(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
アナログ信号の信号経由で用いるスイッチの特性は、スイッチのオン抵抗がアナログ信号に歪を与えないことが重要になる。AD変換回路(Analog-to-Digital Converter: ADC)は、スイッチ回路と、サンプリング用容量を有する。ADCにおいて、アナログ信号をサンプリングするスイッチ回路によって信号に歪が生じた場合は、そのままADCの変換特性が悪化することになる。ADCのスイッチ回路でアナログ信号をサンプリングするのに使用されるトランジスタをサンプリング用トランジスタと称する。以下、ADCに限らず、アナログ信号をオン・オフするアナログスイッチを形成するトランジスタを、ここではサンプリング用トランジスタと称する。言い換えれば、サンプリング用トランジスタと称してもADCに限定されるものではなく、アナログスイッチ回路のメインスイッチに使用されるものであればよい。
【0003】
アナログ信号をサンプリングするスイッチ回路として、並列に接続したNMOSとPMOSを有するCMOSスイッチが使用されるが、入力電圧に応じてNMOSとPMOSのゲート−ソース間電圧Vgsが変化する。そのため、CMOSスイッチでは入力電圧によってオン抵抗が変化してアナログ信号に歪が生じる。
【0004】
入力電圧によってオン抵抗が変化することにより生じる信号の歪を低減させて、アナログ信号処理の精度を向上させる技術としてブートストラップスイッチ(以降、BSWと称する)が知られている。BSWは、サンプリング用トランジスタのゲート−ソース間電圧をほぼ一定に保つことができる。BSWをアナログ信号のスイッチ回路に使用することでオン抵抗が変化することにより生じる信号の歪を低減させ、アナログ信号処理の精度を向上させることができる。
【0005】
近年、消費電力低減のため動作電圧の低下が著しく、さらに回路素子の微細化が進められており、回路素子の耐圧が低下している。BSWを形成するトランジスタも同様に耐圧が低下しており、BSWのトランジスタの耐圧は、電源電圧の2倍より低い値に低下している。上記のBSWは、入力信号が0Vから電源電圧VDDの間でフルスイングする場合、サンプリング用トランジスタがオンからオフに遷移するとき、電源電圧の2倍に近い電圧が回路の一部のトランジスタに印加される場合が生じ得る。
【0006】
この耐圧の問題を回避するため、サンプリング用トランジスタをオフする時に、サンプリング用トランジスタのゲート電圧を低電位にする制御回路を、直列に接続した2段のトランジスタで形成し、各トランジスタに印加される電圧を低減することが行われる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態のスイッチ回路を説明する前に、一般的なスイッチ回路について説明する。
図1は、CMOSスイッチの構成および動作を示す図であり、(A)および(B)が回路構成および動作説明を、(C)がトランジスタのゲート−ソース間電圧Vgsの変化を示す。
【0015】
CMOSスイッチは、アナログ信号をサンプリングするスイッチとして広く使用されている。CMOSスイッチは、入力ノードと出力ノード間に並列に接続されたNMOSおよびPMOSと、NMOSのゲートを0VとVDDの間で切り換えるスイッチSWXと、PMOSのゲートをVDDと0Vの間で切り換えるスイッチSWYと、を有する。
【0016】
図1の(A)に示すように、スイッチSWXを0Vに、スイッチSWYをVDDに接続すると、NMOSおよびPMOSがオフし、CMOSスイッチは遮断状態になる。
図1の(B)に示すように、スイッチSWXをVDDに、スイッチSWYを0Vに接続すると、NMOSおよびPMOSがオンし、CMOSスイッチは通過状態になり、入力ノードのアナログ入力信号Viを出力ノードにてアナログ出力信号Voとして出力する。この場合、
図1の(C)に示すように、入力信号Viの電圧に応じてNMOSとPMOSのVgsが変化するため、CMOSスイッチでは入力電圧によってオン抵抗が変化してアナログ信号に歪が生じる。
【0017】
CMOSスイッチにおける入力電圧によるオン抵抗の変化に伴って生じる信号の歪を低減させて、アナログ信号処理の精度を向上させる技術としてブートストラップスイッチ(以降、BSWと称する)が知られている。
【0018】
図2は、ブートストラップスイッチ(BSW)の構成および動作を示す図であり、(A)および(B)が回路構成および動作説明を、(C)がサンプリング用トランジスタのゲート−ソース間電圧Vgsの変化を示す。
【0019】
BSWは、サンプリング用トランジスタに相当するNMOSトランジスタM0と、蓄電容量素子C0と、3個のスイッチSW1−SW3と、を有する。M0は、入力ノードと出力ノード間に接続され、アナログ入力信号Viをアナログ出力信号Voとして伝達するメインのトランジスタになる。SW1とC0とSW2は、0V電源(第2電位電源)とVDD電源(第1電位電源)間に直列に接続される。ここで、VDD電源(第1電位電源)の電圧は例えば、1.0〜1.2Vであり、0V電源(第2電位電源)の電圧(0V)よりも高い。SW2は、C0の一方の端子を、VDD電源またはM0のゲートに接続するように切り換える。SW1は、C0の他方の端子を、0V電源または入力ノード(M0のソース)に接続するように切り換える。SW3は、M0のゲートを0V電源に接続するかしないかを切り換える。
【0020】
図2の(A)に示すように、SW1を0V電源に、SW2をVDD電源に、SW3を0V電源に接続すると、M0がオフし、BSWは遮断状態になる。この時、C0は、VDDに充電される。
図2の(B)に示すように、SW1を入力ノードに、SW2をM0のゲートに接続し、SW3を開放すると、M0のゲートには、入力信号の電圧ViにC0の充電電圧VDDを加算した電圧Vi+VDDが印加され、M0オンする。これにより、入力ノードのアナログ入力信号は、出力ノードにアナログ出力信号Voとして出力される。上記のように、M0のゲート電圧はVi+VDDであり、M0のゲート−ソース間電圧Vgsは、
図2の(C)に示すように、ほぼ一定に保たれる。
【0021】
BSWをアナログ信号のサンプリングスイッチに使用することでオン抵抗が変化することにより生じる信号の歪を低減させ、アナログ信号処理の精度を向上させることができる。
【0022】
しかし、BSWを形成するトランジスタの耐圧は電源電圧の2倍より低い値になっており、BSWをトランジスタにより実際に実現した場合、BSWがオンからオフに遷移するとき、一部のトランジスタにおいて耐圧を超える場合が生じる。耐圧を超えると、トランジスタが破壊される。
【0023】
図3は、
図2のBSWにおいて、耐圧を超えることが起こり得るスイッチをトランジスタに置き換えた回路図であり、(A)がサンプリング用トランジスタがオフの状態を、(B)がサンプリング用トランジスタがオンの状態を示す。
【0024】
図3の(A)および(B)に示すように、SW3は、M0のゲートと0V電源の間に接続されたNMOSトランジスタM5で実現される。M5のゲートには、制御信号Φが印加される。
【0025】
図3の(A)に示すように、Φ=VDD(高レベル)の時、SW1は0V電源に、SW2はVDD電源に、SW3は0V電源に接続されてオンし、M0のゲート(ノードG)は0Vになるので、M0はオフし、BSWは遮断状態になる。この時、C0はVDDに充電される。ここで、C0の高側の端子をHで、低側の端子をLで表す。
【0026】
図3の(B)に示すように、Φ=0V(低レベル)の時、SW1は入力ノードに、SW2はM0のゲートに、M5のゲートは0Vになり、M5はオフし、M0のゲート(ノードG)には入力信号Vi+VDDが印加され、M0はオンし、BSWは導通状態になる。
【0027】
例えば、Viが0VとVDDの間でフルスイングする場合を考える。Vi=VDDの時、ノードGは2×VDDになり、M5のドレイン−ソース間電圧は2×VDDになり耐圧を超える。
【0028】
図4は、耐圧の問題を回避するように変形したBSWの回路図であり、(A)がサンプリング用トランジスタがオフの状態を、(B)がサンプリング用トランジスタがオンの状態を示す。
【0029】
図4の回路は、
図3の回路において、M5のドレインとノードGの間にNMOSトランジスタM4を挿入した回路である。M4のゲートには、VDDが印加される。
図4の(A)に示すように、Φ=VDDの時、M5がオンし、M4とM5の接続ノードD2は0Vになるので、M4がオンし、ノードGは0Vになり、M0はオフする。
【0030】
図4の(B)に示すように、Φ=0Vの時、ノードGはVi+VDDとなり、M5がオフし、M0はオンする。この時、ノードD2はVDDになるので、M4がオフし、M5のドレイン−ソース間電圧はVDDとなり、M4のドレイン−ソース間電圧はVi(最大でVDD)となり、M5のドレイン−ソース間電圧は耐圧を超えない。
【0031】
前述のように、M0がオフの状態(
図4の(A))では蓄電容量C0は電源電圧VDDが充電され、M0のゲート電圧は0Vに制御される。一方、M0がオンの状態(
図4の(B))ではM0のゲート−ソース間電圧はVDDでほぼ一定になる。このように、定常状態であれば、
図4のBSWにおいて、トランジスタM4およびM5のVgsが耐圧を超えることはない。しかし、過渡的には、耐圧を超える電圧がM4に印加される場合が起こり得る。以下、M0がオフからオン、オンからオフへ変化する過渡状態について説明する。
【0032】
図5は、
図4のBSWの動作シーケンスを示す図である。
M0がオフからオンに遷移するとき、制御信号ΦはVDDから0Vに変化する。このときM5がオフすることでノードD2は0VからVDDに変化する。次にM4がオフになり、ノードHはノードGに接続(SW2)して、ノードLは入力ノード(Vi)に接続(SW1)することで、ノードLとノードHとノードGはアナログ信号Viに応じて上昇する。
図5ではVi=VDDであるため、ノードLはVDD、ノードHおよびノードGは2×VDDまで上昇する。
【0033】
M0がオンからオフに遷移するとき、制御信号Φは0VからVDDに変化する。このときM5がオンすることでノードD2はVDDから0Vに変化する。次にM4がオンになり、ノードGを0Vに接続(VDD+Viから0Vに変化)して、ノードLは0V(SW1)、ノードHはVDD(SW2)に接続する。
【0034】
M0がオンからオフに遷移するとき、ノードGを0Vに下げるのはM4とM5が担う。M5がオンしてノードD2がVDDから0Vに変化するとき、M4の閾値をVth(M4)とすると、ノードD2の電圧がVDD−Vth(M4)以下になるまでM4のドレイン−ソース間電圧は大きくなる。
【0035】
理想的なノードGはVDD+ViであるためM4のドレイン−ソース間電圧VDSはVi+Vth(M4)まで大きくなる。このように、M0をオンからオフに遷移するとき、M4のドレイン−ソース間電圧はトランジスタ耐圧を超える場合が生じる。
【0036】
M0がオンからオフに遷移するときに
図4に示したBSWの回路構成では、M4のドレイン−ソース間電圧がVi+Vth(M4)まで上昇することは避けられない。そこで、以下に説明する実施形態のBSWでは、M0がオンからオフに遷移するときにトランジスタ(M4)が耐圧を超えないようにドレイン−ソース間電圧VDSの上昇を回避する。
【0037】
図6は、実施形態のブートストラップスイッチ(BSW)の回路図であり、サンプリング用トランジスタがオフの状態を示す。
図7は、実施形態のブートストラップスイッチ(BSW)の回路図であり、サンプリング用トランジスタがオンの状態を示す。
【0038】
図6において、参照符号10は、制御信号Φ1から制御信号Φ2およびΦ3を生成する制御信号生成回路を示す。制御信号Φ2は、制御信号Φ1を遅延した信号であり、制御信号Φ3は、制御信号Φ1をさらに遅延した信号である。
【0039】
実施形態のBSWは、アナログ入力信号Viが入力する入力ノードと、アナログ出力信号Voが出力する出力ノードとの間に接続されたサンプリング用トランジスタM0を有する。M0は、アナログ入力信号Viをアナログ出力信号Voとして伝達するメインのトランジスタである。
【0040】
実施形態のBSWは、VDD電源と0V電源の間に直列に接続されたPMOSトランジスタM3と、蓄電容量C0と、NMOSトランジスタM6と、をさらに有する。蓄電容量C0の高側端子をノードHで、低側端子をノードLで表す。M3のゲートはM0のゲート(ノードG)に接続され、M6のゲートには制御信号Φ3が印加される。実施形態のBSWは、入力ノードと蓄電容量C0のノードLの間に接続されたNMOSトランジスタM1と、M0のゲート(ノードG)と蓄電容量C0のノードHの間に接続されたPMOSトランジスタM2と、をさらに有する。M1のゲートはM0のゲート(ノードG)に接続され、M2のゲートには制御信号Φ3が印加される。M1およびM6は、
図4のSW1を形成する。M2およびM3は、
図4のSW2を形成する。
【0041】
実施形態のBSWは、M0のゲート(ノードG)と0V電源の間に直列に接続されたNMOSトランジスタM4およびM5をさらに有する。M4のゲートにはVDDが印加され、M5のゲートには制御信号Φ2が印加される。実施形態におけるM4およびM5は、
図4のM4およびM5に相当する。
以上の構成は、
図4のBSWと同じである。
【0042】
実施形態のBSWは、さらに、M0のゲート(ノードG)と0V電源の間に直列に接続された減衰容量CVD1および減衰容量CVD2と、CVD1とCVD2の接続ノードD1と0V電源の間に接続されたNMOSトランジスタM11と、を有する。M11のゲートには、制御信号Φ1が印加される。ここでは、CVD1、CVD2およびM11で形成される回路を保護回路と称する。すなわち、実施形態のBSWは、保護回路を追加したことが、
図4の回路と異なる。
【0043】
減衰容量CVD1は、M11の耐圧を満たすための保護、かつM0がオンからオフに遷移するときにノードGの電圧を低下させるために設けている。M11の制御信号Φ1は、M5がオンしてM4のドレイン−ソース間電圧が上昇するより前に、事前にM4のドレイン−ソース間電圧を小さくするために印加される。また、減衰容量CVD2は、M0がオンの定常状態において、減衰容量CVD1と減衰容量CVD2の直列容量を小さくしてノードGの電圧を減衰させないように設けている。これは、M0がオンのときにノードGの電圧が減衰するとM0のゲート−ソース間電圧が小さくなりオン抵抗が大きくなるためである。その他の基本的な動作は
図4の回路と同じであり、追加した保護回路を含めて回路動作を説明する。
【0044】
図6に示すように、Φ1=VDDで、M0がオフの状態では、
図4の回路と同様に、蓄電容量C0は電源電圧VDDが充電され、M5およびM4がオンし、M0のゲート電圧は0Vに制御される。このとき、M11のゲートはVDDであるから、M11がオンし、ノードD1も0Vに制御される。
【0045】
一方、
図7に示すように、Φ1=0Vで、M0がオンの状態では、
図4の回路と同様に、M5およびM4がオフし、M0のゲート電圧はVi+VDDとなり、M0のゲート−ソース間電圧VgsはVDDでほぼ一定になる。
【0046】
このとき、M11のゲートは0Vであるから、M11がオフし、ノードD1の電圧は、ノードGの電圧を減衰容量CVD1と減衰容量CVD2の容量比で分圧した電圧になる。
【0047】
次に、M0がオフからオン、オンからオフへ遷移する過渡状態について説明する。
図8は、実施形態のBSWの動作シーケンスを示す図である。
図8では、Vi=VDDである場合を示す。
【0048】
まず、M0がオフからオンに遷移するときについて説明する。
制御信号Φ1はVDDから0Vに変化する。実施形態のBSWで追加したM11はオフするので、ノードGには0V電源との間で減衰容量CVD1と減衰容量CVD2の直列容量が接続される。D1は、ノードGの電圧を減衰容量CVD1と減衰容量CVD2で分圧した電圧になる。
【0049】
次に、制御信号Φ2がVDDから0Vに変化するとM5はオフする。これに応じて、ノードD2は0VからVDDになり、M4がオフする。
最後に制御信号Φ3により蓄電容量C0のノードHはノードGに接続され、ノードLは入力ノードに接続されてViが印加される。これにより、ノードLとノードHとノードGはアナログ信号Viに応じて変動する状態になる。
【0050】
図8では、Vi=VDDであるため、蓄電容量C0のノードLはVDDになり、蓄電容量C0のノードHとノードGは2×VDDまで上昇する。
【0051】
M0がオンのときのノードGの電圧は以下の式(1)から求められる。
G=(VDD+Vi)×C0/(C0+C) …(1)
ただし、C=CVD1×CVD2/(CVD1+CVD2)
【0052】
次に、M0がオンからオフに遷移するときについて説明する。
制御信号Φ1は0VからVDDに変化する。実施形態のBSWで追加したM11はオンするので、ノードGには0V電源との間で減衰容量CVD1のみ接続される状態になる。
【0053】
次に制御信号Φ2が0VからVDDに変化するとM5はオンし、ノードD2はVDDから0Vに変化する。これに応じて、M4がオンになりノードGを0Vに接続(VDD+Viから0Vに変化)する。
【0054】
最後に制御信号Φ3により蓄電容量C0のノードLは0V接続され、蓄電容量C0のノードHはVDDに接続する。
【0055】
M0がオンからオフに遷移するとき、ノードGを0Vに下げるのはM4とM5が担う。ただし、
図4の回路と異なり実施形態のBSWではM4とM5によってノードGを0Vに下げる前に、減衰容量CVD1をノードGに接続することで、ノードGの電圧は、蓄電容量C0と減衰容量CVD1で分圧されることになる。
【0056】
蓄電容量C0と減衰容量CVD1で分圧してノードGの電圧を低下させることによって、M4のドレイン−ソース間電圧Vgsを小さくできる。
【0057】
このときのノードGの電圧は以下の式(2)から求められる。(
図8中の「CVD1による減衰」を参照)
G=(VDD+Vi)×C0/(C0+CVD1) …(2)
【0058】
その後、M5がオンしてノードD2がVDDから0Vに変化するとき、M4の閾値を超える電圧になるまでM4のドレイン−ソース間電圧VDSは大きくなる。
ただし、減衰容量CVD1によって事前にM4のドレイン−ソース間電圧を小さくできるため耐圧を超えないように設計できる。
【0059】
以上説明したように、
図4に示した回路では、M0をオンからオフに遷移するときにM4のドレイン−ソース間電圧がVi+Vthまで上昇することは避けられない。これは、M0をオンからオフに遷移させるには、ノードD2をM4の閾値を超える電圧になるまで下げる必要があるためである。
【0060】
これに対して、実施形態のBSWの回路では、M4とM5によってノードGをVDD+Viから0Vに変化するより前のタイミングでM11をオンしてノードGの電圧を下げる。M11をオンしたときのノードGの電圧は、蓄電容量C0と減衰容量CVD1を式(2)に従って任意に設計ができる。これによってM4のドレイン−ソース間電圧VDSが耐圧を超える課題を解決できる。したがって、減衰容量CVD1の容量値は、蓄電容量C0の容量値に比較的近い値になる。
【0061】
また、減衰容量CVD2は、M0がオンの定常状態において減衰容量CVD1と減衰容量CVD2の直列容量を小さくするために用いる。このときのノードGの電圧は蓄電容量C0と減衰容量CVD1と減衰容量CVD2を、式(1)に従うことで任意に設計できる。
【0062】
減衰容量CVD1と減衰容量CVD2の直列容量を小さくすることで、M0がオンのときのノードGの減衰を抑えることができるため、スイッチのオン抵抗は悪化しない。したがって、減衰容量CVD2の容量値は、減衰容量CVD1の容量値より十分に小さい値になる。
【0063】
次に、実施形態のスイッチ回路を適用する回路およびシステムの例を説明する。
図9は、実施形態のスイッチ回路を適用する回路およびシステムの構成例を示す図であり、(A)がADC回路を、(B)が無線通信機器の受信システムを、(C)が超音波受信システムを示す。
【0064】
図9の(A)に示すように、ADC回路20は、入力するアナログ信号をサンプリングするサンプリング回路21と、サンプリングされたアナログ信号をデジタル信号に変換するADC部22と、を有する。ADC部22の変換方式は、どのような方式のものでもよい。サンプリング回路21は、スイッチ回路23と、サンプル容量24と、を有する。スイッチ回路23に実施形態のスイッチ回路を適用することにより、アナログ信号処理(ここではAD変換処理)の精度を向上させたADC回路を、低耐圧の回路素子で形成できる。ADC回路20は、1個の半導体集積回路デバイスとして形成されても、半導体集積回路デバイスの一部として形成されてもよい。
【0065】
図9の(B)に示すように、無線通信機器の受信システムは、アンテナ31と、ローノイズアンプ(LNA)32と、フィルタ33と、周波数変換部34と、PLL35と、ADC回路36と、デジタル・ベースバンド信号処理回路部37と、を有する。ADC回路36に
図9の(A)のADC回路を適用することにより、アナログ信号処理(ここでは受信処理)の精度を向上させた受信システムを、低耐圧の回路素子で形成できる。例えば、ADC回路36とデジタル・ベースバンド信号処理回路部37は、1個の半導体集積回路デバイスとして形成されてもよい。
【0066】
図9の(C)に示すように、超音波受信システムは、超音波トランスデューサ41と、ローノイズアンプ(LNA)42と、時間ゲイン補正回路43と、フィルタ44と、ADC回路45と、デジタル演算処理回路部46と、を有する。ADC回路45に
図9の(A)のADC回路を適用することにより、アナログ信号処理(ここでは超音波受信処理)の精度を向上させた超音波受信システムを、低耐圧の回路素子で形成できる。例えば、ADC回路45とデジタル演算処理回路部46は、1個の半導体集積回路デバイスとして形成されてもよい。
【0067】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものである。特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。