【文献】
Quantitative Liver-Specific Protein Fingerprint in Blood: A Signature for Hepatotoxicity,THERANOSTICS,2014年 1月14日,4(2): 215-228
【文献】
Two-dimensional database of mouse liver proteins: changes in hepatic protein levels following treatment with acetaminophen or its nontoxic regioisomer 3-acetamidophenol,Electrophoresis,2000年,21(11): 2148-2161
【文献】
ACETAMINOPHEN-INDUCED HEPATOTOXICITY,Drug Metabolism and Disposition,2003年,31(12): 1499-1506
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
I. APAP-タンパク質付加物
本開示の一態様は、アセトアミノフェン-誘導性毒性を診断するためのAPAP-タンパク質付加物を提供する。アセトアミノフェン-誘導性毒性は、対象体の体内における反応的な代謝物であるN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)へのアセトアミノフェンの変換が介在する。NAPQIは、主に肝臓においてAPAP-タンパク質付加物を形成するタンパク質またはペプチドのシステイン基に共有結合し、そしてアセトアミノフェンを代謝できる他の組織においてより低い程度に共有結合する。これらのAPAP-タンパク質付加物は、APAP環のアセトアミド基のメタ位かつフェノール基のオルト位と共有結合するシステインの硫黄基を有し、3-(システイン-S-イル)APAP(3-Cys-A)-タンパク質付加物とも呼ばれる。NAPQIは、肝臓の天然の抗酸化剤グルタチオンを激減させ、直接的に肝臓の細胞を損傷させ、肝不全および循環系へのAPAP-タンパク質付加物の放出の原因となる。
【0008】
本開示によれば、本発明者らは、アセトアミノフェン-誘導性毒性を有する対象体においてNAPQIにより修飾されたタンパク質を特定した。NAPQIにより修飾されたタンパク質の制限されない例としては、ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1、細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、1,4-α-グルカン-分枝酵素、ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼおよびジストロフィンが挙げられる。NAPQIにより修飾され得る各タンパク質の記載を以下に提供する。
【0009】
ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1(BHMT):BHMTは、ベタインからホモシステインへのメチル基の移動を触媒し、それぞれジメチルグリシンおよびメチオニンを生じる亜鉛メタロ酵素である。BHMTは、トランスフェラーゼのファミリー、特に1つの炭素基を移動させるメチルトランスフェラーゼに属する。BHMTは、グリシン、セリン、スレオニンおよびまたメチオニンの代謝に関与する。
【0010】
細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(cAspAT):cAspATは、細胞質型システインアミノトランスフェラーゼ、細胞質型システイントランスアミナーゼ(cCAT)、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)またはトランスアミナーゼAとしても知られ、細胞質型(GOT1)およびミトコンドリア型(GOT2)で存在するピリドキサールリン酸依存酵素である。2つの酵素は、ホモ二量体であり、密接な相同性を示す。cAspATは、アミノ酸代謝ならびに尿素およびトリカルボン酸回路で役割を果たす。
【0011】
1,4-α-グルカン-分枝酵素(GBE1):1,4-α-グルカン-分枝酵素は、分枝酵素またはグリコーゲン-分枝酵素としても知られ、伸長しているα-1,4-グルカン鎖からの1,4-α-結合オリゴ糖の切断によるグリコーゲンにおけるα-1,6-グリコシド結合の形成、およびそれに続くα-1,6位へのオリゴ糖の結合を触媒する酵素である。グルコースのグリコーゲンへの変換、すなわち伸長しているグリコーゲン分子への分枝の付加に関与する。
【0012】
ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼ(FTCD):FTCDは、ホルムイミノトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼとしても知られ、トランスフェラーゼおよびデアミナーゼ活性の両方を示す葉酸依存酵素である。FTCDは、ホルムイミノグルタミン酸から葉酸プールに1つの炭素単位を導く役割をする。酵素はゴルジ体から生じるビメンチンフィラメントに結合し、束化を促進する。
【0013】
ジストロフィン(DMD):ジストロフィンは、棒状の細胞質タンパク質であり、細胞膜を介して筋繊維の細胞骨格を周囲の細胞外マトリックスとつなぐタンパク質複合体の重要な一部分である。この複合体は、コスタメアまたはジストロフィン-結合タンパク質複合体として様々に知られる。多くの筋タンパク質、例えばα-ジストロブレビン、シンコイリン、シネミン、サルコグリカン、ジストログリカンおよびサルコスパンは、コスタメアにおいてジストロフィンと共局在化する。
【0014】
そのため、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、該タンパク質は、ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1、細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、1,4-α-グルカン-分枝酵素、ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼ、ジストロフィン、およびその組合せからなる群より選択される。
【0015】
いくつかの実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1を含む。特定の実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、UniProtKB登録番号Q93088により表される、NAPQIで修飾されたベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1を含む。
【0016】
他の実施態様において、APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾された細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを含む。特定の実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾された細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの細胞質型を含む。特定の代替実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、UniProtKB登録番号P17174により表される、NAPQIで修飾された細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを含む。
【0017】
またさらに他の実施態様において、APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾された1,4-α-グルカン-分枝酵素を含む。特定の実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、UniProtKB登録番号Q04446により表される、NAPQIで修飾された1,4-α-グルカン-分枝酵素を含む。
【0018】
他の実施態様において、APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼを含む。特定の実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、UniProtKB登録番号O95954により表される、NAPQIで修飾されたホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼを含む。
【0019】
更なる他の実施態様において、APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたジストロフィンを含む。特定の実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、UniProtKB登録番号P11532により表される、NAPQIで修飾されたジストロフィンを含む。
【0020】
上記のように、NAPQIは、タンパク質中のシステイン基に共有結合し、APAP-タンパク質付加物を形成する。そのため、本開示のAPAP-タンパク質付加物中のタンパク質は、NAPQIで修飾されたシステイン基を少なくとも1つ含む。さらに、APAP-タンパク質付加物中のタンパク質が2以上のシステイン残基を含むとき、タンパク質の1以上のシステイン残基は、NAPQIで修飾され得る。例えば、タンパク質の1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上のシステイン残基は、NAPQIで修飾され得る。
【0021】
本開示のAPAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾された完全長のタンパク質を含み得る。または、APAP-タンパク質付加物は、タンパク質のペプチド断片を含み得て、ここで該ペプチド断片はNAPQIで修飾される。例えば、分析のために試料を得る前にAPAP-タンパク質付加物が対象体においてペプチドに断片化され得る場合、APAP-タンパク質付加物は、タンパク質のペプチド断片を含み得る。さらに、試料を分析のために得て処理するとき(下記参照)、試料中のタンパク質は、分析のための試料処理の結果として断片化され得るか、または更なる分析のために意図的に断片化され得る。いくつかの実施態様において、APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾された完全長のタンパク質を含む。他の実施態様において、APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾された完全長のタンパク質のペプチド断片を含む。このような実施態様において、ペプチドがNAPQIで修飾された1以上のシステイン残基を含む限り、NAPQIで修飾された完全長のタンパク質のペプチド断片は、任意の長さであり得ると当業者に理解されるべきである。
【0022】
II. 方法
他の態様において、本開示は、対象体においてアセトアミノフェン-誘導性毒性を検出する方法を包含する。本開示の方法は、対象体から生体試料を得ること、および一定量の試料をインビトロで処理して、1以上のAPAP-タンパク質付加物を検出することを含み、ここで各APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1、細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、1,4-α-グルカン-分枝酵素、ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼまたはジストロフィンからなる群より選択される。
【0023】
(a) 対象体
本明細書で用いる用語「対象体」は、アセトアミノフェンを投与され得る生物体を意味する。適切な対象体としては、ヒト、家畜動物、コンパニオン・アニマル、実験動物および動物園の動物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様において、対象体は、げっ歯動物、例えばマウス、ラット、モルモットなどであり得る。別の一実施態様において、対象体は、家畜動物であり得る。適切な家畜動物の制限されない例としては、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラマおよびアルパカが挙げられ得る。またさらに別の一実施態様において、対象体は、コンパニオン・アニマルであり得る。コンパニオン・アニマルの制限されない例としては、ペット、例えばイヌ(dog)、ネコ(cat)、ウサギおよびトリが挙げられ得る。またさらに別の一実施態様において、対象体は、動物園の動物であり得る。本明細書で用いる「動物園の動物」は、動物園で見られ得る動物を意味する。該動物としては、ヒト以外の霊長動物、大型ネコ、オオカミおよびクマが挙げられ得る。特定の実施態様において、動物は、実験動物である。実験動物の制限されない例としては、げっ歯動物、イヌ科(canine)、ネコ科(feline)およびヒト以外の霊長動物が挙げられ得る。ある特定の実施態様において、動物は、げっ歯動物である。げっ歯動物の制限されない例としては、マウス、ラット、モルモットなどが挙げられ得る。好ましい実施態様において、対象体は、ヒトである。対象体は、新生児、青年、成体、中年または高年を含む、任意の年齢であり得る。
【0024】
対象体は、アセトアミノフェン-誘導性毒性に関連する症状を有していてもよく、または有していなくてもよい。特にアセトアミノフェン-誘導性毒性は、肝毒性であり得る。当業者は、病理学的なアセトアミノフェン-誘導性毒性が診断前またはアセトアミノフェン-誘導性毒性に関連する症状の発症前に始まるであろうと理解するだろう。いくつかの実施態様において、対象体は、アセトアミノフェン-誘導性毒性に関連する症状を有している。他の実施態様において、対象体は、アセトアミノフェン-誘導性毒性に関連する症状を有していない。またさらに他の実施態様において、対象体は、検出可能なアセトアミノフェン-誘導性毒性を有するが、アセトアミノフェン-誘導性毒性に関連するその他の症状を有していない。さらに他の実施態様において、対象体は、アセトアミノフェンを受けている。異なる実施態様において、対象体は、治療量以上の用量のアセトアミノフェンを受けている。代替実施態様において、対象体は、治療量以上の用量のアセトアミノフェンを受けた疑いがある。例えば、対象体は、治療量以上の用量のアセトアミノフェンを受けた結果として発症し得る病因不明の肝不全を有し得る。対象体におけるアセトアミノフェン-誘導性毒性の初期の診断は、病理学的なアセトアミノフェン-誘導性毒性に関連する症状の発症および/または進行を低減させ得る。
【0025】
アセトアミノフェン-誘導性肝毒性に関連する典型的な症状としては、摂食障害;悪心;嘔吐;右上腹部痛;AST、ALT、ビリルビンおよびPT(INR)の上昇;腎不全;膵炎;多臓器不全が挙げられ得るが、これらに限定されない。軽度のアセトアミノフェン中毒は、症状を生じないかもしれず、症状が存在するとき症状は通常摂取≧48時間後まで小さい。いくつかの実施態様において、アセトアミノフェン毒性の症状の重症度は、表Aに示すように4ステージを用いて数値化される。
【表1】
【0026】
(b) 試料の獲得
本開示の方法は、対象体から生体試料を得ることを部分的に含む。本明細書で用いる用語「生体試料」は、対象体から得た試料を意味する。アセトアミノフェン-タンパク質付加物を含む任意の生体試料が適切である。当該技術分野において多数のタイプの生体試料が知られている。適切な生体試料としては、毛髪、組織試料または体液が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、生体試料は、組織試料、例えば組織生検である。組織生検は、肝臓組織の生検であり得る。生検組織を固定し、パラフィンまたはプラスチックに包埋し、切断し得るか、または生検組織を凍結し、低温切片化し得る。別法として、生検組織を個々の細胞または外植片に処理し得るか、またはホモジェネート、細胞抽出物、膜画分またはタンパク質抽出物に処理し得る。他の実施態様において、試料は体液であり得る。適切な体液の制限されない例としては、血液、血漿、血清、尿、唾液、精液、汗、涙液、粘液、痰、組織溶解物または他の排泄物(例えば糞便)が挙げられる。特定の実施態様において、体液は尿である。別の特定の実施態様において、体液は血漿である。また別の特定の実施態様において、体液は血清である。さらにまた別の特定の実施態様において、体液は唾液である。異なる実施態様において、生体試料は毛髪である。当該液体は、「そのまま(as is)」用いられ得るか、細胞成分は液体から単離され得るか、またはタンパク質画分は標準方法を用いて当該液体から単離され得る。
【0027】
当業者に理解されるように、生体試料を採取する方法は、生体試料の性質および実施される分析の種類に応じて変化し得るだろう。当該技術分野において一般的に公知な任意の様々な方法が、生体試料を採取するために利用され得る。一般的に言えば、本発明に従ってアセトアミノフェン-タンパク質付加物を正確に検出でき、量を測定できるように、当該方法は、試料の完全性を維持することが好ましい。
【0028】
対象体からの生体試料は、新たに試料を採取することにより得られ得るか、または以前採取し貯蔵した試料から得られ得る。例えば、生体試料は、貯蔵・保存した血液試料の採取物から得られ得る。いくつかの実施態様において、試料は、新たに試料を採取することにより得られる。他の実施態様において、試料は、以前採取し貯蔵した試料から得られる。
【0029】
いくつかの実施態様において、試料中のAPAP-タンパク質付加物を検出するために対象体から1の試料を得る。別法として、APAP-タンパク質付加物を対象体から経時的に得た試料において検出し得る。そのような場合、2以上の試料を対象体から経時的に採取し得る。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16またはそれ以上の試料を対象体から経時的に採取し得る。いくつかの実施態様において、2、3、4、5または6の試料を対象体から経時的に採取する。他の実施態様において、6、7、8、9または10の試料を対象体から経時的に採取する。またさらに他の実施態様において、10、11、12、13または14の試料を対象体から経時的に採取する。他の実施態様において、14、15、16またはそれ以上の試料を対象体から経時的に採取する。
【0030】
経時的に2以上の試料を対象体から採取するとき、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の時間毎に試料を採取し得る。いくつかの実施態様において、0.5、1、2、3または4時間毎に試料を採取する。他の実施態様において、4、5、6または7時間毎に試料を採取する。またさらに他の実施態様において、7、8、9または10時間毎に試料を採取する。他の実施態様において、10、11、12またはそれ以上の時間毎に試料を採取する。さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の日毎に試料を採取し得る。いくつかの実施態様において、約6日毎に試料を採取する。いくつかの実施態様において、1、2、3、4または5日毎に試料を採取する。他の実施態様において、5、6、7、8または9日毎に試料を採取する。またさらに他の実施態様において、9、10、11、12またはそれ以上の日毎に試料を採取する。
【0031】
(c) タンパク質付加物の検出
本開示の方法は、対象体からの試料中の1以上のAPAP-タンパク質付加物を検出することを含む。本明細書で用いる用語「APAP-タンパク質付加物を検出すること」は、APAP-タンパク質付加物の存在を検出するか、または対象体からの試料中のAPAP-タンパク質付加物の存在および濃度もしくは量を検出するために、用いられ得る。特定の実施態様において、本開示の方法は、1以上のAPAP-タンパク質付加物を検出することを含み、ここで各APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1、細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、1,4-α-グルカン-分枝酵素、ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼまたはジストロフィンからなる群より選択される。
【0032】
本質的には、APAP-タンパク質付加物は、試料中の特定のタンパク質を検出するために当該技術分野において通常用いられる方法を用いて検出され得る。そのような場合、タンパク質付加物を検出する方法の制限されない例としては、クロマトグラフィー、質量分析、抗体に基づく検出法、またはその組合せが挙げられ得て、Ausubel et al. (2003) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY、またはSambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されているような方法であり得る。
【0033】
いくつかの実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、質量分析を用いて検出される。質量分析は、タンデム質量分析、四重極質量分析、MALDI-TOF質量分析、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、加速器質量分析(AMS)、熱イオン化質量分析(TIMS)およびスパーク光源質量分析法(SSMS)であり得る。特定の実施態様において、特定のタンパク質を検出でき、NAPQIの分子量により増加された特定のタンパク質を検出できる質量分析法を用いて、APAP-タンパク質付加物を検出する。特定のタンパク質を検出でき、NAPQIの分子量により増加された特定のタンパク質を検出できる質量分析法の制限されない例としては、MALDI-TOF質量分析および高分解能タンデム質量分析が挙げられる。典型的な実施態様において、MALDI-TOF質量分析は、APAP-タンパク質付加物を検出するために用いられる。別の典型的な実施態様において、高分解能タンデム質量分析は、APAP-タンパク質付加物を検出するために用いられる。
【0034】
他の実施態様において、本開示のAPAP-タンパク質付加物は、エピトープ結合剤に基づく方法を用いて試料において検出され得る。標的分子に応じた適切なエピトープ結合剤の制限されない例は、アプタマー、抗体、抗体断片、二本鎖DNA配列、修飾核酸、核酸模倣体、リガンド、リガンド断片、受容体、受容体断片、ポリペプチド、ペプチド、コエンザイム、コレギュレーター、アロステリック分子およびイオンからなる群より選択される反応剤を含む。
【0035】
いくつかの特定の代替実施態様において、エピトープ結合剤は抗体であり、APAP-タンパク質付加物は、抗体に基づく方法を用いて検出され得る。用いられ得る抗体の制限されない例としては、ポリクローナル抗体、腹水、Fab断片、Fab'断片、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、および抗体のエピトープ結合サイトを含む他の断片が挙げられる。
【0036】
タンパク質、例えば本開示のAPAP-タンパク質付加物を検出するのに用いられ得る抗体に基づく方法は、当該技術分野において公知である。APAP-タンパク質付加物を検出するための抗体に基づく方法の制限されない例としては、ウエスタンブロット、酵素免疫測定法(ELISA)もしくは他の固相免疫アッセイ、サンドイッチ免疫測定、ラジオイムノアッセイ、比濁法、電気泳動、免疫蛍光法、免疫ブロット法、フローサイトメトリー、免疫組織染色、アレイまたは他の方法が挙げられ得る(Ausubel, F. M. et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, including supplements through 2001参照)。
【0037】
一般には、アセトアミノフェン-タンパク質付加物を検出しその量を測定する抗体に基づく方法は、抗体とアセトアミノフェン-タンパク質付加物間で複合体の形成を可能にするのに有効な条件下でアセトアミノフェン-タンパク質付加物を含む一部またはすべての試料を抗アセトアミノフェン-タンパク質付加物抗体と接触させることを含む。典型的には、試料全体は必要とされず、当業者は繰り返し経時的に試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物を検出しその量を測定できる。当該方法は、溶液中で生じ得るか、または抗体もしくはアセトアミノフェン-タンパク質付加物が固体表面に固定され得る。適切な表面の制限されない例としては、マイクロタイタープレート、試験管、ビーズ、樹脂および他のポリマーが挙げられる。当業者に理解されるように、表面への付着は多種多様の方法で生じ得る。例えば、基質および抗体をこの2つのその後の付着のために化学官能基で誘導体化し得る。例えば、基質をアミノ基、カルボキシル基、オキソ基またはチオール基が挙げられるがこれらに限定されない化学官能基で誘導体化し得る。これらの官能基を用いて直接的にまたはリンカーを用いて間接的に抗体を付着し得る。抗アセトアミノフェン-タンパク質付加物抗体をまた基質に非共有結合的に付着し得る。例えば、ビオチニル化抗アセトアミノフェン-タンパク質付加物抗体を製造し得て、これは、ストレプトアビジンで共有結合的に被覆した表面に結合し、付着を生じ得る。別法として、光重合およびフォトリソグラフィなどの技術を用いて表面に抗体を合成し得る。
【0038】
複合体の形成ができるのに十分な時間有効な条件下で抗体と試料を接触させることは、一般的に、抗アセトアミノフェン-タンパク質付加物抗体組成物を試料に加えること、および抗アセトアミノフェン-タンパク質付加物抗体が存在する任意の抗原に結合するのに十分長い時間混合物をインキュベートすることを含む。この時間後、複合体を洗浄し得て、その後、当該技術分野において周知の任意の方法によって複合体を検出し、その量を測定する。抗体-ポリペプチド複合体の検出方法およびその量の測定方法は、一般的に標識またはマーカーの検出に基づく。本明細書で用いる用語「標識」は、抗体に付着する任意の基質、または物質が検出法により検出可能である他の基質材料を意味する。適切な標識の制限されない例としては、発光分子、化学発光分子、蛍光色素、蛍光性消光剤、有色分子、ラジオアイソトープ、シンチラント、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインG、抗体もしくはその断片、ポリヒスチジン、Ni
2+、Flagタグ、mycタグ、重金属、および酵素(アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼおよびルシフェラーゼを含む)が挙げられる。標識またはマーカーの検出に基づく抗体-ポリペプチド複合体の検出方法およびその量の測定方法は、当該技術分野において周知である。
【0039】
いくつかの実施態様において、抗体に基づく方法は、イムノアッセイである。イムノアッセイを多くの異なるフォーマットで実施できる。一般的に言うと、イムノアッセイを2つのカテゴリー:競合イムノアッセイおよび非競合イムノアッセイに分類できる。競合イムノアッセイにおいて、試料中の未標識被分析物は、標識被分析物と競合して抗体を結合する。未結合被分析物を洗い流し、結合被分析物を測定する。非競合イムノアッセイにおいて、抗体は標識され、被分析物は標識されない。非競合イムノアッセイは、1つの抗体(例えば捕捉抗体は標識される)または2つ以上の抗体(例えば標識されていない少なくとも1つの捕捉抗体、および標識されている少なくとも1つの「捕捉」または検出抗体)を用い得る。適切な標識は上に記載されている。
【0040】
他の実施態様において、抗体に基づく方法は、免疫ブロットまたはウエスタンブロットである。またさらに他の実施態様において、抗体に基づく方法は、フローサイトメトリーである。異なる実施態様において、抗体に基づく方法は、免疫組織染色(IHC)である。IHCは、そのままの組織試料中の抗原を検出および定量するために抗体を用いる。組織試料は、IHCによる検討のために調製された新鮮凍結および/またはホルマリン固定、パラフィン包埋(またはプラスチック包埋)した組織ブロックであり得る。IHCによる検討のために組織ブロックを調製する方法、およびIHCを実施する方法は、当該技術分野において周知である。
【0041】
代替実施態様において、抗体に基づく方法は、アレイである。アレイは、少なくとも1つのアドレスを含み、ここで、アレイの少なくとも1つのアドレスは、その上に抗アセトアミノフェン-タンパク質付加物抗体を配置する。アレイは、約1〜約数十万のアドレスを含み得る。アレイの構造に適切ないくつかの基質が、当該技術分野において知られており、当業者は、他の基質が技術の進歩に伴い利用可能になること理解するだろう。適切な基質もまた上に記載されている。いくつかの実施態様において、アレイは、アレイの1以上の空間的に定義されたアドレスに位置する基質に付着する少なくとも1つの抗アセトアミノフェン-タンパク質付加物抗体を含む。例えば、アレイは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つの抗アセトアミノフェン-タンパク質付加物抗体を含み得て、各抗体は、同一または異なるアセトアミノフェン-タンパク質付加物を認識し、各抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の空間的に定義されたアドレスにあり得る。
【0042】
APAP-タンパク質付加物を検出するのに用いられ得る抗体に基づく方法は、タンパク質に結合するNAPQIに対して特異性を有する任意の抗体を用いることを含む。タンパク質に結合するAPAPに対して特異性を有する抗体の制限されない例としては、アセトアミノフェン-システイン付加物を認識する抗体が挙げられる。このような抗体は、当該技術分野において公知であり、Bartolone et al.(1987;Biochem Pharmacol. 36:1193-1196), Roberts et al.(1987 J Pharmacol Exp Ther. 241:527-533), Bartolone et al.(1988 Biochem. Pharmacol. 37:4763-4774), Pumford et al.(1989, J Pharmacol Exp Ther 248: 190-196)、およびPumford et al.(1990, Toxicol Appl Pharmacol 104:521-532)に記載のとおりであってもよく、該開示は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0043】
タンパク質に結合するNAPQIに特異性を有する抗体は、タンパク質に結合するNAPQIに関連する任意のエピトープに対して特異的であり得る。いくつかの実施態様において、タンパク質に結合するNAPQIに特異性を有する抗体は、親薬物のアセトアミノフェンに対して特異的であるが、タンパク質に結合するアセトアミノフェンもまた認識し得る。他の実施態様において、タンパク質に結合するNAPQIに特異性を有する抗体は、遊離NAPQIに対して特異的であるが、タンパク質に結合するNAPQIもまた認識し得る。特定の実施態様において、タンパク質に結合するNAPQIに特異性を有する抗体は、タンパク質に共有結合するNAPQIに対して特異的であり得る。例えば、タンパク質に結合するNAPQIに特異性を有する抗体は、3-(システイン-S-イル)APAP(3-Cys-A)-タンパク質結合に対して特異的であり得るか、または-S-結合を介するAPAP環の炭素4におけるAPAP-タンパク質結合に対して特異的であり得る。典型的な実施態様において、タンパク質に結合するNAPQIに特異性を有する抗体は、3-(システイン-S-イル)APAP(3-Cys-A)-タンパク質結合を介したタンパク質に結合するNAPQIに対して特異的である。
【0044】
前記の実施態様の各々について、NAPQIにより修飾され得るタンパク質を検出前に最初に単離または濃縮し得る。例えば、液体クロマトグラフィーを用いて、沈殿、電気泳動またはアフィニティー精製によりNAPQIにより修飾され得るタンパク質を濃縮または単離し得る。いくつかの実施態様において、液体クロマトグラフィーを用いて、タンパク質を濃縮または精製する。他の実施態様において、電気泳動を用いて、NAPQIにより修飾され得るタンパク質を濃縮または精製する。
【0045】
特定の実施態様において、アフィニティー精製によりタンパク質を検出前に濃縮または精製する。特定の実施態様において、NAPQIにより修飾され得るタンパク質に特異性を有する抗体を用いて、アフィニティー精製によりタンパク質を濃縮または精製する。タンパク質のために試料を濃縮する方法、またはアフィニティー精製を用いてタンパク質を精製する方法は、当該技術分野において公知である。要するに、アフィニティー精製は、後の工程を容易にする固体支持体、例えばビーズ、培養プレートまたは膜と試料をインキュベートすることを包含する。固体支持体をNAPQIにより修飾され得るタンパク質に特異的な抗体で被覆し、固体支持体にNAPQIにより修飾され得るタンパク質を付着させ得る。別法として、NAPQIにより修飾され得るタンパク質に特異性を有する第1抗体と試料をインキュベートし得て、そして該第1抗体上に第2部位に対して特異性を有する第2抗体で被覆した固体支持体とインキュベートすることによりNAPQI-タンパク質-抗体複合体を単離し、固体支持体にタンパク質-抗体複合体を付着させ得る。その後、固体支持体に結合しない試料中の他の物質を洗浄することによりアセトアミノフェン-タンパク質付加物を精製または濃縮し得るか、または固体支持体が超常磁性ビーズである場合、強力磁界への引力により試料からビーズに付着した(抗原を発現する)NAPQIにより修飾され得るタンパク質を分離し得る。その後、タンパク質の濃縮または精製において、上記の方法のいずれかを用いて、濃縮または精製した試料中でAPAP-付加タンパク質を検出し得る。
【0046】
いくつかの典型的な実施態様において、本開示の方法は、NAPQIで修飾され得る1以上のタンパク質を捕捉および単離するためにタンパク質-特異的抗体を用いること、およびAPAP-タンパク質付加物を検出するためにタンパク質に結合するNAPQIに対して特異性を有する第2のイムノアッセイを用いることを包含する。他の典型的な実施態様において、本開示の方法は、NAPQIで修飾され得る1以上のタンパク質を捕捉および単離するためにNAPQI-特異的抗体を用いること、およびAPAP-タンパク質付加物を検出するためにNAPQIで修飾され得るタンパク質に対して特異性を有する第2のイムノアッセイを用いることを包含する。
【0047】
本開示はまた、同一生体試料中の多数のAPAP-タンパク質付加物を同時に測定し得ることも提供する。さらに本開示は、同一生体試料中のAPAP-タンパク質付加物および対応する非付加タンパク質を検出し得ることを提供する。すなわち、本開示は、大規模(すなわちプロテオミクス/メタボロミクス)におけるAPAP-付加タンパク質の合成およびクリアランスでの変化を確認するのに有用な方法を提供し、APAP-付加タンパク質を検出および測定する高感度の方法を提供する。
【0048】
いくつかの実施態様において、対象体からの試料中の総APAP-タンパク質付加物をまた検出し得る。試料中の総APAP-タンパク質付加物を検出する方法は、当該技術分野において公知である。いくつかの実施態様において、液体クロマトグラフィーを用いて試料中の総APAP-タンパク質付加物を検出する。液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)であり得る。HPLCの制限されない例としては、分配クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、置換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、バイオアフィニティークロマトグラフィーまたは水性順相クロマトグラフィーが挙げられ得る。総APAP-タンパク質付加物を検出するためにHPLCと共に用いられ得る限定されない検出法としては、電気化学検出、紫外もしくは可視分光法を用いる検出、蛍光、キラルの検出器、フォトダイオードアレイまたは質量分析に基づく検出法が挙げられる。特定の代替実施態様において、電気化学検出を備えたHPLC(HPLC-ECD)を用いて試料中の総APAP-タンパク質付加物を検出する。典型的な実施態様において、Muldrew et al., 2002, Drug Metabolism and Disposition 30:446-451(該開示は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載のようにHPLC-ECDを用いて総APAP-タンパク質付加物を検出する。
【0049】
(d) 対象体におけるアセトアミノフェン-誘導性毒性の検出
ある態様において、本発明は、対象体から得た生体試料中の測定されたアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量に基づいて対象体を分類する方法を提供する。当該方法は、一般的に(i)対象体から生体試料を得て、試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を測定すること、(ii)試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を基準値と比較すること、および(iii)試料中の測定されたアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量に基づいて、高量または低量のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を有するとして対象体を分類することを含む。上記方法において、1以上のアセトアミノフェン-タンパク質付加物を測定し得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアセトアミノフェン-タンパク質付加物を測定し得る。対象体から生体試料を得て試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を測定するための方法は、上に詳細に記載されている。好ましい実施態様において、生体試料は、血液、血漿、血清、尿および唾液からなる群より選択される生体液である。
【0050】
いくつかの実施態様において、アセトアミノフェン-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、ここで、当該NAPQIで修飾されたタンパク質は、ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1、細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、1,4-α-グルカン-分枝酵素、ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼまたはジストロフィンからなる群より選択される。一実施態様において、NAPQIで修飾されたベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1を検出する。別の一実施態様において、NAPQIで修飾された細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを検出する。別の一実施態様において、NAPQIで修飾された1,4-α-グルカン-分枝酵素を検出する。更なる実施態様において、NAPQIで修飾されたホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼを検出する。またさらに別の一実施態様において、NAPQIで修飾されたジストロフィンを検出する。
【0051】
他の実施態様において、2以上のAPAP-タンパク質付加物を検出し、ここで各APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1、細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、1,4-α-グルカン-分枝酵素、ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼまたはジストロフィンからなる群より選択される。例えば、2、3、4または5つのAPAP-タンパク質付加物を検出し、ここで各APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、ここで該タンパク質は、ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1、細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、1,4-α-グルカン-分枝酵素、ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼまたはジストロフィンからなる群より選択される。一実施態様において、2つのAPAP-タンパク質付加物を検出する。別の一実施態様において、3つのAPAP-タンパク質付加物を検出する。またさらに別の一実施態様において、4つのAPAP-タンパク質付加物を検出する。別の一実施態様において、5つのAPAP-タンパク質付加物を検出する。
【0052】
いくつかの実施態様において、1以上のAPAP-タンパク質付加物を検出し、ここで当該APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、ここで1以上の当該NAPQIで修飾されたタンパク質は、表Bに記載されるとおりである。
【表2】
【0053】
試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を基準値と比較する。当該技術分野において公知の適切な基準値のいずれかを用い得る。例えば、適切な基準値は、正常な肝機能を有する同一種の対象体または対象体群から得た生体液試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量であり得る。別の例において、適切な基準値は、検出不可能なアセトアミノフェン-誘導性毒性を有する同一種の対象体または対象体群から得た生体液試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量であり得る。別の例において、適切な基準値は、AST、ALT、ビリルビン、INRまたは他の非特異的な肝機能のバイオマーカーによって測定されるようなアセトアミノフェン-誘導性毒性を有する同一種の対象体または対象体群から得た生体液試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量であり得る。例えば、適切な基準値は、ALTレベル>1000IUによって測定されるようなアセトアミノフェン-誘導性毒性を有する同一種の対象体または対象体群から得た生体試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量であり得る。別の例において、適切な基準値は、当該技術分野において公知の方法により決定されるようなアッセイのバックグランドシグナルであり得る。別の例において、適切な基準値は、同一対象体から得られる標準試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量の測定値であり得る。標準試料は、試験試料として同じ種類の生体液を含み、肝機能が正常であったとき対象体から得られるか、または得られなくてもよい。当業者は、対象体が他の点で健康なとき対象体から標準試料を得ることが必ずしも可能または望ましいとは限らないことを理解するだろう。例えば急性期において、標準試料は、診察時に対象体から得られた最初の試料であり得る。別の例において、治療の有効性をモニタリングするとき、標準試料は、治療開始前の対象体から得られた試料であり得る。該例において、対象体は、アセトアミノフェン-誘導性毒性の疑いを有し得るが、アセトアミノフェン-誘導性毒性の他の症状は有し得ないか、または対象体は、アセトアミノフェン-誘導性毒性の疑いおよびアセトアミノフェン-誘導性毒性の1以上の他の症状を有し得る。特定の実施態様において、適切な基準値は、以前に他の方法により決定されていた閾値であり得る。例えば、適切な基準値は、電気化学検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC-EC)により測定されるようなアセトアミノフェン-タンパク質付加物1 nmol/mlに対応する値であり得る。このような実施態様において、1以上のAPAP-タンパク質付加物の基準値は、各APAP-タンパク質付加物について決定され得ると当業者に理解されるべきである。
【0054】
本発明によれば、試料中の測定されるアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量に基づいて対象体を分類し得る。対象体から得られる生体液の試料中の測定されるアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量に基づく対象体の分類は、アセトアミノフェン-誘導性毒性を有する対象体の特定のために用いられ得る。用語「アセトアミノフェン-誘導性毒性」を以下に詳細に記載する。一般的に言えば、対象体は、基準値と比較して高量または低量のアセトアミノフェン-タンパク質付加物を有するとして分類され得て、ここで、高量のアセトアミノフェン-タンパク質付加物は基準値を超える量であり、低量は基準値と等しい量またはそれ未満の量である。好ましい実施態様において、高量のアセトアミノフェン-タンパク質付加物を有するとして対象体を分類するために、基準値と比較した試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量は、少なくとも5%多いものであり得る。例えば、試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量は、基準値より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%多いものであり得る。他の実施態様において、基準値と比較して対象体から得た生体液の試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を1倍超増加させ得る。例えば、基準値と比較して試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍または少なくとも5倍増加させ得る。別法として、基準値と比較して試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を少なくとも5.5倍、少なくとも6倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9倍、少なくとも9.5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍、少なくとも45倍、または少なくとも50倍増加していてよい。
【0055】
別の一態様において、本発明は、対象体においてアセトアミノフェン-誘導性毒性を検出する方法を提供する。本明細書で用いる用語「アセトアミノフェン-誘導性毒性」は、アセトアミノフェンによる肝臓への損傷または破壊を意味する。過剰摂取したとき、および治療域内で摂取したときでさえ、アセトアミノフェンは肝臓を損傷し得る。肝臓への損傷は、薬物自体によらないが、肝臓中のシトクロムP-450酵素により産生される毒性代謝物(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミンNAPQIまたはNABQI)による。過剰摂取では、大量のNAPQIが生成され、これは解毒作用を圧倒し、肝細胞損傷を引き起こす。肝臓傷害の危険性は、摂取用量、アルコールまたは他の薬物の同時摂取、摂取と解毒との間隔などを含むいくつかの要因に影響される。肝臓に有毒な用量は、人によって全く異なり、慢性アルコール中毒者ではより少なくなる。当該技術分野において公知な肝毒性の原因は多数あり、外傷、新生物疾患、細菌もしくはウイルス感染症、または毒素、毒物、環境物質もしくは他の物質への曝露が挙げられ得るが、これらに限定されない。肝機能のバイオマーカーは、当該技術分野において周知である。肝臓傷害バイオマーカーの制限されない例としては、AST、ALT、ビリルビンおよびPT(INR)の上昇が挙げられる。しかしながら、生体液中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の増加は、アセトアミノフェンが肝臓傷害を引き起こしたかまたはそれに寄与したことを証明し得る。
【0056】
いくつかの実施態様において、対象体からの試料中の検出される1以上のAPAP-タンパク質付加物の濃度が基準値を超えるとき、アセトアミノフェン-誘導性毒性を検出する。例えば、試料中の検出される1、2、3、4または5個の本開示のAPAP-タンパク質付加物の濃度が基準値を超えるとき、アセトアミノフェン-誘導性毒性は診断される。一実施態様において、試料中の検出される1個のAPAP-タンパク質付加物の濃度が基準値を超えるとき、アセトアミノフェン-誘導性毒性を検出する。別の一実施態様において、試料中の検出される2個のAPAP-タンパク質付加物の濃度が基準値を超えるとき、アセトアミノフェン-誘導性毒性を検出する。またさらに別の一実施態様において、試料中の検出される3個のAPAP-タンパク質付加物の濃度が基準値を超えるとき、アセトアミノフェン-誘導性毒性を検出する。別の一実施態様において、試料中の検出される4個のAPAP-タンパク質付加物の濃度が基準値を超えるとき、アセトアミノフェン-誘導性毒性を検出する。更なる実施態様において、試料中の検出される5個のAPAP-タンパク質付加物の濃度が基準値を超えるとき、アセトアミノフェン-誘導性毒性を検出する。いくつかの実施態様において、APAP-タンパク質付加物の濃度が基準値を超えるとき、アセトアミノフェン-誘導性毒性を検出すし、ここで各APAP-タンパク質付加物は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、ここで当該タンパク質は表Bに記載されるとおりである。
【0057】
アセトアミノフェン-誘導性毒性の検出に加えて、本開示の方法はアセトアミノフェンでの処置およびアセトアミノフェン毒性の様々な特徴を診断するのに用いられ得ることもまた当業者に理解されるべきである。本開示の方法は、処置へのコンプライアンスを決定するために対象体によるアセトアミノフェン摂取のレベルを決定するのに用いられ得る。別法として、本開示の方法は、アセトアミノフェン毒性の重症度を決定するのに用いられ得る。例えば本開示の方法は、アセトアミノフェンの正常な準毒性水準を決定し、これによってアセトアミノフェン毒性を排除するのに用いられ得る。本開示の方法はまた、消散するだろう予後良好なアセトアミノフェン毒性を診断するのに用いられ得る。別法として、本開示の方法は、死亡または肝臓移植の必要性を引き起こすだろう予後不良なアセトアミノフェン毒性を診断するのに用いられ得る。本開示の方法はまた、慢性アセトアミノフェン曝露を決定するのに用いられ得る。本明細書で用いる用語「慢性アセトアミノフェン曝露」は、例えば治療量以上の用量のアセトアミノフェンの摂取または徐放性アセトアミノフェン製剤の使用による、長期間にわたる繰り返し治療量以上のアセトアミノフェンへの曝露によって生じるアセトアミノフェン毒性を表すのに用いられ得る。さらに本開示の方法は、急性アセトアミノフェン曝露を決定するのに用いられ得る。本明細書で用いる用語「急性アセトアミノフェン曝露」は、単回の大用量のアセトアミノフェンの摂取によって生じるアセトアミノフェン毒性を表すのに用いられ得る。
【0058】
本開示の方法は、アセトアミノフェン毒性を診断する他の方法、または他の臨床診断方法と組み合わせて用いられ得る。
【0059】
アセトアミノフェン-誘導性毒性の診断の検出により、アセトアミノフェン-誘導性毒性のために当該技術分野において標準な方法によって対象体を処置し得る。該処置方法は、アセトアミノフェン-誘導性毒性の重症度に依存し得る。アセトアミノフェンの過剰摂取の処置は、主として消化管除染および支援的ケアからなる。対象体は、活性炭、N-アセチルシステイン(NAC)を投与され得るか、または深刻な場合、肝臓移植の必要が生じ得る。
【0060】
各態様について、当該方法は、一般的に(i)対象体から生体試料を得ること、(ii)試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を測定すること、および(iii)試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を基準値と比較することを含む。基準値と比較してより大量な試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物は、アセトアミノフェン-誘導性毒性を示す。アセトアミノフェン-タンパク質付加物の量は、定性的、半定量的または定量的な測定値であり得る。適切なアセトアミノフェン-タンパク質付加物は、生体試料中のアセトアミノフェン-タンパク質付加物の量を測定するための方法のように上記載される。好ましい実施態様において、生体試料は、血液、血漿、血清、尿および唾液からなる群より選択される生体液である。
【0061】
本開示の方法はまた、対象体からの試料におけるAPAP-タンパク質付加物のプロファイルを決定するのに用いられ得る。本明細書で用いる「APAP-タンパク質付加物のプロファイル」は、対象体からの試料における1以上のAPAP-タンパク質付加物のアイデンティティおよび/または濃度、または対象体からの試料における経時的なAPAP-タンパク質付加物のアイデンティティおよび/または濃度の変動を表すのに用いられ得る。いくつかの実施態様において、APAP-タンパク質付加物のプロファイルは、1以上のAPAP-タンパク質付加物を含み得て、ここで1以上のAPAP-タンパク質付加物の各々は、NAPQIで修飾されたタンパク質を含み、ここで当該タンパク質は、表Bに記載されるとおりである。
【0062】
例えば、本開示の方法は、APAP毒性と相関する1以上のAPAP-タンパク質付加物のアイデンティティおよび濃度を含むデータベースと対象体からの試料におけるAPAP-タンパク質付加物のプロファイルを比較すること、1以上のAPAP-タンパク質付加物のアイデンティティおよび濃度が試料における少なくとも1つのAPAP-タンパク質付加物のプロファイルのアイデンティティおよび濃度とマッチするデータベースのマッチするエントリを特定すること、ならびにマッチするエントリの特定のアセトアミノフェン毒性を含むアセトアミノフェン毒性を決定することを含み得る。
【0063】
(定義)
他に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、当業者に普通に解されるのと同じ意味を有する。すべての特許、出願、公表された出願および他の刊行物は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。本明細書中の用語について複数の定義がある場合、他に断らない限りこのセクション中のものを優先する。
【0064】
本開示を実施する際に、分子生物学、微生物学および組み換えDNAにおける多くの従来技術が用いられ得る。これらの技術は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, 1997(F.M. Ausubel ed.);Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985(D. N. Glover ed.);Oligonucleotide Synthesis, 1984(M.L. Gait ed.);Nucleic Acid Hybridization, 1985(Hames and Higgins eds.);Transcription and Translation, 1984(Hames and Higgins eds.);Animal Cell Culture, 1986(R.I. Freshney ed.);Immobilized Cells and Enzymes, 1986(IRL Press);Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning;the series, Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.);Gene Transfer Vectors for Mammalian cells, 1987(J.H. Miller and M.P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory);およびMethods in Enzymology, Vol. 154 and Vol. 155(Wu and Grossman, and Wu, eds., respectively)において説明される。
【0065】
用語「APAP付加物」または「APAP-タンパク質付加物」は、NAPQIで修飾されたタンパク質を表すのに区別なく用いられ得て、ここで該タンパク質は、ベタイン-ホモシステイン-S-メチルトランスフェラーゼ1、細胞質型アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、1,4-α-グルカン-分枝酵素、ホルムイミドイルトランスフェラーゼ-シクロデアミナーゼまたはジストロフィンからなる群より選択される。
【0066】
用語「治療量以上の用量のAPAP」または「中毒量のAPAP」は、対象体において毒性(例えば、肝損傷)を生じ得る過剰量のAPAPを表すのに区別なく用いられ得る。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、本開示の好ましい実施態様を実証するために含まれている。以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において十分機能する本発明者によって発見された技術を表して、それ故にその実施のための好ましい様式を構成するとみなされ得ると当業者に理解されるべきである。しかしながら、本開示に照らして、当業者は、本開示の精神および範囲から外れずに、開示される特定の実施態様において多くの改変がなされ得て、さらに同様または類似の結果を得られ得ること理解すべきである。
【0068】
実施例1 顕著にアセトアミノフェン毒性を有する患者からの血清中のNAPQIにより修飾されたタンパク質の同定
アセトアミノフェン(APAP)は、今日世界中で疼痛および発熱の処置のために用いられる最も一般的な薬物であり、米国において急性肝不全の主要原因でもある。APAP毒性の初期は、よく特徴付けられており、化学上反応的な代謝物であって細胞タンパク質に共有結合するN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)への親薬物の生体内変化を含む。肝臓のグルタチオン(GSH)のシステイニルチオールに結合することによりNAPQIを無毒化する。有毒なAPAP曝露において、GSHの蓄えは消費され、細胞タンパク質のシステイニルチオールに結合するNAPQIの量が増加し、様々なAPAP-タンパク質付加物を生成する。毒性は、肝細胞の溶解および血清への修飾タンパク質の放出で生じる。ヒトにおいてNAPQIにより修飾されたタンパク質は、これまで報告されていなかった。
【0069】
この実施例において、アセトアミノフェンの過剰摂取患者からの血清中の特定のアセトアミノフェン-付加タンパク質の同定を示す。最新の付加物に焦点を置いたプロテオームアプローチは、治療用量のAPAPを受けている患者およびAPAPの過剰摂取を受けた患者においてAPAP毒性の特定の「第2世代」バイオマーカーを特定するために用いられた。新しく示されたAPAP毒性のメタボロームマーカーおよび確立された肝臓毒性の指数と比較する、特定のAPAP-タンパク質付加物の同定およびこれらの特定の付加物の試験は、患者におけるAPAPの危険性および安全性の今後の評価の向上のための基礎を築き得る。
【0070】
顕著にアセトアミノフェン毒性を有する患者からの血清においてNAPQIにより修飾されたタンパク質(付加タンパク質)を明確に決定するために、タンデム質量分析(MS/MS)に基づくプロテオーム検討を用いた。これらのタンパク質を表1に示す。表1はまた、各タンパク質における少なくとも1つのシステイン部位の修飾を示す。
【表3】
【0071】
アセトアミノフェンで修飾されたタンパク質は、アセトアミノフェンに曝露させていない個体からのコントロールの血清において生じなかった。
【0072】
実施例2 NAPQI付加タンパク質の検出
特定のNAPQI修飾タンパク質、例えば実施例1に記載のタンパク質が特異的に検出され得るかを試験するために、合成的に製造したNAPQIとオバルブミン(OA)およびウシ血清アルブミン(BSA)タンパク質を反応させ、MS/MSを用いるプロテオミクス評価を実施した。MS/MSプロテオーム解析は、NAPQI(149)の分子量により増加されたタンパク質の分子量を決定でき、特定の1または複数の修飾部位を決定した。MS/MSプロテオーム解析はまた、2以上のNAPQI(149n、nはタンパク質に付加したNAPQIの数である)の分子量により増加されたタンパク質の分子量を決定できた。さらに、発明者により開発された抗付加抗体によって特異的に修飾された付加タンパク質(OA-APAPおよびBSA-APAP)を認識し、それ故にイムノアッセイによって定量できた。
【0073】
実施例3 アセトアミノフェン毒性のためのイムノアッセイの開発
実施例1に記載するNAPQI付加タンパク質の同定は、アセトアミノフェン毒性のための特定のイムノアッセイの開発を可能にし得る。本開示は、1または複数の付加タンパク質を捕捉および単離するためのタンパク質特異的抗体の使用、ならびにタンパク質の付加を検出するためのアセトアミノフェン-システイン付加物(付加物全体)に特異的な第2のイムノアッセイの利用に基づき得る。
【0074】
種々の毒性重症度間の特定のタンパク質付加物の発生頻度を理解するために、ヒトのアセトアミノフェンの過剰摂取および曝露試料を分析し得る。これを達成するために、付加タンパク質を抗体/アフィニティー単離し、それ故にヒト試料からの特定のタンパク質について濃縮する更なる方法を開発し得る。例えば、特定のタンパク質を捕捉するために特定のタンパク質への(常磁性ビーズまたは他の固相マトリックス上)固相抗体を用いるアッセイは、アセトアミノフェンのC3からシステイン残基のSへの生理的に形成される結合によってタンパク質に結合するAPAPに対して特異性を有する抗体を用いて付加タンパク質の検出を実施および完了し得る。本質的に、当該アッセイは、付加タンパク質を2回調べることを含み得る:1) 特異的な抗タンパク質抗体による捕捉、および2) ハプテンタンパク質結合に対して特異的な抗体での検出。市販の抗タンパク質抗体、または本明細書に記載の使用に対して特異的に設計された新しく開発した抗体が用いられ得る。別法として、当該アッセイは、ハプテンタンパク質結合に対して特異的な抗体で捕捉し、タンパク質に特異的な抗体で検出することによって付加タンパク質を調べることを含み得る。