特許第6496951号(P6496951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496951
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】ハーネス型安全帯
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   A62B35/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-84865(P2017-84865)
(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公開番号】特開2018-175800(P2018-175800A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年6月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513144040
【氏名又は名称】有限会社一城組
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一幸
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−148803(JP,A)
【文献】 特表2005−520063(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0196245(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0073704(US,A1)
【文献】 特表平05−508195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の上体側に装着されるとともにランヤードが掛止される上体側ベルト体と人体の下肢側に装着される左右一対の下肢側ベルト体を備えて構成されるハーネス型安全帯であって、
上記上体側ベルト体は、2本のベルト材を、その中間位置において連結具によって交差状に連結するとともに、一方のベルト材の一端側と他方のベルト材の一端側を、また、一方のベルト材の他端側と他方のベルト材の他端側を、それぞれ縫合固着し、上記連結具から上側に延出して上記縫合固着部に至る部分のうち、上記連結具寄りの部分を人体の肩部に掛け回される肩ベルト部、上記縫合固着部寄りの部分を人体の胸部側に掛け回される胴ベルト部、上記連結具から下側に延出して上記縫合固着部に至る部分を人体の背部に掛け回される背ベルト部とするとともに、上記胴ベルト部の延長上で上記縫合固着部より先端側に位置する部分、及び上記背ベルト部の延長上で上記縫合固着部より先端側に位置する部分を、それぞれその先端に掛止部材が設けられた連結ベルト部とし、
上記下肢側ベルト体は、ベルト材により所定径の環状に形成されてズボン体の太腿部分の内面に固着される環ベルト部と、所定長さのベルト材で形成されて上記ズボン体の太腿部分から腰部分の内面に固着されるとともに、その下端側が上記環ベルト部における上記ズボン体の前後方向に略対向する二位置にそれぞれ固着され、上端側が上記ズボン体の前後方向に略対向する二位置から上方へそれぞれ延出された二本の縦ベルト部を備え、
作業者は、その上体に上記上体側ベルト体を装着し、下肢側に上記ズボン体を履いた状態で、上記上体側ベルト体の上記各掛止部材を、上記下肢側ベルト体の上記各縦ベルト部の上端部にそれぞれ連結することを特徴とするハーネス型安全帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高所作業者が安全性確保のために装着するハーネス型安全帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハーネス型安全帯としては、従来から種々の構造が提案されている。例えば、特許文献1には、一体式のハーネス型安全帯であって、人体の上体部分に装着されるベルト部分と両方の股付根部分に掛け回されるベルト部分を一体に形成したものが示されている。また、特許文献2には、人体の上体部分に装着されるベルト部分と下肢側に装着されるベルト部分を別体に構成し、必要に応じてこれら両ベルト部分を着脱するようにしたものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−233463号公報
【特許文献2】特開2008−148803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に示されるハーネス型安全帯においては、これが一体式であることから装着時には各部分の取り回し方の把握が難しく、また下肢側のベルト部材を両方の股付根部分にそれぞれ掛け回さなければならない等操作が煩雑であり、装着性という点において問題があった。
【0005】
また、下肢側においては、環状に形成されたベルト部材が股間部分に掛け回され後、斜め上方に引き出されるようになっていることから、例えば、人体が落下するなどして安全帯に体重が掛かった場合、その多くが上記ベルト部材を介して股間部分で支持されることから、作業者に過大な負担を与えることになり、作業者の負担軽減という観点からして好ましくない。
【0006】
さらに、安全帯を装着した状態においては、腰部から臀部の部分にベルト部材が露出状態で配置されることから、作業中にこの露出したベルト部分が周辺基材に引っ掛かって作業に支障を及ぼすことも懸念される。
【0007】
また、特許文献2に示されるハーネス型安全帯においては、人体の上体部分に装着されるベルト部分と下肢側に装着されるベルト部分を別体に構成しているので、装着時における各部分の形状の把握は容易であるものの、下肢側ベルトの装着に際しては、これをズボンの上側から両足の太腿部分にそれぞれ掛け回して装着しなければならず、装着作業が煩雑で装着に手間取るなど装着性に問題がある。
【0008】
また、この下肢側ベルト部分が、腰部から臀部の部分に露出状態で配置されることから、作業中にこの露出したベルト部分が周辺基材に引っ掛かって作業に支障を及ぼすことも懸念される。
【0009】
そこで本願発明は、装着性が良好で、稼働時における人体への負担が少なく、しかも装着状態での作業性に優れたハーネス型安全帯を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、人体の上体側に装着されるとともにランヤードが掛止される上体側ベルト体と、人体の下肢側に装着される左右一対の下肢側ベルト体を備えて構成されるハーネス型安全帯において、上記上体側ベルト体は、2本のベルト材を、その中間位置において連結具によって交差状に連結するとともに、一方のベルト材の一端側と他方のベルト材の一端側を、また、一方のベルト材の他端側と他方のベルト材の他端側を、それぞれ縫合固着し、上記連結具から上側に延出して上記縫合固着部に至る部分のうち、上記連結具寄りの部分を人体の肩部に掛け回される肩ベルト部、上記縫合固着部寄りの部分を人体の胸部側に掛け回される胴ベルト部、上記連結具から下側に延出して上記縫合固着部に至る部分を人体の背部に掛け回される背ベルト部とするとともに、上記胴ベルト部の延長上で上記縫合固着部より先端側に位置する部分、及び上記背ベルト部の延長上で上記縫合固着部より先端側に位置する部分を、それぞれその先端に掛止部材が設けられた連結ベルト部とし、上記下肢側ベルト体は、ベルト材により所定径の環状に形成されてズボン体の太腿部分の内面に固着される環ベルト部と、所定長さのベルト材で形成されて上記ズボン体の太腿部分から腰部分の内面に固着されるとともに、その下端側が上記環ベルト部における上記ズボン体の前後方向に略対向する二位置にそれぞれ固着され、上端側が上記ズボン体の前後方向に略対向する二位置から上方へそれぞれ延出された二本の縦ベルト部を備え、作業者は、その上体に上記上体側ベルト体を装着し、下肢側に上記ズボン体を履いた状態で、上記上体側ベルト体の上記各掛止部材を、上記下肢側ベルト体の上記各縦ベルト部の上端部にそれぞれ連結することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本願発のハーネス型安全帯では、人体の上体側に装着される上体側ベルト体と人体の下肢側に装着される左右一対の下肢側ベルト体で構成しているので、該安全帯の装着に際してその取り回し方等の把握が容易であり、例えば、従来の一体式の安全帯のように取り回し方等の把握が難しい場合に比して、安全帯を適正且つ容易に装着することができる。
【0012】
また、上記下肢側ベルト体を構成する環ベルト部と縦ベルト部がズボン体の内面に固着されていることから、該下肢側ベルト体の装着に際しては、ベルト体を下肢側に巻き付けたりする必要はなく、単に上記ズボン体を下肢に履けばこれに伴って自動的に下肢側ベルト体が装着されることから、その装着作業が極めて簡単且つ容易であり、安全帯の装着性がより一層向上することになる。
【0013】
さらに、上記下肢側ベルト体は、人体の大腿部分に掛け回されており、安全帯に不測の荷重が掛かった場合にはその多くを大腿部分で支持することから、例えば、股間部分に掛け回されたベルト部材を介して股間部分で荷重を支持するような場合に比して、人体に対する負担が少なく、延いては使用上の安全性が向上する。
【0014】
また、実際の作業においては、安全帯を装着した状態で身体を移動させて作業を行うが、その場合、この安全帯が身体外面側に露出していると、これが周辺機器に引っ掛かって作業が阻害されることも懸念されるが、この発明の安全帯では上記下肢側ベルト体が上記ズボン体の内面側に固着され、該ズボン体によって覆われていることから、作業中において該下肢側ベルト体が周辺機器に引っ掛かることがなく、その分だけ、安全帯を装着した状態での作業における安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】 本願発明の実施形態に係るハーネス型安全帯の構成図である。
図2図1に示した下肢側ベルト体の斜視図である。
図3図1に示したハーネス型安全帯の装着状態の説明図である。
図4】 下肢側ベルト体の他の構造例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本願発明の実施形態に係るハーネス型安全帯Zを示している。この安全帯Zは、人体の上体側に装着される上体側ベルト体1と、下肢側に装着される下肢側ベルト体2とから成る分割式の安全帯であり、これら両者を同時に装着して使用する。以下、これら上体側ベルト体1と下肢側ベルト体2の構造を具体的に説明する。
【0017】
A:上体側ベルト体1
上記上体側ベルト体1は、上体に対して襷掛け状に装着(図3参照)されるもので、その基本構成は、2本の長尺のベルト材10を、その中間位置において位置調整可能な連結具31によって交差状に連結するとともに、一方のベルト材10の一端側と他方のベルト材10の一端側を、また、一方のベルト材10の他端側と他方のベルト材10の他端側を、それぞれ縫合固着(縫合固着部15)して構成される。
【0018】
そして、上記連結具31から上側に延出して上記縫合固着部15に至る部分のうち、上記連結具31寄りの部分を人体の肩部に掛け回される肩ベルト部11、上記縫合固着部15寄りの部分を人体の胸部側に掛け回される胴ベルト部13としている。また、上記連結具31から下側に延出して上記縫合固着部15に至る部分を人体の背部に掛け回される背ベルト部12としている(図3参照)。
【0019】
さらに、上記胴ベルト部13の延長上で上記縫合固着部15より先端側に位置する部分、及び上記背ベルト部12の延長上で上記縫合固着部15より先端側に位置する部分を、それぞれ連結ベルト部16とするとともに、該連結ベルト部16の先端には掛止部材17を設けている。
【0020】
なお、左右の上記肩ベルト部11間には前ベルト部14が、左右の上記背ベルト部12間には拘引ベルト部18が、さらに背側に位置する一対の連結ベルト部16間には拘引ベルト部19が、それぞれ設けられている。また、上記連結具31には掛止リング32が備えられ、該掛止リング32にはランヤード(図示省略)が掛止される。
【0021】
上記上体側ベルト体1は、図3に示すように、上記左右の肩ベルト部11と背ベルト部12及び胴ベルト部13によって形成されるループ部分に左右の腕を通した状態で背中側に掛けられ、さらに上記前ベルト部14が閉止されることで上体側に装着固定される。
【0022】
B:下肢側ベルト体2
上記下肢側ベルト体2は、本願発明の要旨を成すものであって、左右の大腿部に対応すべく左右一対として用意される。以下、この一対の下肢側ベルト体2の構造を、一方の下肢側ベルト体2を例にとって具体的に説明する。
【0023】
上記下肢側ベルト体2は、帯状のベルト材により所定径の環状に形成された二つの環ベルト部22と、所定長さのベルト材で形成された直帯状の二本の縦ベルト部21を備える。なお、上記環ベルト部22の径寸法は、後述の如く該環ベルト部22が固着されるズボン体3の大腿部3cの径寸法に対応して設定される。また、上記縦ベルト部21の長さは、上記ズボン体3の大腿部3cから尻部3bを経て腰部3aに至る経路長さより若干長めの寸法に設定される。
【0024】
上記縦ベルト部21と上記環ベルト部22は、図1及び図2に示すように、二本の上記環ベルト部22をその中心軸方向に所定寸法だけ離間対向させた状態で配置し、この二本の環ベルト部22に対して二本の上記縦ベルト部21を、該環ベルト部22の径方向(換言すれば、上記ズボン体3の前後方向)に略対向する二位置に交差配置し、この交差部分を縫合固着することで一体化され、一つの下肢側ベルト体2を構成している。なお、この場合、上記縦ベルト部21は、上側の環ベルト部22よりも上方へ延出しており、その上端部21aは、上記上体側ベルト体1側の上記掛止部材17に対する掛止部とされる。
【0025】
上記の如く構成された二つの下肢側ベルト体2は、図2及び図3示すように、ズボン体3の内部に配置され、且つその二つの環ベルト部22はそれぞれ該ズボン体3の大腿部3cの内面の略全周に縫合固着される。また、上記縦ベルト部21は、上記ズボン体3の太腿部3cから臀部3bを経て腰部3aにかけての内面に縫合固着されるとともに、その上端部21aは該腰部3aから若干上方へ延出されている。
【0026】
このように、上記下肢側ベルト体2を上記ズボン体3の内面側に縫合固着した結果、該下肢側ベルト体2は上記ズボン体3と一体化されるとともに、該下肢側ベルト体2は上記ズボン体3の外部には露出せず、該ズボン体3の外表面は本来の生地面のまま保持される。
【0027】
なお、この実施形態では、上記ズボン体3を通常の作業用ズボンと想定し、そのように図示しているが、本願発明においては係る構成に限定されるものではなく、例えば、通常の作業用ズボンの上から重ねて履ける短パン状あるいは通常丈のズボン体3であっても良く、本願発明の実施上何ら問題は生じない。
【0028】
C:安全帯Zの使用方法等
上記安全帯Zを使用する場合は、先ず、上記上体側ベルト体1を上体に装着する。しかる後、上記ズボン体3に足を通して履くことで、該ズボン体3と一体化された上記下肢側ベルト体2が下肢側に装着される。そして、上記下肢側ベルト体2の各縦ベルト部21の上端部21aを、上記上体側ベルト体1側の各連結ベルト部16に、上記掛止部材17を介して連結する。以上で、上記安全帯Zの装着が完了する。
【0029】
なお、上記ズボン体3を履いて上記下肢側ベルト体2を装着する場合、既に履いているズボンを脱ぐことなく、該ズボンの上からさらに重ねて上記ズボン体3を履く方法と、既に履いているズボンを脱いで素足状態のまま上記ズボン体3を履く方法が想定されるが、これら何れの方法であっても、上記ズボン体3を介して上記下肢側ベルト体2を装着する、ということには変わりはなく、何れの方法も採用し得るものである。
【0030】
このように、このハーネス型安全帯Zにおいては、上記ズボン体3を履くことで、その内面側に固着保持された上記下肢側ベルト体2が自動的に下肢側に装着され、例えば、従来の一体式の安全帯のように、装着に際してベルト部分の取り回し等を確認しながら装着する必要は無く、安全帯の装着作業が格段に簡素化され、延いては安全帯Zを装着して行われる作業の効率化が促進される。
【0031】
また、この安全帯Zにおいては、上記下肢側ベルト体2は、人体の大腿部分に掛け回されており、該安全帯Zに不測の荷重が掛かった場合にはその多くを大腿部分で支持することから、例えば、股間部分に掛け回されたベルト部材を介して股間部分で荷重を支持するような場合に比して、人体に対する負担が少なく、延いては安全帯Zの使用上の安全性が向上することになる。
【0032】
さらに、実際の作業においては、安全帯Zを装着した状態で身体を移動させて作業を行うが、その場合、上記安全帯Zが身体外面側に露出していると、これが周辺機器に引っ掛かって作業が阻害されることも懸念されるが、この実施形態の安全帯Zにおいては上記下肢側ベルト体2が上記ズボン体3の内部側に配置され、外部へは露出しないことから、該下肢側ベルト体2が周辺機器に引っ掛かることがなく、その分だけ、該安全帯Zを装着した状態での作業における安全性が向上することになる。
【0033】
D:その他
上記実施形態においては、図2に示すように、上記下肢側ベルト体2を上下2本の環ベルト部22と、上下方向に延出する縦ベルト部21で構成したが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記環ベルト部22を、図4に示すように、幅広の一つのベルト体で構成することもできる。係る構成とした場合には、該環ベルト部22の表面積(即ち、荷重支持面)が拡大されることから、例えば、安全帯Zに不測の荷重が掛かってその一部を上記下肢側ベルト体2側で支持する場合、該荷重は上記環ベルト部22の広い範囲で分散支持されることになり、その結果、人体に対する負担が軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本願発明に係るハーネス型安全帯は、高所作業における落下防止対策として広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 ・・上体側ベルト体
2 ・・下肢側ベルト体
3 ・・ズボン体
10 ・・ベルト材
11 ・・肩ベルト部
12 ・・背ベルト部
13 ・・胴ベルト部
14 ・・旨ベルト部
15 ・・縫合固着部
16 ・・連結ベルト部
17 ・・掛止部材
18 ・・拘引ベルト部
19 ・・拘引ベルト部
21 ・・縦ベルト部
22 ・・環ベルト部
31 ・・連結具
32 ・・掛止リング
Z ・・ハーネス型安全帯
図1
図2
図3
図4