【実施例】
【0027】
本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。
【0028】
[1]使用材料
(1)セメント
普通ポルトランドセメント(宇部興産社製、密度3.16/cm
3)
(2)骨材
(2.1)細骨材
山砂(表乾密度:2.62/cm
3)
(2.2)粗骨材
石灰石骨材(表乾密度:2.69/cm
3)
(3)化学混和剤
高性能AE減水剤(シーカメント1100NT:日本シーカ株式会社製)
(4)練混ぜ水
(4.1)上水道水
(4.2)スラッジ水
スラッジ水は安定した品質を保つために模擬スラッジ水を調製し実験に供した。まず、質量比で、普通ポルトランドセメント:石灰石微粉末(100メッシュアンダー品):山砂(0.6mm未満)=9:0.5:0.5となるようにしてこれらの材料をプラスチック製の円形容器に投入し、次に固形分濃度20質量%となるように水を加え攪拌機により攪拌状態で一夜間保管し、模擬スラッジ水とした。
(5)添加剤
(5.1)付着モルタル安定剤(以下安定剤と略記する)
デルボクリーン110(オキシカルボン酸系、BASFジャパン株式会社製)
*「デルボクリーン110」はJIS A 5308「レディーミクストコンクリート」付属書D「トラックアジテータのドラム内に付着したモルタルの使用方法」の規定に適合する安定剤である。
(5.2)回収水改質剤(以下改質剤と略記する)
リカバー(オキシカルボン酸系、グレースケミカルズ株式会社製)
*「リカバー」はJIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)の「減水剤遅延形I種」に性能に適合する改質剤である。
【0029】
安定剤または改質剤は上述した模擬スラッジ水作製後、2時間後に添加した。安定剤の添加量は、固形分濃度20%の模擬スラッジ水、20リットルに対して0.1、0.3、0.5質量%とし、それぞれ20、60、100cc添加した。
【0030】
改質剤の添加量は、固形分濃度20%の模擬スラッジ水、20リットルに対して0.2%質量とし、40cc添加した。
【0031】
[フレッシュコンクリートの調製]
上記のセメント及び細骨材を水平二軸形強制ミキサ内に投入して15秒間攪拌混合した後、スラッジ水または上記の安定剤または減水剤を添加したスラッジ水、混和剤と上水道水を混合した練混ぜ水を当該ミキサ内に投入して120秒間攪拌し、上記の粗骨材をさらに投入して120秒攪拌を行い5分間静置した後に30秒間攪拌することによって、フレッシュコンクリートを製造した。
【0032】
フレッシュコンクリートの配合は、高性能AE減水剤を用いた高強度コンクリート(W/C:30%、目標スランプフロー65cm)とした。実験では上水道水、スラッジ水及び安定剤または改質剤の添加量を変えたスラッジ水を比較した。スラッジ固形分(密度2.1g/cm
3と仮定)は細骨材に置換し、所要のスランプフローを得るための調整は、高性能AE減水剤量により行った。フレッシュコンクリートの測定は、練混ぜ直後のスランプフロー値と、30分後及び60分後のスランプフロー値を測定した。また、施工性の評価を定量的に行うためにV漏斗とストップウォッチを用いて、コンクリートの全量がV漏斗から排出されるまでに要した時間を測定した。
【0033】
圧縮強度試験は、標準水中養生とし、材齢は7、28日とした。
【0034】
表1に実験水準及び実験結果を示す。なお、表1中の「スラッジ固形分率」とは、上述した模擬スラリー中の固形分とセメント(C)との質量比(模擬スラリー中の固形分の質量÷セメントの質量)である。ここで固形分率3%の割合になるように、模擬スラッジ水の使用量を調整した。
【0035】
【表1】
【0036】
スランプフローの測定は、JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」に準じて行った。空気量の測定は、JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法(空気圧力方法)」に準じて行った。凝結試験は、JIS A 1147「コンクリートの凝結時間試験方法」に準じて行った。V漏斗流下時間は、JASS 5 M−702「高強度コンクリート用混和剤の性能判定基準」に準じて行った。圧縮強度試験は、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて行った。
【0037】
また、
図1は、練り混ぜ水に上水道水、固形分率3%のスラッジ水(安定剤無添加)、固形分率3%のスラッジ水に安定剤をそれぞれ0.1、0.3、0.5%添加したスラッジ水、並びに、固形分率3%のスラッジ水に改質剤を0.2%添加したスラッジ水を使用した場合の60分後の漏斗流下時間のグラフである。
【0038】
図2は、練り混ぜ水に上水道水、固形分率3%のスラッジ水(安定剤無添加)、固形分率3%のスラッジ水に安定剤をそれぞれ0.1、0.3、0.5%添加したスラッジ水を使用した場合の経過時間に伴うスランプフロー保持率を表したグラフである。
【0039】
ここで、スランプフロー保持率とは、コンクリートの経過時間のコンシステンシーの変化量としての指標であるスランプフロー保持性について練り上り直後のスランプフロー値に対する経過時間30分後及び60分後のスランプフロー値の割合である。
図2及び
図3に示す漏斗流下時間は施工性の指標とした練り上り直後と60分後のコンクリートの流下時間の測定値である。
【0040】
図3及び
図4は、練り混ぜ水に上水道水、固形分率3%のスラッジ水(安定剤無添加)、固形分率3%のスラッジ水に安定剤をそれぞれ0.1、0.3、0.5%添加したスラッジ水を使用した場合の練り上り直後の漏斗流下時間と60分後の漏斗流下時間のグラフである。
【0041】
図5は、練り混ぜ水に上水道水、固形分率3%のスラッジ水(安定剤無添加)、固形分率3%のスラッジ水に安定剤をそれぞれ0.1、0.3、0.5%添加したスラッジ水を使用した場合の凝結時間のグラフである。
【0042】
図6は、練り混ぜ水に上水道水、固形分率3%のスラッジ水(安定剤無添加)、固形分率3%のスラッジ水に安定剤をそれぞれ0.1、0.3、0.5%添加したスラッジ水を使用した場合の7日及び28日材齢の圧縮強度のグラフである。
【0043】
表1に示す結果から、所要のスランプフローを得るための高性能AE減水剤量は、固形分率3%のスラッジ水の場合、上水道水の場合に比べ添加量が増大した。固形分率3%のスラッジ水に安定剤をそれぞれ0.1、0.3、0.5%添加したスラッジ水を使用した場合は、固形分率3%のスラッジ水(安定剤無添加)の場合と比べて、安定剤の添加率が多くなるほど高性能AE減水剤量が減少した。
【0044】
図1に示す結果から、60分後のV漏斗流下時間は、安定剤を添加したスラッジ水を使用した場合、安定剤の添加量が増大するほど流下時間が早い結果となった。改質剤を0.2%添加したスラッジ水を使用した場合は、安定剤を0.1%、0.3%及び0.5%添加したスラッジ水を使用した場合の何れと比較しても、60分後のV漏斗流下時間は遅くなった。この結果より、安定剤を添加した方がV漏斗流下時間が早くなり流動性改善に効果的であることがわかる。
【0045】
図2に示す結果から、スラッジ水(安定剤無添加)を使用した場合や、安定剤を0.1、0.3%添加したスラッジ水を使用した場合は、上水道水を使用した場合と比べて同等のスランプフロー保持率となったが、安定剤を0.5%添加したスラッジ水を使用した場合は、30分後、60分後と保持率が若干小さくなった。
【0046】
図3及び4に示す結果から、スラッジ水(安定剤無添加)を使用した場合は、練り上り直後と60分後の流下時間は長い結果となり、粘性が大きくなる傾向が認められた。スラッジ水に安定剤をそれぞれ0.1、0.3、0.5%添加したスラッジ水を使用した場合、安定剤の添加率が多くなるほど練り上り直後と60分後の流下時間は早い結果となり、粘性が小さくなる傾向が認められた。0.5%添加したスラッジ水を使用した場合、練り上り直後と60分後の流下時間は上水道水と比較して同等であり、粘性が低減できた。
【0047】
図5に示す結果から、スラッジ水(安定剤無添加)を使用した場合は、上水道水と比べて、約40分早い結果となった。スラッジ水に安定剤をそれぞれ0.1、0.3、0.5%添加したスラッジ水を使用した場合、安定剤の添加率が多くなるほど凝結時間は遅い結果となった。しかしながら、最大で50分であり、仕上げや打ち継ぎ等の施工上の問題となるような結果ではないと考えられる。
【0048】
図6に示す結果より、強度結果においては、安定剤を0.1、0.3、0.5%添加したいずれの条件においても上水道水と比べて差異はなかった。