【実施例1】
【0025】
本発明にかかる半導体装置の第1の実施の形態にかかるダイオード20aの構成を、
図1を参照して詳細に説明する。シリコン半導体からなるn型半導体基板1は、抵抗率:約28Ωcmで、厚さ:約70μmであり、ダイオードとして構成されると、n
−ドリフト層として機能する。
図1の要部断面図に示すダイオード20aは、概略的には、n型半導体基板1の主面中央部に構成される活性領域10(
図1で示されるのは外周部の一部のみ)と、活性領域10の外側を取り巻く耐圧構造領域11と、さらにその外側を半導体基板1の切断面に沿って両主面間を連結するp型分離領域6を主要部として構成される。
【0026】
活性領域10には、一方の主面側(
図1の上側の表面)に、表面濃度が約1×10
19cm
−3で、拡散深さが約3μmのn型カソード領域2が半導体基板1の中央部に選択的に形成されている。n型カソード領域2の表面にはアルミやニッケルなどを主成分とする金属膜からなるカソード電極4がオーミック接触している。ただし、このカソード電極4はn型カソード領域2の外周部表面では絶縁膜8を挟んで積層され、さらに、n型カソード領域2の外側に絶縁膜を挟んだ状態で約10μm延長されている。また、n型半導体基板1の他面には、表面濃度が約1×10
17cm
−3で、拡散深さが約0.5μmのp型アノード層3が全面に形成され、このp型アノード層3の表面にはアノード電極5が、スパッタ蒸着などにより形成された金属膜が接触している。
【0027】
耐圧構造領域11の表面には、n型カソード領域2の外周辺に間隔をおいて取り巻くようにp型領域からなるフィールドリミッティングリング(以降、FLR7)が形成される。耐圧構造領域11の表面はFLR7表面に設けられる開口部12を除いて絶縁膜8により覆われている。さらにFLR7の表面には前記絶縁膜8の開口部12を介して接触し、FLR7間の表面上にも絶縁膜を介して覆う導電性フィールドプレート(FP9)が設けられる。FLR7はp型領域であって表面濃度は約5×10
18cm
−3で拡散深さ:約7μmが好ましい。また、FLR7は複数個相互に間隔を置いて設けられることが好ましく、さらにダイオード20aの半導体基板の外周側から内周側に向かって間隔が広がるように配置されることが好ましい。
【0028】
前述のp型分離領域6はダイオード20aの半導体基板の最外周にあって、耐圧構造領域11を取り囲み、一端が、一方の主面側でp型アノード層3に接続し、他端は基板の側面に沿って他方の主面に到達するp型領域として形成される。
【0029】
デバイスシミュレーションによって、
図2のA)の要部断面図に示される第1の実施の形態にかかるダイオードと同等のダイオードについて、その逆電圧印加時の電界強度分布と順電圧印加時の電流密度分布を調べた結果から求めた電界強度の最大部(高電界部)と電流集中部とを
図2のB)、C)にそれぞれ示す。比較として同様な方法で、
図3のA)に示す従来のダイオード構造(
図16に示す従来のダイオードに近い構造)について、電界強度分布と電流密度分布を調べた結果から求めた電界強度の最大部(高電界部)と電流集中部とを
図3のB)、C)にそれぞれ示す。
図2、
図3の半導体基板1、201の抵抗率は共に約28Ωcmで厚さは70μmとし、アノード層3、203やn型カソード領域2、202の設計上の耐圧および電流条件はできるだけ同一となるようにした。
【0030】
図3に示す従来のダイオードには、活性領域204と耐圧構造領域205に電流集中と電界集中が同一ヶ所で発生しにくいように遷移領域206を約20μmの幅で設け(特許文献1を参考にした)、かつ、耐圧の得やすいように遷移領域206端部にアノード領域203の外周辺断面の曲率半径より大きく絶縁膜を介してアノード電極の延長部分が覆うp型領域208を設けた。
【0031】
図2、3ダイオードに逆電圧が印加された場合、電界強度の高い部分(高電界部)は、
図2、3のB)に示すように、主接合(アノード層3またはアノード領域203の接合)がある側に存在するので、
図2、3の各ダイオードでは、高電界部が存在する主面が異なっている。具体的には実施例のダイオード(
図2)では最も電界強度の高い部位はフラットな主接合面にあるのに対して、従来のダイオード(
図3)では主接合よりも遷移領域206内のp型領域208もしくはFLR207の曲率部での電界強度が局部的に高くなる。その結果、
図3のダイオードは、前記p型領域208もしくはFLR207において電界集中により設計耐圧より低い電圧で、先にシリコンの臨界電界に達してブレークダウンし易い。従って、実施例のダイオード(
図2)は同じ抵抗率、同じ厚さ半導体基板を適用すれば、従来のダイオード(
図3)より高耐圧(設計耐圧)が得られ易い。
【0032】
加えて、実施例にかかる
図2のダイオードでは、逆電圧印加の際に空間電荷領域(空乏層)は、前記主接合とp型分離領域6とから耐圧構造領域に向かって広がるため、従来のダイオード(
図3)と比較して、構造的に主接合より耐圧構造領域11に空間電荷領域が広がりやすく電界が高くなり難いので短い(幅の狭い)耐圧構造領域としても主接合近傍よりも低電界にすることができる。具体的には、
図2、3のA)に示されるように、実施例のダイオード(
図2)ではFLR7が5本、従来のダイオード(
図3)はFLR207が6本であって、実施例の耐圧構造領域の表面長さ(幅)の方が狭いにもかかわらず、実施例のダイオードの方が高耐圧を得られ易い。その理由は前述のように、
図2に示す本発明にかかるダイオードでは、アノード層3のフラットで広い面積の主接合近傍が最も高電界となるが、従来例ではFLR207近傍の狭い局所部分で低耐圧で早く高電界(Siの臨界電界強度)となりブレークダウンするためである。
【0033】
図2、3のC)で逆回復時の電流密度の高い部分(電流集中部)を示すように、電流は耐圧構造領域のある面の活性領域側のアノード領域またはカソード領域の外周(電極コンタクト部近傍)に集中する。実施例のダイオード(
図2)では、
図2のC)に示すように電流集中部位と電界集中部位が基板の両面に分離されている(実施例のダイオード(
図2)では、電界が高い主接合部においても、設計耐圧より低耐圧をもたらすような電界集中は発生しない)のに対して、従来のダイオード(
図3)では基板の同じ面の近い部位に電界集中部と電流集中部とが存在する。従って、電界集中と電流集中の部位が分離されている実施例のダイオードでは、高い逆回復耐量が得られ、スイッチング損失も低下させることができる。
【0034】
第2の実施の形態にかかるダイオード(図示せず)について説明する。このダイオードは、前述した第1の実施の形態にかかるダイオード20aに対して、半導体基板1の抵抗率を約28Ωcmから23Ωcmに、厚さを70μmから60μmにした点のみが異なり、その他の条件はダイオード20aと同一としたダイオードである。
図4に、第1、第2の実施の形態にかかるダイオードおよび従来のダイオード(
図3)の各耐圧波形を示す。
図4より明らかなように、第1の実施の形態にかかるダイオードの耐圧は、半導体基板1の条件が同一であっても、上述した理由によって、従来のダイオードより高い耐圧が得られる。第2の実施の形態にかかるダイオードは、半導体基板1が第1の実施の形態(
図1)および従来のダイオードよりも薄く(70μmから60μm)ても従来ダイオード(
図3)とほぼ同等の耐圧を得ることができる。このことにより、第2の実施の形態にかかるダイオードは、従来ダイオードよりも低い順電圧および低い逆回復損失(スイッチング損失)を得ることができるメリットが得られる。
【0035】
図5に第3の実施の形態にかかるダイオード20bを示す。前述の第1の実施の形態にかかるダイオード20aの変形例であり、n型カソード領域2内の表面層に選択的に複数のp型層13が形成されてもよい。逆バイアス時に空乏層がカソード電極4に到達しにくくなる。
【0036】
図6に第4の実施の形態にかかるダイオード20cを示す。
図1に示す第1の実施の形態にかかるダイオード20aの変形例であり、n型カソード領域2内の表面層に選択的に複数のトレンチ15が形成されており、トレンチ15内に
カソード電極4が埋設されており、トレンチ15の先端部(底部)に高濃度n型層14が形成されていることである。
【0037】
これらの第3、第4の実施の形態にかかるダイオード20b、20cは、活性領域10内の主要な拡散領域10や耐圧構造領域11などの複雑で深い拡散などを形成する表面がカソード側にあるために、カソード側の形成プロセスが複雑(パターニングプロセスや、拡散深さを深くするなどの調整)で手のかかる構造を必要とするダイオードの設計に好適でありメリットが生じる。
【0038】
図7に第5の実施の形態にかかるダイオード20dを示す。
図1に示す第1の実施の形態にかかるダイオード20aの変形例であり、前述した第1〜第4の実施の形態にかかるダイオードとの相違点は、p型アノード層3がなく、n型半導体基板1とアノード電極5とがショットキー接合となっていることである。
【0039】
図8に第6の実施の形態にかかるダイオード20eを示す。これも
図1に示す第1の実施の形態にかかるダイオード20aの変形例である。前述したダイオードとの相違点は、複数のp型アノード層3aがn型半導体基板1面に選択的に形成され、n型半導体基板1とアノード電極5が、マージドpinショットキー(Merged pin Schottky:MPS)ダイオード構造にされている点である。
【0040】
図9に第7の実施の形態にかかるダイオード20fを示す。前述の第1〜第6の実施の形態にかかるダイオードとの相違点は、耐圧構造領域11がFLR7とFP9の組み合わせを含む電界緩和構造から、Junction Termination Extention(JTE16)による段階緩和構造に替わっているという点である。第7の実施の形態にかかるダイオード20fは、従来のダイオード(
図3)と異なり、空間電荷領域(空乏層)は表面側では分離領域6表面から広がるため低濃度p型領域で構成されるLTE16からなる電界緩和構造は活性領域に近い側ではなく活性領域から遠い分離領域側に形成される。
【0041】
このように、前述の第1〜第7の実施の形態にかかるダイオードでは、p型アノード層3aの形状または構造のいかんにかかわらず、電流集中部位はカソード領域2側の主面にあり、電界強度の高い部位はp型アノード層3a側の主接合近傍にあるため、高い逆回復耐量を得ることが可能である。また、主接合側に狭い局所的に電界集中する部位がないため高い耐圧や低いスイッチング損失を実現することが可能となる。
【0042】
また、本発明の第1〜第7の実施の形態にかかるダイオードでは、逆バイアス時に、p型分離領域6から活性領域10に向かって広がる空間電荷領域(空乏層)は、逆電圧印加の増加に対して、単位電圧あたりで広がる距離が大きくなり、すなわち広がり易くなる。これは、耐圧構造領域12では、空乏層は裏面のpアノード電極5、p型分離領域6、さらには表面のFLR7の3方向から広がるためである。空乏層の広がりとともに、空乏層に供給されるドリフト層の電荷が少なくなるため、さらに広がる必要が生じる。前記特許文献5に記載の逆阻止IGBTのpコレクタ領域とn
−ドリフト領域間の逆耐圧pn接合の場合は、空乏層がn
−ドリフト領域内で広がり表面側のpベース領域に近づくと達するとリーク電流が急増するため、設計耐圧にまで逆電圧を上昇させた場合でも、空乏層端とpベース領域とが数10〜数100μm離れるようにn
−ドリフト領域の厚さを設定する必要がある。
【0043】
一方、前記
図1に示す本発明のダイオードは逆阻止型IGBTに内蔵される逆耐圧pn接合構造と異なり、表面側にpベース領域ではなくn型カソード領域2を備える構造である。そのため、(p型分離領域6から広がる)空乏層がn型カソード領域2に達しても、前述のように、n型カソード領域2内では高濃度のため空乏層の広がり速度はきわめて遅く、カソード電極に到達する惧れは極めて小さいので、リーク電流は増加しない。すなわち、(p型分離領域6から広がる)空乏層がn型カソード領域2に達して、n型カソード領域2の外周部からカソ−ド電極4に向かって領域2内を主面に沿う方向に侵入してもカソード電極4に到達しないかぎり問題ない。
【0044】
前述した逆阻止型IGBTの逆耐圧pn接合からの空乏層の広がりの場合には必要であった空乏層端とpベース領域との離間部分を、本発明のダイオードでは設ける必要が無いので、その分耐圧構造領域12の面積(耐圧構造領域12の長さ(幅))を大幅に減らすことができる。ただし、n型カソード領域2内に侵入した空乏層がカソード電極4に達すると、微量の正孔が流れでるので、漏れ電流が急増する。そのため、本発明のダイオードでは空乏層端をカソード電極4には到達させないn型カソード領域2の濃度と拡散深さにする必要がある。
【0045】
さらに好ましくは、n型カソード領域2の外周辺端と、n型カソード領域2に接するカソード電極4の外周辺端との距離を、0.3〜10μm程度離すとよい。ダイオードにアバランシェ電流が流れるときの空乏層のn型カソード領域2への侵入距離は、n型カソード領域の外周辺端から空乏層先端までの積分濃度が1.3×10
12/cm
2となる距離である。この距離は、アバランシェ降伏が発生するシリコンの臨界電界強度Ecに、シリコン誘電率εをかけてさらに電荷素量qで割った値である。この臨界電界強度Ecは、半導体のドーピング濃度にもよるが、約2.0×10
5V/cmである。n型カソード領域2の濃度は、表面濃度を1×10
19/cm
3以上として、カソード電極4にオーミック接触にするとともにカソード電極4とのコンタクト抵抗を十分小さくすることがよい。
【0046】
その結果、活性領域10での空乏層は、p型アノード層3からカソード領域2に向かって基板1に垂直方向に広がってn型カソード領域2に侵入するとともに、カソード電極4の直前(0.1〜0.3μm程度)で止まり、カソード電極4には達しない。しかし、n型カソード領域2の外周辺端の主面に沿う方向にでは、深さ方向に比べて電荷量が少なくなるため、基板表面に沿って侵入した空乏層はカソード電極4に達する惧れが大きい。そこで、カソード領域2外周辺端の表面と、n型カソード領域2に接するカソード電極4の外周辺端との距離を離間距離とし、この離間距離を、活性領域10内に垂直に侵入した空乏層先端の表面からの深さと同じ0.3μmよりも長くする。このことにより、n型カソード領域2の外周辺端から表面に沿って侵入する空乏層先端はカソード電極4に達せずに離間するようになる。例えば、この離間距離を10μm程度にすれば、確実に空乏層先端がカソード電極4に達することを防ぐことができる。
【実施例2】
【0047】
本発明の半導体装置としての第8の実施の形態にかかるダイオード20gの構成について、
図10の要部断面図を参照して説明する。半導体基板を構成するn型半導体基板1は、抵抗率:約28Ωcmで厚さ:約70μmであり、ダイオードとして構成された場合、n
−ドリフト層として機能する。このn型半導体基板1の一方の面側(表面とする)には、高濃度の導電領域として表面濃度:約1×10
19cm
−3で拡散深さ:約7μmのn型カソード領域2が選択的に形成されている。このn型カソード領域2の表面上には、金属電極としてのカソード電極4が接触している。このカソード電極4は、n型カソード領域2の外周辺端から絶縁膜8を挟んだ状態で約10μmの長さで、絶縁膜8を挟んで外側に延びている。
【0048】
また、第8の実施の形態にかかるダイオード20gでは、n型カソード領域2の外周辺に接して囲うように表面濃度5×10
15cm
−3、拡散深さ約5μm、幅15μmのn型緩衝領域17aが形成されていることが前述した実施例1に記載の各ダイオードと異なる点である。さらにこのn型緩衝領域17aに間隔を置いて取り囲むように耐圧構造領域11が形成されている。さらに、この耐圧構造領域11を取り囲み、n型半導体基板1の一方の主面から他方の主面に到達するように高濃度p型分離領域6が形成される。前記耐圧構造領域11内の表面には、表面濃度:約5×10
18cm
−3で拡散深さ:約7μmの複数のp型フローティングリミッティンググリング(p型FLR7)と、このp型FLR7の表面に接続されたフィールドプレート(FP9)とが形成される。複数のp型FLR7の間隔は素子の外周側から内周側に向かって広がるように配置されている。さらに、n型半導体基板1の他方の主面(裏面とする)には、高濃度の導電領域として表面濃度:約1×10
17cm
−3で拡散深さ:約1μmのp型アノード層3が形成されている。このp型アノード層3の全面に、アノード電極5が接触する。
【0049】
図11に、前記第8の実施の形態にかかるダイオード20gの逆電圧印加時の電界強度分布を、n型緩衝領域17aを形成していない従来のダイオード100(
図16)の電界強度分布と比較して示す。
図11は、
図10のA1−A2線断面における活性領域10と耐圧構造領域11の境界を中心として中央側と外周側の300μm幅の間の電界強度分布図である。
図11における従来のダイオード100(
図16)との比較から、第8の実施の形態にかかるダイオード20gほうが、カソード領域2の外周辺端部(活性領域10と耐圧構造領域11の境界)における電界強度が低いことがわかる。ダイオード20gではn型緩衝領域17aを形成することで、カソード領域2の外周辺端部における電界強度を低減可能なことを表している。電界強度が低減されることは耐圧低下を抑制することができ好ましい。また逆回復耐量の向上や低スイッチング損失にも繋がるので好ましい。
【0050】
n型緩衝領域17aの不純物濃度が、カソード領域2と同程度であると、電界強度の高い領域がカソード領域2の外周辺端部からn型緩衝領域17aの外周辺端部に移動するだけであるから、n型緩衝領域17aの不純物濃度はカソード領域2より低濃度であることが望ましい。また、第8の実施の形態にかかるダイオード20gでは、n型緩衝領域17aの拡散深さをカソード領域2より浅く形成しているが、n型緩衝領域17aの拡散深さをカソード領域2より深くすることで、n型緩衝領域の外周辺端部の曲率を大きくし、電界強度をより弱めることもでき逆耐圧低下を抑制できるので好ましい。
【0051】
本発明の半導体装置としての第9の実施の形態にかかるダイオード20hの構成を、
図12の要部断面図を参照して説明する。前記第8の実施の形態にかかるダイオード20gとの相違点は、n型カソード領域3の外周辺端部に接して囲うように形成されているn型緩衝領域17bが、n型カソード領域2に接触せず、間隔を置いて設けられている点である。具体的には、n型緩衝領域17bは、カソード領域2の外周辺端から外側に25μm離れた位置に幅10μmで形成されている。
【0052】
図13に、第9の実施の形態にかかるダイオード20hの電界強度分布を、n型緩衝領域17bを形成していない従来のダイオード100(
図16)の電界強度分布と比較して示す。
図13は、
図12のB1−B2線断面における活性領域10と耐圧構造領域11の境界を中心として中央側と外周側の300μm幅の間の電界強度分布図である。
図13における従来のダイオード100(
図16)との比較から、第9の実施の形態にかかるダイオード20hの方が、n型カソード領域2の外周辺端部における電界強度が低いことがわかる。n型n型緩衝領域17bを、n型カソード領域2から離して形成しても、n型カソード領域2の外周辺部における電界強度を低減可能であることを表している。従って、電界強度が低減されることは耐圧低下を抑制することができ好ましい。また逆回復耐量の向上や低スイッチング損失にも繋がるので好ましい。
【0053】
また、第9の実施の形態にかかるダイオード20hにおいても、n型緩衝領域17bの拡散深さをn型カソード領域2より浅く形成しているが、n型緩衝領域17bの拡散深さをn型カソード領域2より深くすることで、n型緩衝領域17bの外周辺端部の曲率を大きくし、電界強度をより弱めることもできる。また、n型緩衝領域17bを複数形成し、各々がn型カソード領域2を離間して囲うように形成することで、n型カソード領域2の外周辺端部やn型緩衝領域17bの外周辺端部の電界強度を弱めることもできる。加えて、他の電極とは接続されていない、浮遊電極(図示せず)をn型緩衝領域17b表面に接続しても同様の効果が得られる。
【0054】
本発明の半導体装置としての第10の実施の形態にかかるダイオード20iの構成を、
図14を参照して説明する。前述した第9の実施の形態にかかるダイオード20hとの相違点は、n型カソード領域2を囲うように形成されているn型緩衝領域17bがなく、n型カソード領域2に接続するカソード電極4を、絶縁膜8を挟んで耐圧構造領域11側に延ばすことにより、従来のダイオード(
図16)のn型チャネルストッパ領域210のような機能を利用しているという点である。具体的には、カソード電極4が耐圧構造領域11側に絶縁膜8を挟んで30μmの長さで外側に延ばされている。
【0055】
図15に、第10の実施の形態にかかるダイオード20iの電界強度分布を、n型緩衝領域17a、17bを形成していない従来のダイオード(
図16)の電界強度分布と比較して示す。
図15は、
図14のC1−C2線断面における活性領域10と耐圧構造領域11の境界を中心として中央側と外周側の300μm幅の間の電界強度分布図である。
図15における従来のダイオード(
図16)との比較から、第10の実施の形態にかかるダイオード20iの方が、従来のダイオードよりn型カソード領域2の外周辺端部における電界強度が低いことがわかる。従って、耐圧低下を抑制することができる。
【0056】
以上説明した本発明にかかるダイオードによれば、耐圧構造領域を基板の外周側から活性領域に向かって広がる空乏層に対して、高不純物濃度のn型カソード領域2が空乏層の広がりを抑える機能を奏するので、従来の逆回復耐量の向上策による限界に捉われることなく、さらに逆回復耐量を向上させることができ、さらに、高い阻止耐圧が得やすく、スイッチング損失特性を改善することが可能な半導体装置を提供することができる。