特許第6497327号(P6497327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497327
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】給電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/08 20060101AFI20190401BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190401BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20190401BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H02H3/08 A
   H02J7/00 S
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-8108(P2016-8108)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-131021(P2017-131021A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】杉沢 佑樹
【審査官】 阿部 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−149531(JP,A)
【文献】 特開2012−244605(JP,A)
【文献】 特開2015−002661(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/109364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08−3/253
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00−7/12;7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから負荷への給電経路に設けられたスイッチをオン又はオフに切替え、前記バッテリから給電されるスイッチ制御部と、該バッテリから前記スイッチ制御部を介して流れた電流が出力される出力端子とを備える給電制御装置において、
前記スイッチ制御部及び出力端子間に接続され、所定電流以上である電流が流れた場合に溶断される溶断部と、
前記バッテリから前記スイッチ及びスイッチ制御部夫々へ流れる電流の電流経路に設けられたバッテリ導体と、
該バッテリ導体が形成されているバッテリ基板と、
前記溶断部から前記出力端子へ流れる電流の電流経路に設けられた出力導体と、
該出力導体が形成されている出力基板と
を備え、
前記バッテリから前記スイッチ制御部に給電されている間、電流が前記バッテリから前記スイッチ制御部、溶断部及び出力端子の順に流れ
前記バッテリ基板及び出力基板は間隔を隔てて重なり合っており、
前記出力導体は、前記バッテリ基板にて、前記バッテリ導体が形成されている部分を除く他の部分と対向していること
を特徴とする給電制御装置。
【請求項2】
前記スイッチ制御部から前記溶断部に流れる電流の電流経路に設けられた中間導体と、
該中間導体が形成されている中間基板と
を備え、
前記出力基板及び中間基板は間隔を隔てて重なり合っており、
前記出力導体は、前記中間基板にて、前記中間導体が形成されている部分を除く他の部分と対向していること
を特徴とする請求項1に記載の給電制御装置。
【請求項3】
前記溶断部は、該溶断部に前記所定電流以上である電流が流れた場合に溶断される複数の溶断素子を有し、
該複数の溶断素子は相互に並列に接続されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリから負荷への給電を制御する給電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、バッテリから負荷への給電を制御する給電制御装置が搭載されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の給電制御装置では、バッテリの正極と負荷の一端との間にスイッチが接続されており、バッテリの負極と負荷の他端とは接地されている。特許文献1に記載の給電制御装置は、スイッチをオン又はオフに切替えるスイッチ制御部を備える。スイッチ制御部は、スイッチをオン又はオフに切替えることによって、バッテリから負荷への給電を制御する。
【0003】
バッテリの正極には、スイッチ制御部が更に接続されており、バッテリからスイッチ制御部に給電される。このとき、電流はバッテリの正極からスイッチ制御部を介して出力端子に流れる。出力端子は接地されており、出力端子から流れた電流は、接地されているバッテリの負極に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4473294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような従来の給電制御装置として、バッテリの正極と、スイッチ制御部と、スイッチの一端とがバッテリ導体によって接続され、スイッチ制御部と、出力端子とが出力導体によって接続されている給電制御装置がある。この給電制御装置では、スイッチがオンである場合、電流が、バッテリの正極から、バッテリ導体、スイッチ及び負荷の順に流れ、負荷に給電される。また、スイッチがオンであるか否かに無関係に、電流は、バッテリの正極から、バッテリ導体、スイッチ制御部、出力導体及び出力端子の順に流れ、バッテリからスイッチ制御部に給電される。
【0006】
バッテリ導体及び出力導体を備える給電制御装置として、バッテリ導体が形成されているバッテリ基板と、出力導体が形成されている出力基板とが樹脂を挟んで重なり合っている給電制御装置がある。この給電制御装置において、故障によってスイッチがオン状態に維持された場合、スイッチに大きな電流が流れ続ける。スイッチは例えば出力基板に設置されている。
【0007】
ここで、スイッチがFET(Field Effect Transistor)又はバイポーラトランジスタ等の半導体スイッチである場合、スイッチは大きな熱を発し続ける。スイッチが発する熱によって樹脂が溶解してバッテリ導体及び出力導体が接触した場合、バッテリの正極と出力端子とが短絡され、バッテリの正極及び出力端子間に過電流が流れる。これにより、種々の問題が発生する可能性がある。
【0008】
通常、バッテリの正極とバッテリ導体との間にはヒューズが搭載されている。一定電流以上である電流がヒューズに流れた場合、ヒューズは溶断される。このため、バッテリから、一定電流以上である電流が流れることはない。
【0009】
しかしながら、バッテリ基板及び出力基板が間隔を隔てて重なり合っている給電制御装置では、ヒューズが溶断される前に、樹脂が溶解し、バッテリ導体及び出力導体が接触し、バッテリの正極と出力端子とが短絡する虞がある。通常、スイッチ制御部を介して流れる電流は、スイッチを介して負荷に流れる電流よりも小さいので、スイッチ制御部への給電には、スイッチに接続される導線よりも細くて、大きな抵抗値を有する導線が用いられる。バッテリの正極と出力端子とが短絡した場合、ヒューズの作用により、一定電流以上である電流がバッテリの正極及び出力端子間には流れることはない。しかし、スイッチ制御部への給電に、細くて大きな抵抗値を有する導線が用いられている場合、一定電流未満である電流が過電流として該導線を通流する虞がある。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッテリの一端と出力端子とが短絡する確率が低い給電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る給電制御装置は、バッテリから負荷への給電経路に設けられたスイッチをオン又はオフに切替え、前記バッテリから給電されるスイッチ制御部と、該バッテリから前記スイッチ制御部を介して流れた電流が出力される出力端子とを備える給電制御装置において、前記スイッチ制御部及び出力端子間に接続され、所定電流以上である電流が流れた場合に溶断される溶断部と、前記バッテリから前記スイッチ及びスイッチ制御部夫々へ流れる電流の電流経路に設けられたバッテリ導体と、該バッテリ導体が形成されているバッテリ基板と、前記溶断部から前記出力端子へ流れる電流の電流経路に設けられた出力導体と、該出力導体が形成されている出力基板とを備え、前記バッテリから前記スイッチ制御部に給電されている間、電流が前記バッテリから前記スイッチ制御部、溶断部及び出力端子の順に流れ、前記バッテリ基板及び出力基板は間隔を隔てて重なり合っており、前記出力導体は、前記バッテリ基板にて、前記バッテリ導体が形成されている部分を除く他の部分と対向していることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、電流が、バッテリから、スイッチ制御部、溶断部及び出力端子の順に流れ、バッテリからスイッチ制御部に給電される。スイッチ制御部及び出力端子が溶断部を介して接続されているため、装置内で出力端子に直接に接続される導体として、面積が小さい導体を用いることが可能である。この場合、バッテリの一端に接続されている導体と出力端子に接続されている導体とが接触する確率が低いので、バッテリの一端と出力端子とが短絡する確率が低い。
【0013】
溶断部及びスイッチ制御部間を接続する導体と、バッテリの一端に接続されている導体とが接触した場合、電流は、バッテリから溶断部及び出力端子の順に流れる。所定電流以上である電流が溶断部に流れた場合、溶断部は溶断される。従って、溶断部及びスイッチ制御部間を接続する導体と、バッテリの一端に接続している導体とが接触した場合に、所定電流以上である電流がバッテリ及び出力端子間を流れることはない。
【0015】
また、出力基板に形成されている出力導体は、バッテリ基板において、バッテリ導体が形成されている部分を除く他の部分と対向している。このため、出力基板及びバッテリ基板に挟まれている樹脂が溶解して出力基板及びバッテリ基板が接触した場合であっても、出力導体及びバッテリ導体が接触する確率は低い。従って、バッテリの一端と出力端子とが接触する確率が更に低い。
【0016】
本発明に係る給電制御装置は、前記スイッチ制御部から前記溶断部に流れる電流の電流経路に設けられた中間導体と、該中間導体が形成されている中間基板とを備え、前記出力基板及び中間基板は間隔を隔てて重なり合っており、前記出力導体は、前記中間基板にて、前記中間導体が形成されている部分を除く他の部分と対向していることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、出力基板に形成されている出力導体は、中間基板において、中間導体が形成されている部分を除く他の部分と対向している。このため、バッテリ基板、中間基板及び出力基板中の2つによって挟まっている2つの樹脂が溶解してバッテリ基板、中間基板及び出力基板中の隣り合う2つの基板が接触した場合であっても、バッテリ導体と中間導体とが接触し、かつ、中間導体と出力導体とが接触して、バッテリの一端と出力端子とが短絡する確率は低い。
【0018】
本発明に係る給電制御装置は、前記溶断部は、該溶断部に前記所定電流以上である電流が流れた場合に溶断される複数の溶断素子を有し、該複数の溶断素子は相互に並列に接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、スイッチ制御部及び出力端子間が複数の溶断素子によって接続されているため、複数の溶断素子中の1つが欠損した場合であっても、バッテリからスイッチ制御部への給電が継続され、スイッチ制御部は作動し続ける。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶断部を介してスイッチ制御部及び出力端子を接続しているため、バッテリの一端と出力端子とが短絡する確率が低い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態における電源システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】給電制御装置の外観を示す斜視図である。
図3】第1回路基板、バッテリ基板及び中間基板夫々の平面図である。
図4】給電制御装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本実施の形態における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は、車両に好適に搭載されており、バッテリ2、負荷3a,3b、給電制御装置4及びヒューズF1を備える。給電制御装置4は、バッテリ端子40、負荷端子41a,41b及びGND端子42を有する。バッテリ2の正極はヒューズF1を介して給電制御装置4のバッテリ端子40に接続されている。給電制御装置4の負荷端子41a,41b夫々は負荷3a,3bの一端に接続されている。バッテリ2の負極と、負荷3a,3b夫々の他端と、給電制御装置4のGND端子42とは接地されている。
【0023】
バッテリ2は、ヒューズF1を介して給電制御装置4に給電すると共に、ヒューズF1及び給電制御装置4を介して負荷3a,3bに給電する。バッテリ2が給電している場合、バッテリ2の正極から、ヒューズF1を介して給電制御装置4のバッテリ端子40に電流が入力され、負荷端子41a,41b及びGND端子42の少なくとも1つから電流が出力される。ヒューズF1に一定電流以上である電流が流れた場合、ヒューズF1は溶断される。
【0024】
バッテリ2から給電制御装置4に給電されている間、給電制御装置4は作動する。給電制御装置4は、バッテリ2から負荷3a,3bへの給電を各別に制御する。例えば、負荷3a,3bの中で作動すべき作動負荷と停止すべき停止負荷とが示されている負荷信号が給電制御装置4に入力されている場合、給電制御装置4は、入力された負荷信号の内容に基づいて、バッテリ2から負荷3a,3bへの給電を制御する。
【0025】
負荷3a,3b夫々は車両に搭載された電気機器である。負荷3a,3b夫々は、バッテリ2から給電されている場合に作動し、バッテリ2からの給電が停止している場合に動作を停止する。
【0026】
給電制御装置4は、更に、バッテリ導体50、中間導体51、GND導体52、スイッチ53a,53b、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)54、レギュレータ55、溶断部56、キャパシタC1,C2、ダイオードD1,D2、抵抗R1及びツェナーダイオードZ1を有する。スイッチ53a,53b夫々は、Nチャネル型のFETである。溶断部56は、キャパシタC3及び抵抗R2,R3を有する。
【0027】
バッテリ端子40にはバッテリ導体50が接続されている。バッテリ導体50は、スイッチ53a,53b夫々のドレインと、キャパシタC1の一端と、ダイオードD1のアノードとに各別に接続されている。スイッチ53a,53b夫々のソースは負荷端子41a,41bに接続されている。スイッチ53a,53b夫々のゲートはマイコン54に各別に接続されている。
【0028】
ダイオードD1のカソードは、抵抗R1の一端と、ツェナーダイオードZ1のカソードとに接続されている。抵抗R1の他端は、レギュレータ55と、キャパシタC2の一端とに接続されている。レギュレータ55は、更に、中間導体51とマイコン54とに各別に接続されている。マイコン54は更に中間導体51に接続されている。中間導体51は、更に、キャパシタC2の他端と、溶断部56が有するキャパシタC3及び抵抗R2,R3夫々の一端とが接続されている。GND端子42と、キャパシタC1,C3及び抵抗R2,R3夫々の他端と、ダイオードD2及びツェナーダイオードZ1夫々のアノードとがGND導体52に接続されている。ダイオードD2のカソードは負荷端子41aに接続されている。
以上のように、溶断部56の一端は、中間導体51を介してマイコン54に接続されており、溶断部56の他端は、GND導体52を介してGND端子42に接続されている。
【0029】
スイッチ53a,53b夫々について、ゲートの電圧が一定電圧以上である場合、ドレイン及びソース間に電流が流れることが可能である。このとき、スイッチ53a,53b夫々はオンである。また、スイッチ53a,53b夫々について、ゲートの電圧が一定電圧未満である場合、ドレイン及びソース間に電流が流れることはない。このとき、スイッチ53a,53b夫々はオフである。マイコン54は、中間導体51の電位を基準として、スイッチ53a,53b夫々のゲートの電圧を各別に調整する。これにより、マイコン54は、スイッチ53a,53bを各別にオン又はオフに切替える。
【0030】
マイコン54は、例えば、前述した負荷信号の内容に基づいて、スイッチ53a,53bを各別にオン又はオフに切替える。マイコン54はスイッチ制御部として機能する。
【0031】
マイコン54がスイッチ53aをオンに切替えた場合、電流は、バッテリ2の正極から、ヒューズF1、バッテリ端子40、バッテリ導体50、スイッチ53a、負荷端子41a及び負荷3aの順に流れ、バッテリ2から負荷3aに給電される。従って、バッテリ2の正極から負荷3aの一端への給電経路にスイッチ53aが設けられており、バッテリ2の正極からスイッチ53aのドレインへ流れる電流の電流経路にバッテリ導体50が設けられている。バッテリ2から負荷3aに給電されている間、負荷3aは作動する。
マイコン54がスイッチ53aをオフに切替えた場合、バッテリ2から負荷3aへの給電は停止され、負荷3aは動作を停止する。
【0032】
同様に、マイコン54がスイッチ53bをオンに切替えた場合、電流は、バッテリ2の正極から、ヒューズF1、バッテリ端子40、バッテリ導体50、スイッチ53b、負荷端子41b及び負荷3bの順に流れ、バッテリ2から負荷3bに給電される。従って、バッテリ2の正極から負荷3bの一端への給電経路にスイッチ53bが設けられており、バッテリ2の正極からスイッチ53bのドレインへ流れる電流の電流経路にバッテリ導体50が設けられている。バッテリ2から負荷3bに給電されている間、負荷3bは作動する。
マイコン54がスイッチ53bをオフに切替えた場合、バッテリ2から負荷3bへの給電は停止され、負荷3bは動作を停止する。
【0033】
給電制御装置4では、更に、電流が、バッテリ2の正極から、ヒューズF1、バッテリ端子40、バッテリ導体50、ダイオードD1、抵抗R1、レギュレータ55、マイコン54、中間導体51、溶断部56、GND導体52及びGND端子42の順に流れる。キャパシタC2は、バッテリ2がヒューズF1、バッテリ端子40、バッテリ導体50、ダイオードD1及び抵抗R1を介して出力した電圧を平滑し、平滑した電圧をレギュレータ55に出力する。キャパシタC2がレギュレータ55に出力する電圧は、中間導体51の電位を基準とした電圧である。
【0034】
レギュレータ55は、キャパシタC2から入力された電圧から所定電圧を生成し、生成した所定電圧をマイコン54に出力する。レギュレータ55がマイコン54に出力する所定電圧も中間導体51の電位を基準とした電圧である。レギュレータ55がマイコン54に所定電圧を出力することによって、マイコン54に給電される。
【0035】
以上のように、バッテリ2からマイコン54に給電される。バッテリ2からマイコン54に給電されている間、電流がバッテリ2の正極からバッテリ端子40、バッテリ導体50、ダイオードD1、抵抗R1、レギュレータ55、マイコン54、中間導体51、溶断部56、GND導体52及びGND端子42の順に流れる。ここで、GND導体52介して流れた電流は、GND端子42から、GND端子42と同様に接地されているバッテリ2の負極に出力される。GND端子42は出力端子として機能する。
【0036】
また、バッテリ2の正極からマイコン54へ流れる電流の電流経路にバッテリ導体50が設けられている。マイコン54から溶断部56へ流れる電流の電流経路に中間導体51が設けられている。溶断部56からGND端子42へ流れる電流の電流経路にGND導体52が設けられている。GND導体52は出力導体として機能する。
【0037】
ダイオードD1はキャパシタC2からバッテリ2への逆流を防止する。抵抗R1はレギュレータ55及びキャパシタC2に流れる電流を制限する。ツェナーダイオードZ1は、GND導体52の電位を基準としたダイオードD1のカソードの電圧を制限する。具体的には、GND導体52の電位を基準としたダイオードD1のカソードの電圧がツェナーダイオードZ1の降伏電圧となった場合、電流が、ダイオードD1のカソードから、ツェナーダイオードZ1、GND導体52及びGND端子42の順に流れる。このため、GND導体52の電位を基準として、ダイオードD1のカソードの電圧がツェナーダイオードZ1の降伏電圧を超えることはない。ツェナーダイオードZ1は、ダイオードD1のカソードの電圧を、GND導体52の電位を基準として、ゼロVからツェナーダイオードZ1の降伏電圧までの範囲内に維持する。
【0038】
所定電流以上である電流が中間導体51から溶断部56に流れた場合、キャパシタC3及び抵抗R2,R3夫々が溶断される。これにより、溶断部56が溶断される。溶断部56が溶断された場合、中間導体51から溶断部56を介してGND導体52に電流が流れることはない。
【0039】
キャパシタC3及び抵抗R2,R3夫々は、自身に閾値電流以上である電流が流れた場合に溶断される。キャパシタC3及び抵抗R2,R3夫々に対応する3つの閾値電流の大きさは、同一であってもよい。また、3つの閾値電流中で、2つの閾値電流の大きさが同一であり、残り1つの閾値電流の大きさが他の2つの閾値電流と異なっていてもよい。更に、3つの閾値電流は相互に異なっていてもよい。
【0040】
溶断部56に所定電流以上である電流が流れた場合にキャパシタC3及び抵抗R2,R3の全てが溶断される限り、キャパシタC3及び抵抗R2,R3が溶断される順序については自由度を持って溶断部56を設計することができる。
【0041】
例えば、以下の順序でキャパシタC3及び抵抗R2,R3が溶断される溶断部56を設計してもよい。溶断部56に所定電流以上である電流が流れた場合に、まず、キャパシタC3にキャパシタC3に対応する閾値電流以上である電流が流れてキャパシタC3が溶断される。キャパシタC3の溶断により、抵抗R2に流れる電流が、抵抗R2に対応する閾値電流以上となり、抵抗R2が溶断される。抵抗R2の溶断により、抵抗R3に流れる電流が、抵抗R3に対応する閾値電流以上となり、抵抗R3が溶断される。
また、溶断部56に所定電流以上である電流が流れた場合に、キャパシタC3及び抵抗R2,R3夫々に閾値電流以上である電流が略同時に流れて溶断されるように溶断部56を設計してもよい。
【0042】
溶断部56では、キャパシタC3及び抵抗R2,R3は相互に並列に接続されており、キャパシタC3は、中間導体51及びGND導体52間の電圧を安定させる機能を有する。溶断部56では、閾値以上である電流が流れた場合に溶断される溶断素子の数が3であり、2以上である。このため、キャパシタC3及び抵抗R2,R3中の1つが欠損した場合であっても、電流が中間導体51から溶断部56を介してGND導体52に流れることが可能であり、バッテリ2からマイコン54への給電が継続され、マイコン54は作動し続ける。溶断素子の1つが欠損した場合に、溶断部56が溶断される所定電流が小さくなる可能性がある。
【0043】
キャパシタC1は、バッテリ2の正極及びバッテリ導体50間で重畳した外乱ノイズを除去する。ダイオードD2は、負荷3aでサージ電圧を発生することを防止する。例えば、負荷3aが図示しないインダクタを有する場合において、スイッチ53aがオフに切替わってバッテリ2から負荷3aへの給電が停止したとき、インダクタは自身に流れている電流の大きさを維持すべく、負荷3aの一端の電位を基準とした負荷3aの他端の電圧を上昇させる。このとき、電流は、負荷3aの他端から、GND端子42、GND導体52、ダイオードD2及び負荷端子41aの順に流れ、負荷3aの一端に戻る。このため、負荷3aの両端間の電圧がダイオードD2の両端間の電圧以上に上昇することはない。
【0044】
図2は給電制御装置4の外観を示す斜視図である。給電制御装置4は、更に、第1回路基板61、第2回路基板62、バッテリ基板63、中間基板64、絶縁性の樹脂65,66,67及びコネクタ68を有する。第1回路基板61、第2回路基板62、バッテリ基板63及び中間基板64夫々は、所謂、プリント基板であり、平板状をなしている。第1回路基板61、第2回路基板62、バッテリ基板63及び中間基板64は、第1回路基板61、バッテリ基板63、中間基板64及び第2回路基板62の順に並置されている。並置方向は、第1回路基板61、第2回路基板62、バッテリ基板63及び中間基板64夫々の板面に垂直な方向と略一致している。第1回路基板61は、第2回路基板62、バッテリ基板63及び中間基板64夫々と間隔を隔てて重なり合っている。
【0045】
第1回路基板61及びバッテリ基板63によって樹脂65が挟持されている。バッテリ基板63及び中間基板64によって樹脂66が挟持されている。第2回路基板62及び中間基板64によって樹脂67が挟持されている。
第1回路基板61、バッテリ基板63及び中間基板64夫々の同一側の一面には、GND導体52、バッテリ導体50及び中間導体51が形成されている。
【0046】
例えば、故障により、第1回路基板61又は第2回路基板62に設けられたスイッチ53a,53bの少なくとも一方がオン状態に維持された場合、オン状態であるスイッチは大きな熱を発し続ける。樹脂65,66,67夫々は、例えば、このスイッチが発する熱によって溶解する。
【0047】
第1回路基板61にはコネクタ68が設置されている。コネクタ68内には、バッテリ端子40、負荷端子41a,41b及びGND端子42が設けられている。バッテリ端子40、負荷端子41a,41b及びGND端子42夫々には導線が接続されている。バッテリ端子40及び負荷端子41a,41b夫々は、導線によって、ヒューズF1及び負荷3a,3bに接続されている。GND端子42は導線によって接地されている。
【0048】
スイッチ53a,53b、マイコン54、レギュレータ55、溶断部56、キャパシタC1,C2、ダイオードD1,D2、抵抗R1及びツェナーダイオードZ1夫々は、第1回路基板61又は第2回路基板62の一面に設置されている。バッテリ端子40、負荷端子41a,41b、GND端子42、バッテリ導体50、中間導体51、GND導体52、スイッチ53a,53b、マイコン54、レギュレータ55、溶断部56、キャパシタC1,C2、ダイオードD1,D2、抵抗R1及びツェナーダイオードZ1に関しては、スルーホール、及び、第1回路基板61又は第2回路基板62に形成された導線等によって接続が行われている。
【0049】
図3は、第1回路基板61、バッテリ基板63及び中間基板64夫々平面図である。第1回路基板61、バッテリ基板63及び中間基板64夫々の板面は矩形状をなしている。第1回路基板61、バッテリ基板63及び中間基板64夫々の縦及び横の寸法は略同一である。図3において、第2回路基板62の図示を省略している。第2回路基板62の板面も矩形状をなし、第2回路基板62の縦及び横の寸法は、第1回路基板61、バッテリ基板63及び中間基板64夫々の縦及び横の寸法と略同一である。
【0050】
GND導体52は、矩形状をなし、第1回路基板61の角部分(左上部分)に形成されている。第1回路基板61は出力基板として機能する。第1回路基板61において、GND導体52が形成されている部分を除く他の部分に、スイッチ53a,53b、マイコン54、レギュレータ55、溶断部56、キャパシタC1,C2、ダイオードD1,D2、抵抗R1及びツェナーダイオードZ1中の一又は複数の素子が設置されている。
なお、図3において、コネクタ68の図示も省略している。
【0051】
バッテリ導体50は、バッテリ基板63において、角部分(図3の左上部分)を除く他の部分に形成されている。中間導体51は、中間基板64において、角部分(図3の左上部分)を除く他の部分に形成されている。
【0052】
図4は給電制御装置4の平面図である。図4には、バッテリ導体50、中間導体51及びGND導体52の配置が概略的に示されている。バッテリ導体50の配置は破線で示されている。中間導体51の配置は一点鎖線で示されている。
【0053】
図4に示すように、GND導体52は、バッテリ基板63において、バッテリ導体50が形成されている部分を除く他の部分と対向している。また、GND導体52は、中間基板64において、中間導体51が形成されている部分を除く他の部分と対向している。
【0054】
以上のように構成された給電制御装置4においては、マイコン54、レギュレータ55、及び、キャパシタC2の他端夫々は、溶断部56を介してGND端子42に接続されている。このため、給電制御装置4では、マイコン54と、レギュレータ55と、キャパシタC2の一端とがGND導体に直接に接続している給電制御装置のGND導体の面積よりも面積が小さい導体を、GND導体52として用いることができる。この場合、樹脂65が溶解したときに、バッテリ導体50とGND導体52とが接触する確率が低いので、バッテリ2の正極とGND端子42とが短絡する確率が低い。
【0055】
樹脂66の溶解によって、バッテリ導体50及び中間導体51が接触した場合、電流は、バッテリ2の正極から、ヒューズF1、バッテリ端子40、バッテリ導体50、中間導体51、溶断部56、GND導体52及びGND端子42の順に流れ、バッテリ2の負極に戻る。前述したように、所定電流以上である電流が溶断部56に流れた場合、溶断部56は溶断される。このため、バッテリ導体50及び中間導体51が接触した場合に、所定電流以上である電流がバッテリ2の正極と、GND端子42との間を流れることはない。
給電制御装置4では、バッテリ導体50及び中間導体51が接触した場合、ヒューズF1が溶断される前に、溶断部56が溶断されるように構成されている。即ち、ヒューズF1に係る一定電流は、溶断部56に係る所定電流よりも大きい。
【0056】
また、前述したように、第1回路基板61に形成されているGND導体52は、バッテリ基板63において、バッテリ導体50が形成されている部分を除く他の部分と対向している。このため、樹脂65が溶解して第1回路基板61及びバッテリ基板63が接触した場合であっても、バッテリ導体50及びGND導体52が接触する確率は低い。このため、バッテリ2の正極とGND端子42とが接触する確率は更に低い。
【0057】
より厳密には、GND導体52と、GND導体52に直接に接続されている導線とが、バッテリ基板63において、バッテリ導体50と、バッテリ導体50に接続されている導線とが形成されている部分を除く他の部分と対向していることが好ましい。この場合、バッテリ2の正極とGND端子42とが接触する確率が更に下がる。
【0058】
更に、前述したように、第1回路基板61に形成されているGND導体52は、中間基板64において、中間導体51が形成されている部分を除く他の部分と対向している。このため、樹脂65,66が溶解して第1回路基板61、バッテリ基板63及び中間基板64が接触した場合であっても、バッテリ導体50と中間導体51とが接触し、かつ、中間導体51及びGND導体52とが接触して、バッテリ2の正極とGND端子42とが短絡する確率は低い。
【0059】
より厳密には、GND導体52と、GND導体52に接続されている導線とが、中間基板64において、中間導体51と、中間導体51に直接に接続されている部分を除く部分と対向していることが好ましい。この場合、バッテリ2の正極とGND端子42とが接触する確率が更に下がる。
【0060】
なお、並置されている第1回路基板61、第2回路基板62、バッテリ基板63及び中間基板64の順序は、第1回路基板61、バッテリ基板63、中間基板64及び第2回路基板62の順に限定されない。第1回路基板61が、第2回路基板62、バッテリ基板63及び中間基板64夫々と間隔を隔てて重なり合っていればよい。
【0061】
また、溶断部56を構成する複数の溶断素子夫々は、抵抗又はキャパシタに限定されず、ヒューズ又はインダクタ等であってもよい。溶断部56を構成する3つの溶断素子は、2つの抵抗及び1つのキャパシタに限定されず、例えば、3つの抵抗であってもよい。溶断部56では、閾値電流以上である電流が流れた場合に溶断する溶断素子が並列に接続されていればよい。更に、溶断部56を構成する溶断素子の数は、3に限定されず、1、2又は4以上であってもよい。
【0062】
更に、GND導体52、バッテリ導体50及び中間導体51夫々は、第1回路基板61、バッテリ基板63及び中間基板64夫々の同一側の一面に形成されていなくてもよい。
【0063】
開示された本実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
2 バッテリ
3a,3b 負荷
4 給電制御装置
42 GND端子(出力端子)
50 バッテリ導体
51 中間導体
52 GND導体(出力導体)
53a,53b スイッチ
54 マイコン(スイッチ制御部)
56 溶断部
61 第1回路基板(出力基板)
63 バッテリ基板
64 中間基板
C3 キャパシタ(溶断素子)
R2,R3 抵抗(溶断素子)
図1
図2
図3
図4