(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタが、当該フィルタを透過した透過光における、200nm〜230nmの波長域の光に対する400nm超〜500nmの波長域の光の比率が0.18以下のものであることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
前記フィルタが、当該フィルタを透過した透過光における、200nm〜230nmの波長域の光に対する701nm〜800nmの波長域の光の比率が0.05以下のものであることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の殺菌装置の実施の形態について説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る殺菌装置の構成の一例を示す模式図である。
第1の実施形態に係る殺菌装置1は、ショートアーク型放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」ともいう。)11および当該放電ランプ11の周囲を取り囲むよう配置された反射鏡12を有する集光光学系よりなる光源部10と、200nm〜230nmの波長域の光(以下、「特定波長光A」ともいう。)を透過させ、230nm超〜400nmの波長域の光(以下、「特定波長光B」ともいう。)をカットすると共に、400nm超〜500nmの波長域の光(以下、「特定波長光C」ともいう。)を減衰させる光学フィルタ20とを備えている。この殺菌装置1においては、光学フィルタ20を透過した光が生体組織に照射される。
【0015】
本発明の殺菌装置1における光源部10を構成する放電ランプ11としては、200nm〜500nmの波長域にわたって連続スペクトルを有する光を放射するものを用いることができる。
【0016】
放電ランプ11は、いわゆる両端封止型のものであって、発光空間S1を形成する例えば楕円球形状の発光管部14と、発光管部14の両端に連続して管軸方向に沿ってそれぞれ外方に延びる封止管部15,16を有する、例えば合成石英ガラス(Suprasil F310)よりなるバルブを備えている。
発光管部14の内部には、一対の電極である陽極18および陰極19が互いに対向して配置されている。ここに、陽極18と陰極19との電極間距離は、例えば1〜10mmである。
【0017】
また、発光管部14内には、発光ガスとして水銀が封入されている。
発光ガスの封入圧(水銀蒸気圧)は、例えば1×10
7 Paである。
【0018】
陽極18は、例えばタングステンにより構成されている。
陰極19は、例えば酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)などの易電子放射性物質(エミッタ物質)が含浸されたタングステン焼結体により構成されている。
【0019】
上記の放電ランプ11においては、陽極18および陰極19が、それぞれ給電手段(図示せず)に接続されており、図示しない点灯回路によって、陽極18および陰極19の間に所定の大きさの電圧が印加されると、陰極19と陽極18との間でアーク放電が生じ、当該放電ランプ11が点灯される。
【0020】
反射鏡12は、放電ランプ11の陰極19側において、発光管部14の周囲を取り囲むよう配置されている。
具体的には、例えば、頂部にランプ挿入用開口部12aが形成された、第1焦点および第2焦点を有する楕円面反射鏡により構成されており、その内表面に反射面12bが形成されて構成されている。
反射鏡12は、ランプ挿入用開口部12a内に放電ランプ11の陰極19側の封止管部16が挿入され、光軸Xが放電ランプ11のランプ中心軸Cと一致し、第1焦点の位置が陽極18と陰極19の電極間中心位置(発光点)と一致する状態で、配置されている。
【0021】
反射面12bは、特定波長光Aを含む230nm以下の波長域の紫外線および特定波長光Cについての反射性を有するものであればよく、230nm以下の波長域の紫外線に対する反射率を高めるという観点から、例えばアルミニウムなどによる金属蒸着膜や誘電体多層膜より構成されることが好ましい。
【0022】
本発明の殺菌装置1から出射された光は、光ファイバなどの入射光学系40に入射されるが、この入射光学系40は、当該入射光学系40の入射端面40aの中心が、反射鏡12の反射面12bの第2焦点の位置と一致する位置に、配置される。
【0023】
そして、本発明の殺菌装置1においては、光源部10の放電ランプ11から放射され、反射鏡12によって反射された光が、当該反射鏡12の第2焦点に集光されるまでの光路上に光学フィルタ20が配置される。具体的には、例えば円盤状の光学フィルタ20が、反射鏡12における放電ランプ11の陽極18側の開口を塞ぐ状態に設けられる。
【0024】
この光学フィルタ20は、特定波長光Aを透過させ、特定波長光Bをカットすると共に、特定波長光Cを減衰させるものであり、例えば、特定波長光Bを吸収する第1減衰フィルタと、特定波長光Cを吸収する第2減衰フィルタとからなるものとすることができる。光学フィルタ20は、具体的には、例えば第1減衰フィルタおよび第2減衰フィルタが同一のガラス基材上に積層して設けられたものとして構成される。
第1減衰フィルタとしては、例えば中心波長が214nmのバンドパスフィルタであって、特定波長光Bに対するOD(Optical Density)値が4.0以上であるものを用いることができる。
第2減衰フィルタとしては、カットオン/カットオフ波長が400nmのショートパスフィルタであって、特定波長光Cに対するOD値が2.0以上、ブロック波長帯レンジが400nm〜500nmであるものを用いることができる。
【0025】
光学フィルタ20の第1減衰フィルタは、特定波長光Bを反射する性質のものであってもよい。しかしながら、反射された特定波長光Bは放電ランプ11のバルブに照射されてしまうので、バルブの劣化が早期に進行してしまうという理由から、第1減衰フィルタは特定波長光Bを吸収する性質のものであることが好ましい。
【0026】
また、光学フィルタ20は、当該光学フィルタ20を透過した透過光における、特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率が0.18以下のものであることが好ましい。特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率の下限は、光学フィルタ20から出射された光が生体組織に照射されるところを肉眼で直接視認する場合と、内視鏡のカメラ等に接続されたモニタを介して視認する場合とによって異なり、さらに、内視鏡のカメラの感度等の性能によっても異なるが、視認したときに視認者が光を感知可能である程度であればよい。具体的には、0.0001以上であることが好ましい。特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率は、光学フィルタ20を透過した透過光のスペクトルにおける波長に対して積算した面積比で表される。
特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率が過大である場合は、生体組織に対して青色光が強く照射されることとなり、動物細胞に対する高い安全性を確保することができなくなるおそれがある。また、特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率が過小である場合は、照射対象部位を確実に視認することができず、紫外線照射範囲の把握が不十分となるおそれがある。
【0027】
また、光学フィルタ20は、当該光学フィルタ20を透過した透過光における、特定波長光Aに対する701nm〜800nmの波長域の光(以下、「特定波長光D」ともいう。)の比率が0.05以下のものであることが好ましい。
特定波長光Aに対する特定波長光Dの比率が過大である場合は、生体組織に対して近赤外光が照射されることとなり、動物細胞に対する高い安全性を確保することができなくなるおそれがある。
【0028】
本明細書において、200nm〜500nmの波長域とは、λを波長とするとき、200nm≦λ≦500nmの波長域を示すものである。また、200nm〜230nmの波長域とは、λを波長とするとき、200nm≦λ≦230nmの波長域を示すものである。また、230nm超〜400nmの波長域とは、λを波長とするとき、230nm<λ≦400nmの波長域を示すものである。また、400nm超〜500nmの波長域とは、λを波長とするとき、400nm<λ≦500nmの波長域を示すものである。また、701nm〜800nmの波長域とは、λを波長とするとき、701nm≦λ≦800nmの波長域を示すものである。
【0029】
光学フィルタ20から出射された光は、平均演色評価数Raが80以上、好ましくは90以上、より好ましくは95以上となる分光放射特性を有することが好ましい。なお、平均演色評価数Raの上限は100である。
また、光学フィルタ20から出射された光は、特に、R9(赤色)に係る特殊演色評価数、R13(白色系のコーカソイドの肌色)に係る特殊演色評価数、R15(モンゴロイドの肌色)に係る特殊演色評価数が80以上、好ましくは90以上、より好ましくは95以上となる分光放射特性を有することが特に好ましい。
平均演色評価数Raは、JIS Z 8726:1990(光源の演色性評価方法)に準じて測定されるものである。
【0030】
上記の殺菌装置1においては、光源部10を構成する放電ランプ11から放射された光が、反射鏡12の反射面12bによって反射され、光学フィルタ20を介して第2焦点に集光されて入射光学系40の入射端面40aに入射される。入射光学系40に入射された光は、光ファイバを介して照射対象部位に照射され、これにより、当該照射対象部位に存在するバクテリアなどの殺菌対象生物に対する殺菌・消毒が行われる。
このとき、光学フィルタ20においては、放電ランプ11から放射された200nm〜500nmの波長域の光のうち、特定波長光Aは当該光学フィルタ20を透過し、特定波長光Bはカットされると共に、特定波長光Cが減衰される。
【0031】
本発明の殺菌装置1において、放電ランプ11から光学フィルタ20を介して生体組織に照射される光の照射量(照射密度)は、当該照射密度と照射時間とから算出される露光量が、生体組織の表面上における殺菌対象生物を殺菌することができる程度の大きさとなる量であればよい。光の照射量は、照射時間によっても異なるが、例えば5〜420mJ/cm
2 とされる。光の照射量が過度に多い場合には、放電ランプ11から放射されて光学フィルタ20に入射する特定波長光Bも多くなって、この生体に有害な特定波長光Bを確実にカットすることができないおそれがある。一方、光の照射量が過度に少ない場合には、殺菌対象生物の十分な殺菌・消毒に長時間を要してしまうおそれがある。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る殺菌装置から放射される光の分光分布曲線を示すグラフである。放電ランプ11から放射された直後の光(放射光)のスペクトルをa0として鎖線で示し、また、光学フィルタ20を通過した後の光(照射光)のスペクトルをa1として直線で示した。
【0033】
以下、本発明の効果を示すための実験例について説明する。
【0034】
<実験例A1>
本発明の殺菌装置を用いて、細胞へ紫外線を照射する実験を行った。具体的には、以下の通りである。
図5に示されるように、水銀が封入されたショートアーク型放電ランプ51(型式:UXL−S155A)からの光を、光学フィルタ52を介してシャーレ53に入っている細胞サンプルに照射した。
【0035】
ショートアーク型放電ランプ51におけるアーク放電が生じる輝点から光学フィルタ52までの光路の光軸距離は70mm、光学フィルタ52から細胞サンプル(シャーレ53の底部表面)までの光路の光軸距離は20mmである。
【0036】
光学フィルタとしては、波長230nm超の波長域の光を透過させない(特定波長光Bに対するOD値が4.0)フィルタ〔A〕を用いた。
フィルタ〔A〕を透過した後の光における特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率は0.18であった。また、フィルタ〔A〕を透過した後の光における特定波長光Aに対する特定波長光Dの比率は0.03であった。
【0037】
細胞サンプルは、細胞の種類がJCRB9004(HeLa)であり、1つのシャーレに含まれている細胞数は40×10
4 cellsである。細胞サンプルに光を照射する際には、細胞培養液を除去した状態で、シャーレの蓋を取った状態とした。
【0038】
光の照射は、細胞に照射される光の照射量(露光量)がそれぞれ0mJ/cm
2 、5mJ/cm
2 、10mJ/cm
2 、20mJ/cm
2 、40mJ/cm
2 、80mJ/cm
2 、120mJ/cm
2 となる7条件で行った。光の照射においては、照射条件毎に1サンプル(1シャーレの細胞)を使用した。
上記照射条件において、細胞に照射される光の強度(照度)は22.3μW/cm
2 で共通とし、照射時間を変更した。
照射試験後、新鮮な細胞培養液を2mL加え、24時間培養した後、「Cell Counting Kit−8」(同仁化学社製)を用いて、細胞の生存率を測定した。このとき、露光量0mJ/cm
2 (=照射していないサンプル)を生存率100%として相対評価した。露光量と、細胞の生存率との関係を
図6のグラフにおいて「■」で示す。
また、細胞に照射される光の平均演色評価数Raは77、R9に係る特殊演色評価数は20、R13に係る特殊演色評価数は85、R15に係る特殊演色評価数は86であった。
【0039】
<実験例A2>
実験例A1において、光学フィルタをフィルタ〔A〕からフィルタ〔B〕に代えたこと以外は同様にして、細胞へ紫外線を照射する実験を行った。
フィルタ〔B〕は、波長230nm超の波長域の光を透過させない(特定波長光Bに対するOD値が4.0)ものである
フィルタ〔B〕を透過した後の光における特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率は0.03であった。また、フィルタ〔B〕を透過した後の光における特定波長光Aに対する特定波長光Dの比率は0.04であった。
露光量と、細胞の生存率との関係を
図6のグラフにおいて「●」で示す。
また、細胞に照射される光の平均演色評価数Raは85、R9に係る特殊演色評価数は20、R13に係る特殊演色評価数は90、R15に係る特殊演色評価数は90であった。
【0040】
<比較実験例A3>
実験例A1において、光学フィルタを用いず、ショートアーク型放電ランプの代わりに低圧水銀ランプを用いたこと以外は同様にして、細胞へ紫外線を照射する実験を行った。
低圧水銀ランプは、波長254nmに輝線スペクトルを有する光を放射するものである。
露光量と、細胞の生存率との関係を
図6のグラフにおいて「◇」で示す。
また、細胞に照射される光の平均演色評価数Raは50、R9に係る特殊演色評価数は−46、R13に係る特殊演色評価数は53、R15に係る特殊演色評価数は57であった。
【0041】
<実験例B1>
実験例A1において、細胞サンプルを黄色ブドウ球菌(NBRC.12732)に代えたこと以外は同様にして、黄色ブドウ球菌へ紫外線を照射する実験を行った。具体的には、生菌数濃度が9×10
5 CFU/mLである菌液を3mLシャーレに入れたものをサンプルとして用いた。
【0042】
光の照射は、黄色ブドウ球菌に照射される光の照射量(露光量)がそれぞれ0mJ/cm
2 、2mJ/cm
2 、4mJ/cm
2 、6mJ/cm
2 、8mJ/cm
2 、10mJ/cm
2 、12mJ/cm
2 、14mJ/cm
2 、16mJ/cm
2 、18mJ/cm
2 、20mJ/cm
2 、22mJ/cm
2 、24mJ/cm
2 、26mJ/cm
2 、28mJ/cm
2 、30mJ/cm
2 となる15条件で行った。光の照射においては、照射条件毎に1サンプル(1シャーレの黄色ブドウ球菌)を使用した。
上記照射条件において、黄色ブドウ球菌に照射される光の強度(照度)は22.3μW/cm
2 で共通とし、照射時間を変更した。
照射試験後、寒天培地にサンプル原液を0.1mL塗布し、37℃で48時間培養した。その後、寒天培地に発生したコロニーの数を調べた。このとき、不活化率は下記式(1)で表される計算式を用いて算出した。なお、コロニー数が300CFU以上であった場合には、サンプル原液を生理食塩水で10倍希釈し、希釈後の菌液を0.1mL分取し、これを寒天培地に塗布し、同様に培養した。この操作を、コロニー数が300CFU以下となるまで繰り返し、300CFU以下となった場合に、このときのコロニー数に希釈倍率を掛けることで、そのサンプルのコロニー数を算出した。
式(1):不活化率(LOG)=LOG
10{(N1)/(N0)}
〔N1:照射後のコロニー数[CFU]、N0:照射前のコロニー数[CFU]=9×10
4 [CFU]〕
露光量と、黄色ブドウ球菌の不活化率との関係を
図7のグラフにおいて「■」で示す。
【0043】
<実験例B2>
実験例B1において、光学フィルタをフィルタ〔A〕から、実験例A2において用いたものと同じフィルタ〔B〕に代えたこと以外は同様にして、黄色ブドウ球菌へ紫外線を照射する実験を行った。
露光量と、黄色ブドウ球菌の不活化率との関係を
図7のグラフにおいて「●」で示す。
【0044】
<比較実験例B3>
実験例B1において、光学フィルタを用いず、ショートアーク型放電ランプの代わりに低圧水銀ランプを用いたこと以外は同様にして、黄色ブドウ球菌へ紫外線を照射する実験を行った。
低圧水銀ランプは、波長254nmに輝線スペクトルを有する光を放射するものである。
露光量と、黄色ブドウ球菌の不活性率との関係を
図7のグラフにおいて「△」で示す。
【0045】
図6から明らかなように、特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率が0.18であるフィルタ〔A〕を用いた場合、および、特定波長光Aに対する特定波長光Cの比率は0.03であるフィルタ〔B〕を用いた場合は、共に、低圧水銀ランプからの波長254nmに輝線スペクトルを有する光を照射した場合と比較して、ヒト細胞の生存率の下がり方は穏やかであることが確認された。なお、ヒト細胞の細胞死滅ラインのCell生存率を、
図6において鎖線で示す。
一方、フィルタ〔A〕を用いた場合およびフィルタ〔B〕を用いた場合は、低圧水銀ランプからの光そのまま照射した場合と比較して、平均演色評価数Raが高く、さらに、R9に係る特殊演色評価数、R13に係る特殊演色評価数、および、R15に係る特殊演色評価数について、いずれも高い値が得られることが確認された。
また、
図7から明らかなように、細菌(黄色ブドウ球菌)は、フィルタ〔A〕を用いた場合、フィルタ〔B〕を用いた場合、および、低圧水銀ランプからの光そのまま照射した場合の3つの構成の間において、ほとんど不活化速度に差がないことが確認された。
以上のことから、フィルタ〔A〕を用いた場合およびフィルタ〔B〕を用いた場合には、ヒト細胞に対する安全性が確保された上で選択的に殺菌対象生物(黄色ブドウ球菌)を死滅させることができ、しかも、照射対象部位を確実に視認することができることが確認された。
【0046】
以上のように、上記の殺菌装置1によれば、200nm〜500nmの波長域の光のうち、特定波長光Bがカットされた光が生体組織に照射されるので、生体組織の表面上に存在する殺菌対象生物を、動物細胞に対する安全性が確保されながら殺菌・消毒することができ、しかも、可視光である特定波長光Cが減衰された状態で照射されるので、動物細胞に対する危害を抑制しながら当該特定波長光Cの演色性の高さによって照射対象部位を確実に視認することができて紫外線照射範囲を確実に把握することができる。
【0047】
以上、本発明の第1の実施形態に係る殺菌装置について説明したが、第1の実施形態に係る殺菌装置は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、光学フィルタ20を構成する第1減衰フィルタおよび第2減衰フィルタが特定波長光Bおよび特定波長光Cをそれぞれ吸収する性質のものである場合においては、当該第1減衰フィルタおよび第2減衰フィルタは、放電ランプ11から放射された光が反射鏡の反射面12bに至るまでの光路上、例えば反射鏡12の反射面12bの内面に設けられている構成とされていてもよい。
【0048】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る殺菌装置は、光源部がレーザ励起ランプを用いたものに変更されたことの他は第1の実施形態に係る殺菌装置と同様の構成を有するものである。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る殺菌装置の構成の一例を示す模式図である。
第2の実施形態に係る殺菌装置1Aの光源部10Aを構成するレーザ励起ランプ31は、発光空間S2内に電極を備えない無電極ランプであり、集光レンズ38によって励起用レーザ光源からのレーザ光が外部から発光空間S2内に集光され、集光レンズ38の焦点位置Fにおいてプラズマが発生し、発生したプラズマによって発光空間S2内に封入された発光ガスが励起されて発光するものである。
レーザ励起ランプ31は、具体的には、外形が円柱状であり、内部に、前方に開口する凹状に湾曲した反射面30aを有するセラミックス(多結晶アルミナ)よりなる胴体30と、当該胴体30の前面開口30bを塞ぐための光出射窓部材32と、当該胴体30の後方における反射面30aの底部に開口する貫通孔(ホール部)34に対向するよう設けられた光入射窓部材33と、胴体30、光出射窓部材32および光入射窓部材33によって囲まれた発光空間S2の外部に配置された、レーザ光を出射する励起用レーザ光源(図示せず)と、この励起用レーザ光源からのレーザ光を発光空間S2に集光する集光レンズ38と、を有している。胴体30は円柱状の金属ベース35によって支持されている。
【0049】
胴体30の反射面30aは、第1焦点および第2焦点を有する楕円面を有するものとすることができる。
反射面30aは、特定波長光Aを含む230nm以下の波長域の紫外線および特定波長光Cについての反射性を有するものであればよく、230nm以下の波長域の紫外線に対する反射率を高めるという観点から、例えばアルミニウムなどによる金属蒸着膜や誘電体多層膜より構成されることが好ましい。
【0050】
光出射窓部材32は、例えば円盤状の光透過性材料からなるものである。光出射窓部材32は、窓支持部材32aによって支持され、当該窓支持部材32aと胴体30とが、当該窓支持部材32aおよび胴体30の外径に適合する内径を有する円筒状の第1の金属筒体37a内に共通に嵌合されることによって、胴体30に固定されている。
【0051】
金属ベース35には、胴体30と対向する前方に大径の円盤状の第1凹所35Aが形成されている。そして、当該第1凹所35Aにおける胴体30のホール部34に対応する位置に、励起用レーザ光源からのレーザ光を通過させるための円盤状の貫通孔35Bが、当該第1凹所35Aに連通する状態に形成されており、当該貫通孔35Bに、励起用レーザ光源からのレーザ光を透過する光入射窓部材33が嵌合されている。また、第1凹所35Aに連通して胴体30の柱軸方向と同方向に伸びる状態に、金属ベース35の後方に開口する第2凹所35Cが形成されている。第2凹所35C内には、当該第2凹所35Cの内径に適合する外径を有する排気管36が、外部に伸びる状態に気密に挿入されている。排気管36は、第2凹所35Cの内壁に封着されており、当該排気管36の外部に突出された端部は、発光空間S2に発光ガスを封入した後に径方向に押し潰されて管肉同士が気密に密着された状態とされている。
【0052】
金属ベース35は、当該金属ベース35と胴体30とが、この金属ベース35および胴体30の外径に適合する内径を有する円筒状の第2の金属筒体37b内に共通に嵌合されることによって、胴体30に固定されている。
【0053】
集光レンズ38は、その光軸X2が胴体30の反射面30aの光軸C2と一致し、当該集光レンズ38の焦点Fが胴体30の反射面30aの第1の焦点と一致する状態で、配置されている。
【0054】
本発明の殺菌装置1Aから出射された光は、光ファイバなどの入射光学系40に入射されるが、この入射光学系40は、当該入射光学系40の入射端面40aの中心が、胴体30の反射面30aの第2焦点の位置と一致する位置に、配置される。
【0055】
この殺菌装置1Aにおいて、レーザ励起ランプ31から光学フィルタ20を介して生体組織に照射される光の照射量(照射密度)は、当該照射密度と照射時間とから算出される露光量が、生体組織の表面上における殺菌対象生物を殺菌することができる程度の大きさとなる量であればよい。光の照射量は、照射時間によっても異なるが、例えば5〜420mJ/cm
2 とされる。光の照射量が過度に多い場合には、レーザ励起ランプ31から放射されて光学フィルタ20に入射する特定波長光Bも多くなって、この生体に有害な特定波長光Bを確実にカットすることができないおそれがある。一方、光の照射量が過度に少ない場合には、殺菌対象生物の十分な殺菌・消毒に長時間を要してしまうおそれがある。
【0056】
励起用レーザ光源としては、例えば連続的にレーザ光を発振するCWレーザを用いることができる。
励起用レーザ光源から発振されるレーザ光の波長は1090nm、平均出力は100Wのものとすることができる。
【0057】
発光空間S2内には、例えばキセノンガスからなる発光ガスが封入されている。
発光ガスの封入圧は、封入時で20気圧、点灯時で40〜60気圧とされる。
【0058】
そして、この殺菌装置1Aにおいては、光源部10Aのレーザ励起ランプ31において発生し、胴体30の反射面30aによって反射された光が、当該胴体30の反射面30aの第2焦点に集光されるまでの光路上に光学フィルタ20が配置される。具体的には、例えば円盤状の光学フィルタ20が、光出射窓部材32の光出射面の全面を塞ぐ状態に、当該光出射窓部材32の光出射面に接触して設けられる。
【0059】
光学フィルタ20としては、第1の実施形態に係る殺菌装置1において用いたものと同様のものを用いることができる。
【0060】
上記の殺菌装置1Aにおいては、光源部10Aを構成するレーザ励起ランプ31において発生された光が、胴体30の反射面30aによって反射され、光学フィルタ20を介して第2焦点に集光されて入射光学系40の入射端面40aに入射される。入射光学系40に入射された光は、光ファイバを介して照射対象部位に照射され、これにより、照射対象部位に存在するバクテリアなどの殺菌対象生物に対する殺菌・消毒が行われる。
このとき、光学フィルタ20においては、放電ランプ11から放射された200nm〜500nmの波長域の光のうち、特定波長光Aは当該光学フィルタ20を透過し、特定波長光Bはカットされると共に、特定波長光Cが減衰される。
【0061】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る殺菌装置から放射される光の分光分布曲線を示すグラフである。レーザ励起ランプ31から放射された直後の光(放射光)のスペクトルをb0として鎖線で示し、また、光学フィルタ20を通過した後の光(照射光)のスペクトルをb1として直線で示した。
【0062】
以上のように、上記の殺菌装置1Aによれば、第1の実施形態に係る殺菌装置1と同様の効果を得ることができる。
【0063】
以上、本発明の第2の実施形態に係る殺菌装置について説明したが、第2の実施形態に係る殺菌装置は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、光学フィルタ20は、光出射窓部材32の光出射面に接触して設けられることに限定されず、光出射窓部材32から出射された光が第2焦点に集光されるまでの光路上における、当該光出射窓部材32の光出射面に接触しない位置に設けられる構成とされていてもよい。
【課題】 生体組織の表面上に存在する殺菌対象生物を、動物細胞に対する危害を抑制しながら殺菌・消毒することができ、しかも、UV殺菌に係る紫外線と共に演色性の高い可視光を照射することによって照射対象部位を確実に視認することができて紫外線照射範囲を確実に把握することができる殺菌装置の提供。
【解決手段】 殺菌装置は、200nm〜500nmの波長域にわたって連続スペクトルを有する光を放射する光源部と、230nm超〜400nmの波長域の光をカットし、400nm超〜500nmの波長域の光を減衰させるフィルタとを備えてなり、前記フィルタを透過した光が生体に照射されることを特徴とする。前記フィルタは、当該フィルタを透過した透過光における、200nm〜230nmの波長域の光に対する400nm超〜500nmの波長域の光の比率が0.18以下のものであることが好ましい。