(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
米粉、油脂及び水を含有し、水の含有量が70〜90重量%であり、米粉と油脂と水との配合重量比が、0.5〜5:5〜29.5:70〜90である、加熱済み冷凍餃子の少なくとも焼き面への凍結状態での付着用バッター液であって、
加熱済み冷凍餃子に付着する量が、餃子100重量部に対して18〜30重量部である、バッター液。
米粉、油脂、水及び乳化剤を含有し、水の含有量が70〜90重量%であり、米粉と油脂と水との配合重量比が、0.5〜5:5〜29.5:70〜90であるバッター液を、餃子100重量部に対して18〜30重量部の割合で餃子の少なくとも焼き面に凍結状態で付着させることを含む、加熱済み冷凍餃子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、焼き餃子の場合は、焼き面のクリスピーな食感、中具のヘテロな食感及びジューシーな食感が品質の良否を決める要素として重要視されていることから、特許文献1に記載された餃子では、加熱調理の簡便化を主な目的としており、皮の食感については一定の好ましい食感のものが得られているものの、具材の食感改良や焼きムラの発生抑制などに関しては、十分なものではなかった。また、特許文献2に記載された食品は、加熱調理後の中具にザラつき感が生じたり、時間が経過した後のジューシー感が低下したりすることがあった。さらに、特許文献3に記載された食品は、非熱変性部位が変質するおそれがあるため、冷凍状態でも長期間保存することはできなかった。
【0007】
そこで本発明は、冷凍保存後の加熱調理が容易でかつ焼きムラが生じず、加熱調理後のクリスピーな焼き面の食感と、中具のヘテロな食感及びジューシーな食感とを維持することができる加熱済み冷凍餃子及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水分を70〜90重量%含むバッター液を、餃子100重量部に対して18〜30重量部の割合で、餃子の少なくとも焼き面に付着凍結させることにより、上記課題を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下の通りである。
[1] 水分を70〜90重量%含むバッター液が、餃子100重量部に対して18〜30重量部の割合で、餃子の少なくとも焼き面に付着している加熱済み冷凍餃子。
[2] バッター液が、油脂を含むものである上記[1]記載の加熱済み冷凍餃子。
[3] バッター液中の油脂の含有量が5〜29.5重量%である上記[2]記載の加熱済み冷凍餃子。
[4] バッター液が、デンプン又は穀物粉、油脂および水を含有し、デンプン又は穀物粉と油脂と水との配合重量比が、0.5〜5:5〜29.5:70〜90である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の加熱済み冷凍餃子。
[5] バッター液が、穀物粉、油脂および水を含有し、穀物粉と油脂と水との配合重量比が、0.5〜5:5〜29.5:70〜90である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の加熱済み冷凍餃子。
[6] 穀物粉が米粉である上記[5]記載の加熱済み冷凍餃子。
[7] バッター液が、焼き面のみに付着している上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の加熱済み冷凍餃子。
[8] バッター液が、焼き面と焼き面に連続する側面部にも付着し、側面部に付着したバッター液は、焼き面から8mm以下の高さである上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の加熱済み冷凍餃子。
[9] 側面部に付着したバッター液は、焼き面から5mm以下の高さである上記[8]記載の加熱済み冷凍餃子。
[10] 中具を包んだ皮の一面に焼き面を形成した生餃子を加熱処理した後に凍結処理して冷凍餃子を製造する方法において、凍結処理を行う際に、餃子100重量部を、70〜90重量%の水分を含むバッター液18〜30重量部に接触又は浸漬した状態で冷凍処理を行い、バッター液を焼き面のみ又は焼き面と焼き面に連続した側面に焼き面から8mm以下の高さで付着凍結させる加熱済み冷凍餃子の製造方法。
[11] 側面部に付着したバッター液は、焼き面から5mm以下の高さである上記[10]記載の加熱済み冷凍餃子の製造方法。
[12] バッター液を焼き面のみに付着凍結させる上記[10]記載の加熱済み冷凍餃子の製造方法。
[13] バッター液が、油脂を含むものである上記[10]乃至[12]記載の加熱済み冷凍餃子の製造方法。
[14] バッター液中の油脂の含有量が5〜29.5重量%である上記[13]記載の加熱済み冷凍餃子の製造方法。
[15] バッター液が、デンプン又は穀物粉、油脂および水を含有し、デンプン又は穀物粉と油脂と水との配合重量比が、0.5〜5:5〜29.5:70〜90である上記[10]乃至[14]のいずれかに記載の加熱済み冷凍餃子の製造方法。
[16] バッター液が、穀物粉、油脂および水を含有し、穀物粉と油脂と水との配合重量比が、0.5〜5:5〜29.5:70〜90である上記[10]乃至[14]のいずれかに記載の加熱済み冷凍餃子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、焼き面に特定のバッター液を付着させているので、加熱調理時に水を加える必要がなくなり、加熱調理操作が容易になる。また、加熱調理時の蓋の開閉が少なくなることから、油をひいて加熱したフライパンに水を加えることでおこる油ハネや水ハネを生じず、これによる火傷を防止することできる。更には、油ハネや水ハネによる汚れも生じにくいため、後片付けも楽に行うことができる。さらに、あらかじめ焼き面に特定
のバッター液が付着しているので、熟練を要さず、複数の餃子を同時に焼成した場合の餃子毎の焼きムラの発生を抑えることができるとともに、加熱時に中具が過度に加熱されることを抑制できる。これにより、野菜具材のシャキシャキとした食感を感じることができるだけでなく、加熱時の中具の縮みや硬化が少なくなり、中具のザラつきを感じにくくなり、ソフトで滑らかな食感(しっとり感)を感じることができる。さらに、中具からのドリップが皮へ移行し難くなり、加熱調理後の時間が経過しても、焼きたての汁の量(ジューシーさ)を保つことができる。またこれにより、皮への水分の移行が抑制されるため、皮のコシが保たれて皮の好ましい食感を保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、
図1において、従来の一般的な加熱済み冷凍餃子(以下、冷凍餃子という)10は、
図1(A)に示すように、加熱調理前の状態では、焼き面10aに薄く油脂20などが付着した状態になっているのに対し、本発明の冷凍餃子11は、
図1(B)に示すように、冷凍状態の冷凍餃子11における焼き面11a側にバッター液21が凍結状態で一体に付着した状態、あるいは、
図1(C)に示すように、冷凍状態の冷凍餃子12における焼き面12aにのみバッター液22が凍結状態で一体に付着した状態となっている。焼き面のみにバッター液を付着させる場合は、バッター液に餃子を浸漬させるのではなく、バッター液と餃子を接触させるようにして行なう。なお、焼き面とは、周知のように、冷凍餃子をフライパン等の焼き機を用いて加熱調理する際に、バッター液を介して焼き機側に置かれる面であり、加熱調理によって焼き色が付けられる面である。
【0013】
図1(A)で示した従来の焼き面10aに薄く油脂20などが付着した冷凍餃子10は、必要に応じて油を引いたフライパンで加熱調理する際に、大量の水を加えて蓋を被せ、蒸し焼き状態とする。このとき、
図2(A)に示すように、冷凍餃子10は、焼き面10aから加熱されるとともに、周囲の加熱された水(熱湯W)からも加熱されるため、中具10bが過加熱状態になって汁が流れ出やすくなり、周囲の皮10cも水分を吸収して柔らかくなる。このため、焼成後の餃子10dは、周囲の皮10cのコシが失われて全体的に偏平な感じになることがあり、中具10bも加熱前に比べて縮んで硬くなってしまうことがある。
【0014】
一方、
図1(C)で示した焼き面12aにバッター液22が凍結状態で一体に付着した本発明の冷凍餃子12は、焼き面12aに所定量のバッター液22が付着しているので、加熱調理する際に水を加える必要がなく、蓋を被せるだけでよいから、
図2(B)に示すように、加熱されて溶解したバッター液22を介して焼き面12aから主に加熱される状態になる。このため、周囲の皮12cは、従来のように周囲の熱湯から加熱されることは
なく、蒸気で蒸されるだけであり、焼き面12aのみが焼かれた状態になるので、周囲の皮12cのコシが失われることはなく、加熱調理前の形状を保った焼き上がりとなる。さらに、中具12bも、焼き面12aから主に加熱されるので、過加熱状態になって汁が大量に流れ出ることはなく、加熱調理前の形状を保った状態で適度に加熱される。したがって、焼成後の餃子12dは、焼き面12aのクリスピーな食感、中具12bのヘテロな食感及びジューシーな食感を有し、周囲の皮12cもコシのある食感に優れたものとなる。
【0015】
本発明における加熱済み冷凍餃子は、具を皮で包み、蒸す等の加熱調理を行い、冷凍したものを指し、餃子自体のその形状、調理法には特に限定はない。また、餃子自体の製造方法にも特に制限はなく、具と皮の製造法は当業者に周知の方法を用いることができる。
【0016】
本発明におけるバッター液は、70〜90%(重量%、以下同じ)の水に対して油脂などを添加混合したものであって、このバッター液を、餃子100重量部に対して18〜30重量部の割合で冷凍餃子に付着させておくことにより、冷凍餃子の加熱調理を行う際に、凍結状態のバッター液が溶解するとともに一部が蒸発し、冷凍餃子を適度な蒸し焼き状態にすることができる。
餃子に対するバッター液中の水分量が少なすぎると、加熱調理中に十分な蒸し焼き状態にすることができず、周囲の皮の食感が損なわれたり、焼き上がりにムラを生じたりすることがある。一方、水分量が多すぎると、中具が過加熱状態になることがあり、周囲の皮のコシも弱くなることがある。したがって、餃子に対するバッター液の量は、バッター液の配合、特に水分量に応じて設定され、前述のように餃子100重量部に対して18〜30重量部であり、好ましくは24〜30重量部である。
また、バッター液中の水の含有量は70〜90重量%であり、好ましくは70〜85重量%である。バッター液中の水の含有量が70重量%より少ないと調理時に焦げが発生し易く、又、餃子の皮の合わせ目が硬くなる傾向がある。一方、バッター液中の水の含有量が90重量%よりも多い場合には野菜のシャキシャキ感が弱くなる傾向がある。
バッター液の水以外の主な成分としては、油脂、デンプン、穀物粉が挙げられ、更に乳化剤、乳化補助剤を含んでいてもよい。
バッター液に油脂を含有することにより、調理時に油を使用しなくても、焼きムラが生じにくくなる。一方、バッター液中に油脂を含有しない場合は調理時に餃子の底面が焦げやすくなり、又、フライパンから餃子を剥がし難くなる傾向がある。バッター液中の油脂の含有量は、5〜29.5重量%が好ましく、12〜23重量%がさらに好ましい。また、バッター液中のデンプン又は穀物粉の含有量は通常5重量%以下であり、好ましくは0.5〜5重量%であり、特に好ましくは2〜4.5重量%である。
バッター液は、水分を70〜90重量%配合する以外には特に限定はないが、デンプン又は穀物粉、油脂及び水の配合重量比を、0.5〜5:5〜29.5:70〜90の範囲にすることにより、加熱調理によって好ましい焼き色を付与することができる。バッター液にはさらに、醤油、塩類、アミノ酸類、ガム類、セルロース類等を含んでいてもよい。
【0017】
前記油脂としては、特に制限はないが、なたね油、キャノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、紅花油、パーム油、ラード、ショートニング、バター、ごま油、オリーブ油等を単独又は組合わせて使用することができる。特に、なたね油、キャノーラ油、大豆油が好ましい。
【0018】
本発明においてバッター液にはデンプン又は穀物粉を配合することができる。穀物粉は損傷澱粉率が、デンプンに比べて低いことから、焼成後の時間が経過した場合も、澱粉粒が膨潤し難く、焼き面のクリスピーな食感が維持されやすいことから、穀物粉を用いることが好ましい。ここで、損傷澱粉率とは、製粉・粉砕時の負荷によりダメージを受けた澱粉粒子の割合をいう。
前記デンプンとしては、特に制限はないが、ウルチ米でんぷん、モチ米でんぷん、小麦
でんぷん、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカでんぷん、サゴヤシでんぷん、緑豆でんぷん、馬鈴薯でんぷん、サツマイモでんぷん等を使用することができ、特に、ウルチ米デンプン、モチ米デンプンが好ましい。前記穀物粉としては、特に制限はないが、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大麦粉、そば粉、馬鈴薯粉、大豆粉、小豆粉、ひえ粉、栗粉、キビ粉等を使用することができ、特に、タンパク質含量が少なく、焼成後のクリスピーな食感を付与し易い観点で米粉が好ましい。
【0019】
前記乳化剤としては、レシチン(大豆由来、卵由来等)、酵素分解レシチン、シュガーエステル、モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等を使用することができ、特に、レシチンが好ましく、更に大豆由来のレシチンがより好ましい。前記乳化補助剤としてはタンパク質を用いることができ、通常、卵白粉、分離大豆タンパク、脱脂粉乳、粉状小麦タンパク、全卵粉等を使用することができる。特に、卵白粉、脱脂粉乳が好ましい。
バッター液中の乳化剤の含有量は、特に制限はないが、通常0.1〜1.0重量%であり、好ましくは0.15〜0.25重量%である。バッター液中の乳化補助剤の含有量は通常0〜1.5重量%であり、好ましくは0.1〜0.5重量%である。乳化剤を用いることにより、バッター液が乳化状態となるため、バッター液の性状が均一となり、加熱調理済みの餃子の焼きムラを抑え、加熱済み餃子に均一に、好ましい食感、外観を付与することができる。
【0020】
本発明の加熱済み冷凍餃子の製造方法は、中具を包んだ皮の一面に焼き面12aを形成した生餃子を加熱処理した後に、餃子100重量部を、70〜90重量%の水分を含むバッター液18〜30重量部に接触又は浸漬した状態で冷凍処理を行い、バッター液を焼き面のみ又は焼き面と焼き面に連続した側面に焼き面から8mm以下の高さで付着凍結させる方法である。
【0021】
本発明において、
図1(B)に示すように、冷凍餃子11における焼き面11a及び焼き面周囲の側面部にバッター液を付着させる場合は、バッター液に餃子を浸漬させる際に、焼き面からの高さが8mm以下、好ましくは5mm以下の範囲に設定すべきであり、加熱調理時に側面部の上方までバッター液が付着した状態になると、周囲からの加熱量が多くなり、例えば、皮のコシが弱くなる場合が生じたり、中具が過加熱状態になって食感が悪くなる場合がある。
【0022】
餃子の焼き面にバッター液を凍結状態で一体化させる方法は任意であるが、冷凍餃子を包装する際に使用するトレイを利用し、
図3に示す工程を順次行うことにより、焼き面側にバッター液が一体に付着した状態の冷凍餃子を製造することができる。すなわち、工程31では、通常の手順により中具を皮で包んで餃子(生餃子)を成形し、工程32であらかじめ形成したトレイに所定量のバッター液を充填し、工程33でバッター液を充填したトレイに焼き面を下に向けた餃子を充填した後、工程34で蒸し工程を行って餃子を加熱することにより餃子全体を熱変性させる。次の工程35で、工程34で得られたバッター液が付着した加熱済みの餃子をトレイと共に急速凍結処理し、餃子とバッター液とを一体に付着した状態で凍結させ、最後に工程36で袋などによって密封包装することにより、凍結したバッター液が一体になった冷凍餃子を製造することができる。
【0023】
使用するトレイの形状は、餃子の個数や餃子の大きさ、形状などに応じて任意に選定できるが、例えば、
図4乃至
図11に示す各形状に成形したトレイを用いることにより、焼き面に所定量のバッター液が一体に付着した状態の冷凍餃子を容易に製造することができる。言うまでもないが、
図4乃至
図11に示すトレイに拘るものではない。
【0024】
図4及び
図5に示すトレイ41は、周囲に立ち上がり片41aを有する矩形状のトレイ
41の内部に複数の仕切用突部42aを形成し、該仕切用突部42aによって餃子を一つずつ保持するための複数の餃子保持部42を形成している。各餃子保持部42の底面には、餃子の焼き面より僅かに小さな開口寸法を有するバッター液貯留用の凹部43aが設けられ、該凹部43aの開口周囲には、餃子の焼き面を支持するための支持面43bがそれぞれ設けられている。この餃子保持部42に保持される餃子は、焼き面の周辺部が、前記支持面43bに支持された状態になり、焼き面の中央部が、前記凹部43a内にあらかじめ充填されたバッター液に接触した状態になる。
【0025】
図6及び
図7に示すトレイ51は、周囲に立ち上がり片51aを有する矩形状のトレイ51の内部に複数の仕切用突部52aを形成し、該仕切用突部52aによって餃子を一つずつ保持するための複数の餃子保持部52を形成している。各餃子保持部52の底面には、
図6において上下方向の開口寸法が餃子の焼き面の上下寸法より大きく、左右方向の開口寸法が餃子の焼き面の左右方向寸法より小さなバッター液貯留用の凹部53aを設け、該凹部53aの左右両側に支持面53bが設けられるとともに、凹部53aの中央には、上下方向を向いた支持凸部53cが設けられている。この餃子保持部52に保持される餃子は、焼き面の両端部が支持面53bにそれぞれ支持されるとともに、焼き面の中央部が支持凸部53cに支持された状態となり、支持された部分以外の焼き面が前記凹部53a内にあらかじめ充填されたバッター液に接触した状態になる。
【0026】
図8及び
図9に示すトレイ61は、周囲に立ち上がり片61aを有する矩形状のトレイ61の内部に複数の仕切用突部62aを形成し、該仕切用突部62aによって餃子を一つずつ保持するための複数の餃子保持部62を形成している。各餃子保持部62の底面中央部には、焼き面の中央部に比べて小さな開口寸法を有する第1凹部63aが設けられるとともに、該中央凹部63aの両側には、第1凹部63aを囲むようにして設けられた支持凸部63bを介して、焼き面の左右両端部に比べて大きな開口寸法を有する第2凹部63cがそれぞれ設けられている。この餃子保持部62に保持される餃子は、焼き面における前記第1凹部63aの周辺部が前記支持凸部63bに支持された状態になり、焼き面の中央部が前記第1凹部63a内にあらかじめ充填されたバッター液に、焼き面の両側部が前記第2凹部63cにあらかじめ充填されたバッター液に、それぞれ接触した状態になる。
【0027】
図10及び
図11に示すトレイ71は、周囲に立ち上がり片71aを有する矩形状のトレイ71の内部に複数の仕切用突部72aを形成し、該仕切用突部72aによって餃子を一つずつ保持するための複数の餃子保持部72を形成している。各餃子保持部72の底面には、
図10において上下方向を向いた3列の支持凸部73aによって区画された焼き面中央側の2箇所の比較的大きな第1凹部73bと、焼き面両側部の2箇所の比較的小さな第2凹部73cとが形成されている。この餃子保持部72に保持される餃子は、焼き面の3箇所が支持凸部73aに支持された状態となり、支持された部分以外の焼き面が前記第1凹部73b及び前記第2凹部73cにあらかじめ充填されたバッター液にそれぞれ接触した状態になる。
【0028】
図4乃至
図11に示す各トレイにおいて、各凹部に充填するバッター液の量を各凹部の開口縁までとすることにより、焼き面のみにバッター液が接触した状態になり、各凹部にバッター液を所定量充填し、焼き面を凹部側に向けた餃子を各餃子保持部に充填した状態で凍結処理を行うことにより、各凹部内のバッター液が餃子の焼き面の一部に接触したまま凍結して焼き面に付着した状態になり、焼き面にバッター液が一体に付着した状態の冷凍餃子を得ることができる。また、各凹部の開口縁から僅かに溢れる程度にバッター液を充填することにより、凍結したバッター液が、焼き面11a及び焼き面周囲の側面部に付着した状態になる。また、餃子に対するバッター液の量は、各凹部の深さを適宜設定することによって調整することができる。
以下に本発明を実施例に従って説明する。なお、言うまでもなく本発明は実施例に限定
されるものではない。
【実施例1】
【0029】
まず、餃子は、畜肉(豚ひき肉と鶏ひき肉を合わせたもの)260g、野菜(キャベツ、たまねぎ、ニラ、ニンニクを合わせたもの)550g、卵白25g、ごま油20g、酒10g、香辛料及び調味料を合わせて32gを配合した水分率が約68%の中具13.2gを市販されている餃子の皮5.6gで包み、1個当たりの総重量が約19gの生餃子を作成し、バッター液とは別に蒸し加熱を行ってから急速凍結し、加熱済み冷凍餃子とした。バッター液は、水84%、キャノーラ油13%、米粉2.5%、乳化剤(大豆由来のレシチン)0.1%、乳化補助剤(卵白粉)0.4%に調整した乳化バッター液を調製し、平底のトレイに乳化バッター液を3、4、5、6、7gの各重量になるように充填し、餃子とは別に蒸し加熱を行った後、急速凍結させて板状の加熱済み冷凍乳化バッター液とした。
【0030】
加熱済み冷凍乳化バッター液を加熱済み冷凍餃子の焼き面にそれぞれ接着し、試験用冷凍餃子とした。各試験用冷凍餃子の加熱調理は、家庭用ガスコンロ及び直径26cmのフライパンを用い、1回当たり12個の試験用冷凍餃子を並べて中火で行った。蓋を被せた蒸し焼き時間は、バッター液の量に応じて以下の通り調整し、蒸し焼き時間終了後、蓋を取って焼き面に焼き色を付けた。
【0031】
バッター液3g:蒸し焼き5.5〜6.0分間→焼き色付け2.0〜2.5分間
バッター液4g:蒸し焼き6.0〜6.5分間→焼き色付け2.0〜2.5分間
バッター液5g:蒸し焼き7.0〜7.5分間→焼き色付け2.0〜2.5分間
バッター液6g:蒸し焼き7.5〜8.0分間→焼き色付け2.0〜2.5分間
バッター液7g:蒸し焼き8.0〜8.5分間→焼き色付け2.0〜2.5分間
【0032】
焼成後の餃子に対して、餃子の特性に関して充分に訓練されたパネル6名にて官能評価を実施した。評価項目は「中具の汁の量」、「中具のしっとり感」、「野菜のシャキシャキ感」「皮の食感(コシ)」、「餃子間での焼き色のムラ」とした。評価基準を表1に、評価結果を表2に示す。表2に示す結果から、餃子100重量部に対するバッター液の量は、18〜30重量部が好ましいといえる。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【実施例2】
【0035】
実施例1と同じ手順で加熱済み冷凍餃子を作成した。バッター液は、米粉2.5%、乳化剤(大豆由来のレシチン)0.1%、乳化補助剤(卵白粉)0.4%で、水分含有率が54%、64%、74%、84%、94%、かつ、キャノーラ油含有率が43%、33%、23%、13%、3%となるように調整した乳化バッター液を調製し、平底のトレイに乳化バッター液を餃子1個に対しての水分量が3.6gとなるように充填し、餃子とは別に蒸し加熱を行った後、急速凍結させて板状の加熱済み冷凍乳化バッター液とした。
【0036】
加熱済み冷凍乳化バッター液を、加熱済み冷凍餃子の焼き面にそれぞれ接着して試験用冷凍餃子とした。各試験用冷凍餃子の加熱調理は、家庭用ガスコンロ及び直径26cmのフライパンを用い、1回当たり12個の試験用冷凍餃子を並べて中火で行った。蓋を被せた蒸し焼き時間は6.0〜6.5分間とし、蒸し焼き時間終了後、蓋を取って2分間加熱を続け、焼き面に焼き色を付けた。
【0037】
焼成後の餃子に対して、実施例1と同様の「中具の汁の量」、「中具のしっとり感」、「野菜のシャキシャキ感」「皮の食感」、「餃子間での焼き色のムラ」に、「油ハネ」の項目を加えて評価した。「油ハネ」の評価基準を表3に、評価結果を表4に示す。本結果から分かるように、水分率74%(油分率23%)、水分率84%(油分率13%)のバッター液を付着させた加熱冷凍餃子が好ましかった。
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【実施例3】
【0040】
比較例品として、前記特許文献1に記載された加熱済み冷凍餃子を作成した。すなわち、乳化バッター液を餃子1個あたり1gとなるようにトレイに充填するとともに12個の生餃子をトレイ内に並べて蒸し加熱した後、餃子12個に対して100gの水をトレイ内に加えてから急速凍結して比較例品となる加熱済み冷凍餃子を得た。生餃子は実施例1と同じ手順作成した。バッター液は、水64.6%に対し、キャノーラ油25.0%、デンプン8%、乳化剤(大豆由来のレシチン)2%、乳化補助剤(卵白粉)0.4%を添加して撹拌し、乳化バッター液を作成しこれを用いた。
【0041】
一方、前記
図8及び
図9に示した形状で、凹部の深さが4mmのトレイを使用し、各凹部に、水83.7%に対し、キャノーラ油12.7%、でんぷん2.5%、乳化剤(大豆由来のレシチン)0.2%、乳化補助剤(卵白粉)0.4%を添加して撹拌した乳化バッター液を充填した。餃子1個あたりの乳化バッター液の量は4.3gである。乳化バッター液を充填したトレイに焼き面を下に向けて生餃子を充填し、蒸し加熱を行った後、急速凍結させて乳化バッター液が焼き面に一体に付着した状態の加熱済み冷凍餃子(実施例品)を得た。比較例品と実施例品とを、実施例2と同じ手順でそれぞれ焼き上げた餃子に対し、焼成直後、10分後、20分後に、実施例2と同じ評価基準で評価を行った。また、凍結した状態の加熱済み冷凍餃子について、側面部に付着したバッター液の焼き面からの高さを測定した。結果を表5に示す。表5に示すように側面部に付着したバッター液の焼き面からの高さが0〜6mmの餃子が好ましかった。
【0042】
【表5】