(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497577
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】術後の乳房ドレッシング
(51)【国際特許分類】
A61F 13/14 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
A61F13/14 A
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-549637(P2014-549637)
(86)(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公表番号】特表2015-506205(P2015-506205A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】IL2012050553
(87)【国際公開番号】WO2013098818
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月11日
【審判番号】不服2017-18963(P2017-18963/J1)
【審判請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】217227
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】IL
(31)【優先権主張番号】61/582,521
(32)【優先日】2012年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514313487
【氏名又は名称】イージーブラ アドヴァンスド ウーンド ケア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EZbra Advanced Wound Care Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロマン,エフラト
【合議体】
【審判長】
井上 茂夫
【審判官】
西藤 直人
【審判官】
久保 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第4804351(US,A)
【文献】
特開平6−212501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00-13/14
A61F 15/00-17/00
A41C 3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
術後乳房ドレッシングにおいて:
互いに連結された又は連結可能な左カップと右カップを具える前側部分と;
患者の背中の周りにフィットさせる少なくとも一のバックストラップであって、それぞれ、左背部と右背部を具えるバックストラップと;
前記バックストラップの左背部と前記バックストラップ右背部とを、前記左カップと右カップにそれぞれ連結する左体軸横断部分と右体軸横断部分であって、それぞれが左乳房折り畳み部分と右乳房折り畳み部分、及び、左腕下部分と右腕下部分を具える左体軸横断部分と右体軸横断部分と;
を具え、
前記左腕下部分を含む左体軸横断部分と前記右腕下部分を含む右体軸横断部分との少なくとも一方が、外層、内層、及び吸収ドレッシングを具え、
前記左腕下部分を含む左体軸横断部分と前記右腕下部分を含む右体軸横断部分との少なくとも一方の外層が、液体不透過性材料を含み、
前記内層が手術で切開した部位に配置される吸収ドレッシングを具えることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項2】
請求項1に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記内層が前記吸収ドレッシングを具えることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記左体軸横断部分と左カップ、及び前記右体軸横断部分と右カップが、それぞれ、連続左外層と左内層、及び、連続右外層と右内層を、一体的に形成していることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項4】
請求項3に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記吸収ドレッシングが、術後切開部分から出る滲出液を吸収する液体吸収物質を具えることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記内層の少なくとも一部が、乳房切除術の後の創傷の治癒を改善するのに有効な物質を含むことを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項6】
請求項5に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記物質が、術後切開部分に放出する、抗生物質、防腐剤、鎮痛剤、植物薬、遷移金属、ビタミン、生体タンパク質からなる群から選択されることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項7】
請求項6に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記物質が、前記内層が流体に接触すると、当該内層から放出されることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記物質が前記内層から制御された状態で放出されることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記外層及び内層が、互いに固定的に取り付けられていることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングが、対称又は非対称の左カップ及び右カップ寸法を具えることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記左カップと右カップが、調節可能な取付け要素によって互いに連結可能であることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記バックストラップが、調節可能な取付け要素によって互いに連結可能な左背部と右背部を具えることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングが、前記バックストラップに、及び、それぞれ左カップと右カップの一方又は両方に固定的に又は解放可能に固着された、左肩部分と右肩部分を具えることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項14】
請求項13に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記左肩部分と右肩部分が、ストラップ又はスリーブ形状であることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項15】
請求項14に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記左肩部分と右肩部分が、前記バックストラップに固定的に連結されており、前記左及び右カップの各々に解放可能に固着されていることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項16】
請求項15に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記左肩及び右肩部分が、調節可能な取付け要素によって、前記左及び右カップに解放可能に固着されていることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項17】
請求項13乃至16のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記左肩部分と右肩部分が、それぞれ、前記バックストラップに交差構造で連結されている左ストラップ及び右ストラップを具えることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項18】
請求項11又は12に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記調節可能な取付け要素が、ファスナと係合して、当該要素の有効長を変更することを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項19】
請求項18に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記調節可能な取付け要素が、バックル、ホックとループ、ベロクロ(登録商標)、あるいは、結び目を使用するタイプのファスナ、スナップ、及び接着剤からなる群から選択されることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングにおいて、前記バックストラップが、伸縮性材料を具えることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングが、使い捨て可能な乳房ドレッシングであることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の術後乳房ドレッシングが、滅菌乳房ドレッシングであることを特徴とする術後乳房ドレッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は術後のブラジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
医療及び美容整形を含む乳房手術には、乳房及びその近傍領域への外科的介入が含まれる。美容整形外科には、例えば、乳房縮小術、乳房増大術、乳房固定術、又は乳房のたるみを取る手術がある。医療乳房手術には、例えば、腫瘍摘出手術や、乳腺切除術がある。
【0003】
乳腺切除術は、乳房を切除して、乳がんを治療する、あるいは予防する手術である。主に4つのタイプの乳腺切除術がある。乳房全切除(乳房組織と乳首の切除)と、変形定型的乳房切除(乳房、腕の下のほとんどのリンパ節の除去、及び時に胸部筋肉上の内膜の切除)、腫瘍摘出術(腫瘍とその周りの少量の正常組織を除去する手術)、及び定型的乳房切除(乳房、リンパ節、及び胸部筋肉の切除)である。
【0004】
乳房手術を行った後、乳房再生を行わない場合は、患者は人工器官を使用して身体を対称にする。このような人工器官は、各カップに特別に設計したポケットが形成されており、シリコーンでできた乳房型を関連するポケットの中に滑り込ませる。乳房型は、このポケットの中で身体に対して適所にしっかり保持されて、自然な対称を再生する。フロントホック又はバックホックや、サテン、レース、コットンの選択といった伝統的なブラジャーと同様の特徴を持ち、この目的のために特別に設計された乳がん切除者用ブラジャーも作成されている。人工器官の一例が、米国特許第6,390,885号に記載されており、この特許は、人工器官要素に加えて、乳房摘出後の流体を除去する流体ドレナージシステムも具えている。
【0005】
更に、術後の乳房又は乳房バンド又は回復用デバイスは、乳房又はその一部を除去して再生したかどうかにかかわらず、知られている。例えば、米国特許第5,152,741号は、伸縮自在な材料で形成された乳房に巻くフレキシブルなバンドと様々な支持構造で構成された外科用乳房ドレッシングを記載している。
【0006】
更に、米国特許出願公開第2007/0275635号は、バンデージバンドを用いて患者の乳房の周囲に締める術後医療デバイスを開示している。このバンドは、患者の乳房を何回もクロスして、粘着テープを用いることなくデバイスの正しく封じ込めるようにしている。
【0007】
最後に、日本特許出願公開第2007/332520号は、放射線治療中又は治療後の膨張を低下させるために患者の乳房又は腋窩を冷却する手段を設けた術後用ブラジャーを記載している。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、特に、例えば乳腺の切除などの乳房手術を行った女性に適した新規な術後創傷ドレッシングに関する。
【0009】
本開示に係る乳房ドレッシングは:
互いに連結された、又は、連結可能な左カップと右カップを具える前側部分と;
患者の背中の周りにフィットする少なくとも一のバックストラップであって、それぞれ左端と右端を有するバックストラップと;
バックストラップの左端を左カップに、及びバックストラップの右端を右カップにそれぞれ連結する左体軸横断部分と右体軸横断部分であって、それぞれ左及び右の乳房折り畳み部分と左及び右腕下部分を具える体軸横断部分と;
を備え、左腕下部分と右腕下部分の少なくとも一方が、外部層と、内部層と、及び吸収ドレッシングと、を具える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
発明を理解し、発明がどのように実施されるかを見るために、以下に図面に基づいて非限定的な例示として実施例を説明する。
【
図1】
図1A及び1Bは、それぞれ、本発明の一実施例に係る術後乳房ドレッシングを示す前部(
図1A)及び後部(
図1B)斜視図である。
【
図3】
図3は、患者に着用させた本発明の実施例に係るドレッシングを示す図である。
【0011】
[非限定的実施例の詳細な説明]
本発明は、術後乳房ドレッシングに関するものであり、特に、とりわけ乳房の体軸横断部分における外科手術後に生じる過剰な滲出液又はその他の流体の問題を解決する独自の設計の乳房用創傷ドレッシングに関する。
【0012】
特に、本発明は、乳房手術後に、乳房カップや乳首部分自体のみならず、総合して体軸横断部分(左体軸横断部分及び/又は右体軸横断部分)と呼ばれる乳房の下に位置する乳房下部の乳房ひだ、腕の下の領域、が穏やかなケア(例えば、穏やかなドレッシング)を必要とする。
【0013】
本発明は、乳房の左体軸横断部分及び/又は右体軸横断部分が、乳房手術に後に深刻に影響される(傷つけられる)ことを正しく認識している。例えば、乳房のこれらの部分は、切断領域から滲出液が漏れる傾向があり、赤くなって膨張し、感染症状がみられる。
【0014】
このように、発明者は乳房の体軸横断部分に創傷ドレッシングを提供する解決法を開発した。これは、簡単で、従来のドレナージ装置にある不快感や健康上のリスクがない。簡素なため、本発明の開示による乳房ドレッシングは消毒用ドレッシングとしても提供できる。
【0015】
第1の態様によると、本開示は、術後乳房ドレッシングを提供しており、このドレッシングは、互いに連結された又は連結可能な左カップと右カップと;患者の背面周辺で合わさる少なくとも一のバックストラップと;このバックストラップを左カップ及び右カップにそれぞれ連結する左及び右体軸横断部分とを具え、この左及び右体軸横断部分の各々が、それぞれ、ひだ部分の中と腕部分の下に左右の乳房を具え、左体軸横断部分と右体軸横断部分の少なくとも一方が、外部層と、吸収創傷ドレッシングを具える内部層とを具える。
【0016】
ここで用いられているように、用語「左体軸横断部分」と「右体軸横断部分」とは、左腕及び右腕の夫々の下に、少なくとも体軸横断本体領域を具える生体構造領域を意味する。いくつかの実施例では、左体軸横断部分と右体軸横断部分が、乳房と腕の左右側部それぞれの下に乳房ひだと体軸横断領域を具える。
【0017】
乳房下部のしわあるいは乳房下部のラインとしても知られている乳房下部のしわ(IMF)は、下側と乳房の自然な境界線であるヒト身体構造の特徴であり、この部分で乳房と胸とが合う。ここで用いられている用語「体軸横断」は、腋の下領域を意味する。乳房外科手術では、体軸横断において切開がなされる。ここで開示したドレッシングの目的は、とりわけ、Jackson−Prattドレイン(JPドレイン、コンスタントな吸引によって身体から過剰な液体を引き出す外科用ドレナージ装置)のような、患者の乳房の体軸横断部分にある相称の治療に、不快で安全性の低いドレナージチューブ形式の解決法を使用する必要性をなくすことである。
【0018】
体軸横断部分の感受性が少なくとも数日、及び術後もさらに続くことを考慮すると、発明者はブラジャー様の吸収創傷ドレッシングの新規かつ発明的設計を構想していた。乳房ドレッシングは、専用のバンデージ(創傷ドレッシングという)を、少なくとも乳房の体軸横断部分に具え、全体軸横断部分でない場合は、これによって、不快感、痛み、及びこれらの領域における感染の医療リスクを低減する。
【0019】
ここで、
図1A及び1Bを参照する。この図は、本発明の一実施例による乳房ドレッシングを示すものであり、
図1Aは乳房ドレッシング10の正面図、
図1Bは、
図1Aの乳房ドレッシング10の背面図である。簡単にするために、
図1Aに示す乳房ドレッシングと同じ要素を
図1Bでも使用している。
【0020】
特に、乳房ドレッシング10は、左カップ14と右カップ16を有する前側部分12を具える。
【0021】
「カップ」という場合、患者の乳房を覆うことができる半円形状のドレッシング部を意味するものと解するべきである。このカップは、寸法(径、深さ、凹面を変えることができる。本開示のコンテキストにおいて、及び以下にさらに述べるように、左カップ14と右カップ16は、同じ寸法であっても異なる寸法であってもよい。
【0022】
いくつかの実施例では、左カップと右カップの寸法が同じである。いくつかの実施例では、左カップと右カップの寸法が対称である。その他のいくつかの実施例では、左カップと右カップの寸法が非対象である。
【0023】
いくつかの実施例では、腕下体軸横断部分と腕下右体軸横断部分の各々、及び、時には乳房ひだ部分及び/又はカップも、外層と内層を具えている。
【0024】
いくつかの実施例では、吸収ドレッシングが内層の一部であるか、内層を構成している。
【0025】
外層及び内層という場合、身体に接触しているドレッシング側部が内層であり、身体に接触していないドレッシング側部が外層であると解すべきである。したがって、内層は、身体に対向する層でもある。
【0026】
いくつかの実施例では、左カップ14と右カップ16は、少なくとも一の連結点18において互いに連結されている。
【0027】
更に、乳房ドレッシング10の一部として、患者の背部(図示せず)にフィットさせるバックストラップ20;バックストラップ20を左カップ14と右カップ16にそれぞれ連結する左体軸横断部分22と右体軸横断部分24;を具える。
【0028】
左体軸横断部分22と右体軸横断部分24の各々は、
左乳房折り畳み部分26と、
右乳房折り畳み部分28、左腕下部分30と右腕下部分32を具える。
【0029】
術後乳房ドレッシング10は、左体軸横断部分22と右体軸横断部分24が、
図1Aと1Bに示す外層と内層を具え、開いた、平坦な構造の乳房ドレッシングを提供しているという特徴がある。
【0030】
簡単にするために、
図1A又は1Bに使用している符号に100を足して、
図2A−2Cでシフトさせて使用して、同じ又は同様の機能を有する構成要素を同一に扱っている。例えば、
図2Aの要素114は、
図1Aの左カップ14と同じ機能を有する左カップである。
【0031】
特に、乳房ドレッシング100の背面図は、左カップ114と、右カップ116と、バックストラップ120を具えるように示されている。
【0032】
左カップ114と右カップ116は、
図1A−1B及び2A−2Cに示す実施例において、同じサイズと形状を有する。しかしながら、いくつかの実施例では左カップと右カップの寸法が異なっていてもよい。例えば、患者が一方の乳房のみを再生(医療あるいは美容)する場合である。このような場合、手を付けていない側の乳房は、凹面が最小のカップで覆うか、凹面のない(例えば、平坦な)カップで覆う。
【0033】
上記に詳細に説明したように左カップ114と右カップ116は、少なくとも一の連結点で互いに連結することができる。いくつかの実施例では、この連結は第1部分134と第2部分136を具える二つの部分の連結要素によって行われ、患者の左及び右乳房間でドレッシングを閉じられよう動作可能である。
【0034】
用語「連結要素」は、本開示のコンテキストでは、ドレッシング材料中の開口の二つの端部側を閉じた形に維持する物理的要素を意味する。いくつかの実施例では、連結要素が、左カップ114と右カップ116との間を閉じることができる。
【0035】
いくつかの実施例では、左カップ114と右カップ116を、例えば、ホックとそのホックにひっかける一連のアイ(ループ)を具えるファスナなどの、調整可能なアタッチメント要素によって連結することができる。あるは、この構成はベロクロストラップ、スナップファスナなどでもよい。この調整機能によって、必要に応じて二つのカップ間の距離を操作することができる。
【0036】
いくつかの実施例では、連結要素がファスナである。
【0037】
用語「ファスナ」は、特別な閉デバイスを指す。いくつかの実施例では、ファスナは、必要に応じて繰り返し開閉できる。
【0038】
ファスナは、限定することなく、バックル、ホックとループ(ベロクロ(登録商標))、スナップ(スナップファスナ)、接着テープ、あるいは、ノットタイプのファスナを含む。
【0039】
いくつかの実施例では、乳房ドレッシング100は、少なくとも左体軸横断部分122及び/又は右体軸横断部分124に外層140(
図2A)と内層150(
図2B)を具えている。
【0040】
いくつかの実施例では、外層が、流体不浸透性材料を具える。いくつかの実施例では、内層150(
図2B)がドレッシング材料を具える。
【0041】
時に、左カップと右カップ114、116もそれぞれ、
図2Cに示すように外部流体不浸透性材料と内部ドレッシング層150を具えていてもよい。
【0042】
したがって、左体軸横断部分122と、左カップ114、及び右体軸横断部分124と右カップ116が、左右の外層と内層が連続して、ユニットとして一体的に形成されている。
【0043】
乳房ドレッシング100のバックストラップ120は、弾性材料、非弾性材料、あるいはこの組み合わせを具えていてもよい。
【0044】
いくつかの実施例では、乳房ドレッシングが弾性材料を具えている。弾性材料の非限定的な例には、ポリウレタン、ポリエステル、ゴム(例えば、合成ゴム)、及びナイロンのいずれか、あるいはこの組み合わせがある。
【0045】
使用にあたっては、内層140が患者の皮膚を覆い、外層150が外側に露出している。外層150は、弾性材料又は非弾性材料のいずれか一方と、伸縮性あるいは非伸縮性材料との組み合わせであってもよい。いくつかの実施例によれば、外層150は、非伸縮性の、非弾性材料でできている。その他のいくつかの実施例によれば、外層はある程度弾性があり、患者に不快を与えることなく、ドレッシングを創傷の上の適所の保持できる。
【0046】
いくつかの実施例では、各層が独立して形成される材料は、テキスタイル業界で通常使用されている材料であり、いくつかの実施例ではブラジャー製造業界である。これらの層は、同じ材料あるいは異なる材料でできている。
【0047】
本開示のコンテキストにおいて、伸縮性材料は、実質的な圧力をかけることなく覆っている身体外郭に合致する材料であると解するべきである。弾性材料は、覆っている身体外郭に合致するものであるが、元の形に戻る傾向があるため表面に顕著な圧力をかけるであろう。伸縮性材料の復元力は、弾性材料の復元力に比べて非常に小さい。したがって、材料は、身体に不快な圧力をかけることなく、その材料が覆う身体の形状に合うような材料である。
【0048】
いくつかの実施例によると、天然又は合成不織布を含む外層は不織布である。
【0049】
内層140内のドレッシングは、いくつかの実施例によれば、吸収性のドレッシングである。明らかなように、吸収性ドレッシングは、術後切開上に配置するように構成されている。
【0050】
いくつかのその他の実施例では、内層が創傷ドレッシングを具える。本開示による創傷ドレッシングは、内層を重ねる滲出液あるいは術後切開によって生じるその他の流体を吸収する種類のものであり、吸収材料を具える。
【0051】
ここで用いられている用語「ドレッシング」又は特に「創傷ドレッシング」は、生理学的に受け入れ可能な創傷を覆う又は支持する以下のようなマトリックスを含む。
【0052】
a)ポリウレタンコポリマ、アクリルアミド、アクリレート、パラフィン、ポリサッカライド、セロハン、及びラノリンなど、半浸透性又は半閉塞性特性の者を含むフィルム。
【0053】
b)ゼラチン、ペクチン、及びアカシアゴム、グアーガム、及びカラヤを含む複合ポリサッカライドで構成したカルボキシメチルセルロースタンパク質を含む親水コロイド。この親水コロイド材料は、フレキシブル泡の形で、あるいは代替的にポリウレタンに処方された、あるいは更に代替的に、ポイリイソブチレンなど粘着剤として処方された形で使用される。
【0054】
c)寒天、スターチ、プロピレングリコールなどのハイドロゲン。これは、通常、約80%乃至90%の水を含み、従来からシーツ、パウダー、ノリ及びゲルとして、酸化ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド、ポロピレングリコールなどの架橋ポリマと共に処方されている。
【0055】
d)親水性開放セル接触面と、疎水性閉鎖セルポリウレタンからなるポリサッカライドなどのフォーム。
【0056】
e)パインメッシュガーゼ、パラフィン及びラノリンで被覆したガーゼ、ポリエチレングリコールで被覆したガーゼ、ニットビスコース、レーヨン、及びポリエステルを含む、含浸剤。
【0057】
f)アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム、を含むアルギン酸塩などのセルロース状ポリサッカライド。これは、ファイバーの不織合成物として処方する、あるいは織合成物に織り込むことができる。
【0058】
いくつかの実施例では、創傷ドレッシングは身体に対して不活性であり、炎症などを引き起こさない。
【0059】
一実施例では、創傷ドレッシングがポリサッカライド含有支持マトリックスであり、これは、銀又は銅で誘導体化され、及び/又は、このマトリックスに結合又は配置されたアルギン酸銀(架橋、あるいはアルギン酸銀以外の形で)を含み、更に、キトサン、アルギン酸塩、及びコットン又はカルボキシメチレートコットンを、ガーゼ、フィルム、アイドロコロイド、ハイドロゲル、ハイドロ活性、フォーム、含浸剤吸収性パウダ及びのりの形で含むものでもよい。いくつかの実施例では、創傷ドレッシングが、織布又は不織布として形成されたコットンセルロースガーゼを含む。
【0060】
いくつかの実施例によれば、不活性層又はその一部が乳房手術後の患者の回復の改善に有効な活性物質を含んでいてもよい。回復の改善という場合、病状を和らげるだけでなく重症度を低減するような病状の治療と、病状の発生防止することの両方を意味すると解するべきである。この病状には、例えば、組織の損傷(例えば、切開による)、炎症、感染、切開領域における痛み、赤み、組織の腫れが含まれる。
【0061】
いくつかの実施例によれば、この物質は、承認薬、遷移金属、ハーブ(例えば、ハーブ抽出物)、ビタミン(例えば、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE)、酵素や成長因子(例えば、コラーゲン再生を促進する)生体タンパク質、生体接着剤(例えば、コラーゲンベースの、フィブリンベースののり)その他であってもよい。
【0062】
例えば、この薬剤は、抗生物質、防腐剤、鎮痛剤から選択される。放射線治療後に有益であることが知られているアロエベラ、タンポポ(Pu Gong Ying)、ハナスゲ(Zhi Mu)、キンセンカなど;術後の回復に有益であることが知られている、トチバニンジン(San Qi−Tian Qi)、アルニカ(セイヨウウサギギク(Leoparud’s bane)又は山タバコともいう);癌に有効であることが知られている半枝蓮(Ban Zhi Lian)、ニショウソウハナスゲ(Zhi Mu)、ルバーブ根(Da Huang);などの植物薬も考慮される。
【0063】
いくつかの実施例では、この物質が遷移金属である。例えば、亜鉛、銅又は銀の、抗菌又は抗炎症作用が知られている。また、銅は、ヘモグロビン(赤血球)生成の刺激剤として知られており、創傷回復を促進する皮膚層を安定させるのに役立つその他の重要タンパク質であり、亜鉛及び銅は、コラーゲンの合成に有用であることが知られている。
【0064】
内層140は、含浸させる及び/又は活性物質で被覆することができ、一旦皮膚又は切開部分からの流体に接触すると、この物質が患者の皮膚の上及び接触した切開部分の上の内層から放出される。
【0065】
時に、この活性物質は、マイクロカプセル又はナノカプセル、リポソーム、マイクロスフェア又はナノスフェア、マイクロエマルジョン又はナノエマルジョン、その他のこの分野で知られている、制御放出送達製剤に含めるようにしてもよい。この制御放出には、徐放、条件付き放出(例えば、切開が流体を分泌している場合のみ)が含まれる。
【0066】
いくつかの実施例では、内層140及び外層150は、互いに固定的に取り付けられている。これは、溶接技術、接着剤(化学接着剤並びに生体接着剤)の使用によって行うことができる。この取り付けは、選択された領域あるいはポイントに、又は、全体のインターフェース(図示せず)を介している。
【0067】
図3を参照する。簡単にするために、
図1A又は1Bに使用している符号に200を足して、
図3でシフトさせて使用して、同じ又は同様の機能を有する構成要素を同一に扱っている。例えば、
図1Aの要素14は、
図3の左カップ214と同じ機能を有する左カップである。
【0068】
特に、
図3は、患者が身に着けた乳房ドレッシング200の正面図である。乳房ドレッシング200は、左肩部分280と右肩部分290を具えており、これらは図に示す実施例では異なっている。この非限定的な実施例で特に、左肩部分280は、患者の肩と腕部分を覆う袖282を具える。袖282は、好ましくは通常衣服に用いらえる、綿、絹、ポリエステルなどの合成又は天然生地でできている、右肩部分290は、長さを調節可能なストラップ292を具え、調節可能な取付け要素が、ベロクロストラップなどのファスナで内部係合して、このストラップの有効長を変化させている。肩部分は、固定的にあるいは解放可能に、バックストラップ(図示せず)にそれぞれ、及び左カップと右カップの一方又は両方に固定されている。
図3に示す実施例では、袖282がカップ214に、一連のスナップファスナ284によって解放可能に連結されており、長さ調節可能なストラップ292は、ループ294によってカップ216に解放可能に連結されている。
【0069】
いくつかの実施例では、左及び右肩部分が、調節可能なストラップの形状であり、このストラップを交差する構造で左及び右カップに連結できる。すなわち、左肩部分を右カップに、右肩部分を左カップに連結して、患者の背部でX形のストラップを形成できる。このことは、ドレッシングを適所にしっかり確実に固定するため、有利である。
【0070】
いくつかの更なる実施例では、調整可能な肩ストラップが非弾性で伸縮不可能である。この肩ストラップは、非弾性で、伸縮不可能な材料の間に配置した柔軟のフォーム材料を具えていてもよい。
【0071】
いくつかのその他の実施例では、調整可能な肩ストラップが、若干ではあるが、高度ではない弾性がある材料でできている。
【0072】
いくつかの実施例では、肩部分が、テキスタイル業界で、いくつかの実施例では、ブラジャー製造業界で通常使用されている材料で形成されている。
【0073】
いくつかの好ましい実施例では、ここに開示した術後乳房ドレッシングが、使い捨て材料でできている。換言すると、このドレッシングは、外科手術後(外科手術の直後、並びに数日又は数週間後)患者が実質的に単回使用する使い捨てドレッシングである。
【0074】
いくつかの実施例では、術後乳房ドレッシングが、滅菌乳房ドレッシングである。このため、その製造ステップにおいて、ドレッシングを滅菌プロセスにかけ、パッケージに密封する。
【0075】
本発明は、いくつかの実施例を参照して説明したが、特許請求の範囲に規定した発明の本質から離れることなく、多くの変形例をここに開示した術後ドレッシングの設計及び組立に組み込むことができる。