層を形成する方法は、特に限定されないが、必要に応じ適当な溶剤で希釈したエネルギー線硬化型粘着剤組成物を、剥離シート上に所定の乾燥膜厚になるように塗布し、その後乾燥して粘着剤層を形成した後、粘着剤層に基材を貼り合わせて形成すればよい。また、必要に応じ適当な溶剤で希釈したエネルギー線硬化型粘着剤組成物を、基材に直接塗布し、その後乾燥して粘着剤層を形成してもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0061】
本発明における測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
[重量平均分子量(Mw)]
ゲル浸透クロマトグラフ装置を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
測定装置:製品名「HLC−8220GPC」、東ソー株式会社製)
カラム:製品名「TSKGel SuperHZM-M」、東ソー株式会社製)
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
[粘着力]
表面保護フィルムを25mmの幅に裁断して試料とし、23℃、50%相対湿度の環境下で、2kgローラで被着体であるシリコンウエハのミラー面に貼付した。23℃、50%相対湿度の環境下に20分間静置した後、引張速度300mm/分、180°で剥離した際の粘着力を測定し、エネルギー線照射前の粘着力とした。また、23℃、50%相対湿度の環境下に20分間静置後、シリコンウエハに貼付された試料に、紫外線照射装置(リンテック株式会社製 RAD−2000m/12)を用い、窒素雰囲気下にて紫外線を照射した(照度230mW/cm2、光量190mJ/cm2)。その後、23℃、50%相対湿度の環境下、引張速度300mm/分、180°で剥離した際の粘着力を測定し、エネルギー線照射後の粘着力とした。
[加熱後粘着力及び粘着力上昇率]
表面保護フィルムを25mmの幅に裁断して試料とし、23℃、50%相対湿度の環境下で、2kgローラで被着体であるシリコンウエハのミラー面に貼付した。20分間静置後、シリコンウエハに貼付された試料に、紫外線照射装置(リンテック株式会社製 RAD−2000m/12)を用い、窒素雰囲気下にて紫外線を照射した(照度230mW/cm2、光量190mJ/cm2)。次いで、80℃環境下のオーブンの中に1時間放置し、次いで、23℃、50%相対湿度の環境下に戻して20分経過後、引張速度300mm/分、180°で、表面保護フィルムを剥離した際の粘着力を測定し、その測定値を加熱後粘着力とした。
また、上記で測定したエネルギー線照射後の粘着力(A)に対する、加熱後粘着力(B)の比である粘着力上昇率(B/A)を算出した。
[初期粘着力]
粘着シートを25mmの幅に裁断して試料とし、23℃、50%相対湿度の環境下で、2kgローラで被着体であるシリコンウエハのミラー面に貼付した。その貼付直後(1分以内)に23℃、50%相対湿度の環境下で引張速度300mm/分、180°で剥離した際の粘着力を測定し、その粘着力を初期粘着力とした。
【0062】
[評価方法]
<リワーク性>
各実施例、比較例において得られ、加熱処理及び紫外線照射が行われていない表面保護フィルムを被着体に貼付した後、貼り直した際のリワーク性を以下の評価基準で評価した。
A:表面保護フィルムの貼り直しが容易で、リワーク性が良好であった。
B:表面保護フィルムを被着体に一旦貼付すると貼り直しが難しく、リワーク性が不十分であった。
<保護性>
各実施例、比較例における表面保護フィルムの保護性能を以下の評価基準で評価した。
A:全ての段階において、表面保護フィルムの被着体に対する密着性が良好であり、保護性に優れていた。
B:エネルギー線照射前においては、表面保護フィルムの被着体に対する密着性が良好であったが、エネルギー線照射後においては密着性が不十分で、表面保護フィルムが不意に剥がれるおそれがあった。
C:エネルギー線照射前及び照射後のいずれにおいても表面保護フィルムの撮像モジュールに対する密着性が低く、表面保護フィルムが不意に剥がれるおそれがあった。
<剥離性>
各実施例、比較例において、表面保護フィルムを、被着体から剥離する際の剥離性を以下の評価基準で評価した。
A:表面保護フィルムを容易に剥離することができ、また、目視観察すると、被着体に糊残りが見られなかった。
B:被着体に糊残りが見られないものの、表面保護フィルムを剥離する際の剥離抵抗が比較的高く手作業での剥離に時間を要した。
C:表面保護フィルムを剥離する際の剥離抵抗が高く手作業での剥離に時間を要し、さらに、目視観察すると、被着体に糊残りが見られた。
【0063】
[実施例1]
n−ブチルアクリレート69.5質量部と、メチルアクリレート30質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5質量部とを酢酸エチル溶媒中で重合し、重量平均分子量46万のアクリル系共重合体を得た。この酢酸エチル溶媒で希釈されたアクリル系共重合体100質量部(固形分換算)と、重量平均分子量2300のペンタエリスリトール系の5〜9官能ウレタンアクリレート系オリゴマー60質量部と、光重合開始剤としてのイルガキュア184(BASF社製)2.0質量部と、架橋剤としての有機多価イソシアネート化合物(製品名「BHS8515」、トーヨーケム株式会社製)8質量部とを混合してエネルギー線硬化型粘着剤組成物(Y型)の酢酸エチル希釈液を得た。この希釈液を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材に、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布して、その後、100℃で1分間加熱乾燥して、基材の上に粘着剤層を形成して、表面保護フィルムを得た。
【0064】
表面保護フィルムの粘着剤層にさらに剥離シート重ね合わせた後、表面保護フィルムを直径5mm(面積:19.6mm2)の円形に抜き加工した。抜き加工した表面保護フィルムを被着体である撮像モジュールに貼り合わせた後、紫外線照射装置(リンテック株式会社製 RAD−2000m/12)を用い、窒素雰囲気下にて表面保護フィルムに紫外線を照射した(照度230mW/cm2、光量190mJ/cm2)。その後、表面保護フィルムが貼付された被着体を80℃で1時間加熱する加熱処理をした後、表面保護フィルムを剥離した。
【0065】
[実施例2]
n−ブチルアクリレート65質量部と、メチルメタクリレート20質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部とを酢酸エチル溶媒中で重合して重量平均分子量47万のアクリル系共重合体を得て、さらに、このアクリル系共重合体100質量部に、不飽和基含有化合物であるメタクリロイルオキシエチルイソシアナート(MOI)を16質量部(2−ヒドロキシエチルアクリレート100当量に対して80当量)反応させて、エネルギー線硬化型アクリル系共重合体の酢酸エチル希釈液を得た。次に、この酢酸エチルで希釈されたエネルギー線硬化型アクリル系共重合体100質量部(固形分換算)に、光重合開始剤としてのイルガキュア184(BASF社製)2.0質量部と、架橋剤としての有機多価イソシアネート化合物(製品名「BHS8515」、トーヨーケム株式会社)1質量部を混合してエネルギー線硬化型粘着剤組成物(X型)の希釈液を得た。その後、実施例1と同様に実施した。
【0066】
[実施例3]
実施例1において、ウレタンアクリレート系オリゴマーの配合量を120質量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0067】
[実施例4]
n−ブチルアクリレート52質量部と、メチルメタクリレート20質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート28質量部とを酢酸エチル溶媒中で重合して重量平均分子量50万のアクリル系共重合体を得て、さらに、アクリル系共重合体100質量部に、不飽和基含有化合物であるメタクリロイルオキシエチルイソシアナート(MOI)を33.7質量部(2−ヒドロキシエチルアクリレート100当量に対して90当量)反応させて、エネルギー線硬化型アクリル系共重合体の酢酸エチル希釈液を得た。次に、この酢酸エチルで希釈されたエネルギー線硬化型アクリル系共重合体100質量部(固形分換算)に、光重合開始剤としてのイルガキュア184(BASF社製)3.3質量部と、架橋剤としての有機多価イソシアネート化合物(製品名「BHS8515」、トーヨーケム株式会社)0.5質量部を混合してエネルギー線硬化型粘着剤組成物(X型)の希釈液を得た。その後、実施例1と同様の方法で実施した。
【0068】
[比較例1]
実施例2において、紫外線照射を加熱処理の後に行った点を除いて実施例2と同様に実施し、紫外線照射後に被着体から表面保護フィルムを剥離した。
【0069】
以上の実施例、比較例のエネルギー線照射前及び照射後の粘着力、エネルギー線照射しさらに80℃加熱した後の粘着力(加熱後粘着力)、粘着力上昇率、及び初期粘着力の測定結果、及び各評価試験の評価結果を表1に示す。
【表1】
※ただし、比較例1における加熱後粘着力は、加熱処理をし、その後、紫外線照射をした後の粘着力を示す。
【0070】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜4では、紫外線照射後に表面保護フィルムを加熱したため、加熱処理後においても粘着力がそれほど大きくならずに、剥離性が良好となった。また、初期粘着力も良好であり、リワーク性に優れていた。さらに、実施例1,2では、エネルギー線照射後の粘着力が比較的大きいため、エネルギー線照射前及び照射後、さらには加熱処理後のいずれの段階でも表面保護フィルムの剥がれが生じにくく、保護性能に優れていた。
それに対して、比較例1では、加熱処理した後に紫外線照射を行ったところ、紫外線照射後の剥離性能が十分ではなく、実用的に使用できるものではなかった。