特許第6497112号(P6497112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイコム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6497112-無線受信機およびそのミュート制御方法 図000002
  • 特許6497112-無線受信機およびそのミュート制御方法 図000003
  • 特許6497112-無線受信機およびそのミュート制御方法 図000004
  • 特許6497112-無線受信機およびそのミュート制御方法 図000005
  • 特許6497112-無線受信機およびそのミュート制御方法 図000006
  • 特許6497112-無線受信機およびそのミュート制御方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497112
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】無線受信機およびそのミュート制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20190401BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20190401BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20190401BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20190401BHJP
   H04J 3/00 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H04B1/10 B
   H04B1/16 R
   H04B1/16 G
   H04W28/06
   H04W88/02 120
   H04J3/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-30812(P2015-30812)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-152599(P2016-152599A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年11月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年8月20日にウェブサイトに掲載 [刊行物等]平成26年8月23日及び8月24日にアマチュア無線フェスティバル ハムフェア2014に出品 [刊行物等]平成26年8月21日〜平成27年2月19日に販売 [刊行物等]平成26年11月〜平成27年2月19日に販売 [刊行物等]平成26年11月27日〜平成27年2月19日に販売 [刊行物等]平成26年10月30日にウェブサイトに掲載
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】細川 圭介
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−224317(JP,A)
【文献】 特開平07−015408(JP,A)
【文献】 特開2006−157477(JP,A)
【文献】 特開平10−93524(JP,A)
【文献】 特開平11−17641(JP,A)
【文献】 特開2005−295196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10 − 1/14
H04B 1/16
H04J 3/00 − 3/17
H04W 28/06
H04W 88/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声フレームとデータフレームとが、予め定められたフォーマットによって、時間分割されて送信され、かつ前記フォーマットによって、前記音声フレームがヘッダでの識別によってデータ伝送に利用可能とされている信号を受信するようにした無線受信機であって、
予め定める第1の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていると判断した場合に、音声信号の再生系にミュート動作を行わせるミュート手段と、
前記ミュート動作が行われている状態で、予め定める第2の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていないと判断した時点で、前記音声信号の再生系にミュート動作を解除させるミュート解除手段とを含み、
前記音声フレームがデータ伝送に利用されている場合、前記音声フレームには、データ伝送が行われていることを表すダミー音のデータが、予め定める周期で挿入されており、前記ミュート解除手段は、このダミー音のデータが挿入されていると判断されると、直ちに、前記音声信号の再生系にミュート動作を解除させることを特徴とする無線受信機。
【請求項2】
前記フォーマットでは、ビット同期、フレーム同期、ヘッダが送信された後、本体データが送信され、その本体データにおいて、前記音声フレームとデータフレームとが交互に繰返され、前記データフレームは2フレームで1ブロックを構成し、前半のデータの先頭にミニヘッダが格納されて、そのミニヘッダが前記請求項1におけるヘッダとして用いられることを特徴とする請求項1記載の無線受信機。
【請求項3】
前記フォーマットでは、前記音声フレームとデータフレームとが20msec毎に繰返され、前記第1の回数は3回であることを特徴とする請求項2記載の無線受信機。
【請求項4】
前記フォーマットでは、前記音声フレームとデータフレームとが20msec毎に繰返され、前記第2の回数は3回であることを特徴とする請求項2または3記載の無線受信機。
【請求項5】
音声フレームとデータフレームとが、予め定められたフォーマットによって、時間分割されて送信され、かつ前記フォーマットによって、前記音声フレームがヘッダでの識別によってデータ伝送に利用可能とされている信号を受信するようにした無線受信機におけるミュート制御方法であって、
予め定める第1の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていると判断した場合に、音声信号の再生系にミュート動作を行うステップと、
前記ミュート動作が行われている状態で、予め定める第2の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていないと判断した時点で、前記音声信号の再生系にミュート動作を解除さるステップと
前記音声フレームがデータ伝送に利用されている場合、前記音声フレームには、データ伝送が行われていることを表すダミー音のデータが、予め定める周期で挿入されており、このダミー音のデータが挿入されていると判断されると、直ちに、前記音声信号の再生系にミュート動作を解除させるステップとを含むことを特徴とする無線受信機におけるミュート制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信機に関し、特にアマチュア無線のデジタル化技術の標準方式(略称 D−STAR:Digital Smart Technologies for Amateur Radio)に示されるもので好適に実施されるミュート制御の手法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式(D−STAR)は、アマチュア無線のデジタル化を促進するもので、平成16年9月公開の4.3版では、デジタル化に伴い、アマチュア無線につき、主体は音声であるものの、音声だけでなく、データを合わせて送信することで、利便性が飛躍的に向上できることが示されている。前記データとしては、前記4.3版の公開当初は、パーソナルコンピュータのデータなどが想定されていたが、近年では、無線機自体にGPS受信機が搭載され、互いの位置データがやり取りされ、或いはスマートフォンの普及に伴い、撮影した画像を、そのスマートフォンの圏外となる山岳部などで送信すると言う使い方が行われている。
【0003】
このようなデータ伝送に対応するために、本件出願人は、先に特許文献1を提案し、2つのブロックで1つのデータを構成するようにし、その内の前半のデータの先頭部分にミニヘッダを埋め込むことで、複数種類のデータの識別を可能にしている。
【0004】
一方、特に前記画像データを伝送する場合、前記4.3版では、音声の通話が無くても、必ず音声フレームを送信するので、データの伝送速度としては、約950bps程度であり、VGAサイズの画像を送るにも、5分以上の時間が必要になる。以降、これを便宜上、スローデータと呼ぶことにする。一方で、画像データの拡大は甚だしく、短時間での伝送が要求される。そこで、平成26年8月に公開された5.0版では、前記音声フレームもデータ伝送に併用する手法が示されており、それによると、伝送速度は約4倍の3.6kbpsにまで高められている。以降、これを便宜上、ファーストデータと呼ぶことにする。
【0005】
図1に、その5.0版によるファーストデータへの変換(組み替え)方法を示す。先ず、呼が発生すると、所定サイズのビット同期B、フレーム同期F、ヘッダHが送信された後、音声やデータなどの本体データDの伝送となる。本体データDのフレーム周期は、420msで、図1で示すように、10のブロックに分割されている。各ブロックは、基本、72bit(9byte)の音声フレームと、24bit(3byte)のデータフレームとの対が、前述の通り音声が主体であるので、その順で組合わせられて構成されている。第1のブロックだけが、最初のデータフレームは同期信号となっており、その関係で、音声フレームとデータフレームとの対が3組となっている。以降、第2〜第10のブロックは、音声フレームとデータフレームとの対が2組である。
【0006】
そして、フレーム構成は上述の通りであるが、ファーストデータとして取り扱うにあたっての利便性のために、音声やデータは、図1で詳しく示すように、ブロック毎に、データが前、音声が後に組合わせられる。これは、前記のデータの先頭に埋め込まれているミニヘッダを確認し、音声のみの送信か、データのみの送信か、音声とデータの簡易送信か、音声フレームも利用したデータの送信かを識別するためである。なお、第1のフレームについては、同期信号と組合わせられる最初の音声フレームが、最後に回されている。そして、音声フレームとデータフレームとの1対で20ms、したがって60+40×9で、前記の420msである。また、前半のデータフレームの先頭8bit(1byte)が、前記ミニヘッダとなっており、第1のブロックは有効データ長が224bit(28byte)、第2〜第10ブロックでは160bit(20byte)となっている。
【0007】
前記ミニヘッダは、前記8bit(1byte)につき、2桁の16進表記で表され、1桁目がデータ種別を表し、2桁目がデータ長(或いはブロック番号)を表している。たとえば、前記5.0版では、音声を送信しながらデータも送信できる簡易送信、すなわち前記スローデータの送信の場合は、1桁目が3x、2桁目が1〜5(byte)となる。データ長さは、2つのデータフレームを合わせて48bit(6byte)のところ、前記ミニヘッダが8bit(1byte)を占めているので、残りの1〜5(byte)である。一方、音声フレームも利用したデータの送信、すなわちファーストデータ送信の場合は、1桁目が8x、または9x、2桁目が1〜F(1〜15byte)まで、または0〜C(16〜28byte)までをそれぞれ示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−157477号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式(D−STAR)5.0版 平成26年8月公開(一般社団法人 日本アマチュア無線連盟)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
こうして、ファーストデータの送信が可能になっているが、ミニヘッダのデータに、化けが生じてしまうと、音声フレームがデータと認識されず、音声として再生されて、異音や雑音になるという問題がある。前記化けは、具体的に、ミニヘッダが、前記の8xまたは9x以外、すなわち0x〜7x、Ax〜Fxになることで生じる。
【0011】
本発明の目的は、音声フレームを高速データ伝送に用いるにあたって、異音や雑音の発生を防止することができる無線受信機およびそのミュート制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線受信機は、音声フレームとデータフレームとが、予め定められたフォーマットによって、時間分割されて送信され、かつ前記フォーマットによって、前記音声フレームがヘッダでの識別によってデータ伝送に利用可能とされている信号を受信するようにした無線受信機であって、予め定める第1の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていると判断した場合に、音声信号の再生系にミュート動作を行わせるミュート手段と、前記ミュート動作が行われている状態で、予め定める第2の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていないと判断した時点で、前記音声信号の再生系にミュート動作を解除させるミュート解除手段とを含み、前記音声フレームがデータ伝送に利用されている場合、前記音声フレームには、データ伝送が行われていることを表すダミー音のデータが、予め定める周期で挿入されており、前記ミュート解除手段は、このダミー音のデータが挿入されていると判断されると、直ちに、前記音声信号の再生系にミュート動作を解除させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の無線受信機におけるミュート制御方法は、音声フレームとデータフレームとが、予め定められたフォーマットによって、時間分割されて送信され、かつ前記フォーマットによって、前記音声フレームがヘッダでの識別によってデータ伝送に利用可能とされている信号を受信するようにした無線受信機におけるミュート制御方法であって、予め定める第1の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていると判断した場合に、音声信号の再生系にミュート動作を行うステップと、前記ミュート動作が行われている状態で、予め定める第2の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていないと判断した時点で、前記音声信号の再生系にミュート動作を解除さるステップと、前記音声フレームがデータ伝送に利用されている場合、前記音声フレームには、データ伝送が行われていることを表すダミー音のデータが、予め定める周期で挿入されており、このダミー音のデータが挿入されていると判断されると、直ちに、前記音声信号の再生系にミュート動作を解除させるステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、たとえばアマチュア無線のデジタル化技術の標準方式(D−STAR)に示されるように、音声フレームとデータフレームとが、予め定められたフォーマットによって、時間分割されて送信される信号を受信する無線受信機において、音声以外のデータの伝送を増大する要望に応えて、たとえば前記方式の5.0版で示されるように、音声フレームも、ヘッダでの識別によって、高速のデータ伝送に利用可能とするにあたって、音声信号の再生系に、これまでのスケルチなどによるミュート機能に加えて、新たなミュート機能を加える。
【0015】
詳しくは、ミュート手段が、予め定める第1の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていると判断した場合に前記音声信号の再生系にミュート動作を行わせ、これに対して、ミュート動作が行われている状態で、ミュート解除手段が、予め定める第2の回数に亘る前記ヘッダの識別結果が、データ伝送が行われていないと判断した時点でミュート動作を解除させる。
【0016】
したがって、ヘッダデータが化けてしまうと、未対策では、誤った識別によって、データが異音や雑音となって再生されてしまう可能性があるのに対して、上記の対策を施すことで、前記第1の回数のデータ伝送が判定されてから以降は、第2の回数のデータ伝送の停止が判定されるまでの間は、ミュート動作が行われ、不要な異音や雑音の発生を確実に抑えることができる。
【0017】
また、音声フレームも併用したデータ伝送が行われるようになると、音声系は無音になる。そこで、データ伝送が行われていることを表すダミー音、たとえば前記方式の5.0版ではビープ音を周期的に挿入しておくことで、受信側が不必要な発(返)信をしてデータが衝突してしまい、送信側が再送信をする必要が生じるなど、送信を完了するまでの時間を不所望に延ばしてしまうようなことはなくなる。
さらにまた、本発明の無線受信機は、前記フォーマットでは、ビット同期、フレーム同期、ヘッダが送信された後、本体データが送信され、その本体データにおいて、前記音声フレームとデータフレームとが交互に繰返され、前記データフレームは2フレームで1ブロックを構成し、前半のデータの先頭にミニヘッダが格納されて、そのミニヘッダが前記音声フレームをデータ伝送に利用可能であるかどうかを識別するためのヘッダとして用いられることを特徴とする。
【0018】
そして、好ましくは、前記フォーマットでは、前記音声フレームとデータフレームとが20msec毎に繰返され、前記第1の回数は3回であることを特徴とする。
【0019】
また好ましくは、前記フォーマットでは、前記音声フレームとデータフレームとが20msec毎に繰返され、前記第2の回数は3回であることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、たとえばアマチュア無線のデジタル化技術の標準方式の5.0版では、前記音声フレームとデータフレームとが20msec毎に繰返され、データフレームは2フレームで1ブロックを構成し、前半のデータの先頭にミニヘッダが格納されている。
【0021】
したがって、データ伝送が行われているとのヘッダの識別結果が3ブロック、すなわち120msec継続すると、ミュート動作が行われる。これによって、前記異音や雑音が発生したとしても、その漏れを最小限に抑えつつ、データ伝送が行われているか否かの判定も、或る程度の精度で行うことができる。
【0022】
同様に、データ伝送が行われなくなったとのヘッダの識別結果が3ブロック、すなわち120msec継続すると、ミュート動作が解除される。これによって、音声が発生していたとしても、その話頭切断を最小限に抑えつつ、データ伝送が行われなくなったか否かの判定も、或る程度の精度で行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の無線受信機およびそのミュート制御方法は、以上のように、音声フレームとデータフレームとが予め定められたフォーマットによって時間分割されて送信される信号を受信する無線受信機において、音声フレームもヘッダでの識別によって高速のデータ伝送に利用可能とするにあたって、予め定める第1の回数に亘る前記ヘッダの識別結果がデータ伝送が行われていると判断した場合にミュート動作を行い、ミュート動作を行っている状態で、予め定める第2の回数に亘る前記ヘッダの識別結果がデータ伝送が行われていないと判断した時点でミュート動作を解除する。
【0027】
それゆえ、ヘッダデータが化けてしまうと、未対策では、誤った識別によって、データが異音や雑音となって再生されてしまう可能性があるのに対して、上記の対策を施すことで、前記第1の回数のデータ伝送が判定されてから以降は、第2の回数のデータ伝送の停止が判定されるまでの間は、ミュート動作が行われ、不要な異音や雑音の発生を確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式(D−STAR)5.0版に示されるファーストデータ伝送のためのフォーマットを説明するための図である。
図2】本発明の実施の一形態に係る無線受信機である無線機の電気的構成を示すブロック図である。
図3】前記無線機におけるミュート動作を説明するための機能ブロック図である。
図4】本発明の実施の一形態に係る無線機において、スローデータからファーストデータに切り替わったことによるミュート動作を説明するためのタイミングチャートである。
図5】本発明の実施の一形態に係る無線機において、ファーストデータからスローデータに切り替わったことによるミュート解除動作を説明するためのタイミングチャートである。
図6】本発明の実施の一形態に係る無線機において、前記ファーストデータの伝送中でミュート動作中に、ビープ音データを受信することによるミュート解除動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図2は、本発明の実施の一形態に係る無線受信機である無線機1の電気的構成を示すブロック図である。この無線機1は、前記アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式(D−STAR)5.0版に準拠するもので、前記特許文献1に示されたものを基本としている。この無線機1では、端子2に接続されるスマートフォン3やGPS受信機4などからのデータを、マイクロホン5からの音声と、図1で示す予め定められたフォーマットで時間分割して、アンテナ6から送信し、また受信された信号から、前記フォーマットに従い、前記スマートフォン3やGPS受信機4などへのデータと、スピーカ17への音声とを分離して、それぞれ出力する。この無線機1に、たとえばスマートフォン3はUSBケーブルなどを介して外付けされ、GPS受信機4は内蔵されている。
【0030】
この無線機1は、前記アンテナ6と、送受信切替部7と、送信部8と、受信部9と、音声A/D・D/A変換部(音声アナログ/デジタル・デジタル/アナログ変換部)10と、インターフェース部11と、コントローラ12と、増幅器13と、前記マイクロホン5およびスピーカ17と、操作部14と、ディスプレイ15とを備えて構成される。
【0031】
操作部14は、無線機1を動作させる条件情報を入力するため設けられている。操作部14には、図示しない各種の操作キーが設けられており、使用者がその操作キーを操作すると、キー入力に基づく動作を、この無線機1に行わせることができる。操作キーには、図1における通信フレームのヘッダHの識別情報(ID)を入力するための操作キーも設けられている。また、通信フレームを形成するにあたり、結合させるデータフレームの個数を入力する操作を行うための操作キーも設けられている。
【0032】
ディスプレイ15は、無線機1の動作に伴う各種の情報を表示する。ディスプレイ15には、使用者が行った操作部14への入力操作の内容が表示される。こうして、ディスプレイ15上で、操作部14に対する入力操作の内容を確認可能となっている。さらに、ディスプレイ15には、無線機1が送信機または受信機のいずれとして機能しているかが表示される。また、ディスプレイ15には、無線機1が通信を行っている相手の無線機のID(識別情報)も表示される。また、ディスプレイ15には、使用者に対して一定の入力操作を促すメッセージも表示される。
この無線機1が、送信機として機能する場合、使用者の音声は、マイクロホン5によって音声信号に変換され、その音声信号は増幅器13に入力されて増幅された後、音声A/D・D/A変換部10に入力される。音声A/D・D/A変換部10は、音声信号をアナログ信号とデジタル信号との間で信号変換を行うアナログ−デジタル変換機能を備えている。該無線機1が送信機として機能する場合、音声A/D・D/A変換部10は、アナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換し、送信部8へ出力する。また、音声A/D・D/A変換部10は、該無線機1が送信機として機能する場合、デジタル信号とされた音声信号を圧縮する圧縮機能を有する。
【0033】
送信部8は、入力された前記音声A/D・D/A変換部10からの音声信号およびインターフェース部11からのデータ信号を変調する変調機能を備える。前記D−STARでは、送信部8が信号を変調する方式として、GMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)変調方式が採用される。GMSK変調方式は、デジタル変調方式の1つであり、2値の入力信号を一旦ガウスフィルタと呼ばれるフィルタに通し、その後周波数変調を行うことで、狭帯域化を図った変調方式である。送信部8は、入力された音声信号およびデータ信号を、図1で示すフォーマットに変換した後、このGMSK変調方式で変調し、変調した信号を、コントローラ12で設定された周波数(チャネル)の無線信号に変換するとともに増幅して、送受信切替部7を介して、アンテナ6から、相手方の無線機へ送信する。
【0034】
この無線機1が受信機として機能する場合、相手方の送信機から、通話音の音声信号とデータ通信用のデータ信号とが送信されて来る。アンテナ6で受信された信号は、送受信切替部7を介して、受信部9に入力される。受信部9は、特定の通信チャンネルの信号を選択して受信するチューニング機能を備えており、受信すべき無線信号の周波数帯域が設定される。この受信部9でチューニングされた信号は、増幅された後、GMSK復調が行なわれる。受信部9が復調した信号の通信フレームに含まれるヘッダHのデータはコントローラ12に入力される。
【0035】
コントローラ12は、ヘッダHの情報(ID)から、受信信号が該無線機1宛てに送信されたか否かを判断することができる。コントローラ12は、受信信号が正常なものである場合、受信部9に、ヘッダH以降のデータも受信させ、本体データDを順次処理させる。
【0036】
その本体データDのうち、音声フレームに含まれる音声データは音声A/D・D/A変換部10へ出力され、データフレームに含まれるデータ通信用のデータは、インターフェース部11へ出力される。音声A/D・D/A変換部10は、該無線機1が受信機として機能する場合、圧縮されている音声データを伸長し、その伸長したデジタル信号から、アナログの音声信号を復調する。復調された音声信号は、増幅器13で増幅された後、スピーカ17から出力される。こうして、自局宛の音声通信を受信することができ、また同じチャネルの他局宛の音声通信も傍受することができる。一方、インターフェース部11に入力されたデータは、端子2から、前記スマートフォン3やGPS受信機4へ出力される。こうして、自局宛のデータを受信することができ、また同じチャネルの他局宛のデータも、必要に応じて受信することができる。前記音声A/D・D/A変換部10、増幅器13およびスピーカ17は、音声信号の再生系を構成する。
【0037】
注目すべきは、本実施形態の無線機1では、コントローラ12は、本体データDを処理するにあたり、ミニヘッダを参照して、音声フレームが、音声に使用されている、すなわちスローデータ等、ファーストデータ以外のモードで伝送が行われている場合、その音声データを上述のように音声A/D・D/A変換部10へ出力するのに対して、データに使用されている、すなわちファーストデータの伝送が行われている場合、そのデータをインターフェース部11へ出力するとともに、音声A/D・D/A変換部10にミュート動作を行わせることである。
【0038】
図3は、そのミュート動作を説明するための機能ブロック図である。図2に対応する構成には、同一の参照符号を付している。受信部9で受信された音声フレームのデータは、コントローラ12において、前記ミニヘッダによる識別で音声信号であると判定されると、音声A/D・D/A変換部10に入力され、バッファ101において所定のデータ数(たとえば1〜2フレーム)分だけ遅延された後、ミュートスイッチ102を介して、ボコーダー103に入力される。ミュートスイッチ102は、スケルチなどにも併用され、開放することで、スピーカ17からの音声出力は無音となる。ボコ-ダー103は、入力された音声データを復号し、その復号された音声データは、D/A変換部104でアナログ信号に変換されて、前記増幅器13へ出力される。
【0039】
一方、受信部9で受信されたデータフレームのデータは、コントローラ12のレジスタ121に一旦格納され、ミニヘッダから、前記音声フレームが、音声に使用されているのか、データに使用されているか、などの判定が行われる。音声に使用されている場合、そのデータは、レジスタ122において、図1で示すように、前記420msに亘る1フレーム期間毎に、スローデータから、2フレームで1つのブロックを構成するブロックデータに組立てられて、インターフェース部11からスマートフォン3やGPS受信機4へ出力される。なお、有効なデータが存在しない場合には、このスローデータは、冗長を示すダミーデータなどで埋められる。
【0040】
また、前記ミニヘッダによる識別で、音声フレームがデータ信号に使用されていると判定されると、そのデータは、レジスタ123において、レジスタ121のデータフレームのデータと組合わせられて、図1で示すように、前記420msに亘る1フレーム期間毎に、ファーストデータから、ブロックデータに編集されて、インターフェース部11からスマートフォン3やGPS受信機4へ出力される。
【0041】
そして、コントローラ12には、ミュート動作を行うために、ミュート判定処理部124およびミュート実行処理部125が設けられている。ミュート判定処理部124は、ミュート開始カウンタ1241と、ミュート解除カウンタ1242とを備えて構成される。
【0042】
ミュート開始カウンタ1241は、前記レジスタ123、すなわちファーストデータにおけるミニヘッダの内容を監視し、第1の回数である3回、ファーストデータであることが識別される、具体的には、ミニヘッダの1桁目が8xまたは9xであることが3ブロック分の120msec継続すると、ミュート実行処理部125へミュート開始要求1251を送信する。このミュート開始要求1251を受信したミュート実行処理部125は、前記ミュートスイッチ102を開放することで、ミュート動作を行わせる。したがって、ミュート開始カウンタ1241およびミュート実行処理部125は、ミュート手段を構成する。
【0043】
この様子を、図4に示す。(a)は受信データの本体データDの部分で、(b)はミュートの状態を示す。(a)では、時刻t1からファーストデータに切り替わり、(b)で示すように、3ブロック、120ms後の時刻t2から、ミュート動作が行われる。(b)において、ミュートがオープンで、ミュートスイッチ102が導通して音声出力が行われ、ミュートがクローズで、ミュートスイッチ102が開放してミュート動作が行われることを示す。
【0044】
これに対して、ミュート解除カウンタ1242は、ミュート開始カウンタ1241からのミュート開始要求1251に応答してリセットされてカウント動作が可能となり、前記レジスタ122、すなわちスローデータにおけるミニヘッダの内容を監視し、第2の回数である3回、スローデータであることが識別される、具体的には、ミニヘッダの1桁目が前記8xまたは9x以外の、たとえば3xであることが3ブロック分の120msec継続すると、ミュート実行処理部125へ、ミュート解除要求1252を送信する。このミュート解除要求1252を受信したミュート実行処理部125は、前記ミュートスイッチ102を導通することで、ミュート動作を解除させ、次にミュート開始要求1251が発生するまで、導通状態を維持させる。したがって、ミュート解除カウンタ1242およびミュート実行処理部125は、ミュート解除手段を構成する。
【0045】
この様子を、図4と同様にして、図5に示す。(a)は受信したデータの本体データDの部分で、(b)はミュートの状態を示す。(a)では、前のフレームまではファーストデータの送信が行われており、時刻t3でスローデータに切り替わり、(b)で示すように、3ブロック、120ms後の時刻t4から、ミュート動作が解除される。
【0046】
ところで、前記アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式(D−STAR)5.0版では、音声フレームがデータ伝送に利用されている場合、すなわちファーストデータ送信中は、前記音声フレームに、データ伝送が行われていることを表すビープ音のデータが、予め定める周期である1sec毎に挿入されている。そこで、前記ミュート実行処理部125は、音声フレームのデータから、ビープ音のパターンが検出されると、その時点で、ミュート解除要求1252を発生し、直ちに、ミュートスイッチ102を導通させ、ミュート動作を解除させる。なお、前記データ伝送が行われていることを表すダミー音は、ビープ音に限らず、合成音声などでもよい。しかしながら、そのダミー音のデータが長くなると、相対的に、伝送できる音声以外のデータ量が少なくなってしまうので、前記ビープ音は短時間で認識することができ、好適である。
【0047】
この様子を、図4および図5と同様にして、図6に示す。(a)は受信したデータの本体データDの部分で、(b)はミュートの状態を示す。(a)では、ファーストデータの送信中で、時刻t5でビープ音の挿入が開始されてミュートが解除され、(b)で示すように、3ブロック、120msが経過した時刻t6で、ファーストデータの送信に復帰し、再びミュート状態に復帰する。
【0048】
以上のように、本実施形態の無線機1では、アマチュア無線のデジタル化技術の標準方式(D−STAR)の5.0版で示されるように、音声フレームも、ヘッダでの識別によって、ファーストデータの伝送に利用可能とするにあたって、ミュート判定処理部124におけるミュート開始カウンタ1241が、第1の回数に亘って前記ヘッダの識別結果がデータ伝送が行われていると判定した場合、ミュート実行処理部125がミュートスイッチ102を開放してミュート動作を行わせ、これに対して、ミュート動作が行われている状態で、前記ミュート判定処理部124におけるミュート解除カウンタ1242が、第2の回数に亘って前記ヘッダの識別結果がデータ伝送が行われていないと判定した場合、前記ミュート実行処理部125がミュートスイッチ102を導通してミュート動作を解除させる。
【0049】
したがって、ヘッダデータが化けてしまうと、未対策では、誤った識別によって、データが異音や雑音となって再生されてしまう可能性があるのに対して、このような対策を施すことで、前記第1の回数でファーストデータが判定されて(図4の時刻t2)から以降は、第2の回数でスローデータが判定されるまで(図5の時刻t4)の間は、ミュート動作が行われ、不要な異音や雑音の発生を確実に抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態の無線機1では、フォーマットが、音声フレームとデータフレームとを20msec毎に繰返す前記(D−STAR)の5.0版であり、前記ヘッダとしてはミニヘッダを利用し、第1の回数を3回とするので、3ブロック、すなわち120msecに亘りファーストデータが判定されると、ミュート動作が行われることになる。これによって、前記異音や雑音が発生したとしても、その漏れを最小限に抑えつつ、ファーストデータに切り替わったか否かの判定も、或る程度の精度で行うことができる。
【0051】
なお、本実施形態の無線機1では、ミュートスイッチ102の上流側にバッファ101が挿入されているので、このバッファ101による遅延時間を、ファーストデータ判定の前記3ブロック、120msとすることで、前記異音や雑音の音響化を完全に阻止することができる。しかしながら、この遅延時間が長くなる程、実際に音声が再生されるまでの時間が長くなり、元々のデジタル化の遅延時間と合わせて、通話間合いが長くなる。そのため、このバッファ101の遅延時間は、適宜定められればよい。また、前記5.0版では、フレーム時間は20msecであるので、判定は3回の120msで行われているが、フレーム時間が異なる場合、判定精度と、異音や雑音の音響化の阻止との兼ね合いで、0.1〜0.2secを目処に、判定回数が設定されればよい。
【0052】
一方、ミュート時と同様に、ファーストデータからスローデータに切り替わり、3ブロック、すなわち120msec継続すると、ミュート動作を解除するので、音声が発生していたとしても、その話頭切断を最小限に抑えつつ、スローデータに切り替わったか否かの判定も、或る程度の精度で行うことができる。
【0053】
また、前記(D−STAR)の5.0版では、ファーストデータの伝送が行われている間、再生音声は無音になるので、音声フレームにはファーストデータの伝送中であることを表すダミー音として、ビープ音のデータが1sec毎に挿入され、これに対応して、ミュート実行処理部125は、このビープ音のデータが検知されると、直ちに、前記ミュートスイッチ102のミュート動作を解除させる。これによって、ファーストデータの伝送中に、受信側が不必要な発(返)信をしてデータが衝突してしまい、送信側が再送信をする必要が生じるなど、送信を完了するまでの時間を不所望に延ばしてしまうようなこともない。
【符号の説明】
【0054】
1 無線機
2 端子
3 スマートフォン
4 GPS受信機
5 マイクロホン
6 アンテナ
7 送受信切替部
8 送信部
9 受信部
10 音声A/D・D/A変換部
101 バッファ
102 ミュートスイッチ
103 ボコーダー
104 D/A変換部
11 インターフェース部
12 コントローラ
121,122,123 レジスタ
124 ミュート判定処理部
1241 ミュート開始カウンタ
1242 ミュート解除カウンタ
125 ミュート実行処理部
13 増幅器
14 操作部
15 ディスプレイ
17 スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6