(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497098
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】圧力噴霧ポットバーナの点火制御装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/20 20060101AFI20190401BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20190401BHJP
F23D 11/24 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
F23N5/20 A
F23N1/02 E
F23D11/24 H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-21989(P2015-21989)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-145659(P2016-145659A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003229
【氏名又は名称】株式会社トヨトミ
(72)【発明者】
【氏名】宮島 知範
(72)【発明者】
【氏名】岡田 憲作
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−002910(JP,A)
【文献】
特開昭60−185008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/20
F23D 11/24
F23N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁に多数の空気孔(1)をあけたポット(2)を風胴(3)内に設け、前記ポット(2)の内部上方に拡炎板(4)を設け、前記ポット(2)内の前記拡炎板(4)の下方に噴霧ノズル(5)をのぞませ、
前記噴霧ノズル(5)に燃料を加圧して送る燃料ポンプ(6)と、噴霧ノズル(5)の前方に先端が位置するように配置した点火電極(7)と、前記ポット(2)に燃焼用空気を供給する燃焼用送風機(8)とを設け、
前記燃焼用送風機(8)によって前記ポット(2)内に燃焼用空気を供給すると共に、前記燃料ポンプ(6)で加圧されて前記噴霧ノズル(5)からポット(2)内に霧状燃料を供給して、前記点火電極(7)の先端に発生する放電火花によって着火燃焼を開始する圧力噴霧ポットバーナにおいて、
前記ポット(2)内の炎の有無を検知する炎検知手段(9)と、
前記炎検知手段(9)の炎検知信号によって作動開始するタイマ手段(10)とを設け、
点火操作によって前記燃料ポンプ(6)と前記燃焼用送風機(8)とはあらかじめ設定された流量と回転数で駆動し、
前記噴霧ノズル(5)からポット(2)内に供給される霧状燃料が前記点火電極(7)の先端に発生する放電火花によって着火燃焼を開始し、
前記炎検知手段(9)から炎検知信号が出力されると、前記タイマ手段(10)がカウントを開始し、前記燃料ポンプ(6)の流量と前記燃焼用送風機(8)の回転数を低下して所定の流量と回転数に変更し、
前記ポット(2)内で燃焼を開始した後も前記タイマ手段(10)が所定時間をカウントするまで前記点火電極(7)の放電を継続することを特徴とする圧力噴霧ポットバーナの点火制御装置。
【請求項2】
前記炎検知手段(9)が炎検知信号を出力後から前記タイマ手段(10)が所定時間をカウントするまでは、燃料流量に対して燃焼用空気量が少なくなるように前記燃料ポンプ(6)の流量と燃焼用送風機(8)の回転数が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力噴霧ポットバーナの点火制御装置。
【請求項3】
前記点火電極(7)の放電が停止する一定時間前に前記燃焼用送風機(8)を所定の回転数に上昇して、燃料流量に対して燃焼用空気量が多くなるように設定され、
前記点火電極(7)の放電が停止してから一定時間が経過するまで維持することを特徴とする請求項1または2に記載の圧力噴霧ポットバーナの点火制御装置。
【請求項4】
前記点火電極(7)の放電が停止してから一定時間経過後に前記燃焼用送風機(8)の回転数を低下して所定の回転数に変更し、燃料流量に対して燃焼用空気量が多くなるように設定されていると共に、
前記燃焼用送風機(8)は設定時間毎に回転数を低下することを特徴とする請求項3に記載の圧力噴霧ポットバーナの点火制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は圧力噴霧ポットバーナの点火時の不完全燃焼ガスの発生を抑えた点火制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力噴霧ポットバーナは、燃料ポンプで加圧されて噴霧ノズルから霧状燃料がポット内に供給され、点火電極の放電火花によって霧状燃料に着火し、燃焼ファンによって供給される空気と混合して燃焼を開始する。噴霧ノズルから供給された霧状燃料はポット内の下部空間で可燃ガス化し、拡炎板とポットの側壁との間を上方に抜けるときに空気孔から供給される空気と混合して燃焼する。
【0003】
圧力噴霧ポットバーナは、着火する前に予めポット内を予熱しておく必要がなく、着火時間を短くすることはできるが、着火直後に霧状態で着火した炎はまだ低温度のポット側壁や拡炎板などによって冷やされて、一部は燃焼の継続を不可能とし、また、ポット壁面や拡炎板などに触れた霧状燃料はドレンして燃焼できずポット底面に溜まるため、着火後から数分間が経過してポット内部が温められるまでは安定した燃焼が期待できず、この間は不完全燃焼を起こしやすく、不完全燃焼ガスを発生させている。
【0004】
このため、着火後から数分間はポットを加熱するための予備燃焼時間を設けているが、点火直後のポットの温度が低いときは、ポット内に供給された燃料が可燃ガス化して燃焼するまでに時間がかかり、定常燃焼時よりも高い位置に炎が形成され、ポットの加熱時間が長くなる。ポットの加熱時間を短くするためには、ポット内の炎をできるだけ低い位置に形成する必要があり、点火時の燃料ポンプの流量を下げることで、着火後の炎の位置を定常燃焼時の炎の位置まで下げ、予備燃焼時間の短縮を図ったものがある。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−2910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポット内の炎は拡炎板とポット側壁との間に形成されるため、ポット上部に比べて拡炎板の下部空間やポット底面の加熱時間は長くなり、ポット全体が加熱されるまでは不完全燃焼ガスを発生させることになり、特許文献1のように着火後の炎の位置を定常燃焼時の炎の位置に近づけても、拡炎板の下部空間やポット底面の加熱時間を短縮することができなければ、十分な効果が期待できないものであった。
【0007】
また、圧力噴霧ポットバーナは発熱量が大きいため、ポットが加熱されるまでの間に暖房空間に放出される不完全燃焼ガスの量が多くなり、暖房空間の環境を悪化させる恐れがある。ポットの温度が低いときに不完全燃焼ガスの発生を完全に防ぐことは難しいため、燃焼量を下げて燃焼ガスの発生量を減らすことができれば、暖房空間へ放出される不完全燃焼ガスも少なくできる可能性がある。
【0008】
しかし、ポットの温度が低いときに燃料ポンプの流量を少なくすると、霧状燃料の粒子は大きいものが多くなり不安定な燃焼となり、燃焼の悪化や着火ミスの原因となるため、点火時の燃焼量を大きく低下させることは難しいものであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記の課題を解決するもので、側壁に多数の空気孔1をあけたポット2を風胴3内に設け、前記ポット2の内部上方に拡炎板4を設け、前記ポット2内の前記拡炎板4の下方に噴霧ノズル5をのぞませ、前記噴霧ノズル5に燃料を加圧して送る燃料ポンプ6と、噴霧ノズル5の前方に先端が位置するように配置した点火電極7と、前記ポット2に燃焼用空気を供給する燃焼用送風機8とを設け、前記燃焼用送風機8によって前記ポット2内に燃焼用空気を供給すると共に、前記燃料ポンプ6で加圧されて前記噴霧ノズル5からポット2内に霧状燃料を供給して、前記点火電極7の先端に発生する放電火花によって着火燃焼を開始する圧力噴霧ポットバーナにおいて、前記ポット2内の炎の有無を検知する炎検知手段9と、前記炎検知手段9の炎検知信号によって作動開始するタイマ手段10とを設け、
点火操作によって前記燃料ポンプ6と前記燃焼用送風機8とはあらかじめ設定された流量と回転数で駆動し、
前記噴霧ノズル5からポット2内に供給される霧状燃料が前記点火電極7の先端に発生する放電火花によって着火燃焼を開始し、前記炎検知手段9
から炎検知信号
が出力
されると、前記タイマ手段10がカウントを開始し、前記燃料ポンプ6の流量と前記燃焼用送風機8の回転数を低下して所定の流量と回転数に変更
し、前記ポット2内で燃焼を開始した後も前記タイマ手段10が所定時間
をカウントするまで前記点火電極7の放電を継続することを特徴とする圧力噴霧ポットバーナの点火制御装置である。
【0010】
また、前記炎検知手段9が炎検知信号を出力後から前記タイマ手段10が所定時間をカウントするまでは、燃料流量に対して燃焼用空気量が少なくなるように前記燃料ポンプ6の流量と燃焼用送風機8の回転数が設定されていることにより、ポット2内の拡炎板4の下部空間に炎を形成することができ、ポット2の底面と拡炎板4を効率良く加熱することができる。
【0011】
また、前記点火電極7が停止する一定時間前に前記燃焼用送風機8を所定の回転数に上昇して、燃料流量に対して燃焼用空気量が多くなるように設定され、前記点火電極7の放電が停止してから一定時間が経過するまで維持することにより、放電が停止してポット2内の下部空間の炎が消えたときに、ポット2の上部の立炎を防止するものである。
【0012】
前記点火電極7が停止してから一定時間経過後に前記燃焼用送風機8の回転数を低下して所定の回転数に変更し、燃料流量に対して燃焼用空気量が多くなるように設定されていると共に、前記燃焼用送風機8は設定時間毎に回転数を低下していくことにより、ポット2の温度上昇による燃料の変化に対応して安定した燃焼を維持できるものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、点火操作によって点火電極7の先端に放電火花を発生させると共に燃焼用送風機8が駆動して燃焼用空気がポット2内に供給され、燃料ポンプ6が駆動して噴霧ノズル5からポット2内に霧状燃料が供給されると、点火電極7の先端に発生する放電火花によって霧状燃料に着火して燃焼を開始するものである。
【0014】
そして、ポット2内に炎が形成され炎検知手段9が炎検知の信号を出力すると、燃料ポンプ6の流量と燃焼用送風機8の回転数を低下して所定の流量と回転数に変更すると共に、タイマ手段10のカウントを開始し、タイマ手段10が所定時間をカウントするまで点火電極7の放電を継続するものである。
【0015】
ポット2内で燃焼を開始した後も点火電極7の放電を継続することによって、噴霧ノズル5から供給される霧状燃料は放電火花で着火してからポット2内に送られるから、噴霧ノズル5から供給される燃料に粒径の大きな燃料が混じっても放電火花で着火して燃焼することができるものとなり、点火直後のポット2の温度が低いときに燃料ポンプ6の流量を低下しても、燃焼を継続することができるものとなった。
【0016】
この構成によって、ポット2内の拡炎板4の下部空間に炎が形成されるので、ポット2の底部と拡炎板4を加熱することができ、ポット2全体が加熱されて短時間で燃焼が安定し、不完全燃焼ガスの発生を抑えることができるものとなった。また、燃料ポンプ6の流量と燃焼用送風機8の回転数を低下して燃焼量を下げるので、ポット2の温度が上昇するまでの間に暖房空間に放出される不完全燃焼ガスの量を大幅に減らすことができ、暖房空間の環境を悪化させることがなくなった。
【0017】
また、炎検知手段9が炎検知信号を出力してからタイマ手段10が所定時間カウントするまでは、燃料ポンプ6の流量に対して燃焼用送風機8の回転数を低く設定しており、点火直後のポット2の温度が低いときは、燃料ポンプ6の流量よりもポット2内で燃焼できる燃料が少なくなるため、燃焼用空気を少なくすることで燃焼バランスを保ち、不完全燃焼ガスの発生を防ぐことができる。
【0018】
また、タイマ手段10が所定時間カウントする一定時間前になると燃焼用送風機8の回転数を上昇し、燃焼用空気を多くしてから点火電極7の放電が停止しており、点火電極7の放電が停止してポット2の下部空間の炎が消えると、噴霧ノズル5から供給される霧状燃料がそのままポット2内に届いてポット2内の燃料が急に増加するため、燃焼用空気を多くすることによって空気不足による立炎を防止することができ、不完全燃焼ガスを発生させることなく燃焼が継続できるものである。
【0019】
更に、点火電極7の放電が停止して一定時間後に燃料ポンプ6の流量と燃焼用送風機8の回転数を低下して所定の燃料流量と回転数に変更し、所定時間が経過するまでは燃料流量に対して燃焼用空気が多くなるように設定している。ポット2が加熱されるとポット2の底面に溜まっていた燃料が気化して噴霧ノズル5から供給された燃料と一緒にポット2の上部に送られるため、燃焼用空気を多くすることで空気不足による立炎を防止することができる。また、ポット2の底面の燃料は徐々に減少していくから、設定時間毎に燃焼用送風機8の回転数を低下して、燃料の減少にあわせて空気量を減らすことで、安定した燃焼が維持でき、不完全燃焼ガスを発生させることなく、スムーズに定常燃焼に移行することができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の実施例を示す圧力噴霧ポットバーナの構成を示すブロック図である。
【
図2】この発明の実施例を示す圧力噴霧ポットバーナを備えた暖房機の断面図である。
【
図3】この発明の実施例を示す点火動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、11は圧力噴霧ポットバーナを備えた暖房機の枠体、2は枠体11内に配置した有底筒形のポット、12はポット2の側壁に設けた燃料流入口、13は枠体11の下部に配置した燃料タンク、14は燃料タンク13とポット2とを連結する燃料パイプ、6は燃料パイプ14の途中に取り付けた燃料ポンプ、5は燃料パイプ14の先端に取り付けた噴霧ノズルであり、噴霧ノズル5は燃料流入口12にのぞませて取り付けられており、燃料ポンプ6を運転すると燃料タンク13の燃料が噴霧ノズル5から霧状燃料となって燃料流入口12からポット2内に供給される。
【0022】
3はポット2の外周に設けた風胴、8は風胴3に燃焼用空気を供給する燃焼用送風機、1は風胴3からポット2内に燃焼用空気が供給できるようにポット2の側壁に設けた多数の空気孔であり、燃焼用送風機8によって圧送された燃焼用空気は空気孔1の位置と大きさにより制御されてポット2内に供給される。
【0023】
7は先端が噴霧ノズル5と燃料流入口12との間に配置された点火電極、15は点火電極7に高電圧を印加する点火変圧器であり、点火変圧器15に通電すると点火電極7に高電圧を供給して点火電極7の先端に放電火花を発生させる。
【0024】
16は暖房機の運転・停止を指示する運転スイッチ、17は運転スイッチ16の運転・停止信号に基づいて暖房機の運転を制御する燃焼制御装置であり、運転スイッチ16から運転開始信号が出力されると燃焼制御装置17は点火変圧器15と燃焼用送風機8に通電し、ポット2内に燃焼用空気が供給されると共に点火電極7の先端に放電火花が発生する。その後、燃料ポンプ6に通電して噴霧ノズル5から霧状燃料が供給されると、点火電極7の放電火花によって着火し、空気孔1から空気の供給を受けてポット2内で燃焼する。
【0025】
4はポット2内に配置した拡炎板、18はポット2の上部に連続して取り付けると共に枠体11から上方に伸びるように配置した燃焼室であり、ポット2内で燃焼を開始した燃料は拡炎板4の働きで空気孔1から供給される空気との間で混合ガスを作り、ポット2内とポット2に続く燃焼室18内で燃焼が行なわれる。
【0026】
9は先端をポット2内に伸ばして炎に触れる位置に取り付けた炎検知手段であり、燃焼制御装置17は炎検知手段9からの炎有・無の信号に基づいて動作する。点火電極7の放電火花によって着火してポット2内で燃焼を開始し、拡炎板4の側方のポット2の側壁との間に炎が形成されると、炎検知手段9から炎有の信号が燃焼制御装置17に出力される。ポット2内の拡炎板4の側方で燃焼を開始すると、点火変圧器15の通電を止めてもそのまま燃焼を継続することができる。
【0027】
19は枠体1の上部に取り付けられて燃焼室18を囲繞するように配置したガード、20はガード19の上端に取り付けた天板であり、ガード19と天板20によって燃焼室18を覆っている。21は燃焼室18の上面と天板20との間に配置した室内空気の対流ファンであり、対流ファン21が空気を燃焼室18の上面に吹付けると全周方向に向いた空気流が形成でき、燃焼室18から排出される燃焼ガスが対流ファン21の空気流によって上昇を抑えられて温風となって全周方向に吹出すものである。
【0028】
22は操作部に設けたスイッチで構成する火力設定手段であり、燃焼量を最小燃焼と最大燃焼とその間の複数の燃焼量からなる燃料流量を定め、その燃料流量に対応する燃焼用送風機8の回転数を設定することで、複数の燃焼量調節段階Nを決定しており、火力設定手段22の操作によって取扱者が希望する燃焼量調節段階Nを選択できるようになっている。実施例では最小燃焼N1から最大燃焼N10までの10段階に設定している。
【0029】
圧力噴霧ポットバーナは、ポット2に燃料を供給するとすぐに着火できるものの、点火直後はポット2の側壁や拡炎板4の温度が低いため、ポット2内に送られた霧状燃料が温度の低いポット2側壁や拡炎板4に触れるとドレンして燃焼できず、不完全燃焼を起こしやすいものであり、不完全燃焼ガスが暖房空間に放出される。また、圧力噴霧ポットバーナは発熱量が大きいものが多く、排出される燃焼ガスの量が多いため、着火からポット2の側壁や拡炎板4の温度が上昇するまでに暖房空間に放出される不完全燃焼ガスの量も多くなり、暖房空間の環境を悪化させる恐れがある。着火後のポット2側壁や拡炎板4の温度が低いときは不完全燃焼ガスの発生を防ぐことが難しいため、不完全燃焼ガスの発生をできるだけ少なくするための対策が必要となる。
【0030】
この発明は、点火時の不完全燃焼ガスの発生を大幅に減らすことのできる点火制御装置を実現したものであり、運転スイッチ16の操作によって運転開始信号が出力されると、燃焼制御装置17は着火に必要な燃焼量調節段階N6を選択し、点火変圧器15に通電して点火電極7の放電を開始すると共に燃焼用送風機8が燃焼量調節段階N6に対応する回転数で駆動する。そして、燃料ポンプ6が燃焼量調節段階N6に対応する流量で駆動すると、点火電極7の放電火花によって噴霧ノズル5から供給される霧状燃料に着火し、空気孔1から空気の供給を受けてポット2内で燃焼を開始する。
【0031】
ポット2内で燃焼を開始して拡炎板4の側方のポット2の側壁との間に炎が形成され、炎検知手段9から炎有の信号が出力されると、燃焼制御装置17は燃料ポンプ6の流量と燃焼用送風機8の回転数を変更する。実施例では、燃焼制御装置17は燃焼量調節段階をN6からN2に変更しており、燃料ポンプ6と燃焼用送風機8は燃焼量調節段階N2に対応する流量と回転数に変更される。
【0032】
10は炎検知手段9の炎有の信号によって作動するタイマ手段であり、燃焼制御装置17はタイマ手段10が所定時間Tをカウントするまで点火変圧器15の通電を継続するものであり、ポット2内で燃焼を開始した後も点火電極7の放電が継続しており、噴霧ノズル5から供給される霧状燃料は点火電極7の放電火花で着火してからポット2内に送られるので、ポット2内の拡炎板4の下部空間にも炎が形成されるものとなった。この構成によって、ポット2内の拡炎板4の側方のポット2側壁との間に形成される炎によってポット2の上部を加熱し、拡炎板4の下部空間に形成される炎によってポット2の底面と拡炎板4を加熱することができる。
【0033】
燃料ポンプ6が燃焼量調節段階N2に対応する流量に設定されると流量が少なくなるため、着火後のポット2の温度が低いときは噴霧ノズル5から供給される霧状燃料の粒径が大きくなるが、噴霧ノズル5から供給される燃料は点火電極7の放電火花によって着火するので、霧状燃料に混じる粒径の大きな燃料も着火して燃焼することができる。このため、燃料ポンプ6を燃焼量調節段階N2に対応する流量に設定しても燃焼の悪化や着火ミスを発生させることはなく、ポット2の拡炎板4の側方のポット2側壁との間に形成される炎の位置を下げることができ、タイマ手段10が作動してから所定時間Tが経過するまでの間にポット2の全体を効率良く加熱することができるものとなった。
【0034】
また、着火後からポット2の温度が上昇するまでの間の燃焼量を下げることで、燃焼によって発生する燃焼ガスの量を少なくすることができ、不完全燃焼ガスを発生させても、ポット2の温度が上昇して燃焼が安定するまでの間に暖房空間に放出される不完全燃焼ガスの量を大幅に減らすことができるものとなった。
【0035】
また、噴霧ノズル5から供給される霧状燃料のうち点火電極7の放電火花で着火できなかった燃料はそのままポット2内に送られ、ポット2内で可燃ガス化して燃焼するが、点火後のポット2の温度が低いときは、ポット2内に送られた燃料の一部が燃焼できずにポット2の底面に溜まることがあり、燃料ポンプ6の流量よりもポット2内で燃焼できる燃料が少なくなる。
【0036】
この発明の他の実施例では、タイマ手段10が所定時間カウントして点火変圧器15の通電が停止するまでは、燃焼用送風機8の回転数を燃料ポンプ6の流量に対応する回転数よりも低く設定している。実施例では燃料ポンプ6を燃焼量調節段階N2に対応する流量に設定し、燃焼用送風機8を燃焼量調節段階N1に対応する回転数に設定しており、着火後からポット2の温度が上昇するまでは、ポット2内に供給される燃料よりも燃焼できる燃料が少なくなるため、燃焼用空気量とバランスして安定した燃焼が可能となり、不完全燃焼ガスの発生を抑えることができる。
【0037】
また、燃焼制御装置17にはタイマ手段10が作動してから点火変圧器15の通電を停止する所定時間Tよりも短い所定時間T1を設定し、タイマ手段10が作動してから短い所定時間T1が経過したときに燃焼用送風機8を燃焼量調節段階N1からN5に対応する回転数に変更して、所定時間Tより長い所定時間T2が経過するまで維持するように設定している。
【0038】
点火電極5の放電火花が消えてポット2の下部空間の炎が消えると、点火電極5の放電火花によって燃焼していた燃料がそのままポット2内に送られ、ポット2内に供給される燃料が急に増加するため、ポット2内の燃料と空気孔1から供給される空気とのバランスが崩れ、空気不足となるため立炎し、煤を発生させたり、炎検知手段9が異常信号を出力してしまう可能性がある。
【0039】
この発明では、点火変圧器15の通電が停止する前後の一定時間は燃焼用送風機8の回転数を上昇させるので、ポット2内に供給される空気量を増加してから点火変圧器15の通電が停止するものとなり、ポット2の下部空間の炎が消えてポット2内の燃料が急に増加しても空気不足とならず、所定時間T2が経過するまで燃焼用送風機8の回転数を維持することで燃焼が安定するので、立炎を防止することができ、煤や不完全燃焼ガスの発生を抑え、ポット2内の炎の移動がスムーズに行われるものとなった。
【0040】
また、この発明では、所定時間Tが経過して点火変圧器15の通電が停止した後は、燃焼用送風機8の回転数が設定時間毎に低下するようにして、燃料ポンプ6の流量と燃焼用送風機8の回転数との差が段階的に少なくなるように設定している。実施例では点火変圧器15の通電が停止してから設定時間T2が経過すると燃料ポンプ6を燃焼量調節段階N1に対応する流量に変更すると共に、燃焼用送風機8を燃焼量調節段階N4に対応する回転数に変更し、その後は設定時間T3が経過すると燃焼用送風機8を燃焼量調節段階N3に対応する回転数に変更し、更に設定時間T4が経過すると点火制御を完了する。燃料ポンプ6の流量は任意でよいが、燃料の気化による増加分を考慮して最小燃焼N1に設定しており、できるだけ燃焼量を下げることで不完全燃焼ガスの発生を抑えることができる。
【0041】
ポット2の温度が上昇すると、点火直後にドレンしてポット2底部などに溜まっていた燃料が気化し、噴霧ノズル5から供給される燃料と一緒にポット2の上部に送られるため、燃料ポンプ6の流量よりも多くの燃料が燃焼することになるが、この発明では、ポット2内に供給される空気量を多くすることで、ポット2内の燃料と空気量とがバランスし、空気不足による立炎や不完全燃焼ガスの発生が防止できる。
【0042】
また、ポット2の温度上昇によってポット2底部の燃料が燃焼して徐々に減少し、やがて噴霧ノズル5から供給される燃料だけが燃焼するので、燃焼用送風機8の回転数を設定時間毎に低下して、燃料ポンプ6の流量と燃焼用送風機8の回転数との差を段階的に少なくすることで、ポット2内の燃料と空気量とのバランスを保ち、安定した燃焼を維持することができ、不完全燃焼ガスの発生を防止できるものである。
【0043】
そして、設定時間T4が経過するときにはポット2の温度が上昇しており、ポット2底部などに溜まっていた燃料が全て燃焼して、燃料ポンプ6によって噴霧ノズル5から供給される燃料のみとなるから、燃焼制御装置17は点火制御を完了し、火力設定手段22により設定された燃焼量に変更して、定常燃焼を開始することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 空気孔
2 ポット
3 風胴
4 拡炎板
5 噴霧ノズル
6 燃料ポンプ
7 点火電極
8 燃焼用送風機
9 炎検知手段
10 タイマ手段