特許第6496966号(P6496966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496966運航状況表示システム及び運航状況表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496966
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】運航状況表示システム及び運航状況表示方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20190401BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20190401BHJP
   G01S 13/91 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   G08G5/00 A
   B64F1/36
   G01S13/91 200
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-218193(P2014-218193)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-85613(P2016-85613A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅志
【審査官】 岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−304526(JP,A)
【文献】 特表2013−528854(JP,A)
【文献】 特開平09−091600(JP,A)
【文献】 特開昭63−118679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/00
B64F 1/36
G01S 13/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元空間において、空港及び当該空港の周辺の3次元画像を生成する3次元画像処理部と、
外部から供給される航空機の空港範囲の飛行情報に基づき、前記3次元空間における前記航空機の航空機飛行画像を生成する飛行画像生成部と、
外部から供給される前記航空機の滑走路への進入情報に基づき、前記3次元空間における前記航空機の航空機進入画像を求める進入画像生成部と、
前記3次元空間における前記航空機の旋回経路及び進入経路の飛行経路画像を生成する飛行経路画像生成部と、
前記3次元空間に対し、前記航空機飛行画像と、前記航空機進入画像と前記飛行経路画像とを合成し、前記航空機の運航状況画像を生成する画像合成部と、
前記運航状況画像を表示部に対して表示する画像表示部と
を備えることを特徴とする運航状況表示システム。
【請求項2】
前記航空機の飛行情報が、着陸待機の旋回における空港近辺における当該航空機の位置、飛行方向及び高さであり、
前記航空機の着陸時の位置情報が、前記航空機が滑走路に着陸する際の進入位置、進入角度及び進入速度である
ことを特徴とする請求項1に記載の運航状況表示システム。
【請求項3】
3次元画像処理部が、3次元空間において、空港及び当該空港の周辺の3次元画像を生成する次元画像理過程と、
飛行画像生成部が、外部から供給される航空機の空港範囲の飛行情報に基づき、前記3次元空間における前記航空機の航空機飛行画像を生成する飛行画像生成過程と、
進入画像生成部が、外部から供給される前記航空機の滑走路への進入情報に基づき、前記3次元空間における前記航空機の航空機進入画像を求める進入画像生成過程と、
飛行経路画像生成部が、前記3次元空間における前記航空機の旋回経路及び進入経路の飛行経路画像を生成する飛行経路画像生成過程と、
画像合成部が、前記3次元空間に対し、前記航空機飛行画像と、前記航空機進入画像と前記飛行経路画像とを合成し、前記航空機の運航状況画像を生成する画像合成過程と、
画像表示部が、前記運航状況画像を表示部に対して表示する画像表示過程と
を含むことを特徴とする運航状況表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運航状況表示システム及び運航状況表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空港管制においては、航空機の滑走路への進入を監視する精測進入レーダ(PAR:precision approach radar )、空港上空を飛行する航空機を監視する空港監視レーダ(ASR:airport surveillance radar)などのレーダ装置が用いられている。
精測進入レーダは、滑走路への最終進入状態にある管制対象の航空機の進入コースおよび進入角からのずれ、滑走路における着陸地点からの距離を地上で測定し、航空機を誘導するためのレーダである。
空港監視レーダは、空港周辺空域を飛行する航空機の進入および出発管制を行うための一次レーダである。この空港監視レーダのアンテナは、空港上空及び空港周辺を飛行する航空機の探索を行うために適した場所に設置されている。空港監視レーダは、このアンテナを用いて、空港上空及び空港周辺を飛行する航空機の距離および方向の探知を行う。
【0003】
また、空港監視レーダは、航空機の探索処理とともに、ビームの所定の走査速度(例えば、約4秒/回転)でアンテナを回転させながら、各方向に対して航空機への問い合わせ信号等を発する。そして、空港監視レーダは、航空機から、上記問い合わせ信号の応答信号等を受信する。管制センターでは、この空港監視レーダの受信信号等を解析することで、航空機の方位、距離、識別コード、高度などの情報を求める。以下、空港監視レーダによって得られる航空機の方位、距離、識別コード、高度などの情報を、航空機についての管制データとする。
【0004】
空港管制においては、空港監視レーダ及び精測進入レーダの各々の担当者が、上記管制データに基づいて、それぞれ異なる表示画面を観察して、航空機の管制制御を行っている(例えば、特許文献1参照)。
また、空港管制において、空港における航空機の離発着に関する管制において、各管制官の取り纏め(マネージメント)を統括者が行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−272642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1などの従来の手法においては、空港監視レーダのみを3次元画像データとして表示するものであり、精測進入レーダの画像については3次元画像が提供されない。
このため、特許文献1においては、空港監視レーダの監視画面に精測進入レーダの画像が表示されないため、管制を行っていない第3者である統括者が上述した3次元画像によって管制における航空機の運航状況の全体的な流れを把握することができず、精測進入レーダ及び空港監視レーダの各々の担当者と航空機の飛行状況を共有することができない。
すなわち、特許文献1においては、空港監視レーダの監視画面と精測進入レーダの監視画面とで別々に航空機の運航を確認する必要がある。このため、統括者は、精測進入レーダ及び空港監視レーダの双方の情報を統合して運航状態を判断することが困難であり、各管制官を取り纏めて空港における航空機の運航を管理することが難しい。
【0007】
また、特許文献1においては、表示される3次元画像が航空機と地形との画像のみであるため、空港周辺空域に対して予め設定された飛行経路(後述)を、管制官の指示に従い正確に航空機が飛行しているか否かの判定を、管制官自身が行うことができない。すなわち、航空機が予め設定された飛行経路の通りに飛行しているか否かは、2次元画像において管制官及び統括者の経験により判定される。
同様に、管制官となるための教育を受ける学生の訓練において、特許文献1における航空機のみの3次元画像を用いた場合、自身の指示に対応した飛行機の飛行についてのイメージは掴み難い。すなわち、飛行経路に対して航空機が、学生の指示通り飛行しているか否かが不明のため、学生は自身の指示が適切か否かの確認を行うことができない。このため、航空機の飛行に対する指示の結果の3次元画像におけるイメージを学生は持つことが難しい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、統括者と、精測進入レーダ及び空港監視レーダの各々の担当者が精測進入レーダ及び空港監視レーダの双方の情報を共有し、統括者が各管制官を取り纏めて空港における航空機の運航を管理することができ、かつ管制官となる学生の航空機管制の処理における航空機の飛行状況を3次元画像のイメージから容易に持つことができる運航状況表示システム及び運航状況表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の運航状況表示システムは、3次元空間において、空港及び当該空港の周辺の3次元画像を生成する3次元画像処理部と、外部から供給される航空機の空港範囲の飛行情報に基づき、前記3次元空間における前記航空機の航空機飛行画像を生成する飛行画像生成部と、外部から供給される前記航空機の滑走路への進入情報に基づき、前記3次元空間における前記航空機の航空機進入画像を求める進入画像生成部と、前記3次元空間における前記航空機の旋回経路及び進入経路の飛行経路画像を生成する飛行経路画像生成部と、前記3次元空間に対し、前記航空機飛行画像と、前記航空機進入画像と前記飛行経路画像とを合成し、前記航空機の運航状況画像を生成する画像合成部と、前記運航状況画像を表示部に対して表示する画像表示部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の運航状況表示システムは、前記航空機の飛行情報が、着陸待機の旋回における空港近辺における当該航空機の位置、飛行方向及び高さであり、前記航空機の着陸時の位置情報が、前記航空機が滑走路に着陸する際の進入位置、進入角度及び進入速度であることを特徴とする。
【0011】
本発明の運航状況表示方法は、3次元画像処理部が、3次元空間において、空港及び当該空港の周辺の3次元画像を生成する次元画像理過程と、飛行画像生成部が、外部から供給される航空機の空港範囲の飛行情報に基づき、前記3次元空間における前記航空機の航空機飛行画像を生成する飛行画像生成過程と、進入画像生成部が、外部から供給される前記航空機の滑走路への進入情報に基づき、前記3次元空間における前記航空機の航空機進入画像を求める進入画像生成過程と、飛行経路画像生成部が、前記3次元空間における前記航空機の旋回経路及び進入経路の飛行経路画像を生成する飛行経路画像生成過程と、画像合成部が、前記3次元空間に対し、前記航空機飛行画像と、前記航空機進入画像と前記飛行経路画像とを合成し、前記航空機の運航状況画像を生成する画像合成過程と、画像表示部が、前記運航状況画像を表示部に対して表示する画像表示過程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、統括者と、精測進入レーダ及び空港監視レーダの各々の担当者が精測進入レーダ及び空港監視レーダの双方の情報を共有し、統括者が各管制官を取り纏めて空港における航空機の運航を管理することができ、かつ管制官となる学生の航空機管制の処理における航空機の飛行状況を3次元画像のイメージから容易に持つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る運航状況表示システム1の構成例を示す概略ブロック図である。
図2】表示データベース2に書き込まれている表示テーブルの構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態による運航状況表示システム1が航空機が飛行する3次元空間を任意の視点から観察した表示画像を表示装置3に表示した表示画面の図である。
図4】本実施形態による運航状況表示システム1が航空機が飛行する3次元空間を任意の視点から観察した表示画像を表示装置3に表示した表示画面の図である。
図5】本実施形態による運航状況表示システム1の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る運航状況表示システム1の構成例を示す概略ブロック図である。図1において、運航状況表示システム1は、データ入力部11、3次元画像処理部12、飛行経路画像生成部13、飛行画像生成部14、進入画像生成部15、画像合成部16、制御部17及び画像表示部18を備えている。
【0015】
運航状況表示システム1は、空港周辺の気象情報と、航空機の飛行計画を示す飛行計画情報と、空港及び空港近辺の航空機の位置情報との各々を、ARTS(automated radar terminal system)情報処理部4から入力する。ここで、天気情報は、風速、風向、温度、湿度、晴、曇、雨、雪などの気象に関係する要素を統合した大気の情報を示している。飛行計画(フライトプラン)は、航空機が飛行を行うに際して航空官署(航空交通管制機関等)に通報する飛行予定であり、各航空機の航空機識別情報と、発着時間と、発着空港などに関する計画を示している。位置情報とは、航空機の緯度経度を示している。なお、航空機の高度については、航空機それぞれから供給される。本実施形態においては、位置情報には航空機の高度も含むものとして説明する。
【0016】
飛行計画情報処理部5は、対応する空港に発着する航空機の飛行計画を、それぞれの航空機の航空機識別情報により管理している。例えば、図示しない飛行計画データベースを有しており、この飛行計画データベースには、航空機識別情報に対応して、空港における発着時間、発着空港などの情報が予め書き込まれて記憶されている。また、飛行計画情報処理部5は、この飛行計画をARTS情報処理部4に対して出力する。
【0017】
空港気象情報処理部6は、インターネットなどを介して得られる気象情報、及び空港における温度計、湿度計及び風速計などにより測定された温度、湿度、風向や風速などを周期的(例えば、1分毎)に集計する。また、空港気象情報処理部6は、この集計した天気情報をARTS情報処理部4に対して出力する。
ARTS情報処理部4は、飛行計画情報処理部5から上記飛行計画情報を、空港気象情報処理部6から上記気象情報を、また空港監視レーダ部7から航空機の位置情報を入力する。そして、ARTS情報処理部4は、上記飛行計画情報、上記気象情報、航空機の位置情報の各々を、運航状況表示システム1に対して出力する。
【0018】
空港監視レーダ部7は、空港において滑走路に着陸する航空機を検出し、滑走路に対する進入経路における航空機の位置を測定する。
空港監視レーダ部7は、例えば、左右方向及び上下方向に対して、精測進入レーダのビームの放射方向を所定の角度の放射角(方位角、仰角)の範囲を稼働し、精測進入レーダの放射点を頂点とする四角錐形状の検知範囲において、滑走路に進入する進入経路における航空機の緯度経度及び高さを検出する。空港監視レーダ部7は、検出した航空機の緯度経度及び高さを、運航状況表示システム1に対して出力する。
【0019】
データ入力部11は、上記飛行計画情報、上記天気情報、航空機の位置情報の各々をARTS情報処理部4から入力し、空港監視レーダ部7が空港周辺空域において検出した航空機の緯度経度及び高さを、この空港監視レーダ部7から入力する。
3次元画像処理部12は、3次元空間において空港及び空港周辺における地形の3次元画像を生成する。この3次元画像は、空港を含む空港周辺の所定の高さの上空までの3次元空間の範囲における画像である。この3次元空間は、緯度経度の2次元平面に対して、高さ方向の軸を有している。
【0020】
飛行経路画像生成部13は、滑走路に着陸する際に航空機が進入する、飛行計画に含まれる予め空港毎に設定されている経路の進入経路を、3次元空間における3次元画像として生成する。また、飛行経路画像生成部13は、進入経路に進入する航空機が順番をまって旋回飛行を行う旋回経路を、3次元空間における3次元画像として生成する。飛行経路画像生成部13は、進入経路及び旋回経路の3次元画像からなる飛行経路画像を、所定の色の線分で所定の位置と高さとで、3次元空間に形成する。飛行経路画像生成部13は、例えば、進入経路を赤色、旋回経路を青色などで、経路毎に色分けして3次元空間に描く。
【0021】
飛行画像生成部14は、ARTS情報処理部4から供給される航空機の位置情報と、航空機から通信により供給される高さの情報との飛行情報から、3次元空間における航空機の座標位置である飛行位置を求め、求めた飛行位置に航空機の3次元画像である航空機飛行画像を3次元空間に対して描画する。
進入画像生成部15は、空港監視レーダ部7から供給される航空機の緯度経度及び高さの情報を含む進入情報から、3次元空間における航空機の座標位置である進入位置を求め、求めた進入位置に航空機の3次元画像である航空機進入画像を3次元空間に対して描画する。
【0022】
画像合成部16は、3次元画像処理部12が生成した3次元画像と、飛行経路画像生成部13が生成した旋回経路及び進入経路からなる飛行経路の飛行経路画像と、飛行画像生成部14が生成した航空機飛行画像と、進入画像生成部15が生成した航空機進入画像とを座標の対応が同一の3次元空間において合成し、空港周辺空域における合成3次元画像である運航状況画像を生成する。また、画像合成部16は、航空機の位置表示のみでなく、航空機の飛行諸元(コールサイン、飛行高度、速度など)の文字情報の画像表示や、航空機の航跡表示、飛行ベクトル(方位(飛行方向)及び速度線)、風の影響による偏差経路、精測進入レーダの覆域などの画像を上記運航状況画像に表示する。
【0023】
ここで、飛行ベクトルは、時々刻々と変化する飛行機の方位と速度とを示すベクトルである。偏差経路とは、風が吹いている場合、予め設定された飛行経路あるいは進入経路を飛行しようと操縦した場合、風速(風として空気が移動する速さ)及び風向(風が吹いてくる方位)により、飛行経路(旋回経路及び進入経路)からずれるため、風速及び風向に合わせてこのずれ量を偏差として補正した経路を示している。航空機は、上記偏差経路上を飛行するように操縦者が操縦することにより、予め設定された飛行経路上を飛行できる。
【0024】
制御部17は、3次元空間における航空機の座標位置により、表示データベース2の状態テーブルにおける状態フラグの制御を行う。すなわち、制御部17は、3次元空間における旋回経路の領域に航空機の座標位置が存在する場合、旋回経路を飛行しているとして、表示テーブルの状態フラグを「旋回」とする。一方、制御部17は、3次元空間における進入経路の領域に航空機の座標位置が存在する場合、進入経路を飛行しているとして、表示テーブルの状態フラグを「進入」とする。また、制御部17は、航空機の高度の座標値が「0」となると、航空機が着陸したとして、表示テーブルの状態フラグを「着陸」とする。
画像表示部18は、3次元空間内における合成3次元画像を観察する視点を任意の座標に変え、視点から合成3次元画像を観察した表示画像を生成し、この表示画像を表示装置3に表示する。ここで、任意の座標とは、例えば、管制塔を視点とした場合、航空機の操縦席を視点とした場合などを示している。
【0025】
表示データベース2には、空港に着陸する予定であり、空港近辺を飛行している航空機の情報を示す表示テーブルが書き込まれて記憶されている。
図2は、表示データベース2に書き込まれている表示テーブルの構成の一例を示す図である。この表示テーブルは、航空機毎の航空機識別情報に対して、着陸時間、飛行位置、進入位置、飛行速度及び状態フラグの各々が対応付けられて書き込まれて記憶されている。航空機識別情報は、航空機を個々に識別するための情報であり、例えば航空機毎に設定されているコールサインなどである。
【0026】
着陸時間は、飛行計画情報に含まれる各航空機の滑走路への着陸時間を示している。飛行位置は、3次元空間において飛行経路における航空機の座標位置を示している。すなわち、飛行位置は、空港監視レーダ部7が検出した緯度経度及び航空機から得られる高度から求める3次元空間における座標位置である。進入位置は、3次元空間において進入経路における航空機の座標位置を示している。すなわち、進入位置は、精測進入レーダ部8が検出した緯度経度及び航空機の高度から求める3次元空間における座標位置である。飛行速度は、航空機の飛行する速度を示しており、旋回経路を飛行している際には旋回経路における速度であり、進入経路を飛行している際には進入経路における速度が書き込まれている。状態フラグは、旋回経路を飛行している旋回状態にあるか、あるいは進入経路を飛行している進入状態にあるかを識別するフラグである。
【0027】
図1に戻り、制御部17は、ARTS情報処理部4から供給される航空機識別情報が表示データベース2の表示テーブルに存在しないことを検出すると、この新たな航空機識別情報を、表示データベース2の表示テーブルに対して書き込んで記憶させる。
飛行画像生成部14は、3次元空間における航空機の座標位置である飛行位置を求めると、この飛行位置を航空機の航空機識別情報に対応させて、表示データベース2の表示テーブルに書き込む。
進入画像生成部15は、3次元空間における航空機の座標位置である進入位置を求めると、この進入位置を航空機の航空機識別情報に対応させて、表示データベース2の表示テーブルに書き込む。
【0028】
制御部17は、航空機の座標位置により、この航空機が旋回経路及び進入経路のいずれに存在しているかを判定し、表示データベース2の表示テーブルにおける状態フラグを書き込んで記憶させる。
また、制御部17は、状態フラグが「旋回」の場合、旋回経路における航空機の飛行速度を、また状態フラグが「進入」の場合、進入経路における航空機の飛行速度を、表示データベース2の表示テーブルに書き込む。
【0029】
図3は、本実施形態による運航状況表示システム1が航空機が飛行する3次元空間を任意の視点から観察した表示画像を表示装置3に表示した表示画面の図である。
図3に示すように、画像合成部16は、飛行経路画像生成部13が生成した飛行経路画像として、旋回経路の画像503及び進入経路の画像501の飛行経路画像の各々を、3次元画像処理部12の生成した3次元空間の3次元画像500(運航状況画像)に対して描画して合成する。また、画像合成部16は、飛行画像生成部14が生成した航空機の航空機飛行画像504及び航空機飛行画像505の各々を、3次元画像処理部12の生成した3次元空間の3次元画像500に対して描画して合成する。
【0030】
画像合成部16は、進入画像生成部15が生成した航空機進入画像502を、3次元画像処理部12の生成した3次元空間の3次元画像500に対して描画して合成する。ここで、航空機進入画像502は、着陸態勢に入り滑走路の画像802の示す滑走路に着陸する進入経路に進入した航空機の画像である。航空機飛行画像504は、着陸する予定の空港上空に到達し、旋回経路に沿って進入経路への進入を待つ航空機の画像である。また、画像合成部16は、空港上空を飛行する航空機の航空機飛行画像506に対して、この航空機の航跡を示して航空機飛行画像506を、3次元空間の3次元画像500に対して描画する。ここで、画像合成部16は、航空機飛行画像506の航空機の航跡の座標値を、表示データベース2における航空機の座標値の履歴から読み出して3次元空間の運航状況画像に描画する。
【0031】
画像合成部16は、3次元空間の3次元画像500に対し、航空機の各々の情報を3次元空間の3次元画像500の表示画像に文字画像として描画する。例えば、画像合成部16は、航空機進入画像502の示す航空機の情報を、航空機進入画像502に対応して文字画像として表示画像に描画する。ここで、画像合成部16は、航空機進入画像502の航空機識別情報、航空機の機種、着陸する空港名及び着陸時間などを、表示データベース2の表示テーブルから読み出し、3次元空間の3次元画像500の表示画像に文字画像602として描画して合成する。
【0032】
同様に、画像合成部16は、航空機飛行画像504の航空機識別情報、航空機の機種、着陸する空港名及び着陸時間などを、表示データベース2の表示テーブルから読み出し、文字画像604として3次元空間の3次元画像500に対して描画する。画像合成部16は、航空機飛行画像505の航空機識別情報、航空機の機種、着陸する空港名及び着陸時間などを、表示データベース2の表示テーブルから読み出し、文字画像605として3次元空間の3次元画像500に対して描画する。画像合成部16は、詳細な航空機の情報(航空機識別情報、発着空港、高度、飛行速度(速度)、緯度及び経度など)の文字画像705を、3次元空間の3次元画像500に対して描画する。
【0033】
また、画像合成部16は、精測進入レーダの覆域510を、3次元空間の3次元画像500に対して描画する。ここで、精測進入レーダの覆域510は、精測進入レーダのビームを放射する放射角(方位角、仰角)の範囲を示す放射点を頂点とする四角錐形状の検知範囲を示している。
画像表示部18は、3次元空間における3次元画像の視点を任意に変え、視点から観察される3次元画像を表示装置3に表示する表示画像として、表示装置3に出力する。図3の図は、例えば3次元画像の視点を管制塔にした場合の表示装置3に表示される表示画像を示している。このとき、画像表示部18は、管制塔から見ている方位を示す角度と、現在時刻を文字情報801として表示する。
【0034】
図4は、本実施形態による運航状況表示システム1が航空機が飛行する3次元空間を任意の視点から観察した表示画像を表示装置3に表示した表示画面の図である。
図4は、図3の管制塔を視点とした図ではなく、進入経路に進入した航空機の挙動が把握しやすい位置を視点として設定された俯瞰図を示している。
画像合成部16は、飛行経路画像生成部13が生成した経路画像として、旋回経路の画像513及び進入経路の画像511の飛行経路画像の各々を、3次元画像処理部12の生成した3次元空間の画像501(運航状況画像)に対して描画して合成する。また、画像合成部16は、飛行画像生成部14が生成した航空機の航空機飛行画像551、航空機飛行画像552、航空機飛行画像553及び航空機飛行画像554の各々を、3次元画像処理部12の生成した3次元空間の3次元画像500に対して描画して合成する。
【0035】
画像合成部16は、進入画像生成部15が生成した航空機進入画像555を、3次元画像処理部12の生成した3次元空間の画像501に対して描画して合成する。ここで、航空機進入画像555は、着陸態勢に入り滑走路の画像812の示す滑走路に着陸する進入経路に進入した航空機の画像である。航空機飛行画像551、航空機飛行画像552、航空機飛行画像553及び航空機飛行画像554の各々は、着陸する予定の空港上空に到達し、旋回経路に沿って進入経路への進入を待つ航空機の画像である。また、画像合成部16は、空港上空を飛行する航空機の航空機飛行画像506に対して、この航空機の航跡を示して航空機飛行画像506を、3次元空間の3次元画像500に対して描画する。ここで、画像合成部16は、航空機飛行画像506の航空機の航跡の座標値を、表示データベース2における航空機の座標値の履歴から読み出して3次元空間に描画する。
【0036】
画像511’は、進入経路の画像511に対する偏差経路を示す画像である。この場合風が図4の左側から右側の方向(矢印901の示す方向)に吹いており、通常の進入経路の画像511に沿って飛行した場合、航空機が進入経路の画像511に対して矢印901の方向に、すなわち風下(図4の右方向)に流され、風の風速及び風向により進入経路の画像511からずれてしまう。そのため、制御部17は、風速及び風向に合わせてこの航空機の進入経路の画像511からのずれ量を偏差として求め、この偏差により進入経路の画像511を補正した偏差経路を3次元空間において求める。これにより、この偏差経路で画像511’上を飛行するように操縦者が操縦することにより、予め設定された飛行経路である進入経路の画像511に沿って航空機を飛行させることができる。
【0037】
上述したように、本実施形態によれば、管制室で航空管制の実務で使用する場合、空港監視レーダによる旋回経路にある航空管制と、精測進入レーダによる進入経路にある航空管制との各々における空港における航空機の状態を、運航状況表示システム1が表示装置3に表示する画像(図3及び図4など)を観察することにより、管制を行っていない第3者である統括者が容易に把握し、精測進入レーダ及び空港監視レーダの各々の担当者と情報を容易に共有することができる。
これにより、本実施形態によれば、空港における空港監視レーダ及び精測進入レーダの検出した航空機の運航を同一の表示空間で確認できるため、統括者が精測進入レーダ及び空港監視レーダの双方の情報を統合して運航状態を判断することが容易にでき、各管制官を取り纏めて空港における航空機の運航を管理することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、表示される3次元画像が航空機、空港周辺の地形、旋回経路及び進入経路の画像であるため、管制官が指示したルートを正確に飛行しているか否かの判定を、管制官自身が容易に行え、経験のみでなく画像で確認することができるため、より正確な制御を行うことができる。
また、本実施形態によれば、表示装置3の表示画像により、空港監視レーダを担当する管制官が、精測進入レーダを担当する管制官に対し、航空機の管制の制御を引き継ぐタイミングを、精測進入レーダ及び空港監視レーダの各々の管制官の間で共有することができ、より正確な航空機の管制を実現することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、管制官となるための教育を受けている学生に対する訓練で使用する場合、旋回経路及び進入経路が3次元画像により表示され、自身が管制制御を行っている航空機の画像も同時に同一の表示空間に表示されるため、自身の制御の指示に対応した飛行機の飛行がどのような挙動を示すかのイメージが容易に掴むことができる。すなわち、本実施形態によれば、飛行ルートである旋回経路及び進入経路における航空機が、学生自身の制御の指示通り飛行しているか否かが画像によりビジュアル的に確認することができる。このため、学生は自身の指示が適切か否かの確認を、3次元空間を示す3次元画像において容易に確認することができ、学生は航空機の飛行に対する指示の結果を3次元空間における航空機の挙動のイメージを容易に養うことができる。
【0040】
図5は、本実施形態による運航状況表示システム1の動作例を示すフローチャートである。
ステップS1:
3次元画像処理部12は、空港及び空港周辺の3次元空間における3次元画像を生成する。
ステップS2:
次に、飛行経路画像生成部13は、滑走路に着陸する際に航空機が進入する、飛行計画に含まれる予め空港毎に設定されている経路の進入経路と、進入経路に進入する航空機が順番をまって旋回飛行を行う旋回経路との飛行経路画像を、所定の色の線分で所定の位置と高さとで、3次元空間に形成する。
【0041】
ステップS3:
制御部17は、データ入力部11を介して供給される航空機の飛行計画情報及び航空機の位置情報から、新たな航空機が飛来したか否かの検出を行う。
このとき、制御部17は、ART情報処理部4から航空機の位置情報とともに供給される航空機識別情報が表示データベース2の表示テーブルに記載されている航空機識別情報と一致しない場合、新たな航空機が飛来したとして処理をステップS4へ進める。
一方、制御部17は、ART情報処理部4から航空機の位置情報とともに供給される航空機識別情報が表示データベース2の表示テーブルに記載されている航空機識別情報と一致する場合、新たな航空機が飛来していないとして処理をステップS5へ進める。
【0042】
ステップS4:
制御部17は、ART情報処理部4から航空機の位置情報とともに供給される航空機識別情報を、表示データベース2の表示テーブルに書き込んで記憶させる。
【0043】
ステップS5:
制御部17は、ART情報処理部4及び精測進入レーダ部8から供給される航空機の位置情報、着陸時間、飛行位置、進入位置、飛行速度の各々を、航空機識別情報に対応させて、表示データベース2の表示テーブルに書き込んで記憶させる。
また、制御部17は、航空機各々の位置情報から、各航空機が旋回経路あるいは進入経路のいずれを飛行しているかの検出を行う。
そして、制御部17は、表示データベース2の表示テーブルにおいて、航空機が旋回経路に存在する場合に状態フラグを「旋回」とし、航空機が進入経路に存在する場合に状態フラグを「進入」とし、航空機の高度が0の場合に状態フラグを「着陸」に変更する。
【0044】
ステップS6:
飛行画像生成部14は、ARTS情報処理部4から供給される航空機の位置情報と、航空機からの高さの情報との飛行情報から、3次元空間における航空機の座標位置である飛行位置を求め、求めた飛行位置に航空機の3次元画像である航空機飛行画像を生成する。
【0045】
ステップS7:
進入画像生成部15は、空港監視レーダ部7から供給される航空機の緯度経度及び高さの情報を含む進入情報から、3次元空間における航空機の座標位置である進入位置を求め、求めた進入位置に航空機の3次元画像である航空機進入画像を生成する。
【0046】
像合成部16は、3次元画像処理部12が生成した3次元画像に対して、飛行経路画像生成部13が生成した旋回経路及び進入経路からなる飛行経路の飛行経路画像と、飛行画像生成部14が生成した航空機飛行画像と、進入画像生成部15が生成した航空機進入画像とを3次元空間に対して描画することで合成し、合成3次元画像である運航状況画像を生成する。また、画像合成部16は、合成3次元画像を画像表示部18に対して出力する。
【0047】
そして、画像表示部18は、選択された視点から観察される3次元画像の表示画像を生成し、この表示画像を表示装置3に対して表示する。
このとき、画像合成部16は、図3及び図4に示す文字画像、航空機の航跡表示、風の影響による偏差経路、精測進入レーダの覆域などの表示も行う。
【0048】
また、図1における運航状況表示システム1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、航空機の運航状況を示す処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0049】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0050】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1…運航状況表示システム 2…表示データベース 3…表示装置 4…ARTS情報処理部 5…飛行計画情報処理部 6…空港気象情報処理部 7…空港監視レーダ部 8…精測進入レーダ部 11…データ入力部 12…3次元画像処理部 13…飛行経路画像生成部 14…飛行画像生成部 15…進入画像生成部 16…画像合成部 17…制御部 18…画像表示部
図1
図2
図3
図4
図5