(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497513
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】汚染土壌処理装置および汚染土壌処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20190401BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20190401BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20190401BHJP
G21F 9/08 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
G21F9/28 Z
G21F9/28 521A
G21F9/06 521B
G21F9/12 501J
G21F9/06 511B
G21F9/08 511F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-55188(P2015-55188)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-176716(P2016-176716A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】多田 光宏
【審査官】
大門 清
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−108758(JP,A)
【文献】
特開2013−140031(JP,A)
【文献】
特開2014−174115(JP,A)
【文献】
特開2014−070997(JP,A)
【文献】
特開2013−181882(JP,A)
【文献】
特開2014−044148(JP,A)
【文献】
特開2014−102122(JP,A)
【文献】
特開2013−178149(JP,A)
【文献】
特開2013−186025(JP,A)
【文献】
特開2015−014523(JP,A)
【文献】
特開2014−119417(JP,A)
【文献】
米国特許第05366634(US,A)
【文献】
特開2016−20860(JP,A)
【文献】
特開2014−69157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00− 9/36
C02F11/00−11/20
B01D21/01
C02F 1/52− 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質により汚染された土壌を処理する汚染土壌処理装置において、
放射性物質を含む上記土壌を収容し洗浄水を受ける洗浄槽を有し、該洗浄槽内で上記土壌を洗浄水により洗浄して上記土壌中の放射性物質を洗浄水に溶離させるとともに、放射性物質が溶離された土壌を沈降土として槽下部に沈降させ、上記放射性物質を含む上澄液を排水するとともに上記沈降土を排出する洗浄装置と、
上記洗浄装置からの上記沈降土を受け該沈降土を脱水処理し脱水処理水を排出する脱水処理装置と、
上記洗浄装置からの上澄液を受け該上澄液に含まれる土壌を濾過材で捕捉して除去し、該土壌が除去された上澄液を濾過処理水として排水するとともに、捕捉した土壌を濾過残渣として上記洗浄槽又は上記脱水処理装置へ送出する濾過装置と、
該濾過装置からの濾過処理水に含まれる放射性物質を、放射性物質を吸着する吸着剤充填層により吸着除去し、放射性物質が除去された上記濾過処理水を吸着処理水として排水する吸着装置と、
上記脱水処理装置からの脱水処理水を受け該脱水処理水に含まれる放射性物質を固化処理する固化処理装置とを備え、
上記洗浄装置と上記脱水処理装置は、洗浄装置が濾過装置からの濾過残渣を洗浄水により洗浄して濾過残渣中の放射性物質を洗浄水に溶離させて沈降土を脱水処理装置へ供給することと、脱水処理装置が濾過装置からの濾過残渣を脱水処理することとのいずれかを選択可能としていることを特徴とする汚染土壌処理装置。
【請求項2】
固化処理装置は、脱水処理装置からの脱水処理水を受けて逆浸透膜により放射性物質が濃縮された濃縮水を排水するとともに、該放射性物質が除去された脱水処理水を膜処理水として排水する逆浸透膜処理装置と、該逆浸透膜処理装置で分離された放射性物質を含む濃縮水を受けて濃縮水の水分を蒸発させ放射性物質を固化させる蒸発固化処理装置とを有し、
洗浄装置は、吸着装置からの吸着処理水と上記逆浸透膜処理装置からの膜処理水とを、外部から供給される補給水とともに洗浄水として洗浄槽に受けることとする請求項1に記載の汚染土壌処理装置。
【請求項3】
放射性物質により汚染された土壌を処理する汚染土壌処理方法において、
放射性物質を含む上記土壌を洗浄槽に収容し、該土壌を洗浄水により上記洗浄槽内で洗浄して上記土壌中の放射性物質を洗浄水に溶離させるとともに、放射性物質が溶離された土壌を沈降土として槽下部に沈降させ、上記放射性物質を含む上澄液を排水するとともに上記沈降土を排出する洗浄工程と、
上記洗浄工程で排出された上記沈降土を脱水処理装置で脱水処理し脱水処理水を排出する脱水処理工程と、
上記洗浄工程で排水された上記上澄液に含まれる土壌を濾過材で捕捉して除去し、該土壌が除去された上澄液を濾過処理水として排水するとともに、捕捉した土壌を濾過残渣として上記洗浄槽又は上記脱水処理装置へ送出する濾過工程と、
該濾過工程で排水された濾過処理水に含まれる放射性物質を、放射性物質を吸着する吸着剤充填層により吸着除去し、放射性物質が除去された上記濾過処理水を吸着処理水として排水する吸着工程と、
上記脱水処理工程で排水された脱水処理水に含まれる放射性物質を固化処理する固化処理工程とを備え、
上記洗浄工程と上記脱水処理工程は、洗浄工程が濾過工程で送出される濾過残渣を洗浄水により洗浄して濾過残渣中の放射性物質を洗浄水に溶離させて沈降土を脱水処理装置へ供給することと、脱水処理工程が濾過工程で送出される濾過残渣を脱水処理することとのいずれかを選択可能としていることを特徴とする汚染土壌処理装置。
【請求項4】
固化処理工程は、脱水処理工程で排水された脱水処理水を受けて逆浸透膜により放射性物質が濃縮された濃縮水を排水するとともに、該放射性物質が除去された脱水処理水を膜処理水として排水する逆浸透膜処理工程と、該逆浸透膜処理工程で分離された放射性物質を含む濃縮水を受けて濃縮水の水分を蒸発させ放射性物質を固化させる蒸発固化処理工程とを有し、
洗浄工程にて、吸着工程で排水された吸着処理水と上記逆浸透膜処理工程で排水された膜処理水とを、外部から供給される補給水とともに洗浄水として、洗浄槽に受けることとする請求項3に記載の汚染土壌処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質により汚染された土壌を洗浄する汚染土壌処理装置および汚染土壌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質(放射性セシウム等)により汚染された土壌に対して、放射性物質の濃度を低減するように除染する技術が検討されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には放射性物質(主に放射性セシウム)で汚染された土壌を洗浄する土壌洗浄方法が開示されている。該土壌洗浄方法は、後述のセシウム溶離工程、セシウム回収工程、溶離液のリサイクル分解工程を有している。上記セシウム溶離工程では、放射性物質(主に放射性セシウム)で汚染された土壌を洗浄水としてのシュウ酸水溶液で洗浄して土壌からセシウムを溶離させてから、土壌と溶離液とに固液分離する。セシウム回収工程では、セシウム溶離工程を経た溶離液(上澄液)にゼオライト等の吸着剤を添加して、溶離液に含まれるセシウムを吸着して固液分離することにより、セシウムを吸着した吸着剤を回収する。溶離液のリサイクル分解工程では、セシウム回収工程を経た溶離液の一部をセシウム溶離工程に戻して洗浄水として利用する。
【0004】
セシウム溶離工程は、通常、洗浄装置の洗浄槽で土壌を洗浄水により洗浄した後、洗浄槽内で土壌を沈降させることにより行われる。また、セシウム回収工程は、通常、吸着処理装置の吸着処理水槽に貯留された溶離液に吸着剤を添加してセシウムを吸着した後、セシウムを吸着した吸着剤を濾過装置により濾過して回収することにより行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「福島第一原発事故で汚染した水・土・下水汚泥からの放射性セシウム回収技術」、PETROTHCH、公益社団法人石油学会、第37巻、第5号、p.323-328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の土壌洗浄方法では、洗浄装置、吸着処理装置や濾過装置等の多くの装置が放射性セシウムに直接接触して高レベルで汚染されるので、放射性物質の取扱管理基準に基づいて各装置を厳格に管理する必要があり、その管理が煩雑となるとともに管理コストが嵩んでしまう。
【0007】
本発明では、このような事情に鑑みて、管理が簡単で管理コストを低く抑えることができる汚染土壌処理装置および汚染土壌処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述の課題は、次の第一発明に係る汚染土壌処理装置及び第二発明に係る汚染土壌処理方法により解決される。
【0009】
<第一発明>
第一発明は、放射性物質により汚染された土壌を処理する汚染土壌処理装置において、放射性物質を含む上記土壌を収容し洗浄水を受ける洗浄槽を有し、該洗浄槽内で上記土壌を洗浄水により洗浄して上記土壌中の放射性物質を洗浄水に溶離させるとともに、放射性物質が溶離された土壌を沈降土として槽下部に沈降させ、上記放射性物質を含む上澄液を排水するとともに上記沈降土を排出する洗浄装置と、該洗浄装置からの上澄液を受け該上澄液に含まれる土壌を濾過材で捕捉して除去し、該土壌が除去された上澄液を濾過処理水として排水するとともに、捕捉した土壌を濾過残渣として排出する濾過装置と、該濾過装置からの濾過処理水に含まれる放射性物質を、放射性物質を吸着する吸着剤充填層により吸着除去し、放射性物質が除去された上記濾過処理水を吸着処理水として排水する吸着装置と、上記洗浄装置からの上記沈降土を受け該沈降土を脱水処理する脱水処理装置と、該脱水処理装置からの脱水処理水を受け該脱水処理水に含まれる放射性物質を固化処理する固化処理装置とを備えることを特徴としている。
【0010】
第一発明に係る汚染土壌処理装置では、洗浄装置での洗浄によって土壌中の放射性物質の大部分が溶離され洗浄水へ移行しており、洗浄装置で生成された上澄液は、放射性物質の含有濃度が高くなっているとともに、沈降せず浮遊している土壌を含んでいる。そして、該上澄液は、濾過装置へ送られ、該上澄液中に含まれる土壌が濾過装置で捕捉されて除去された後、濾過処理水として吸着装置に送られ、該吸着装置の吸着剤充填層で放射性物質が効率良く除去される。一方、上記洗浄装置からの上記沈降土は洗浄水を含んでおり脱水処理装置で脱水処理される。また、脱水処理装置からの脱水処理水に含まれる放射性物質が固化処理装置で固化処理される。
【0011】
したがって、上記汚染土壌処理装置では、洗浄装置、濾過装置、吸着装置、脱水処理装置及び固化処理装置が放射性物質に接触することとなる。しかし、これらの装置のうち吸着装置では、放射性物質が直接接触するのは吸着剤充填層の吸着剤であり、放射性物質を吸着した該吸着剤は、適宜、吸着装置から取り出され、吸着装置には新たな吸着剤が充填される。したがって、吸着装置自体が放射性物質により高レベルに汚染されることはない。また、沈降土に含まれる放射性物質は少ないので、該沈降土を脱水処理する脱水処理装置そして脱水処理水を固化処理する固化処理装置も、放射性物質により高レベルに汚染されることがない。つまり、本発明に係る汚染土壌処理装置では、高レベルで放射性物質に汚染されるのは、洗浄装置及び濾過装置のみであり、従来と比べて、高レベルで汚染される装置の数が少ないので、放射性物質の取扱管理基準に基いた各装置の管理が容易であり、管理コストを抑制できる。
【0012】
第一発明において、固化処理装置は、脱水処理装置からの脱水処理水を受けて逆浸透膜により放射性物質が濃縮された濃縮水を排水するとともに、該放射性物質が除去された脱水処理水を膜処理水として排水する逆浸透膜処理装置と、該逆浸透膜処理装置で分離された放射性物質を含む濃縮水を受けて濃縮水の水分を蒸発させ放射性物質を固化させる蒸発固化処理装置とを有し、洗浄装置は、吸着装置からの吸着処理水と上記逆浸透膜処理装置からの膜処理水とを、外部から供給される補給水とともに洗浄水として洗浄槽に受けることとしてもよい。
【0013】
このような構成とした場合、吸着装置からの吸着処理水および逆浸透膜処理装置からの膜処理水は、洗浄装置の洗浄槽へ帰還して洗浄水として再利用される。この吸着処理水および膜処理水によって洗浄水を賄うことができるので、外部から新たに洗浄槽へ補給する補給水はわずかな量で済み、洗浄水による土壌の洗浄を効率よく行うことができる。
【0014】
<第二発明>
第二発明は、放射性物質により汚染された土壌を処理する汚染土壌処理方法において、放射性物質を含む上記土壌を洗浄槽に収容し、該土壌を洗浄水により上記洗浄槽内で洗浄して上記土壌中の放射性物質を洗浄水に溶離させるとともに、放射性物質が溶離された土壌を沈降土として槽下部に沈降させ、上記放射性物質を含む上澄液を排水するとともに上記沈降土を排出する洗浄工程と、該洗浄工程で排水された上記上澄液に含まれる土壌を濾過材で捕捉して除去し、捕捉した土壌が除去された上澄液を濾過処理水として排水するとともに、該土壌を濾過残渣として排出する濾過工程と、該濾過工程で排水された濾過処理水に含まれる放射性物質を、放射性物質を吸着する吸着剤充填層により吸着除去し、放射性物質が除去された上記濾過処理水を吸着処理水として排水する吸着工程と、上記洗浄工程で排出された上記沈降土を脱水処理する脱水処理工程と、該脱水処理工程で排水された脱水処理水に含まれる放射性物質を固化処理する固化処理工程とを備えることを特徴としている。
【0015】
第二発明において、固化処理工程は、脱水処理工程で排水された脱水処理水を受けて逆浸透膜により放射性物質が濃縮された濃縮水を排水するとともに、該放射性物質が除去された脱水処理水を膜処理水として排水する逆浸透膜処理工程と、該逆浸透膜処理工程で分離された放射性物質を含む濃縮水を受けて濃縮水の水分を蒸発させ放射性物質を固化させる蒸発固化処理工程とを有し、洗浄工程にて、吸着工程で排水された吸着処理水と上記逆浸透膜処理工程で排水された膜処理水とを、外部から供給される補給水とともに洗浄水として、洗浄槽に受けることとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、放射性物質に直接接触して高レベルに汚染されるのは、洗浄装置及び濾過装置のみであり、従来と比べて、高レベルに汚染される装置の数が少ないので、放射性物質の取扱管理基準に基いた各装置の管理が容易であり、管理コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る汚染土壌処理装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る汚染土壌処理装置を示す概略構成図である。本実施形態に係る汚染土壌処理装置は、放射性物質(セシウム等)を含む土壌の該放射性物質を除去するように、該土壌を洗浄する。洗浄後の放射性物質を高濃度で含有する排水から放射性物質を吸着剤により吸着除去し、洗浄後の土壌を脱水処理した排水中の放射性物質を逆浸透膜処理により濃縮し、該濃縮水の水分蒸発固化後の放射性物質を含む固化物を保管する。
【0020】
図1に見られるように、汚染土壌処理装置は、放射性物質を含む土壌を洗浄水で洗浄して上澄液と沈降土とに分離する洗浄装置1と、該洗浄装置1に接続され、該洗浄装置1からの上澄液を受けて該上澄液に含まれる土壌を濾過材により捕捉して除去する濾過装置2と、濾過装置2からの濾過処理水に含まれる放射性物質を吸着剤により吸着除去する吸着装置3と、洗浄装置1からの沈降土を脱水処理する脱水処理装置4と、脱水処理装置4からの脱水処理水に含まれる放射性物質を固化処理する固化処理装置5とを有している。
【0021】
洗浄装置1は、放射性物質を含む土壌を受け入れて収容し洗浄水を受ける洗浄槽1Aと、洗浄槽1A内を撹拌するための撹拌機1Bとを有している。該洗浄装置1は、洗浄槽1A内で土壌を洗浄水により洗浄して該土壌中の放射性物質の殆どを洗浄水に溶離させるとともに、放射性物質が溶離された土壌を沈降土として槽下部に沈降させる。この結果、洗浄槽1A内で、沈降土が下層を形成し、上記放射性物質を含む洗浄水は上澄液として上層を形成する。該上澄液は洗浄槽1Aから排水されて濾過装置2へ送られ、上記沈降土は槽下部から排出されて脱水処理装置4へ送られる。
【0022】
本実施形態では、洗浄水として、酸、例えばシュウ酸等の有機酸や鉱酸等の無機酸の水溶液が使用される。
【0023】
撹拌機1Bは、洗浄槽内に垂下しており下端部に設けられた撹拌翼で洗浄槽1A内を撹拌するようになっている。該撹拌機1Bが洗浄槽1A内を撹拌すると、土壌に含まれる放射性物質の洗浄水への移行(溶離)が促進される。
【0024】
洗浄装置1の洗浄槽1Aには、洗浄水供給管8が接続されており、該洗浄水供給管8から洗浄水が供給されるようになっている。本実施形態では、洗浄水として、吸着装置3からの吸着処理水としての吸着処理水と、固化処理装置5からの後述の膜処理水と、さらには、吸着処理水および膜処理水により供給される水量に対する不足分(例えば、後述の蒸発固化処理装置7で蒸発する分)を補う量だけ外部から補給される補給水とが、洗浄水供給管8を経て上記洗浄槽1Aに供給される。
【0025】
濾過装置2は、洗浄装置1の洗浄槽1Aの上部に配管を介して接続されており、洗浄槽1Aから排水された上澄液を受ける。該濾過装置2は、上澄液に浮遊、懸濁している土壌を捕捉するための濾過材(図示せず)を有している。該濾過材は、例えば、濾布フィルタ等により構成される。また、濾布フィルタとして珪藻土濾過フィルタを採用してもよい。さらに、濾過材としては、濾布に限られず、例えば、金属濾材、高分子材料製又はセラミックス製のUF膜やMF膜、砂濾材等を採用してもよい。
【0026】
濾過装置2は、濾過材に付着した土壌による閉塞を防止する閉塞防止機構(図示せず)を有していている。該閉塞防止機構は、例えば、濾過材を透過した濾過処理水を逆流させ濾過材に付着した土壌を除去する逆洗機構や、濾過材に機械的振動を与えて土壌を除去する機構や、圧縮空気を吹き込んで濾過材に振動を与えて土壌を除去する機構によって構成することができる。濾過材により土壌が除去された上澄液は、濾過処理水として排水される。
【0027】
また、本実施形態では、濾過装置2で捕捉除去された濾過残渣である土壌は、逆洗機構により逆流させた
濾過処理水とともに、洗浄槽1A内の上澄液へ戻されるようになっている。戻された土壌は洗浄槽1A内で再度洗浄され、沈降土として槽下部に沈降する。このように濾過残渣を上澄液に戻す構成とすることにより、濾過残渣中に残存する放射性物質をさらに除去することができる。
【0028】
吸着装置3は、濾過装置2に接続されており、濾過装置2からの濾過処理水を受ける。該吸着装置3は、放射性物質を吸着するための吸着剤が充填された充填層を有しており、濾過処理水に含まれる放射性物質を上記吸着剤によって吸着除去するようになっている。本実施形態では、上記吸着剤として、例えばゼオライト等が使用されている。また、吸着装置3は、既述の洗浄水供給管8に接続されており、吸着装置3から排出された吸着処理水が上記洗浄水供給管8に送られるようになっている。
【0029】
脱水処理装置4は、洗浄装置1の洗浄槽1Aの槽下部および濾過装置2に配管を介して接続されており、該洗浄槽1Aの槽下部に沈降している沈降土を受けるようになっている。洗浄槽1Aから抜き出された沈降土には洗浄水が含まれている。該脱水処理装置4は、例えばベルトフィルタ、フィルタプレス等の脱水機(図示せず)を有しており、該脱水機で洗浄水を含む沈降土を脱水処理し脱水土と脱水処理水を排出する。また、本実施形態では、濾過装置2で捕捉除去された濾過残渣は洗浄装置1の洗浄槽1Aに戻されることとしたが、これに代えて、
図1にて一点鎖線で示されるように、濾過残渣が脱水処理装置4へ送られて沈降土とともに脱水処理されることとしてもよい。
【0030】
固化処理装置5は、脱水処理装置4に接続されており、脱水処理装置4から排水される放射性物質を含む脱水処理水を受けるようになっている。固化処理装置5は、脱水処理水に含まれる放射性物質を逆浸透膜(RO膜。図示せず)により放射性物質が濃縮された濃縮水を排水するとともに、放射性物質が除去された脱水処理水を膜処理水として排水するための逆浸透膜処理装置6と、該逆浸透膜処理装置6で分離除去された放射性物質を含む濃縮水を加熱器(図示せず)で加熱して水分を蒸発させることにより放射性物質を濃縮して固化させる蒸発固化処理装置7とを有している。
【0031】
また、逆浸透膜処理装置6は、既述の洗浄水供給管8に接続されており、逆浸透膜処理装置6で逆浸透膜処理を施され排水された膜処理水が上記洗浄水供給管8に送られるようになっている。
【0032】
このような構成を有する本実施形態の汚染土壌処理装置によって、放射性物質を含む土壌は以下の要領で処理される。まず、洗浄装置1の洗浄槽1Aに洗浄水を供給して収容した後、放射性物質を含む土壌を該洗浄水中に投入する。そして、撹拌機1Bにより洗浄槽1A内を撹拌して、土壌粒子を浄水中に浮遊又は懸濁させ、洗浄水中への放射性物質の溶離を促進させる。
【0033】
次に、撹拌機1Bの作動を停止して、土壌を沈降土として洗浄槽1Aの槽下部に沈降させる。該土壌は槽下部に沈降して下層を形成する。一方、放射性物質が溶解した洗浄水は上澄液として上層を形成する。
【0034】
上記洗浄槽1A内の上澄液は、該洗浄槽1Aから排水されて濾過装置2へ送られる。濾過装置2に送られた上澄液は、該上澄液中に浮遊、懸濁している土壌が濾過材で捕捉されて除去され、該濾過材を透過した洗浄排水が濾過処理水として吸着装置3へ送られる。上記土壌に含まれていた放射性物質はそのほとんどが洗浄装置1での洗浄により上澄液中に溶離しているので、上記濾過材で捕捉される土壌中の放射性物質の濃度は十分に低減されている。該濾過装置2で除去された土壌(濾過残渣)は、既述したように洗浄槽1A内の上澄液に戻される。上記洗浄槽1Aの槽下部に沈降し抜き出された沈降土は洗浄水を含んでおり、脱水処理装置4へ送られて、脱水機により脱水処理される。
【0035】
吸着装置3へ送られた濾過処理水は、吸着剤の充填層を透過することにより、濾過処理水に含まれる放射性物質が上記充填層における吸着剤によって吸着除去される。この結果、濾過処理水は、洗浄水として再利用可能な程度まで放射性物質が上記吸着剤により吸着除去されてから、吸着処理水として吸着装置3から排水される。該吸着処理水は、洗浄水供給管8へ送られて、洗浄装置1の洗浄槽1Aへ洗浄水として供給され再利用される。また、上述の吸着処理を繰り返して放射性物質を吸着した上記吸着剤は、適宜、吸着装置3から取り出された後、保管される。また、吸着装置3には新たな吸着剤が充填される。
【0036】
また、洗浄装置1から排出された沈降土は洗浄水を含んでおり、脱水処理装置4へ送られて、脱水機により脱水処理される。該沈降土が脱水処理された後の土壌(脱水土)は、放射性物質の含有濃度が十分に低減されており、除染処理土壌として処分される。
【0037】
脱水処理装置4からの放射性物質が残存する脱水処理水は、固化処理装置5の逆浸透膜処理装置6へ送られて、該逆浸透膜処理装置6で逆浸透膜処理されて放射性物質が分離除去される。分離除去された放射性物質を含む濃縮水は、蒸発固化処理装置7へ送られて、加熱器で加熱され、水分が蒸発することにより、放射性物質が固化される。該放射性物質の固化物は容器に収容されて保管される。
【0038】
脱水処理水は、逆浸透膜処理装置6で逆浸透膜処理されて、洗浄水として再利用可能な程度までに放射性物質が除去されており、膜処理水として固化処理装置5から排水される。該膜処理水は、洗浄水供給管8へ送られて、洗浄装置1の洗浄槽1Aへ洗浄水として供給される。
【0039】
本実施形態に係る汚染土壌処理装置では、洗浄装置1、濾過装置2、吸着装置3、脱水処理装置4及び固化処理装置5が放射性物質に接触することとなる。しかし、これらの装置のうち吸着装置3では、放射性物質が直接接触するのは吸着剤充填層の吸着剤であり、放射性物質を吸着した該吸着剤は、適宜、吸着装置から取り出され、吸着装置3には新たな吸着剤が充填される。また、沈降土に含まれる放射性物質は少ないので、該沈降土を脱水処理する脱水処理装置4そして脱水処理水を固化処理する固化処理装置5も、放射性物質により高レベルに汚染されることがない。つまり、上記汚染土壌処理装置では、高レベルで放射性物質に汚染されるのは、洗浄装置1及び濾過装置2のみであり、従来と比べて、高レベルで汚染される装置の数が少ないので、放射性物質の取扱管理基準に基いた各装置の管理が容易であり、管理コストを抑制できる。
【0040】
本実施形態に係る汚染土壌処理装置では、洗浄装置1で生成された上澄液は、放射性物質の含有濃度が高くなっており、また、土壌が浮遊、懸濁しており、濾過装置2へ送られる。そして、該上澄液は、濾過装置2で該上澄液中に混ざっている土壌が捕捉されて除去され、濾過処理水として吸着装置3に送られ、該吸着装置3で放射性物質が効率良く除去される。また、放射性物質が除去された濾過処理水を吸着処理水として排水し洗浄装置1の洗浄槽1Aに洗浄水として戻すことにより、外部からの補給水の補給をできる限り少なくして土壌の洗浄を行うことができる。
【0041】
また、吸着装置3からの吸着処理水および固化処理装置5からの膜処理水は、洗浄装置1の洗浄槽1Aへ帰還して洗浄水として再利用される。この吸着処理水および膜処理水によって洗浄水を賄うことができるので、外部から新たに洗浄槽1Aへ補給する補給水はわずかな量で済み、洗浄水による土壌の洗浄を効率よく行うことができる。
【0042】
本実施形態では、固化処理装置5は、逆浸透膜処理装置6で分離除去された放射性物質を、蒸発固化処理装置7の加熱器で加熱して水分を蒸発させることにより、固化させることとしたが、この蒸発固化処理装置7に代えて、例えば、セメント固化処理装置を設けて、上記放射性物質をセメントで固化することとしてもよい。セメントで固化された固化物は、そのまま保管してもよいし、容器に収容して保管してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 洗浄装置
2 濾過装置
3 吸着装置
4 脱水処理装置
5 固化処理装置