特許第6497566号(P6497566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立工機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000002
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000003
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000004
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000005
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000006
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000007
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000008
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000009
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000010
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000011
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000012
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000013
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000014
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000015
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000016
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000017
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000018
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000019
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000020
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000021
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000022
  • 特許6497566-電池パック及び電気機器 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497566
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】電池パック及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20190401BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20190401BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190401BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H01M2/10 N
   H01M2/10 E
   B25F5/00 C
   B25F5/00 H
   H02J7/00 S
   H02J7/00 301B
   H02H7/18
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-18168(P2018-18168)
(22)【出願日】2018年2月5日
(62)【分割の表示】特願2015-506781(P2015-506781)の分割
【原出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2018-78126(P2018-78126A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2018年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-58944(P2013-58944)
(32)【優先日】2013年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(72)【発明者】
【氏名】西河 智雅
(72)【発明者】
【氏名】高野 信宏
(72)【発明者】
【氏名】松野 智
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−049074(JP,A)
【文献】 特開2012−035398(JP,A)
【文献】 特開2011−218510(JP,A)
【文献】 特開2011−161602(JP,A)
【文献】 特開2009−238538(JP,A)
【文献】 特表2007−536098(JP,A)
【文献】 特開2006−351384(JP,A)
【文献】 特開2007−144813(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0209751(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
B25F 5/00
H02H 7/18
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列接続してなるセル組と、
前記セル組の各電池セルの電圧を監視し、少なくともいずれかの電池セルの電圧が基準値以下に低下したときに警報信号を出力する電池電圧監視手段と、
電気機器本体と電気的に接続するための前記セル組のプラス端子及びマイナス端子と、前記警報信号を出力するための警報信号出力端子と、が形成された機器接続部と、
前記警報信号出力端子から出力される警報信号を入力するための入力端子を備えている電気機器本体への接続を許容し、前記入力端子を備えていない電気機器本体への接続を禁止する電力供給不許可手段と、
を有することを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記電力供給不許可手段は、定格電圧が前記セル組の出力電圧より低い電気機器本体への接続を禁止することを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記電力供給不許可手段は、前記プラス端子、前記マイナス端子及び前記警報信号出力端子のいずれかの端子に並設された第1突条部及び第2突条部により構成されており、
定格電圧が前記セル組の出力電圧より低い第1不適合電気機器本体が前記機器接続部に接続できないように前記第1突条部の形状が規定されており、
前記入力端子を備えていない第2不適合電気機器本体が前記機器接続部に接続できないように前記第2突条部の形状が規定されていることを特徴とする請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記第1突条部は、前記機器接続部の上面よりも低く形成され、
前記第2突条部は、前記第1突条部よりも高く形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記第1突条部及び前記第2突条部は、略同じ高さに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電池パック。
【請求項6】
前記プラス端子と接続される機器側プラス端子と、
前記マイナス端子と接続される機器側マイナス端子と、
前記警報信号出力端子と接続され、該警報信号が入力される前記入力端子となる異常信号入力端子と、
前記異常信号入力端子に入力された前記警報信号によって請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電池パックからの電力供給を遮断するスイッチ手段と、
を備えることを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック及び電池パックを電源とする電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックを電源とする電動工具、ライト、扇風機等のコードレス電気機器が広く普及している。電池パックには、通常、複数の電池セルを接続してなるセル組が内蔵されており、電池種としてはリチウムイオン電池が主流となっている。リチウムイオン電池を用いた電池パックには、電池温度、電流及びセル組を構成するそれぞれの電池セルの電圧を監視するため保護ICやマイクロコンピュータ等の監視手段を内蔵しておく必要がある。いずれかの電池セルがショートしていたり、電池セルの電圧が過放電状態に至る閾値に達している場合には、監視手段から警報信号が出力され、これに応答して電池パックの使用を中止させるためである。
【0003】
電気用品安全法では、単電池当たり400AH/Lを超える容量のリチウムイオン電池を対象に前記監視手段を設けることを義務づけている。電動工具の場合、18650サイズのセル(直径18mm×高さ65mm)が主流であり、この体積で換算すると1セル当たり1.83Ahを超えるリチウムイオン電池が電気用品安全法による規制対象となる。従来多く使われていた3Ahのセル組は、1.5Ahの電池セルを2つ並列接続したものであり、電気用品安全法の規制対象外であったが、最近になって2.0Ahの電池セルが開発され、これを2つ並列接続した4Ah電池が市場に出回るようになった。この2.0Ah電池セルは、電気用品安全法で定めた基準を上回るため、電気用品安全法で定められている次の2つの条件を満たす必要がある。
【0004】
(1)温度又は電流の管
常な温度上昇が発生しないように設計若しくは組電池外に電流制限装置を設けること。
【0005】
(2)組電池への単電池組込み
【0006】
各電池ブロックにおいて、同等の容量のもので構成し、転極が起こらないようにすること。(即ち、過放電状態が起こらないようにすること。)
【0007】
上記した電気用品安全法による規制を遵守するために、前記監視手段を内蔵した電池パックの使用を前提とした電気機器は、電池パックから電気機器に流れる電流経路にFET等のスイッチング素子を設け、監視手段から出力された警報信号に応答してスイッチング素子をオフとし、電池パックの使用を強制終了させるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−62343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電気用品安全法による規制対象外の容量の電池セルを用いた電池パックには、監視手段が内蔵されていないものがあり、当該電池パックの使用を前提とした電気機器本体にも電流路を遮断するためのスイッチング素子が設けられていない。即ち、電池パックと電気機器本体はそれぞれのプラス端子同士、マイナス端子同士のみで接続される構成となっている。そのため、電気用品安全法により規制を受ける電池セルと監視手段を内蔵した電池パックをこの種の電気機器本体に装着すると、電気機器は駆動するものの監視手段から出力される警報信号は電気機器本体側には伝達されず、監視手段の機能を実現させることができない。従って、電気用品安全法による規制を遵守することができない結果となる。
【0010】
詳述すると、監視手段を内蔵した高容量電池パックは、セル組のプラス端子とマイナス端子から引き出された2端子以外に、監視手段からの出力信号を出力するための端子を備えている。一方、電気機器本体側は電池パックのプラス端子とマイナス端子に接続するための2端子構成であるため、電池パックに内蔵された監視手段からの出力信号を受けることができない。また、電気機器本体側は監視手段からの出力信号に対して不感構成となっているため、電流経路を遮断するためのFET等の遮断手段も設けられていない。
【0011】
本発明は、上述した実情に鑑み、電気機器本体に対して不適合な電池パックは使用ができないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る電池パックは、複数の電池セルを直列接続してなるセル組と、セル組の各電池セルの電圧を監視し、少なくともいずれかの電池セルの電圧が基準値以下に低下したときに警報信号を出力する電池電圧監視手段と、電気機器本体と電気的に接続するためのセル組のプラス端子及びマイナス端子と、警報信号を出力するための警報信号出力端子と、が形成された機器接続部と、警報信号出力端子から出力される警報信号を入力するための入力端子を備えている電気機器本体への接続を許容し、入力端子を備えていない電気機器本体への接続を禁止する電力供給不許可手段と、を有することを特徴とする。
また、本発明の別の構成による電池パックは、電気機器本体に接続されると電気機器本体に第1の定格電圧を出力する電池パックであって、第1の定格電圧に対応し、電池パックから供給される電力を遮断する電力遮断手段を備えた第1の電気機器本体への接続を許容しつつ、第1の定格電圧に対応し、電力遮断手段を備えていない第2の電気機器本体への接続を禁止する第1の接続規制手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
係る構成の電池パックによれば、電池パックが電力遮断手段を備えた電気機器のみに接続されることになり異常時の電池パックの損傷を抑えることができる。
上記した電池パックは第1の定格電圧に対応した第1及び第2の電気機器本体への接続を許容しつつ、第1の定格電圧よりも小さい第2の定格電圧に対応した第3の電気機器本体への接続を禁止する第2の接続規制手段を備えたことを特徴としている
池パックが小さな定格電圧にしか対応していない第3の電気機器に接続されて第3の電気機器が損傷するのを防ぐことができる。
【0014】
また、上記した電池パックは第1及び第2の電気機器本体のうち第2の電気機器本体のみに設けられた第1の識別手段に対して、第1の接続規制手段が拒絶することにより第2の電気機器本体への接続が禁止されるよう構成したことを特徴としている。
【0015】
また、上記した電池パックは第1乃至第3の電気機器本体のうち第3の電気機器本体のみに設けられた第2の識別手段に対して、第2の接続規制手段が拒絶することにより第3の電気機器本体への接続が禁止されるよう構成したことを特徴としている。
【0016】
また、上記した電池パックは第1乃至第3の電気機器本体のうち全ての電気機器本体に設けられた第3の識別手段が電池パックをこれら電気機器本体に接続する際に拒絶されないよう、第3の識別手段が通過する領域の外を第1の接続規制手段と第2の接続規制手段が通過するよう構成したことを特徴としている。
【0017】
将来さらに新たな種類の電池パックが増えた場合に、新たな種類の電池パックに新たに第3の接続規制手段を設けることにより、新たな種類の電池パックを既存の第1乃至第3の電気機器に接続できないよう構成することができる。
【0018】
また、上記した電池パックは第1乃至第3の電気機器本体のうち、第2の電気機器本体のみに設けられた第1の識別手段と、第3の電気機器本体のみに設けられた第2の識別手段と、第1乃至第3の電気機器本体のうち全ての電気機器本体に設けられた第3の識別手段と、に相当する凸部に対して第1及び第2の接続規制手段に相当する凸部が接触して拒絶することにより、電気機器本体への接続が禁止されるよう構成したことを特徴としている。
【0019】
また、上記した電気機器に設けられている電力遮断手段は、電池パックから異常の発生を予告する報知信号が入力される報知信号入力端子と、報知信号入力端子に入力された報知信号によって請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電池パックからの電力供給を遮断するスイッチ手段と、を備えることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の更に別の構成による電池パックは、複数の電池セルを直列接続してなり、電池容量が所定値以上のセル組と、セル組の各電池セルの電圧を監視し、少なくともいずれかの電池セルの電圧が基準値以下に低下したときに警報信号を出力する電池電圧監視手段と、電気機器本体と電気的に接続するためのセル組のプラス端子とマイナス端子及び電池電圧監視手段からの警報信号を出力する警報信号出力端子が形成された機器接続部と、定格電圧がセル組の出力電圧より低い電気機器本体、及び、警報信号出力端子から出力される警報信号を入力するための端子を備えていない電気機器本体のいずれをも不適合電気機器本体とし、当該不適合電気機器本体に対してはセル組からの電力供給ができないように構成した電力供給不許可手段とを有することを特徴としている。
【0021】
従来の電池パックには、上記のような電池電圧監視手段が設けられているものと設けられていないものが併存していたが、法律的要請もあるため、電池容量が所定値以上のセル組を内蔵している電池パックについては、電池電圧監視手段を設けることにし、セル組の各電池セルの電圧を監視し、少なくともいずれかの電池セルの電圧が基準値以下に低下したときには当該電池電圧監視手段から警報信号を出力するようにしている。ここで、所定値以上の電池容量とは、電池電圧監視手段を設けなくても済むような電池容量のものよりは大きいという趣旨である。
【0022】
上記のような電池パックを、定格電圧がセル組の出力電圧より低い電動工具本体や警報信号出力端子から出力される警報信号を入力するための端子を備えていない電動工具本体に装着して電動工具を駆動した場合には、電池電圧監視手段はその機能を実現することができない。そこで、上記のような電気機器本体に対してはセル組からの電力供給ができないように構成した。
【0023】
上記した電池パックにおいて、電力供給不許可手段は、不適合電気機器本体を機器接続部に接続できないように構成されていることを特徴としている。
【0024】
上記した電池パックを不適合な電動工具本体に対して接続できないようにしたものである。
【0025】
また。上記した電池パックにおいて、電力供給不許可手段は、プラス端子、マイナス端子及び警報信号出力端子のいずれかの端子と並設された第1突条部及び第2突条部とにより構成されており、定格電圧がセル組の出力電圧より低い不適合電動工具本体が機器接続部に接続できないように第1突条部の形状が規定されており、警報信号出力端子から出力される警報信号を入力するための端子を備えていない不適合電気機器本体が機器接続部に接続できないように第2突条部の形状が規定されていることを特徴としている。
【0026】
電池パックの工具接続部分の形状が不適合電気機器本体の電池パック接続部分の形状と係合できないようにすることで電池パックを不適合な電気機器本体に対して接続できないようにしたものである。
【発明の効果】
【0027】
電池パックが有する電池電圧監視機能を実現できない特定の電気機器本体には、本発明に係る電池パックを装着できないようにしたので、本発明に係る電池パックで駆動可能な状態の電気機器については、電気用品安全法による規制を遵守しつつ電池容量の大きい電池パック及び電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】電動工具本体及び電池パックの組み合わせ可否を示す説明図である。
図2】セル毎の電圧監視機能を有する電池パックを監視対応型電動工具本体に装着した状態を示した概略説明図である。
図3】セル毎の電圧監視機能を有する電池パックを監視非対応型電動工具本体に装着する過程を示した概略説明図である。
図4】セル毎の電圧監視機能を有さない電池パックを監視対応型電動工具本体に装着した状態を示した概略説明図である。
図5】セル毎の電圧監視機能を有さない電池パックを監視非対応型電動工具本体に装着した状態を示した概略説明図である。
図6】18V監視対応型電動工具本体の電池パック接続面を示す斜視図である。
図7】18V監視非対応型電動工具本体の電池パック接続面を示す斜視図である。
図8】14.4V監視対応型電動工具本体の電池パック接続面を示す斜視図である。
図9】14.4V監視非対応型電動工具本体の電池パック接続面を示す斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係る14.4V出力2端子構成電池パックの外観を示す斜視図である。
図11】本発明の実施の形態に係る14.4V出力3端子構成電池パックの外観を示す斜視図である。
図12】本発明の実施の形態に係る18V出力2端子構成電池パックの外観を示す斜視図である。
図13】本発明の実施の形態に係る18V出力3端子構成電池パックの外観を示す斜視図である。
図14】電動工具本体の凸部と電池パックの切欠部との形状を説明する図である。
図15】電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その1)である。
図16】電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その2)である。
図17】電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その3)である。
図18】電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その4)である。
図19】電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その5)である。
図20】電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その6)である。
図21】電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その7)である。
図22】電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その8)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。以下の説明では、電気機器の一例として電動工具を取り上げる。
【0030】
本発明による電池パックは、複数の電池セルを直列接続してなるセル組の電池容量が所定値以上のものであることが条件であるが、以下に説明する例では、上記電池容量の所定値を4Ahとする。電池容量が4Ah以上の高容量電池パックはエネルギー密度が高く、電池パック内に保護IC等の監視手段を設ける必要があることは先述の通りである。以下、3Ahの容量の電池パックを低容量電池パックの一例として、また4Ahの容量の電池パックを高容量電池パックの一例として取り上げる。また、3Ahの低容量電池パックには監視手段は内蔵されていないものとする。一方、高容量電池パックには監視手段が内蔵されており、監視手段からの出力信号を電気機器の一例としての電動工具本体に出力するための端子が備わっている。従って、高容量電池パックは、電池電圧を出力するためのプラス端子とマイナス端子の他に監視手段からの出力信号を出力する端子(以下、「S端子」と言う。)を有する3端子構成となっている。他方、ここで説明する低容量電池パックは、プラス端子とマイナス端子のみを有する2端子構成となっている。
【0031】
また、電池パックは直列接続した電池セルのセル数により分類することもでき、以下の説明では、2セル並列接続のセルブロックを4つ直列接続した構成のものと、2セル並列接続のセルブロックを5つ直列接続した構成のものを取り上げる。リチウムイオン電池は、充電後過放電直前までの平均電圧が3.6Vであるので、前者の構成の電池パックからは14.4Vの出力電圧が、後者の構成の電池パックからは18Vの出力電圧が得られる。14.4V出力電池パックと18V出力電池パックそれぞれについて2端子構成のものと3端子構成のものがある。従って、以下の説明では4種類の電池パック、即ち、14.4V出力2端子構成電池パック、14.4V出力3端子構成電池パック、18V出力2端子構成電池パック及び18V出力3端子構成電池パックを例に説明する。
【0032】
電池パックが装着される電動工具本体は、定格電圧が14.4Vのものと18Vのものに大別することができ、それぞれについて電池パックに内蔵された監視手段から出力される警報信号に対応可能なものと対応不能なものに分類することができる。詳述すると、監視手段からの警報信号に対応可能な電動工具本体には、電動工具本体内の放電経路にFET等のスイッチング素子が介挿されている。例えば、セル電圧が過放電状態に至る閾値に達しているため装着した電池パック内の監視手段から警報信号が出力されると、当該警報信号に応答して前記スイッチング素子をオフとする構成のものが警報信号に対応可能な電動工具本体であり、電池パックのプラス端子とマイナス端子に接続する端子と、警報信号を入力するための端子を有する3端子構成となっている。
ここで、電気機器の定格電圧とは、電気機器本体に継続して入力しても電気機器本体に過大な負荷がかからない電圧を意味し、電池パックの定格電圧とは、電池パックが継続して出力することのできる電圧を意味している。例えば、電動工具の広告や取扱説明書において14.4Vと表記されている場合は、定格電圧14.4Vの電動工具本体に定格電圧14.4Vの電池パックが付属した状態で商品として販売されていることが一般的である。このように広告や取扱説明書で表記されている電圧を電気機器本体又は電池パックの定格電圧と見做すことができる
【0033】
逆に、警報信号を入力するための端子を有せず、警報信号に対して不感構成のもの、別言すれば、前記FETを備えていない構成のものが警報信号に不対応な電動工具本体である。以下の説明では、4種類の電動工具本体、即ち、定格電圧が14.4Vで警報信号に対応可能なもの(14.4V監視対応型電動工具本体)、定格電圧が14.4Vで警報信号に非対応なもの(14.4V監視非対応型電動工具本体)、定格電圧が18Vで警報信号に対応可能なもの(18V監視対応型電動工具本体)、定格電圧が18Vで警報信号に非対応なもの(18V監視非対応型電動工具本体)、を取り上げる。
【0034】
上記のような4タイプの電池パックと4タイプの電動工具本体とにより16通りの組み合わせが可能である。図1は、電動工具本体及び電池パックの組み合わせ可否を示す説明図である。図1において、上側が電動工具本体側に相当し、左から、(a)14.4V監視対応型電動工具本体、(b)14.4V監視非対応型電動工具本体、(c)18V監視対応型電動工具本体、(d)18V監視非対応型電動工具本体に対応する。また、図1の下側は電池パックに相当し、左から、(e)14.4V出力2端子構成電池パック、(f)14.4V出力3端子構成電池パック、(g)18V出力2端子構成電池パック、(h)18V出力3端子構成電池パックに対応する。また、図1において、各電動工具本体及び電池パックの組み合わせは、実線及び破線で示される。ここで、実線は、組み合わせ可能であることを表し、破線は、組み合わせ不可を表す。
【0035】
図1に示されるように、14.4V出力3端子構成電池パックと14.4V監視非対応型電動工具本体とを組み合わせた使用を禁止し(破線[12])、同様に18V出力3端子構成電池パックと18V監視非対応型電動工具本体とを組み合わせた使用を禁止する必要がある(破線[16])。また、14.4V出力系の電池パックを18Vの定格電圧を有する電動工具本体に使用することに問題はないが(実線(4)、(5)、(6))、逆に18V出力系の電池パックを14.4Vの定格電圧を有する電動工具本体には使用できないようにする必要もある(破線[10]、[11]、[14]、[15])。
【0036】
以下に説明する例は、電池パックと電動工具本体の組み合わせに適合性がある場合には、電池パックを電動工具本体に装着できるように電池パックの工具接続面を形成すると共に、当該電池パックを不適合な電動工具本体には装着できないように電池パックの工具接続面を形成するようにしている。この例では、電池パックを電動工具本体に装着できれば、電動工具は適正に使用することができるようになっている。
【0037】
図2は、3端子構成の電池パック2と監視対応型電動工具本体1が装着されている状態を示した図である。電動工具本体1はモータ40とコントローラ20を内蔵し、モータ40に電流を流す電流路にはFET等のスイッチング素子が介挿されている。電池パック接続面にはプラス端子とマイナス端子の他に警報信号を入力するためのS端子が形成されている。工具本体1側のS端子は、少なくとも一つのセル電圧が過放電状態に至る閾値に達したときに電池パック2から出力される警報信号を入力するための端子である。電動工具本体1には電動工具を駆動するためのトリガースイッチ10が設けられている。
【0038】
電池パック2には複数のセルを直列接続して成るセル組3と、セル組3の各電池セルの電圧を監視し、少なくともいずれかの電池セルの電圧が基準値以下に低下したときに警報信号を出力する電池電圧監視手段たるコントローラ30が内蔵されている。電動工具本体1に電池パック2が装着された状態では、それぞれのプラス端子同士、マイナス端子同士が電気的に接続されると共に、電池パック2のS端子と、工具本体1側のS端子も電気的に接続される。工具本体1側のS端子はコントローラ20に接続されている。コントローラ20は電池パック2のS端子から警報信号が入力されると、FETをオフとして電流路を開放し、電池パック2の使用を強制終了させる。
【0039】
図2に示した電動工具本体1と電池パック2の組み合わせが、14.4V監視対応型電動工具本体と14.4V出力3端子構成電池パックである場合、及び18V監視対応型電動工具本体と18V出力3端子構成電池パックである場合には、装着した電池パックを使用できないようにする必要はない。しかしながら、出力電圧が18Vの電池パックと定格電圧が14.4Vの電動工具本体の組み合わせであった場合には、当該電池パックは使用できないようにする必要がある。
【0040】
図3は、3端子構成の電池パック2をスライドさせながら監視非対応型電動工具本体1−aに装着する過程を示した図である。監視非対応型電動工具本体1−aには電池パック2のS端子に接続するための端子が設けられておらず、また、電流経路にFETも設けられていない。そのため、電池パック側でセル組3の少なくともいずれかのセルが過放電に至る直前の状態にあると判断しても、その判断結果を受けて電池パックの使用を強制的に中止させることはできない。従って、かかる組み合わせの電動工具では、電池パック2が電動工具本体1−aに装着できないようにする必要がある。
【0041】
図4は、2端子構成の電池パック2−aと監視対応型電動工具本体1が装着されている状態を示したものである。図2に示した電動工具本体1と同様に内部にコントローラ20と、コントローラ20によりオン・オフを制御される電流経路に介挿されたFETを備えている。電動工具本体1の定格電圧が18Vのものであれば、14.4V出力の電池パックでも18V出力の電池パックであっても装着して使用することに問題はない。しかしながら、電動工具本体1の定格電圧が14.4Vのものであれば、18V出力の電池パックを図4のようには装着できないようにする必要がある。
【0042】
図5は、2端子構成の電池パック2−aと監視非対応型電動工具本体1−aが装着されている状態を示したものである。図2に示した電動工具本体1と同様に内部にコントローラ20と、コントローラ20によりオン・オフを制御される電流経路に介挿されたFETを備えている。2端子構成電池パック2−aは、出力電圧が14.4Vか18Vであるが、18Vであれば定格電圧が18Vの電動工具本体にのみ装着して使用することができるが、定格電圧が14.4Vの電動工具に対しては18V出力2端子構成電池パックを図5のようには装着できないようにする必要がある。
【0043】
次に、図6乃至図9を参照しながら、電動工具本体の電池パック接続面の構成について、更に詳しく説明する。
【0044】
図6は、18V監視対応型電動工具本体の電池パック接続面を示す斜視図である。図6は、18V監視対応型電動工具本体50を底面方向から見た状態を示す。
【0045】
18V監視対応型電動工具本体50は、ハウジング51の底面に、図6に示されるように、電池パックと接続するための電池パック接続面52を有する。電池パック接続面52には、図6に示されるように、電池パックと電気的に接続するための接続端子であるプラス端子53、マイナス端子54及びS端子55が設けられる。電池パック接続面52には、更に、凸部56が突設される。凸部56は、本発明の第3の識別手段及び凸部に相当し、図6に示されるように、プラス端子53とハウジング51との間の所定の位置に、所定の幅で形成される。
【0046】
以下、18V監視対応型電動工具本体50(図6)を基準に、他の電動工具本体について説明を行う。その際、18V監視対応型電動工具本体50と同一の構成については同一の符号で示し、これらについての詳しい説明を省略する。
【0047】
図7は、18V監視非対応型電動工具本体の電池パック接続面を示す斜視図である。18V監視非対応型電動工具本体57の電池パック接続面58には、図7に示されるように、プラス端子53及びマイナス端子54が設けられる。18V監視非対応型電動工具本体57はFETを備えておらず、電池パック接続面58にS端子55は設けられない。
【0048】
電池パック接続面58には、更に、プラス端子53とハウジング51との間に、凸部59が突設される。この凸部59は、図7に示されるように、18V監視対応型電動工具本体50に形成される凸部56(図6)に比較して、ハウジング側51に延伸した形状を有する。
【0049】
図8は、14.4V監視対応型電動工具本体の電池パック接続面を示す斜視図である。14.4V監視対応型電動工具本体60の電池パック接続面61には、図8に示されるように、プラス端子53、マイナス端子54及びS端子55が設けられる。また、電池パック接続面61には、更に、プラス端子53とハウジング51との間に、凸部62が突設される。この凸部62は、図8に示されるように、18V監視対応型電動工具本体50に形成される凸部56(図6)に比較して、プラス端子53側に延伸した形状を有する。
【0050】
図9は、14.4V監視非対応型電動工具本体の電池パック接続面を示す斜視図である。14.4V監視非対応型電動工具本体63の電池パック接続面64は、図9に示されるように、プラス端子53及びマイナス端子54を有する。18V監視非対応型電動工具本体57(図7)と同様に、14.4V監視非対応型電動工具本体63もFETを備えておらず、電池パック接続面64にS端子55は設けられない。電池パック接続面64には、更に、プラス端子53とハウジング51との間に、凸部65が突設される。この凸部65は、図9に示されるように、18V監視対応型電動工具本体50に形成される凸部56(図6)に比較して、ハウジング51側及びプラス端子53側の何れにも延伸した形状を有する。
【0051】
上記したように、電動工具本体の電池パック接続面には、当該電動工具本体の定格電圧及び当該電動工具本体におけるS端子の有無に応じて、形状が異なる凸部が形成されている。
【0052】
次に、図10乃至図13を参照しながら、電池パックの構成について説明する。
【0053】
図10は、本発明の実施の形態に係る14.4V出力2端子構成電池パックの外観を示す斜視図である。14.4V出力2端子構成電池パック70は、ハウジング71の内部に、図示せぬ複数の電池セルが直列接続されたセル組を収容して構成される。また、ハウジング71の上面には、図10に示されるように、電動工具本体と接続するための工具接続面72が形成される。
【0054】
工具接続面72は、本発明の機器接続部に相当し、図10に示されるように、電動工具本体と電気的に接続するための接続端子であるプラス端子73、マイナス端子74及び充電用端子75を有する。プラス端子73は、セル組のプラス側に接続される端子であり、電動工具本体への電池パックの装着時に、電動工具本体の電池パック接続面に設けられたプラス端子53が差し込まれて、電気的に接続する。マイナス端子74は、セル組のマイナス側に接続される端子であり、電動工具本体への電池パックの装着時に、電動工具本体の電池パック接続面に設けられたマイナス端子54が差し込まれて、電気的に接続する。充電用端子75は、電池パックに収容されたセル組を充電する際に使用される端子である。また、充電用端子75は、監視対応型電動工具本体への電池パックの装着時に、当該電動工具本体の電池パック接続面に設けられたS端子55が差し込まれる。
【0055】
工具接続面72には、更に、図10に示されるように、プラス端子73とハウジング71との間に、切欠部76が形成される。切欠部76は、本発明の電力供給不許可手段に相当する。14.4V出力2端子構成電池パック70の切欠部76には、図10に示されるように、第1突条部77が設けられる。第1突条部77は、プラス端子73に略平行に、切欠前の工具接続面72よりも低く形成される。
【0056】
以下、14.4V出力2端子構成電池パック70(図10)を基準に、他の電池パックについて説明を行う。その際、14.4V出力2端子構成電池パック70と同一の構成については同一の符号で示し、これらについての詳しい説明を省略する。
【0057】
図11は、本発明の実施の形態に係る14.4V3端子構成電池パックの外観を示す斜視図である。14.4V出力3端子構成電池パック78は、充電用端子75に代えてS端子80が設けられる点と、切欠部81に第2突条部82が設けられる点とが、14.4V出力2端子構成電池パック70(図10)とは異なる。第2突条部82は、本発明の第1の接続規制手段及び凸部に相当する。
【0058】
14.4V出力3端子構成電池パック78の工具接続面79は、図11に示されるように、プラス端子73、マイナス端子74及びS端子80を有する。S端子80は、本発明の警報信号出力端子に相当し、電池電圧監視手段(不図示)からの警報信号を出力するための端子である。S端子80は、監視対応型電動工具本体への電池パックの装着時に、当該電動工具本体の電池パック接続面に設けられたS端子55が差し込まれて、電気的に接続する。また、S端子80は、電池パックに収容されたセル組を充電する際に、充電用端子としても使用される。
【0059】
また、14.4V出力3端子構成電池パック78の工具接続面79の切欠部81には、図11に示されるように、第1突条部77及び第2突条部82が、溝部83を挟んで略平行に形成される。ここで、第1突条部77は、14.4V出力2端子構成電池パック70に設けられる第1突条部77(図10)と同一の形状を有し、同一の位置に形成される。
【0060】
溝部83は、第1突条部77及び第2突条部82の間に、所定の幅で形成される。ここで、所定の幅とは、18V監視対応型電動工具本体50の電池パック接続面52に形成された凸部56(図6)の幅と略同一の大きさである。また、溝部83は、電池パック78と18V監視対応型電動工具本体50との接続時に、凸部56が挿入される位置に、形成される。
【0061】
第2突条部82は、図11に示されるように、第1突条部77とハウジング71との間に、第1突条部77と比較して切欠部81の上方に高く、切欠前の工具接続面79と同一の高さとなるべく形成される。
【0062】
図12は、本発明の実施の形態に係る18V出力2端子構成電池パックの外観を示す斜視図である。18V出力2端子構成電池パック84は、切欠部86に設けられる第1突条部87の形状が、図10の14.4V出力2端子構成電池パック70とは異なる。第1突条部87は、本発明の第2の接続規制手段及び凸部に相当する。
【0063】
18V出力2端子構成電池パック84の工具接続面85は、図12に示されるように、プラス端子73、マイナス端子74及び充電用端子75を有する。また、18V出力2端子構成電池パック84の工具接続面85の切欠部86には、図12に示されるように、第1突条部87が設けられる。この第1突条部87は、14.4V出力2端子構成電池パック70に設けられる第1突条部77(図10)と同一の位置に、当該第1突条部77に比較して切欠部86の上方に高く、切欠前の工具接続面85と同一の高さとなるべく形成されている。
【0064】
図13は、本発明の実施の形態に係る18V出力3端子構成電池パックの外観を示す斜視図である。18V出力3端子構成電池パック88は、充電用端子75に代えてS端子80が設けられる点と、切欠部90に設けられる第1突条部87の形状と、更に第2突条部82が切欠部90に設けられる点とが、図10の14.4V出力2端子構成電池パック70とは異なる。
【0065】
18V出力3端子構成電池パック88の工具接続面89は、図13に示されるように、プラス端子73、マイナス端子74及びS端子80を有する。また、18V出力3端子構成電池パック88の工具接続面89の切欠部90には、図13に示されるように、第1突条部87及び第2突条部82が、溝部83を挟んで略平行に形成される。溝部83は、14.4V出力3端子構成電池パック78の切欠部81に設けられた溝部83(図11)と同一の位置に同一の幅で形成される。また、第1突条部87及び第2突条部82は、それぞれ、切欠前の工具接続面89と同一の高さとなるべく形成される。第1突条部87の形状及び位置は、図12の18V出力2端子構成電池パック84に設けられる第1突条部87と同一であり、第2突条部82の形状及び位置は、図11の14.4V出力3端子構成電池パック78に設けられる第2突条部77と同一である。
【0066】
上記したように、本実施例の電池パックの工具接続面には、当該電池パックに収容される電池セルの出力電圧及びS端子の有無に応じて、第1突条部及び第2突条部が設けられる。
【0067】
次に、電動工具本体の凸部の形状と電池パックの第1突条部及び第2突条部の形状とについて、図14を参照して更に詳しく説明する。図14は、電動工具本体の凸部と電池パックの切欠部との形状を説明する図である。
【0068】
図14(a)乃至図14(d)は、電動工具本体の電池パック接続面に設けられる凸部の形状を示す。図14(a)は、18V監視対応型電動工具本体50(図6)に対応する凸部56の形状を示し、図14(b)は、18V監視非対応型電動工具本体57(図7)に対応する凸部59の形状を示す。また、図14(c)は、14.4V監視対応型電動工具本体60(図8)に対応する凸部62の形状を示し、図14(d)は、14.4V監視非対応型電動工具本体63(図9)に対応する凸部65の形状を示す。
【0069】
なお、図14(a)乃至図14(d)において、左側が電動工具本体のプラス端子53側に相当し、右側がハウジング51側に相当する。
【0070】
18V監視非対応型電動工具本体57に設けられる凸部56は、図14(b)に示されるように、18V監視対応型電動工具本体50に設けられる凸部56(図14(a))に対応する基部59aと、ハウジング51側に延伸したハウジング側延伸部59cとからなる。基部59aは、本発明の第3の識別手段及び凸部に相当し、ハウジング側延伸部59cは、本発明の第1の識別手段及び凸部に相当する。
【0071】
14.4V監視対応型電動工具本体60に設けられる凸部62は、図14(c)に示されるように、18V監視対応型電動工具本体50に設けられる凸部56(図14(a))に対応する基部62aと、プラス端子53側に延伸した端子側延伸部62bとからなる。基部62aは、本発明の第3の識別手段に相当し、端子側延伸部62bは、本発明の第2の識別手段に相当する。
【0072】
また、14.4V監視非対応型電動工具本体63に設けられる凸部65は、図14(d)に示されるように、18V監視対応型電動工具本体50に設けられる凸部56(図14(a))に対応する基部65aと、プラス端子53側に延伸した端子側延伸部65bと、ハウジング51側に延伸したハウジング側延伸部65cとからなる。基部65aは、本発明の第3の識別手段及び凸部に相当する。また、端子側延伸部65bは、本発明の第2の識別手段及び凸部に相当し、ハウジング側延伸部65cは、本発明の第1の識別手段及び凸部に相当する。
【0073】
図14(a)乃至図14(d)に示されるように、定格電圧が低い14.4Vの電動工具本体には、プラス端子53側に延伸した形状の凸部が設けられ(図14(c)、図14(d))、FET等の無い監視非対応型の電動工具本体には、ハウジング51側に延伸した形状の凸部が設けられる(図14(b)、図14(d))。
【0074】
また、図14(e)乃至図14(h)は、電池パックの工具接続面の切欠部に設けられる第1突条部及び第2突条部の形状を示す。図14(e)は、14.4V出力2端子構成電池パック70に対応し、図14(f)は、14.4V出力3端子構成電池パック78に対応する。また、図14(g)は、18V出力2端子構成電池パック84に対応し、図14(h)は、18V出力3端子構成電池パック88に対応する。
【0075】
なお、図14(e)乃至図14(h)において、左側が電池パックのプラス端子73側に相当し、右側がハウジング71側に相当する。すなわち、左側に示される方形は第1突条部に対応し、右側に示される方形が第2突条部に対応する。また、方形の図示は、工具接続面の高さを基準とし、切欠部において、工具接続面と同一の高さの第1突条部が形成される場合、図の左側に方形を図示する。すなわち、電池パックが背の高い第1突条部を有する場合にのみ、図の左側に方形が図示され、背の低い第1突条部を有する場合には、図の左側には方形は図示されない。また、切欠部が、工具接続面と同一の高さの第2突条部を有する場合、図の右側に方形を図示する。
【0076】
例えば、図14(e)に示される14.4V出力2端子構成電池パック70の切欠部76には、工具接続面72よりも低い第1突条部77のみが設けられている。一方、図14(h)に示される18V出力3端子構成電池パック88の切欠部90には、工具接続面89と同一の高さの第1突条部87及び第2突条部82が設けられている。
【0077】
図14(e)乃至図14(h)に示されるように、出力電圧が高い18Vの電池パックには、切欠部に背の高い第1突条部が設けられ(図14(g)、図14(h))、S端子80を有する3端子構成の電池パックには、切欠部に第2突条部が設けられる(図14(f)、図14(h))。
【0078】
次に、図15乃至図22を参照しながら、各電動工具本体と電池パックとの装着の可否について、説明する。
【0079】
上記したように、各電池パックの工具接続面の切欠部には、当該電池パックの出力電圧やS端子の有無に応じて、第1突条部や第2突条部が所定の位置に設けられる。ここで、第1突条部及び第2突条部間の溝部83は、18V監視対応型電動工具本体50(図6)の電池パック接続面52に設けられた凸部56に対応する位置に、対応する幅で形成される。そして、18V監視対応型電動工具本体50に電池パックを装着した場合、この溝部83の位置に凸部56が挿入されることとなる。
【0080】
図15は、電動工具と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その1)である。図15には、18V監視対応型電動工具本体50(図6)に、14.4V出力3端子構成電池パック78(図11)を装着させた場合の接続部分が示される。これは、図1に示される実線(6)の組み合わせである。
【0081】
18V監視対応型電動工具本体50に14.4V出力3端子構成電池パック78を装着する場合、14.4V出力3端子構成電池パック78の工具接続面79は、18V監視対応型電動工具本体50の電池パック接続面52に対し、当該18V監視対応型電動工具本体50の前後方向に沿ってスライドさせながら差し込まれる。このとき、18V監視対応型電動工具本体50の凸部56は、14.4V出力3端子構成電池パック78の第1突条部77及び第2突条部82間に設けられた溝部83に挿入されることとなる(図15)。また、18V監視対応型電動工具本体50のプラス端子53、マイナス端子54及びS端子55は、それぞれ、14.4V出力3端子構成電池パック78のプラス端子73、マイナス端子74及びS端子75に差し込まれる。これにより、18V監視対応型電動工具本体50及び14.4V出力3端子構成電池パック78は電気的に接続され、14.4V出力3端子構成電池パック78は、18V監視対応型電動工具本体50に対して電力供給が可能となる。
【0082】
同様に、図16は、電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その2)である。図16には、上記した18V監視対応型電動工具本体50に、18V出力3端子構成電池パック88(図13)を装着させた場合の接続部分が示される。これは、図1に示される実線(9)の組み合わせである。
【0083】
18V監視対応型電動工具本体50に18V出力3端子構成電池パック88を装着する場合、18V監視対応型電動工具本体50の凸部56は、18V出力3端子構成電池パック88の第1突条部87及び第2突条部82間に設けられた溝部83に挿入される(図16)。18V監視対応型電動工具本体50及び18V出力3端子構成電池パック88は電気的に接続され、18V出力3端子構成電池パック88は、18V監視対応型電動工具本体50に対して電力供給が可能となる。
【0084】
各電池パックの切欠部には、図14(e)乃至図14(h)に示されるように、上記した溝部83に対応する位置には突条等は設けられない。したがって、何れの電池パックも、18V監視対応型電動工具本体50(図6)に装着可能であり、当該18V監視対応型電動工具本体50に電気的に接続して電力供給できる。
【0085】
これに対し、電池パックの第1突条部は、切欠部において溝部83のプラス端子73側に設けられる。これは、電動工具本体に設けられた凸部のプラス端子53側に延伸した端子側延伸部に対応する位置となる。
【0086】
ここで、出力電圧が低い14.4Vの電池パックでは、上記したように、第1突条部が工具接続面よりも低く形成されている。このように背の低い第1突条部77が設けられている場合、当該電池パックを電動工具に装着させると、凸部の端子側延伸部が、背の低い第1突条部の上方に差し込まれることとなる。
【0087】
図17は、電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その3)である。図17には、14.4V監視対応型電動工具本体60(図8)に、14.4V出力3端子構成電池パック78(図11)を装着させた場合の接続部分が示される。これは、図1に示される実線(2)の組み合わせである。
【0088】
14.4V出力3端子構成電池パック78は、図11及び図14(f)に示されるように、背の低い第1突条部77と第2突条部82とを有する。また、14.4V監視対応型電動工具本体60の凸部62は、図8及び図14(c)に示されるように、プラス端子53側にのみ延伸した形状を有し、基部62a及び端子側延伸部62bからなる。
【0089】
この14.4V監視対応型電動工具本体60に14.4V出力3端子構成電池パック78を装着させる場合、凸部62は、工具接続面79と第2突条部82との間に差し込まれる。このとき、差し込まれた凸部62の基部62aは溝部83の上方に位置し、端子側延伸部62bは第1突条部77の上方に位置する(図17)。また、14.4V監視対応型電動工具本体60のプラス端子53、マイナス端子54及びS端子55は、それぞれ、14.4V出力3端子構成電池パック78のプラス端子73、マイナス端子74及びS端子75に差し込まれる。これにより、14.4V監視対応型電動工具本体60及び14.4V出力3端子構成電池パック78は電気的に接続され、14.4V出力3端子構成電池パック78は、14.4V監視対応型電動工具本体60に対して電力供給が可能となる。
【0090】
一方、出力電圧が高い18Vの電池パックでは、第1突条部が工具接続面と同一の高さに形成されている。このように背の高い第1突条部87が設けられている場合、当該電池パックを電動工具本体に装着させようとすると、電動工具本体の凸部の端子側延伸部と第1突条部87とが干渉することとなる。
【0091】
図18は、電動工具と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その4)である。図18には、上記した14.4V監視対応型電動工具本体60(図8)に、18V出力3端子構成電池パック88(図13)を装着させた場合の接続部分が示される。これは、図1に示される破線[10]の組み合わせである。
【0092】
18V出力3端子構成電池パック88は、図13及び図14(h)に示されるように、背の高い第1突条部87と第2突条部82とを有する。
【0093】
14.4V監視対応型電動工具本体60にこの18V出力3端子構成電池パック88を装着させる場合、図18に示されるように、凸部62の端子側延伸部62bが差し込まれるべき位置に、背の高い第1突条部87があるため、互いに干渉することとなる。その結果、18V出力3端子構成電池パック88は14.4V監視対応型電動工具本体60に装着不可となる。したがって、14.4V監視対応型電動工具本体60は18V出力3端子構成電池パック88に不適合とされ、18V出力3端子構成電池パック88から当該不適合な14.4V監視対応型電動工具本体60への電力供給は不可となる。
【0094】
ここで、端子側に延伸した形状を有する凸部が設けられるのは、定格電圧が14.4Vの電動工具本体であり、背の高い第1突条部が設けられるのは出力電圧が18Vの電池パックである。したがって、定格電圧が電池パックの出力電圧よりも低い電動工具本体には、電池パックは装着不可となり、当該電池パックから電動工具本体への電力供給はできない。
【0095】
また、第2突条部82は、切欠部において溝部83のハウジング71側に設けられる。これは、電動工具本体に設けられた凸部のハウジング51側に延伸したハウジング側延伸部に対応する位置となる。
【0096】
図19は、電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その5)である。図19には、18V監視非対応型電動工具本体57(図7)に、14.4V出力3端子構成電池パック78(図11)を装着させた場合の接続部分が示される。これは、図1に示される破線[13]の組み合わせである。
【0097】
14.4V出力3端子構成電池パック78は、図11及び図14(f)に示されるように、第1突条部77と第2突条部82とを有する。また、18V監視非対応型電動工具本体57の凸部59は、図7及び図14(b)に示されるように、ハウジング51側にのみ延伸した形状を有し、基部59a及びハウジング側延伸部59cからなる。
【0098】
この18V監視非対応型電動工具本体57に14.4V出力3端子構成電池パック78を装着させる場合、図19に示されるように、凸部59のハウジング側延伸部59cと第2突条部82とが干渉し、14.4V出力3端子構成電池パック78は装着不可となる。したがって、18V監視非対応型電動工具本体57は14.4V出力3端子構成電池パック78に不適合とされ、14.4V出力3端子構成電池パック78から当該不適合な18V監視非対応型電動工具本体57への電力供給は不可となる。
【0099】
同様に、図20は、電動工具本体と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その6)である。図20には、14.4V監視非対応型電動工具本体63(図9)に、14.4V出力3端子構成電池パック78(図11)を装着させた場合の接続部分が示される。これは、図1に示される破線[12]の組み合わせである。
【0100】
14.4V監視非対応型電動工具本体63の凸部65は、図9及び図14(d)に示されるように、端子53側及びハウジング51側の何れにも延伸した形状を有し、基部65a、端子側延伸部65b及びハウジング側延伸部65cからなる。
【0101】
この14.4V監視非対応型電動工具本体63に14.4V出力3端子構成電池パック78を装着させる場合も、図20に示されるように、凸部65のハウジング側延伸部65cと第2突条部82とが干渉し、14.4V出力3端子構成電池パック78は装着不可となる。したがって、14.4V監視非対応型電動工具本体63は14.4V出力3端子構成電池パック78に不適合とされ、14.4V出力3端子構成電池パック78から当該不適合な14.4V監視非対応型電動工具本体63への電力供給は不可となる。
【0102】
また、図21は、電動工具と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その7)である。図21には、18V監視非対応型電動工具本体57(図7)に、18V出力3端子構成電池パック88(図13)を装着させた場合の接続部分が示される。これは、図1に示される破線[16]の組み合わせである。
【0103】
18V出力3端子構成電池パック88は、図13及び図14(h)に示されるように、背の高い第1突条部87と第2突条部82とを有する。また、18V監視非対応型電動工具本体57の凸部59は、図7及び図14(b)に示されるように、ハウジング51側にのみ延伸した形状を有し、基部59a及びハウジング側延伸部59cからなる。
【0104】
この18V監視非対応型電動工具本体57に18V出力3端子構成電池パック88を装着させる場合、図21に示されるように、凸部59のハウジング側延伸部59cと第2突条部82とが干渉し、18V出力3端子構成電池パック88は装着不可となる。したがって、18V監視非対応型電動工具本体57は18V出力3端子構成電池パック88に不適合とされ、18V出力3端子構成電池パック88から当該不適合な18V監視非対応型電動工具57への電力供給は不可となる。
【0105】
更に、図22は、電動工具と電池パックとの装着の可否を示す説明図(その8)である。図22には、14.4V監視非対応型電動工具本体63(図9)に、18V出力3端子構成電池パック88(図13)を装着させた場合の接続部分が示される。これは、図1に示される破線[15]の組み合わせである。
【0106】
14.4V監視非対応型電動工具本体63の凸部65は、図9及び図14(d)に示されるように、端子53側及びハウジング51側の何れにも延伸した形状を有し、基部65a、端子側延伸部65b及びハウジング側延伸部65cからなる。
【0107】
この14.4V監視非対応型電動工具本体63に18V出力3端子構成電池パック88を装着させる場合、図22に示されるように、凸部65の端子側延伸部65bと背の高い第1突条部87とが干渉するとともに、ハウジング側延伸部65cと第2突条部82とが干渉し、18V出力3端子構成電池パック88は装着不可となる。したがって、14.4V監視非対応型電動工具本体63は18V出力3端子構成電池パック88に不適合とされ、18V出力3端子構成電池パック88から当該不適合な14.4V監視非対応型電動工具本体63への電力供給は不可となる。
【0108】
ここで、ハウジング側に延伸した形状を有する凸部が設けられるのは、FET等の無い監視非対応型の電動工具本体であり、第2突条部が設けられるのは、S端子を有する3端子構成の電池パックである。したがって、監視非対応型の電動工具本体には、3端子構成の電池パックは装着不可となり、当該電池パックから電動工具本体への電力供給はできない。
【0109】
以上のように、電池パックの工具接続面に、当該電池パックに収容される電池セルの出力電圧及びS端子の有無に応じて、第1突条部及び第2突条部を設け、定格電圧が出力電圧より低い電動工具本体に電池パックを装着不可とするとともに、FET等の無い電動工具本体に電池容量が所定値以上の電池パックを装着不可とするので、高容量電池パックの不適切な使用を防止することができる。
【0110】
本発明は、上記した例に限定されるものではなく、別の形態で不適合な電池パックと電動工具本体を組み合わせて使用することを禁止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1、50、57 、60、63 電動工具本体
2、70、78、84、88 電池パック
3 セル組
10 トリガースイッチ
20 コントローラ
30 コントローラ
40 モータ
51 ハウジング
52 電池パック接続面
53 プラス端子
54 マイナス端子
55 S端子
56、59、62、65 凸部
58、61、64 電池パック接続面
59a、62a、65a 基部
59c、65c ハウジング側延伸部
62b、65b 端子側延伸部
71 ハウジング
72、79、85、89 工具接続面
73 プラス端子
74 マイナス端子
75 充電用端子
76、81、86、90 切欠部
77、87 第1突条部
80 S端子
82 第2突条部
83 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22