特許第6497325号(P6497325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6497325硬化性樹脂組成物およびその硬化物、並びにこれらを用いた半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497325
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物およびその硬化物、並びにこれらを用いた半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20190401BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190401BHJP
   C08G 77/14 20060101ALI20190401BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20190401BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190401BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20190401BHJP
【FI】
   C08L83/06
   C08K3/36
   C08G77/14
   H01L23/30 R
   H01L23/30 F
   H01L33/56
【請求項の数】35
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2016-446(P2016-446)
(22)【出願日】2016年1月5日
(65)【公開番号】特開2017-197591(P2017-197591A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-571507(P2016-571507)
(32)【優先日】2015年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152593
【弁理士】
【氏名又は名称】楊井 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】小田 雅文
(72)【発明者】
【氏名】中辻 惇也
(72)【発明者】
【氏名】杉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】小川 毅
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−285593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/06
C08G 77/14
C08K 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A−1)成分:シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる官能基を一分子中に少なくとも2個以上含有するポリシロキサン化合物、
および
(B)成分:JIS K 1150:1994に規定する試験方法にて測定した抽出水のpH値が25℃において6.1以下であるシリカ
を少なくとも含み、(A−1)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が70質量%以上97質量%以下である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A−1)成分が、下記一般式[1]で表される構造単位を少なくとも有するポリシロキサン化合物を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
(一般式[1]中のR1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状のアルケニル基、炭素数3〜10の分岐状アルケニル基、炭素数3〜10の環状のアルケニル基または炭素数5〜10のアリール基であり、これらのアルキル基、アルケニル基またはアリール基中の水素原子の一部または全てがハロゲン原子と置換されていてもよく、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子および珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種と置換されていてもよく、前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される少なくとも1種であり、R1が複数存在する場合には、R1は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[1]中の酸素原子はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子、またはヒドロキシ基の酸素原子を示す。一般式[1]中のmおよびnはそれぞれ、1〜3の整数を表し、m+n=4を満たす。)
【請求項3】
1が炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、または炭素数5〜10のアリール基を表す、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
1がメチル基、またはフェニル基を表す、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A−1)成分が、一般式[1]で表される構造単位と下記一般式[2]で表される構造単位とを有するポリシロキサン化合物を含む、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
(一般式[2]中の酸素原子はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子、またはヒドロキシ基の酸素原子を示す。)
【請求項6】
(A−2)成分:下記一般式[3]で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させて得られるポリシロキサン化合物、
【化3】
(一般式[3]中のRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状のアルケニル基、炭素数3〜10の分岐状のアルケニル基、炭素数3〜10の環状のアルケニル基または炭素数5〜10のアリール基であり、これらのアルキル基、アルケニル基またはアリール基中の水素原子の一部または全てがハロゲン原子と置換されていてもよく、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子および珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種と置換されていてもよく、前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される少なくとも1種であり、Rが複数存在する場合には、Rは同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のRはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基または炭素数3〜4の分岐状のアルキル基であり、Rが複数存在する場合には、Rは同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のYは1〜3の整数である。)
および
(B)成分:JIS K 1150:1994に規定する試験方法にて測定した抽出水のpH値が25℃において6.1以下であるシリカ
を少なくとも含み、(A−2)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が70質量%以上97質量%以下である、硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
1が炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、または炭素数5〜10のアリール基を表す、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
1がメチル基、またはフェニル基を表す、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
(A−2)成分が、一般式[3]で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種と、下記一般式[4]で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種とを加水分解し重縮合反応させて得られるポリシロキサン化合物である、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【化4】
(一般式[4]中のR2はそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基または炭素数3〜4の分岐状のアルキル基であり、R2が複数存在する場合には、R2は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。)
【請求項10】
(A−1)成分におけるシラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量が1mmol/g以上15mmol/g以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
(A−2)成分におけるシラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量が1mmol/g以上15mmol/g以下である、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
(B)成分として二種以上のシリカを含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
二種以上のシリカが、結晶質シリカ、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカ、火焔法シリカおよび沈殿法シリカからなる群より選ばれる、請求項12に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
(B)成分のシリカのメジアン径の値が0.02μm以上500μm以下である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
(B)成分が、粒度分布測定において複数の頻度ピークを示すシリカである、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
(B)成分が、粒子径3μm以下のシリカ粒子を含有する、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
(B)成分が、表面が化学修飾されていないシリカである、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
さらに、無機フィラー、耐熱性樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、硬化触媒およびアンチブロッキング剤からなる群から選ばれる一種以上を含む、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
さらに、カップリング剤を含む、請求項18に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
スパイラルフロー長(電気機能材料工業会規格:T901に準拠、温度180℃、成形圧力6.9MPa、成形時間3分)が5〜180cmである、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項21】
(A−1)成分:シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる官能基を一分子中に少なくとも2個以上含有するポリシロキサン化合物または
(A−2)成分:下記一般式[3]で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させて得られるポリシロキサン化合物
【化5】
(一般式[3]中のRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状のアルケニル基、炭素数3〜10の分岐状のアルケニル基、炭素数3〜10の環状のアルケニル基または炭素数5〜10のアリール基であり、これらのアルキル基、アルケニル基またはアリール基中の水素原子の一部または全てがハロゲン原子と置換されていてもよく、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子および珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種と置換されていてもよく、前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される少なくとも1種であり、Rが複数存在する場合には、Rは同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のRはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基または炭素数3〜4の分岐状のアルキル基であり、Rが複数存在する場合には、Rは同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のYは1〜3の整数である。)と、
(B)成分:JIS K 1150:1994に規定する試験方法にて測定した抽出水のpH値が25℃において6.1以下であるシリカと
を少なくとも混合して硬化性樹脂組成物を得る工程を含み、
(A−1)成分又は(A−2)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が70質量%以上97質量%以下である、硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項22】
(A−1)成分または(A−2)成分と、
(B)成分と、
無機フィラー、耐熱性樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、硬化触媒およびアンチブロッキング剤からなる群から選ばれる一種以上と
を混合して硬化性樹脂組成物を得る、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
(A−1)成分または(A−2)成分と、
(B)成分と、
無機フィラー、耐熱性樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、硬化触媒およびアンチブロッキング剤からなる群から選ばれる一種以上と、
カップリング剤と
を混合して硬化性樹脂組成物を得る、請求項21に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物からなるタブレット。
【請求項25】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項26】
前記硬化性樹脂組成物を成形して得られる、請求項25に記載の硬化物。
【請求項27】
厚みが1mm以上である請求項25又は26に記載の硬化物。
【請求項28】
厚みが2mm以上である請求項25乃至27のいずれか一項に記載の硬化物。
【請求項29】
厚みが4mm以上である請求項25乃至28のいずれか一項に記載の硬化物。
【請求項30】
請求項25乃至29のいずれか一項に記載の硬化物を少なくとも含有する、半導体用封止材。
【請求項31】
半導体素子を少なくとも備える半導体装置であって、
請求項25乃至29のいずれか一に記載の硬化物により半導体素子が封止された、半導体装置。
【請求項32】
半導体素子がパワー半導体素子である、請求項31に記載の半導体装置。
【請求項33】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて、半導体を封止する方法。
【請求項34】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて、封止材として使用する方法。
【請求項35】
硬化性樹脂組成物が半導体封止用硬化性樹脂組成物である、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、特にパワー半導体の封止材の原料として好適に用いることができる硬化性樹脂組成物およびその硬化物、並びにこれらを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化・高性能化に伴い、半導体部品の発熱量は増加する傾向がある。特に、電力・電源の制御に用いられるパワー半導体においては、高電圧化および大電流化が求められている。例えば、シリコンカーバイド(SiC)半導体素子や、窒化ガリウム(GaN)半導体素子などを搭載したデバイスが次世代のパワー半導体として期待されている。これらのデバイスでは、250℃程度での安定動作により性能を完全に引き出すことができるとされている。これに伴い、封止材等の周辺部材に要求される耐熱温度も高くなりつつある。
【0003】
パワー半導体の封止材の原料としてはエポキシ樹脂組成物が従来用いられてきた。エポキシ樹脂組成物の硬化物は、150℃以上で長期間放置すると、重量減少および機械的強度の低下が生じることが一般的に知られており、耐熱性を改良する検討が行われている。例えば、特許文献1では、180℃近傍まで使用できるエポキシ樹脂含有硬化物が開示されている。しかしながら、前述の通り、SiC、GaNパワー半導体で要求される250℃程度での使用においては、耐熱性は未だ十分ではない。
【0004】
一方、シリコーン樹脂組成物もパワー半導体の封止材として広く使用されている。その硬化物を得るための硬化方法として、ヒドロシリル基とアルケニル基によるヒドロシリル化反応を利用する方法(例えば、特許文献2、3など)や、エポキシ基に代表される反応性官能基による重合反応を利用する方法(例えば、特許文献4)が知られている。しかしながら、これらの方法で形成される架橋基はいずれも熱安定性が乏しく、硬化物に250℃程度での長期間の耐熱性が必要となる用途において、必ずしも好適に用いることができるとは言い切れない。
【0005】
それに対して、もう1つの硬化方法として、シラノール基同士の脱水縮合、シラノール基とアルコキシシリル基の脱アルコール縮合、および、シラノール基とヒドロシリル基の脱水素縮合のいずれか1種以上を利用する、いわゆる縮合反応を利用する方法が知られている。この縮合反応を利用して得られる硬化物の原料であるポリシロキサン化合物は、縮合系ポリシロキサン化合物と称される。その硬化物は、主鎖、架橋基がともに化学的に安定なシロキサン結合のみで構成されるため、非常に高い耐熱性を示すことが知られている。また、この縮合反応を利用する硬化方法においては、成形および硬化を200℃以下の温度で行うことが可能であるため、熱に弱い部材を有する半導体の封止においても好適に採用することができる。この点、200℃超の温度で成形および硬化を行う必要がある一般的なポリイミド樹脂や溶融ガラスなどのその他の高耐熱性材料と比して、材料選択性に優れる。しかしながら、縮合反応による硬化方法では、硬化時にガス(水、アルコールおよび/または水素)が発生して硬化物が発泡する。この発泡は、成形不良を引き起こすのみならず、密着性、機械強度、気体バリア性、絶縁性等の低下を招くことから、問題視されている。しかも、縮合反応の性質上、その解決は本質的に困難である。
【0006】
一方で、縮合系ポリシロキサン化合物を原料とする硬化物中の発泡を抑制するための種々の検討がなされてきた。例えば、特許文献5では、厚さの平均値が1.2mm以下の硬化物となる縮合系ポリシロキサン組成物が開示されており、該組成物の膜厚を薄くすることで、得られる硬化物の発泡を少なくすることができるとの記載がある。また、特許文献6では、2個のシラノール基が両末端に結合しているポリジメチルシロキサンを使用した縮合系ポリシロキサン組成物が開示されている。この組成物では、ポリシロキサンの縮合部位を少なくすることでガスの発生量を減らしつつ、硬化物の厚さを1mm以下としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−9336号公報
【特許文献2】特開2008−27966号公報
【特許文献3】特開2005−146191号公報
【特許文献4】国際公開2004/072150号パンフレット
【特許文献5】特開2009−256670号公報
【特許文献6】特開2011−219729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、縮合系ポリシロキサン化合物を原料とする硬化物は、SiC、GaNパワー半導体用の封止材として有望な材料であると考えられ、膜状に成形すれば発泡が抑制された硬化物を得ることは可能だが、バルク状、すなわち、ある程度以上の厚さと大きさを有する硬化物の作製においては、その発泡を避けることが極めて難しい。パワー半導体用の封止材に要求される硬化物の厚さおよび大きさは様々であるが、厚さ4mm以上、縦横各10mm以上のものも多く存在する。そのため、縮合系ポリシロキサン化合物を原料とする硬化物には、封止用途の適用範囲に制限があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、種々の形状、大きさに成形しても硬化時の発泡を抑制可能な縮合硬化型の硬化性樹脂組成物およびその硬化物、並びにこれらを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、
(A)成分:所定のポリシロキサン化合物、および
(B)成分:抽出水の25℃におけるpH値が6.1以下であるシリカ
を少なくとも含み、(A)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が70質量%以上97質量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物を使用することにより、上記課題を達成できることを見出し、種々の形状、大きさに成形しても硬化時の発泡を抑制可能な縮合硬化型の硬化性樹脂組成物を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、種々の形状、大きさに成形しても硬化時の発泡を抑制可能な硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供する。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物の硬化物、並びにこれを用いた半導体装置を提供する。
【0012】
具体的には、以下の各発明を含む。
【0013】
[発明1]
(A−1)成分:シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる官能基を一分子中に少なくとも2個以上含有するポリシロキサン化合物、
および
(B)成分:抽出水のpH値が25℃において6.1以下であるシリカ
を少なくとも含み、(A−1)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が70質量%以上97質量%以下である、硬化性樹脂組成物。
【0014】
[発明2]
(A−1)成分が、下記一般式[1]で表される構造単位を少なくとも有するポリシロキサン化合物を含む、発明1に記載の硬化性樹脂組成物。
【0015】
【化1】
【0016】
(一般式[1]中のR1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状のアルケニル基、炭素数3〜10の分岐状アルケニル基、炭素数3〜10の環状のアルケニル基または炭素数5〜10のアリール基であり、これらのアルキル基、アルケニル基またはアリール基中の水素原子の一部または全てがハロゲン原子と置換されていてもよく、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子および珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種と置換されていてもよく、前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される少なくとも1種であり、R1が複数存在する場合には、R1は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[1]中の酸素原子はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子、またはヒドロキシ基の酸素原子を示す。一般式[1]中のmおよびnはそれぞれ、1〜3の整数を表し、m+n=4を満たす。)
[発明3]
1が炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、または炭素数5〜10のアリール基を表す、発明2に記載の硬化性樹脂組成物。
【0017】
[発明4]
1がメチル基、またはフェニル基を表す、発明2に記載の硬化性樹脂組成物。
[発明5]
(A−1)成分が、一般式[1]で表される構造単位と下記一般式[2]で表される構造単位とを有するポリシロキサン化合物を含む、発明2乃至4のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0018】
【化2】
【0019】
(一般式[2]中の酸素原子はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子、またはヒドロキシ基の酸素原子を示す。)
[発明6]
(A−2)成分:下記一般式[3]で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させて得られるポリシロキサン化合物、
【0020】
【化3】
【0021】
(一般式[3]中のR1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状のアルケニル基、炭素数3〜10の分岐状のアルケニル基、炭素数3〜10の環状のアルケニル基または炭素数5〜10のアリール基であり、これらのアルキル基、アルケニル基またはアリール基中の水素原子の一部または全てがハロゲン原子と置換されていてもよく、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子および珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種と置換されていてもよく、前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される少なくとも1種であり、R1が複数存在する場合には、R1は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のR2はそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基または炭素数3〜4の分岐状のアルキル基であり、R2が複数存在する場合には、R2は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のYは1〜3の整数である。)
および
(B)成分:抽出水のpH値が25℃において6.1以下であるシリカ
を少なくとも含み、(A−2)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が70質量%以上97質量%以下である、硬化性樹脂組成物。
【0022】
[発明7]
1が炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、または炭素数5〜10のアリール基を表す、発明6に記載の硬化性樹脂組成物。
【0023】
[発明8]
1がメチル基、またはフェニル基を表す、発明6に記載の硬化性樹脂組成物。
【0024】
[発明9]
(A−2)成分が、一般式[3]で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種と、下記一般式[4]で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種とを加水分解し重縮合反応させて得られるポリシロキサン化合物である、発明6乃至8のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0025】
【化4】
【0026】
(一般式[4]中のR2はそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基または炭素数3〜4の分岐状のアルキル基であり、R2が複数存在する場合には、R2は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。)
[発明10]
(A−1)成分におけるシラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量が1mmol/g以上15mmol/g以下である、発明1乃至5のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0027】
[発明11]
(A−2)成分におけるシラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量が1mmol/g以上15mmol/g以下である、発明6乃至9のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0028】
[発明12]
(B)成分として二種以上のシリカを含む、発明1乃至11のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0029】
[発明13]
二種以上のシリカが、結晶質シリカ、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカ、火焔法シリカおよび沈殿法シリカからなる群より選ばれる、発明12に記載の硬化性樹脂組成物。
【0030】
[発明14]
(B)成分のシリカのメジアン径の値が0.02μm以上500μm以下である、発明1乃至13のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0031】
[発明15]
(B)成分が、粒度分布測定において複数の頻度ピークを示すシリカである、発明1乃至14のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0032】
[発明16]
(B)成分が、粒子径3μm以下のシリカ粒子を含有する、発明1乃至15のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0033】
[発明17]
(B)成分が、表面が化学修飾されていないシリカである、発明1乃至16のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0034】
[発明18]
さらに、無機フィラー、耐熱性樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、硬化触媒およびアンチブロッキング剤からなる群から選ばれる一種以上を含む、発明1乃至17のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0035】
[発明19]
無機フィラーが、(B)成分の範疇に無いシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、粘土鉱物、ガラス、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウムおよび炭素同素体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明18に記載の硬化性樹脂組成物。
【0036】
[発明20]
耐熱性樹脂が、ナノセルロース、アラミド繊維、炭素繊維、PEEK樹脂およびポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明18に記載の硬化性樹脂組成物。
【0037】
[発明21]
離型剤が、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ジメチルシリコーンおよびフッ化シリコーンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明18に記載の硬化性樹脂組成物。
【0038】
[発明22]
顔料が、カーボンブラック、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄、ウルトラマリン青、プロシア青、フタロシアニン、多環顔料およびアゾ顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明18に記載の硬化性樹脂組成物。
【0039】
[発明23]
難燃剤が、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物難燃剤およびアンチモン系難燃剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明18に記載の硬化性樹脂組成物。
【0040】
[発明24]
硬化触媒が、酸触媒、塩基触媒または金属錯体触媒である、発明18に記載の硬化性樹脂組成物。
【0041】
[発明25]
酸触媒が、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ギ酸、シュウ酸、マレイン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸およびホウ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明24に記載の硬化性樹脂組成物。
【0042】
[発明26]
塩基触媒が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イミダゾール、ピリジン、トリフェニルホスフィン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明24に記載の硬化性樹脂組成物。
【0043】
[発明27]
金属錯体触媒が、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫およびナフテン酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明24に記載の硬化性樹脂組成物。
【0044】
[発明28]
アンチブロッキング剤が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸のLi塩、ステアリン酸のNa塩、ステアリン酸のMg塩、ステアリン酸のK塩、ステアリン酸のCa塩、ステアリン酸のBa塩、ステアリン酸のAl塩、ステアリン酸のZn塩、ステアリン酸のFe塩、ラウリン酸のCa塩、ラウリン酸のBa塩、ラウリン酸のZn塩、ベヘン酸のCa塩、ベヘン酸のBa塩、ベヘン酸のZn塩、12−ヒドロキシステアリン酸のCa塩、12−ヒドロキシステアリン酸のMg塩、12−ヒドロキシステアリン酸のZn塩、アルミニウムシリケート、結晶質シリカ、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカ、火焔法シリカ、沈殿法シリカ、ゼオライト、タルク、カオリン、珪藻土、ポリエチレンビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル樹脂およびシリコン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明18に記載の硬化性樹脂組成物。
【0045】
[発明29]
さらに、カップリング剤を含む、発明18に記載の硬化性樹脂組成物。
【0046】
[発明30]
カップリング剤が、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートおよび3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明29に記載の硬化性樹脂組成物。
【0047】
[発明31]
スパイラルフロー長(電気機能材料工業会規格:T901に準拠、温度180℃、成形圧力6.9MPa、成形時間3分)が5〜180cmである、発明1乃至30のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0048】
[発明32]
(A−1)成分:シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる官能基を一分子中に少なくとも2個以上含有するポリシロキサン化合物または
(A−2)成分:下記一般式[3]で表されるアルコキシシラン化合物の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させて得られるポリシロキサン化合物
【0049】
【化5】
【0050】
(一般式[3]中のR1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状のアルケニル基、炭素数3〜10の分岐状のアルケニル基、炭素数3〜10の環状のアルケニル基または炭素数5〜10のアリール基であり、これらのアルキル基、アルケニル基またはアリール基中の水素原子の一部または全てがハロゲン原子と置換されていてもよく、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子および珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種と置換されていてもよく、前記ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される少なくとも1種であり、R1が複数存在する場合には、R1は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のR2はそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基または炭素数3〜4の分岐状のアルキル基であり、R2が複数存在する場合には、R2は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のYは1〜3の整数である。)と、
(B)成分:抽出水のpH値が25℃において6.1以下であるシリカと
を少なくとも混合して硬化性樹脂組成物を得る工程を含み、(A−1)成分又は(A−2)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が70質量%以上97質量%以下である、硬化性樹脂組成物の製造方法。
【0051】
[発明33]
(B)成分として、二種以上のシリカをあらかじめ混合したものを用いる、発明32に記載の製造方法。
【0052】
[発明34]
二種以上のシリカが、結晶質シリカ、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカ、火焔法シリカおよび沈殿法シリカからなる群より選ばれる、発明33に記載の製造方法。
【0053】
[発明35]
(B)成分のシリカのメジアン径の値が0.02μm以上500μm以下である、発明32乃至34のいずれか一に記載の製造方法。
【0054】
[発明36]
(B)成分が、粒度分布測定において複数の頻度ピークを示すシリカである、発明32乃至35のいずれか一に記載の製造方法。
【0055】
[発明37]
(B)成分が、粒子径3μm以下のシリカ粒子を含有する、発明32乃至36のいずれか一に記載の製造方法。
【0056】
[発明38]
(B)成分が、表面が化学修飾されていないシリカである、発明32乃至37のいずれか一に記載の製造方法。
【0057】
[発明39]
(A−1)成分または(A−2)成分と、
(B)成分と、
無機フィラー、耐熱性樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、硬化触媒およびアンチブロッキング剤からなる群から選ばれる一種以上と
を混合して硬化性樹脂組成物を得る、発明32乃至38のいずれか一に記載の製造方法。
【0058】
[発明40]
(A−1)成分または(A−2)成分と、
(B)成分と、
無機フィラー、耐熱性樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、硬化触媒およびアンチブロッキング剤からなる群から選ばれる一種以上と、
カップリング剤と
を混合して硬化性樹脂組成物を得る、発明32乃至38のいずれか一に記載の製造方法。
【0059】
[発明41]
無機フィラーが、(B)成分の範疇に無いシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、粘土鉱物、ガラス、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウムおよび炭素同素体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明39または40に記載の製造方法。
【0060】
[発明42]
耐熱性樹脂が、ナノセルロース、アラミド繊維、炭素繊維、PEEK樹脂およびポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明39または40に記載の製造方法。
【0061】
[発明43]
離型剤が、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ジメチルシリコーンおよびフッ化シリコーンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明39または40に記載の製造方法。
【0062】
[発明44]
顔料が、カーボンブラック、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄、ウルトラマリン青、プロシア青、フタロシアニン、多環顔料およびアゾ顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明39または40に記載の製造方法。
【0063】
[発明45]
難燃剤が、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物難燃剤およびアンチモン系難燃剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明39または40に記載の製造方法。
【0064】
[発明46]
硬化触媒が、酸触媒、塩基触媒または金属錯体触媒である、発明39または40に記載の製造方法。
【0065】
[発明47]
酸触媒が、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ギ酸、シュウ酸、マレイン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸およびホウ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明46に記載の製造方法。
【0066】
[発明48]
塩基触媒が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イミダゾール、ピリジン、トリフェニルホスフィン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明46に記載の製造方法。
【0067】
[発明49]
金属錯体触媒が、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫およびナフテン酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明46に記載の製造方法。
【0068】
[発明50]
アンチブロッキング剤が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸のLi塩、ステアリン酸のNa塩、ステアリン酸のMg塩、ステアリン酸のK塩、ステアリン酸のCa塩、ステアリン酸のBa塩、ステアリン酸のAl塩、ステアリン酸のZn塩、ステアリン酸のFe塩、ラウリン酸のCa塩、ラウリン酸のBa塩、ラウリン酸のZn塩、ベヘン酸のCa塩、ベヘン酸のBa塩、ベヘン酸のZn塩、12−ヒドロキシステアリン酸のCa塩、12−ヒドロキシステアリン酸のMg塩、12−ヒドロキシステアリン酸のZn塩、アルミニウムシリケート、結晶質シリカ、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカ、火焔法シリカ、沈殿法シリカ、ゼオライト、タルク、カオリン、珪藻土、ポリエチレンビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル樹脂およびシリコン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明39または40に記載の製造方法。
【0069】
[発明51]
カップリング剤が、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートおよび3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種である、発明40に記載の製造方法。
【0070】
[発明52]
スパイラルフロー長(電気機能材料工業会規格:T901に準拠、温度180℃、成形圧力6.9MPa、成形時間3分)が5〜180cmである、発明32乃至51のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【0071】
[発明53]
発明1乃至31のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物からなるタブレット。
【0072】
[発明54]
発明1乃至31のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【0073】
[発明55]
前記硬化性樹脂組成物を成形して得られる、発明54に記載の硬化物。
【0074】
[発明56]
前記硬化性樹脂組成物を注型成形法、圧縮成形法またはトランスファー成形法で成形して得られる、発明54又は55に記載の硬化物。
【0075】
[発明57]
前記硬化性樹脂組成物がタブレットとして用いられ、前記硬化性樹脂組成物をトランスファー成形法で成形して得られる発明54乃至56のいずれか一に記載の硬化物。
【0076】
[発明58]
厚みが1mm以上である発明54乃至57に記載の硬化物。
【0077】
[発明59]
厚みが2mm以上である発明54乃至58に記載の硬化物。
【0078】
[発明60]
厚みが4mm以上である発明54乃至59に記載の硬化物。
【0079】
[発明61]
発明54乃至60のいずれか一に記載の硬化物を少なくとも含有する、半導体用封止材。
【0080】
[発明62]
半導体素子を少なくとも備える半導体装置であって、
発明54乃至60のいずれか一に記載の硬化物により半導体素子が封止された、半導体装置。
【0081】
[発明63]
半導体素子がパワー半導体素子である、発明62に記載の半導体装置。
【0082】
[発明64]
発明1乃至31のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて、半導体を封止する方法。
【0083】
[発明65]
発明1乃至31のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて、封止材として使用する方法。
【0084】
[発明66]
硬化性樹脂組成物が半導体封止用硬化性樹脂組成物である、発明1乃至31のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
【0085】
本発明の硬化性樹脂組成物は、種々の形状、大きさに成形しても硬化時の発泡を抑制することができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体装置用の封止材料、特にパワー半導体装置用の封止材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】本発明の半導体装置の一例を示す概略断面図である。
図2】実施例3で得られた硬化物の耐熱性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の具体的な形態によって制限を受けることはない。
【0088】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)成分として所定のポリシロキサン化合物と、(B)成分として所定のシリカとを少なくとも含む。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、その他の成分として、所定の添加物をさらに含んでいても良い。
本発明の第一の実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、(A)成分として後述の(A−1)成分を含む。また、本発明の第二の実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、(A)成分として後述の(A−2)成分を含む。本明細書において、(A−1)成分と(A−2)成分に関して共通する項目については「(A)成分」と総称して説明することがある。
【0089】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0090】
<(A)成分:ポリシロキサン化合物>
(第一の実施形態)
本発明に係る(A−1)成分は、シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる官能基を一分子中に少なくとも2個以上含有するポリシロキサン化合物である。このポリシロキサン化合物の種類は、シラノール基およびアルコキシシリル基からなる群から選ばれる官能基を一分子中に少なくとも2個以上含有するポリシロキサン化合物であれば、特に限定されず、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このようなポリシロキサン化合物は、アルコキシシラン化合物およびクロロシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を加水分解重縮合して得られる。このとき、アルコキシシラン化合物およびクロロシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種に加えて、環状シロキサン化合物やポリジメチルシロキサン化合物を併用して加水分解重縮合してもよい。
【0091】
半導体装置用、特にパワー半導体装置用としてより好適な封止材料を得る観点から、本発明に係る(A−1)成分は、下記一般式[1]で表される構造単位を少なくとも有するポリシロキサン化合物(以下、「ポリシロキサン化合物[1]」と称することがある。)を含むことが好ましい。ただし、(A−1)成分として、ポリシロキサン化合物[1]以外のポリシロキサン化合物を用いてもよい。
【0092】
【化6】
【0093】
一般式[1]中、R1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状のアルケニル基、炭素数3〜10の分岐状のアルケニル基、炭素数3〜10の環状のアルケニル基または炭素数5〜10のアリール基である。これらのアルキル基、アルケニル基またはアリール基中の水素原子の一部または全てがハロゲン原子と置換されていてもよく、アルキル基、アルケニル基またはアリール基中の炭素原子の一部が窒素原子、酸素原子および珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種と置換されていてもよい。ここで、ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択される少なくとも1種を表す。R1が複数存在する場合には、R1は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[1]中、酸素原子はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子、またはヒドロキシ基もしくはアルコキシ基の酸素原子を示す。一般式[1]中、mおよびnはそれぞれ、1〜3の整数を表し、m+n=4を満たす。
【0094】
一般式[1]のR1における炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基または炭素数3〜10の環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。中でも、メチル基が好ましい。
【0095】
一般式[1]のR1における炭素数2〜10の直鎖状のアルケニル基、炭素数3〜10の分岐状のアルケニル基または炭素数3〜10の環状のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
【0096】
一般式[1]のR1における炭素数5〜10のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。中でも、フェニル基が好ましい。
【0097】
硬化性樹脂組成物の硬化性を高め、半導体装置の封止においてクラックをより一層抑制する観点から、上記一般式[1]で表される構造単位は、R1が炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、または炭素数5〜10のアリール基を表す構造単位を含むことが好ましい。中でも、R1がメチル基またはフェニル基を表す構造単位を含むことが特に好ましい。
【0098】
ポリシロキサン化合物[1]において、mが2であり、かつnが2であるときの構造単位、すなわち[R12SiO2/2]で表される構造単位(以下、「二官能構造単位」と称することがある。)は、下記式[1−2]で表される構造、すなわち、二官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基またはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0099】
【化7】
【0100】
上記式[1−2]中、Xはヒドロキシ基またはアルコキシ基を表し、R1は、上記式[1]中のR1と同義である。
【0101】
二官能構造単位は、下記式[1−b]で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、さらに下記式[1−2−b]で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R1で表される基を有し、かつヒドロキシ基またはアルコキシ基が末端に残存している構造単位も、二官能構造単位に含まれる。具体的には、(A−1)成分の原料となりうるアルコキシシラン化合物のアルコキシ基が(A−1)成分中に残存するもしくはヒドロキシ基に変換される場合、またはクロロシラン化合物の塩素原子がヒドロキシ基に変換される場合には、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を有する二官能構造単位は、下記式[1−2−b]で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。また、下記式[1−b]で表される構造単位において、Si−O−Si結合中の酸素原子は、隣接するケイ素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0102】
【化8】
【0103】
上記式[1−2−b]中、Xはヒドロキシ基またはアルコキシ基を表す。上記式[1−b]および[1−2−b]中のR1は、上記式[1]中のR1と同義である。
【0104】
ポリシロキサン化合物[1]において、mが1であり、かつnが3であるときの構造単位、すなわち[R1SiO3/2]で表される構造単位(以下、「三官能構造単位」と称することがある。)は、下記式[1−3]または[1−4]で表される構造、すなわち、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の2つまたは1つがそれぞれヒドロキシ基またはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0105】
【化9】
【0106】
【化10】
【0107】
上記式[1−3]および[1−4]中、Xはヒドロキシ基またはアルコキシ基を表し、式[1−3]中、複数存在するXは互いに同じまたは異なる種類であってもよい。上記式[1−3]および[1−4]中、R1は上記式[1]中のR1と同義である。
【0108】
三官能構造単位は、下記式[1−c]で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、さらに下記式[1−3−c]または[1−4−c]で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R1で表される基を有し、かつヒドロキシ基もしくはアルコキシ基またはその両方が末端に残存している構造単位も、三官能構造単位に含まれる。
【0109】
【化11】
【0110】
上記式[1−3−c]および[1−4−c]中、Xはヒドロキシ基またはアルコキシ基を表し、式[1−3−c]中、複数存在するXは互いに同じまたは異なる種類であってもよい。上記式[1−c]、[1−3−c]および[1−4−c]中のR1は、上記式[1]中のR1と同義である。
【0111】
上記ポリシロキサン化合物[1]は、一般式[1]で表される構造単位を複数含んでいてもよく、それらの構造単位は同じまたは異なる種類であってもよい。
【0112】
上記ポリシロキサン化合物[1]は、一般式[1]で表される構造単位に加えて、さらに下記一般式[2]で表される構造単位を有するポリシロキサン化合物を含むものであってもよい。上記ポリシロキサン化合物[1]が、一般式[1]で表される構造単位に加えて、さらに下記一般式[2]で表される構造単位を有するポリシロキサン化合物を含むと、得られる硬化物の耐熱性がさらに向上し、また各種部材との良好な密着性を示しやすい点で好ましい。以下、一般式[1]で表される構造単位と一般式[2]で表される構造単位とを有するポリシロキサン化合物を、「ポリシロキサン化合物[2]」と称することがある。
【0113】
【化12】
【0114】
一般式[2]中、酸素原子はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子、またはヒドロキシ基の酸素原子を示す。
【0115】
ポリシロキサン化合物[2]において、一般式[1]で表される構造単位と一般式[2]で表される構造単位の比は、特に限定されない。質量平均分子量が好ましい範囲内となるように製造することが容易であるという観点から、[SiO4/2]/[R1mSiOn/2]が1.0以下であることが好ましい。
【0116】
(第二の実施形態)
本発明に係る(A−2)成分は、下記一般式[3]で表されるアルコキシシラン化合物(以下、「アルコキシシラン化合物[3]」と称することがある。)の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させて得られるポリシロキサン化合物である。
【0117】
【化13】
【0118】
一般式[3]中のR1は一般式[1]中のR1と同義であり、R1が複数存在する場合には、R1は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のR2はそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基または炭素数3〜4の分岐状のアルキル基であり、R2が複数存在する場合には、R2は同じまたは互いに異なる種類であってもよい。一般式[3]中のYは1〜3の整数である。
【0119】
一般式[3]のR2における炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基または炭素数3〜4の分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0120】
アルコキシシラン化合物[3]は、一般式[3]中のYの数に応じて、トリアルコキシシラン化合物(R1Si(OR23)、ジアルコキシシラン化合物((R12Si(OR22)およびモノアルコキシシラン化合物((R13SiOR2)に分類される。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0121】
前記トリアルコキシシラン化合物は、具体的には以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン。
これらの中でも好ましい化合物として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシランが挙げられ、特に好ましい化合物として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが挙げられる。
【0122】
前記ジアルコキシシラン化合物は、具体的には以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ビス(トリフルオロメチル)ジメトキシシラン、ビス(トリフルオロメチル)ジエトキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジエトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジエトキシシラン。
これらの中でも好ましい化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ビス(トリフルオロメチル)ジメトキシシラン、ビス(トリフルオロメチル)ジエトキシシランが挙げられ、特に好ましい化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0123】
前記モノアルコキシシラン化合物は、具体的には以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリエチルイソプロポキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリフェニルプロポキシシラン、トリフェニルイソプロポキシシラン、トリス(トリフルオロメチル)メトキシシラン、トリス(トリフルオロメチル)エトキシシラン。
【0124】
アルコキシシラン化合物[3]の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させる方法において、下記一般式[4]で表されるアルコキシシラン化合物(以下、「アルコキシシラン化合物[4]」と称することがある。)の少なくとも1種を併用してもよい。アルコキシシラン化合物[4]の少なくとも1種を併用すると、得られる硬化物の耐熱性がさらに向上し、また各種部材との良好な密着性を示しやすい点で好ましい。
【0125】
【化14】
【0126】
上記一般式[4]中のR2は、一般式[3]中のR2と同義である。
【0127】
アルコキシシラン化合物[4]としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシランなどが挙げられる。
【0128】
アルコキシシラン化合物[3]の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させる方法について具体的に説明する。まず、アルコキシシラン化合物[3]を室温(特に加熱または冷却しない雰囲気温度を言い、通常、約15℃以上約30℃以下である。以下同じ。)にて反応容器内に所定量採取した後、アルコキシシラン化合物を加水分解するための水と、重縮合反応を進行させるための触媒、所望により反応溶媒を反応器内に加えて反応溶液とする。このときの反応資材の投入順序はこれに限定されず、任意の順序で投入して反応溶液とすることができる。また、アルコキシシラン化合物[4]を併用する場合には、アルコキシシラン化合物[3]と同様に反応器内に加えればよい。次いで、この反応溶液を撹拌しながら、所定時間、所定温度で加水分解および縮合反応を進行させることで、本発明に係る(A−2)成分のポリシロキサン化合物を得ることができる。この際、反応系中の未反応原料のアルコキシシラン化合物、水、反応溶媒および/または触媒が、反応系外へ留去されることを防ぐため、反応容器を閉鎖系にするか、コンデンサーなどの還流装置を取り付けて反応系を還流させることが好ましい。
【0129】
(A−2)成分の製造において使用する水の量は、特に限定されない。反応効率の観点から、原料化合物のアルコキシシラン化合物に含有されるアルコキシ基の全モル数に対するモル比で表して、1.0倍以上5.0倍以下であることが好ましい。1.0倍以上であるとアルコキシシラン化合物の加水分解が効率よく進行しやすく、5.0倍以下であるとゲル化等が生じにくく、ハンドリングが困難となりにくい。
【0130】
(A−2)成分の製造においては、無溶媒条件でも反応させることは可能であるが、反応溶媒を使用することもできる。反応溶媒の種類としては、(A−2)成分を製造するための反応を阻害しなければ、特に限定されない。中でも、水溶性の有機溶媒が好ましく、適切な反応速度で反応が進行することから、アルコール系溶媒が特に好ましい。アルコール系溶媒は、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。反応溶媒の使用量としては、使用する水の量に対するモル比で表して、1.0倍以下であることが好ましい。
また、反応溶媒を用いずに縮合反応を行っても良い。この場合、アルコキシシラン化合物の加水分解により生成するアルコールが、上述の反応溶媒の役割を果たす。
【0131】
(A−2)成分の製造において使用する触媒の種類としては、酸、塩基または金属錯体を使用できる。(A−2)成分中のシラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量の制御が容易なことから、酸触媒が好ましい。この酸触媒の種類は特に限定されないが、具体的には、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ギ酸、シュウ酸、マレイン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などが挙げられる。中でも、反応終了後の触媒の除去処理が容易なことから、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。また、塩基触媒の種類は特に限定されない。例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イミダゾール、ピリジン、トリフェニルホスフィン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体触媒の種類は特に限定されない。例えば、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ナフテン酸コバルトなどが挙げられる。
【0132】
(A−2)成分の製造における触媒の使用量としては、原料化合物のアルコキシシラン化合物に含有されるアルコキシ基の全モル数に対するモル比で表して、1.0×10-5倍以上1.0×10-1倍以下であることが好ましい。
【0133】
(A−2)成分の製造における反応時間は、触媒の種類にもよるが、通常約3時間〜約48時間であり、反応温度は、通常室温以上180℃以下である。
【0134】
反応後は、(A−2)成分のハンドリングの観点から、反応系内から(A−2)成分を分離して精製することが好ましい。この分離方法は特に限定されない。例えば、抽出する方法が挙げられる。具体的には、前述の反応後の反応溶液を室温まで降温させた後、抽出溶媒として非水性の有機溶媒と接触させることで反応系中に存在する(A−2)成分を抽出する。この抽出後の溶液は必要に応じて、水または食塩水で洗浄しても良く、乾燥剤を用いて溶液中に含まれる水を除去しても良い。最後に溶液中の揮発成分の減圧除去を経ることで、高純度の(A−2)成分または(A−2)成分含有溶液を得ることができる。また、反応後の反応溶液が、室温下で、抽出溶媒を加えなくても水層と(A−2)成分を含む層とに分離する場合には、抽出溶媒を用いずに水層を除去し、次いで、(A−2)成分を含む層から(A−2)成分を精製することもできる。
【0135】
前記抽出溶媒として用いる非水性の有機溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族系溶媒、1−ブタノール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶媒、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0136】
前記乾燥剤の種類は特に限定されず、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、合成ゼオライトなどの固体乾燥剤を用いることができる。
【0137】
本発明に係る(A)成分の質量平均分子量は、特に限定されるものではない。通常、200以上50,000以下であればよい。(B)成分と良好に配合するのに充分な流動性を有することから、300以上10,000以下が好ましく、600以上3,000以下が特に好ましい。ここで、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(略称:GPC)により測定し、標準ポリスチレン検量線により換算して得られる値である。
【0138】
(A)成分におけるシラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量は特に限定されないが、1mmol/g以上15mmol/g以下の範囲内にあることが好ましく、3mmol/g以上15mmol/g以下の範囲内にあることが特に好ましい。この範囲内であれば、硬化性樹脂組成物の硬化反応が円滑に進行し、発泡が特に抑制された硬化物を得ることができる。また、シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量がこの範囲内であれば、本発明の硬化性樹脂組成物における(B)成分の分散性が良好となり、本発明の硬化性樹脂組成物がさらに無機フィラーを含有する場合には無機フィラーの分散性も良好となる。これにより、本発明の硬化性樹脂組成物は長期間にわたり分散安定性が良好に保たれる。さらに、シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量がこの範囲内であれば、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、各種部材との良好な密着性を示す。なお、(A)成分におけるシラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量は、29Si−NMRスペクトルを測定し、そのOH基およびOR基と結合したSi原子のピーク面積と、OH基およびOR基と結合していないSi原子のピーク面積の比から算出することができる。
【0139】
<(A)成分の合成または入手方法>
(A)成分のポリシロキサン化合物の合成方法または入手方法は特に限定されない。(A−1)成分のポリシロキサン化合物の製造方法の一例を挙げると、(A−1)成分のポリシロキサン化合物は、アルコキシシラン化合物およびクロロシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を加水分解重縮合して得られる。アルコキシシラン化合物を加水分解し重縮合反応させる方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物を、水と触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。また、クロロシラン化合物を加水分解して用いてもよい。
【0140】
(A−1)成分のポリシロキサン化合物の一態様であるポリシロキサン化合物[1]の合成方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物[3]の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させる方法が挙げられる。アルコキシシラン化合物[3]の少なくとも1種を加水分解し重縮合反応させる方法において、アルコキシシラン化合物[4]を併用してもよい。
【0141】
アルコキシシラン化合物[3]の少なくとも1種の加水分解、重縮合反応、およびアルコキシシラン化合物[3]の少なくとも1種とアルコキシシラン化合物[4]の少なくとも1種との加水分解、重縮合反応は、前述の(A−2)成分のポリシロキサン化合物の製造方法に準じて行うことができる。
【0142】
<(B)成分:シリカ>
本発明に係る(B)成分は、抽出水の25℃におけるpH値が6.1以下、好ましくは4.0以上6.1以下のシリカである。本発明の硬化性樹脂組成物において、(B)成分が含有されることにより、(A)成分が縮合系のポリシロキサン化合物であるにもかかわらず、加熱硬化時に発生するガスが円滑に系外へと放出され、硬化物の発泡を抑制することができる。
【0143】
本発明における(B)成分の抽出水とは、試料となる(B)成分10gを精製水200mLと共に80±3℃で1時間攪拌させた後、室温に冷却した結果得られる溶出液を意味し、抽出水のpH値とは、そのように得られた抽出水のpH値を下記の通りに測定したものを意味する。
【0144】
本発明に係る(B)成分の抽出水のpH値は、JIS K 1150:1994に規定する試験方法に準拠して測定する。具体的には、まず空気中約170℃または真空下約150℃にて2時間乾燥した(B)成分を約10g、少数点以下2桁まで量りとる。この(B)成分を300mLビーカーに入れ、精製水200mLを加えてビーカーを時計皿で覆い、80±3℃で1時間攪拌した後、室温に冷却して上澄み液を採取する。この上澄み液の液温を25℃とした後、pH計を用いて測定を行い、pH値を小数点以下1桁まで読み取る。この精製水には、電気伝導率1×10-3S/m以下のものを用い、pH計には、JIS Z 8802に規定する形式IIのものを用い、ビーカーには、JIS R 3505に規定する硬質のものを用いる。
【0145】
本発明における(B)成分の種類としては、具体的には、結晶質シリカ、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカ、火焔法シリカ、沈殿法シリカが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。中でも、本発明の硬化性樹脂組成物の室温または加熱時における流動性、すなわち成形性が優れるという観点から、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカが好ましい。また、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカに対し、任意の割合でその他の種類のものを添加して用いることが好ましい。好ましい組み合わせとしては、具体的には、天然溶融シリカと爆燃法シリカ、合成溶融シリカと爆燃法シリカなどが挙げられるが、これらの組み合わせに限定されない。
【0146】
前記天然溶融シリカは、天然ケイ石を高温にて溶融させて作製された球状シリカの総称であり、具体的には電気化学工業株式会社製FBシリーズ、株式会社龍森製ヒューズレックスシリーズ、MSVシリーズ、MSRシリーズ、新日鉄住金マテリアルズ株式会社製HSシリーズなどが挙げられる。電気化学工業株式会社製FBシリーズとしては、具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
FB−5D、FB−12D、FB−20D、FB−105、FB−940、FB−9454、FB−950、FB−105FC、FB−870FC、FB−875FC、FB−9454FC、FB−950FC、FB−300FC、FB−105FD、FB−970FD、FB−975FD、FB−950FD、FB−300FD、FB−400FD、FB−7SDC、FB−5SDC、FB−3SDC、FB−40S、FB−570、FB−820。
株式会社龍森製MSRシリーズとしては、具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
MSR−LV24、MSR−5100。
【0147】
前記合成溶融シリカは、四塩化ケイ素の溶融反応等により作製された球状シリカの総称であり、具体的には株式会社トクヤマ製エクセリカシリーズ、株式会社龍森製EMIXシリーズなどが挙げられる。株式会社トクヤマ製エクセリカシリーズとしては、具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
SE−8、SE−15、SE−30、SE−40、SE−15K、SE−30K、UF−305、UF−310、UF−320、UF−345、UF−725、ML−902SK。
株式会社龍森製EMIXシリーズとしては、具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
EMIX−CER。
【0148】
前記爆燃法シリカは、シリコン粉末の酸化反応により作製された球状シリカの総称であり、具体的には株式会社アドマテックス製アドマファインSOシリーズ、株式会社龍森製XRシリーズなどが挙げられる。株式会社アドマテックス製アドマファインSOシリーズとしては、具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
SO−C1、SO−C2、SO−C4、SO−C5、SO−C6。
株式会社龍森製XRシリーズとしては、具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
XR−08P、XR−15P。
【0149】
本発明における(B)成分の形状は、特に限定されない。通常、破砕状、球状、板状、数珠状等が挙げられる。中でも、硬化性樹脂組成物の成形性が優れることから、球状が好ましい。また、球状のものに対し、任意の割合でその他の形状のものを添加した(B)成分を用いることもできる。
【0150】
本発明における(B)成分の粒子径分布は、通常、レーザー回折式粒度分布測定法によるメジアン径の値が0.02μm以上500μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05μm以上100μm以下である。(B)成分に含まれる最大の粒子径の値は、750μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。(B)成分に含まれる最小の粒子径の値は、特に限定されない。ここで、(B)成分の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により求める。用いる機器は特に限定されないが、日機装株式会社製マイクロトラック、株式会社堀場製作所製LA、シーラス社製CILAS、マルバーン社製マスターサイザー、ベックマン・コールター株式会社製LSなどを用いることができる。また、レーザー回折式粒度分布測定法におけるメジアン径とは、俗にd50とも言い、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側の体積が等量となる径のことである。
【0151】
なお、前記天然溶融シリカおよび合成溶融シリカの粒子径は、一般的に1μm以上100μm以下である。また、前記爆燃法シリカの粒子径は、一般的に0.1μm以上3μm以下である。
【0152】
本発明に係る(B)成分の粒子径が小さい、すなわち比表面積が大きいほど、単位体積あたりの(B)成分表面のシラノール基の量は多くなる。この量が多くなれば、硬化物の発泡を抑制する効果が大きくなる傾向がある。したがって、(A)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が小さくても発泡の無い硬化物を得ることができる。しかしながら、(B)成分の粒子径が小さいほど、本発明の硬化性樹脂組成物の室温または加熱時における流動性は小さくなり、成形性が低下する傾向がある。このことから、(B)成分の粒子径は上記の範囲内であることが好ましい。
【0153】
本発明における(B)成分は、粒度分布測定において複数の頻度ピークを示すものであっても良い。特に、本発明の硬化性樹脂組成物をトランスファー成形法にて成形する場合、(B)成分は粒子径が大きく異なる粒子同士が、最密充填構造をとりやすい割合にて配合されたもの(以下、「最密充填型(B)成分」と称することがある。)であることが好ましい。例えば、大粒径の(B)成分に加え、中粒径もしくは小粒径またはその両方の(B)成分を所定の割合で配合することによって、大粒径の(B)成分の隙間を中粒径もしくは小粒径またはその両方の(B)成分で埋めることで最密充填状態となる。最密充填型(B)成分を使用することにより、硬化性樹脂組成物は加熱時における流動性が大きく向上し、トランスファー成形が容易となる。また、最密充填型(B)成分を使用することにより、本発明の硬化物は充填率が上昇し、機械強度や電気物性が向上するという効果も得ることができる。最密充填型(B)成分のレーザー回折式粒度分布測定法による粒子径分布は、例えば、10μm以上100μm以下および1μm以上10μm以下にそれぞれ1つずつ、合計2つの頻度ピークを有するもの、10μm以上100μm以下、1μm以上10μm以下および0.1μm以上1μm以下にそれぞれ1つずつ、合計3つの頻度ピークを有するもの、などを挙げることができる。
【0154】
本発明における最密充填型(B)成分としては、具体的には、電気化学工業株式会社製FB−940、FB−570、FB−820、株式会社トクヤマ製エクセリカML−902SK、株式会社龍森製MSR−LV24、MSR−5100、EMIX−CERなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、異なる2種以上の(B)成分を混合し、最密充填型(B)成分を調製することもできる。
【0155】
本発明における(B)成分は、粒子径が3μm以下の粒子を含有しているもの(以下、「微小粒子含有型(B)成分」と称することがある。)であっても良い。微小粒子含有型(B)成分を使用することにより、硬化性樹脂組成物の加熱時において、(A)成分中のシラノール基およびアルコキシシリル基の縮合反応が促進され、それに伴って該組成物の硬化速度を大きく向上させることができる。これは、特にトランスファー成形法にて硬化性樹脂組成物を成形する場合に有効であり、成形温度の低温化、成形時間の短縮、および離型性の改善といった効果が得られ、本発明の硬化物の生産性および表面の平滑性が向上する。
【0156】
本発明における微小粒子含有型(B)成分中の、粒子径3μm以下の粒子の割合としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、12質量%以上〜45質量%以下であることが特に好ましい。1質量%を下回ると、前述した硬化速度の向上の効果が得られなくなることがあり、50質量%を上回ると、硬化性樹脂組成物の流動性および成形性が低下することがある。
【0157】
本発明における微小粒子含有型(B)成分中の、粒子径3μm以下の粒子の種類は、特に限定されない。具体的には、爆燃法シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカ、火焔法シリカなどが挙げられる。中でも、本発明の硬化性樹脂組成物の室温または加熱時における流動性、すなわち成形性が優れるという観点から、爆燃法シリカが好ましい。爆燃法シリカとしては、株式会社アドマテックス製アドマファインSOシリーズ、株式会社龍森製XRシリーズなどが挙げられる。
【0158】
本発明の硬化性樹脂組成物をトランスファー成形法にて成形する場合、(B)成分は最密充填型(B)成分かつ微小粒子含有型(B)成分であることがより好ましい。このような(B)成分を用いることで、加熱時における流動性および硬化速度を同時に向上させることが可能である。このような(B)成分の具体例としては、株式会社トクヤマ製エクセリカML−902SKと株式会社アドマテックス製アドマファインSOシリーズを、両者の総量に対するアドマファインSOシリーズの割合が1質量%以上50質量%以下の範囲内となるように配合したものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
(B)成分の表面は、カップリング剤等によって化学修飾されておらず、表面のシラノール基が露出している状態であることが好ましい。もちろん本発明の効果を損なわない限り、表面が化学修飾されたシリカ粒子を用いることもできる。
【0160】
本発明の硬化性樹脂組成物において、(B)成分は、(A)成分と(B)成分との総量に対する(B)成分の割合が70質量%以上97質量%以下の範囲内となるように配合される。(B)成分の割合が70質量%を下回ると、得られる硬化物が発泡することがあり、97質量%を上回ると、バルク状の硬化物を得ることが困難となる。70質量%以上97質量%以下の範囲内であれば、得られる硬化物中の発泡を抑制することができ、かつバルク状もしくは薄膜状の硬化物を得ることができる。
【0161】
<その他の成分>
硬化物の物性を調整することを目的として、本発明の硬化性樹脂組成物には、(A)成分と(B)成分のほかに、無機フィラー、耐熱性樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、硬化触媒、アンチブロッキング剤などの添加物をさらに含有させても良い。これらの添加物は、1種を単独で含有させてもよいし、2種以上を任意の割合で含有させてもよい。これらの添加物を含有させる場合の量は、本発明の硬化物の発泡抑制特性などの特徴を損なわない範囲で、かつ種々の添加物としての有効量であれば特に限定されない。(A)成分と(B)成分との総量に対して、これらの全添加物での割合が5質量%以下であることが好ましい。
【0162】
無機フィラーとしては、具体的には、(B)成分の範疇に無いシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、タルクやカオリン等の粘土鉱物、ガラス、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、ダイヤモンドやカーボンナノチューブ等の炭素同素体などを例示することができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。無機フィラーの形状は特に限定されず、破砕状、球状、板状、数珠状、棒状、繊維状、針状、中空状等が挙げられる。
【0163】
耐熱性樹脂としては、具体的には、ナノセルロース、アラミド繊維、炭素繊維、PEEK樹脂、ポリイミドなどを例示することができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。耐熱性樹脂の形状は特に限定されず、破砕状、球状、板状、数珠状、棒状、繊維状、針状、中空状等が挙げられる。
【0164】
離型剤としては、具体的には、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ジメチルシリコーン、フッ化シリコーンなどを例示することができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0165】
顔料としては、具体的には、カーボンブラック、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄、ウルトラマリン青、プロシア青、フタロシアニン、多環顔料、アゾ顔料などを例示することができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0166】
難燃剤としては、具体的には、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物難燃剤、アンチモン系難燃剤などを例示することができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0167】
硬化触媒としては、前述の(A)成分の製造において使用する触媒の種類として挙げたものと同様のものが挙げられる。硬化触媒を添加することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化速度を調整することができる。
【0168】
タブレット同士の互着や一体化を防ぐこと、タブレットを一定した形状に保持することを目的として、本発明の硬化性樹脂組成物には、アンチブロッキング剤をさらに含有させても良い。アンチブロッキング剤としては、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸のLi塩、ステアリン酸のNa塩、ステアリン酸のMg塩、ステアリン酸のK塩、ステアリン酸のCa塩、ステアリン酸のBa塩、ステアリン酸のAl塩、ステアリン酸のZn塩、ステアリン酸のFe塩、ラウリン酸のCa塩、ラウリン酸のBa塩、ラウリン酸のZn塩、ベヘン酸のCa塩、ベヘン酸のBa塩、ベヘン酸のZn塩、12−ヒドロキシステアリン酸のCa塩、12−ヒドロキシステアリン酸のMg塩、12−ヒドロキシステアリン酸のZn塩、アルミニウムシリケート、結晶質シリカ、天然溶融シリカ、合成溶融シリカ、爆燃法シリカ、煙霧状シリカ、ゾルゲルシリカ、火焔法シリカ、沈殿法シリカ、ゼオライト、タルクやカオリン等の粘土鉱物、珪藻土、ポリエチレンビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル樹脂、シリコン樹脂などを例示することができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0169】
上述の無機フィラー、耐熱性樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、硬化触媒、アンチブロッキング剤などの添加物の分散性を調整することを目的として、本発明の硬化性樹脂組成物は、さらにカップリング剤を含有させても良い。このようなカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートまたは3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。このようなカップリング剤を含有させる場合の量は、本発明の硬化物の発泡抑制特性などの特徴を損なわない範囲で、かつカップリング剤としての有効量であれば特に限定されない。(A)成分と(B)成分との総量に対して、カップリング剤の割合が2質量%以下であることが好ましい。
【0170】
<硬化性樹脂組成物の調製>
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分、必要に応じてその他の添加物を配合することで調製することができる。各成分の配合量は前述の通りである。各成分は均一に分散していることが好ましく、少なくとも、(B)成分が(A)成分中で凝集せずに分散していることが好ましい。(B)成分の(A)成分中への分散性が良好な状態であれば、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は良好な密着性および機械強度を示す。
【0171】
各成分を均一に分散させるための方法は特に限定されない。通常は、各成分を混練容器内に採取し、室温でまたは加熱しながら混練することで、各成分を均一に分散させることができる。各成分の投入手順は特に限定されない。始めに全ての成分を混練容器へ採取して混練しても良いし、各成分を任意の順序で採取し段階的に混練を進めても良い。また、異なる2種以上の(A)成分および/または(B)成分を使用する場合、それらをあらかじめ混合してから混練容器へ投入しても良いし、または別々に混練容器へ投入しても良い。2種以上の(A)成分をあらかじめ混合する方法としては、マグネティックスターラー、メカニカルスターラー、ミキサー、遊星ミキサー、攪拌脱泡装置、スタティックミキサー、双腕型ニーダー、加圧型ニーダーなどの混合装置を使用する方法が挙げられる。2種以上の(B)成分をあらかじめ混合する方法としては、密閉容器内で振り混ぜる、またはメカニカルスターラー、ミキサー、遊星ミキサー、スパルタンミキサー、攪拌脱泡装置、高速流動混合機、容器回転型混合機、V型混合機、W型混合機、双腕型ニーダー、加圧型ニーダーなどの混合装置を使用する方法が挙げられる。
【0172】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製の一態様において、異なる2種以上の(B)成分を用いて、(A)成分と該(B)成分とを少なくとも混練して該組成物を得る際に、あらかじめ該(B)成分を混合させたものを用いてもよい。あらかじめ混合させた(B)成分を用いて調製した本発明の硬化性樹脂組成物からは、良好な成形性を示す硬化物を効率的に得ることができる。これは、(B)成分の種類、形状、粒径によっては(B)成分が凝集することがあるが、あらかじめ混合することで、凝集が抑制されることによると推測される。
また、本発明の硬化性樹脂組成物の調製の一態様において、異なる2種以上の(B)成分を用いる場合に、1種以上の(B)成分と(A)成分とを混練し、その後、別の1種以上の(B)成分を加えて混練してもよい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物の調製の一態様において、異なる3種以上の(B)成分を用いる場合に、あらかじめ混合させた2種以上の(B)成分と(A)成分とを混練し、その後、別の1種以上の(B)成分を加えて混練してもよい。
【0173】
本発明の硬化性樹脂組成物を混練する方法は特に限定されない。具体的には、スパーテルや乳鉢等を用いて手で混ぜる、または混練装置を使用する方法などが挙げられる。混練装置としては、具体的には、擂潰機、2本ロールミル、3本ロールミル、ニーデックス、高速流動混合機、遊星ミキサー、双腕型ニーダー、加圧型ニーダーまたは連続式ニーダーを例示することができる。中でも、各成分の分散性に特に優れた硬化性樹脂組成物が得られることから、双腕型ニーダー、加圧型ニーダーまたは連続式ニーダーを使用して混練することが好適である。
【0174】
本発明の硬化性樹脂組成物を混練装置により混練する場合、混練温度は室温以上250℃以下であることが好ましい。混練操作の時間は特に限定されない。また、減圧または不活性ガス等の流通をしながら行っても良い。
【0175】
本発明の硬化性樹脂組成物を混練する際、その前処理として、あらかじめ混合装置を用いて各成分をある程度均一化する操作、いわゆる予備混練を行い、その後に混練を実施しても良い。予備混練のための混合装置としては、具体的には、メカニカルスターラー、ミキサー、遊星ミキサー、高速流動混合機、攪拌脱泡装置または擂潰機を例示することができる。予備混練は各成分の全量に対して行ってもよいし、一部のみを行ってもよい。もちろん予備混練を行わず、混練操作のみを行っても良い。
【0176】
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱処理により、該組成物中の(A)成分を部分的に縮合反応させても良い(以下、「Bステージ化」と称することがある。)。このBステージ化により、硬化性樹脂組成物の硬化速度を高めつつ、室温または加熱時における流動性を成形方法に応じて調整することが可能となる。特に、トランスファー成形法を採用する場合には、これを実施することが好ましい。硬化性樹脂組成物のBステージ化は、各成分を混練した後、任意の温度に設定したオーブン中で静置することにより行うことができる。または、各成分の混練を加熱しながら行うことで、混練と同時にBステージ化を行うこともできる。もしくは、混練前に(A)成分のみを加熱処理し、その後に他成分との混練を行う方法によっても、Bステージ化された硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0177】
本発明の硬化性樹脂組成物のBステージ化において、加熱処理の温度は50℃以上250℃以下であることが好ましい。Bステージ化における加熱処理の時間は、特に限定されない。また、減圧または不活性ガス等の流通をしながら行っても良い。
【0178】
[硬化性樹脂組成物のタブレット]
本発明の硬化性樹脂組成物は、各種成形のためにタブレットとして使用することもできる。成形方法は、特に限定されず、硬化性樹脂組成物の成形に一般的に採用されている方法を用いることができる。具体的には、注型成形法、浸漬成形法、滴下成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法などを例示することができる。圧縮成形法、トランスファー成形法および射出成形法を用いる場合、原料である硬化性樹脂組成物がペースト状や粘土状であると、一定した形状を保持できず、互着や一体化、変形したりするため、計量や搬送、成形機への供給が困難となることがある。一方、タブレット形状であると、計量や搬送、成形機への供給が容易となり、自動化も可能となって生産性が大幅に向上する。特に本発明の硬化性樹脂組成物をトランスファー成形法にて成形する場合、硬化性樹脂組成物はタブレット化されていることが好ましい。ここで言うタブレットとは、室温において一定した形状を保持し、経時的な形状の変化が実質的にない固体のことを意味する。
【0179】
本発明のタブレットの形状は、特に限定されず、円柱状、角柱状、円盤状、球状、リング状などの形状を含む。
【0180】
本発明のタブレットを作製する方法は特に限定されない。具体的には、型とプレス機を用いて行う方法、杵臼状の治具を備えた打錠機を使用する方法、押出機によりストランドを排出させ等間隔に切断する方法などを例示することができる。打錠機としては、具体的には、油圧式打錠機、サーボモーター式打錠機、ロータリー式打錠機を例示することができる。また、押出機としては、具体的には、プランジャー押出機、1軸押出機、2軸押出機または2軸1軸押出機を例示することができる。
【0181】
上述したタブレット作製方法のうち、型とプレス機を用いて、または打錠機を使用して行う場合には、その作業性の観点より、硬化性樹脂組成物は粒子径10mm以下に粉砕されている、または一辺15mm以下の角柱状、円柱状、破砕状、球状、針状等に予備成形されていることが好適である。硬化性樹脂組成物を粒子径10mm以下に粉砕する方法としては、鉄鉢等を用いて手で粉砕する、または粉砕機を使用する方法が挙げられる。粉砕機としては、具体的には、ハンマーミル、カッターミルまたは凍結粉砕機を例示することができる。硬化性樹脂組成物を一辺15mm以下の角柱状、円柱状、破砕状、球状、針状等に予備成形する方法としては、押出機を使用する方法が挙げられる。押出機としては、具体的には、プランジャー押出機、1軸押出機、2軸押出機または2軸1軸押出機を例示することができる。
【0182】
本発明のタブレットにアンチブロッキング剤を含有させる方法は特に限定されないが、例えば、(A)成分、(B)成分およびその他の添加物を配合する際に同時に加える方法が挙げられる。また、上述した硬化性樹脂組成物の粉砕物または予備成形物を作製する際、もしくは作製直後にアンチブロッキング剤を配合する方法も挙げられる。これらの場合、アンチブロッキング剤を含有させることで、本発明の硬化性樹脂組成物の粉砕物または予備成形物はその流れ性が向上し、型とプレス機を用いて、または打錠機を使用して行うタブレット作製方法において、作業性が改善する効果も得ることができる。
【0183】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上述の硬化性樹脂組成物の硬化物である。本発明の硬化性樹脂組成物が(A)成分として縮合系のポリシロキサン化合物を含有しているにもかかわらず、本発明の硬化物は、種々の形状、大きさに成形しても硬化時に発泡が生じない。また、本発明の硬化物は架橋構造が化学的に安定なシロキサン結合のみによって構成されるため、極めて高い耐熱性を示す。そのため、本発明の硬化物を250℃程度の高温度下で一定期間曝しても、重量減少および機械的強度の低下を実質的に生じない。さらに、本発明の硬化物中にはシラノール基もしくはアルコキシシリル基またはその両方が部分的に残存しているため、各種部材との良好な密着性を示す。
【0184】
本発明の硬化物は、半導体の封止材として好適に用いることができる。この硬化物は種々のサイズに成形しても発泡しないため、大きな封止厚み、大きな封止面積が要求される半導体の封止材として用いる場合に特に好適に用いることができる。このような封止厚みとしては、1mm以上が好ましく、2mm以上がさらに好ましく、4mm以上が特に好ましい。当然、これよりも小さな封止厚みが要求される半導体においても、本発明の硬化物を封止材として好適に用いることができる。なお、上限については特に限定されないが、例えば、100mm以下であってもよく、特に20mm以下であってもよい。また、この硬化物は極めて高い耐熱性を示すことから、パワー半導体の封止材料としても適用することが可能である。
【0185】
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させることで得られる。
【0186】
この硬化温度は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化反応が進行すれば特に限定されない。一定の温度で加熱しても良いが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。硬化温度の下限は特に限定されないが、150℃以上であることが好ましく、上限も特に限定されないが、250℃以下であることが好ましい。また、硬化時間は種々設定することができる。硬化時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、加圧、あるいは減圧状態で加熱することもできる。
【0187】
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を成形して得られる硬化物であってもよい。この成形方法は、特に限定されない。具体的には、注型成形法、浸漬成形法、滴下成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法などを例示することができる。中でも、成形が容易であることから、注型成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法が好適に採用される。
【0188】
また、本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物をタブレットとして用いて、該タブレットを成形して得られる硬化物であってもよい。
【0189】
本発明の硬化物の製造方法の一実施形態においては、本発明の硬化性樹脂組成物を型へと移送し成形した後、加熱処理することで該組成物を硬化させる。この移送および成形時の温度と圧力は、上述の硬化温度と硬化時の圧力と同様に、種々設定できる。また、該組成物の加熱処理は成形と同時に行っても良く、この場合には、該組成物の硬化反応を途中段階まで進めた状態とした成形物を型から取り外し、別途さらに加熱処理する(以下、「ポストキュア」と称することがある。)ことで該成形物を完全に硬化させて本発明の硬化物を製造することもできる。
【0190】
注型成形法による本発明の硬化物を得るための成形の一態様としては、本発明の硬化性樹脂組成物を室温以上150℃未満の温度下で任意の形状および任意の材質の型へと移送し、それを型ごと加熱処理して硬化させる方法が挙げられる。硬化性樹脂組成物を移送する方法は特に限定されない。例えば、スパチュラなどの器具で掬い取って移送することもできるし、ディスペンサーなどの移送装置を使用して移送することもできる。
【0191】
圧縮成形法による本発明の硬化物を得るための成形の一態様としては、任意の形状および材質の型であって、内容物を挟んで加圧することが可能な型を用いて、本発明の硬化性樹脂組成物を室温にて挟んだ後、それを熱プレス機で加熱しながら圧縮する方法が挙げられる。圧縮成形の温度は150℃以上250℃以下が好ましく、成形圧力は10MPa以上が好ましく、保持時間は1分間以上30分間以下が好ましい。硬化物は、圧縮成形物を型から取り出した後、必要に応じてポストキュアを実施することで得られる。
【0192】
トランスファー成形法による本発明の硬化物を得るための成形の一態様としては、任意の大きさのタブレット状に予備成形した本発明の硬化性樹脂組成物を、あらかじめ加熱したトランスファー成形機へと投入し、取り付けた任意の形状および材質の型へプランジャーによる加圧によって移送する方法が挙げられる。トランスファー成形の温度は150℃以上250℃以下が好ましく、圧力は1MPa以上50MPa以下が好ましく、保持時間は30秒間以上20分間以下が好ましい。金型内を減圧しながらトランスファー成形を行っても良い。硬化物は、トランスファー成形物を型から取り出した後、必要に応じてポストキュアを実施することで得られる。
【0193】
本発明の硬化性樹脂組成物を圧縮成形法、トランスファー成形法または射出成形法にて成形する場合、金型はあらかじめ離型剤が塗布されたものを使用しても良い。離型剤の種類としては、有機系、フッ素系、シリコーン系等を例示することができる。また、離型剤の形態としては、液状、スプレー状、塊状、タブレット状等を例示することができる。このうち、タブレット状離型剤については、硬化性樹脂組成物を成形する前にタブレット状離型剤の成形を実施することで、金型への離型剤の塗布を行うことができる。もちろん、離型剤が塗布されていない金型を使用して成形を行っても良い。
【0194】
本発明の硬化性樹脂組成物をトランスファー成形法にて成形する場合、そのゲル化時間は150℃〜250℃において1秒間以上120秒間以下であることが好ましい。特に、180℃において、1秒間以上40秒間以下が好ましい。ここでゲル化時間とは、硬化性樹脂組成物を一定温度にて加熱した時、溶融してから流動性または粘着性を失うまでの時間を言う。測定方法としては、熱板、ヘラおよびストップウォッチを用いて行う。また、トルク計測装置を使用し、硬化性樹脂組成物を一定温度にて加熱した時、増粘するまでの時間を求め、その値をゲル化時間としても良い。トルク計測装置は特に限定されないが、JSRトレーディング株式会社製キュラストメーター、エムアンドケー株式会社製MDRH2030、合資会社テックプロジャパン製MDRH Next I、株式会社上島製作所製VR−3110などを用いることができる。その他の測定条件はEIMS T901:2006に従う。
【0195】
本発明の硬化性樹脂組成物をトランスファー成形法にて成形する場合、そのスパイラルフロー(長)は成形温度150℃以上250℃以下において5cm以上180cm以下であることが好ましい。特に、180℃において、5cm以上180cm以下が好ましく、10cm以上130cm以下がさらに好ましい。この範囲内の硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形法にて成形して得られる硬化物は、表面の平滑性に優れ、また型の内部形状を反映した欠けの無い硬化物が得られる。ここでスパイラルフローとは、硬化性樹脂組成物を成形する際の流れ易さを表す数値であり、渦巻き状の溝を彫り込んだ試験金型を用いてトランスファー成形し、流れが止まった時の硬化性樹脂組成物の長さで表す。成形時間は3分間、成形圧力は6.9MPaとする。金型およびその他の測定条件は電気機能材料工業会規格:T901(2006)(EIMS T901:2006)に準拠する。
【0196】
本発明の硬化性樹脂組成物をトランスファー成形法にて成形する場合、その溶融粘度は120℃以上250℃以下において1Pa・sec.以上500Pa・sec.以下であることが好ましい。ここで、硬化性樹脂組成物の溶融粘度は、フローテスターを用いて定温法測定により求める。用いる機器は特に限定されないが、株式会社島津製作所製CFT、株式会社井元製作所製1548−Cなどを用いることができる。その他の測定条件はEIMS T901:2006に準拠する。
【0197】
なお、上述したゲル化時間、スパイラルフローおよび溶融粘度の値は、Bステージ化の条件により調節することが可能である。Bステージ化の温度を高く、および/または時間を長くするほど、ゲル化時間およびスパイラルフローの値は小さくなり、溶融粘度の値は大きくなる。
【0198】
本発明の硬化物のポストキュアによる製造方法としては、特に限定されないが、成形物を150℃以上250℃以下に設定したオーブン中で静置することにより行うことが好ましい。成形物の加熱処理時間は、好ましくは250℃で1時間以上、200℃で2.5時間以上または175℃で3.5時間以上である。
【0199】
本発明の硬化物をトランスファー成形法にて作製する場合、硬化物表面の平滑性を評価することで、硬化性樹脂組成物の硬化速度を評価することができる。硬化物表面の平滑性は出来栄えを表すのみならず、離型性と相関し、さらに離型性は硬化速度と相関する傾向が一般的に知られているためである。すなわち、硬化性樹脂組成物の硬化が遅いほど成形後のトランスファー成形品は柔らかく、離型時に硬化物の一部が金型へと付着することで、硬化物表面の平滑性が損なわれる。
【0200】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、半導体素子を少なくとも備える半導体装置であって、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物によって該半導体素子が少なくとも封止されてなる。本発明の半導体装置におけるその他の構成は特に限定されず、半導体素子のほかに従来公知の半導体装置部材を備えていてもよい。そのような半導体装置部材の一例としては、例えば、ベース基板、引き出し配線、ワイヤー配線、制御素子、絶縁基板、ヒートシンク、導電部材、ダイボンド材、ボンディングパッドなどが挙げられる。また、半導体素子に加えて、半導体装置部材の一部または全部が、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物で封止されていてもよい。
【0201】
パワー半導体のパッケージは、JEDEC(半導体規格協会)やJEITA(電子情報技術産業協会)等によって、分類された規格が存在しており、例えばTO−3、TO−92、TO−220、TO−247、TO−252、TO−262、TO−263、D2、等のパッケージ規格が挙げられる。本発明の半導体装置のパッケージ形態の一例としてこれらの規格が挙げられるが、その他周知の工業規格を採用することもできる。
【0202】
本発明の半導体装置の一例を図1に示す。図1に示すように、パワー半導体装置10は、パワー半導体素子1と、封止材2と、引き出し配線3と、ワイヤー配線4と、ベース基板5と、絶縁基板6とを少なくとも備える。パワー半導体素子1は、ベース基板5上に、ダイボンド材(図示せず)を用いて接続されている。ベース基板5は絶縁基板6上に備えられている。パワー半導体素子1に備えられたボンディングパッド(図示せず)と引き出し配線3とは、ワイヤー配線4により電気的に接続されている。これらのパワー半導体素子1と、引き出し配線3と、ワイヤー配線4と、ベース基板5と、絶縁基板6とは、封止材2で封止されている。
【0203】
なお、図1に示す構造は、本発明の半導体装置の一例にすぎず、フレームの構造、半導体素子の実装構造などが適宜変形され得、また、その他の半導体装置部材が適宜追加され得る。
【0204】
[半導体装置の製造方法]
本発明の半導体装置は、本発明の硬化性樹脂組成物を注型成形法、圧縮成形法またはトランスファー成形法で成形して得られる硬化物により半導体素子を封止することにより製造することができる。
【実施例】
【0205】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0206】
<ポリシロキサン化合物>
以下の合成例で合成したポリシロキサン化合物の物性評価は、以下に示す方法で行った。
【0207】
[シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量の同定]
共鳴周波数400MHzの核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、型番:JNM−AL400)を使用して29Si−NMRを測定して、合成した各種ポリシロキサン化合物のシラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量を同定した。
【0208】
[質量平均分子量(Mw)測定]
合成した各種ポリシロキサン化合物の質量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲル透過クロマトグラフィ(略称:GPC)法により、ポリスチレンを基準物質として検量線を作成して値を算出した。
装置:東ソー株式会社製、商品名:HLC−8320GPC
カラム:東ソー株式会社製、商品名:TSK gel Super HZ 2000x4、3000x2
溶離液:テトラヒドロフラン
[構造単位の組成比の定量]
合成した各種ポリシロキサン化合物が含有する、原料化合物であるアルコキシシラン化合物に由来する構造単位について、その組成比を1H−NMRまたは29Si−NMRにより定量した。1H−NMRおよび29Si−NMRは、共鳴周波数400MHzの核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、型番:JNM−AL400)を使用して測定した。
【0209】
[合成例1]
ポリシロキサン化合物(A−a)の合成
フッ素樹脂製の撹拌羽、ジムロート型還流器を具備した容積2Lの4つ口フラスコに、フェニルトリエトキシシランを240.40g(1.000mol)、ジメチルジエトキシシランを148.30g(1.000mol)仕込んだ。次いでイソプロピルアルコールを239.64g、水を185.02g、酢酸を0.12gフラスコ内に仕込んだ後、フラスコを100℃に加温しながら攪拌し、加水分解および縮合反応を行った。18時間後、反応液を室温に戻し、フラスコ内にジイソプロピルエーテルを400ml、水を400ml入れて撹拌した。その後、2層分離した反応液の上層側を回収し、水400mlで2回洗浄した。次いで、ジイソプロピルエーテル中に溶解した微量の水分を無水硫酸マグネシウムで除去した後、無水硫酸マグネシウムを濾別した。エバポレーターにてジイソプロピルエーテルを減圧留去したところ、目的とするポリシロキサン化合物(A−a)が無色の粘性液体として得られた。収量は182.57g、質量平均分子量(Mw)は828、組成比は[PhSiO3/21.00[Me2SiO2/20.82、シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量は5.76mmol/gであった。
【0210】
[合成例2]
ポリシロキサン化合物(A−b)の合成
フッ素樹脂製の撹拌羽、ジムロート型還流器を具備した容積1Lの4つ口フラスコに、フェニルトリメトキシシランを198.30g(1.000mol)仕込んだ。次いでイソプロピルアルコールを144.00g、水を108.00g、酢酸を0.072gフラスコ内に仕込んだ後、フラスコを100℃に加温しながら攪拌し、加水分解および縮合反応を行った。6時間後、反応液を室温に戻し、フラスコ内にジイソプロピルエーテルを200ml、飽和食塩水を200ml入れて撹拌した。その後、2層分離した反応液の上層側を回収し、水200mlで2回洗浄した。次いで、ジイソプロピルエーテル中に溶解した微量の水分を無水硫酸マグネシウムで除去した後、無水硫酸マグネシウムを濾別した。エバポレーターにてジイソプロピルエーテルを減圧留去したところ、目的とするポリシロキサン化合物(A−b)が無色の固体として得られた。収量は135.10g、質量平均分子量(Mw)は943、シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量は7.13mmol/gであった。
【0211】
[合成例3]
ポリシロキサン化合物(A−c)の合成
フッ素樹脂製の撹拌羽、ジムロート型還流器を具備した容積1Lの4つ口フラスコに、メチルトリメトキシシランを136.20g(1.000mol)仕込んだ。次いでイソプロピルアルコールを144.00g、水を108.00g、酢酸を0.072gフラスコ内に仕込んだ後、フラスコを100℃に加温しながら攪拌し、加水分解および縮合反応を行った。6時間後、反応液を室温に戻し、フラスコ内にジイソプロピルエーテルを200ml、水を200ml入れて撹拌した。その後、2層分離した反応液の上層側を回収し、水200mlで2回洗浄した。エバポレーターにてジイソプロピルエーテルを減圧留去したところ、目的とするポリシロキサン化合物(A−c)が無色の粘性液体として得られた。収量は19.66g、Mwは932、シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量は12.5mmol/gであった。
【0212】
[合成例4]
ポリシロキサン化合物(A−d)の合成
フッ素樹脂製の撹拌羽、ジムロート型還流器を具備した容積2Lの3つ口フラスコに、ジメチルジメトキシシランを96.2g(0.80mol)、フェニルトリメトキシシランを158.6g(0.80mol)、テトラエトキシシランを52.1g(0.25mol)仕込んだ。次いでイソプロピルアルコールを239.6g、水を185.0g、酢酸を0.12gフラスコ内に仕込んだ後、フラスコを100℃に加温しながら攪拌し、加水分解および縮合反応を行った。6時間後、反応液を室温に戻し、フラスコ内にジイソプロピルエーテルを400ml、水を400ml入れて撹拌した。その後、2層分離した反応液の上層側を回収し、水400mlで2回洗浄した。エバポレーターにてジイソプロピルエーテルを減圧留去したところ、目的とするポリシロキサン化合物(A−d)が無色の粘性液体として得られた。収量は143.4g、Mwは1,100、シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量は7.7mmol/gであった。
【0213】
[合成例5]
ポリシロキサン化合物(A−e)の合成
フッ素樹脂製の撹拌羽、ジムロート型還流器を具備した容積2Lの3つ口フラスコに、ジメチルジメトキシシランを60.11g(0.50mol)、メチルトリメトキシシランを68.11g(0.50mol)を仕込んだ。次いでイソプロピルアルコールを120.0g、水を90.0g、酢酸を0.060gフラスコ内に仕込んだ後、フラスコを100℃に加温しながら攪拌し、加水分解および縮合反応を行った。6時間後、反応液を室温に戻し、フラスコ内にジイソプロピルエーテルを200ml、水を200ml入れて撹拌した。その後、2層分離した反応液の上層側を回収し、水200mlで2回洗浄した。エバポレーターにてジイソプロピルエーテルを減圧留去したところ、目的とするポリシロキサン化合物(A−e)が無色の粘性液体として得られた。収量は55.0g、Mwは618、シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量は10.1mmol/gであった。
【0214】
[合成例6]
ポリシロキサン化合物(A−f)の合成
フッ素樹脂製の撹拌羽、ジムロート型還流器を具備した容積2Lの3つ口フラスコに、ジメチルジメトキシシランを30.1g(0.25mol)、メチルトリメトキシシランを102.17g(0.75mol)を仕込んだ。次いでイソプロピルアルコールを132.0g、水を99.0g、酢酸を0.066gフラスコ内に仕込んだ後、フラスコを100℃に加温しながら攪拌し、加水分解および縮合反応を行った。24時間後、反応液を室温に戻し、フラスコ内にジイソプロピルエーテルを200ml、水を200ml入れて撹拌した。その後、2層分離した反応液の上層側を回収し、水200mlで2回洗浄した。エバポレーターにてジイソプロピルエーテルを減圧留去したところ、目的とするポリシロキサン化合物(A−f)が無色の粘性液体として得られた。収量は64.8g、Mwは945、シラノール基およびアルコキシシリル基の総含有量は8.8mmol/gであった。
【0215】
<シリカ>
シリカの物性評価は、以下に示す方法で行った。
【0216】
[シリカ抽出水のpH値測定]
シリカ抽出水の25℃におけるpH値は、JIS K 1150:1994に規定する試験方法にて測定した。空気中170℃にて2時間乾燥したシリカを10.00g取り、下記の300mLビーカーに入れ、下記の精製水200mLを加えた。ビーカーを時計皿で覆い、80℃で1時間攪拌した後、室温に冷却して上澄み液を取った。得られた上澄み液の液温を25℃とした後、下記のpH計を用いて測定を行い、pH値を小数点以下1桁まで読み取った。
ビーカー:JIS R 3505に規定する硬質のもの
精製水:電気伝導率1×10-3S/m以下のもの
pH計:株式会社堀場製作所製、商品名:D−54および9681−10D、JIS Z 8802に規定する形式IIのもの
<硬化性樹脂組成物>
表1に示す各成分を表1に示す配合量で用い、以下に示す方法により、実施例1〜28、比較例1〜5および参考例1の硬化性樹脂組成物を調製した。
【0217】
[各成分の混練]
ポリシロキサン化合物やシリカなどの各成分を乳鉢により混練する場合、各成分を乳鉢へと採取し、室温にて手感触による性状が一定となるまで練ることで混練を行った。各成分の総量は60g以下となるようにした。
ポリシロキサン化合物やシリカなどの各成分を連続式ニーダーにより混練する場合、まず各成分を遊星ミキサーへと採取し予備混練を行った後、連続式ニーダー(株式会社栗本鐵工所製、S1KRCニーダ)へ投入して混練を行った。各成分の総量は300g以上1,000g以下とした。遊星ミキサーによる予備混練は、室温にて行い、目視および手感触による性状が一定となるまで混合した。予備混練の時間は硬化性樹脂組成物の量と種類によるが、20分間以上150分間以下とした。連続式ニーダーによる混練は、40℃にて予備混練物を1回通すことで行った。予備混練物の投入速度は20g/分とし、連続式ニーダーの回転数は300min-1とした。二種のシリカを使用する場合は、予備混練の前にそれらを遊星ミキサーによりあらかじめ混合した。混合の時間は180分間とした。
【0218】
[硬化性樹脂組成物のBステージ化]
硬化性樹脂組成物をトランスファー成形法により成形する場合のみ、混練物をフッ素樹脂製のトレーに広げ、これをオーブン中に静置し加熱することでBステージ化を行った。Bステージ化の温度および時間は硬化性樹脂組成物の種類によるが、100℃以上120℃以下にて2.5時間以上39時間以下とした。このBステージ化を行うことで、後述の硬化性樹脂組成物のゲル化時間が1秒間以上40秒間以下となるように調節し、スパイラルフローを任意の数値に調節した。
【0219】
[Bステージ化した硬化性樹脂組成物のゲル化時間測定]
Bステージ化した硬化性樹脂組成物のゲル化時間測定は次のようにして行った。
金属製板をホットプレートにより180℃に加熱し、硬化性樹脂組成物0.5〜2.0gを載せてストップウォッチによる時間読みを開始しつつ、金属製ヘラでかき混ぜた。硬化性樹脂組成物に粘着性がなくなり金属製板から剥がれるようになった時、ストップウォッチを停止させた。この時間をゲル化時間とした。
【0220】
[硬化性樹脂組成物のタブレット化]
硬化性樹脂組成物40gを直径38mmの円柱状金型に採取し、プレス機で室温にて10秒間プレスすることで硬化性樹脂組成物のタブレットを作製した。成形圧力は3MPaとした。
【0221】
<硬化性樹脂組成物のタブレットの評価>
実施例11および22で得られた硬化性樹脂組成物のタブレットの互着抑制の度合い、および形状保持性は、以下に示す方法で評価した。
【0222】
[硬化性樹脂組成物のタブレットの互着抑制の度合いの評価]
得られた円柱状のタブレットを平らな面を下にして水平な場所へと置き、その上へもう一つのタブレットを平らな面を下にして重ねて置いた。室温にて24時間静置後、上に重ねて置いたタブレットを持ち上げることにより評価し、表3では、互着抑制の度合いに優れるものを「○」、互着抑制の度合いに特に優れるものを「◎」と記載した。
【0223】
[硬化性樹脂組成物のタブレットの形状保持性の評価]
得られた円柱状のタブレットを曲面を下にして水平な場所へと置いた。室温にて24時間静置後、目視により評価し、表3では、形状保持性に優れるものを「○」、形状保持性に特に優れるものを「◎」と記載した。
【0224】
<硬化性樹脂組成物の成形および硬化物の作製>
調製した実施例1〜28、比較例1〜5および参考例1の硬化性樹脂組成物は、以下に示すいずれかの方法で成形し、硬化物をそれぞれ作製した。
【0225】
[注型成形法]
硬化性樹脂組成物を、内径21mmのガラス製またはシリコンゴム製のモールドへ高さ15mmとなるように室温にて移送し、成形を行った。その後、モールドごと250℃で1時間加熱処理することで硬化物を得た。
【0226】
[圧縮成形法]
硬化性樹脂組成物を、内容物を加圧可能な金型(40mm×60mmまたは100mm×100mm)へと室温にて移送し、熱プレス機(有限会社東邦プレス製作所製、26トン油圧式成型機)で250℃に加熱しながら15分間プレスすることで、成形を行った。成形圧力は、40mm×60mm金型で50MPa、100mm×100mm金型で25MPaとした。得られた圧縮成形品を金型から取り外し、ポストキュアとして250℃で1時間加熱処理することで硬化物を得た。
【0227】
[トランスファー成形法]
硬化性樹脂組成物のタブレットを180℃または200℃に加熱したトランスファー成形機(株式会社丸七鉄工所製、MF−0)に仕込み、10mm×70mm×厚さ3mmの6枚取り金型、70mm×70mm×厚さ3mmの1枚取り金型、13mm×120mm×厚さ3mmの2枚取り金型、13mm×125mm×厚さ1.6mmの2枚取り金型または直径90mm×厚さ3mmの1枚取り金型へと180℃または200℃にて6.9MPaの圧力で15分間押し込むことで、成形を行った。金型は、離型剤(ダイキン工業株式会社製、製品名:ダイフリー)を塗布したものを用いた。得られたトランスファー成形品を金型から取り外し、ポストキュアとして250℃で1時間加熱処理することで硬化物を得た。
【0228】
[スピンコート法]
ポリシロキサン化合物のみを構成成分とする硬化性樹脂組成物を、直径100mmのシリコン基板上に滴下し、スピンコーターにより500rpmにて10秒間回転させ、成膜を行った。その後、基板ごと250℃で1時間加熱処理することで硬化物を得た。
【0229】
<硬化物の評価>
実施例1〜28、比較例1〜4および参考例1で得られた硬化物の発泡は、以下に示す方法で評価した。
【0230】
[硬化物の発泡の評価]
得られた硬化物を目視により評価し、表1では、発泡が見られなかったものを「無」、発泡が見られたものを「有」と記載した。
また、実施例8〜16および23〜24で得られた硬化物は、以下に示す方法で硬化物表面の平滑性を評価した。
【0231】
[硬化物表面の平滑性の評価]
得られた硬化物の表面を触指で確認し、表2および表4では、平滑性に優れるものを「○」、平滑性に特に優れるものを「◎」と記載した。
また、実施例11、13〜16および23〜24で得られた硬化物は、以下に示す方法で硬化物の欠けの無さを評価した。
【0232】
[硬化物の欠けの無さの評価]
得られた硬化物を目視により評価し、表4では、欠けの無さに優れるものを「○」、欠けの無さに特に優れるものを「◎」と記載した。
また、実施例3で得られた硬化物の耐熱性試験は、以下に示す方法で行った。
【0233】
[硬化物の耐熱性試験]
得られた硬化物を250℃にて2,000時間経過するまで加熱し、加熱前後の重量を測定することにより、加熱時間に対する重量変化率を評価した。その結果を図2に示す。
【0234】
(実施例1〜28および比較例1〜4)
表1に示すように、実施例1〜28に記載の本発明の硬化性樹脂組成物、および比較例1〜4に記載の本発明の範疇にない硬化性樹脂組成物を成形し、硬化物を作製した。硬化物のサイズおよび発泡の評価結果について、表1に示す。なお、評価に用いた硬化性樹脂組成物は、合成例1〜6で合成したポリシロキサン化合物(A−a)〜(A−f)と、所定のシリカと、所定の添加物を表1に記載の割合(質量部)で採取し調製した。
【0235】
(比較例5)
表1に示すように、比較例5に記載の本発明の範疇にない硬化性樹脂組成物を成形した。しかし、加熱処理後にバルク状の硬化物を得ることはできず、粉末として得られた。
【0236】
(参考例1)
表1の参考例1に示すように、ポリシロキサン化合物(A−a)のみを構成成分とする硬化性樹脂組成物を用いて、直径100mm、厚さ0.1mmの薄膜状の硬化物を作製した。
【0237】
【表1】
【0238】
表1の比較例1と参考例1に示すように、ポリシロキサン化合物(A−a)のみを用いて硬化物を作製した場合、参考例1の直径100mm、厚さ0.1mmのような薄膜状の硬化物では発泡が生じないのに対し、比較例1の直径21mm、厚さ15mmのような比較的サイズの大きい硬化物では発泡が生じた。また、直径21mm、厚さ15mmの硬化物を作製した場合、比較例1〜4の硬化物ではいずれも発泡が見られたのに対し、実施例1〜3、6〜7、17〜21および25〜28の硬化物ではいずれも発泡が見られなかった。さらに、実施例4〜5、8〜16および19〜24で示すように、添加物として顔料を加えた硬化性樹脂組成物から作製した硬化物においても、発泡が見られなかった。さらに、実施例22で示すように、添加物としてアンチブロッキング剤を加えた硬化性樹脂組成物から作製した硬化物においても、発泡が見られなかった。したがって、本発明の範疇にある硬化性樹脂組成物は、大きな厚さ、大きな面積に成形しても、発泡が生じない硬化物を与える。
【0239】
実施例1〜2および比較例2から示されるように、抽出水のpH値が同じシリカを用いても、ポリシロキサン化合物とシリカの組成の割合によって、硬化物中の発泡の有無に違いが見られた。
【0240】
一方、実施例1〜2および比較例3〜4から示されるように、ポリシロキサン化合物とシリカの組成比が同じであっても、抽出水のpH値が低いシリカを用いて作製された硬化物には発泡が見られなかったのに対し、抽出水のpH値が高いシリカを用いて作製された硬化物には発泡が見られた。
【0241】
実施例1〜28に示すように、硬化性樹脂組成物に含まれるポリシロキサン化合物として、含有する構造単位およびその組成比が異なるポリシロキサン化合物を用いても、その硬化性樹脂組成物から作製された硬化物には、発泡が見られなかった。
【0242】
実施例1〜28に示すように、注型成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法のいずれの成形方法を採用して硬化物を作製しても、発泡が見られなかった。
【0243】
(実施例8〜16:硬化物表面の平滑性の評価)
表1に記載の実施例のうち、トランスファー成形法により成形を行ったもの(実施例8〜16)について、硬化物の表面の平滑性を評価した。その結果を表2に示す。
【0244】
【表2】
【0245】
表2の実施例8および9から示されるように、シリカとして合成溶融シリカ(メジアン径24μm;製品名:ML−902SK)のみを用いた場合に得られた硬化物と、合成溶融シリカ(メジアン径24μm;製品名:ML−902SK)95質量%と爆燃法シリカ(メジアン径0.5μm;製品名:SO−C2)5質量%を含有させた混合シリカ(B−a)を用いた場合に得られた硬化物を比較すると、混合シリカ(B−a)を用いた場合には、得られた硬化物は表面の平滑性がより一層優れていた。また、実施例8および10から示されるように、混合シリカ(B−a)を用いた実施例10の方が、実施例8よりも成形温度が低いにもかかわらず、硬化物は表面の平滑性がより優れていた。したがって、シリカとして、粒子径の小さいシリカを含有させたものを用いたことで、シリカとして粒子径の大きいもののみを用いた場合よりも硬化速度が向上し、離型性の改善および成形温度の低温化が成し遂げられた。
【0246】
実施例10〜12に示すように、硬化性樹脂組成物における成分の組成比を変化させても、硬化物表面の平滑性は特に優れたものとなり、シリカとして、粒子径の小さいシリカを含有させたものを用いることによる硬化速度の向上の効果が確認された。同様にして、実施例11および13〜16に示すように、硬化物のサイズを変化させても同様の効果が確認された。
【0247】
(実施例11および22:タブレットの互着抑制の度合い、および形状保持性の評価)
表1に記載の実施例のうち、トランスファー成形法により成形を行ったもの(実施例11および22)について、タブレットの互着抑制の度合い、および形状保持性を評価した。その結果を表3に示す。
【0248】
【表3】
【0249】
表3の実施例11および22から示されるように、添加物としてアンチブロッキング剤を用いない場合に得られたタブレットと、添加物としてアンチブロッキング剤を用いた場合に得られたタブレットを比較すると、アンチブロッキング剤を用いた場合には、得られたタブレットの互着抑制の度合い、および形状保持性がより一層優れていた。
【0250】
(実施例11、13〜16および23〜24:硬化物表面の平滑性、および硬化物の欠けの無さの評価)
表1に記載の実施例のうち、トランスファー成形法により成形を行ったもの(実施例11、13〜16および23〜24)について、硬化物表面の平滑性、および硬化物の欠けの無さを評価した。その結果を表4に示す。
【0251】
【表4】
【0252】
表4の実施例11、13〜16および23から示されるように、スパイラルフローが80cmとなるように調節した硬化性樹脂組成物を用いた場合に得られた硬化物と、スパイラルフローが8cmとなるように調節した硬化性樹脂組成物を用いた場合に得られた硬化物を比較すると、硬化性樹脂組成物の組成が同じであるにもかかわらず、スパイラルフローが80cmとなるように調節した硬化性樹脂組成物を用いた場合には、得られた硬化物は欠けの無さがより一層優れていた。
【0253】
表4の実施例11、13〜16および24から示されるように、スパイラルフローが80cmとなるように調節した硬化性樹脂組成物を用いた場合に得られた硬化物と、スパイラルフローが134cmとなるように調節した硬化性樹脂組成物を用いた場合に得られた硬化物を比較すると、硬化性樹脂組成物の組成が同じであるにもかかわらず、スパイラルフローが80cmとなるように調節した硬化性樹脂組成物を用いた場合には、得られた硬化物は表面の平滑性がより一層優れていた。
【0254】
表4の実施例11および13〜16から示されるように、スパイラルフローが80cmとなるように調節した硬化性樹脂組成物を用いた場合に得られた硬化物は、硬化物のサイズを変化させても硬化物表面の平滑性、および硬化物の欠けの無さともに特に優れていた。
【0255】
また、図2に示すように、実施例3で得られた硬化物では、250℃で2,000時間という長時間加熱した後においても、重量変化率は−0.55質量%であり、実質的に重量減少が起こらなかった。
【符号の説明】
【0256】
1…パワー半導体素子
2…封止材
3…引き出し配線
4…ワイヤー配線
5…ベース基板
6…絶縁基板
10…パワー半導体装置
図1
図2