特許第6497477号(P6497477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧

特許6497477電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板
<>
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000005
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000006
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000007
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000008
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000009
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000010
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000011
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000012
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000013
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000014
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000015
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000016
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000017
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000018
  • 特許6497477-電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6497477
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】電磁波シールドシート、および電子部品搭載基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   H05K9/00 X
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-188338(P2018-188338)
(22)【出願日】2018年10月3日
【審査請求日】2018年11月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 祥太
(72)【発明者】
【氏名】松戸 和規
(72)【発明者】
【氏名】安東 健次
(72)【発明者】
【氏名】早坂 努
【審査官】 石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−130484(JP,A)
【文献】 特開平01−258496(JP,A)
【文献】 特開昭62−058513(JP,A)
【文献】 特開2009−188322(JP,A)
【文献】 特開2017−045946(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/186624(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/027673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、
前記電子部品の搭載により形成された段差部および基板の一部を被覆する電磁波シールド層と、
を備える電子部品搭載基板を構成する前記電磁波シールド層を形成するために用いられる電磁波シールドシートであって、
前記電磁波シールドシートはクッション層と導電層を有する積層体であり、
前記導電層は、
バインダー樹脂および導電性フィラーを含む等方導電層であって、
厚みが8〜70μmであり、
前記クッション層と反対側の領域における導電性フィラーの含有量は、
前記クッション層側の領域における導電性フィラーの含有量よりも大きいことを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項2】
前記導電層は、導電性フィラーの含有量が異なる2層以上の等方導電層の積層体である、請求項1記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
前記電磁波シールドシートは、積層方向に対して垂直である断面において、
前記クッション層と反対側から、厚みの30%の領域における導電性フィラーの専有面積(A)が25〜55%であって、
前記クッション層側から厚みの30%の領域における導電性フィラーの専有面積(B)が15〜40%であって、
かつ、導電性フィラーの専有面積(A)が導電性フィラーの専有面積(B)よりも大きい、請求項1または2記載の電磁波シールドシート。
【請求項4】
下記式(1)で表される前記導電性フィラー専有面積(A)と前記導電性フィラー専有面積(B)の専有面積差が、1〜31%である、請求項3記載の電磁波シールドシート。

式(1)
専有面積差(%)=導電性フィラー専有面積(A)−導電性フィラー専有面積(B)
【請求項5】
前記導電層は、空孔を有する、請求項1〜4いずれか1項記載の電磁波シールドシート。
【請求項6】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、
請求項1〜5いずれか1項記載の電磁波シールドシートによって形成される電磁波シールド層とを有し、
前記電磁波シールド層が、前記電子部品の搭載により形成された段差部および基板の一部を被覆してなる、電子部品搭載基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の搭載により基板上に形成される段差部および基板の一部の表面を被覆するために好適に用いられる電磁波シールドシート、この電磁波シールドシートによって形成される電磁波シールド層を有する電子部品搭載基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップ等の電子部品を搭載した電子部品搭載基板は、性能向上や高い信頼性の要求に伴い、電子部品の表面に様々な機能を有する被覆層が形成されている。これら被覆層の形成は、工程簡略化のためシート状の材料を用いて熱プレスすることで電子部品の凹凸に追従して被覆層を形成している。
特許文献1では、軽量化、薄型化を図るとともに、高周波帯域の電磁波を吸収により遮断する電磁波シールドシートが提案されており、特許文献2においてはプレス加工という簡易な方法を用いて電子部品を覆っても電気抵抗の増加によるシールド性能の低下という不具合の発生を起こり難くすることができる導電性接着シートが記載されている。
一方、特許文献3には、外部からの磁場や電波による誤動作を防止するため、また、電子基板内部から発生する電気信号の不要輻射を低減するために、電磁波シールドシートを熱プレスすることによって電子部品の表面に電磁波シールド層を形成するための電磁波シールドシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−45946号公報
【特許文献2】国際公開第2015/186624号
【特許文献3】国際公開第2014/027673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、電磁波シールドシートを熱プレスすることにより、電子部品の表面に電磁波シールド層を形成するものである。この電磁波シールドシートは導電性材料を含有する電磁波シールド層を備えており、この電磁波シールド層において、導電性材料の含有量は電子部品の反対側が高く電子部品側が低くなるように傾斜させている。また、特許文献2においては異方導電層および等方導電層からなり、異方導電層が電子部品に接合する電磁波シールドシートが開示されている。
いずれも電子部品の凹凸部に電磁波シールドシートを埋め込むためクッション材を積層して用いるが、上記電磁波シールドシートにおいては、クッション材との密着性を十分にもたせることが困難であり、搬送時等に剥がれ、歩留まりが悪化するという問題がおこる。(以下クッション密着性)。
加えて、電子部品の天面と側面の間のエッジ部において、熱プレス時に引張応力がかかり、導電層に亀裂が生じ接続信頼性が低下することが問題となっている(以下グランド接続性)。
特許文献3には、基板上の凸部を被覆するために用いられ、クッション層と電磁波遮蔽層を有する電磁波シールド用フィルムが記載されている。しかしこのような積層体でもクッション層と導電層の密着性は充分ではなく、搬送中や所定のサイズに裁断する際にクッション層と導電層が剥がれ、歩留まりが悪化する問題がある。
さらに、このような電磁波シールドシートでは、図14に示すように熱プレス後、電磁波シールド層の熱収縮によって電子部品搭載基板に割れが生じる問題があった(以下基板割れ)。
【0005】
本発明は、上記背景に鑑みて成されたものであり、クッション密着性が良好であり、電子部品の搭載により形成された段差部に確実に追従変形するとともに該段差部内において基板に形成されたグランドパターンとの接続が確実に行われ、高い接続信頼性によって長期的に高い電磁波シールド効果を発揮する電磁波シールドシートを提供することを目的とする。
また、この電磁波シールドシートを用いて、電子部品の搭載により形成された基板表面の段差部および基板の一部の表面を被覆した電磁波シールド効果の高い電子部品搭載基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、基板と、前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、前記電子部品の搭載により形成された段差部および基板の一部を被覆する電磁波シールド層と、を備える電子部品搭載基板を構成する前記電磁波シールド層を形成するために用いられる電磁波シールドシートであって、前記電磁波シールドシートはクッション層と導電層を有する積層体であり、前記導電層は、バインダー樹脂および導電性フィラーを含む等方導電層であって、厚みが8〜70μmであり、前記クッション層と反対側の領域における導電性フィラーの含有量は、前記クッション層側の領域における導電性フィラーの含有量よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電磁波シールドシートは、クッション層と導電層との密着性が良好であり搬送時および電子部品搭載基板の製造時のロスが発生しにくい。加えて、熱プレス時に基板表面の段差部の形状に確実に追従変形することができ、段差部への埋め込み性が精度よく行われる。そして、段差部内において基板に形成されたグランドパターンに接続する場合においては、この接触側は導電性フィラー専有面積(B)が大きいため、導電層とグランドパターンとのグランド接続性が高い。
この結果、本発明の電磁波シールドシートは、基板上に搭載された電子部品により形成された段差部および基板表面を隙間なく被覆することもできるとともに、形成した電磁波シールド層は、基板に形成されたグランドパターンに接続してアースコンタクトすることができ、電子部品や基板に内蔵された信号配線等から発生する不要輻射を漏れなく遮蔽し、また、外部からの磁場や電波による誤動作を防止する電磁波シールド効果を確実に発揮する。加えて、本発明の電磁波シールド層を形成した電子部品搭載基板は割れがない。
これにより誤作動がなく信頼性の高い電子部品搭載基板を高い歩留まりで提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る電子部品搭載基板の一例を示す模式的斜視図。
図2図1のII−II切断部断面図。
図3】本実施形態に係る電子部品搭載基板の別の一例を示す模式的断面図。
図4】本実施形態に係る電磁波シールドシートの一例を示す模式的断面図。
図5】本実施形態に係る電磁波シールドシートの一例を示す模式的断面図。
図6】本実施形態に係る電子部品搭載基板の製造工程断面図。
図7】本実施形態に係る電子部品搭載基板の製造工程断面図。
図8】本実施形態に係る電子部品搭載基板の製造工程断面図。
図9】本実施形態に係る電子部品搭載基板の製造工程断面図。
図10】本実施形態に係る電子部品搭載基板の製造工程断面図。
図11】本実施形態に係る電子部品搭載基板の製造工程断面図。
図12】本実施例に係る電子部品搭載基板の別の一例を示す模式的断面図。
図13】本実施例に係る電子部品搭載基板の評価方法を示す模式的断面図。
図14】基板割れの一例。
図15】導電性フィラーの専有面積(A)と、専有面積(B)の測定用画面例
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。また、本明細書で特定する数値「A〜B」は、数値Aと数値Aより大きい値および数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲をいう。また、本明細書における「シート」とは、JISにおいて定義される「シート」のみならず、「フィルム」も含むものとする。説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。また、同一の要素部材は、異なる実施形態においても同一符号で示す。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0010】
また、本発明における「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量であり、導電性フィラー、電磁波吸収フィラー、および無機フィラーの平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法により測定することにより求めることができる。
【0011】
<<電子部品搭載基板>>
本発明の電子部品搭載基板は、基板と、前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、前記電子部品の搭載により形成された段差部および基板の露出面を被覆する電磁波シールド層と、を備える。
この電磁波シールド層は基板上の凹凸段差部を被覆するためのものであって、電子部品の側面および天面と、基板の露出した面との少なくとも一部を被覆する。
この電磁波シールド層は全面を被覆することがより好ましく、隙間のないことが好ましい。
本発明の電子部品搭載基板は、電子部品の搭載により形成された段差部の溝が碁盤目状であり、溝の幅(a)を1としたときに、溝の深さ(b)が1〜6倍であり、溝の幅(a)は、50〜500μmである場合にも、基板上の凹凸部を均一に電磁波シールド層により被覆することが可能であり、溝への埋め込み性が良好である、という優れた効果を有している。
【0012】
図1に本実施形態に係る電子部品搭載基板の模式的斜視図を、図2図1のII−II切断部断面図を示す。電子部品搭載基板101は、基板20、電子部品30および電磁波シールド層1等を有する。
電子部品搭載基板101には、耐擦傷性、水蒸気バリア性、酸素バリア性を示すフィルム等の他の層や、磁界カットを強化するフィルム等がさらに積層されていてもよい。
【0013】
<基板と電子部品>
基板20は、電子部品30を搭載可能であり、且つ後述する熱プレス工程に耐え得る基板であればよく、任意に選択できる。例えば銅箔等からなる導電パターンが表面又は内部に形成されたワークボード、実装モジュール基板、プリント配線板またはビルドアップ法等により形成されたビルドアップ基板が挙げられる。また、リジッド基板のみならず、フィルムやシート状のフレキシブル基板を用いてもよい。前記導電パターンは、例えば、電子部品30と電気的に接続するための電極・配線パターン(不図示)、電磁波シールド層1と電気的に接続するためのグランドパターン22である。前記グランドパターンは、電子部品が搭載されていない領域の基板表面または、基板の内部に配置され、基板の側面に配置されることが好ましい。基板の側面に配置する場合は、ハーフダイシングによって基板を部分的に切削した溝の側面にグランドパターンを露出させることも好ましい。一方、ダイシングで基板をフルカットしてグランドパターンを露出させることも好ましい。グランドパターンを側面に形成することで電磁波シールド層がグランド接地し電磁波シールド性がより向上するため好ましい。基板20内部には、電極・配線パターン、ビア(不図示)等を任意に設けることができる。
【0014】
電子部品30は、図1の例においては基板20上に5×4個アレイ状に配置されている。そして、基板20および電子部品30の露出面を被覆するように電磁波シールド層1が設けられている。即ち、電磁波シールド層1は、電子部品30により形成される段差部である凹凸に追従するように被覆されている。
【0015】
電子部品30の個数、配置、形状および種類は任意である。アレイ状に電子部品30を配置する態様に代えて、電子部品30を任意の位置に配置してもよい。電子部品搭載基板101を単位モジュールに個片化する場合、図2に示すように、基板上面から基板の厚み方向に単位モジュールを区画するようにハーフダイシング溝25を設けることが好ましい。なお、本実施形態に係る電子部品搭載基板は、単位モジュールに個片化する前の基板、および単位モジュールに個片化した後の基板の両方を含む。即ち、図12のような複数の単位モジュール(電子部品30)が搭載された電子部品搭載基板101の他、図3のような単位モジュールに個片化した後の電子部品搭載基板102も含む。無論、個片化工程を経ずに、基板20上に1つの電子部品30を搭載し、電磁波シールド層で被覆した電子部品搭載基板も含まれる。即ち、本実施形態に係る電子部品搭載基板は、基板上に少なくとも1つの電子部品が搭載されており、電子部品の搭載により形成された段差部の少なくとも一部に電磁波シールド層が被覆された構造を包括する。
【0016】
電子部品30は、半導体集積回路等の電子素子が封止樹脂により一体的に被覆された部品全般を含む。例えば、集積回路(不図示)が形成された半導体チップ31(図3参照)が封止樹脂32によりモールド成型されている態様がある。基板20と半導体チップ31は、これらの当接領域を介して、又はボンディングワイヤ33、はんだボール(不図示)等を介して基板20に形成された配線又は電極21と電気的に接続される。電子部品は、半導体チップの他、インダクタ、サーミスタ、キャパシタおよび抵抗等が例示できる。
【0017】
電子部品の段差部におけるエッジはRが50μm以下であることが好ましい。特別に処理を行わない限りハーフダイシングによって形成された溝のエッジ部は鋭角となりRが50μm以下となる。電磁波シールド層の割れを低減する為にエッジ部のRをより鈍角にする手段はあるものの、工数が増えコストが高くなってしまう。これに対し、本発明の電磁波シールドシートを用いる場合、エッジが鋭角であっても電磁波シールド層が割れることなく均一に被覆層を形成できることができる、という優れた効果を有する。
【0018】
本実施形態に係る電子部品30および基板20は、公知の態様に対して広く適用できる。図3の例においては、半導体チップ31は、インナービア23を介して基板20の裏面のはんだボール24に接続されている。また、基板20内には、この電磁波シールド層と電気的に接続するためのグランドパターン22が形成されている。このグランドパターン22は基板20の側面に配置されている。また、電子部品30内には、単数又は複数の電子素子等を搭載できる。
【0019】
<電磁波シールド層>
電磁波シールド層は、本発明の電磁波シールドシートにより形成されてなる。
図2を用いて一例を説明すると、電磁波シールド層1は、電子部品30が搭載された基板20上に、電磁波シールドシートを載置して熱プレスすることにより得られる。電磁波シールド層1は、電磁波シールドシートの導電層が変形後、硬化したものであって、導電層はバインダー樹脂および導電性フィラーを含有する。電磁波シールド層において導電性フィラーは連続的に接触されており、等方導電性を示す等方導電層である。
電磁波シールド層は、電子部品30および/または基板20に内蔵された信号配線等から発生する不要輻射を遮蔽し、また、外部からの磁場や電波による誤動作を防止できる。
【0020】
電磁波シールド層の被覆領域は、電子部品30の搭載により形成された段差部(凹凸部)の全域を被覆していることが好ましい。電磁波シールド層はシールド効果を充分に発揮させるために、基板20の側面または上面に露出するグランドパターン22または/および電子部品の接続用配線等のグランドパターン(不図示)に接続する構成が好ましい。
【0021】
電磁波シールド層の厚みは、用途により適宜設計し得る。薄型化が求められている用途には、電子部品の上面および側面を被覆する電磁波シールド層の厚みは、8〜70μmが好ましく、15〜65μmの範囲がより好ましく、20〜60μmがさらに好ましい。上記厚みとすることで部品搭載基板の小型化と高いシールド性を担保できる。
【0022】
電磁波シールド層の割れが生じやすい場所は、電子部品30のエッジ部を被覆する箇所である。電子部品のエッジ部において電磁波シールド層の割れが生じると、電磁波遮蔽効果の低下を招来するので、凹凸部の被覆性は特に重要となる。
【0023】
[電磁波シールドシート]
本発明の電磁波シールドシートは、クッション層と導電層を有する積層体である。これらの層の積層方法は、各層をラミネートする方法、クッション層上に導電性樹脂組成物を塗工、印刷する方法、また粘着剤層や接着剤層を介して各層を張り合わせる方法等が挙げられる。
また、前記導電層は、バインダー樹脂および導電性フィラーを含む等方導電層であって、厚みが8〜70μmであり、前記クッション層と反対側の面に沿った領域における導電性フィラーの含有量は、前記クッション層と接する面側に沿った領域における導電性フィラーの含有量よりも大きい。言い換えると、クッション層と接する面をb面、その反対側の面をa面と定義したときに、導電性フィラーの含有量はb面側よりもa面側の方が大きい。
また、前記電磁波シールドシートは、積層方向に対して垂直である断面において、前記クッション層と反対側から、厚みの30%の領域における導電性フィラーの専有面積(A)が25〜55%であって、前記クッション層側から厚みの30%の領域における導電性フィラーの専有面積(B)が15〜40%であって、かつ、導電性フィラーの専有面積(A)が導電性フィラーの専有面積(B)よりも大きいことが好ましい。
これにより、クッション密着性およびグランド接続性に優れた電磁波シールド層の形成が可能となる。
【0024】
このような電磁波シールドシートを用いることで、クッション密着性が良好であり、電子部品の搭載により形成された段差部に確実に追従変形するとともに該段差部内において基板に形成されたグランドパターンとの接続が確実に行われ、高い接続信頼性によって長期的に高い電磁波シールド効果を発揮する電磁波シールド層の形成が可能となる。
【0025】
クッション層および導電層は熱プレスするまでは密着していることが必須である。導電層に対するクッション層の剥離強度は0.2〜3N/25mmであることが好ましく、0.5〜2.5N/25mmがより好ましい。剥離強度を0.2N/25mm以上とすることで、運送時や裁断時の層間剥離を抑制し、歩留まりが向上する。一方、剥離強度を3N/25mm以下とすることで、熱プレス後にクッション層をシールド層の損傷無く容易に剥離することができる。上記の剥離強度は後述する導電層の導電性フィラー専有面積(B)によってコントロールすることができる。加えて、ラミネート時の圧力や温度、クッション層のコロナ処理による表面活性化によってもコントロールすることができる。
【0026】
本実施形態に係る電磁波シールドシートは、図4に示すように、導電層と、導電層の一主面上に形成されたクッション層7を備える。導電層の他主面上には、離型性基材(不図示)を積層してもよい。
【0027】
(クッション層)
クッション層は、熱プレス時に溶融する層であり、電子部品30の搭載により形成された段差部への導電層の追従性を促すクッション材として機能する。加えて、離型性があり導電層と接合することなく、熱プレス工程後に導電層から剥離可能な層である。
なお、クッション層が、離型層を有する場合には、クッション性を有する部材と、離型層とをあわせた構成を指す。
【0028】
クッション層は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により形成することができる。また、熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に加えて、可塑剤や熱硬化剤、無機フィラー等を含んでいてもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、酸をグラフトさせた酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィンと不飽和エステルとの共重合樹脂、ビニル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ジエン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド系樹脂、またはフッ素樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂、酸をグラフトさせた酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィンと不飽和エステルとの共重合樹脂、ビニル系樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、α−オレフィン化合物などのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー等が挙げられる。
これらの中でもポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリエチレン樹脂である。
【0031】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、マレイン酸やアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等がグラフトされたポリオレフィン樹脂が好ましい。
これらの中でも、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0032】
ポリオレフィンと不飽和エステルとの共重合樹脂における不飽和エステルとしてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルおよびメタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
これらの中でもポリオレフィンとしてエチレン、不飽和エステルとしてメタクリル酸グリシジルからなる、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合樹脂が好ましい。
【0033】
ビニル系樹脂は、酢酸ビニルなどのビニルエステルの重合により得られるポリマーおよびビニルエステルとエチレンなどのオレフィン化合物とのコポリマーが好ましい。具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、部分ケン化ポリビニルアルコール等が挙げられる。
これらの中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0034】
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレンや(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド類、マレイミド類などからなるホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。具体的には、例えば、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリルコポリマー等が挙げられる。
【0035】
ジエン系樹脂は、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物のホモポリマーまたはコポリマーおよびそれらの水素添加物が好ましい。具体的には、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマーとスチレン−エチレン・ブチレンブロックコポリマーとの混合物等が挙げられる。
【0036】
セルロース系樹脂は、セルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAポリカーボネートが好ましい。
【0037】
ポリイミド系樹脂は、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸型ポリイミド樹脂が好ましい。
【0038】
クッション層は図6に示すように、熱プレス後にクッション層と電磁波シールド層との剥離を容易にするため、クッション層7は、クッション性の部材6に加え、離形層8を含む形態とすることができる。離形層8としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンポリマー、シリコーン、フッ素樹脂からなる層を形成することが好ましい。この中でもポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シリコーン、フッ素樹脂がさらに好ましい。
上記形態の他、アルキッド、シリコーンの等の離型剤をコーティングする形態も好ましい。
【0039】
離形層の厚みは0.001〜70μmが好ましく、0.01〜50μmがより好ましい。
【0040】
市販のクッション層としては、三井東セロ社製「CR1012」、「CR1012MT4」、「CR1031」、「CR1033」、「CR1040」、「CR2031MT4」等を用いることができる。これら市販のクッション層はクッション層の両面を離形層としてポリメチルペンテンで挟み込んだ層構成となっており本願ではこれらの一体構成をクッション層と呼ぶ。
【0041】
クッション層の厚みは、50〜300μmが好ましく、75〜250μmがより好ましく、100〜200μmがさらに好ましい。50μm以上とすることで埋め込み性を向上できる。300μm以下とすることで電磁波シールドシートのハンドリング性を良好なものとすることができる。なお上記厚みは、離形層を有する場合、離形層を含んだ値である。
【0042】
(導電層)
導電層は、電磁波シールド層を形成するための層であり、少なくともバインダー樹脂および導電性フィラーを含有する。導電層は熱プレス後に電磁波シールド層として機能する。前記導電層は、厚みが8〜70μmであり、前記クッション層と反対側の界面から、厚みの30%の領域における導電性フィラー専有面積(A)が25〜55%であって、前記クッション層の界面から、厚みの30%の領域における導電性フィラー専有面積(B)が15〜40%であって、且つ、導電性フィラー専有面積(A)が導電性フィラー専有面積(B)よりも大きいことを特徴とする。
【0043】
導電層の厚みは、8〜70μmであり、15〜65μmの範囲が好ましく、20〜60μmがより好ましい。これにより、シールド性、埋め込み性とグランド接続性を効果的に発揮し、電子部品搭載基板割れを低減することができる。
【0044】
導電層並びに上述したクッション層の厚みの測定方法は、接触式の膜厚計および、断面観察による計測などで測定することができる。
【0045】
≪導電性フィラー専有面積(A)≫
本願における導電性フィラー専有面積(A)とは、図4に示すように電磁波シールドシートを厚み方向に切断した切断面において、クッション層と反対側から厚みの30%の領域における導電層中の導電性フィラーの含有比率を示すものである。
【0046】
より詳細に説明すると、電磁波シールドシートをクロスセクションポリッシャー(日本電子社製、SM−09010)を用いてイオンビーム照射により切断加工して電磁波シールドシートの厚み方向の切断面を形成する。
【0047】
電磁波シールドシートの、積層方向に対して垂直である断面を電界放出形電子顕微鏡を使用して観察した拡大画像において、図15に示すように、導電性フィラーを白、導電性フィラー以外の成分を黒に画像処理し、導電層のクッション層側から厚みの30%の領域を範囲指定し、ヒストグラムで白領域(0〜254)を選択することで、導電層の厚み30%領域の断面積を100としたときの導電性フィラーの成分が占める面積を求め、それぞれ異なる5サンプルを評価し平均値を算出することで、導電性フィラー専有面積(A)を求めることができる。
【0048】
ここで、クッション層と反対側から厚みの30%の領域とは、電磁波シールドシートの厚みにおける、クッション層と導電層の界面から30%の領域である。例えば導電層の厚みが100μmの場合、厚み方向の切断面の、クッション層側から厚み30μmの領域を示す。
【0049】
導電性フィラー専有面積(A)は25〜55%であり、30〜52%の範囲が好ましく、35〜48%がより好ましい。導電性フィラー専有面積(A)を25%以上とすることで、グランド接続性を向上できる。一方、導電性フィラー専有面積(A)を55%以下とすることにより、埋め込み性を向上することができる。
【0050】
≪導電性フィラー専有面積(B)≫
本願における導電性フィラー専有面積(B)とは、図4に示すように電磁波シールドシートを厚み方向に切断した切断面において、クッション層側から厚みの30%の領域における導電層中の導電性フィラーの含有比率を示すものである。
導電性フィラー専有面積(B)は導電層切断面の範囲指定領域をクッション層側の30%とする以外は、導電性フィラー専有面積(A)と同様の方法で求めることができる。
【0051】
導電性フィラー専有面積(B)は、15〜40%であり、18〜37%の範囲が好ましく、22〜34%がより好ましい。導電性フィラー専有面積(B)を15%以上とすることで、シールド性を向上し基板割れを抑制できる。一方、導電性フィラー専有面積(B)を40%以下とすることにより、クッション層との剥離強度を高めクッション層との密着性を向上することができる。
【0052】
下記式(1)で表される前記導電性フィラー専有面積(A)と前記導電性フィラー専有面積(B)の専有面積差は、1〜31%が好ましく、3〜28%がより好ましく、8〜25%がさらに好ましい。上記範囲にすることでシールド性とグランド接続性を向上した上で、基板割れをより抑制できる。

式(1)
専有面積差(%)=導電性フィラー専有面積(A)−導電性フィラー専有面積(B)
【0053】
導電性フィラー専有面積(A)と導電性フィラー専有面積(B)の間における領域、すなわち残りの40%の領域については特に制限はないが、導電性フィラー専有面積は(A)と(B)の中間の値をとることが好ましい。
【0054】
電磁波シールドシートの導電層は導電性フィラー専有面積(A)が導電性フィラー専有面積(B)よりも大きいことを特徴とする。これにより、グランドパターンへの接続信頼性が向上する。一方、クッション層と接する面は相対的にバインダー成分が多くなりクッション層との密着性が良好となり電磁波シールドシートを搬送や裁断する際に層間剥離が起こりにくくなるため歩留まりが向上する。
【0055】
≪導電層の製造方法≫
このような導電層は、図5に示すように、導電性フィラー含有量の異なるクッション層とは反対側に導電層a、クッション層側に導電層bとなる、少なくとも2種類の等方導電層を形成し、これらを積層することで形成できる。夫々の等方導電層はバインダー樹脂と導電性フィラーを含有する導電性樹脂組成物を離型性基材上に塗工した後乾燥させることで形成することができ、導電層全体として、等方導電性であり、クッション層と反対側の領域における導電性フィラーの含有量が、クッション層側の領域における導電性フィラーの含有量よりも多くなっていれば、制限されない。
【0056】
導電層を、導電層a、導電層bの二層で形成する場合、導電層は導電層a、導電層bの順に積層し、導電層bはクッション層と積層するため、導電層aの導電性フィラーの含有量を高く設定する。導電層aの導電性フィラーの含有量は、61〜78質量%が好ましく、64〜76質量%がより好ましい。導電層bの導電性フィラーの含有量は、51〜67質量%が好ましく、53〜65質量%がより好ましい。
しかる後、導電層bとクッション層を張り合わせることで電磁波シールドシートを形成することができる。一方、クッション層上に導電性樹脂組成物を直接塗工することで導電層bを形成し、離型性基材状の導電層aと張り合わせることで形成することもできる。
【0057】
導電層は空孔を有することが好ましい。空孔とは、導電層を厚み方向に切断した断面観察において、導電層の内部に有する空気溜まり、もしくは複数の気泡であって図15に一例を示す。図15に示すように空孔は厚み方向に切断した断面において導電層の中央部に存在することが好ましい。導電層に空孔を有することで、電磁波シールドシートの熱プレス時に、電子部品による凸部へのプレスの圧力が適度に緩和されより均一に電磁波シールド層を形成することができる。これにより段差部への埋め込み性が良好となりグランド接続性が向上する。空孔は熱プレス後電磁波シールド層内から消滅しても残存していてもよい。
【0058】
また、上記製法の他に、バインダー樹脂と導電性フィラーおよび溶剤を含有する導電性樹脂組成物を離型性基材上に塗工した後、導電性フィラーを沈降させて導電性フィラー濃度の濃淡を形成した後に乾燥させることにより得ることができる。導電性フィラーの沈降は導電性樹脂組成物の粘度、チキソ性および沈降時間をコントロールすることで制御できる。
しかる後、離型性基材上の導電層の導電性フィラーの濃度が低い面とクッション層を張り合わせることで電磁波シールドシートを形成することができる。
【0059】
導電性樹脂組成物を塗工する方法としては、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピコート方式、ディップコート方式等を使用することができる。
【0060】
≪バインダー樹脂≫
導電層を形成するバインダー樹脂について説明する。
バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂は、硬化性化合物反応タイプが使用できる。更に、熱硬化性樹脂が自己架橋してもよい。熱硬化性樹脂を用いる場合、硬化性化合物と反応可能な反応性官能基を有することが好ましい。
【0061】
熱硬化性樹脂の好適な例は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、およびポリイミド樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、自己架橋可能な官能基を有していてもよい。例えば、リフロー時における過酷な条件で使用する場合の熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、エポキシエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンウレア系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリアミドのうちの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。また、加熱工程に耐え得る範囲であれば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を併用できる。
【0062】
熱硬化性樹脂の反応性官能基としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等がある。カルボキシル基を有する場合、熱硬化性樹脂の酸価は、3〜30であることが好ましい。酸価を前記範囲とすることにより、エッジ部破れ耐性が向上するという効果が得られる。酸価のより好ましい範囲は、4〜20であり、更に好ましい範囲は5〜10である。
熱硬化性樹脂の重量平均分子量Mwは、20,000〜150,000であることが好ましい。20,000以上とすることにより、耐スクラッチ性を効果的に高めることができる。また、150,000以下とすることにより段差追従性が向上するという効果が得られる。
【0063】
硬化性化合物は、熱硬化性樹脂の反応性官能基と架橋可能な官能基を有している。硬化性化合物は、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ポリカルボジイミド化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、ジシアンジアミド化合物、芳香族ジアミン化合物等のアミン化合物、フェノールノボラック樹脂等のフェノール化合物、有機金属化合物等が好ましい。硬化性化合物は、樹脂であってもよい。この場合、熱硬化性樹脂と硬化性化合物の区別は、含有量の多い方を熱硬化性樹脂とし、含有量の少ない方を硬化性化合物として区別する。
【0064】
硬化性化合物の構造、分子量は用途に応じて適宜設計できる。
【0065】
硬化性化合物は、熱硬化性樹脂100質量部に対して1〜70質量部含むことが好ましく、3〜65質量部がより好ましく、3〜60質量部が更に好ましい。
【0066】
前記エポキシ化合物は、エポキシ基を有していれば特に制限はないが、多官能のエポキシ化合物であることが好ましい。熱プレス等において、エポキシ化合物のエポキシ基が、熱硬化性樹脂のカルボキシル基や水酸基と熱架橋することにより、架橋構造を得ることができる。エポキシ化合物として、常温・常圧で液状を示すエポキシ化合物も好適である。
【0067】
バインダー樹脂として、上記以外に粘着付与樹脂や熱可塑性樹脂を用いてもよい。熱可塑性樹脂の好適な例は、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ジエン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂環式系石油樹脂、および芳香族系石油樹脂等が例示できる。また、導電性ポリマーを用いることができる。導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンが例示できる。
【0068】
≪導電性フィラー≫
導電性フィラーは、金属フィラー、導電性セラミックスフィラーおよびそれらの混合物が例示できる。金属フィラーは、金、銀、銅、ニッケル等の金属粉、ハンダ等の合金粉、銀コート銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉のコアシェル型フィラーが例示できる。優れた導電特性を得る観点から、銀を含有する導電性フィラーが好ましい。コストの観点からは、銀コート銅粉が特に好ましい。銀コート銅における銀の含有量は、導電性フィラー100質量%中、6〜20質量%が好ましく、より好ましくは8〜17質量%であり、更に好ましくは10〜15質量%である。コアシェル型フィラーの場合、コア部に対するコート層の被覆率は、表面全体100質量%中、平均で60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。コア部は非金属でもよいが、導電性の観点からは導電性物質が好ましく、金属フィラーがより好ましい。
【0069】
導電性フィラーの形状は、フレーク状(鱗片状)が好ましい。またフレーク状と他の形状の導電性フィラーを併用してもよい。併用する導電性フィラーの形状は、特に限定されないが、樹枝(デンドライト)状、繊維状、針状または球状の導電性フィラーが好ましい。併用する導電性フィラーは、単独または混合して用いられる。併用する場合、フレーク状導電性フィラーおよび樹枝状フィラーの組み合わせ、フレーク状導電性フィラー、樹枝状導電性フィラーおよび球状導電性フィラーの組み合わせ、フレーク状導電性フィラーおよび球状導電性フィラーの組み合わせが例示できる。これらのうち、電磁波シールド層のシールド性およびグランド接続性を高める観点から、フレーク状導電性フィラー単独またはフレーク状導電性フィラーと樹枝状導電性フィラーとの組み合わせがより好ましい。
【0070】
フレーク状導電性フィラーの平均粒子径D50は、2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。樹枝状導電性フィラーの平均粒子径D50の好ましい範囲は、2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
【0071】
また、導電層を構成する導電性樹脂組成物は、バインダー樹脂に加え、導電性フィラー以外に、着色剤、難燃剤、無機添加剤、滑剤、ブロッキング防止剤等を含んでいてもよい。
着色剤としては、例えば、有機顔料、カーボンブラック、群青、弁柄、亜鉛華、酸化チタン、黒鉛等が挙げられる。この中でも黒色系の着色剤を含むことでシールド層の印字視認性が向上する。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有難燃剤、りん含有難燃剤、窒素含有難燃剤、無機難燃剤等が挙げられる。
無機添加剤としては、例えば、ガラス繊維、シリカ、タルク、セラミック等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、金属石鹸、変性シリコーン等が挙げられる。
ブロッキング防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ポリメチルシルセスキオサン、ケイ酸アルミニウム塩等が挙げられる。
【0072】
<電子部品搭載基板の製造方法>
本実施形態に係る電子部品搭載基板は、
基板に電子部品を搭載する工程(a)と、
クッション層および導電層の順で積層されてなる電磁波シールドシートを、電子部品が搭載された基板上に前記導電層を対向配置するように載置する工程(b)と、
電子部品の搭載により形成された段差部および基板の露出面に導電層が追従するように、熱プレスによって接合して電磁波シールド層を得る工程(c)と、
クッション層を取り除く工程(d)とにより製造できる。
【0073】
以下、本実施形態に係る電子部品搭載基板の製造方法の一例について図6図10を用いて説明する。但し、これに限定されるものではない。
電子部品搭載基板の製造方法としては、基板20に電子部品30を搭載する工程(a)と、電子部品30が搭載された基板20上に電磁波シールドシートを設置する載置工程(b)と、電子部品30の搭載により形成された段差部の少なくとも一部を含む基板20の露出面に導電層が追従するように、熱プレスによって接合して電磁波シールド層1を得る工程(c)と、その後、クッション層7を取り除く工程(d)を備える。
【0074】
「工程(a)」
工程(a)は、基板に電子部品を搭載する工程である。
【0075】
まず、基板20に電子部品30を搭載する。図7は、工程(a)により得られる、本実施形態に係る電子部品搭載基板の製造工程段階の基板の一例である。同図に示すように、基板20上に半導体チップ(不図示)を搭載し、半導体チップが形成されている基板20上を封止樹脂によりモールド成形し、電子部品間の上方から基板20内部まで到達するように、モールド樹脂および基板20をダイシング等によりハーフカットする。予めハーフカットされた基板上に電子部品30をアレイ状に配置する方法でもよい。なお、電子部品30とは、図7の例においては半導体チップをモールド成形した一体物をいい、絶縁体により保護された電子素子全般をいう。ハーフカットは、基板内部まで到達させる態様の他、基板面までカットする態様がある。また、基板全体をこの段階でカットしてもよい。この場合には、粘着テープ付き基体上に基板を載置して位置ずれが生じないようにしておくことが好ましい。
【0076】
前記電子部品間の溝は埋め込み性のムラを解消する観点から、碁盤目状であることが好ましい。また、前記溝の幅(a)に対し溝の深さ(b)は1〜6倍の関係とし、溝の幅(a)を50〜500μmとすることが基板割れを解消する点から好ましい。
【0077】
モールド成形する場合の封止樹脂の材料は特に限定されないが、熱硬化性樹脂が通常用いられる。封止樹脂の形成方法は特に限定されず、印刷、ラミネート、トランスファー成形、コンプレッション、注型等が挙げられる。モールド成形は任意であり、電子部品の搭載方法も任意に変更できる。
【0078】
「工程(b)」
工程(b)は、工程(a)の後、クッション層および導電層を有する積層体である電磁波シールドシートを、電子部品が搭載された基板上に前記導電層を対向配置するように載置する工程である。
【0079】
図8に示すように、工程(a)の後、電磁波シールドシートを電子部品30が搭載された基板20上に設置する。電磁波シールドシートは基板20および電子部品30との接合領域に導電層が対向配置するように載置する。載置後、仮貼付してもよい。
【0080】
仮貼付とは、電子部品30の少なくとも一部の上面と接触するように仮接合するものであり、導電層がBステージで被着体に固定されている状態をいう。
製造設備あるいは基板20のサイズ等に応じて、基板20の領域毎に複数の電磁波シールドシートを用いたり、電子部品30毎に電磁波シールドシートを用いてもよいが、製造工程の簡略化の観点からは、基板20上に搭載された複数の電子部品30全体に1枚の電磁波シールドシートを用いることが好ましい。
【0081】
「工程(c)」
工程(c)は、工程(b)後、電子部品の搭載により形成された段差部および基板の露出面に導電層が追従するように、熱プレスによって接合して電磁波シールド層を得る工程である。
【0082】
図9に示すように、工程(b)により得られた製造基板を、一対のプレス基板40間に挟持し、熱プレスする。導電層は、クッション層7の溶融による押圧により、製造基板に設けられたハーフカット溝25に沿うように延伸され、電子部品30および基板20に追従して被覆され、電磁波シールド層1が形成される。プレス基板40をリリースすることにより図10に示すような製造基板が得られる。
【0083】
熱プレス工程の圧力は、電子部品30の耐久性、製造設備あるいはニーズに応じて、導電層の被覆性が確保できる範囲において任意に設定できる。圧力範囲としては限定されないが、0.5〜15.0MPa程度が好ましく、1〜13.0MPaの範囲がより好ましく、2〜10.0MPaの範囲がさらに好ましい。なお、必要に応じて電磁波シールド層上に保護層等を設けてもよい。加熱プレス前後の膜厚の差は、1%以上、20%未満の範囲が好ましく、2%以上、15%未満の範囲がより好ましい。10%の未満とすることで電磁波シールド層の割れ量を低減できる。1%以上とすることで段差追従性が良好となる。
【0084】
熱プレス時間は、電子部品の耐熱性、導電層に用いるバインダー樹脂、および生産工程等に応じて設定できる。熱プレス時間は1分〜2時間程度の範囲が好適である。なお熱プレス時間は、1分〜1時間程度がより好ましい。バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合は、この熱プレスにより熱硬化性樹脂の硬化が完了することが好ましいが、未硬化部が残存する場合は別途オーブンやIRヒーターなどによるベーキング工程を設けてもよい。但し、熱硬化性樹脂は、流動が可能であれば熱プレス前に部分的に硬化あるいは実質的に硬化が完了していてもよい。
【0085】
熱プレス装置は、押圧式熱プレス装置、トランスファーモールド装置、コンプレッションモールド装置、真空圧空成形装置等を使用できる。
【0086】
なお、図9に示すプレスの方向を意味する矢印は一例であって、上下に限るものではない。
【0087】
「工程(d)」
工程(d)は、工程(c)後、クッション層を取り除く工程である。
【0088】
次いで、図11に示すように電磁波シールド層1より上層に被覆されているクッション層7を剥離する。これにより、電子部品30を被覆する電磁波シールド層1を有する電子部品搭載基板101を得る(図1、2参照)。
【0089】
工程(d)の後、ダイシングブレード等を用いて、基板20における電子部品搭載基板101の個品の製品エリアに対応する位置でXY方向にダイシングする。これにより、電子部品30が電磁波シールド層1で被覆された電子部品搭載基板が得られる。電磁波シールド層1は、基板20に形成されたグランドパターン22と電磁波シールド層が電気的に接続された電子部品搭載基板が得られる。
なお、ダイシングによる個片化は工程(c)で得られる製造基板の基板面からダイシングする方法も電磁波シールド層のバリを抑制し、クッション層7の剥離性を向上する観点から好ましい。
【0090】
本実施形態に係る製造方法によれば、電磁波シールドシートを用いて工程(a)〜工程(d)を経て電磁波シールド層1を形成することにより、電子部品30のエッジ部で割れが無く、溝に均一に埋め込まれ、グランド接続信頼性の高い電磁波シールド層1を有する電子部品搭載基板101を製造できる。また、凹凸のある複数の電子部品を一括して被覆できるので、生産性に優れる。さらに、部品の配置位置や形状等によらずに電磁波シールド層を形成できるので、汎用性が高い。製造基板のサイズに応じて、最適なサイズに裁断することも容易である。また、本実施形態に係る電磁波シールドシートを用いることにより、形状追従性の優れた電磁波シールド層1を有する電子部品搭載基板101を提供できる。
【0091】
また、電磁波遮蔽シートを基板の面方向に押圧して圧着させているので、電子部品の天面の電磁波シールド層の平滑性に優れる。このため、製品名あるいはロット番号をインクジェット方式やレーザーマーキング方式で印字した際、文字の視認性が向上した高品質な電子部品搭載基板を提供できる。また、熱プレス時の条件を制御することにより厚みを制御しやすく、薄型化も容易であるというメリットを有する。
【0092】
<<電子機器>>
本実施形態に係る電子部品搭載基板は、例えば、基板20の裏面に形成されたはんだボール24等を介して実装基板に実装することができ、電子機器に搭載できる。例えば、本実施形態に係る電子部品搭載基板は、パソコン、ダブレット端末、スマートフォン、ドローン等をはじめとする種々の電子機器に用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。また、本発明に記載の値は、以下の方法により求めた。
【0094】
(1)試験基板の作製
ガラスエポキシからなる基板上に、モールド封止された電子部品をアレイ状に搭載した基板を用意した。基板の厚みは0.3mmであり、モールド封止厚、即ち基板上面からモールド封止材の頂面までの高さ(部品高さ)Hは0.7mmである。基板の内部にはグランドパターンが形成されている。その後、部品同士の間隙である溝に添ってハーフダイシングを行い、試験基板を得た(図12参照)。ハーフカット溝深さは0.8mm(基板20のカット溝深さは0.1mm)、ハーフカット溝幅は200μmを作製した。ハーフカットによって基板内部のグランドパターンが側面側に露出した状態となる。
試験基板の模式的断面図を図12に示す。
【0095】
以下、実施例で使用した材料を示す。
導電性フィラー1:「銀からなる鱗片状粒子、平均粒子径D50=6.0μm、厚み0.8μm」
バインダー樹脂1:ポリウレタン系樹脂 酸価10[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
バインダー樹脂2:ポリカーボネート系樹脂 酸価5[mgKOH/g](トーヨーケム社製)
硬化性化合物1:エポキシ樹脂、「デナコールEX830」(2官能エポキシ樹脂 エポキシ当量=268g/eq)ナガセケムテックス社製
硬化性化合物2:エポキシ樹脂、「YX8000」(水添ビスフェノールエポキシ樹脂 エポキシ当量=210g/eq)三菱化学社製
硬化性化合物3:エポキシ樹脂、「jER157S70」(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂 エポキシ当量=208g/eq)三菱化学社製
硬化促進剤:アジリジン化合物、「ケミタイト PZ−33」(日本触媒社製)
離型性基材:表面にシリコーン離型剤をコーティングした厚みが50μmのPETフィルム
クッション層:3層TPX「CR1040」(三井化学東セロ社製)
【0096】
<平均粒子径D50
平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性フィラー、電波吸収フィラー、または無機フィラーを測定して得た平均粒子径D50の数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。分布は体積分布、屈折率の設定は1.6とした。当該粒子径であればよく、一次粒子でも二次粒子でもよい。
【0097】
<導電性フィラーの厚み>
電磁波シールド層の厚みを測定した切断面画像を、電子顕微鏡で千倍〜5万倍程度に拡大した画像を元に異なる粒子を約10〜20個を測定し、その平均値を使用した。
【0098】
<厚み測定>
電磁波シールド層の厚みは、研磨法によって電子部品搭載基板の断面出しを行い、レーザー顕微鏡で電子部品の上面領域における最も厚みのある箇所の膜厚を測定した。異なる電子部品搭載基板の断面出しのサンプル5つについて同様に測定し、その平均値を厚みとした。
【0099】
<導電性フィラー専有面積(A)、(B)の測定>
図15を例に説明する。まず電磁波シールドシートをクロスセクションポリッシャー(日本電子社製、SM−09010)を用いてイオンビーム照射により切断加工して電磁波シールドシートの厚み方向の切断面を形成した。次いで得られた電磁波シールドシートの断面を白金蒸着し、電界放出形電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4700)を使用して図15拡大画像を観察した。観察条件は、加速電圧:5kV、エミッション電流:8mA、倍率:1300倍とした。
得られた拡大画像についてフリーソフトの「GIMP2.8.18」を使用しデータを読み込み、図15に示すように、しきい値を自動調整して導電性フィラーを白、導電性フィラー以外の成分を黒に変換した。その後、導電層のクッション層側から厚みの30%の領域を範囲指定し、ヒストグラムで白領域(0〜254)を選択することで白色のピクセル数のパーセンテージ即ち導電層の厚み30%領域の断面積を100%としたときの導電性フィラーの成分が占める面積を求め、それぞれ異なる5サンプルを評価し平均値を算出することで、導電性フィラー専有面積(A)を求めた。導電性フィラー専有面積(B)もクッション側の導電層の断面範囲を選択した以外は導電性フィラー専有面積(A)と同様の方法で測定した。
【0100】
<酸価の測定>
共栓付き三角フラスコ中に熱硬化性樹脂を約1g精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液50mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
酸価(mgKOH/g)=(a×F×56.1×0.1)/S
S:試料の採取量×(試料の固形分/100)(g)
a:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)
F:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0101】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は東ソ−社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィ−である。測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6mL/min、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0102】
<剥離強度の測定>
得られた電磁波シールドシートを幅25mm・長さ70mmに準備し試料とした。試料から導電層の離型性基材を剥がし、導電層に粘着テープ(25μmのPETフィルムに25μmのアクリル系粘着剤が塗布された(トーヨーケム社製「LE301−25K」))を張り合わせた。次いで、この積層体を引張試験機(島津製作所社製)を使用して23℃50%RHの雰囲気下、剥離速度50mm/min、剥離角度180°で、クッション層から導電層と粘着テープを剥離することで剥離強度を測定した。
【0103】
[実施例1]
バインダー樹脂1(固形分)50部と、バインダー樹脂2(固形分)50部と、硬化性化合物1を10部と、硬化性化合物2を20部と、硬化性化合物3を10部と、硬化促進剤を1部と、導電性フィラー1を149部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで導電性樹脂組成物を得た。この導電性樹脂組成物を乾燥厚みが25μmになるようにドクターブレードを使用して離型性基材に塗工した。そして、100℃で2分間乾燥することで離型性基材と導電層bとが積層されたシートBを得た。
【0104】
別途、バインダー樹脂1(固形分)50部と、バインダー樹脂2(固形分)50部と、硬化性化合物1を10部と、硬化性化合物2を20部と、硬化性化合物3を10部と、硬化促進剤を1部と、導電性フィラー1を376部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで導電性樹脂組成物を得た。この導電性樹脂組成物を乾燥厚みが25μmになるようにドクターブレードを使用して離型性基材に塗工した。そして、100℃で2分間乾燥することで離型性基材と導電層aとが積層されたシートAを得た。
【0105】
シートBおよびシートAを熱ロールラミネーターによって導電層bと導電層aを張り合わせた。次いでシートBの離形性基材を剥がし、クッション層の片面に、熱ロールラミネーターによって張り合わせることで、クッション層/導電層b/導電層a/離形性基材の順に積層してなる電磁波シールドシートを得た。張り合わせる条件は70℃、3kgf/cmとした。
【0106】
得られた電磁波シールドシートを10cm×10cmにカットし、離形性基材を剥離して、導電層を試験基板に載置した。その後、電磁波シールドシートのクッション層の上方から基板面に対し5MPa、160℃の条件で20分熱プレスした。熱プレス後、冷却し、クッション層を剥離することで、電磁波シールド層が形成された電子部品搭載基板を得た。
【0107】
[実施例2〜22、比較例1〜3]
各層の厚みと諸物性、各成分とその配合量(質量部)、試験基板の電子部品の溝幅、溝深さ、を表1〜3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、電子部品搭載基板を作製した。表1〜3に示すバインダー樹脂および硬化性化合物の配合量は固形分質量である。
【0108】
[実施例23]
シートBおよびシートAを張り合わせる条件を真空中、90℃、3kgf/cmとした以外は、実施例1と同様に電磁波シールドシートを作製し、電子部品搭載基板を得た。
【0109】
上記実施例および比較例について、以下の測定方法および評価基準にて評価した。
【0110】
<クッション密着性評価>
得られた電磁波シールドシートを幅10mm・長さ10mmにカットし試料とした。試料20個を90mlマヨビンに入れた後蓋をした。そしてマヨビンをペイントコンディショナーにセットし、30分撹拌した。その後試料のクッション層と導電層の層間剥離を目視で確認し、クッション層の密着性を評価した。

◎:すべて剥離なし。 非常に良好な結果である。
○:すべて剥離はないが、端部に浮きが生じている。 良好な結果である。
△:剥離した試料が5つ未満。 実用上問題ない。
×:剥離した試料が5以下 実用不可。
【0111】
<シールド性評価>
得られた電磁波シールドシートを縦50mm・横50mmの大きさに準備し試料とした。前記試料を150℃、2MPaの条件で30分間熱圧着を行い本硬化させた。次いで導電層の剥離性シートを剥がし、導電層の表面抵抗値を三菱化学アナリテック社製「ロレスターGP」の四探針プローブを用いて測定した。評価基準は以下の通りである。

◎:0.2[Ω/□]未満。非常に良好な結果である。
○:0.2[Ω/□]以上、0.6[Ω/□]未満。良好な結果である。
△:0.6[Ω/□]以上、1.2[Ω/□]未満。実用上問題ない。
×:1.2[Ω/□]以上。実用不可。
【0112】
<グランド接続性評価>
得られた部品搭載基板を、図13の断面図に示す底部のグランド端子a‐b間の接続抵抗値をHIOKI社製RM3544とピン型リードプローブを用いて測定することにより、グランド接続性を評価した。すなわち側面側に露出したグランドパターンに電磁波遮蔽層がアースコンタクトしているか否かを確認した。
評価基準は以下の通りである。

◎:接続抵抗値が200mΩ未満。非常に良好な結果である。
〇:接続抵抗値が200mΩ以上、500mΩ未満。良好な結果である。
△:接続抵抗値が500mΩ以上、1000mΩ未満。実用上問題ない。
×:接続抵抗値が1000mΩ以上。実用不可。
【0113】
<基板割れ評価>
図13に示す電子部品搭載基板の溝部の裏側にあたる部分の割れをレーザー顕微鏡によって観察し評価した。観察は異なる溝20カ所を評価した。
評価基準は以下の通りである。

◎:割れ無し。非常に良好な結果である。
〇:割れの発生個所が5未満。良好な結果である。
△:割れの発生個所が5以上、10未満。実用上問題ない。
×:割れの発生個所が10以上。実用不可。
【0114】
実施例および比較例に係る電子部品搭載基板の評価結果を表1〜3に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【符号の説明】
【0118】
1 電磁波シールド層
2 導電層
3 導電性フィラー
4 等方導電層b
5 等方導電層a
6 クッション性の部材
7 クッション層
8 離形層
10 電磁波シールドシート
20 基板
21 配線または電極
22 グランドパターン
23 インナービア
24 はんだボール
25 ハーフダイシング溝
30 電子部品
31 半導体チップ
32 モールド樹脂
33 ボンディングワイヤ
40 プレス基板
101〜102 電子部品搭載基板
【要約】
【課題】クッション密着性が良好であり、電子部品の搭載により形成された段差部に確実に追従変形するとともに該段差部内において基板に形成されたグランドパターンとの接続が確実に行われ、高い接続信頼性によって長期的に高い電磁波シールド効果を発揮する電磁波シールドシートを提供することを目的とする。
【解決手段】クッション層と導電層を有する積層体であり、前記導電層は、バインダー樹脂および導電性フィラーを含む等方導電層であって、厚みが8〜70μmであり、前記クッション層と反対側の領域における導電性フィラーの含有量は、前記クッション層側の領域における導電性フィラーの含有量よりも大きいことを特徴とする電磁波シールドシートにより解決される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15