(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視における前記電波受信機間の最短距離を、前記電波発信機の予測される最大移動速度と前記時間帯の長さとの積で除した場合に、その値が2以上となるように、前記最短距離と前記時間帯の長さとの関係が設定される、
請求項1に記載の位置推定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、RSSI方式、TOA方式、TDOA方式、重心法等を利用する位置推定システムでは、最も強い強度の電波を受信した電波受信機の通信に関する情報だけを用いるのではなく、それより弱い強度の電波を受信した電波受信機の通信に関する情報も用いるため、位置推定の精度が低下するおそれがある。
【0006】
また、電波発信機がどの電波受信機と通信をしたかにより、通信をした電波受信機の設置された位置に電波発信機が存在すると推定する位置推定システムでは、位置推定の精度を向上させるために、電波受信機を多数設置する必要があり、設置費用が増大するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、電波発信機が発信する電波を受信する複数の電波受信機を備え、電波受信機が受信した電波に基づいて電波発信機の位置を推定する位置推定システムであって、電波受信機の設置台数は抑制しつつ、電波発信機の位置を精度よく推定可能な位置推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点に係る位置推定システムは、少なくとも3台の電波受信機と、位置推定装置と、を備える。電波受信機は、それぞれが異なる位置に設置される。位置推定装置は、電波受信機が受け付けた電波発信機の電波の、強度に関する情報に基づいて、電波発信機の位置を推定する。位置推定装置は、決定部と、推定部と、を有する。決定部は、複数の時間帯のそれぞれにおいて各電波受信機が受け付けた電波発信機の電波の、強度に関する、電波受信機別かつ時間帯別の電波強度情報に基づき、各時間帯について、電波受信機の中から最大強度の電波を受け付けた1の電波受信機を最大強度電波受信機として決定する。推定部は、2以上の時間帯からなる判定対象時間帯における電波発信機の位置を、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づいて推定する。
【0009】
本発明の第1観点に係る位置推定システムでは、各時間帯について最大強度の電波を受け付けた1の電波受信機が最大強度電波受信機に決定され、複数の時間帯の最大強度電波受信機の組合せに応じて、判定対象時間帯における電波発信機の位置が推定される。つまり、ここでは、最大強度の電波を受信した電波受信機に関する情報しか位置推定に使用されないため、位置推定の精度を高く保つことができる。また、ここでは、複数の時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づいて電波発信機の位置が推定されるため、単に通信をした電波受信機の設置された位置に電波発信機が存在すると推定する場合に比べ、少ない数の電波受信機で、電波発信機の位置を精度よく推定することができる。
【0010】
本発明の第2観点に係る位置推定システムは、第1観点に係る位置推定システムであって、平面視における電波受信機間の最短距離を、電波発信機の予測される最大移動速度と時間帯の長さとの積で除した場合に、その値が2以上となるように、最短距離と時間帯の長さとの関係が設定される。
【0011】
本発明の第2観点に係る位置推定システムでは、電波受信機同士の最短距離だけ電波発信機が移動する間に、電波発信機の位置推定を行い得るため、精度よく電波発信機の位置を推定することが容易である。
【0012】
本発明の第3観点に係る位置推定システムは、第2観点に係る位置推定システムであって、判定対象時間帯の長さは、平面視における電波受信機間の最短距離を最大移動速度で除して算出される時間の長さ以下である。
【0013】
本発明の第3観点に係る位置推定システムでは、電波受信機同士の最短距離だけ電波発信機が移動する間に、電波発信機の位置推定が少なくとも1回行われるため、精度よく電波発信機の位置を推定することが容易である。
【0014】
本発明の第4観点に係る位置推定システムは、第1観点から第3観点のいずれかに係る位置推定システムであって、情報生成部を更に備える。情報生成部は、電波受信機別かつ時間帯別の電波強度情報を生成する。情報生成部は、各時間帯内の複数の時点における、電波受信機のそれぞれが電波発信機から受け付けた電波の、強度に関する値に基づいて、該時間帯の該電波受信機についての電波強度情報を生成する。
【0015】
本発明の第4観点に係る位置推定システムでは、時間帯別の電波強度情報が、その時間帯内の複数の時点における電波の強度に関する値に基づいて生成されるため、信頼度の高い電波強度情報を得ることが容易である。
【0016】
本発明の第5観点に係る位置推定システムは、第1観点から第4観点のいずれかに係る位置推定システムであって、電波受信機は、第1電波受信機および第2電波受信機を含む。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、第1電波受信機および第2電波受信機のみが含まれ、かつ、第1電波受信機および第2電波受信機の両方が含まれる場合に、推定部は、平面視において、第1電波受信機および第2電波受信機の中間位置に電波発信機が存在すると、電波発信機の位置を推定する。
【0017】
本発明の第5観点に係る位置推定システムでは、第1電波受信機と第2電波受信機との中間位置に電波発信機が存在するという推定が行われるため、第1電波受信機の位置、又は、第2電波受信機の位置に電波発信機が存在するとだけ推定する場合に比べ、電波発信機の位置を精度よく推定できる。
【0018】
本発明の第6観点に係る位置推定システムは、第5観点に係る位置推定システムであって、電波受信機は、第3電波受信機を更に含む。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、第1電波受信機、第2電波受信機、および第3電波受信機のみが含まれ、かつ、第1電波受信機、第2電波受信機、および第3電波受信機の全てが含まれる場合に、推定部は、平面視において、第1電波受信機、第2電波受信機、および第3電波受信機の重心位置に電波発信機が存在すると、電波発信機の位置を推定する。
【0019】
本発明の第6観点に係る位置推定システムでは、第1〜第3電波受信機の重心位置に電波発信機が存在するという推定が行われるため、いずれかの電波受信機の位置に電波発信機が存在するとだけ推定する場合に比べ、電波発信機の位置を精度よく推定できる。
【0020】
本発明の第7観点に係る位置推定システムは、第1観点から第6観点のいずれかに係る位置推定システムであって、電波発信機は人と共に移動する。
【0021】
本発明の第7観点に係る位置推定システムでは、電波発信機の位置の推定を行うことで、人の動線を把握できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1観点に係る位置推定システムでは、最大強度の電波を受け付けた電波受信機に関する情報しか位置推定に使用されないため、位置推定の精度を高く保つことができる。また、ここでは、複数の時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づいて電波発信機の位置が推定されるため、単に通信をした電波受信機の設置された位置に電波発信機が存在すると推定する場合に比べ、少ない電波受信機で、電波発信機の位置を精度よく推定することができる。
【0023】
本発明の第2観点又は第3観点に係る位置推定システムでは、精度よく電波発信機の位置を推定することが容易である。
【0024】
本発明の第4観点に係る位置推定システムでは、信頼度の高い時間帯別の電波強度情報を得ることが容易である。
【0025】
本発明の第5観点および第6観点に係る位置推定システムでは、電波発信機の位置を精度よく推定することができる。
【0026】
本発明の第7観点に係る位置推定システムでは、電波発信機の位置の推定を行うことで、人の動線を把握できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る位置推定システムの一実施形態としての位置推定システム100について、図面を用いて説明する。以下で説明する位置推定システム100は、本発明に係る位置推定システムの具体例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0029】
(1)全体構成
図1は、位置推定システム100の全体概要図である。
【0030】
位置推定システム100は、複数の(より具体的には3台以上の)無線LANのアクセスポイント20と、位置推定装置30と、を備えたシステムである(
図1参照)。アクセスポイント20は、それぞれが異なる位置に設置される。アクセスポイント20と位置推定装置30とは、通信回線40により接続されている。位置推定装置30は、アクセスポイント20が受け付けた電波発信機の電波の強度に関する情報に基づいて、電波発信機の位置の推定を行う。
【0031】
アクセスポイント20は、スーパーマーケット等の商業施設内の空間R(売場等)に設置される(
図2参照)。具体的には、空間Rの天井に設置されている空調装置の複数の室内機50のそれぞれに隣接して、アクセスポイント20が1つ取り付けられている(
図3参照)。室内機50は、一般に、空間Rの全エリアが空調の対象となるよう、空間Rの全体にわたって、概ね均等な間隔で設置されている。そのため、室内機50に隣接して取り付けられるアクセスポイント20は、例えば
図2のように、空間Rの全体にわたって、概ね均等な間隔で設置される。位置推定装置30は、アクセスポイント20の設置される商業施設内、例えば商業施設のバックヤードに設置される。
【0032】
ここでは、データ重畳技術を用いて、空調装置の室内機50の制御部(図示せず)と室外機の制御部(図示せず)とを接続する空調用通信線が、アクセスポイント20と位置推定装置30とを接続する通信回線40としても用いられる。これにより、アクセスポイント20と位置推定装置30とを接続する通信回線を、別途設置する費用や手間を省くことができる。
【0033】
アクセスポイント20に対して電波を発信する電波発信機は、例えば人が携帯するスマートフォン等の携帯端末90である。言い換えれば、携帯端末90は、人と共に移動する。位置推定システム100を用いることで、商業施設の空間Rにおける、携帯端末90を携帯する人の動線情報等を取得可能である。
【0034】
なお、
図1では、携帯端末90は1台のみ描画されているが、携帯端末90は複数台でもよい。言い換えれば、携帯端末90を所有する人は、空間R内に2人以上いてもよい。
【0035】
各携帯端末90は、固有の識別符号(以後、発信機IDと呼ぶ)を有する。携帯端末90は、情報として発信機IDを含む電波(電波信号)を発信する。携帯端末90からは、定期的に、例えば0.5秒間隔で、電波が発信される。ただし、携帯端末90からの電波の発信間隔は例示であり、これに限定されるものではない。
【0036】
(2)詳細構成
(2−1)アクセスポイント
アクセスポイント20は、携帯端末90の発する電波を受信する電波受信機の一例である。アクセスポイント20は、携帯端末90から発信される電波を受け付ける。アクセスポイント20は、携帯端末90から受け付けた電波について、電波の強度を検知する。
【0037】
アクセスポイント20は、携帯端末90から受け付けた電波のそれぞれについて、電波に関する情報を生成する。各電波についての、電波に関する情報には、アクセスポイント20が電波を受信した時刻と、受信した電波に情報として含まれていた発信機IDと、アクセスポイント20が検知した電波の強度に関する情報(電波の強度に関する値)と、を含む。アクセスポイント20は、生成した電波に関する情報を、各アクセスポイント20に固有の識別符号(以後、受信機IDと呼ぶ)と共に、位置推定装置30へ送信する。
【0038】
ここでは、アクセスポイント20は、携帯端末90から電波を受信する度に、受信した電波について電波に関する情報を生成し、生成した電波に関する情報を位置推定装置30へ送信する。ただし、これに限定されるものではない。例えば、アクセスポイント20は、電波を複数回受信した後、複数の電波のそれぞれについて電波に関する情報を生成し、これらを位置推定装置30へ送信してもよい。また、例えば、アクセスポイント20は、電波を受信する度に電波に関する情報を生成し、生成した電波に関する情報を、複数回分まとめて位置推定装置30へ送信してもよい。
【0039】
(2−2)位置推定装置
位置推定装置30は、汎用のコンピュータである。位置推定装置30は、アクセスポイント20が受け付けた携帯端末90の電波の、強度に関する情報に基づいて、携帯端末90の位置を推定する。
【0040】
位置推定装置30は、
図4に示すように、通信部31、入力部32、出力部33、記憶部34、および制御部35を主に有する。
【0041】
(2−2−1)通信部
通信部31は、アクセスポイント20と位置推定装置30との通信回線40を介した通信を可能にするための通信インターフェースである。
【0042】
位置推定装置30は、アクセスポイント20から、受信機IDおよび電波に関する情報を受け付ける。通信部31を介してアクセスポイント20から受け付けた受信機IDおよび電波に関する情報は、後述する記憶部34の受信データ記憶領域34aに記憶される。
【0043】
(2−2−2)入力部
入力部32は、例えば、キーボードやマウスである。入力部32には、位置推定装置30のオペレータ等により各種情報や各種指令が入力される。
【0044】
(2−2−3)出力部 出力部33は、例えば、液晶ディスプレイである。出力部33には、各種情報が出力(表示)される。出力部33には、例えば、後述する制御部35により推定された携帯端末90の位置に基づく情報が表示される。具体的には、出力部33には、例えば、制御部35により推定された携帯端末90の位置に基づく、人の動線情報(携帯端末90を携帯する人の移動経路を示す情報)が表示される。
【0045】
(2−2−4)記憶部
記憶部34は、主に、ROM、RAM、およびハードディスクによって構成されている。
【0046】
記憶部34には、制御部35により実行される各種プログラムが記憶される。
【0047】
また、記憶部34には、各種情報が記憶される。記憶部34は、情報の記憶領域として、受信データ記憶領域34aと、電波強度情報記憶領域34bと、最大強度電波受信機記憶領域34cと、位置推定結果記憶領域34dと、を含む。
【0048】
(2−2−4−1)受信データ記憶領域
受信データ記憶領域34aには、アクセスポイント20から通信回線40を介して受け付けた、受信機IDおよび電波に関する情報が記憶される。電波に関する情報には、電波に関する情報と共に送信されてくる受信機IDを有するアクセスポイント20が、ある電波を受信した時刻と、その電波に情報として含まれていた発信機IDと、その電波の強度に関する情報(アクセスポイント20が検知した、その電波の強度に関する値)と、を含む。受信データ記憶領域34aには、発信機ID別かつ受信機ID別に、電波の受信時刻と、電波の強度に関する情報とが、互いに関連付けて記憶される。
【0049】
(2−2−4−2)電波強度情報記憶領域
電波強度情報記憶領域34bには、発信機ID別に、後述する制御部35の情報生成部35aにより生成される、受信機ID別かつ時間帯別の電波強度情報が記憶される。電波強度情報については、情報生成部35aに関する説明の中で詳述する。
【0050】
(2−2−4−3)最大強度電波受信機記憶領域
最大強度電波受信機記憶領域34cには、発信機ID別に、後述する制御部35の決定部35bにより決定される、時間帯別の最大強度電波受信機が記憶される。最大強度電波受信機については、決定部35bに関する説明の中で詳述する。
【0051】
(2−2−4−4)位置推定結果記憶領域
位置推定結果記憶領域34dには、発信機ID別に、後述する制御部35の推定部35cによる携帯端末90の位置の推定結果が、時系列の情報として記憶される。
【0052】
(2−2−5)制御部
制御部35は、主にCPUを有する。制御部35は、記憶部34に記憶されている各種プログラムを実行することで、携帯端末90の位置の推定を行う。
【0053】
具体的には、制御部35は、携帯端末90の位置の推定のための各種プログラムを実行することで、主に情報生成部35a、決定部35b、および推定部35cとして機能する。
【0054】
(2−2−5−1)情報生成部
情報生成部35aは、受信データ記憶領域34aに、発信機ID別かつ受信機ID別に、互いに関連付けられて記憶された電波の受信時刻と電波の強度に関する情報とに基づき、各携帯端末90について(各発信機IDについて)、受信機ID別(アクセスポイント20別)かつ時間帯別の電波強度情報を生成する。
【0055】
なお、ここでは、全ての時間帯は同一の長さである。時間帯の長さは、各時間帯に、アクセスポイント20が携帯端末90から電波を受信する時刻が所定数だけ含まれるように設定される。例えば、電波が0.5秒間隔で携帯端末90から発信され、各時間帯にアクセスポイント20が電波を受信する時刻が3つ含まれるよう時間帯の長さが設定されているとすれば、時間帯の長さは1.5秒である。
【0056】
情報生成部35aによる、電波強度情報の生成について具体的に説明する。なお、ここでは、説明を簡単にするため、携帯端末90は1台だけ(発信機IDは1つだけ)と仮定して説明を行う。携帯端末90が複数台ある場合には、情報生成部35aは、発信機ID別に以下に説明する処理を実行すればよい。
【0057】
情報生成部35aは、各時間帯内の複数の時点(各時間帯に含まれる、複数の、電波の受信時刻)における、アクセスポイント20のそれぞれが携帯端末90から受信した電波の、強度に関する情報(強度に関する値)に基づいて、その時間帯の、そのアクセスポイント20についての電波強度情報を生成する。なお、後述するように、決定部35bは、情報生成部35aにより生成された時間帯別の電波強度情報に基づいて、各時間帯について最大強度受信機を決定する。最大強度受信機については後述する。
【0058】
具体例を挙げて、より具体的に説明する。
【0059】
ここでは、例えば、アクセスポイント20は、アクセスポイント20A,20B,20Cの3台であると仮定する(
図5参照)。3台のアクセスポイント20A,20B,20Cは、それぞれ、A,B,Cという受信機IDを有するアクセスポイント20である。3台のアクセスポイント20A,20B,20Cは、平面視において、例えば
図5のように、三角形の頂点の位置にそれぞれ配置されている。携帯端末90からアクセスポイント20には、所定長さの各時間帯に、電波が3回送信されると仮定する。言い換えれば、受信データ記憶領域34aには、ある受信機IDのアクセスポイント20について、ある時間帯に属する電波の受信時刻と関連付けられた電波の強度に関する値が、3つずつ記憶されていると仮定する。例えば、受信データ記憶領域34aには、表1のように、アクセスポイント20別に、時刻別の(時刻t1,t2,t3・・・の)電波の強度に関する値(単位はデシベル)が記憶されている。ここでは、時刻t1,t2,t3は、時間帯T1に属し、時刻t4,t5,t6は、時間帯T1に引き続く時間帯T2に属するものとする(時刻t7以降についても同様)。
【0061】
情報生成部35aは、アクセスポイント20別に、各時間帯T1,T2,・・・について、各時間帯T1,T2,・・・内の複数の時点(電波の受信時刻)における電波の強度に関する値の平均値を算出し、これをアクセスポイント20別かつ時間帯別の電波強度情報として電波強度情報記憶領域34bに記憶する。電波強度情報記憶領域34bには、例えば、表2に示すような情報が記憶される。
【0063】
(2−2−5−2)決定部
決定部35bは、電波強度情報記憶領域34bに記憶された情報に基づき、ある発信機IDの携帯端末90に関し、時間帯別に最大強度電波受信機を決定する。つまり、決定部35bは、ある発信機IDの携帯端末90に関し、複数の時間帯のそれぞれにおいて各アクセスポイント20が受け付けた携帯端末90の電波の、強度に関する、アクセスポイント20別(受信機ID別)かつ時間帯別の電波強度情報に基づき、各時間帯について、最大強度電波受信機を決定する。なお、ここで、最大強度電波受信機とは、アクセスポイント20の中で、最大強度の電波を受信した1のアクセスポイント20を意味する。
【0064】
具体的に、ある発信機IDの携帯端末90について、表2に示す情報が電波強度情報記憶領域34bに記憶されている場合を例に、決定部35bによる最大強度電波受信機の決定処理について説明する。なお、ここでは、アクセスポイント20は、
図5のように、アクセスポイント20A,20B,20Cの3台であると仮定する。
【0065】
決定部35bは、表2に示す情報が電波強度情報記憶領域34bに記憶されている場合、各時間帯T1,T2,T3,・・・について、最大の電波強度情報の値を示す受信機IDのアクセスポイント20を、最大強度電波受信機に決定する。例えば、決定部35bは、時間帯T1およびT2については受信機IDがAのアクセスポイント20Aを、時間帯T3については受信機IDがBのアクセスポイント20Bを最大強度電波受信機として決定する(時間帯T4以降についても同様)。
【0066】
決定部35bにより決定された、時間帯別の最大強度電波受信機の情報(例えば、表3に示すような情報)は、発信機ID別に最大強度電波受信機記憶領域34cに記憶される。
【0068】
(2−2−5−3)推定部
推定部35cは、最大強度電波受信機記憶領域34cに記憶された時間帯別の最大強度電波受信機の情報を用いて、2以上の時間帯からなる判定対象時間帯における携帯端末90の位置を、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づいて推定する。
【0070】
ここでは、アクセスポイント20は、それぞれがA,B,Cという受信機IDを有するアクセスポイント20A,20B,20Cの3台であり、平面視において、アクセスポイント20A,20B,20Cが、
図5のように、三角形の頂点の位置にそれぞれ配置されていると仮定する。また、ここでは、各判定対象時間帯は、3つの時間帯からなると仮定する。例えば、表3に示すような時間帯別(時間帯T1,T2,T3,・・・)の最大強度電波受信機の情報が用いられる場合、時間帯T1,T2,T3を併せて判定対象時間帯E1とし,時間帯T4,T5,T6を併せて判定対象時間帯E2とし,時間帯T7,T8,T9を併せて判定対象時間帯E3とする(T10以降についても同様)。
【0071】
推定部35cは、各判定対象時間帯E1,E2,E3,・・・の携帯端末90の位置を、各判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づいて、以下の様に決定する。
【0072】
(A)判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せが、同一の受信機IDのアクセスポイントのみからなる場合
推定部35cは、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せが、同一の受信機IDのアクセスポイント20のみからなる場合、その判定対象時間帯に、平面視においてそのアクセスポイント20が設置されている位置に携帯端末90が存在すると判定する。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機が、全て受信機IDがAのアクセスポイント20Aであれば、推定部35cは、その判定対象時間帯に、アクセスポイント20Aの位置(位置P1)に携帯端末90が存在すると判定する(
図5および
図6参照)。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機が、全て受信機IDがBのアクセスポイント20Bであれば、推定部35cは、その判定対象時間帯に、アクセスポイント20Bの位置(位置P2)に携帯端末90が存在すると判定する(
図5および
図6参照)。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機が、全て受信機IDがCのアクセスポイント20Cであれば、推定部35cは、その判定対象時間帯に、アクセスポイント20Cの位置(位置P3)に携帯端末90が存在すると判定する(
図5および
図6参照)。
【0073】
表3の例を用いて説明すれば、判定対象時間帯E2に含まれる時間帯T4,T5,T6の最大強度電波受信機は、全て受信機IDがBのアクセスポイント20Bである。そのため、推定部35cは、判定対象時間帯E2には、位置P2に、携帯端末90が存在すると判定する。
【0074】
(B)判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せが、受信機IDの異なる2つのアクセスポイントからなる場合
判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せが、受信機IDの異なる2つのアクセスポイント20からなる場合、言い換えれば、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、受信機IDの異なる2つのアクセスポイント20が含まれ、それらの受信機ID以外のアクセスポイント20が含まれない場合に、推定部35cは、平面視において、組合せに含まれる2つのアクセスポイント20の中間位置に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置を推定する。例えば、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機が、受信機IDがAのアクセスポイント20Aおよび受信機IDがBのアクセスポイント20Bである場合には、推定部35cは、その判定対象時間帯に、アクセスポイント20Aとアクセスポイント20Bとの中間位置(位置P4)に、携帯端末90が存在すると推定する(
図5および
図6参照)。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機が、受信機IDがAのアクセスポイント20Aおよび受信機IDがCのアクセスポイント20Cである場合には、推定部35cは、その判定対象時間帯に、アクセスポイント20Aとアクセスポイント20Cとの中間位置(位置P5)に、携帯端末90が存在すると推定する(
図5および
図6参照)。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機が、受信機IDがBのアクセスポイント20Bおよび受信機IDがCのアクセスポイント20Cである場合には、推定部35cは、その判定対象時間帯に、アクセスポイント20Bとアクセスポイント20Cとの中間位置(位置P6)に、携帯端末90が存在すると推定する(
図5および
図6参照)。
【0075】
表3の例を用いて説明すれば、判定対象時間帯E1に含まれる時間帯T1,T2,T3の最大強度電波受信機の組合せには、受信機IDがAのアクセスポイント20Aと、受信機IDがBのアクセスポイント20Bとの2つが含まれるため、推定部35cは、判定対象時間帯E1には、位置P4に、携帯端末90が存在すると判定する。
【0076】
(C)判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せが、受信機IDが異なる3つのアクセスポイントからなる場合
判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せが、受信機IDの異なる3つのアクセスポイント20からなる場合、推定部35cは、平面視において組合せに含まれる3つのアクセスポイント20の重心位置に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置を推定する。つまり、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、受信機IDがAのアクセスポイント20Aと、受信機IDがBのアクセスポイント20Bと、受信機IDがCのアクセスポイント20Cと、を含む場合には、推定部35cは、その判定対象時間帯に、アクセスポイント20Aと、アクセスポイント20Bと、アクセスポイント20Cとの重心位置(位置P7)に、携帯端末90が存在すると推定する(
図5および
図6参照)。
【0077】
表3の例を用いて説明すれば、判定対象時間帯E3に含まれる時間帯T7,T8,T9の最大強度電波受信機の組合せには、受信機IDがAのアクセスポイント20Aと、受信機IDがBのアクセスポイント20Bと、受信機IDがCのアクセスポイント20Cとが含まれるため、推定部35cは、判定対象時間帯E3には、位置P7に、携帯端末90が存在すると判定する。
【0078】
以上のような方法で、推定部35cにより推定された携帯端末90の位置は、発信機ID別に、時系列の情報(判定対象時間帯E1,E2,E3,・・・別の情報)として、位置推定結果記憶領域34dに記憶される。例えば、位置推定結果記憶領域34dには、ある発信機IDの携帯端末90について、表4のような情報が記憶される。
【0080】
(3)携帯端末の位置推定に関するパラメータの設定
携帯端末90の位置を精度よく推定するため、携帯端末90の位置推定に関するパラメータの間には、以下の式1が成り立つことが好ましい。
【0081】
[式1]
D/V≧(1/n)×K×2
【0082】
なお、ここで、Dは、平面視におけるアクセスポイント20間の最短距離[m]である。Vは、携帯端末90の予想される最大移動速度[m/秒]である。言い換えれば、Vは、携帯端末90を携帯する人の予想される最大移動速度[m/秒]である。nは、携帯端末90の電波の発信頻度[回/秒]である。Kは、情報生成部35aにより電波強度情報が生成される時間単位である1の時間帯の間に、携帯端末90により電波が発信される回数である。(1/n)×Kは、1の時間帯の長さ[秒]を表す。
【0083】
式1は、平面視におけるアクセスポイント20間の最短距離Dを、携帯端末90の予測される最大移動速度Vと時間帯の長さ(1/n)×Kとの積で除した場合に、その値が2以上であることを意味する。最短距離Dと判定対象時間帯の長さ(1/n)×Kとの間に、式1のような関係があることで、アクセスポイント20同士の最短距離Dだけ携帯端末90が移動する間に、携帯端末90の位置推定を行い得るため、精度よく携帯端末90の位置を推定することが容易である。
【0084】
さらに好ましくは、携帯端末90の位置推定に関するパラメータの間には、以下の式2が成り立つことが好ましい。
【0085】
[式2]
D/V≧(1/n)×K×N
【0086】
Nは、判定対象時間に含まれる時間帯の数である。Nは、2以上の整数である。
【0087】
つまり、式2は、判定対象時間帯の長さ(1/n)×K×Nは、平面視におけるアクセスポイント20間の最短距離Dを携帯端末90の予想される最大移動速度Vで除して算出される時間の長さ以下であるという関係を示す。式2の関係が成立することで、例えば、携帯端末90が、ある判定対象時間帯に1のアクセスポイント20の位置にいると推定部35cに推定された後に、推定部35cの次の判定対象時間帯には、そのアクセスポイント20に隣接しないアクセスポイント20の位置にいると推定されることを防止できる。
【0088】
このような状態を避ける事で、以下の様な利点がある。例えば、推定部35cによる人の位置の推定結果を、人の動線解析に用いる場合には、携帯端末90を携帯する人がどのような経路で移動したかを把握することが好ましい。しかし、ある判定対象時間帯に1のアクセスポイント20の位置にいると推定部35cに推定された後に、次の判定対象時間帯に、そのアクセスポイント20に隣接しないアクセスポイント20の位置にいると推定されると、結果としてその位置にいることは分かっても、その位置に至る経路は複数存在し得ることから、携帯端末90の移動経路(人の移動経路)は把握できない可能性がある。しかし、式2の関係を満たすようパラメータが設定されることで、このような事態を避け、携帯端末90の移動経路を把握することが可能になる。
【0089】
なお、アクセスポイント20間の最短距離Dは、例えば、2〜200mの範囲である。最短距離Dは、把握したい携帯端末90の位置の精度や、アクセスポイント20の設置条件等に応じて決定される。最短距離Dは、アクセスポイント20の設置台数を抑制するためには、好ましくは4m以上であることが好ましい。携帯端末90の予想される最大移動速度Vは、想定される人の動きに応じて適宜決定される。
【0090】
式2を用いたパラメータの決定方法について、具体例を挙げて説明する。
【0091】
例えば、一例として最短距離Dが5m、携帯端末90の予想される最大移動速度Vが1m/秒、携帯端末90の電波の発信頻度nが2回/秒、判定対象時間帯に含まれる時間帯の数Nが3回という条件に設定する場合、式2から、1の時間帯の間の携帯端末90による電波の発信回数Kは、3.3回以下、例えば3回に設定されることが好ましい。
【0092】
また、例えば、一例として最短距離Dが5m、携帯端末90の予想される最大移動速度Vが1m/秒、1の時間帯の間の携帯端末90による電波の発信回数Kが5回、判定対象時間帯に含まれる時間帯の数Nが5回という条件に設定する場合、式2から、携帯端末90の電波の発信頻度nは5回以上に設定されることが好ましい。
【0093】
(4)位置推定処理のフロー
位置推定システム100による、携帯端末90の位置推定処理のフローについて、
図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0094】
なお、ここでは、携帯端末90の位置推定は、リアルタイムの処理ではなく、受信データ記憶領域34aに、携帯端末90の位置推定を行いたい時間の情報が全て記憶された後に行われることを想定している。ただし、これに限定されるものではなく、受信データ記憶領域34aに情報が書き込まれるのに合わせて、携帯端末90の位置推定が次々と行われるよう構成されてもよい。
【0095】
まず、ステップS1では、情報生成部35aは、受信データ記憶領域34aに記憶された、発信機ID別かつ受信機ID別の、互いに関連付けられた電波の受信時刻と電波の強度に関する情報とに基づき、アクセスポイント20別(受信機ID別)かつ時間帯別の電波強度情報を生成する。より具体的には、情報生成部35aは、各時間帯内の複数の時点における、アクセスポイント20のそれぞれが携帯端末90(ある発信機IDの携帯端末90)から受信した電波の強度に関する値の平均値を算出することで、その携帯端末90について、アクセスポイント20別かつ時間帯別の電波強度情報を生成する。情報生成部35aにより生成された、アクセスポイント20別かつ時間帯別の電波強度情報は、携帯端末90の発信機ID別に電波強度情報記憶領域34bに記憶される。その後ステップS2に進む。
【0096】
次に、ステップS2では、決定部35bが、電波強度情報記憶領域34bに記憶された情報に基づき、ある発信機IDの携帯端末90に関し、時間帯別に最大強度電波受信機を決定する。決定部35bにより決定された、時間帯別の最大強度電波受信機の情報は、発信機ID別に最大強度電波受信機記憶領域34cに記憶される。その後ステップS3に進む。
【0097】
次に、ステップS3では、推定部35cが、最大強度電波受信機記憶領域34cに記憶された時間帯別の最大強度電波受信機の情報を用いて、最先の判定対象時間帯における携帯端末90の位置を、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づいて推定する。携帯端末90の位置の推定方法については既に説明したため、ここでは説明を省略する。推定部35cにより推定された携帯端末90の位置は、発信機ID別に、判定対象時間帯と関連付けて、位置推定結果記憶領域34dに記憶される。その後ステップS4に進む。
【0098】
ステップS4では、最大強度電波受信機記憶領域34cに記憶された全ての情報について、言い換えれば、全ての判定対象時間帯について、推定部35cによる携帯端末90の位置推定が終了したか否かが判定される。
【0099】
ステップS4で、位置推定が推定されていない判定対象時間帯が未だ存在すると判定された場合には、ステップS3に戻り、前回ステップS3で位置推定を行った判定対象時間帯の次の判定対象時間帯について、推定部35cによる携帯端末90の位置推定が行われる。
【0100】
一方、ステップS4で、最大強度電波受信機記憶領域34cに記憶された全ての情報について、言い換えれば、全ての判定対象時間帯について、推定部35cによる携帯端末90の位置推定が終了したと判定されると、その携帯端末90についての位置推定の処理は終了する。そして、一連の処理の結果、位置推定結果記憶領域34dには、推定部35cにより推定された、携帯端末90の位置の時系列の情報が記憶される。
【0101】
(5)特徴
(5−1)
本実施形態に係る位置推定システム100は、少なくとも3台のアクセスポイント20(
図5の具体例では3台のアクセスポイント20A,20B,20C)と、位置推定装置30と、を備える。アクセスポイント20は、電波受信機の一例である。アクセスポイント20は、それぞれが異なる位置に設置される。位置推定装置30は、アクセスポイント20が受け付けた携帯端末90の電波の、強度に関する情報に基づいて、携帯端末90の位置を推定する。携帯端末90は、電波発信機の一例である。位置推定装置30は、決定部35bと、推定部35cと、を有する。決定部35bは、複数の時間帯のそれぞれにおいて各アクセスポイント20が受け付けた携帯端末90の電波の、強度に関する、アクセスポイント20別かつ時間帯別の電波強度情報に基づき、各時間帯について、アクセスポイント20の中から最大強度の電波を受け付けた1のアクセスポイント20を最大強度電波受信機として決定する。推定部35cは、2以上の時間帯(表1を用いて説明した例では3つの時間帯)からなる判定対象時間帯における携帯端末90の位置を、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づいて推定する。
【0102】
ここでは、各時間帯について最大強度の電波を受け付けた1のアクセスポイント20が最大強度電波受信機に決定され、複数の時間帯の最大強度電波受信機の組合せに応じて、判定対象時間帯における携帯端末90の位置が推定される。つまり、ここでは、最大強度の電波を受信したアクセスポイント20に関する情報しか位置推定に使用されないため、いわゆるRSSI方式、TOA方式、TDOA方式、重心法等を利用する位置推定システムに比べ、位置推定の精度を高く保つことができる。また、ここでは、複数の時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づいて携帯端末90の位置が推定されるため、単に通信をしたアクセスポイント20の設置された位置に携帯端末90が存在すると推定する場合に比べ、少ない数のアクセスポイント20で、携帯端末90の位置を精度よく推定することができる。
【0103】
(5−2)
本実施形態に係る位置推定システム100では、平面視におけるアクセスポイント20間の最短距離Dを、携帯端末90の予測される最大移動速度Vと時間帯の長さ(1/n)×Kとの積で除した場合に、その値が2以上となるように、最短距離Dと判定対象時間帯の長さ(1/n)×Kとの関係が設定される。
【0104】
ここでは、アクセスポイント20同士の最短距離Dだけ携帯端末90が移動する間に、携帯端末90の位置推定を行い得るため、精度よく携帯端末90の位置を推定することが容易である。
【0105】
(5−3)
本実施形態に係る位置推定システム100では、判定対象時間帯の長さ(1/n)×K×Nは、平面視におけるアクセスポイント20間の最短距離Dを最大移動速度Vで除して算出される時間の長さ以下である。
【0106】
ここでは、アクセスポイント20同士の最短距離Dだけ携帯端末90が移動する間に、携帯端末90の位置推定が少なくとも1回行われるため、精度よく携帯端末90の位置を推定することが容易である。
【0107】
(5−4)
本実施形態に係る位置推定システム100は、情報生成部35aを備える。情報生成部35aは、アクセスポイント20別かつ時間帯別の電波強度情報を生成する。情報生成部35aは、各時間帯内の複数の時点における、アクセスポイント20のそれぞれが携帯端末90から受け付けた電波の、強度に関する値に基づいて、該時間帯の該アクセスポイント20についての電波強度情報を生成する。
【0108】
ここでは、時間帯別の電波強度情報が、その時間帯内の複数の時点における電波の強度に関する値に基づいて生成されるため、信頼度の高い電波強度情報を得ることが容易である。
【0109】
(5−5)
本実施形態に係る位置推定システム100では、アクセスポイント20は、第1のアクセスポイント20および第2のアクセスポイント20を含む。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、第1のアクセスポイント20および第2のアクセスポイント20のみが含まれ、かつ、第1のアクセスポイント20および第2のアクセスポイント20の両方が含まれる場合に、推定部35cは、平面視において、第1のアクセスポイント20および第2のアクセスポイント20の中間位置に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置を推定する。
【0110】
具体例を挙げて説明すると、本実施形態に係る位置推定システム100では、アクセスポイント20は、例えば
図5のように、アクセスポイント20A(受信機IDがAのアクセスポイント20)およびアクセスポイント20B(受信機IDがBのアクセスポイント20)を含む。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、アクセスポイント20Aおよびアクセスポイント20Bのみが含まれ、かつ、アクセスポイント20Aおよびアクセスポイント20Bの両方が含まれる場合に、推定部35cは、平面視において、アクセスポイント20Aおよびアクセスポイント20Bの中間位置(
図5の位置P4)に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置を推定する。
【0111】
ここでは、第1のアクセスポイント20と第2のアクセスポイント20との中間位置に携帯端末90が存在するという推定が行われるため、第1のアクセスポイント20の位置、又は、第2のアクセスポイント20の位置に携帯端末90が存在するとだけ推定する場合に比べ、携帯端末90の位置を精度よく推定することができる。
【0112】
(5−6)
さらに、本実施形態に係る位置推定システム100では、アクセスポイント20は、第3のアクセスポイント20を含む。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、第1のアクセスポイント20、第2のアクセスポイント20、および第3のアクセスポイント20のみが含まれ、かつ、第1のアクセスポイント20、第2のアクセスポイント20、および第3のアクセスポイント20の全てが含まれる場合に、推定部35cは、平面視において、第1のアクセスポイント20、第2のアクセスポイント20、および第3のアクセスポイント20の重心位置に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置を推定する。
【0113】
具体例を挙げて説明すると、本実施形態に係る位置推定システム100では、アクセスポイント20は、例えば
図5のように、アクセスポイント20Aおよびアクセスポイント20Bに加え、アクセスポイント20C(受信機IDがCのアクセスポイント20)を含む。判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、アクセスポイント20A、アクセスポイント20B、およびアクセスポイント20Cのみが含まれ、かつ、アクセスポイント20A、アクセスポイント20B、およびアクセスポイント20Cの全てが含まれる場合に、推定部35cは、平面視において、アクセスポイント20A、アクセスポイント20B、およびアクセスポイント20Cの重心位置(
図5の位置P7)に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置を推定する。
【0114】
ここでは、第1〜第3のアクセスポイント20の重心位置に携帯端末90が存在するという推定が行われるため、いずれかのアクセスポイント20の位置に携帯端末90が存在するとだけ推定する場合に比べ、携帯端末90の位置を精度よく推定できる。
【0115】
(5−7)
本実施形態に係る位置推定システム100では、携帯端末90は人と共に移動する。
【0116】
ここでは、携帯端末90の位置の推定を行うことで、人の動線を把握できる。
【0117】
(6)変形例
以下に本実施形態の変形例を示す。矛盾の無い範囲で、複数の変形例が組み合わされてもよい。
【0118】
(6−1)変形例A
上記実施形態では、
図5および
図6を用いて、アクセスポイント20が3台で、判定対象時間帯に含まれる時間帯が3つの場合を例に推定部35cによる位置の推定方法を説明したが、これに限定されるものではない。
【0119】
例えば、アクセスポイント20が4台以上であっても、判定対象時間帯に含まれる時間帯が3つである場合には、推定部35cは、上記実施形態と同様な方法で携帯端末90の位置推定を行えばよい。
【0120】
また、例えば、アクセスポイント20が4台以上で、1の判定対象時間帯に含まれる時間帯が4つ以上の場合であって、ある判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、受信機IDの異なるアクセスポイント20が3つ以下しか含まれない場合には、推定部35cは、上記実施形態と同様な方法で携帯端末90の位置推定を行えばよい。一方、ある判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、受信機IDの異なるアクセスポイント20が4つ以上含まれる場合には、推定部35cは、組合せに含まれる受信機IDを有するアクセスポイント20の重心位置に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置の推定を行ってもよい。ただし、携帯端末90の位置推定を精度良く行うためには、1の判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、受信機IDの異なるアクセスポイント20が多数(例えば5つ以上)含まれないことが好ましい。判定対象時間帯に含まれる時間帯の数Nは、1の判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、受信機IDの異なるアクセスポイント20が多数含まれないような値に決定されることが好ましい。
【0121】
また、例えば、判定対象時間帯に含まれる時間帯が2つで、ある判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、受信機IDの異なるアクセスポイント20が1つしか含まれない場合には、推定部35cは、平面視において、その受信機IDのアクセスポイント20の位置に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置の推定を行えばよい。一方、ある判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに、受信機IDの異なるアクセスポイント20が含まれる場合には、推定部35cは、平面視において、それらの受信機IDの異なるアクセスポイント20の中間位置に携帯端末90が存在すると、携帯端末90の位置の推定を行えばよい。
【0122】
(6−2)変形例B
上記実施形態では、位置の推定対象である電波発信機は、人が携帯するスマートフォン等の携帯端末90であるが、これに限定されるものではない。電波発信機は、例えば、人が携帯する無線タグ等であってもよい。
【0123】
また、電波発信機は、人が携帯するものでなくてもよく、例えば、人が使用する(人と共に移動する)カート等に取り付けられた無線タグ等であってもよい。
【0124】
(6−3)変形例C
上記実施形態では、位置推定システム100は商業施設に設置されるが、これに限定されるものではない。
【0125】
例えば、位置推定システム100は、オフィスビル、病院、工場、倉庫等に設置され、その施設内で行動する人が携帯する電波発信機の位置を推定するシステムであってよい。また、アクセスポイント20は、室内に設置されるものである必要はなく、屋外に設置されるものであってもよい。
【0126】
(6−4)変形例D
上記実施形態では、位置の推定対象である電波発信機は、人が携帯するスマートフォン等の携帯端末90であるが、これに限定されるものではない。例えば、位置推定システム100は、商業施設、オフィスビル、病院、工場、倉庫等に設置され、その施設内を移動する物(例えば、施設内を移動する容器等)に取り付けられた電波発信機の位置を推定するシステムであってよい。
【0127】
(6−5)変形例E
上記実施形態では、情報生成部35aは、アクセスポイント20別に、各時間帯に関して、各時間帯内の複数の時点(電波の受信時刻)における電波の強度に関する値の平均値を算出し、これをアクセスポイント20別かつ時間帯別の電波強度情報として電波強度情報記憶領域34bに記憶するが、これに限定されるものではない。
【0128】
例えば、情報生成部35aは、各時間帯内の複数の時点における電波の強度に関する値の平均値に代えて、各時間帯内の複数の時点における電波の強度に関する値の最大値、最頻値、中間値、加重平均値等を算出して、これを時間帯別の電波強度情報として電波強度情報記憶領域34bに記憶してもよい。
【0129】
なお、加重平均値を算出する場合、情報生成部35aは、例えば、時間帯内の後の時刻の電波の強度に関する値ほど、重みを大きくして加重平均値を算出してもよい。また、例えば、加重平均値を算出する場合、情報生成部35aは、時間帯内の中間時点の電波の強度に関する値ほど、重みを大きくして加重平均値を算出してもよい。
【0130】
また、情報生成部35aは、ある時間帯の電波強度情報として、複数の時点における電波の強度に関する値(その時間帯内の複数の時点における電波の強度に関する値を含む)の移動平均値を算出し、これを電波強度情報記憶領域34bに記憶してもよい。
【0131】
(6−6)変形例F
上記実施形態では、位置推定装置30が情報生成部35aを有するが、これに限定されるものではない。例えば、各アクセスポイント20は、情報生成部35aに相当する機能部を有してもよい。そして、各アクセスポイント20は、この機能部により、各時間帯に関し、各時間帯内の複数の時点における電波の強度に関する値の平均値を算出し、算出結果を電波強度情報として位置推定装置30に送信するよう構成されてもよい。
【0132】
(6−7)変形例G
上記実施形態では、商業施設の空間Rの天井に設置されている空調装置の複数の室内機50のそれぞれに隣接して、アクセスポイント20が1つ取り付けられているが、これに限定されるものではない。アクセスポイント20は、室内機50とは独立して設置されてもよい。また、アクセスポイント20は、天井に設置されるものではなくてもよく、空間Rの壁や、空間Rに設置される設備に取り付けられるものであってもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、空調用通信線が通信回線40としても用いられるが、これに限定されるものではなく、空調用通信線とは別の、有線又は無線の通信回線40が用いられてもよい。
【0134】
(6−8)変形例H
上記実施形態では、位置推定装置30は、アクセスポイント20の設置される施設内に設置されるが、これに限定されるものではない。例えば、位置推定装置30は、アクセスポイント20の設置される施設とは別の場所に設置されてもよい。また、位置推定装置30は、アクセスポイント20の設置された複数の施設に関し、携帯端末90の位置を推定する装置であってもよい。
【0135】
(6−9)変形例I
上記実施形態では、携帯端末90は、各時間帯内に複数回電波を発信するが、これに限定されるものではない。携帯端末90は、各時間帯内に1回だけ電波を発信するものであってもよい。この場合には、情報生成部35aは、各時間帯にアクセスポイント20のそれぞれが携帯端末90から受信した電波の、強度に関する値を、その時間帯の、そのアクセスポイント20についての電波強度情報とすればよい。
【0136】
(6−10)変形例J
上記実施形態では、全携帯端末90が、各時間帯内に同じ回数だけ電波を発信するが、これに限定されるものではない。携帯端末90は、各時間帯内に、それぞれ異なる回数だけ電波を発信するよう構成されてもよい。この場合には、携帯端末90の電波の発信頻度が異なっても式1、式2の関係が成り立つよう、携帯端末90の位置推定に関するパラメータが設定されることが好ましい。