特許第6497323号(P6497323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6497323ガイドプローブを用いた修飾核酸塩基の測定方法およびそのためのキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497323
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】ガイドプローブを用いた修飾核酸塩基の測定方法およびそのためのキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6804 20180101AFI20190401BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20190401BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   C12Q1/6804 ZZNA
   C12N15/09 Z
   G01N33/53 M
【請求項の数】12
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-557908(P2015-557908)
(86)(22)【出願日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】JP2015051191
(87)【国際公開番号】WO2015108177
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-7979(P2014-7979)
(32)【優先日】2014年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】松野 達樹
(72)【発明者】
【氏名】堀池 麻里子
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−230019(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117888(WO,A1)
【文献】 Anal. Chem.,2012年,vol.84, no.17,pp.7533-7538
【文献】 化学とマイクロ・ナノシステム,2013年,vol.12, no.1,pp.8-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6804
C12N 15/09
G01N 33/53
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、修飾核酸塩基の測定方法:
(1)核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすること;ならびに
(2)(1)で得られた溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いて修飾核酸塩基を測定すること。
【請求項2】
核酸サンプルが、修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有し、かつ工程(1)および(2)がそれぞれ(1’)および(2’)により行われる、請求項1記載の方法:
(1’)修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有する核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートにより反応させて、当該標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成すること;ならびに
(2’)当該ハイブリッドを含む溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いて修飾核酸塩基を測定すること。
【請求項3】
前記核酸サンプルと、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中で合わせて、前記核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを含有する溶液を調製することをさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記核酸サンプルが、修飾核酸塩基を含む一本鎖の標的核酸を含有するサンプルである、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記核酸サンプルが、修飾核酸塩基を含む二本鎖の標的核酸を含有するサンプルである、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記核酸サンプルが、修飾核酸塩基を含む標的DNAを含有するサンプルである、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
核酸変性剤の存在下で、前記核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすることを含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
核酸変性剤および界面活性剤の双方の存在下で、前記核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすることを含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
捕捉プローブが異種核酸プローブである、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
ガイドプローブが同種核酸プローブである、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
修飾核酸塩基を構成する核酸塩基がシトシンである、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
修飾核酸塩基がメチルシトシンである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾核酸塩基の測定方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
標的核酸中の修飾核酸塩基(例、メチルシトシン、ヒドロキシルメチルシトシン)を検出する技術、特にイムノアッセイで検出する技術について、幾つかの報告がある(特許文献1、ならびに非特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−230019号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Proll et al.,DNA Research 13,37−42(2006)
【非特許文献2】Kurita et al.,Anal.Chem. 2012,84,7533−7538
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を向上させることが求められている。
【0006】
本発明者らは、標的核酸中の修飾核酸塩基の測定系を検討するなかで、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度が一本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基のものに比し低い(約1/10)という課題(特定課題I)が存在することを確認した(参考例1)。これは、修飾核酸塩基を含む標的核酸に対して、相補鎖および捕捉プローブが競合し、標的核酸と捕捉プローブとのハイブリッド形成効率(標的核酸の固相上への捕捉効率)が低いと考えられるためである(図2)。
【0007】
また、捕捉プローブを用いて標的核酸中の修飾核酸塩基を測定する従来の方法では、標的核酸および捕捉プローブから構成されるハイブリッドが形成される(図3)。従来の方法では、このハイブリッド中の標的核酸の非ハイブリダイズ領域(一本鎖領域)が二次構造を形成することで、この二次構造中に含まれる修飾核酸塩基を測定し難い(換言すれば、検出感度が低い)という課題(特定課題II)も潜在的に存在していた(図3)。
【0008】
本発明の目的は、標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を向上させることを目的とする。
本発明の目的はまた、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を向上させること(即ち、特定課題Iの解決)を目的とする。
本発明の目的はさらに、上述した二次構造の形成を回避することにより、修飾核酸塩基の検出感度を向上させること(即ち、特定課題IIの解決)を目的とする。
本発明の目的はまた、これらの特定課題を同時に解決できる方法論を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、標的核酸中の修飾核酸塩基の測定において、ガイドプローブを用いることにより、上記課題を解決できることを見出した(図1)。本発明者らはまた、核酸変性剤の存在下でガイドプローブを用いることにより、上記課題のより優れた解決が可能になることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕以下を含む、修飾核酸塩基の測定方法:
(1)核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすること;ならびに
(2)(1)で得られた溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いて修飾核酸塩基を測定すること。
〔2〕核酸サンプルが、修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有し、かつ工程(1)および(2)がそれぞれ(1’)および(2’)により行われる、〔1〕の方法:
(1’)修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有する核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートにより反応させて、当該標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成すること;ならびに
(2’)当該ハイブリッドを含む溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いて修飾核酸塩基を測定すること。
〔3〕前記核酸サンプルと、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中で合わせて、前記核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを含有する溶液を調製することをさらに含む、〔1〕または〔2〕の方法。
〔4〕前記核酸サンプルが、修飾核酸塩基を含む一本鎖の標的核酸を含有するサンプルである、〔1〕〜〔3〕のいずれかの方法。
〔5〕前記核酸サンプルが、修飾核酸塩基を含む二本鎖の標的核酸を含有するサンプルである、〔1〕〜〔3〕のいずれかの方法。
〔6〕前記核酸サンプルが、修飾核酸塩基を含む標的DNAを含有するサンプルである、〔1〕〜〔5〕のいずれかの方法。
〔7〕核酸変性剤の存在下で、前記核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすることを含む、〔1〕〜〔6〕のいずれかの方法。
〔8〕核酸変性剤および界面活性剤の双方の存在下で、前記核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすることを含む、〔1〕〜〔7〕のいずれかの方法。
〔9〕捕捉プローブが異種核酸プローブである、〔1〕〜〔8〕のいずれかの方法。
〔10〕ガイドプローブが同種核酸プローブである、〔1〕〜〔9〕のいずれかの方法。
〔11〕修飾核酸塩基を構成する核酸塩基がシトシンである、〔1〕〜〔10〕のいずれかの方法。
〔12〕修飾核酸塩基がメチルシトシンである、〔1〕〜〔11〕のいずれかの方法。
〔13〕以下を含む、修飾核酸塩基の測定用キット:
(I)ガイドプローブ;ならびに
(II)捕捉プローブ、および/または修飾核酸塩基に対する抗体。
〔14〕核酸変性剤をさらに含む、〔13〕のキット。
〔15〕界面活性剤をさらに含む、〔14〕のキット。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ガイドプローブを用いることにより、標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を向上できる。
本発明はまた、ガイドプローブを用いることにより、および必要に応じて、核酸変性剤の存在下でガイドプローブを用いることにより、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を向上できる。
本発明はさらに、ガイドプローブを用いることにより、上述した二次構造の形成を回避することにより、修飾核酸塩基の検出感度を向上できる。
本発明はさらに、核酸変性剤および界面活性剤の双方の存在下でガイドプローブを用いることにより、検出シグナルのバックグランド値を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の方法の概要を示す図である。
図2図2は、修飾核酸塩基の測定に関する課題(特定課題I)の概要を示す図である。二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度は一本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基のものに比し低い。これは、修飾核酸塩基を含む標的核酸に対して、相補鎖および捕捉プローブが競合し、標的核酸と捕捉プローブとのハイブリッド形成効率(標的核酸の固相上への捕捉効率)が低いと考えられるためである。
図3図3は、修飾核酸塩基の測定に関する課題(特定課題II)の概要を示す図である。捕捉プローブを用いて標的核酸中の修飾核酸塩基を測定する従来の方法では、標的核酸および捕捉プローブから構成されるハイブリッドが形成される。従来の方法では、このハイブリッド中の非ハイブリダイズ領域(一本鎖領域)が二次構造を形成することで、この二次構造中に含まれる修飾核酸塩基を測定し難い(換言すれば、検出感度が低い)という課題が潜在的に存在していた。
図4図4は、捕捉プローブによる一本鎖および二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定を示す図である。
図5図5は、捕捉プローブおよびガイドプローブを用いた、一本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定を示す図である。ガイドプローブ(−):捕捉プローブのみ;ガイドプローブ(+):捕捉プローブおよびガイドプローブ。
図6図6は、捕捉プローブおよびガイドプローブを用いた、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定を示す図である。ガイドプローブ(−):捕捉プローブのみ;ガイドプローブ(+):捕捉プローブおよびガイドプローブ。
図7図7は、カオトロピック剤の存在下におけるガイドプローブの使用による、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定を示す図である。Hybridization Buffer:ガイドプローブを使用;グアニジンチオシアネート(−)Buffer:ガイドプローブを使用;グアニジンチオシアネート(+)Buffer:カオトロピック剤の存在下でガイドプローブを使用。
図8図8は、カオトロピック剤の存在下におけるガイドプローブの使用による、一本鎖および二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定を示す図である。
図9図9は、ガイドプローブの使用による、一本鎖および二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定を示す図である。本実験は、図8に示される実験との対比のため行われた。
図10図10は、核酸変性剤の存在下におけるガイドプローブの使用による修飾核酸塩基の測定を示す図である。
図11図11は、ガイドプローブによる、修飾核酸塩基を含む部位における二次構造の形成の阻害を示す図である。1:ガイドプローブ1;2:ガイドプローブ2;3:ガイドプローブ3;4:ガイドプローブ4;2+4:ガイドプローブ2および4を添加;2+3+4:ガイドプローブ2、3および4を添加。
図12図12は、種々の濃度の核酸変性剤の効果を示す図である。
図13図13は、ガイドプローブの主鎖の検討を示す図である。未添加:ガイドプローブの非存在下;2:ガイドプローブ2;4:ガイドプローブ4;2+4:ガイドプローブ2および4の存在下;5:ガイドプローブ5;6:ガイドプローブ6;5+6:ガイドプローブ5および6の存在下。−:ガイドプローブの非存在下;DNA:ガイドプローブの主鎖がDNA;2’−O−メチル化RNA:ガイドプローブの主鎖が2’−O−メチル化RNA;RNA;ガイドプローブの主鎖がRNA。
図14図14は、核酸変性剤(カオトロピック剤および電子供与性化合物)または非核酸変性剤(界面活性剤)の存在下におけるガイドプローブの使用による修飾核酸塩基の測定を示す図である。
図15図15は、核酸変性剤および界面活性剤の双方の存在下で、ガイドプローブを用いた、標的核酸中の修飾核酸塩基の測定(発光カウント)を示す図である。
図16図16は、核酸変性剤および界面活性剤の双方の存在下でガイドプローブを用いた、標的核酸中の修飾核酸塩基の測定(S/N)を示す図である。シグナルノイズ比(S/N):標的核酸量(fmol)の発光カウント/標的核酸の非存在下(即ち、0mol)の発光カウント。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、修飾核酸塩基の測定方法を提供する。本発明の方法は、以下を含む:
(1)核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすること;ならびに
(2)(1)で得られた溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いて修飾核酸塩基を測定すること。
【0014】
核酸サンプルは、修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有するサンプル、または当該標的核酸を含有すると疑われるサンプルである。核酸サンプルはまた、生物から採取された生物学的サンプルであってもよく、または環境サンプルなどであってもよい。生物学的サンプルが由来する生物としては、例えば、哺乳動物(例、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ)、鳥類(例、ニワトリ)等の動物、昆虫、微生物、植物、菌類、魚類が挙げられる。生物学的サンプルはまた、血液自体または血液に由来するサンプルである血液関連サンプル(例、全血、血清、血漿)、唾液、尿、乳汁、組織または細胞抽出液、あるいはこれらの混合物であってもよい。生物学的サンプルはさらに、疾患(例、癌、白血病)に罹患している哺乳動物、または疾患に罹患している可能性がある哺乳動物に由来するものであってもよい。環境サンプルとしては、例えば、核酸を含有する可能性がある土壌、海水、淡水由来のサンプルが挙げられる。このようなサンプルは、本発明の方法に用いられる前に、他の処理に付されてもよい。このような処理としては、例えば、核酸(例、ゲノムDNA等のDNA、RNA)の抽出および断片化(例、制限酵素等の酵素による処理)、および核酸の鎖の解離(例、熱処理による二本鎖核酸の解離)が挙げられる。したがって、本発明の方法は、核酸サンプルから核酸を抽出すること、および/または核酸を断片化すること、ならびに/あるいは核酸の鎖を解離させることをさらに含んでいてもよい。本発明の方法はまた、遠心分離、抽出、ろ過、沈殿、加熱、凍結、冷蔵、攪拌等によりサンプルを処理することをさらに含んでいてもよい。
【0015】
標的核酸は、任意の天然核酸または人工核酸であり、好ましくは、天然核酸であるDNAまたはRNAであるが、DNAがより好ましい。標的核酸はまた、DNAのコーディング領域または非コーディング領域(例、転写調節領域)である。標的核酸を構成するヌクレオチド残基の個数(即ち、標的核酸の長さ)は、捕捉プローブおよびガイドプローブとハイブリダイズし得る限り特に限定されないが、例えば20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、45個以上、または50個以上であってもよい。標的核酸を構成するヌクレオチドの個数はまた、例えば、ゲノムDNAの断片化処理によって生ずる可能性のある任意の個数であってもよい。例えば、標的核酸を構成するヌクレオチドの個数は、10000個以下、5000個以下、2000個以下、1000個以下、500個以下、300個以下、200個以下、150個以下または100個以下であってもよい。標的核酸のGC含有率は、特に限定されないが、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、または60%以上であってもよい。標的核酸のGC含有率はまた、例えば、90%以下、80%以下、または70%以下であってもよい。標的核酸が含む、または含む可能性がある修飾核酸塩基の数は、1個以上(例、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜20個、1〜10個または1〜5個)であれば特に限定されない。
【0016】
本発明において、修飾核酸塩基とは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)からなる群より選ばれる通常の核酸塩基に対して修飾された構造を有する核酸塩基をいう。例えば、表現「修飾核酸塩基」中の用語「核酸塩基」としては、標的核酸がDNAの場合には、例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびチミン(T)が挙げられる。一方、標的核酸がRNAの場合には、例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。核酸塩基は、好ましくはシトシン(C)である。修飾としては、例えば、通常の核酸塩基への置換基の導入、通常の核酸塩基が有する基(例、アミノ基、オキソ基、メチル基)の脱離、通常の核酸塩基が有する基の置換基への交換が挙げられる。置換基としては、天然に存在する核酸塩基が保有し得るものである限り特に限定されないが、例えば、Administrative Instructions under the Patent Cooperation Treaty(2009年1月1日施行版),Annex C,Appendix 2,Table 2:List of Modified Nucleotidesに記載される修飾ヌクレオチド中の修飾核酸塩基が保有する置換基が挙げられる。本資料中に記載される修飾ヌクレオチドは、日本特許庁により公開されている「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン(平成14年7月)または(平成21年12月)」の附属書2,表2:修飾塩基表に記載される修飾ヌクレオチドと同一であり得る。したがって、修飾核酸塩基については、上記ガイドラインもまた参照できる。置換基は、好ましくは、メチル、ヒドロキシメチル、カルボキシルであり、より好ましくは、メチル、ヒドロキシメチルである。置換等の修飾の位置は、特に限定されないが、ピリミジン環を有する核酸塩基(C、TまたはU)の場合には、例えば、2位および4〜6位のいずれか1以上の位置であり、好ましくは5位であり、プリン環を有する核酸塩基(AまたはG)の場合には、例えば、2位、6位および8位のいずれか1以上の位置である。
【0017】
修飾核酸塩基は、天然に存在し得るものである限り特に限定されないが、例えば、Administrative Instructions under the Patent Cooperation Treaty(2009年1月1日施行版),Annex C,Appendix 2,Table 2:List of Modified Nucleotidesに記載される修飾ヌクレオチドが保有する修飾核酸塩基が挙げられる。本資料中に記載される修飾ヌクレオチドは、上記ガイドラインの附属書2,表2:修飾塩基表に記載される修飾ヌクレオチドと同一であり得る。したがって、修飾核酸塩基については、上記ガイドラインもまた参照できる。好ましくは、修飾核酸塩基は、メチルシトシン(例、5−メチルシトシン)、ヒドロキシメチルシトシン(例、5−ヒドロキシメチルシトシン)、カルボキシルシトシン(例、5−カルボキシルシトシン)である。より好ましくは、修飾核酸塩基は、メチルシトシン(例、5−メチルシトシン)、ヒドロキシメチルシトシン(例、5−ヒドロキシメチルシトシン)である。修飾核酸塩基は、核酸の機能の変化をもたらすこと(例、所定の遺伝子の転写調節能の変化)が知られている。
【0018】
本発明で用いられる捕捉プローブは、標的核酸とハイブリダイズする能力を有する第1の核酸分子であって、固相に固定可能なものである。本発明において、捕捉プローブは、ガイドプローブとハイブリダイズしないように設計される。
【0019】
捕捉プローブは、標的核酸に対して同種および/または異種の核酸から構成され得る。ここで、用語「同種」とは、標的核酸の主鎖構造(糖部分およびリン酸部分から構成される構造)と同じ主鎖構造を、主鎖構造の全体として捕捉プローブが有することを意味する。一方、用語「異種」とは、標的核酸の主鎖構造(糖部分およびリン酸部分から構成される構造)と異なる主鎖構造を、主鎖構造の一部または全体として捕捉プローブが有することを意味する。したがって、捕捉プローブの種類は、標的核酸の種類に応じて決定されてもよい。例えば、標的核酸がDNAである場合、同種核酸の捕捉プローブとしては、DNAプローブを用いることができ、異種核酸の捕捉プローブとしては、DNAプローブ以外の核酸プローブを用いることができる。一方、標的核酸が天然RNAである場合、同種核酸の捕捉プローブとしては、当該天然RNAと同種のRNAから構成されるノーマルRNAプローブを用いることができ、異種核酸の捕捉プローブとしては、ノーマルRNAプローブ以外の核酸プローブを用いることができる。好ましくは、捕捉プローブは、標的核酸に対して異種の核酸から構成されていてもよい。
【0020】
捕捉プローブとしては、例えば、DNAプローブ、RNAプローブ、ペプチド核酸(PNA)プローブ、ロック型核酸(LNA、架橋型核酸(BNA)とも呼ばれる)プローブ、ホスホロチオエート(S化)核酸プローブ、およびこのような2以上の核酸プローブが連結および/または混合したキメラ型核酸プローブ(キメラ型核酸プローブは、必然的に、標的核酸に対して異種の核酸を含む)が挙げられる。RNAプローブとしては、例えば、2’位にヒドロキシル基を有する天然リボヌクレオチドから構成されるノーマルRNAプローブ、および2’位のヒドロキシル基等の基が修飾されているリボヌクレオチドから構成される修飾RNAプローブが挙げられる。修飾RNAプローブとしては、リボヌクレアーゼ耐性のRNAプローブを用いてもよい。修飾RNAプローブとしては、例えば、2’−O−アルキル化RNAプローブが挙げられる。2’−O−アルキル化RNAプローブは、好ましくは、2’−O−C〜Cアルキル化RNAプローブである。C〜Cアルキル化のC〜Cアルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状の炭素原子数1〜6個のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル基(例、n−プロピル、iso−プロピル)、ブチル基(例、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。製造・入手の容易性等の観点から、2’−O−C〜Cアルキル化RNAプローブは、好ましくは2’−O−メチル化RNAプローブである。
【0021】
捕捉プローブを構成するヌクレオチド残基の個数(即ち、捕捉プローブの長さ)は、標的核酸とハイブリダイズし得る程度に十分な長さである限り特に限定されないが、例えば12個以上、好ましくは15個以上、好ましくは18個以上、より好ましくは20個以上であってもよい。捕捉プローブを構成するヌクレオチドの個数はまた、例えば、100個以下、80個以下、60個以下または50個以下であってもよい。捕捉プローブにおいて標的核酸とハイブリダイズし得る領域中のGC含有率は、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、または60%以上であってもよい。この領域中のGC含有率はまた、例えば、90%以下、80%以下、または70%以下であってもよい。捕捉プローブは、例えば、当該分野で公知のプローブ合成法により調製できる。
【0022】
捕捉プローブは、工程(1)において、遊離の形態、または固相に固定された形態で用いることができる。したがって、捕捉プローブは、固相への固定を可能にする物質または基で標識されていてもよい。標識は、例えば、捕捉プローブの5’末端または3’末端の一方にて行うことができる。固相への固定を可能にする基または物質としては、例えば、共有結合的な固相への結合を可能にする基または物質、および親和性物質が挙げられる。共有結合的な固相への結合を可能にする基または物質としては、例えば、チオール基またはチオール基を有する物質(捕捉プローブに導入されたこのようなチオール基は、固相上のマレイミド基と結合できる)、アミノ基またはアミノ基を有する物質(捕捉プローブに導入されたこのようなアミノ基は、固相上の無水マレイン酸と結合できる)が挙げられる。親和性物質としては、例えば、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネートが挙げられる。この場合、固相としては、捕捉プローブが有する親和性物質と親和性を有する別の親和性物質でコーティングされたものを用いることができる。捕捉プローブは、工程(1)において遊離の形態で用いられる場合、ハイブリッド形成後に、固相に固定されてもよい。
【0023】
ガイドプローブは、標的核酸とハイブリダイズする能力を有する第2の核酸分子である。ガイドプローブは、捕捉プローブがハイブリダイズする標的核酸中の第1の領域とは異なる第2の領域において、標的核酸にハイブリダイズできる。ガイドプローブは、捕捉プローブとハイブリダイズしないように設計される。ガイドプローブは、標的核酸の一部に対する相補鎖であってもよい。1個または複数個(例、2個、3個、4個、または5個)のガイドプローブを、1つの標的核酸に対して用いることができる。例えば、複数個のガイドプローブは、1つの標的核酸中の異なる領域にハイブリダイズするように設計することができる。
【0024】
ガイドプローブは、標的核酸に対して同種または異種の核酸から構成され得る。ここで、用語「同種」とは、標的核酸の主鎖構造(糖部分およびリン酸部分から構成される構造)と同じ主鎖構造をガイドプローブが有することを意味する。一方、用語「異種」とは、標的核酸の主鎖構造(糖部分およびリン酸部分から構成される構造)と異なる主鎖構造をガイドプローブが有することを意味する。したがって、ガイドプローブの種類は、標的核酸の種類に応じて決定されてもよい。例えば、標的核酸がDNAである場合、同種核酸のガイドプローブとしては、DNAプローブを用いることができ、異種核酸のガイドプローブとしては、DNAプローブ以外の核酸プローブを用いることができる。一方、標的核酸が天然RNAである場合、同種核酸のガイドプローブとしては、当該天然RNAと同種のRNAから構成されるノーマルRNAプローブを用いることができ、異種核酸のガイドプローブとしては、ノーマルRNAプローブ以外の核酸プローブを用いることができる。好ましくは、ガイドプローブは、標的核酸に対して同種の核酸から構成されてもよい。
【0025】
ガイドプローブとしては、例えば、DNAプローブ、RNAプローブ、ペプチド核酸(PNA)プローブ、ロック型核酸(LNA、架橋型核酸(BNA)とも呼ばれる)プローブ、ホスホロチオエート(S化)核酸プローブ、およびこのような2以上の核酸プローブが連結および/または混合したキメラ型核酸プローブが挙げられる。RNAプローブとしては、例えば、捕捉プローブに関して上述したものと同様のものが挙げられる。
【0026】
ガイドプローブを構成するヌクレオチド残基の個数(即ち、ガイドプローブの長さ)は、標的核酸とハイブリダイズし得る程度に十分な長さである限り特に限定されないが、例えば12個以上、好ましくは15個以上、好ましくは18個以上、より好ましくは20個以上であってもよい。ガイドプローブを構成するヌクレオチドの個数はまた、例えば、200個以下、150個以下、120個以下、または100個以下であってもよい。ガイドプローブにおいて標的核酸とハイブリダイズし得る領域中のGC含有率は、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、または60%以上であってもよい。この領域中のGC含有率はまた、例えば、90%以下、80%以下、または70%以下であってもよい。ガイドプローブは、例えば、当該分野で公知のプローブ合成法により調製できる。
【0027】
工程(1)において、インキュベートは、核酸サンプル中に標的核酸が含まれる場合に捕捉プローブ(遊離または後述する固相に固定)、ガイドプローブ(遊離)および核酸サンプル中の標的核酸のハイブリダイゼーション反応が可能である条件下で適切な溶液中で行われる。このような溶液としては、例えば、緩衝液(例、Tris緩衝液)を用いることができる。ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションに関与するヌクレオチドの個数(即ち、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブの長さ)等によっても異なるが、例えば25〜80℃(好ましくは37〜70℃)での2分間〜24時間(好ましくは10〜120分)である。インキュベートは、捕捉プローブが固定され得る固相中で、または固相の存在下で行われてもよい。あるいは、インキュベート後に得られた溶液を固相と共存させてもよい。
ここで、工程(1)についての表現「核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートする」とは、標的核酸(核酸サンプルが標的核酸を含有する場合)、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドが最終的に形成されるように、核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブが同時または時間差の様式においてインキュベートされることが意図される。
したがって、上記表現は、具体的には、以下の態様を包含するものである:
(1−1)核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中で同時にインキュベートすること;
(1−2)核酸サンプルおよび捕捉プローブを先ずインキュベートし(核酸サンプルが標的核酸を含む場合、標的核酸および捕捉プローブから構成される中間ハイブリッドが形成される)、次いで、本インキュベーションにより得られた溶液をガイドプローブと組み合わせてさらにインキュベートすること(核酸サンプルが標的核酸を含む場合、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドが形成される);ならびに
(1−3)捕捉プローブおよびガイドプローブを先ずインキュベートし(捕捉プローブおよびガイドプローブから構成される中間ハイブリッドが形成される)、次いで、本インキュベーションにより得られた溶液を核酸サンプルと組み合わせてさらにインキュベートすること(核酸サンプルが標的核酸を含む場合、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドが形成される)。
核酸サンプルが標的核酸を含まない場合、核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートしても、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成される目的のハイブリッドは形成されない。この場合、後述する工程(2)において、修飾核酸塩基を検出することはできないが、核酸サンプル中に修飾核酸塩基が存在しないことを判定できる。
核酸サンプルが修飾核酸塩基を含まない標的核酸(換言すれば、非修飾核酸塩基のみを含む標的核酸)を含有する場合、核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすることにより、修飾核酸塩基を含まない標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブが反応(ハイブリダイゼーション反応を意味する。以下同様)して、当該標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドが形成される。この場合、後述する工程(2)において、修飾核酸塩基を検出することはできないが、核酸サンプル中に(標的核酸が存在するにもかかわらず)修飾核酸塩基が存在しないこと、換言すれば、標的核酸中の所定の核酸塩基が修飾されていないことを判定できる。
核酸サンプルが修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有する場合、核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中でインキュベートすることにより、修飾核酸塩基を含む標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブが反応して、当該標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドが形成される。この場合、後述する工程(2)において、修飾核酸塩基が存在することを判定でき、また修飾核酸塩基を定量することもできる。
【0028】
本発明において、ハイブリッドは、標的核酸と捕捉プローブとの間のハイブリダイゼーションにより形成される標的核酸および捕捉プローブの二本鎖構造、ならびに標的核酸とガイドプローブとの間のハイブリダイゼーションにより形成される標的核酸およびガイドプローブの二本鎖構造を有する、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリダイゼーション複合体である。
【0029】
ハイブリッドにおいて、標的核酸および捕捉プローブの二本鎖構造部分に対応する標的核酸および捕捉プローブのヌクレオチド残基の個数、ならびに標的核酸およびガイドプローブの二本鎖構造部分に対応する標的核酸およびガイドプローブのヌクレオチド残基の個数(即ち、二本鎖構造部分の長さ)は、それぞれ、標的核酸とのハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な長さである限り特に限定されないが、例えば10個以上、好ましくは12個以上、より好ましくは15個以上、さらにより好ましくは18個以上、特に好ましくは20個以上であってもよい。このようなヌクレオチド残基の個数はまた、例えば、200個以下、150個以下、120個以下、100個以下、80個以下、50個以下または30個以下であってもよい。標的核酸と捕捉プローブとの間の融解温度(Tm1)、および標的核酸とガイドプローブとの間の融解温度(Tm2)は、捕捉プローブおよびガイドプローブの長さ(即ち、ヌクレオチド残基の個数)に応じて適宜調整できる。例えば、Tm1とTm2との温度差が20℃、15℃、10℃、または5℃の範囲内になるように、捕捉プローブおよびガイドプローブが設計されてもよい。
【0030】
一実施形態では、プローブ(ガイドプローブおよび捕捉プローブ)は、(a)ハイブリッド中の標的核酸およびガイドプローブから構成される二本鎖構造部分、ならびに/あるいは(b)ハイブリッド中の標的核酸および捕捉プローブから構成される二本鎖構造部分において修飾核酸塩基の不対部分が形成されるように設計されてもよい。修飾核酸塩基の不対部分は、抗体による修飾核酸塩基の検出を容易にするために導入され得る。このような不対部分の形成のためには、例えば、二本鎖構造部分において、標的核酸に対して完全には相補的ではないヌクレオチド配列を有するプローブ(ガイドプローブおよび捕捉プローブ)を使用すればよい。
【0031】
(a)および(b)の二本鎖構造部分において修飾核酸塩基の不対部分が形成されるプローブの一例は、標的核酸における修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基に対して相補的なヌクレオチド残基を欠落するプローブである〔例、(I)を参照〕。このようなプローブは、標的核酸における修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基に相補的な1個のヌクレオチド残基のみを欠落するものでもよいが〔例、(I−1)を参照〕、標的核酸における修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含む2個以上(例えば、2〜20個、2〜10個または2〜5個)の隣接ヌクレオチド残基を欠落するものであってもよい〔例、(I−2)を参照〕。修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基の不対部分中の数は、上述したとおり1個以上(例、1〜20個、1〜10個、1〜5個または1〜3個)であれば特に限定されない。なお、このようなプローブについては、例えば、特許文献1および非特許文献2を参照のこと。測定すべき標的核酸中の修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基の位置が判明しているのであれば、このような設計が可能である。
【0032】
【化1】
【0033】
(a)および(b)の二本鎖構造部分において修飾核酸塩基の不対部分が形成されるプローブの別の例は、標的核酸における修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基に対して非相補的なヌクレオチド残基を有するプローブである〔例、(I’)を参照〕。このようなプローブは、標的核酸における修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基に非相補的な1個のヌクレオチド残基のみを有するものでもよいが〔例、(I’−1)を参照〕、標的核酸における修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含む2個以上(例えば、2〜20個、2〜10個または2〜5個)の隣接ヌクレオチド残基が非相補的なものであってもよい〔例、(I’−2)を参照〕。測定すべき標的核酸中の修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基の位置が判明しているのであれば、このような設計が可能である。
【0034】
【化2】
【0035】
別の実施形態では、ガイドプローブおよび捕捉プローブは、標的核酸とのハイブリダイゼーションにより形成されるハイブリッドにおいて、ガイドプローブと捕捉プローブとの間、および/または複数のガイドプローブの間に、修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含む短一本鎖領域(非ハイブリダイゼーション短領域)が形成されるように設計されてもよい〔例、(II)〜(IV)を参照〕。2以上のプローブとの標的核酸のハイブリダイゼーションにより形成される2以上のハイブリダイゼーション領域の間に存在する短一本鎖領域であれば、ハイブリッド中の標的核酸の非ハイブリダイズ領域(一本鎖領域)が二次構造を形成し易いという特定課題IIを回避できると考えられる。修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含む短一本鎖領域は、修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含み、かつ本発明の方法において安定な二次構造を形成し得ない程度に短い長さの一本鎖領域である限り特に限定されないが、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1、2、3、4または5個の全長ヌクレオチド残基から構成される領域であってもよい。例えば、実施例中のガイドプローブ1および2はそれぞれ、ハイブリッドにおいて、修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含む3個または2個のヌクレオチド残基からなる短一本鎖領域の形成に成功している。測定すべき標的核酸中の修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基の位置が判明しているのであれば、修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含む短一本鎖領域が形成されるようにプローブを設計することが可能である。
【0036】
【化3】
【0037】
本発明の方法は、核酸サンプルと、捕捉プローブおよびガイドプローブを溶液中で合わせて、前記核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブを含有する溶液を調製することをさらに含んでいてもよい。
【0038】
インキュベーション溶液中の標的核酸の濃度は、本発明の方法により検出可能である限り特に限定されないが、例えば0.001nM以上、好ましくは0.01nM以上、0.1nM以上、または1nM以上であってもよい。溶液中の標的核酸の濃度はまた、例えば1M以下、100mM以下、10mM以下、1mM以下、100μM以下、10μM以下または1μM以下であってもよい。核酸サンプル中の標的核酸の濃度は不明であることも多いので標的核酸の厳密な濃度の設定は難しい場合もあるが、核酸サンプルの種類によっては、核酸サンプルに含有され得る標的核酸の濃度を経験的にある程度予測できることがあり、また、標的核酸の濃度が判明していることもある(例えば、標的核酸のサイズおよび/または濃度が別途測定されているものの、標的核酸中の修飾核酸塩基の有無および標的核酸中の修飾核酸塩基の含有率が不明な場合)ので、そのような場合には、上記のとおり標的核酸の濃度設定を試みてもよい。
インキュベーション溶液中の捕捉プローブの濃度は、本発明の方法により標的核酸が検出可能である限り特に限定されないが、例えば0.1nM以上、好ましくは1nM以上、より好ましくは10nM以上であってもよい。溶液中の捕捉プローブの濃度はまた、例えば1M以下、100mM以下、10mM以下、1mM以下、100μM以下、10μM以下または1μM以下であってもよい。したがって、このような濃度が達成されるように、捕捉プローブを溶液に添加してもよい。
インキュベーション溶液中のガイドプローブの濃度は、本発明の方法により標的核酸が検出可能である限り特に限定されないが、例えば0.1nM以上、好ましくは1nM以上、より好ましくは10nM以上であってもよい。溶液中の捕捉プローブの濃度はまた、例えば1M以下、100mM以下、10mM以下、1mM以下、100μM以下、10μM以下または1μM以下であってもよい。したがって、このような濃度が達成されるように、ガイドプローブを溶液に添加してもよい。
【0039】
インキュベーション溶液中の捕捉プローブとガイドプローブとの濃度比は、標的核酸中の修飾核酸塩基を測定できる限り特に限定されない。例えば、濃度比(捕捉プローブ:ガイドプローブ)は、1:100〜100:1、1:50〜50:1、1:20〜20:1、または1:10〜10:1であってもよい。あるいは、捕捉プローブは、ガイドプローブに比し、高濃度で用いられてもよい。
【0040】
標的核酸は、2以上の修飾核酸塩基を含む可能性がある標的核酸であってもよい。ここで、標的核酸に含まれる可能性がある修飾核酸塩基の個数は、2以上である限り特に限定されないが、例えば、2〜30個、2〜20個、2〜10個または2〜5個(例、2、3、4もしくは5個)である。標的核酸に含まれる修飾核酸塩基の個数が複数である場合、インキュベーション用溶液中の標的核酸が極めて低い濃度であっても、修飾核酸を高感度に測定できる。したがって、本発明の方法では、2以上の修飾核酸塩基を含む可能性がある標的核酸とハイブリダイズするように設計されたガイドプローブおよび/または捕捉プローブを用いることができる。測定すべき標的核酸中の修飾される可能性がある核酸塩基の個数が判明しているのであれば、このような設計が可能である。
【0041】
一実施形態では、核酸サンプルは、修飾核酸塩基を含む一本鎖の標的核酸(好ましくは、標的DNA)を含有するサンプルである。この場合、工程(1)は、一本鎖の標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブのハイブリダイゼーション反応のためにインキュベートすることに加えて、一本鎖の標的核酸の変性反応のためにインキュベートすることを含んでいてもよい。例えば、ハイブリダイゼーション反応のためのインキュベートは、上述したハイブリダイゼーション条件下で行うことができ、変性反応のためのインキュベートは、70〜100℃(好ましくは80〜98℃)での1〜30分間(好ましくは2〜10分)の条件下で行うことができる。
【0042】
別の実施形態では、核酸サンプルは、修飾核酸塩基を含む二本鎖の標的核酸(好ましくは、標的DNA)を含有するサンプルである。この場合、工程(1)は、二本鎖の標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブのハイブリダイゼーション反応のためにインキュベートすることに加えて、二本鎖の標的核酸の解離および変性反応のためにインキュベートすることを含んでいてもよい。例えば、ハイブリダイゼーション反応のためのインキュベートは、上述したハイブリダイゼーション条件下で行うことができ、解離および変性反応のためのインキュベートは、70〜100℃(好ましくは80〜98℃)での1〜30分間(好ましくは2〜10分)の条件下で行うことができる。
【0043】
好ましい実施形態では、核酸変性剤の存在下で、核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブが溶液中でインキュベートされる。核酸変性剤とは、核酸の高次構造を破壊することにより核酸を変性させる能力を有する物質をいう。インキュベーション溶液中の核酸変性剤の濃度は、好ましくは、標的核酸(特に、二本鎖の標的核酸)中の修飾核酸塩基の検出感度を向上するように設定される。このような濃度は、例えば0.5Mを超える濃度であり、好ましくは1M以上である。このような濃度はまた、20M以下、10M以下、8M以下、6M以下、4M以下、3M以下または2.5M以下であってもよい。核酸変性剤は、1種であってもよいが、複数(例、2または3種)であってもよい。
【0044】
核酸変性剤としては、例えば、カオトロピック剤、および電子供与性化合物が挙げられる。
カオトロピック剤としては、例えば、グアニジニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、臭素イオン、ヨウ化物イオン、ウレア、およびそれらの塩(例、金属塩、無機塩、有機塩)が挙げられる。好ましくは、カオトロピック剤は、グアニジンチオシアネート、グアニジン塩酸塩、またはウレアである。
本発明において、電子供与性化合物とは、核酸の変性作用を有する、電子供与性のヘテロ原子含有化合物をいう。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が挙げられる。好ましくは、電子供与性化合物は、電子供与性を有する複素環化合物である。このような複素環化合物としては、例えば、非芳香族複素環化合物、およびπ電子過剰の芳香族複素環(例、5員環の芳香族複素環)を有する化合物が挙げられる。電子供与性を有する複素環化合物としては、例えば、電子供与性を有し、環中にヘテロ原子を1個または2個以上含んでなる5員環構造を有する単環式芳香族複素環化合物(例、ピロール、ピラゾール、イミダゾール)およびその縮合環化合物(例、インドール、ベンゾイミダゾール)、ならびに電子供与性を有し、環中にヘテロ原子を1個または2個以上含んでなる非芳香族複素環化合物(例、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン)が挙げられる。好ましくは、ヘテロ原子は、窒素原子である。
【0045】
さらに好ましい実施形態では、核酸変性剤および界面活性剤の双方の存在下で、核酸サンプル、捕捉プローブおよびガイドプローブが溶液中でインキュベートされる。この場合、核酸変性剤、インキュベーション溶液中の核酸変性剤の濃度は、上述したとおりである。インキュベーション溶液中の界面活性剤の濃度は、好ましくは、検出シグナルのバックグランド値を低減するように設定される。このような濃度は、例えば0.05%(v/v)以上であり、好ましくは0.1%(v/v)以上であり、より好ましくは0.5%(v/v)以上である。このような濃度はまた、20%(v/v)以下、10%(v/v)以下、8%(v/v)以下、6%(v/v)以下、4%(v/v)以下、または2%(v/v)以下であってもよい。界面活性剤は、1種であってもよいが、複数(例、2または3種)であってもよい。
【0046】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤または非イオン性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ヘキシル硫酸、オクチル硫酸、デシル硫酸、ドデシル硫酸、テトラデシル硫酸、ヘキサデシル硫酸、ドデシルホスホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、n−ラウロイルサルコシン、およびn−ドデカノイルサルコシン酸、ならびにこれらの塩(例、ナトリウム塩)が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム化合物(例、セチルジメチルエチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、およびミリスチルトリメチルアンモニウム)および4級ホスホニウム化合物、ならびにこれらの塩(例、ハロゲン化物)が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、Zwittergent、ASB−14、3−N(N,N−ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホン酸、3−n(N,N−ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホン酸、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート酸、N−ドデシルN,N−ジメチル−3アンモニオ−1プロパンスルホン酸、3−(N,N−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホン酸、3−(N,N−ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホン酸、および3−(N,N−ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホン酸、ならびにこれらの塩が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、Tween系界面活性剤(例、Tween−20、Tween−40、Tween−60、Tween−80)、TritonX系界面活性剤(例、TritonX−100)、MEGA系界面活性剤(例、Mega−8)、NP40が挙げられる。
【0047】
修飾核酸塩基は、ハイブリッドを含む溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いて測定される。測定に際しては、工程(1)で得られた溶液をそのまま用いてもよいが、抗体による修飾核酸塩基の測定により適した溶液において測定を行うため、別の溶液の添加および/または溶液の別の溶液への交換を行ってもよい。このような交換は、例えば、工程(1)で得られた溶液を固相に添加して、溶液中に含有され得るハイブリッドを固相に固定化し、次いで固相から溶液を除去し、必要に応じて洗浄液で洗浄した後、別の溶液(例、修飾核酸塩基に対する抗体を含有する溶液)を添加することにより行うことができる。測定に用いられる溶液は、抗原・抗体反応に適切な溶液である限り特に限定されない。
【0048】
測定は、免疫学的手法により行うことができる。このような免疫学的手法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)(例、直接競合ELISA、間接競合ELISA、サンドイッチELISA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、免疫クロマト法、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、ウエスタンブロット法、ラテックス凝集法が挙げられる。
【0049】
修飾核酸塩基に対する抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。修飾核酸塩基に対する抗体は、免疫グロブリン(例、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY)のいずれのアイソタイプであってもよい。修飾核酸塩基に対する抗体はまた、全長抗体であってもよい。全長抗体とは、可変領域および定常領域を各々含む重鎖および軽鎖を含む抗体(例、2つのFab部分およびFc部分を含む抗体)をいう。修飾核酸塩基に対する抗体はまた、このような全長抗体に由来する抗体断片であってもよい。抗体断片は、全長抗体の一部であり、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、Fvが挙げられる。修飾核酸塩基に対する抗体はまた、単鎖抗体等の改変抗体であってもよい。修飾核酸塩基に対する抗体はさらに、ELISA等のイムノアッセイにおいて1次抗体として用いられるものであってもよく、この場合、2次抗体が併用される。
【0050】
修飾核酸塩基に対する抗体としては、修飾核酸塩基、修飾核酸塩基を有するヌクレオシド(修飾核酸塩基および2’−デオキシリボースもしくはリボースから構成される構造単位)、または修飾核酸塩基を有するヌクレオチド(修飾核酸塩基、2’−デオキシリボースもしくはリボースおよびホスフェートから構成される構造単位)、あるいは修飾核酸塩基を有するヌクレオチドを含む2以上のヌクレオチド(例、2〜5個のヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチド)に対する親和性を有するものを用いてもよい。例えば、標的核酸がDNAの場合における修飾核酸塩基に対する抗体としては、1)2’−デオキシ修飾アデノシン、2’−デオキシ修飾グアノシン、2’−デオキシ修飾シチジンおよび2’−デオキシ修飾チミジンからなる群より選ばれる、修飾核酸塩基を有するデオキシリボヌクレオシドに対する抗体、2)2’−デオキシ修飾アデノシン 5’−ホスフェート、2’−デオキシ修飾グアノシン 5’−ホスフェート、2’−デオキシ修飾シチジン 5’−ホスフェートおよび2’−デオキシ修飾チミジン 5’−ホスフェートからなる群より選ばれる、修飾核酸塩基を有するデオキシリボヌクレオチドに対する抗体、ならびに3)修飾核酸塩基を有する上記デオキシリボヌクレオチドを含む2以上のデオキシリボヌクレオチドに対する抗体が挙げられる。一方、標的核酸がRNAの場合における修飾核酸塩基に対する抗体としては、例えば、1’)修飾アデノシン、修飾グアノシン、修飾シチジンおよび修飾ウリジンからなる群より選ばれる、修飾核酸塩基を有するヌクレオシドに対する抗体、2’)修飾アデノシン 5’−ホスフェート、修飾グアノシン 5’−ホスフェート、修飾シチジン 5’−ホスフェートおよび修飾ウリジン 5’−ホスフェートからなる群より選ばれる、修飾核酸塩基を有するリボヌクレオチドに対する抗体、ならびに3’)修飾核酸塩基を有する上記リボヌクレオチドを含む2以上のリボヌクレオチドに対する抗体が挙げられる。あるいは、修飾核酸塩基に対する抗体としては、WO2007/119518に記載されるような、修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含む二本鎖の標的核酸に対して結合する抗体を用いてもよい。
【0051】
修飾核酸塩基に対する抗体は、例えば、修飾核酸塩基、修飾核酸塩基を有するヌクレオシド、修飾核酸塩基を有するヌクレオチド、または修飾核酸塩基を有するヌクレオチドを含む2以上のヌクレオチドと、キャリアタンパク質(例、BSA、KLH)との複合体を、抗原として用いて調製されたものを用いることができる。例えば、このような複合体を用いて調製された修飾核酸塩基に対する種々の抗体が市販されているので、本発明の方法では、市販抗体を用いてもよい。本発明の方法では、修飾核酸塩基に対する抗体はまた、例えば、下記のとおり調製されたものを用いてもよい。
例えば、修飾核酸塩基に対するポリクローナル抗体は、上記複合体を抗原として、市販のアジュバント(例、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ウシ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
修飾核酸塩基に対するモノクローナル抗体は、例えば、細胞融合法により作製できる。例えば、上記複合体を市販のアジュバントと共にマウスに2〜4回皮下または腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例、NS−1)を細胞融合して該因子に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合としては、PEG法、電圧パルス法が挙げられる。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得できる。モノクローナル抗体は、IgG、IgM、IgA、IgE等のいずれのアイソタイプであってもよい。あるいは、モノクローナル抗体の作製方法としては、ファージディスプレイ法(Ulmanら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90,1184−89(1993))、ADLibシステム(国際公開第2004/011644号)等のin vitro法も知られているので、修飾核酸塩基に対する抗体の作製のため、このような方法を使用してもよい。
【0052】
修飾核酸塩基に対する抗体は、固相に固定化されて用いられてもよい。固相としては、例えば、粒子(例、磁性粒子)、メンブレン(例、ニトロセルロース膜)、ガラス、プラスチックおよび金属等の支持体、プレート(例、マルチウェルプレート)等の容器、ならびにデバイスが挙げられる。抗体はまた、濾紙等の媒体に含浸された形態で提供されてもよい。修飾核酸塩基に対する抗体は、標識物質で標識されていてもよい。標識物質としては、例えば、酵素(例、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ)、親和性物質(例、ストレプトアビジン、ビオチン)、蛍光物質またはタンパク質(例、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質)、発光物質(例、ルシフェリン、エクオリン)、放射性物質(例、H、14C、32P、35S、125I)が挙げられる。また、本発明の方法で2次抗体が用いられる場合、2次抗体は、このような標識物質で標識されていてもよい。
【0053】
修飾核酸塩基に対する抗体による修飾核酸塩基の測定は、定性的または定量的に行われ、修飾核酸塩基の有無または量を評価することができる。例えば、修飾核酸塩基に対する抗体による修飾核酸塩基の測定は、特許文献1および非特許文献1、2に記載されるように、標的核酸とプローブとの間で非対合構造(バルジ構造)を形成させ、次いで、修飾核酸塩基に対する抗体により非対合構造中の修飾核酸塩基を測定することにより行われてもよい。あるいは、修飾核酸塩基に対する抗体による修飾核酸塩基の測定は、WO2007/119518に記載されるような、修飾核酸塩基を有するヌクレオチド残基を含む二本鎖の標的核酸に対して結合する抗体を用いて行われてもよい。なお、本発明において、修飾核酸塩基の測定とは、修飾核酸塩基自体の測定のみならず、修飾核酸塩基を含む標的核酸の測定もまた意図され得る。
【0054】
例えば、修飾核酸塩基の有無の測定は、以下により行われてもよい:
(2−1)上記工程(1)で得られた溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いてアッセイして、シグナル値を計測すること;
(2−2)修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有せず、かつ捕捉プローブおよびガイドプローブを含有する溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いてアッセイして、バックグランド値を計測すること;および
(2−3)シグナル値をバックグランド値と比較して、修飾核酸塩基の有無を評価すること。
修飾核酸塩基の測定において、シグナル値およびバックグランド値は、修飾核酸塩基に対する抗体または2次抗体(2次抗体が用いられる場合)に結合した標識を利用して計測される値(例、吸光度、蛍光度、発色度、および放射活性)である。
【0055】
また、修飾核酸塩基の量の測定は、例えば、バックグランド値の測定とともに行われてもよい。具体的には、以下により行われてもよい:
(2−1’)上記工程(1)で得られた溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いてアッセイして、シグナル値を計測すること;
(2−2’)修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有せず、かつ捕捉プローブおよびガイドプローブを含有する溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いてアッセイして、バックグランド値を計測すること;
(2−3’)バックグランド値でシグナル値を補正して、補正シグナル値を得ること;ならびに
(2−4’)補正シグナル値に基づき、修飾核酸塩基の量を評価すること。
【0056】
あるいは、修飾核酸塩基の量の測定は、標品を用いて行われてもよい。具体的には、以下により行われてもよい:
(2−1’’)上記工程(1)で得られた溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いてアッセイして、シグナル値を計測すること;
(2−2’’)修飾核酸塩基を含む標的核酸(標品)、かつ捕捉プローブおよびガイドプローブを含有する溶液において、修飾核酸塩基に対する抗体を用いてアッセイして、検量用値を計測すること;ならびに
(2−3’’)シグナル値を検量用値に照合して、修飾核酸塩基の量を評価すること。
標品を用いる上記測定は、バックグランド値の上記測定と併用されてもよい。
【0057】
特定の実施形態では、本発明の方法は、以下により行われてもよい:
(i)修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有する核酸サンプル、第1の親和性物質で標識された捕捉プローブ、およびガイドプローブを溶液中でインキュベートして、当該標的核酸、当該捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成すること;
(ii)ハイブリッドを、第2の親和性物質で処理された固相に固定すること;
(iii)修飾核酸塩基に対する1次抗体を、固相に固定されたハイブリッドと反応させて、1次抗体とハイブリッドとの1次複合体を得ること;
(iv)標識物質で標識された2次抗体を1次複合体と反応させて、2次抗体と1次抗体との2次複合体を得ること;ならびに
(v)2次複合体中の2次抗体が有する標識物質を利用して、形成されたハイブリッド(換言すれば、修飾核酸塩基)の存在および/または量を測定すること
第1の親和性物質および第2の親和性物質は、互いに親和性を有する組合せ(例、ビオチンとストレプトアビジンとの組合せ)で用いられる。なお、本発明の方法は、上記工程(i)および(ii)の代わりに、(i’)修飾核酸塩基を含む標的核酸を含有する核酸サンプル、固相に固定された捕捉プローブ、およびガイドプローブを溶液中でインキュベートして、当該標的核酸、当該捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成することを含んでいてもよい。この場合、固相に固定された捕捉プローブを得ること(例、第1の親和性物質で標識された捕捉プローブを、第2の親和性物質で処理された固相に加えること)をさらに含んでいてもよい。本発明の方法は、工程(iii)の前に、固相を洗浄することを含んでいてもよい。2次抗体は、1次抗体のみを認識する抗体(例、1次抗体の定常領域に結合する抗体)であってもよいが、2次複合体中の1次抗体および1次複合体の双方を認識するものであってもよい。(i)〜(v)を含む本発明の方法はまた、本明細書中に詳細に記載された方法論にしたがって行うことができる。
【0058】
本発明はまた、修飾核酸塩基の測定用キットを提供する。本発明のキットは、例えば、以下を含む:
(I)ガイドプローブ;ならびに
(II)捕捉プローブ、および/または修飾核酸塩基に対する抗体。
ガイドプローブ、捕捉プローブ、および修飾核酸塩基に対する抗体は、上述したとおりである。例えば、捕捉プローブは、親和性物質で標識されていてもよく、修飾核酸塩基に対する抗体は、標識物質で標識されていてもよい。本発明のキットは、親和性物質、標識物質、2次抗体、2次抗体の検出試薬(例、2次抗体が酵素で標識されている場合には、その酵素の基質)および固相等の上述したような構成成分をさらに含んでいてもよい。固相は、親和性物質で処理されていてもよい。本発明のキットはまた、修飾核酸塩基の標品、または修飾核酸塩基を含む標的核酸の標品を、溶液としてまたは粉末として含んでいてもよい。好ましくは、本発明のキットは、ガイドプローブ、捕捉プローブ、および修飾核酸塩基に対する抗体を含む。本発明のキットはまた、上述したような核酸変性剤をさらに含んでいてもよい。本発明のキットはまた、上述したような界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0059】
本発明のキットは、互いに隔離された形態または混合された形態にて各構成成分を含む。例えば、本発明のキットでは、各構成成分が、それぞれ異なる容器(例、チューブ、プレート)に収容された形態で提供されてもよいが、例えば、捕捉プローブおよびガイドプローブは、混合された形態(例、同一溶液中)で提供されてもよい。あるいは、本発明のキットは、デバイスの形態で提供されてもよい。具体的には、構成成分の全部がデバイス中に収容された形態で提供されてもよい。あるいは、構成成分の一部がデバイス中に収容された形態で提供され、残りのものがデバイス中に収容されない形態(例、異なる容器に収容された形態)で提供されてもよい。この場合、デバイス中に収容されない構成成分は、標的物質の測定の際に、デバイス中に注入されることにより使用されてもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
参考例1:捕捉プローブによる標的核酸中の修飾核酸塩基の測定
1−1)標的核酸の調製
標的核酸は下記に示す手順で調製した。
標的核酸の調製には、ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)法を使用した。PCR用の酵素としては東洋紡績社製KOD Plus(商品番号:KOD−201)、核酸増幅用の2種類のプライマーとしては北海道システムサイエンス社により人工合成された、フォワードプライマー:5’−TAGAACGCTTTGCGTCCCGAC−3’(配列番号1)、リバースプライマー:5’−CTGCAGGACCACTCGAGGCTG−3’(配列番号2)を使用した。PCR増幅のプロトコールは、94℃で2分間加熱した後、94℃を15秒、55℃を30秒、68℃を1分、を1セットとして30サイクルとした。
北海道システムサイエンス社により人工合成された核酸(ヌクレオチド配列:5’−TAGAACGCTTTGCGTCCCGACGCCCGCAGGTCCTCGCGGTGCGCACCGTTTGCGACTTGGTGAGTGTCTGGGTCGCCTCGCTCCCGGAAGAGTGCGGAGCTCTCCCTCGGGACGGTGGCAGCCTCGAGTGGTCCTGCA−3’(配列番号3))を鋳型として用いてPCR増幅を行った後、キアゲン社QIAquick PCR Purification Kitを使用して精製することで、138塩基対の核酸を調製した。
上記で調製した138塩基対の核酸中のCpGのシトシンをメチル化するため、Thermo Scientific社CpG Methyltransferase(M.SssI)(商品番号:EM0821)で処理を行った。反応溶液は添付文書に従って調製した。37℃で20分間反応させた後、65℃でさらに20分間反応させた後、キアゲン社QIAquick Nucleotide Removal Kitを使用して精製することで、標的核酸(配列番号3のヌクレオチド配列からなるメチル化二本鎖DNA)を得た。
【0062】
1−2)捕捉プローブによる一本鎖および二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定
標的核酸の捕捉プローブのヌクレオチド配列は5’−UGCAGGACCACUCGAGGCUGCCAC−3’(配列番号4)(核酸の主鎖は2’−O−メチル化RNA、5’末端はビオチン標識)であり、北海道システムサイエンス社により人工合成されたものを使用した。5−メチルシトシンを含む標的核酸として、一本鎖の標的核酸(配列番号3のヌクレオチド配列からなるメチル化一本鎖DNA)は北海道システムサイエンス社により人工合成されたもの、二本鎖の標的核酸(配列番号3のヌクレオチド配列からなるメチル化二本鎖DNA)は参考例1−1)で調製したものをそれぞれ使用した。
まず、5−メチルシトシンを含む標的核酸(100fmol、10fmol、1fmol、0.1fmol、または0.01fmol)と捕捉プローブ(5pmol)をハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、0.1%(v/v) Tween20)100μL中に溶解させた。95℃で5分間反応〔変性反応(一本鎖の標的核酸)または解離および変性反応(二本鎖の標的核酸)〕させた後、37℃で1時間ハイブリダイゼーション反応させることで、標的核酸と捕捉プローブのハイブリッドを形成させた。また、標的核酸を含まない溶液も調製し、同様の操作を行った。ハイブリダイゼーション反応後の溶液に、375μg/mLのストレプトアビジンでコートされた磁性粒子(インビトロジェン社製Dynabeads M−280 Streptavidin)を50μL加え、37℃で30分反応させることで、磁性粒子上に核酸のハイブリッドを固定化した。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、100ng/mLの抗メチルシトシン抗体(ニッポンジーン社製、Clone33D3)を125μLずつ加え、37℃で1時間反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、250ng/mLのアルカリフォスファターゼ標識抗IgG抗体(Millipore社製)を125μLずつ加え、37℃で30分反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄した後、化学発光基質AMPPD溶液を110μLずつ加え、37℃で5分反応させた。その後、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer社製Arvo)により発光カウントを測定した。
【0063】
その結果、二本鎖の標的核酸の場合、一本鎖の標的核酸と比較して発光カウントが低く、二本鎖の標的核酸は、一本鎖の標的核酸に比し、約10分の1量しか磁性粒子上に捕捉されていなかった(表1、図4)。このことは、例えば、二本鎖の標的核酸の量が100fmolの場合に測定された発光カウントが、一本鎖の標的核酸の量が10fmolの場合に測定された発光カウントとほぼ同等であったことから理解できる(表1、図4)。このような事実は、捕捉プローブによる二本鎖の標的核酸の捕捉率(ハイブリッド形成率)が一本鎖の標的核酸のものに比し低いことを示す。
【0064】
【表1】
【0065】
以上より、特定課題Iが確認された。
【0066】
実施例1:捕捉プローブおよびガイドプローブを用いた、一本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定
1−1)捕捉プローブおよびガイドプローブを用いた測定
標的核酸の捕捉プローブのヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列(核酸の主鎖は2’−O−メチル化RNA、5’末端はビオチン標識)、ガイドプローブのヌクレオチド配列は5’−CCCAGGGAGAGCTCCCACTCTTCCGGAGCAGGCACCCAGACACTCACCAAGTCCAAACGTGCCACCCAGGACCTGCGGCTCGGACCAAAGCTTCTA−3’(配列番号5)(ガイドプローブ1)であり、北海道システムサイエンス社により人工合成されたものをそれぞれ使用した。ガイドプローブ1は、捕捉プローブがハイブリダイズする標的核酸中の領域とは異なる領域において、標的核酸にハイブリダイズできるように設計された。5−メチルシトシンを含む標的核酸として、一本鎖の標的核酸(配列番号3のヌクレオチド配列からなるメチル化一本鎖DNA)は北海道システムサイエンス社により人工合成されたものを使用した。
まず、5−メチルシトシンを含む標的核酸(10fmol、または1fmol)と捕捉プローブ(5pmol)、ガイドプローブ(1pmol)をハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、0.1%(v/v) Tween20)100μL中に溶解させた。95℃で5分間変性反応させた後、37℃で1時間ハイブリダイゼーション反応させることで、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させた。また、標的核酸を含まない溶液も調製し、同様の操作を行った。ハイブリダイゼーション反応後の溶液に、375μg/mLのストレプトアビジンでコートされた磁性粒子(インビトロジェン社製Dynabeads M−280 Streptavidin)を50μL加え、37℃で30分反応させることで、磁性粒子上に核酸のハイブリッドを固定化した。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、100ng/mLの抗メチルシトシン抗体(ニッポンジーン社製、Clone33D3)を125μLずつ加え、37℃で1時間反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、250ng/mLのアルカリフォスファターゼ標識抗IgG抗体(Millipore社製)を125μLずつ加え、37℃で30分反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄した後、化学発光基質AMPPD溶液を110μLずつ加え、37℃で5分反応させた。その後、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer社製Arvo)により発光カウントを測定した。
【0067】
1−2)捕捉プローブを用いた測定(ガイドプローブを使用しない従来の方法)
ガイドプローブを添加しなかったこと以外は、実施例1−1)と同様の方法で試験した。
【0068】
1−3)結果
ガイドプローブを用いて測定された発光カウントは、ガイドプローブを用いずに測定された発光カウントに比し、著しく向上した(表2、図5)。
一本鎖の標的核酸とガイドプローブとのハイブリッドの形成により発光カウントが上昇したという事実は、ガイドプローブの非存在下では、捕捉プローブを介して固相(磁性粒子)上に捕捉された一本鎖の標的核酸が二次構造を形成しており、抗体が二次構造中の修飾核酸塩基を認識し難いことを示唆する(図3)。すなわち、特定課題IIが潜在的に存在していたと考えられる。
一方、ガイドプローブは、一本鎖の標的核酸および捕捉プローブから構成されるハイブリッド中の非ハイブリダイズ領域(ガイドプローブの非存在下で二次構造を形成し得る一本鎖領域)とハイブリダイズすることにより、二次構造をほどくことができ、それにより抗体が修飾核酸を効率よく認識できること(換言すれば、検出感度の向上)が確認できた(表2、図5を参照)。すなわち、ガイドプローブの使用により特定課題IIを解決できた。
【0069】
【表2】
【0070】
以上より、ガイドプローブは、一本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を向上できることが示された。
【0071】
実施例2:捕捉プローブおよびガイドプローブを用いた、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定
2−1)捕捉プローブおよびガイドプローブを用いた測定
5−メチルシトシンを含む標的核酸として、参考例1−1)で調製した二本鎖の標的核酸を使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験した。
【0072】
2−2)捕捉プローブを用いた測定(ガイドプローブを使用せず)
ガイドプローブを添加しなかったこと以外は、実施例2−1)と同様の方法で試験した。
【0073】
2−3)結果
二本鎖の標的核酸においても、一本鎖の標的核酸と同様に、ガイドプローブの添加の効果が確認できた(表3、図6)。これは、標的核酸に対して相補鎖および捕捉プローブが競合していた状態であったものが、ガイドプローブの添加により、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブのハイブリッド形成に傾いたためであると考えられる。同時に、二本鎖の標的核酸であっても、捕捉プローブとハイブリッドを形成したときに生じる非ハイブリダイズ領域が、ガイドプローブとハイブリダイズすることにより、二次構造の形成を回避できるためであると考えられる。
【0074】
【表3】
【0075】
以上より、ガイドプローブは、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を向上できることが示された。
【0076】
実施例3:カオトロピック剤の存在下におけるガイドプローブの使用による、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定
3−1)カオトロピック剤の存在下におけるガイドプローブの使用による測定
標的核酸の捕捉プローブのヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列(核酸の主鎖は2’−O−メチル化RNA、5’末端はビオチン標識)、ガイドプローブのヌクレオチド配列は配列番号5のヌクレオチド配列(ガイドプローブ1)であり、北海道システムサイエンス社により人工合成されたものをそれぞれ使用した。5−メチルシトシンを含む標的核酸として、参考例1−1)で調製した二本鎖の標的核酸を使用した。カオトロピック剤として、グアニジンチオシアネートを用いた。
まず、5−メチルシトシンを含む二本鎖の標的核酸(10fmol、または1fmol)と捕捉プローブ(5pmol)、ガイドプローブ(1pmol)をグアニジンチオシアネート(+)緩衝液(100mM Tris−HCl、4.2M グアニジンチオシアネート、50mM EDTA・2Na)100μL中に溶解させた。95℃で5分間解離および変性反応させた後、37℃で1時間ハイブリダイゼーション反応させることで、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させた。また、標的核酸を含まない溶液も調製し、同様の操作を行った。ハイブリダイゼーション反応後の溶液に、375μg/mLのストレプトアビジンでコートされた磁性粒子(インビトロジェン社製Dynabeads M−280 Streptavidin)を50μL加え、37℃で30分反応させることで、磁性粒子上にハイブリッドを固定化した。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、100ng/mLの抗メチルシトシン抗体(ニッポンジーン社製、Clone33D3)を125μLずつ加え、37℃で1時間反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、250ng/mLのアルカリフォスファターゼ標識抗IgG抗体(Millipore社製)を125μLずつ加え、37℃で30分反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄した後、化学発光基質AMPPD溶液を110μLずつ加え、37℃で5分反応させた。その後、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer社製Arvo)により発光カウントを測定した。
【0077】
3−2)ガイドプローブを用いた測定〔カオトロピック剤の非存在下(1)〕
標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させるときに、ハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、0.1%(v/v) Tween20)を使用したこと以外は、3−1)と同様の方法で試験した。
【0078】
3−3)ガイドプローブを用いた測定〔カオトロピック剤の非存在下(2)〕
標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させるときに、グアニジンチオシアネート(−)緩衝液(100mM Tris−HCl、50mM EDTA・2Na)を使用したこと以外は、3−1)と同様の方法で試験した。
【0079】
3−4)結果
カオトロピック剤を含む条件でハイブリダイゼーション反応を行うと、発光カウントが著しく上昇した(表4、図7)。このことは、二本鎖の標的核酸とガイドプローブとのハイブリッドの形成が促進され、固相(磁性粒子)上への標的核酸の捕捉効率が向上することを示す。
【0080】
【表4】
【0081】
以上より、ガイドプローブは、カオトロピック剤の存在下で、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を著しく向上できることが示された。
【0082】
実施例4:カオトロピック剤の存在下におけるガイドプローブの使用による、一本鎖および二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定
標的核酸の捕捉プローブのヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列(核酸の主鎖は2’−O−メチル化RNA、5’末端はビオチン標識)、ガイドプローブのヌクレオチド配列は配列番号5のヌクレオチド配列(ガイドプローブ1)であり、北海道システムサイエンス社により人工合成されたものをそれぞれ使用した。5−メチルシトシンを含む標的核酸として、一本鎖の標的核酸は北海道システムサイエンス社により人工合成されたもの、二本鎖の標的核酸は参考例1−1)で調製したものを使用した。カオトロピック剤として、グアニジンチオシアネートを用いた。
まず、一本鎖または二本鎖の5−メチルシトシンを含む標的核酸(10fmol、1fmol、0.1fmol、または0.01fmol)と捕捉プローブ(5pmol)、ガイドプローブ(1pmol)をグアニジンチオシアネート(+)緩衝液(100mM Tris−HCl、4.2M グアニジンチオシアネート、50mM EDTA・2Na)100μL中に溶解させた。95℃で5分間反応〔変性反応(一本鎖の標的核酸)または解離および変性反応(二本鎖の標的核酸)〕させた後、37℃で1時間ハイブリダイゼーション反応させることで、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させた。また、標的核酸を含まない溶液も調製し、同様の操作を行った。ハイブリダイゼーション反応後の溶液に、375μg/mLのストレプトアビジンでコートされた磁性粒子(インビトロジェン社製Dynabeads M−280 Streptavidin)を50μL加え、37℃で30分反応させることで、磁性粒子上に核酸のハイブリッドを固定化した。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、100ng/mLの抗メチルシトシン抗体(ニッポンジーン社製、Clone33D3)を125μLずつ加え、37℃で1時間反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、250ng/mLのアルカリフォスファターゼ標識抗IgG抗体(Millipore社製)を125μLずつ加え、37℃で30分反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄した後、化学発光基質AMPPD溶液を110μLずつ加え、37℃で5分反応させた。その後、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer社製Arvo)により発光カウントを測定した。
その結果、驚くべきことに、一本鎖の標的核酸と二本鎖の標的核酸でほぼ同等の発光カウントが得られた(表5、図8)。このことは、ガイドプローブは、カオトロピック剤の存在下で、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を、一本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基のものとほぼ同等に向上できることを示す。
【0083】
【表5】
【0084】
以上より、ガイドプローブは、カオトロピック剤の存在下で、標的核酸の鎖数にかかわらず、標的核酸中の修飾核酸塩基を高感度に測定できることが示された。
【0085】
参考例2:捕捉プローブおよびガイドプローブを用いた、一本鎖および二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の測定
標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させるときに、グアニジンチオシアネート(+)緩衝液の代わりにハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、0.1%(v/v) Tween20)を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で試験した。
その結果、ハイブリダイゼーション緩衝液を用いる条件(即ち、ガイドプローブのみの使用)下では、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度に幾らかの向上が認められた(参考例1で認められた程の差異はない)ものの、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度は、一本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基のものに及ばなかった(表6、図9)。すなわち、ガイドプローブは、カオトロピック剤の存在下で、二本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を、一本鎖の標的核酸中の修飾核酸塩基のものとほぼ同等に向上できることが裏付けられた。
【0086】
【表6】
【0087】
実施例5:核酸変性剤の存在下におけるガイドプローブの使用による修飾核酸塩基の測定
標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させるときに、核酸変性剤を含まない、または、4.2M グアニジンチオシアネート、2.7M イミダゾール、または4M ウレアを含む緩衝液(100mM Tris−HCl、50mM EDTA・2Na)を使用した以外は、実施例3−1)と同様の方法で試験した。
その結果、グアニジンチオシアネート以外の核酸変性剤もまた、グアニジンチオシアネートと同等の発光カウントを生じた(表7、図10)。このことは、ガイドプローブが、核酸変性剤の存在下で、標的核酸中の修飾核酸塩基の検出感度を向上できることを示す。
【0088】
【表7】
【0089】
以上より、ガイドプローブは、核酸変性剤の存在下で、標的核酸中の修飾核酸塩基を高感度に測定できることが示された。
【0090】
実施例6:ガイドプローブによる、修飾核酸塩基を含む部位における二次構造の形成の阻害
標的核酸の捕捉プローブのヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列(核酸の主鎖は2’−O−メチル化RNA、5’末端はビオチン標識)、ガイドプローブのヌクレオチド配列は表8に示されるヌクレオチド配列であり、北海道システムサイエンス社により人工合成されたものをそれぞれ使用した。5−メチルシトシンを含む標的核酸として、参考例1−1)で調製した二本鎖の標的核酸を使用した。
ガイドプローブは、表8に示す配列を未添加、または1種、2種、もしくは3種を各10pmolで添加した以外は、実施例3−1)と同様の方法で試験した。
その結果、標的核酸中の修飾核酸塩基含有部位と相補性のあるガイドプローブ(即ち、ガイドプローブ1、2、および4)を添加した場合には、発光カウントの上昇が認められたが、標的核酸中の修飾核酸塩基非含有部位と相補性のあるガイドプローブ(即ち、ガイドプローブ3)を添加した場合には、発光カウントの上昇が認められなかった(表9、図11)。したがって、ガイドプローブによる、修飾核酸塩基を含む部位における二次構造の形成の阻害が、検出感度の向上に重要であることが実証された。
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
実施例7:核酸変性剤の濃度の検討
5−メチルシトシンを含む標的核酸(10fmol、または1fmol)と捕捉プローブ(5pmol)、ガイドプローブ1(1pmol)のハイブリッドを形成させるための緩衝液(100mM Tris−HCl、グアニジンチオシアネート、50mM EDTA・2Na)中に含まれるグアニジンチオシアネートの濃度を、表10に示される濃度に設定した以外は、実施例3−1)と同様の方法で試験した。また、グアニジンチオシアネート(−)緩衝液(即ち、0M)でも同様に試験した。
その結果、緩衝液中に含まれるグアニジンチオシアネートが1〜2.5Mの範囲のとき、最も効果的であることが確認された(表10、図12)。
【0094】
【表10】
【0095】
実施例8:ガイドプローブの主鎖の検討
標的核酸の捕捉プローブのヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列(核酸の主鎖は2’−O−メチル化RNA、5’末端はビオチン標識)であり、北海道システムサイエンス社により人工合成されたものを使用した。また、ガイドプローブのヌクレオチド配列は表11に示されるヌクレオチド配列であり、ガイドプローブ2および4に関しては核酸の主鎖がDNA、ガイドプローブ5および6に関しては核酸の主鎖が2’−O−メチル化RNAまたはRNAのものを使用した。ガイドプローブ5および6はそれぞれ、ガイドプローブ2および4と同等の配列であるが、核酸の主鎖が2’−O−メチル化RNAまたはRNAであるため、チミン塩基(T)をウラシル塩基(U)に変更したものとを使用した。各ガイドプローブは北海道システムサイエンス社により人工合成されたものをそれぞれ使用した。5−メチルシトシンを含む標的核酸として、参考例1−1)で調製した二本鎖の標的核酸を使用した。
ガイドプローブは表11に示されるヌクレオチド配列を未添加、1種、または2種を各1pmolで添加した以外は、実施例3−1)と同様の方法で試験した。
ガイドプローブとして用いた核酸の主鎖がDNA、RNA、2’−O−メチル化RNAと変わっても、ガイドプローブの非存在下の場合と比較して発光カウントの上昇が認められた(表12、図13)。このことは、ガイドプローブが、その主鎖構造にかかわらず、ガイドプローブとして機能することを示す。また、ガイドプローブの主鎖がDNAの場合、もっとも効果的であることも確認された(表12、図13)。
【0096】
【表11】
【0097】
【表12】
【0098】
実施例9:核酸変性剤または非核酸変性剤の存在下におけるガイドプローブの使用による修飾核酸塩基の測定
標的核酸の捕捉プローブのヌクレオチド配列は配列番号4のヌクレオチド配列(核酸の主鎖は2’−O−メチル化RNA、5’末端はビオチン標識)、ガイドプローブのヌクレオチド配列は配列番号5のヌクレオチド配列(ガイドプローブ1)であり、北海道システムサイエンス社により人工合成されたものをそれぞれ使用した。5−メチルシトシンを含む標的核酸として、参考例1−1)で調製した二本鎖の標的核酸を使用した。
まず、5−メチルシトシンを含む標的核酸(10fmol、または1fmol)と捕捉プローブ(1pmol)、ガイドプローブ(1pmol)を緩衝液(100mM Tris−HCl、50mM EDTA・2Na)100μL中に溶解させた。また、上記緩衝液中に、1.5M グアニジンチオシアネート、1.5M イミダゾール、1.5M ピラゾール、1.5M ウレア、1%(v/v) Tween20、または1%(v/v) ラウリル硫酸ナトリウムを含む緩衝液を用いて同様の溶液を調製した。95℃で5分間解離および変性反応させた後、37℃で1時間ハイブリダイゼーション反応させることで、標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させた。また、標的核酸を含まない溶液も調製し、同様の操作を行った。ハイブリダイゼーション反応後の溶液に、375μg/mLのストレプトアビジンでコートされた磁性粒子(インビトロジェン社製Dynabeads M−280 Streptavidin)を50μL加え、37℃で30分反応させることで、磁性粒子上に核酸のハイブリッドを固定化した。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、100ng/mLの抗メチルシトシン抗体(ニッポンジーン社製、Clone33D3)を125μLずつ加え、37℃で1時間反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄し、250ng/mLのアルカリフォスファターゼ標識抗IgG抗体(Millipore社製)を125μLずつ加え、37℃で30分反応させた。250μLのTBS−Tで3回洗浄した後、化学発光基質AMPPD溶液を110μLずつ加え、37℃で5分反応させた。その後、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer社製Arvo)により発光カウントを測定した。
【0099】
その結果、非核酸変性剤である界面活性剤(Tween20、SDS)は、変性剤なしの条件(−)に比し、発光カウントを有意に上昇させなかった(表13、図14)。一方、核酸変性剤であるカオトロピック剤(グアニジンイソチオシアネート、ウレア)および電子供与性化合物(イミダゾール、ピラゾール)は、変性剤なしの条件(−)に比し、発光カウントを有意に上昇させた(表13、図14)。
【0100】
【表13】
【0101】
以上より、ガイドプローブの効果は、核酸変性剤で増強することができるが、非核酸変性剤では増強できないことが示された。
【0102】
実施例10:核酸変性剤および界面活性剤の双方の存在下におけるガイドプローブの使用による修飾核酸塩基の測定
標的核酸、捕捉プローブおよびガイドプローブから構成されるハイブリッドを形成させるときに、核酸変性剤を含まない緩衝液(100mM Tris−HCl、50mM EDTA・2Na)、1.5M グアニジンチオシアネート(+)緩衝液(100mM Tris−HCl、50mM EDTA・2Na)、1.5M グアニジンチオシアネートおよび1%(v/v) Tween20を含む緩衝液(100mM Tris−HCl、50mM EDTA・2Na)、または1.5M グアニジンチオシアネートおよび1%(v/v) Tween80を含む緩衝液(100mM Tris−HCl、50mM EDTA・2Na)を使用した以外は、実施例9と同様の方法で試験した。
【0103】
その結果、核酸変性剤および界面活性剤を含む緩衝液は、核酸変性剤のみを含む緩衝液に比し、発光カウント(バックグランド値)の低下、およびS/Nの上昇を引き起こした(表14、および図15、16)。すなわち、ガイドプローブおよび核酸変性剤を用いる本発明の方法において、界面活性剤は、核酸変性剤により引き起こされるバックグランド値の上昇を打ち消す効果があると考えられる。
【0104】
【表14】
【0105】
以上より、ガイドプローブは、核酸変性剤および界面活性剤の双方の存在下で、標的核酸中の修飾核酸塩基を高感度に測定できることが示された。
【0106】
(ガイドプローブの詳細)
参考のため、実験で用いたガイドプローブの詳細を、表15に示す。
【0107】
【表15】
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の方法およびキットは、修飾核酸塩基の測定に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]