特許第6497082号(P6497082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497082
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】多孔性積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20190401BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20190401BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20190401BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B32B5/24 101
   C08J9/00 ACES
   C08J9/36
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-10125(P2015-10125)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-163465(P2015-163465A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2018年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-13048(P2014-13048)
(32)【優先日】2014年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 良輔
(72)【発明者】
【氏名】生駒 啓
(72)【発明者】
【氏名】大倉 正寿
(72)【発明者】
【氏名】藤本 聡一
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−028495(JP,A)
【文献】 特開2007−100056(JP,A)
【文献】 特表2005−516819(JP,A)
【文献】 特表平11−508195(JP,A)
【文献】 特開2007−075176(JP,A)
【文献】 特表2005−524556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 9/00− 9/42
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系多孔フィルムとポリオレフィン系繊維層とを含んでなる多孔性積層体であり、121℃で30分熱処理した後の透湿度が150g/m・h以上であり、121℃で30分熱処理した後の熱収縮率が長手方向および幅方向ともに5%以下で、かつ121℃で30分熱処理した後の血液バリア性がクラス4以上である多孔性積層体。
【請求項2】
130℃で30分熱処理した後の透湿度が150g/m・h以上である請求項1に記載の多孔性積層体。
【請求項3】
透湿度が200g/m・h以上である、請求項1または2に記載の多孔性積層体。
【請求項4】
130℃で30分熱処理した後の熱収縮率が長手方向および幅方向ともに6%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性積層体。
【請求項5】
121℃で30分熱処理した後のウイルスバリア性がクラス3以上である、請求項1〜のいずれかに記載の多孔性積層体。
【請求項6】
上記ポリオレフィン系多孔フィルムの曲路率が3.0以上である、請求項1〜のいずれかに記載の多孔性積層体。
【請求項7】
医療用滅菌包装材料に使用される、請求項1〜のいずれかに記載の多孔性積層体。
【請求項8】
医療用衣服に使用される、請求項1〜のいずれかに記載の多孔性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用滅菌包装材料や衣服して用いた場合、オートクレーブ滅菌などの高圧蒸気滅菌処理を施しても透湿性や外観保持に優れる多孔性積層体に関する。詳しくは、多孔性積層体に使用されるポリオレフィン系微多孔フィルムの孔構造を制御することにより、高温熱処理後も優れた透湿性や外観を維持しており、なおかつ血液やウイルスバリア性にも優れた、医療用滅菌包装材料用途、更には医療用衣服に好適に用いることができる多孔性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
微多孔フィルムは、電池や電解コンデンサーなどの各種セパレータ、各種分離膜(フィルター)、おむつや生理用品に代表される吸収性物品、衣料や医療用の透湿防水部材、感熱受容紙用部材、インク受容体部材などその用途は多岐に亘っており、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるポリオレフィン系微多孔フィルムが主として用いられている。また、ポリオレフィン系微多孔フィルムは布帛や不織布などの繊維層と貼り合わせることで、透気性や透湿性といった透過性能と、微多孔フィルム単体では不十分である強度や風合いなどとを両立することができ、防護服用途や建材用途、特に医療用滅菌包装材料や術衣やドレープなどの医療用衣服として用いられている。
【0003】
多孔性積層体を医療用滅菌包装材料として用いようとした場合、包装した内部物品の表面を滅菌する観点から、高温処理しても高い透湿性を維持していることが求められることがある。また、医療用衣服に用いようとした場合、高圧蒸気滅菌後の使用において、高い透湿度を有することが着心地の観点から重要である。更に、高温処理において商品の形状を維持していることも極めて重要なことである。これらの課題を解決するためには、高い透湿度を有しつつ高温処理にも耐えうる適切な孔構造制御が必要である。
【0004】
ポリオレフィン系フィルムを多孔化する手法としては、様々な提案がなされている。たとえば、ポリオレフィン樹脂に炭酸カルシウムなどの粒子を添加し、溶融押出、シート化した後、延伸により孔構造を形成させる方法(所謂、粒子法)が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、該方法で得られるポリオレフィン系微多孔フィルムを用いた多孔性積層体は、熱に対する耐性が低く、更に平面方向へのネットワークが少ないため突刺強度が低いなどの問題があった。また、他の多孔化手法としては、ポリプロピレンの結晶多形であるα型結晶(α晶)とβ型結晶(β晶)の結晶密度の差と結晶転移を利用してフィルム中に空隙を形成させる、所謂β晶法と呼ばれる方法の提案も数多くなされている(たとえば、特許文献2〜5参照)。しかしながら、該方法で得られた微多孔フィルムは、透湿性には優れるものの、曲路率が低く熱処理後の透湿性、外観保持、バリア性の両立は困難であった。
【0005】
滅菌可能な包装材料としては、不織布あるいは穿孔フィルムと紙を積層した積層体が提案されている(たとえば、特許文献6参照)。この提案では、滅菌方法として、オートクレーブ滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌などの滅菌方法に適用することが可能であるが、不織布や穿孔フィルムでは、貫通孔がストレート孔であるがために、血液バリア性、ウイルスバリア性といった、滅菌状態を維持するために必要な特性が不十分な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−316022号公報
【特許文献2】特開昭63−199742号公報
【特許文献3】特開平6−100720号公報
【特許文献4】特開平9−255804号公報
【特許文献5】特開2013−32505号公報
【特許文献6】特表2005−516819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、オートクレーブ滅菌、特に高圧水蒸気滅菌に相当する高温で処理した後でも優れた透湿性を維持しており、なおかつ血液バリア性やウイルスバリア性などのバリア性にも優れた多孔性積層体を提供することであり、それにより医療用滅菌包装材料や医療用衣服などに好適に使用できる多孔性積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題は、ポリオレフィン系多孔フィルムとポリオレフィン系繊維層とを含んでなる多孔性積層体であり、121℃で30分熱処理した後の透湿度が150g/m・h以上であり、121℃で30分熱処理した後の熱収縮率が長手方向および幅方向ともに5%以下で、かつ121℃で30分熱処理した後の血液バリア性がクラス4以上である多孔性積層体によって達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多孔性積層体を医療用滅菌包装材料や医療用衣服として用いた場合、高温滅菌処理に対する耐性、すなわち処理後の透湿性及びバリア性に優れており、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ポリオレフィン系多孔フィルム>
本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムは、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する貫通孔を複数有した多孔フィルムであり、耐熱性、成形性、生産性、コスト低減、耐薬品性、耐酸化・還元性などの観点からポリオレフィン系樹脂で構成されていることが好ましい。上記ポリオレフィンを構成する単量体成分としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、5−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、 ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンが挙げられ、これらの単独重合体や上記単量体成分から選ばれる少なくとも2種以上の共重合体、およびこれら単独重合体や共重合体のブレンド物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記の単量体成分以外にも、たとえば、ビニルアルコール、無水マレイン酸を共重合、グラフト重合しても構わないが、これらに限定されるわけではない。上記の中で、耐熱性、透湿性、空孔率などの観点からポリプロピレンが好ましい。また、上記ポリオレフィン系樹脂は主成分であることが好ましい。「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であることを意味する(以下、本願発明において同じ)。
【0011】
上記ポリオレフィン系多孔フィルム中に貫通孔を形成する方法としては、粒子法でもβ晶法でもどちらでも構わないが、平面方向に多数張り巡らされたネットワークによる高い突刺強度と、焼却時の残渣が少なく環境負荷を低減できる観点から、特にβ晶法が好ましい。
【0012】
本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムをβ晶法により多孔化するためには、フィルムを構成するポリオレフィンのβ晶形成能が40%以上であることが好ましい。β晶形成能が40%未満ではフィルム製造時にβ晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果、透過性の低いフィルムしか得られない場合がある。一方、β晶形成能の上限は特に限定されるものではないが、99.9%を超えるようにするのは、後述するβ晶核剤を多量に添加したり、使用するポリプロピレン樹脂の立体規則性を極めて高くしたりする必要があり、製膜安定性が低下するなど工業的な実用価値が低い。工業的にはβ晶形成能は65〜99.9%が好ましく、70〜95%が特に好ましい。
【0013】
β晶形成能を40%以上に制御するためには、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用したり、β晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に形成させる結晶化核剤を添加剤として用いたりすることが好ましい。β晶核剤としては、たとえば、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、コハク酸マグネシウムなどのカルボン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド、N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドに代表されるアミド系化合物、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのテトラオキサスピロ化合物、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族スルホン酸化合物、イミドカルボン酸誘導体、フタロシアンニン系顔料、キナクリドン系顔料を好ましく挙げることができるが、特にN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドに代表されるアミド系化合物を好ましく用いることができる。β晶核剤の添加量としては、ポリプロピレン樹脂全体を基準とした場合に、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であればより好ましい。0.05質量%未満では、β晶の形成が不十分となり、多孔性フィルムの透気性が低下する場合がある。0.5質量%を超えると、粗大ボイドを形成し、高温での滅菌処理時に外観を損ねる場合がある。
【0014】
本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、メルトフローレート(以下、MFRと表記する、測定条件は230℃、2.16kg)が2〜30g/10分の範囲であることが好ましく、さらにアイソタクチックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。MFRが2g/10分未満であると、樹脂の溶融粘度が高くなり高精度濾過が困難となり、フィルムの品位が低下する場合がある。MFRが30g/10分を超えると、分子量が低くなりすぎるため、延伸時のフィルム破れが起こりやすくなり、生産性が低下する場合がある。より好ましくは、MFRは3〜20g/10分である。
【0015】
また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いる場合、アイソタクチックインデックスは90〜99.9%であることが好ましく、95〜99%がより好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満であると、樹脂の結晶性が低く、高い透気性を達成するのが困難な場合がある。
【0016】
本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムにポリプロピレン樹脂を用いる場合、ホモポリプロピレン樹脂を用いることができるのはもちろんのこと、製膜工程での安定性や造膜性、物性の均一性の観点から、ポリプロピレンにエチレン成分やブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン成分を5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下の範囲で共重合した樹脂を用いることもできる。なお、ポリプロピレンへのコモノマー(共重合成分)の導入形態としては、ランダム共重合でもブロック共重合でもいずれでも構わない。
【0017】
上記ポリプロピレン樹脂は低MFRポリプロピレンを含有させることがバリア性向上や製膜性向上の点で好ましい場合がある。含有量は0.5〜30質量%の範囲が好ましい。低MFRポリプロピレンとはMFRが0.1〜1g/10分のポリプロピレンである。
【0018】
さらに、透湿性向上の観点で、上記のポリプロピレン中にMFRが70g/10分以上、好ましくは100g/10分以上、さらに好ましくは500g/10分以上の高MFRポリプロピレンを添加してもよい。高MFRポリプロピレンの含有量としては、ポリプロピレン樹脂全体を100質量%としたときに、0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは0.7〜5質量%である。透湿性とバリア性の観点から、メタロセン系ポリプロピレンがより好ましく、特に融点が120℃以下、より好ましくは100℃以下のメタロセン系ポリプロピレンが好ましい。
【0019】
本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤や無機、あるいは有機粒子からなる滑剤、さらには、ブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレンの熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、ポリプロピレン100質量部に対して、酸化防止剤を0.01〜0.5質量部含有せしめることは好ましいことである。
【0020】
本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムは、その特性を改良する目的で少なくとも片面に多孔層を積層させてもよい。ここで、積層する多孔層としては、ポリオレフィン系多孔フィルムでも良いし、貫通孔を有していれば他の樹脂や形態からなる多孔層を用いてもよい。また、積層構成としては、2層積層でも3層積層でも、さらにそれ以上の積層数でも構わない。積層の方法としては、以下に限定されるわけではないが、共押出によるフィードブロック方式やマルチマニホールド方式でも、ラミネートによる多孔フィルム同士を貼り合わせる方法、ポリオレフィン系多孔フィルム上に溶液や融液を塗布し、乾燥や固化させることで多孔層を形成する方法など、いずれの方法を採用しても構わない。特に、多孔フィルムの加工性を向上させる目的で、本発明の効果を損なわない範囲において滑剤を有する多孔層を積層することはフィルムの取り扱い性を改善する観点で好ましいことである。
【0021】
本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムは、曲路率が3.0以上であることが好ましい。3.0〜5.0の範囲であればより好ましく、3.6〜4.5の範囲であればさらに好ましく、3.6〜4.0の範囲であれば特に好ましい。ポリオレフィン系多孔フィルムの曲路率が3.0未満の場合、透湿性が向上する一方で、滅菌処理時の透湿性低下、外観不良、バリア性低下が発生し、医療用途として特性が不十分な場合がある。
【0022】
上述した曲路率を好ましい範囲とすることで多孔性積層体としたときの高温処理時の透湿性、外観保持、バリア性をすべて両立させることが可能であるが、曲路率を好ましい範囲とするための方法の詳細は後述する。
【0023】
本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムは、厚みが5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであればより好ましく、15〜25μmであればさらに好ましく、16〜20μmであれば特に好ましい。多孔フィルムの厚みが5μm未満の場合、強度不足やバリア性不足を招く場合がある。一方、厚みが50μmを超える場合、透湿性の低下やコストアップに繋がる場合がある。
【0024】
以下に本発明で用いるポリオレフィン系多孔フィルムの製造方法を具体的に説明する。なお、本発明のフィルムの製造方法は、これに限定されるものではない。
【0025】
ポリプロピレン樹脂として、メルトフローレート8g/10分のホモポリプロピレン樹脂99.5質量部、β晶核剤としてN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド0.3質量部、酸化防止剤0.2質量部の比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給して溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして核剤混合原料を準備する。この際、溶融温度を270〜300℃とすることで、β晶核剤をポリプロピレン融液に溶解させて、その後の冷却固化工程にて、核剤を析出させることが好ましい。
【0026】
次に、核剤混合原料を単軸の溶融押出機に供給し、200〜230℃にて溶融押出を行う。そして、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸シートを得る。この際、キャストドラムは、表面温度が105〜130℃であることが、未延伸シートのβ晶分率を高く制御する観点から好ましい。この際、特にシートの端部の成形が、後の延伸性に影響するので、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。また、シート全体のドラム上への密着状態から、必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付けてもよい。
【0027】
次に、得られた未延伸シートを二軸配向させ、フィルム中に空孔を形成する。二軸配向させる方法としては、フィルム長手方向に延伸後幅方向に延伸する逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0028】
具体的な延伸条件としては、まず、未延伸シートを長手方向に延伸するために適切な延伸温度に加熱する。シートの加熱の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。最終的なポリオレフィン系多孔フィルムの曲路率を上記した好ましい範囲に制御するためには、以下に記載する条件を採用して長手方向に延伸を行うことが重要である。適切な延伸条件を採用することで、最終的に得られる多孔フィルムには、微細な孔が均一に形成され、好ましい孔構造を得ることが可能となる。
【0029】
長手方向の延伸温度としては、90〜140℃、より好ましくは110〜135℃、さらに好ましくは120〜135℃、特に好ましくは120〜130℃の温度を採用することが好ましい。延伸倍率としては、3〜8倍、より好ましくは4.5〜6.0倍である。延伸倍率を高くするほど透湿性が向上する傾向であるが、8倍を超えて延伸すると、次の横延伸工程でフィルム破れが起きやすくなってしまう場合がある。長手方向の延伸速度としては、100,000%/分以上であることが好ましく、200,000%/分以上であるとより好ましく、300,000%/分以上であるとさらに好ましい。延伸速度を速くすることで二軸延伸後の孔構造が3次元方向にネットワークを形成し、滅菌処理時の透湿性、外観保持、バリア性を両立させやすくなるが、延伸速度を速くし過ぎるとフィルム破れが起こりやすくなってしまう場合がある。長手方向への延伸区間と延伸前のフィルムの幅の関係(延伸前のフィルム幅/長手方向延伸区間)は3〜50であれば好ましく、3〜30であればより好ましく、4〜20であればさらに好ましい。長手方向への延伸の際には、フィルム幅が減少する所謂ネックダウンと呼ばれる現象が見られるが、孔を好ましい構造に制御するためには、ネックダウン率(延伸後のフィルム幅/延伸前のフィルム幅×100)が80〜95%であれば好ましく、85〜95%であればより好ましい。
【0030】
次に、テンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。そして、好ましくは130〜155℃、より好ましくは145〜153℃に加熱して幅方向に4〜12倍、より好ましくは5〜11倍、さらに好ましくは6〜10倍延伸を行う。なお、このときの横延伸速度としては、1,000〜6,000%/分で行うことが好ましく、1,200〜5,000%/分であればより好ましい。ついで、そのままテンター内で熱固定を行うが、その温度は横延伸温度以上165℃以下であることが好ましい。さらに、熱固定時にはフィルムの長手方向および/または幅方向に弛緩させながら行ってもよく、特に、幅方向の弛緩率を5〜25%、より好ましくは10〜20%とすることが好ましい。熱固定工程後のフィルムは、テンターのクリップで把持した耳部をスリットして除去し、ワインダーでコアにロール状に巻き取る。
【0031】
<ポリオレフィン系繊維層>
続いて、本発明の多孔性積層体を構成するポリオレフィン系繊維層について説明する。
【0032】
本発明の多孔性積層体を構成するポリオレフィン系繊維層は、材料に十分な強度、摩耗強さ、手触りなどの風合い、柔らかさがあるものであることが好ましい。繊維層として用いられる布帛形状としては、織物、編物、不織布、紙などの繊維構造体があげられる。なかでも、コスト、物性の観点から不織布が好ましい。不織布の製造方式としては、湿式不織布やレジンボンド式乾式不織布、サーマルボンド式乾式不織布、スパンボンド式乾式不織布、ニードルパンチ式乾式不織布、ウォータジェットパンチ式乾式不織布、多孔性フィルム式乾式不織布またはフラッシュ紡糸式乾式不織布等のほか、目付や厚みが均一にできる抄紙法も好ましく使用できる。なかでも、スパンボンド不織布が、コスト、物性の面から好ましい。
【0033】
本発明の構成要素であるポリオレフィン系繊維層は、エレクトレット性能の観点からポリオレフィンを主成分とすることが好ましい。さらにポリオレフィンでは、ポリプロピレンを主成分とするものがより好ましく、前述のポリオレフィン系多孔フィルムと同じ素材であることが、貼り合わせ時の加工性の観点から好ましい。
【0034】
本発明の構成要素であるポリオレフィン系繊維層の引張強さは、JIS L1913(2010)6.3項引張強さ及び伸び率(ISO法)に準じ、6.3.1項の標準時の試験方法にて評価を行ったときの値として、5N/50mm以上が好ましい。より好ましくは10N/50mm以上、さらに好ましくは15N/50mm以上である。ただし、強度が200N/50mm以上となると、構成する繊維の強度を著しく高くしたり、目付を高くする必要があることから、医療用滅菌包装材料や医療用衣服に要求される柔らかさが得られなくなる場合がある。
【0035】
本発明の構成要素であるポリオレフィン系繊維層の破裂強さは、JIS L 1096(2010)8.18破裂強さに準じ、8.18.1項のA法(ミューレン形法)を適用して評価を行ったときの値として、300kPa以上が好ましく、400kpa以上であればより好ましく、500kPa以上であればさらに好ましい。また、2,000kPa以下が好ましく、1,500kPa以下であればさらに好ましい。破断強さが300kPa未満の場合、医療用滅菌包装材料や医療用衣服として用いた場合に破損する場合がある。破裂強さが2,000kPaを超えると、繊維層の強力、目付を限りなく高くする必要があり、医療用滅菌包装材料や医療用衣服としてのとしての柔軟性、軽量性が損なわれる。
【0036】
本発明の構成要素であるポリオレフィン系繊維層の摩耗強さは、JIS L1913(2010)6.6摩耗強さ(JIS法)に準じ、6.6.2項のテーバ形法を適用して評価を行い、JIS L1913(2010)の図14の限度写真と比較を行い、等級付けを行ったときの判定結果が3級以上が好ましく、さらに好ましくは、4級以上である。
【0037】
本発明の構成要素であるポリオレフィン系繊維層の厚みは0.01mm以上が好ましく、より好ましくは0.1mm以上である。一方、5mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。繊維層の厚みは、JIS L1913(2010)6.1厚さ(ISO法)に準じ、6.6.1項のA法にて評価を行う。また、目付は10g/m以上が好ましく、より好ましくは20g/m以上である。一方、200g/m以下が好ましく、より好ましくは100g/m以下である。繊維層の目付は、JIS L1913(2010)6.2単位面積当たりの質量(ISO法)に準じて評価を行う。
【0038】
本発明の構成要素であるポリオレフィン系繊維層は、表面に制電加工などの機能加工がされていると好ましい。制電加工は、導電性ポリマーを表面に加工する方法や、吸湿性ポリマーを表面に加工する方法が好ましい。制電加工部分が多孔フィルム層と接触すると帯電性能が低下する恐れがあるため、制電加工する際には、多孔フィルム層と接触しない面に加工するのが好ましい。
【0039】
<多孔性積層体>
続いて、上記したポリオレフィン系多孔フィルムとポリオレフィン系繊維層とを含んでなる多孔性積層体について説明する。
【0040】
本発明の多孔性積層体は、121℃で30分熱処理した後の透湿度が150g/m・h以上である。121℃で30分熱処理した後の透湿度は、包装材料内部物品の滅菌性能とバリア性両立の観点から200〜2,000g/m・hであればより好ましく、300〜1,000g/m・hであればさらに好ましく、350〜800g/m・hであれば特に好ましい。121℃で30分熱処理した後の透湿度が150g/m・h未満の場合、包装材料内部物品の滅菌が不十分であったり、衣服の着用快適性が悪化する場合がある。
【0041】
本発明の多孔性積層体は、滅菌処理後の外観保持の観点から121℃で30分の熱収縮率が長手方向および幅方向ともに5%以下である。121℃で30分の熱収縮率は長手方向および幅方向ともに3%以下であればより好ましく、2%以下であればさらに好ましく、1%以下であれば特に好ましい。121℃で30分の熱収縮率が長手方向および幅方向のいずれかでも5%を超えると、滅菌処理時に撓みが生じることで外観が悪化し、包装材料や衣服として用いることができない場合がある。本発明の多孔性積層体は、130℃で30分熱処理した後の透湿度が150g/m・h以上であることが好ましい。130℃で30分熱処理した後の透湿度は、包装材料内部物品の滅菌性能とバリア性両立の観点から200〜2,000g/m・hであればより好ましく、200〜1,000g/m・hであればさらに好ましく、300〜700g/m・hであれば特に好ましい。130℃で30分熱処理した後の透湿度が150g/m・h未満の場合、包装材料内部物品の滅菌が不十分であったり衣服の着用快適性が悪化する場合がある。
【0042】
本発明の多孔性積層体は、オートクレーブ滅菌、つまり高圧水蒸気による滅菌処理を必要とする用途に好適に使用することができるため、121℃、30分間の高圧水蒸気処理した後の透湿度が150g/m・h以上であることが好ましい。さらには、さらに高温での滅菌処理条件である、130℃、30分間の高圧水蒸気処理後の透湿度が150g/m・h以上であることが好ましい。
【0043】
本発明の多孔性積層体は、透湿度が200g/m・h以上であることが好ましい。透湿度は、医療用衣服として用いた場合、蒸れを強く感じることのない着心地の良さとバリア性の両立の観点から、250〜2,000g/m・hであればより好ましく、300〜1,500g/m・hであればさらに好ましく、350〜1,200g/m・hであれば特に好ましい。透湿度が200g/m・h未満の場合、医療用作業衣として用いると汗による蒸れにより着用快適性が損なわれる場合がある。
【0044】
本発明の多孔性積層体は、滅菌処理後の外観保持の観点から130℃で30分の熱収縮率が長手方向および幅方向ともに6%以下であることが好ましい。130℃で30分の熱収縮率は長手方向および幅方向ともに4%以下であればより好ましく、3%以下であればさらに好ましく、2%以下であれば特に好ましい。130℃で30分の熱収縮率が長手方向および幅方向のいずれかでも6%を超えると、滅菌処理時に撓みが生じることで外観が悪化し、包装材料や衣服として用いることができない場合がある。
【0045】
また、本発明の多孔性積層体は、121℃、30分間の高圧水蒸気処理後の寸法変化が面内の任意の方向において、5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、3%以下である。
【0046】
本発明の多孔性積層体は、121℃で30分熱処理した後の血液バリア性がクラス4以上である。121℃で30分熱処理した後の血液バリア性がクラス4未満では、医療用滅菌包装材料のバリア性が不十分となり、たとえば手術で使用した場合、血液が透過してしまう場合がある。バリア性の観点から、血液バリア性はクラス5以上であればより好ましく、クラス6であれば特に好ましい。血液バリア性の評価はJIS T8060(2007)に記載の方法で行うことができる。なお、試験手順としては、8.3項の表1から手順Dを採用する。
【0047】
また、本発明の多孔性積層体は、121℃30分間の高圧水蒸気による滅菌処理後に血液バリア性がクラス4以上であることが好ましい。さらに好ましくはクラス5以上であり、クラス6であれば特に好ましい。
【0048】
本発明の多孔性積層体は、121℃で30分熱処理した後のウイルスバリア性がクラス3以上であることが好ましい。121℃で30分熱処理した後のウイルスバリア性がクラス3未満では、医療用滅菌包装材料としてのバリア性が不十分となり使用できない場合がある。バリア性の観点から、ウイルスバリア性はクラス4以上であればより好ましく、クラス5以上であればさらに好ましく、クラス6であれば特に好ましい。ウイルスバリア性の評価はJIS T8061(2010)に記載の方法で行うことができる。なお、試験手順としては、8.8項の表1から手順D1を採用する。
【0049】
また、本発明の多孔性積層体は、121℃30分間の高圧水蒸気による滅菌処理後にウイルスバリア性がクラス3以上であることが好ましい。より好ましくはクラス4以上、更に好ましくはクラス5以上であり、クラス6であれば特に好ましい。
【0050】
上記した透湿度、熱収縮率、バリア性を好ましい範囲とし、さらにすべての特性を両立させるには、本発明の多孔性積層体に含まれるポリオレフィン系多孔フィルムの孔構造を制御し、上記した繊維層と下記の方法で積層体とすることが重要である。多孔性積層体の透湿性能、熱収縮性、バリア性能はポリオレフィン系多孔フィルム中のボイドが形成する3次元ネットワークが密に存在する、すなわち貫通孔の経路の選択肢が増えれば増えるほど、寸法安定性(すなわち高温熱処理や高圧水蒸気での処理後の透湿性維持)やバリア性が良好である。一方で、開口部が少なすぎると透湿性に劣るといった傾向がある。これらを達成する手段としては、たとえばポリオレフィン系多孔性フィルムを作製する際に、長手方向への延伸を上記した条件にて実施する達成方法を挙げることができる。特に、延伸速度、延伸区間、ネックダウン率を上記した範囲に制御する方法を好ましく採用することができる。
【0051】
本発明の多孔性積層体は、少なくとも2層以上の構成を有することが好ましい。積層の構成としてはポリオレフィン系繊維層をA層、ポリオレフィン系多孔フィルム(層)をB層、他の繊維層をA’層(A層と同じものでも異なっていてもよい)、他の多孔フィルム(層)をB’層(B層と同じものでも異なっていてもよい)としたときに、A/B、A/B/A’、A/A’/B/A’/A、A/B/B’/A’などが挙げられ、中でも、A/B、A/B/A、A/B/A’の構成が好ましい。
【0052】
繊維層と多孔フィルム(層)を接着する方法としては、過度の熱により、繊維層や多孔フィルム(層)が所望の状態を超えて溶融または融着すること防ぐため、超音波接着加工や、柄高さが1mm以上でかつ表面にフッ素樹脂(加工)などの低表面張力化するコーティングを施した熱エンボスロールを用いた熱接着加工、または接着剤を用いた加工を用いることができる。フッ素樹脂(加工)などの低表面張力化をロール表面へ行うことにより、ロールと材料とのはく離性が良くなるほか、エンボスのエッジ部分でフィルムを傷つけ、バリア性を損なうことを防ぐことができる。
【0053】
加工時は、エンボスロールを100℃以上、好ましくは120℃以上とし、受けロールには、硬度が50〜90のシリコーンゴムを用いたロールを採用することが好ましい。片面より、熱をかけることにより、ロールに材料が取られて加工性が悪くなることを防ぐことができる。
【0054】
超音波接着加工は、超音波振動するブレードと接着材料と特定のパターンを有するエンボスロールの間に0.01MPa〜1MPaの圧力で挟み込み、ブレードと呼ばれる振動子を超音波振動1〜5万Hzで振動させ、ブレードと接触するパターン部分を溶融接着させる方法が例示される。ブレードは、おもに摩擦に強いチタン製が用いられるが、その他、アルミ、ステンレス合金などが用いられる。また、ブレード幅は、10〜50cm幅のものが用いられる。
【0055】
柄高さが1mm以上の熱エンボスロールを用いた熱接着加工は、エンボスパターンの深さが1mm以上の熱エンボスロールを用い、パターン以外には、布帛に熱をかけずに、接着加工を行う。柄高さとは、熱エンボスロールのエンボス柄を構成するエッジの上部と下部との距離をいう。熱エンボスの温度は、60℃以上が好ましく、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。一方、170℃以下が好ましく、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは135℃以下である。また、熱エンボスロールとそれを挟み込むニップロールの押し圧力は0.5MPa以上が好ましく、より好ましくは1MPa以上である。一方、10MPa以下が好ましく、より好ましくは5MPa以下である。
【0056】
本発明の多孔性積層体は、隣接する繊維層と多孔フィルム(層)との間が50%以下の面積の領域で接着していることが好ましい。本発明では、隣接する繊維層と多孔フィルム(層)との少なくとも1対が特定面積で接着していればいいが、本発明の効果をさらに得ようとすると、隣接する繊維層と多孔フィルム(層)とのすべての対がこの面積比率の範囲で接着していることが好ましい。接着面積の下限としては、5%以上が好ましい。一方、50%以下が好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。接着面積の比率が高すぎると、多孔性積層体が固くなりすぎ、医療用衣服としての着用性や医療用滅菌包装材料としての柔軟性に劣る場合がある。接着パターンには、特に限定されないが、ピンポイント柄、クロス柄、格子柄、波柄、斜線柄などの柄を用いることができる。縫製を考えた際は、左右対称が好ましく、ピンポイント柄、クロス柄、格子柄、波柄などが好ましい。
【0057】
また、接着部分は繊維の一部または全部が溶融され膜状となっていることが好ましい。膜状部分の厚みは、0.01〜0.5mmであることが好ましく、接着部分一つの断面積は、0.001mm〜100mmであることが好ましい。これらの厚み、断面積は、接着部分の断面を繊維方向に直交するように(すなわち、断面積が最小となるように)ミクロトームを用いて切断し、SEM写真にて断面の面積を拡大撮影し、画像解析ソフトにより厚み、面積を求める。
【0058】
上記いずれの方法も、接着したところ以外に、熱がかからないことから、熱による繊維層と多孔フィルム(層)のダメージが少なく、繊維の溶融や多孔フィルムに熱がかかることによる収縮を抑制することができる。
【0059】
本発明の多孔性積層体は、滅菌処理した後でも優れた透湿性と外観を維持しており、なおかつ血液バリア性やウイルスバリア性などのバリア性にも優れていることから、医療用滅菌包装材料や医療用衣服など医療関連用途に広く好適に用いることができるのはもちろん、防護服用途、カイロ用包材、おむつや生理用品、絆創膏、油吸着シート、更には土木建材用途においても好適に用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
【0061】
(1)121℃または130℃熱処理
多孔性積層体サンプルを長手方向および幅方向がともに200mmとなるような正方形に切り出し、121℃または130℃に設定したオーブンで無荷重にて30分間熱処理した。
【0062】
(2)高圧水蒸気処理
多孔性積層体から200mm四方の矩形(正方形)を切り出し、オートクレーブを用いて、121℃または130℃の高圧水蒸気下で30分間処理を行った。
【0063】
(3)透湿度
JIS L1099(2012)のA−1法(塩化カルシウム法)に基づき、多孔性積層体の透湿度の測定を3回行い、その平均値を多孔性積層体の透湿度とした。なお、単位はg/m・hで評価した。
【0064】
(4)血液バリア性
JIS T8060(2007)の手順D(8.3項の表1参照)に基づき、多孔性積層体の血液バリア性を測定し、クラス1〜6で評価した。
【0065】
(5)ウイルスバリア性
JIS T8061(2010)の手順D1(8.8項の表1参照)に基づき、多孔性積層体のウイルスバリア性を測定し、クラス1〜6で評価した。
【0066】
(6)熱収縮率
<1>熱処理による熱収縮率
多孔性積層体の長手方向もしくは幅方向が各々長辺となるように、200mm×10mmの矩形に試料を5本切り出す。両端から25mmの位置に印を付けて試長150mm(l)とする。次に、荷重3gを付けて121℃または130℃に保温されたオーブン内に吊し、30分加熱後に取り出して、室温で冷却後、寸法(l)を測定して下記式にて求め、5本の平均値を各々の長辺方向、すなわち積層体の長手方向もしくは幅方向の熱収縮率とした。
【0067】
熱収縮率={(l−l)/l}×100(%)
<2>高圧水蒸気処理による熱収縮率
処理条件を、オートクレーブを用いて高圧水蒸気により121℃30分間の処理とする以外は、前記<1>と同様に測定を行い、積層体の長手方向もしくは幅方向の熱収縮率を評価した。
【0068】
(7)ポリオレフィン系多孔フィルムのβ晶形成能
多孔フィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から260℃まで20℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却した。5分保持後、再度20℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークにについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とした。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
【0069】
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出することで、その試料の状態でのβ晶分率を算出することができる。
【0070】
(8)ポリオレフィン系多孔フィルムまたは多孔性積層体の厚み
接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.06N)にて測定した。測定は場所をかえて10回行い、その平均値をサンプルの厚みとした。
【0071】
(9)ポリオレフィン系多孔フィルムの曲路率
多孔質体における細孔モデルにおいて、流体の透過速度と空孔率や孔径や流体の粘度との関係は、式(1)で表される。
【0072】
u=(d・ε/100)ΔP/(2ηLτ) ・・・(1)
ここで、u(m/sec)は流体の透過速度、d(m)は孔径、ε(%)は空孔率、ΔP(Pa)は圧力差、η(Pa・sec)は流体の粘度、L(m)は膜厚、τ(無次元)は曲路率である。なお、本式を変形すると、曲路率は式(2)のように表される。
【0073】
τ=d(εΔP/2ηLu)0.5 ・・・(2)
ここで、各パラメータは以下に従って求め、それぞれ式(2)に代入し、曲路率を求めた。
【0074】
<孔径d(m)>
POROUS MATERIALS,Inc.製自動細孔径分布測定器“PERM−POROMETER”を用いて測定した。なお、測定条件は以下の通りである。
【0075】
試験液:3M製“フロリナート”FC−40
試験温度:25℃
試験ガス:空気
解析ソフト:Capwin
測定条件:Capillary Flow Porometry−Wet up,Dry downのdefault条件による自動測定
なお、孔径(細孔直径)と試験圧力の間には以下の関係式が成立する。
【0076】
d=Cγ/P×10
[ただし、d:細孔直径(nm)、C:定数、γ:フロリナートの表面張力(16mN/m)、P:圧力(Pa)である。]
ここでは、上記に基づき、装置付属のデータ解析ソフトを用いて、1/2半濡れ曲線から平均孔径を算出した。但し、測定時の圧力上限の問題により、測定限界を37nmとした。同じサンプルについて同様の測定を、場所を変えて5回行い、得られた平均孔径の平均値を当該サンプルにおける貫通孔の孔径とした。
【0077】
<空孔率ε(%)>
多孔性フィルムを100mm×100mmの大きさの正方形を切り出しサンプルとする。サンプルの各辺の長さをノギスを用いて精密に測定し、対向する2辺の長さの平均値を用い、長方形と考えてサンプルの面積を算出する。つぎに、サンプルの4隅と中央部分の厚みを前記(8)項に記載の装置を用いて測定し、その平均値を代表厚みとする。サンプルを電子天秤を用いて質量を測定し、以下の式を用いて密度を算出する。
【0078】
密度(g/cm)=質量(g)÷サンプル面積(cm)×代表厚み(cm)
<流体粘度η(Pa・sec)>
測定装置はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製レオメーターAR1000を使用し、測定用ジオメトリーには、直径40mm 角度2°のコーンアンドプレートを使用した。測定は25℃でステップ状にせん断速度を変化させた定常流測定を行った。本実験で用いた流体(ジメチルカーボネート:エチレンカーボネート=7:3(質量比))。測定条件の詳細はせん断速度100s−1で予備せん断(30秒間)後、せん断速度100s−1から0.01s−1まで対数間隔で計16点(1,000s−1、10s−1、0.1s−1、0.01s−1の計4点を含む16点)の測定を行った。結果、流体粘度は0.001Pa・sec(25℃)であった。
【0079】
<圧力差ΔP(Pa)>
0.2MPa(=2×10Pa)にて測定。
【0080】
<膜厚L(m)>
前記(8)項に記載の方法で測定した厚みを用いた。
【0081】
<透過速度u(m/sec)>
試料を円形に切り出し、アドバンテック東洋(株)社製タンク付きステンレスホルダーKST−47(濾過面積0.181m)に取り付けた。ここにジメチルカーボネート:エチレンカーボネート=7:3(質量比、密度1.115g/cm)を入れ、圧力2×10Paで5g(=0.0045m)透過するのにかかる時間T(sec)を計測し、下記式より透過速度u(m/sec)を算出した。
【0082】
u=T×0.045/0.181
(10)単位面積当たりの質量(目付:g/m
JIS L1913(2010) 6.2単位面積当たりの質量(ISO法)に基づいて測定した。試料から250mm×250mmの大きさの試験片を,テンプレートとかみそり刃とを用いて3枚採取し、その重さを測定し、平均値を求めた。その平均値を16倍して、単位面積当たりの質量(g/m)とした。
【0083】
(11)処理後の透湿性
前記(1)に記載の熱処理または(2)項に記載の高圧水蒸気処理を行った多孔性積層体について、前記(3)項に記載の方法で透湿度を測定し、以下の基準で評価した。
【0084】
A:350g/m・h以上
B:150g/m・h以上350g/m・h未満
C:150g/m・h未満
(12)処理後のバリア性
前記(1)に記載の熱処理または(2)項に記載の高圧水蒸気処理を行った多孔性積層体について、前記(4)または(5)項に記載の方法で血液バリア性またはウイルスバリア性の評価を行い、以下の基準で判定した。
【0085】
A:血液バリア性クラス6、かつウイルスバリア性クラス5以上
B:血液バリア性クラス4〜5でありウイルスバリア性クラス3以上
または、血液バリア性クラス4以上でありウイルスバリア性クラス3〜4
C:血液バリア性クラス4未満、またはウイルスバリア性クラス3未満
(13)処理後の外観
前記(1)に記載の熱処理または(2)項に記載の高圧水蒸気処理を行った多孔性積層体の外観を以下の基準で評価した。
【0086】
A:撓みなし
B:撓みあり
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)製、FLX80E4、融点165℃、MFR=8g/10分)98.0質量部に、高MFRポリプロピレン樹脂(出光興産(株)製“エルモーデュ”S400、融点80℃、MFR=2,000g/10分)1.5質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASF製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして核剤混合原料Aを得た。
【0087】
前記核剤混合原料Aを単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストしてキャストシートを得た。ついで、126℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.4倍延伸を行った。その際の延伸速度は430,000%/分、(延伸前のフィルム幅/延伸区間)は4.5、ネックダウン率は90%であった。次に端部をクリップで把持して150℃で幅方向に7倍延伸した。さらに、幅方向に10%の弛緩を掛けながら166℃で7秒間の熱処理を行い、その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み18μmの多孔フィルムを得た。
【0088】
表面をフッ素樹脂(加工)樹脂にてコーティングした熱プレスロールを用い、目付40g/mのポリプロピレン製不織布(引張強さ120N/50mm、破裂強さ800kPa、摩耗強さ4.5級)と上記多孔フィルムを不織布、多孔フィルム、不織布の構成にて、接着面積を10%、接着部分以外はロール面が布帛に触れない柄高さ3mmのロールを用い、ロール温度150℃、受けロールは常温、ロール圧3MPa、加工速度2m/分で、接着加工を行い、多孔性積層体を得た。得られた多孔性積層体の評価結果を表1に示す。
【0089】
(実施例2)
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)製、FLX80E4、融点165℃、MFR=8g/10分)98.5質量部に、高MFRポリプロピレン樹脂(出光興産(株)製“エルモーデュ”S400、融点80℃、MFR=2,000g/10分)1.0質量部に、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASF製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして核剤混合原料Bを得た。
【0090】
前記核剤混合原料Bを単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストしてキャストシートを得た。ついで、126℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。その際の延伸速度は150,000%/分、(延伸前のフィルム幅/延伸区間)は4.0、ネックダウン率は89%であった。次に端部をクリップで把持して150℃で幅方向に6倍延伸した。さらに、幅方向に15%の弛緩を掛けながら165℃で7秒間の熱処理を行い、その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み18μmの多孔フィルムを得た。
【0091】
表面をフッ素樹脂(加工)樹脂にてコーティングした熱プレスロールを用い、目付40g/mのポリプロピレン製不織布(引張強さ150N/50mm、破裂強さ1,200kPa、摩耗強さ4.5級)と上記多孔フィルムを不織布、多孔フィルム、不織布の構成にて、接着面積を10%、接着部分以外はロール面が布帛に触れない柄高さ3mmのロールを用い、ロール温度150℃、受けロールは常温、ロール圧3MPa、加工速度2m/分で、接着加工を行い、多孔性積層体を得た。得られた多孔性積層体の評価結果を表1に示す。
【0092】
(実施例3)
MFR=8g/10分のポリプロピレン樹脂96.5質量部、MFR=0.5g/10分のポリプロピレン樹脂1.0質量部、MFR=2,000g/10分のメタロセン触媒系ポリプロピレン樹脂2.0質量部にN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンカルボキサミドを0.3質量部、酸化防止剤イルガノックス1010(登録商標)を0.1質量部、イルガフォス168(登録商標)を0.1質量部の割合で混合されるように計量しながらに軸押出し機に供給し、樹脂温度305℃にて溶融混練し、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットを行い核剤混合原料Cを得た。
【0093】
前記核剤混合原料Cを単軸押出機に供給し、210℃にて溶融押出を行った。Tダイから120℃に温度制御した冷却ドラム上にキャストし、未延伸フィルムを得た。ついで、125℃に加熱し、そのままロールの周速差を利用して、フィルム長手方向に5倍延伸を行った。この際、延伸前のフィルム幅と延伸区間の関係は、フィルム幅/延伸区間長=3であり、延伸後のフィルム幅は延伸前の93%であった。
【0094】
次に一軸延伸フィルムをテンター式延伸機に導入し、フィルム端部をクリップで把持して150℃に加熱し、フィルム幅方向に7倍延伸を行い、そのまま162℃での熱固定および幅方向に10%の弛緩処理を行い、厚み18μmの多孔性フィルムを得た。
【0095】
前記多孔フィルムと目付40g/mのポリプロピレン製不織布(引張強さ120N/50mm、破裂強さ800kPa、摩耗強さ4.5級)を、不織布/多孔性フィルム/不織布の2種3層積層となるように重ね合わせし、表面をフッ素樹脂(加工)樹脂にてコーティングした熱プレスロールを用い、接着面積を10%、接着部分以外はロール面が不織布と触れない柄高さ3mmのロールを用い、ロール温度152℃、受けロールは常温、ロール圧3MPaで接着加工を行い、多孔性積層体を得た。得られた多孔性積層体の評価結果を表1に示す。
【0096】
(実施例4)
MFR=8g/10分のポリプロピレン樹脂96.5質量部、MFR=350g/10分の高MFRポリプロピレン樹脂3質量部に、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン0.3質量部と酸化防止剤イルガノックス1010(登録商標)を0.1質量部、イルガフォス168(登録商標)を0.1質量部の割合で混合されるように計量しながらに軸押出し機に供給し、樹脂温度305℃にて溶融混練し、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットを行い核剤混合原料Dを得た。
【0097】
前記核剤混合原料Dを単軸押出機に供給し、210℃にて溶融押出を行った。Tダイから120℃に温度制御した冷却ドラム上にキャストし、未延伸フィルムを得た。ついで、125℃に加熱し、そのままロールの周速差を利用して、フィルム長手方向に5.2倍延伸を行った。この際、延伸前のフィルム幅と延伸区間の関係は、フィルム幅/延伸区間長=2.8であり、延伸後のフィルム幅は延伸前の89%であった。
【0098】
次に一軸延伸フィルムをテンター式延伸機に導入し、フィルム端部をクリップで把持して155℃に加熱し、フィルム幅方向に6倍延伸を行い、そのまま160℃での熱固定および幅方向に10%の弛緩処理を行い、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
【0099】
前記多孔フィルムと目付40g/mのポリプロピレン製不織布(引張強さ100N/50mm、破裂強さ700kPa、摩耗強さ4.5級)を、不織布/多孔性フィルムの2種2層積層となるように重ね合わせし、表面をフッ素樹脂(加工)樹脂にてコーティングした熱プレスロールを用い、接着面積を10%、接着部分以外はロール面が不織布と触れない柄高さ3mmのロールを用い、ロール温度150℃、受けロール(多孔フィルム側)は常温、ロール圧3MPaで接着加工を行い、多孔性積層体を得た。得られた多孔性積層体の評価結果を表1に示す。
【0100】
(比較例1)
多孔フィルム作製時、長手方向に延伸する工程において、延伸速度が46,000%/分、(延伸前のフィルム幅/延伸区間)が1.1、ネックダウン率が74%である以外は実施例1に記載の方法で多孔性積層体を得た。得られた多孔性積層体の評価結果を表2に示す。
【0101】
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)製、FLX80E4、融点165℃、MFR=8g/10分)99.45質量部に、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASF製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15質量部、0.1質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして核剤混合原料Eを得た。
【0102】
前記核剤混合原料Eを単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストしてキャストシートを得た。ついで、120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。その際の延伸速度は42,000%/分、(延伸前のフィルム幅/延伸区間)は1.1、ネックダウン率は70%であった。次に端部をクリップで把持して150℃で幅方向に2.5倍延伸した。さらに、160℃で5秒間の熱固定を行い、幅方向に10%の弛緩を掛けながら160℃で5秒間の熱処理を行い、最後に160℃で5秒間熱固定を行った。その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み18μmの多孔フィルムを得た。
【0103】
表面をフッ素樹脂(加工)樹脂にてコーティングした熱プレスロールを用い、目付40g/mのポリプロピレン製不織布(引張強さ120N/50mm、破裂強さ800kPa、摩耗強さ4.5級)と上記多孔フィルムを不織布、多孔フィルム、不織布の構成にて、接着面積を10%、接着部分以外はロール面が布帛に触れない柄高さ3mmのロールを用い、ロール温度152℃、受けロールは常温、ロール圧3MPa、加工速度2.5m/分で、接着加工を行い、多孔性積層体を得た。得られた多孔性積層体の評価結果を表2に示す。
【0104】
(比較例3)
MFR=2g/10分のポリプロピレン樹脂40質量部、MFR=30g/10分のポリプロピレン樹脂60質量部に、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンカルボキサミドを0.3質量部、酸化防止剤イルガノックス1010(登録商標)を0.1質量部、イルガフォス168(登録商標)を0.1質量部の割合で混合されるように計量しながらに軸押出し機に供給し、樹脂温度305℃にて溶融混練し、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットを行い核剤混合原料Fを得た。核剤混合原料FのMFRは11g/10分であった。
【0105】
前記核剤混合原料Fを単軸押出機に供給し、220℃にて溶融押出を行った。Tダイから120℃に温度制御した冷却ドラム上にキャストし、未延伸フィルムを得た。ついで、120℃に加熱し、そのままロールの周速差を利用して、フィルム長手方向に5倍延伸を行った。この際、延伸前のフィルム幅と延伸区間の関係は、フィルム幅/延伸区間長=1であり、延伸後のフィルム幅は延伸前の78%であった。
【0106】
次に一軸延伸フィルムをテンター式延伸機に導入し、フィルム端部をクリップで把持して155℃に加熱し、フィルム幅方向に6.5倍延伸を行い、そのまま160℃での熱固定および幅方向に5%の弛緩処理を行い、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
【0107】
前記多孔フィルムと目付40g/mのポリプロピレン製不織布(引張強さ120N/50mm、破裂強さ800kPa、摩耗強さ4.5級)を、不織布/多孔性フィルムの2種2層積層となるように重ね合わせし、表面をフッ素樹脂(加工)樹脂にてコーティングした熱プレスロールを用い、接着面積を10%、接着部分以外はロール面が不織布と触れない柄高さ3mmのロールを用い、ロール温度150℃、受けロール(多孔フィルム側)は常温、ロール圧3MPaで接着加工を行い、多孔性積層体を得た。得られた多孔性積層体の評価結果を表2に示す。
【0108】
(比較例4)
MFR=4g/10分のエチレンランダム共重合ポリプロピレン樹脂(融点155℃)99.5質量部にN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンカルボキサミドを0.3質量部、酸化防止剤イルガノックス1010(登録商標)を0.1質量部、イルガフォス168(登録商標)を0.1質量部の割合で混合されるように計量しながらに軸押出し機に供給し、樹脂温度300℃にて溶融混練し、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットを行い核剤混合原料Gを得た。
【0109】
前記核剤混合原料Gを単軸押出機に供給し、220℃にて溶融押出を行った。Tダイから120℃に温度制御した冷却ドラム上にキャストし、未延伸フィルムを得た。ついで、120℃に加熱し、そのままロールの周速差を利用して、フィルム長手方向に5倍延伸を行った。この際、延伸前のフィルム幅と延伸区間の関係は、フィルム幅/延伸区間長=0.8であり、延伸後のフィルム幅は延伸前の75%であった。
【0110】
次に一軸延伸フィルムをテンター式延伸機に導入し、フィルム端部をクリップで把持して150℃に加熱し、フィルム幅方向に4倍延伸を行い、そのまま150℃での熱固定および幅方向に10%の弛緩処理を行い、厚み15μmの多孔性フィルムを得た。
【0111】
前記多孔フィルムと目付40g/mのポリプロピレン製不織布(引張強さ120N/50mm、破裂強さ800kPa、摩耗強さ4.5級)を、不織布/多孔性フィルムの2種2層積層となるように重ね合わせし、表面をフッ素樹脂(加工)樹脂にてコーティングした熱プレスロールを用い、接着面積を10%、接着部分以外はロール面が不織布と触れない柄高さ3mmのロールを用い、ロール温度150℃、受けロール(多孔フィルム側)は常温、ロール圧3MPaで接着加工を行い、多孔性積層体を得た。得られた多孔性積層体の評価結果を表2に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の多孔性積層体は、医療用滅菌包装材料や衣服として用いた場合、オートクレーブ滅菌などの高圧蒸気滅菌処理を施しても優れた透湿性を維持しており、なおかつ血液やウイルスバリア性にも優れており、医療用滅菌包装材料用途、更には医療用衣服に好適に用いることができる多孔性積層体として提供することができる。