(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に沿って移動可能でありドライバブレードが装着されたプランジャを前記第1の方向における一方の側に移動させることによって、前記ドライバブレードを用いて止具を前記一方の側に打ち込むと共に前記プランジャが前記一方の側で係止される動作が行われ、前記第1の方向と垂直な第2の方向において前記プランジャと隣接した箇所に設けられた駆動機構が前記動作の前に前記プランジャを前記第1の方向に沿った他方の側に移動させる構成とされた打込機であって、
前記プランジャは、
前記ドライバブレードが固定されるプランジャ基板部と、
前記第1の方向に沿って前記他方の側に向かって延伸し、前記駆動機構と当接する複数の駆動機構係止部が前記第1の方向に沿った複数の箇所に設けられ、前記プランジャ基板部の中心から離間した箇所で前記一方の側の端部が前記プランジャ基板部に連結されたアーム部と、を具備し、
前記アーム部の前記第2の方向における前記駆動機構が設けられた側と反対側、及び前記プランジャ基板部には、前記アーム部の曲げ剛性を前記一方の側から前記他方の側に向かって漸減させる剛性調整部材が、連結され、
前記プランジャは前記第1の方向に沿って延伸するシャフトの軸方向を摺動する構成とされ、
前記プランジャ基板部には、前記プランジャ基板部における前記他方の側の表面から前記他方の側に向かって突出し前記シャフトが貫通するシャフト摺動孔が設けられたボス部が設けられ、
前記プランジャ基板部における前記ボス部の周囲の前記第1の方向に沿った肉厚が局所的に薄くされたことを特徴とする打込機。
前記剛性調整部材は、前記プランジャ基板部から前記凸部が設けられた箇所にかけて前記アーム部に連結され、前記アーム部の曲げ剛性を前記プランジャ基板部側から前記凸部側に向かって漸減させることを特徴とする請求項2に記載の打込機。
前記第2部分に、前記アーム部が前記第2の方向に掘り下げられた溝又は貫通孔が形成されたことを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の打込機。
前記剛性調整部材は、前記第2の方向に沿った幅が前記一方の側から前記他方の側に向かって漸減し、前記第1の方向及び前記第2の方向にわたり広がる板状の構成を具備するアーム部補強リブであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の打込機。
前記第1の方向にわたり広がる板状の構成を具備し前記プランジャ基板部底部と前記ボス部とに連結された複数のボス部補強リブが、前記他方の側からみて、前記ボス部の周囲に放射状に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の打込機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態となる打込機の構成について説明する。
図1は、この打込機100の構成を示す断面図である。この打込機100を用いて、止具が上下方向(一方向)に沿って図中下側(一方の側)の木材や石膏ボード(被打込部材)に打ち込まれる。この打込機100においては、コイルバネ(バネ)16が圧縮され、圧縮後のコイルバネ16が開放される際の弾性力によって、止具が打ち込まれる。
図1は、コイルバネ16が圧縮された状態(打ち込み動作の前)を示している。
【0014】
この打込機100においては、
図1における上下方向が中心軸方向とされた略円筒形状のメインボディ(ハウジング)10と、メインボディ10の上側と連結され図中左方向に延伸するハンドル30と、メインボディ10の下側と連結されハンドル30と略平行に図中左側に延伸するサブボディ40が設けられる。サブボディ40の中にはコイルバネの圧縮の動力源となるモータ41が設けられる。また、図中におけるハンドル30の左端とサブボディ40の左端は、バッテリ装着部42で連結され、バッテリ装着部42には、その脱着が容易とされた状態で、モータ41を駆動させるバッテリ43が装着される。メインボディ10、ハンドル30、サブボディ40は、実際には軽量な樹脂材料で一体化されて構成されたハウジングとなっている。ハンドル30とその下側のサブボディ40との間には空隙が形成されるため、作業者はハンドル30を上側から把持し、下側に位置する木材等(被打込部材)に対して打ち込み作業を行うことができる。
【0015】
メインボディ10内には、図中で上下方向に延伸するシャフト11が固定されており、シャフト11に沿って往復運動をするプランジャ12が設けられている。図におけるプランジャ12の右側には、止具をその下端部で打ち込む動作を行いシャフト11と平行とされた上下方向に細長いドライバブレード13が固定されている。ドライバブレード13の下端側は、プランジャ12の上下運動に伴ってメインボディ10内の下側に設けられドライバブレード13を下側で支持するブレードガイド14に沿って移動する。ブレードガイド14の図中右側の下側には、下側に突出するノーズ15が設けられ、その下端には射出口15Aが形成されている。止具は、サブボディ40の下側に設けられたマガジン44から自動的に供給され、この射出口15Aを通り下側に向かって打ち込まれる。
【0016】
また、メインボディ10の下側には、上下方向に移動可能なプッシュレバー17が、バネ(図示せず)によって下側に付勢された状態で装着されている。外力が働かない状態では、プッシュレバー17の下端は射出口15Aよりも下側となる。このため、打ち込み作業のために作業者が射出口15Aを木材等に当接させた場合に、プッシュレバー17はメインボディ10に対して相対的に上側に移動する。また、ハンドル30の下側には、トリガレバー31が設けられている。作業者がトリガレバー31を握りこれを上側に移動させ、かつ射出口15Aを木材等に当接させプッシュレバー17を上側に移動させたる動作が同時に行われた場合に、プランジャ12が上側の所定の位置まで上昇した後、止具の打ち込み動作、すなわち、プランジャ12の下降動作が開始される。
【0017】
この動作に際して、プランジャ12は、プランジャ12に上側から当接するコイルバネ16による強い衝撃力で下側に移動するが、止具の打ち込み深さは、打ち込み動作毎に均一である必要がある。このため、打ち込み動作に際しては、プランジャ12の下側への移動は、第1のバンパ(バンパ)18で制限される。第1のバンパ18は、メインボディ10内においてシャフト11を囲んで設けられ、その下面がメインボディ10の下側で支持される。このため、プランジャ12が下降した場合には、プランジャ12の下面が第1のバンパ18と当接し、その下降運動が制限され、第1のバンパ18は、ピンの打ち込み動作に用いられた以外の余剰エネルギーを吸収する。このため、第1のバンパ18は、少なくともその一部が弾性体、例えば硬質ゴム材料で構成される。
【0018】
一方、上記のプランジャ12の上下動の反作用は、メインボディ10(ハウジング)等に伝わり、ハンドル30を介して作業者に伝わる。この反作用を低減するため、この打込機100においては、シャフト11に沿ってプランジャ12と反対側に移動するように構成されたカウンタウェイト20が設けられている。プランジャ12が最下部に位置する場合には、カウンタウェイト20は最上部に位置する。コイルバネ16は、カウンタウェイト20に下側から当接する。
【0019】
このため、上昇したカウンタウェイト20をメインボディ10の上側で支持する第2のバンパ21が、カウンタウェイト20と、メインボディ10の上側に設けられる。カウンタウェイト20から余剰エネルギーを吸収させるために、第2のバンパ21も、少なくともその一部が弾性体で構成される。
【0020】
上記の打込機100における打ち込み動作について説明する。1回の打ち込み動作を行うためには、シャフト11に沿ってプランジャ12を上側に、カウンタウェイト20を下側に移動させることによって、コイルバネ16を圧縮する動作がまず行われる。この動作は、遊星歯車機構を用いて回転出力を減速する減速機構45を介してモータ41によって前後方向の周りで回転駆動される第1駆動歯車(駆動機構)46と、第1駆動歯車46の上方に設けられ第1駆動歯車46と噛合して回転駆動される第2駆動歯車47によって行われる。
【0021】
図2は、この動作を説明する側面図(一部断面図)であり、
図2(a)〜(d)に向かって、プランジャ12が上側に、カウンタウェイト20が下側に向かって駆動されている。
図2(a)においては、プランジャ12が下死点、カウンタウェイト20が上死点にある場合が示されており、この状態は、止具が打ち込まれた直後の状態を示している。
【0022】
また、
図3(a)(b)は、ここで用いられるプランジャ12のみの構成を示す、異なる2方向から見た斜視図であり、
図3(c)は、その上面図である。
図3において示された座標系X、Y、Zを用いた場合、Z軸は鉛直方向(シャフト11の延伸方向あるいは
図1における上下方向:第1の方向)となり、Z軸における負の方向が下側(一方の側:止具が打ち込まれる側)、正の方向が上側(他方の側:打ち込み動作の前にプランジャ12が駆動される側)となる。
図3(c)は、Z軸正方向からこのプランジャ12を見た場合に対応する。Y軸は
図1における前後方向(第2の方向)となり、この方向は、シャフト11側から見て第1駆動歯車(駆動機構)46が設けられた方向である。第1駆動歯車46は、Y軸負側(後方側)においてプランジャ12に隣接する。X軸は
図1における紙面と垂直方向となり、Z軸及びY軸と垂直な方向(第3の方向)となる。プランジャ12は、シャフト11が貫通するシャフト摺動孔12Aを具備するプランジャ基板部121を具備する。プランジャ基板部121は、平板状のプランジャ基板部底部121Aと、シャフト摺動孔12Aが設けられZ軸正側に突出するようにプランジャ基板部底部121Aの上面側に設けられたボス部121Bとが連結して設けられる。プランジャ基板部底部121Aは、XY平面(水平面)に平行に形成された板状とされる。
【0023】
図3(a)におけるプランジャ基板部121の左側(後方側:Y軸負側)においては、Z方向に沿って上側(Z軸正側)に延伸するアーム部122が固定される。アーム部122においては、アーム部122がプランジャ基板部121に対して取り付けられた側(Y軸負側)において局所的に更に突出する第1ピン係止部(ピン係止部:駆動機構係止部)122A、第2ピン係止部(ピン係止部:駆動機構係止部)122B、第3ピン係止部(ピン係止部:駆動機構係止部)122Cが、それぞれ上から順に形成されている。
【0024】
また、アーム部122とプランジャ基板部121は、その前方(Y方向正側)において、鉛直面(YZ平面)内に広がるアーム部補強リブ(剛性調整部材)123によっても連結されている。また、
図3(a)におけるプランジャ基板部底部121Aの右側(Y方向正側)においては、鉛直面(XZ平面)内に広がる板状とされるドライバブレード装着部124が固定される。ドライバブレード装着部124には、ドライバブレード13が固定される。また、ハウジング(メインボディ10)の内面には、プランジャ12を上下方向(Z軸方向)においてのみ移動可能とするためのガイド溝が形成されており、このガイド溝に係合するガイド部125が、プランジャ基板部底部121AのX軸方向における両側にそれぞれ固定されている。アーム部補強リブ123は、隣接するガイド部125まで延伸し、ガイド部125とも連結されている。
【0025】
一方、第1ピン係止部122Aが設けられた箇所から第2ピン係止部122Bが設けられた箇所にかけては、アーム部補強リブ123が連結されていない。
図3(a)(b)に示されるように、この箇所においては、アーム部122がY軸正側から負側に向かって掘り下げられたアーム部溝(溝)122Dが形成されている。
【0026】
また、このプランジャ12においては、ボス部121Bの周囲に、鉛直面を構成する板状の複数のボス部補強リブ121Cが、平面視(
図3(c))において放射状に形成されている。隣接するボス部補強リブ121C間におけるプランジャ基板部底部121Aの上面は、薄肉化された薄肉化部121Dとなっている。
【0027】
こうした形状のプランジャ12は、例えば鋳造によって製造される。このため、アーム部122とプランジャ基板部底部121Aとの接合部分等には溶接は用いられず、上記の部分が全て一体化されてプランジャ12は形成される。
【0028】
図2に示されるように、このプランジャ12は、第1駆動歯車46の回転に伴って、押し上げられる構成とされる。このため、第1駆動歯車46には、第1駆動歯車46の回転に伴って第1ピン係止部122Aと下側から当接して第1ピン係止部122Aを押し上げることのできる第1ピン(ピン)46A、第1駆動歯車46の回転に伴って第2ピン係止部122Bと下側から当接して第2ピン係止部122Bを押し上げることのできる第2ピン(ピン)46B、第1駆動歯車46の回転に伴って第3ピン係止部122Cと下側から当接して第3ピン係止部122Cを押し上げることのできる第3ピン(ピン)46Cが、それぞれ設けられている。第1ピン46A、第2ピン46B、第3ピン46Cは、第1駆動歯車46の偏心した箇所(中心から外れた箇所)において、円周方向における異なる位置に設けられている。
【0029】
第1駆動歯車46の外径を大きくし、第1ピン(ピン)46A等をその中心(回転軸)から遠い位置に設けた方が、プランジャ12の鉛直方向における移動距離を大きく設定することができる。このため、第1ピン(ピン)46A等は、第1駆動歯車46の中心から離れた箇所に設けられ、これらに係止される第1ピン係止部122A等は、X軸方向において中心(シャフト11の中心軸)から離れた箇所に設けられ、
図1の構成においては、第1ピン係止部122A等あるいはこれらが設けられたアーム部122は、紙面向こう側に設けられる。このため、
図3に示されるように、アーム部122は、プランジャ基板部底部121AにおけるX軸、Y軸におけるそれぞれの負側の端部に固定される。第1ピン係止部122A、第2ピン係止部122B、第3ピン係止部122Cの突出方向は後方(Y軸負側)とされ、後方からアーム部122(プランジャ12)が駆動される。第1ピン係止部122A、第2ピン係止部122B、第3ピン係止部122Cを第1ピン46A、第2ピン46B、第3ピン46Cでそれぞれ順次駆動させるために、後方への突出量は、第1ピン係止部122Aで最も大きく、第3ピン係止部122Cで最も小さくされる。このため、アーム部122は、Y軸方向において上端部側(先端側)で太くされ、下端部側(根本側)で細くされる。このようにY軸負側から駆動されるアーム部122を補強するために、板状のアーム部補強リブ124がアーム部122の根本側における前方(Y軸正側)、及びプランジャ基板部底部121Aに連結される。このようにZ軸正側に大きく突出するアーム部122等がX軸、Y軸の負側の端部においてプランジャ基板部底部121Aに連結されるため、プランジャ12は、シャフト11の中心軸の周りにおける非対称性が強い形状を具備する。
【0030】
また、プランジャ基板部底部121AのY軸正側の端部(Y軸方向におけるアーム部122が装着された側と反対側)に固定されたドライバブレード装着部124は、アーム部122とは異なり、打込機100全体のバランスを良好とするために、X軸方向におけるプランジャ基板部底部121Aの中央に固定される。
【0031】
この構成においては、まず、
図2(a)の状態においては、第1ピン46Aが第1ピン係止部122Aに下側から当接し、この状態から第1駆動歯車46が回転することによって、第1ピン係止部122A及びアーム部122(プランジャ12)が押し上げられる。この状態から、更に第1駆動歯車46が回転すると、
図2(b)に示されるように、第1ピン46Aが第1ピン係止部122Aと当接する代わりに、今度は第2ピン46Bが第2ピン係止部122Bと当接し、アーム部122(プランジャ12)は、更に押し上げられる。その後、
図2(c)に示されるように、第2ピン46Bが第2ピン係止部122Bが当接する代わりに、今度は第3ピン46Cが第3ピン係止部122Cが当接し、アーム部122(プランジャ12)は、更に押し上げられる。これによって、最終的に、プランジャ12は、
図2(d)に示される位置まで上昇する。このように、プランジャ12の移動距離よりも小さな径をもつ第1駆動歯車46を回転駆動することによって、プランジャ12を
図2(a)における位置(下死点)から
図2(d)に示される位置まで押し上げることができる。
【0032】
上記においては、第1駆動歯車46がプランジャ12(アーム部122)を押し上げる動作が説明されていた。詳細の説明は省略するが、これと同様に、ピンが第2駆動歯車47側に、ピン係止部がカウンタウェイト20側に、それぞれ設けられている。この際、第2駆動歯車47は第1駆動歯車46と噛合して駆動されるため、第2駆動歯車47の回転方向は第1駆動歯車46とは逆向きとなる。このため、上記と同様の構成を第2駆動歯車47、カウンタウェイト20に設けることによって、第1駆動歯車46の回転に伴って第2駆動歯車47を逆方向に回転させ、カウンタウェイト20を下向きに押し下げることができる。この際、第2駆動歯車47におけるピンとカウンタウェイト20におけるピン係止部とが当接する箇所は、第1駆動歯車46における各ピンとアーム部122における各ピン係止部とが当接する箇所と、
図2において紙面と垂直方向における異なる位置となるように設けられる。このため、第1駆動歯車46がプランジャ12を押し上げる動作と第2駆動歯車47がカウンタウェイト20を押し下げる動作を同時に行わせることができ、これによってコイルバネ16を圧縮することができる。
【0033】
ここで、打ち込み動作に直接使用されないカウンタウェイト20は、プランジャ12よりも重く、かつその移動速度、移動距離はプランジャ12よりも小さく設定される。このため、プランジャ12側ではピン及びピン係止部は3組設けられているのに対し、カウンタウェイト20側において用いるピン及びピン係止部を2組以下とすることができ、カウンタウェイト20におけるピン係止部を設けるために必要となる鉛直方向における長さは、プランジャ12における場合よりも短くなる。更に、カウンタウェイト20はプランジャ12よりも重く設定されるために、カウンタウェイト20は、
図3に示されたプランジャ12とは異なり、シャフト11の中心軸の周りで軸対称な形状に近い構成とすることができる。このため、シャフト11の周りにおける形状の非対称性はカウンタウェイト20では小さく、特にプランジャ12側で顕著となる。
【0034】
上記の構成により、第1駆動歯車46の回転に伴って、プランジャ12が最上部及びカウンタウェイト20が最下部に位置する
図2(d)の状態とすることができる。この状態においては、コイルバネ16は最も圧縮された状態となっている。その後、更に第1駆動歯車46が回転すると、第3ピン46Cと第3ピン係止部122Cとの間の当接が解かれると同時に、カウンタウェイト20側においてもピンとピン係止部との当接が解かれる。これによって、プランジャ12、カウンタウェイトは開放され、コイルバネ16の弾性力によって、プランジャ12は下側に、カウンタウェイト20は上側にそれぞれ駆動される。この際、上記の構成においては、重力の影響を無視すれば、プランジャ12、カウンタウェイト20は、コイルバネ16によって同じ大きさの力で逆向きに駆動される。これによって、打ち込み動作が行われ、プランジャ12が第1のバンパ18に係止された
図2(a)の状態となる。なお、
図2においては記載が省略されているが、上死点に移動したカウンタウェイト20も、第2のバンパ21に係止されている。
【0035】
この動作において、プランジャ12が第1のバンパ18に係止される際には、プランジャ12に大きな衝撃力が加わり、これによってプランジャ12の耐久性が損なわれるおそれがある。これに対して、上記のプランジャ12は、この耐久性が高くなる形状とされている。以下に、この点について以下に説明する。
【0036】
図4は、参考例となるプランジャ72の構成を示す、
図3に対応した斜視図((a)(b))、上面図(c)である。このプランジャ72は、前記のプランジャ12の構成を単純化した構成を具備しており、同様に、シャフト摺動孔72Aを具備するプランジャ基板部721(プランジャ基板部底部721A、ボス部721B)、第1ピン係止部(ピン係止部)722A、第2ピン係止部(ピン係止部)722B、第3ピン係止部(ピン係止部)722Cが設けられたアーム部722、アーム部補強リブ723、ドライバブレード装着部724、ガイド部725が設けられている。アーム部722とプランジャ基板部底部721Aとの連結部分の位置についても同様である。このため、このプランジャ72を前記のプランジャ12の代わりに打込機100において用いることができる。また、このプランジャ72も、プランジャ12と同様に、シャフト11の周りにおける非対称性の強い形状を具備する。
【0037】
図4に示されたプランジャ72がプランジャ12の代わりに用いられ上記の打ち込み動作が行われる場合、高速で下向きに移動するプランジャ72が第1のバンパ18によって係止された場合には、アーム部722に振動が発生する。この振動においては、
図3、4においてアーム部722の各部分がX方向又はY方向に変位する。上記のような非対称な構造を持つプランジャ72においては、端部において上側に延伸するアーム部722が設けられており、アーム部722とプランジャ基板部底部721Aとの連結部分に特に大きな負荷がかかる、あるいはこの部分に特に大きな応力が発生する。アーム部補強リブ723とプランジャ基板部底部721Aとの連結部分についても同様である。
【0038】
この状態における
図4に示されたプランジャ72のアーム部722における代表的な2箇所におけるY方向の変位、X方向の変位をそれぞれ
図5、
図6に示す。ここで、
図7に示されるような、アーム部722の上下方向中央部の第2ピン係止部722Bのある箇所における測定点E0における変位が
図5(a)、6(a)に、アーム部722の上端部である測定点F0における変位が
図5(b)、6(b)に、それぞれ示されている。ここで、変位は、無負荷持における位置(基準点)からのX方向、Y方向のずれである。
【0039】
この結果より、アーム部722においては、測定点E0、F0はX方向、Y方向で共に振動するが、その振動の振幅は特に測定点F0(上端部)で大きい。また、特にそのY方向の振動においては、零を中心として正側に大きく偏った変位をし、衝突の10msec後においても変位量(振幅)は1mm以上と大きい。この結果より、ここで発生する振動は、単純な単振動ではなく、かつ正側と負側で非対称性が大きい変化をすることが明らかである。振動の非対称性が大きいことは、前記の通り、アーム部722がプランジャ基板部底部721AにおけるX軸、Y軸における負側の端部に固定されたため、振動する構造が基準点に対して対称となっていないことに起因する。こうした場合においては、アーム部722とプランジャ基板部底部721Aとの連結部分等に特に偏った負荷がかかるために、その耐久性が低くなる。また、このように偏った振動が発生した場合には、破壊ではなく塑性変形が起こりやすいことも明らかである。
【0040】
また、
図8、9は、それぞれ
図5、6に対応した振動のパワースペクトルである。この結果より、どの振動も単純な単振動とは大きく異なり、スペクトルには大きな広がりが認められる。特に、アーム部122の上端部である測定点F0においては、Y方向(
図8(b))、X方向(
図9(b))、共に、0〜5kHzにわたり強度が一様に高く、スペクトルが広がっている。
【0041】
こうした複雑な振動をすることは、
図7に示されるように、プランジャ72の複雑な形状に起因する。ここで、このプランジャ72は、ボス部721B、ドライバブレード装着部724等が一体化されたプランジャ基板部721に、アーム部722とアーム部補強リブ723とが一体化されて連結されたものと考えることができる。ただし、前記の通り、アーム部722には、Y軸方向に沿って局所的に突出する凸部である第1ピン係止部722A、第2ピン係止部722B、第3ピン係止部722Cが設けられており、これらのある箇所でZ軸方向における形状が大きく変化する。このため、アーム部722とアーム部補強リブ723とが一体化された構造においては、特に中央の第2ピン係止部722Bを境にして、これよりも下側の第1部分722ZAと、これよりも上側の第2部分722ZBの2つが存在すると考えることができる。この場合、
図7に示されるように、第1部分722ZAとプランジャ基板部721とは第1接続部分72Sで、第2部分722ZBと第1部分722ZAとは、第2接続部分72Tで、それぞれ接続される。第1接続部分72S、第2接続部分72Tは、それぞれ、このプランジャ72において局所的に剛性が大きく変化(低下)する部分であり、第1接続部分72Sはアーム部722とプランジャ基板部底部721Aとの連結部であり、第2接続部分72Tは第2ピン係止部722B(凸部)が設けられた箇所である。プランジャ72において発生する振動としては、例えば主に第1部分722ZAが移動する振動と、主に第2部分722ZBが移動する振動とがあり、これらの振動は、異なる固有振動数をもつ。同様に、プランジャ72における個々の部分に対応して様々な固有振動数が存在するために、この振動のスペクトルは、特に先端側となる測定点F側での振動のスペクトルの広がりは大きくなる。すなわち、このようなアーム部722を具備するプランジャ72の振動は、複数の自由度をもつ実体振り子と同様に、異なる固有振動数を持つ様々な振動モードの重ね合わせとなる。ただし、ここでは、最も影響が大きな振動モードとして、第1部分722ZAを移動させる振動と、第2部分722ZBを移動させる振動の2つを考えることができる。
【0042】
第1部分722ZAの質量で主に定まり第1部分722ZAが大きく移動する振動の中心(振動の節となる箇所)は、シミュレーションの結果、ボス部721Bとドライバブレード装着部724の間(第1振動中心72U)付近であった。一方、第2部分722ZBの質量で主に定まり第2部分722ZBが大きく移動する振動の中心は、シミュレーションの結果、第2ピン係止部722Bの下側付近(第2振動中心72V)であった。実際にはこれらの振動は同時に起こるため、プランジャ72に発生する振動は、こうした振動モードの重ね合わせとなる。
図5、6において明らかなように、この振動の振幅は、先端となる測定点Fで特に大きく、その減衰の時定数も長い。
【0043】
また、プランジャ72において発生した振動のエネルギーは、例えばシャフト11や空気等、プランジャ72と接するものに伝達されることによって、減衰する。しかしながら、前記のように、プランジャ72内に複数の共振モードが存在する、すなわち、プランジャ72内において部分的に共振しうる箇所が存在すると、この部分で振動エネルギーが維持されるため、振動エネルギーを素早く減衰させることが困難となる。特に、アーム部722の上端部側で発生する振動のエネルギーは、シャフト11から遠いためにシャフト11には伝達しにくいため、減衰しにくい。このため、振動の減衰の時定数を短くするためには、発生する振動モードの数を減少させることが有効である。
【0044】
図3に示されたプランジャ12においては、
図4に示された参考例となるプランジャ72と比べて、アーム部補強リブ123のY軸方向に沿った幅は、下側(アーム部122の根本側:一方の側)から上側(アーム部122の先端側:他方の側)に向かって徐々に細くされている。また、アーム部補強リブ123の上端部は、第2ピン係止部122Bがある箇所に位置する。これによって、第3ピン係止部122Cが設けられた箇所(根本側)から第2ピン係止部122Bが設けられた箇所にかけて、アーム部122の剛性(曲げ剛性)が徐々に低下する。これによって、アーム部122のZ軸方向における曲げ剛性の局所的な変動が発現しにくくなる。
【0045】
図10(a)は、参考例となるプランジャ72のS−S方向(
図4(c))の切断斜視図であり、
図10(b)は、上記のプランジャ12のT−T方向(
図3(c))の切断斜視図である。これらの図においては、YZ平面に沿った各プランジャの断面構造が示されている。 また、
図11(a)は、プランジャ72のU−U方向(
図4(c))の切断斜視図であり、
図11(b)は、上記のプランジャ12のV−V方向(
図3(c))の切断斜視図である。これらの図においては、XZ平面に沿った各プランジャの断面構造が示されている。
【0046】
図3に示されたプランジャ12のアーム部122において、前記のプランジャ72におけるE0、F0とそれぞれ対応した箇所であり
図10、
図11に示されたE1、F1におけるY方向の変位、X方向の変位を、それぞれ
図5、6に対応させて
図12、
図13に示す。この結果より、上記のプランジャ12においては、
図12(b)と
図5(b)の比較より、アーム部122の上端部である測定点F1のY方向における振動の振幅が、前記のプランジャ72と比べて大幅に小さくなっており、その減衰の時定数も短くなっている。この傾向は、X方向(
図13(b)、
図6(b))においても同様である。また、上記のプランジャ12は、プランジャ72と同様に非対称な形状とされているにも関わらず、特にY方向の振動(
図5(b))においては、振動の正負の対称性も大きく向上している。
【0047】
図14、15は、
図12、13の振動特性のパワースペクトルであり、参考例となるプランジャ72における
図8、9の特性に対応する。この結果より、プランジャ12においては、全てのパワースペクトルにおける広がりが、前記のプランジャ72よりも小さくなっていることが確認できる。
図8(b)と
図12(b)、
図9(b)と
図13(b)の比較より、特にアーム部122の上端部である測定点F1における振動の高周波成分が、プランジャ12においては大きく減少している。
【0048】
上記のプランジャ12においてこうした特性が得られる理由は、上側に向かって幅が漸減するアーム部補強リブ123を用いてアーム部122の根本側から先端側に向かって剛性を徐々に低下させたためである。これによって、
図10(a)(b)の比較より明らかなように、プランジャ12においては、第1接続部分12Sにおける剛性が高まり、剛性がアーム部122の第2ピン係止部122Bがある側に向かって徐々に減少するような構成とされている。
【0049】
更に、アーム部122の根本付近(第1接続部分12S付近)とは逆に、アーム部122の上端部側にはアーム部溝(溝)122Dが設けられているために、アーム部122の上端部側では、アーム部122の剛性はプランジャ72におけるアーム部722よりも低下している。このため、このプランジャ12においては、プランジャ72におけるアーム部722と比べて、アーム部122の根本付近の剛性が高くされる一方、その上端付近の剛性は低下している。このため、このプランジャ12におけるアーム部122とアーム部補強リブ123とが一体化された構造においては、その根本側(下側)から上側に向かって剛性が漸減する。
【0050】
これによって、アーム部122の下側から上側における途中において局所的に剛性が大きく変化(低下)することが抑制される。このため、アーム部122において部分的に発生する振動に対応した振動モード(例えば
図7における第2部分722ZBの振動に対応する振動モード)を減少させることができる。これによって、プランジャ12において発生する振動の減衰の時定数を短くすることができる。
【0051】
また、アーム部溝122Dが設けられるために、アーム部122における上端側の重量は軽くなる。アーム部122の振動に際して、最も大きな負荷がかかるのは、第1接続部分12S付近であるが、このため、第1接続部分12Sの周りにおけるアーム部122の慣性モーメントを低下させることができ、アーム部122の振動に際して第1接続部分12S付近に加わる負荷が低減する。
【0052】
また、プランジャ12の振動エネルギーは、プランジャ基板部底部121A、ボス部121Bを介して、シャフト11に伝わることによって、減衰する。ここで、前記の通り、アーム部のようにプランジャの末端となる部分で固有の振動が発生すると、振動を素早く減衰させることが困難となる。一方、シャフト11の極近傍で固有の振動を発生させる場合には、この振動は効率的にシャフト11に伝達されるために、逆に、振動を素早く減衰させることができる。このため、プランジャ基板部底部121Aにおいてこの振動をシャフト11に伝達しやすくするために、ボス部121Bの周囲に、局所的に振動(共鳴)しやすくされた薄肉化部121Dが設けられている。一方、この場合には、負荷がボス部121Bとプランジャ基板部底部121Aとの間の連結部分にも分散するために、この連結部分の強度を高めるために、ボス部補強リブ121Cが設けられている。すなわち、上記のプランジャ12においては、薄肉化部121Dを設けることにより、振動エネルギーをシャフト11に伝達しやすくすることによって、更に振動の減衰の時定数を短くすることができる。
【0053】
また、プランジャ12においては、プランジャ72と比べて、複数のボス部補強リブ121Cの重量が付加される。しかしながら、一方で、アーム部溝122D、薄肉化部121Dが設けられるために、プランジャ12の重量を、プランジャ72と比べて、同等以下とすることができる。
【0054】
アーム部溝122Dの代わりに、アーム部を貫通する貫通孔を局所的に設けてもよい。ただし、第1駆動歯車46は、アーム部122から見てY軸負側に設けられるため、プランジャ12が駆動される際には、アーム部122には、Z軸方向だけでなくY軸方向に沿った力も加わるため、Y方向における曲げ剛性は高くすることが好ましい。このため、こうした溝としてY軸方向に沿って掘り下げられた溝、あるいは、こうした貫通孔としてY軸方向においてアーム部を貫通する貫通孔を用いることが好ましい。
【0055】
このように、上記のプランジャ12においては、発生する振動の対称性が高まり、かつその振幅が小さく、減衰の時定数が短くなるため、使用に際しての耐久性が高まる。これによって、打込機100の耐久性を高めることができる。
【0056】
上記のプランジャ12の変形例となるプランジャ82の異なる二方向から見た斜視図を
図16(a)(b)に示す。このプランジャ82においては、前記のようなアーム部溝、ボス部補強リブ、薄肉化部は設けられず、前記のアーム部補強リブ123と同様の形状のアーム部補強リブ823が設けられる。その他、ブランジャ基板部底部821A、ボス部821B、アーム部822、第1ピン係止部822A、第2ピン係止部822B、第3ピン係止部822C、ドライバブレード装着部824、ガイド部825については、前記の参考例となるプランジャ72におけるものと同様である。
【0057】
このプランジャ82においても、アーム部822の剛性を下側から上側に向かって漸減させるアーム部補強リブ823が用いられるため、前記のプランジャ12よりもその程度は小さくなるものの、同様の効果を奏するため、参考例となるプランジャ72よりも高い耐久性を得ることができる。一方、アーム部溝や薄肉化部が設けられないために、プランジャ82全体の機械的強度は前記のプランジャ12と比べて向上することは明らかである。このため、例えばプランジャを構成する材料や打込機の種類等に応じて、プランジャ12、82のいずれかを用いることができる。
【0058】
なお、上記の例では、駆動機構係止部が、後方(駆動機構が設けられた側)に向かって局所的に突出した形状とされたが、駆動機構とプランジャ(アーム部)との関係に応じ、駆動機構係止部の形態は任意である。しかしながら、形態によらず、駆動機構係止部が一方向における複数箇所に分散して設けられる場合には、これらが設けられた各箇所において、局所的に曲げ剛性が変動するという点は上記の場合と同様である。このため、プランジャが駆動機構と当接することによって駆動される限りにおいて、駆動機構係止部の形態、あるいは駆動機構がプランジャを駆動する方式によらず、上記の構成が有効であることは明らかである。また、上記の構成においては、プランジャが駆動されることによってコイルバネが圧縮される構成とされたが、打ち込み動作前にプランジャが打ち込み方向と反対側に駆動される限りにおいて、上記の構成が有効となることも明らかである。
【0059】
また、アーム部における剛性(曲げ剛性)の分布を上記と同様とすることができる限りにおいて、他の構成の剛性調整部材を用いることもできる。
【0060】
また、プランジャと同様にアーム部が設けられたカウンタウェイトが用いられる場合においては、上記の構成をカウンタウェイトにおいて用いることができる。逆に、カウンタウェイトが用いられない場合においても、上記の構成が有効であることは明らかである。
【0061】
また、上記の例では、プランジャやカウンタウェイトがシャフトに沿って移動する構成とされたが、シャフトが用いられない場合でも、一方向(第1の方向:Z軸方向)に沿ってプランジャが移動する構成であり、アーム部が第2の方向(Y軸)、第3の方向(X軸)の少なくともいずれかにおいてプランジャ基板部の中心から離間した箇所に設けられた場合であれば、上記の構成は有効である。