特許第6497628号(P6497628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497628
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】円錐摩擦リング変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 15/42 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   F16H15/42
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-538299(P2015-538299)
(86)(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公表番号】特表2015-532970(P2015-532970A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(86)【国際出願番号】DE2013000640
(87)【国際公開番号】WO2014067509
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】102012021171.6
(32)【優先日】2012年10月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512280013
【氏名又は名称】ロース,ウルリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ロース, ウルリッヒ
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/160621(WO,A2)
【文献】 特開2006−336861(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01729037(EP,A1)
【文献】 特開2010−151186(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0165988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャップ(2)によって互いに隔てられている2つの円錐(3)及び該円錐(3)と相互作用する摩擦リング(4)を備える円錐摩擦リング変速機(1)であり、前記摩擦リングは、ガイドエレメント(6)によって前記摩擦リング(4)に作用する調整手段(5)を用いて前記ギャップ(2)に沿って移動経路を軸方向に移動可能に配置されており、前記調整手段(5)は、調整ドライブ(7)によって制御可能な調整装置(8)、及び安全装置(9)を備えており、前記制御可能な調整装置(8)が前記摩擦リング(4)に作用しており、前記安全装置(9)は、前記制御可能な調整装置(8)が故障した場合に前記摩擦リング(4)を安全軌道へと調整する、円錐摩擦リング変速機であって、
前記安全装置(9)が電気エネルギーを印加されている正常状態及び電気エネルギーのない故障状態を有しており、前記制御可能な調整装置(8)が故障すると、前記安全装置が正常状態から故障状態に移行し、
前記安全装置(9)が、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換するコンバータ(10)、及び正常状態において前記コンバータ(10)によってバイアスが印加されるエレメント(11)を備えており、バイアスが印加された前記エレメント(11)は、正常状態では前記制御可能な調整装置(8)とは動作接続されていないが、故障状態ではバイアスを印加された動作接続が前記制御可能な調整装置(8)との間に生じていることを特徴とする、円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項2】
前記エレメント(11)がスプリング(12)であることを特徴とする、請求項1に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項3】
前記コンバータ(10)が互いに連動して動く2つのモジュール(13)を有しており、正常状態では、電気エネルギーから生じた力が前記コンバータ(10)を介してバイアスが印加された前記エレメント(11)のバイアスに対抗して前記モジュールに加えられていることを特徴とする、請求項1に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項4】
前記コンバータ(10)の互いに連動して動く2つの前記モジュール(13)と相互作用する、バイアスが印加された前記エレメント(11)の2つの作用領域(14)、及び/又は前記コンバータ(10)の互いに連動して動く2つの前記モジュール(13)が、前記制御可能な調整装置(8)の機械的偏向エレメント(15)に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項5】
前記機械的偏向エレメント(15)が、偏向ロッド(16)であることを特徴とする、請求項4に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項6】
ギャップ(2)によって互いに隔てられている2つの円錐(3)及び該円錐(3)と相互作用する摩擦リング(4)を備える円錐摩擦リング変速機(1)であり、前記摩擦リングは、ガイドエレメント(6)によって前記摩擦リング(4)に作用する調整手段(5)を用いて前記ギャップ(2)に沿って移動経路を軸方向に移動可能に配置されており、前記調整手段(5)は、調整ドライブ(7)によって制御可能な調整装置(8)、及び安全装置(9)を備えており、前記制御可能な調整装置(8)が前記摩擦リング(4)に作用しており、前記全装置(9)は、前記制御可能な調整装置(8)が故障した場合に前記摩擦リング(4)を安全軌道へと調整する、円錐摩擦リング変速機であって、
前記安全装置(9)が、正常位置及び故障位置を有する双安定安全アクチュエータ(21)を備えており、
前記双安定安全アクチュエータ(21)が、前記正常位置と前記故障位置との間を無制御で動作することを特徴とする、円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項7】
前記双安定安全アクチュエータ(21)が、電磁石(22)及び該電磁石(22)に対抗して作用するバイアスが印加されるエレメント(11)を備えていることを特徴とする、請求項6に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項8】
前記エレメント(11)が、スプリング(12)であることを特徴とする、請求項7に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項9】
ギャップ(2)によって互いに隔てられている2つの円錐(3)及び該円錐(3)と相互作用する摩擦リング(4)を備える円錐摩擦リング変速機(1)であり、前記摩擦リングは、ガイドエレメント(6)によって前記摩擦リング(4)に作用する調整手段(5)を用いて前記ギャップ(2)に沿って移動経路を軸方向に移動可能に配置されており、前記調整手段(5)は、調整ドライブ(7)によって制御可能な調整装置(8)、及び安全装置(9)を備えており、前記制御可能な調整装置(8)が前記摩擦リング(4)に作用しており、前記安全装置は、前記制御可能な調整装置(8)が故障した場合に前記摩擦リング(4)を安全軌道へと調整する、円錐摩擦リング変速機であって、
前記安全装置(9)が前記制御可能な調整装置(8)の機械的偏向エレメント(15)を備えており、前記制御可能な調整装置(8)が故障すると、前記調整ドライブ(7)と前記ガイドエレメント(6)間の前記機械的偏向エレメント(15)の作用変数を前記安全装置が変更し、
前記制御可能な調整装置(8)が故障した場合、前記安全装置(9)は、前記制御可能な調整装置(8)の機械的偏向エレメント(15)の作用長さを、前記機械的偏向エレメント(15)の作用変数として変更することを特徴とする、円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項10】
前記安全装置(9)がストップ(17)を有しており、前記ストップ(17)が、前記モジュール(13)の移動を停止させることを特徴とする、請求項3又は4に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項11】
前記制御可能な調整装置(8)が、ロッド(18)に沿って自由に移動可能な調整ブリッジ(19)を備えており、前記調整ドライブ(7)が偏向装置(20)を備え、前記調整ブリッジ(19)は、前記偏向装置(20)を介して前記調整ドライブにより制御可能であり、
前記摩擦リング(4)は、前記ガイドエレメント(6)によって前記調整ブリッジ(19)においてガイドされることを特徴とする、請求項1に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項12】
前記偏向装置(20)が偏向ロッド(16)であることを特徴とする、請求項11に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項13】
前記安全装置(9)が、前記調整ドライブ(7)と前記ガイドエレメント(6)との間で作用する機械的偏向エレメントに作用することを特徴とする、請求項1〜12のうちいずれか一項に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【請求項14】
前記機械的偏向エレメントが、前記調整ドライブ(7)と前記ガイドエレメント(6)との間で作用する偏向ロッド(16)であることを特徴とする、請求項13に記載の円錐摩擦リング変速機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップによって互いに隔てられている2つの円錐及びこれらの円錐と相互作用する摩擦リングを備える円錐摩擦リング変速機に関し、この摩擦リングは、ガイドエレメントによって摩擦リングに作用する調整手段を用いてギャップに沿って移動経路を軸方向に移動可能に配置されており、この調整手段は、調整ドライブによって制御可能な、第1のアクチュエータを備える調整装置、及び第2のアクチュエータを備える安全装置を備えており、この安全装置は、制御可能な調整装置が故障した場合に摩擦リングを安全軌道へと調整する。
【背景技術】
【0002】
この種の円錐摩擦リング変速機は、例えば、国際特許第2004/031622A1号明細書又は国際特許第2006/012892A2号明細書から知られているが、これらの円錐摩擦リング変速機は、とくにそれらの安全装置に関して比較的複雑な構造を有しているか、又はスプリング等によって純粋に機械的に作用する、従って第2のアクチュエータを省略した安全装置が設けられている。 後者は、例えば、実開2010−151186A1号公報、欧州特許第1729037A1号明細書及び米国特許第3,195,365号明細書でも公開されている。 独国特許第102010025007A1号明細書も、機械的フィードバックの結果として生じる純粋に機械的な安全コンセプトを備えている。独国特許第112011100T5号明細書及び独国特許第102010025027A1号明細書でも、独立した安全装置又は摩擦リングの位置に関して安全性に対する何らかの態様を示す第2のアクチュエータは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許第2004/031622A1号明細書
【特許文献2】国際特許第2006/012892A2号明細書
【特許文献3】実開2010−151186A1号公報
【特許文献4】欧州特許第1729037A1号明細書
【特許文献5】米国特許第3,195,365号明細書
【特許文献6】独国特許第102010025007A1号明細書
【特許文献7】独国特許第112011100T5号明細書
【特許文献8】独国特許第102010025027A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、業界標準の円錐摩擦リング変速機において、できるだけ単純な構造の安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
解決方法として、できるだけ単純な構造のアクチュエータによって制御可能な形で調整機構に介入するという共通した上位の基本的考え方を有する、請求項1、6及び/又は9の特徴を備える円錐摩擦リング変速機が提案される。さらにその他の有利な実施形態も、従属請求項ならびに以下の説明の中に記載されている。
【0006】
例えば、安全装置が電気エネルギーを印加されている正常状態及び電気エネルギーのない故障状態を有しており、制御可能な調整装置が故障すると、この安全装置が正常状態から故障状態に移行するという場合、円錐摩擦リング変速機は比較的単純な構造になる。適切な実施形態においては、停電時でも安全装置の正常な機能を保証する独立した電源を省略できることから、それによってとくに、あまり複雑でない構造の円錐摩擦リング変速機が提供される。
【0007】
好ましくは、この安全装置が、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換するアクチュエータとしてのコンバータ、及び正常状態においてこのコンバータによりバイアスを印加されるエレメント、例えばスプリングを備えており、このバイアス印加エレメントは、正常状態では制御可能な調整装置とは動作接続されていないが、故障状態ではバイアスを印加された動作接続が制御可能な調整装置との間に生じている。バイアスを印加された状態にある動作接続により、故障状態ではバイアス印加エレメントが制御可能な調整装置に作用して、摩擦リングを安全軌道へと調整することができる。この実施形態は、正常状態においてコンバータに電気エネルギーを供給することでバイアス印加エレメントに作用してこのエレメントにバイアスを印加するため、エネルギー消費が上昇するという欠点がある。しかしながら、この配置の適切な実施形態では、この追加的なエネルギー消費を最低限にまで制限することができる。
【0008】
コンバータが、互いに連動して動く2つのモジュールの1つとして電磁石を備え、互いに連動して動くこれらの2つのモジュールの他方として、磁石によって運動可能な構成部品、好ましくは強磁性構成部品を備えている場合、該当する円錐摩擦リング変速機はとくにエネルギーを節約する。 詳細には、このコンバータは、付属のアーマチュアを有していてもよい。 確かに、この種の配置は、まず、正常状態から故障状態になるのに比較的多くのエネルギーを必要とする。しかしながら、該当するモジュールの適切な形態では、正常状態において注目に値するエネルギー消費の低下を可能にしながらも、互いに連動して動く2つの構成部品が正常状態においてバイアス印加エレメントにバイアスを加えられるように磁力線を集中させることができる。電気エネルギーが磁石に供給されない場合、バイアス印加エレメントは荷重が取り除かれ、その残りのバイアスによって制御可能な調整装置に作用することができる。
【0009】
従って、コンバータが互いに連動して動く2つのモジュールを有しており、正常状態では、電気エネルギーから生じた力がコンバータを介してバイアス印加エレメントのバイアスに対抗してこれらのモジュールに加えられている場合は有利である。
【0010】
コンバータの互いに連動して動く2つのモジュールと相互作用する、バイアス印加エレメントの2つの作用領域、例えば該当するスプリングの両端部、及び/又はコンバータの互いに連動して動く2つのモジュールが、制御可能な調整装置の機械的偏向エレメントに配置されている場合、全体の配置はとくにコンパクトになる。この種の偏向エレメント、例えば偏向ロッドは、いずれにせよ円錐摩擦リング変速機に用いられることが多いため、この安全装置のために追加の取付けスペースが必要になることはほとんどない。
【0011】
コンバータの互いに連動して動く2つのモジュール、及びコンバータの互いに連動して動く2つのモジュールと相互作用する、バイアス印加エレメントの作用領域が、両方とも制御可能な調整装置の機械的偏向エレメントに配置されている場合、全体の配置はとくにコンパクトになる。
【0012】
安全装置が、正常位置及び故障位置を有する双安定安全アクチュエータを備えている場合、さらにこの円錐摩擦リング変速機は比較的単純な構造になる。 この種の双安定安全アクチュエータは、構造という点では比較的小さく、その理由は、とくに、より多くの取付けスペースを必要とする多数の占有位置、あるいは複雑な調整機構もしくは制御機構がなく、これらの機構は、例えば回転モータ駆動、ステップモータ又は複雑な変速機配置におけるような、多数の安定した位置を持つアクチュエータの場合には不要である。
【0013】
双安定安全アクチュエータが、電磁石及びこの電磁石に対抗して作用するバイアス印加エレメント、例えばスプリングなどを備えている場合、このアクチュエータは、実際に、とくにコンパクトに実施することができる。
【0014】
また、安全装置が制御可能な調整装置の機械的偏向エレメントを備えており、制御可能な調整装置が故障すると、調整ドライブとガイドエレメント間の機械的偏向エレメントの作用変数を安全装置が変更する場合、円錐摩擦リング変速機はとくに簡単な構造になる。これにより、適切な実施形態では、例えば機械的偏向エレメントと同じモジュールによって、最終的に安全装置が摩擦リングのガイドエレメントに作用することを確実なものにできる。
【0015】
例えば、詳細には、制御可能な調整装置が故障した場合、制御可能な調整装置の偏向ロッドの作用長さが機械的偏向エレメントの作用変数であるとすると、安全装置はこの作用長さを変更することができる。例えば、偏向ロッドに直接挿入されている該当する双安定アクチュエータの長さが可変性であることを適切に利用することで、双安定アクチュエータによって、とくにコンパクトな形で偏向ロッドを延長することができる。
【0016】
しかしまた、回転式偏向エレメントにおいても、2つの回転位置の間で相応に往復運動できる双安定アクチュエータを作動変数の変更に利用することができる。
【0017】
とくに、欧州特許第1729037A1号明細書とも異なり、この安全装置は、調整ドライブとガイドエレメントとの間で作用する機械的偏向エレメント、例えば調整ドライブとガイドエレメントとの間で作用する偏向ロッドあるいは歯車などのような、調整ドライブとガイドエレメントとの間で作用する相応の回転式偏向エレメントに作用することができる。このことにより、一般的には安全装置のアクチュエータよりもかなり複雑でより重い調整ドライブのサスペンションを、とくに構造的に単純に、従ってコンパクトにすることができる。
【0018】
好ましくは、安全装置がストップを有しており、このストップによって、例えば安全軌道が規定されている。 同様に、バイアス印加エレメントを適切にガイドするために、又はバイアスのかかった状態に保つために、このストップを利用することもできる。
【0019】
好ましくは、制御可能な調整装置が、ロッドに沿って軸方向に自由に移動可能な調整ブリッジを備えており、この調整ブリッジは、例えば偏向ロッド、偏向レバー又は偏向エレメントなどの偏向装置を介して調整ドライブにより制御可能であるとともに、好ましくはガイドエレメントを担持している。
【0020】
ガイドエレメントとしては、例えば適合するローラ又はスライドピース又はスライド面も用いることができる。
【0021】
好ましくは、摩擦リングが、一方の円錐にかみ合った状態でその周辺を回っている。 この場合、とくに好ましくは、摩擦リングが円錐間のギャップの中に配置されており、それは、このことによって、円錐と摩擦リングとの間の押下げ力を極めてコンパクトな形で大きくできるからである。
【0022】
最後に、調整ドライブとしては好ましくは、モータ駆動によるあらゆる装置もしくはエネルギーを変換するあらゆる装置が使用できる。 手動による調整ドライブも考えられるが、自動車の場合、これはエネルギー効率又は運転者の快適性の理由から除外されることが多い。
【0023】
前述又は請求項で説明されている解決方法の特徴は、必要に応じて組み合わせることも可能で、それらの利点を合わせた形で実施することができるのは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】調整ブリッジ、ロッド(オリジナルにある)、安全装置及び調整ドライブを備える摩擦リングである。
図2図2による安全装置の断面図である。
図3図1及び2に従った配置を使用できる円錐摩擦リング変速機の図である。
図4図2に類似した代替の安全装置の図である。
図5図2に類似したもう1つの代替の安全装置の図である。
図6】別の位置に安全装置を備える円錐摩擦リング変速機を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
とくに添付の図にも示されている実施例の説明に基づいて、以下に、本発明のその他の利点、目的及び特性について詳しく述べる。
【0026】
図1〜3による円錐摩擦リング変速機1では、2つの円錐3がギャップ2によって互いに隔てられており、このギャップ内では、摩擦によって円錐と相互作用する摩擦リング4が、一方の円錐3にかみ合いながらその周辺を回っている。
【0027】
この場合、摩擦リング4は、この実施例では小さなガイドホイールによって実現されているガイドエレメント6(例として符号が付けられている)によって調整ブリッジ19内にガイドされており、このブリッジは、軸方向に自由に、ギャップに対して平行に移動可能であるようにガイドされている。ロッド18は、周知のやり方で、円錐3の軸が架けられている面に対して平行に、軸の周りを回転可能にハウジング23内に支持されているため、2つの円錐3に関して摩擦リング4の迎角を変更することができる。この種の設定により、摩擦リング4は、ギャップ2に沿って移動し、これにより、円錐摩擦リング変速機1の変速比を周知のやり方で変更することができる。
【0028】
当然ながら、この場合、ロッド18は、必ずしも2つの軸を介して調整ブリッジ19をガイドする必要はない。 むしろ、別のやり方では、適切な回り止めがあれば、例えば唯一の軸によっても相応のガイドが可能である。 同様に、調整ブリッジ19は必ずしもブリッジ状でなくてもよい。 これに関しては、変更された実施形態を示すことは簡単である。同様に、摩擦リングが直接位置決めされるとともに、その角度だけが設定されないように円錐摩擦リング変速機1を形成することも考えられ、それによって、調整ブリッジ19がギャップ2に沿って摩擦リングの動きに従うことにより、摩擦リングはその位置まで自由に進むことができる。
【0029】
ロッド18及び摩擦リング4の迎角を設定するために調整ドライブ7が設けられており、この調整ドライブは、この実施例の場合、偏心ブッシュ24、偏向ロッド16又は偏向装置20、及びロッドレバー25を介してロッド18に作用する回転式ステップモータとして形成されている。
【0030】
従って、この実施例では、調整ブリッジ19、ロッド18、ロッドレバー25、偏向ロッド16、偏心ブッシュ24及び調整ドライブ7が調整手段5を形成し、これらによって、摩擦リング4はギャップ2に沿って移動することができ、この実施例の場合、移動自体は、摩擦リング4の迎角に応じて、摩擦リング4と円錐3との相互作用によって行われる。 前述した調整手段5のモジュールは、さらに制御可能な調整装置8を形成する。
【0031】
さらに、調整手段5は、この実施例の場合、偏向ロッド16内に設けられている安全装置9を備えており、また偏向エレメント15を形成する偏向ロッド16の他にも、電磁石22の形でのコンバータ10、ならびにスプリング12の形でのバイアス印加エレメント11、及び磁石と相互作用するカウンタピース26を備え、この実施例におけるカウンタピースはポット型に形成され、スプリング12を取り囲んでおり、安全装置ハウジング27の中にガイドされている。
【0032】
この場合、電磁石22及びカウンタピース26は互いに連動して動く2つのモジュール13を形成しており、ここで、バイアス印加エレメントが互いに連動して動くモジュール13を圧迫し、電磁石22に電気エネルギーが供給される際に、互いに連動して動くモジュール13によってこのエレメントにバイアスがかけられることにより、スプリング12又はバイアス印加エレメント11は、作動領域14を介してこれらの2つの可動モジュール13と相互作用する。
【0033】
この場合、スプリング12の跳ね返りは、カウンタピース26から電磁石22までが所定の距離に達したときにカウンタピース26が衝突する、安全装置ハウジング27のストップ17によって制限される。この距離は、偏向ロッド16の作用長さを延長し、それによって調整ドライブ7又は偏心ブッシュ24がどのような角度位置にあってもロッド18の角度が確実に設定されるようにし、それによって摩擦リング4がその安全軌道を進むように寸法が決められている。このために、偏向ロッド16は2つの部分に分けられており、一方は磁石22に固定され、他方はカウンタピース26に固定されている。
【0034】
正常状態では、電磁石22に電気エネルギーが供給されるため、電磁石はカウンタピース26を引き寄せる。その結果、バイアス印加エレメント11にバイアスがかけられ、偏向ロッド16の作用長さが短くなる。 故障の場合、詳細には例えば電気エネルギーの障害では、電磁石22が無通電状態になり、当然ながらこのことは制御中にも生じる可能性があるが、これによりスプリング12又はバイアス印加エレメント11は、カウンタピース26がストップ17に達して偏向ロッド16の作用長さがそれに応じて大きくなるまで膨張する。 この位置においても、バイアス印加エレメント11は張力を受けているままなので、全体として偏向ロッド16は摩擦リング6を安全軌道内に確実に移動させるのに十分な剛性を有している。
【0035】
必要に応じて、安全軌道に達した場合にロッド18を再び初期位置に調整する別のストップを設けることもでき、それによって、バイアス印加エレメント11は再び僅かに圧縮される。
【0036】
安全装置ハウジング27は、シートメタルブッシュとして形成されており、電磁石22の部分でタブ28を使って磁石及び偏向ロッド16の付属部品に固定されている。 偏向ロッド16の他方の部品では、安全装置ハウジング27が偏向ロッド16のこの部品を取り囲んでいるだけなので、後者の部品は、安全装置ハウジング27に対してスプリング力又は磁力によって動くことがでる。
【0037】
2つの可動モジュール13、すなわち、電磁石22ならびにカウンタピース26を備えるコンバータ10、及びストップ17から成る配置は、正常位置及び故障位置を備える双安定安全アクチュエータ21を形成し、この安全アクチュエータ21は正常位置と故障位置との間を無制御に往復する。この場合、当然ながら、該当する動きは、それぞれ、例えばスタート時には一方の方向、すなわち故障位置から正常位置の方向に行われ、停止時にはもう一方の方向、すなわち正常位置から故障位置の方向に行われる。後者は、それぞれ、安全アクチュエータ21に電流を印加するか、印加しないかによって実施することができる。ちなみに、故障状況の場合は、これに応じて、故障位置への無制御の移行が行われる。
【0038】
図4及び5に示されている安全アクチュエータ21も、これに対応して構成されており、これに対応して偏向ロッド16の中に挿入することができる。
【0039】
しかしながら、図4及び5による実施例の場合、バイアス印加エレメント11又はスプリング12は、電磁石22の内部に配置されており、これにより、全体の配置がさらにコンパクトになっている。 また、これらの実施例では、カウンタピース26がスプリング12及び電磁石22の中にまで形成されているため、このカウンタピースは電磁石22のアーマチュア29となっている。もちろん、この代わりに、カウンタピース26がプレート型にのみ形成されている場合は、安全装置ハウジング27又は例えば偏向ロッド16と固定接続されているアーマチュアを使用してもよい。
【0040】
すべての安全装置9において、モジュール13が互いに密着している場合、電磁石22の磁力線は、最小の保持エネルギーしか必要ないように最適化できるため、必要に応じて、電気エネルギーのエネルギー供給も相応に抑制することができる。後者のために、図4及び5に示されている実施例の電磁石22は、2つの巻線セット、すなわち半径方向の内部巻線セット及び半径方向の外部巻線セットから成り、半径方向の内部巻線セットは、その寸法に関してカウンタピース26を正常状態に保持するのに十分であり、一方、半径方向の外部巻線セットは、カウンタピース26が故障状態又はその故障位置から正常状態又はその正常位置に移行する場合にのみ利用される。この限りにおいて、正常状態では外部巻線に電気エネルギーが供給されないことから、極めて簡単にエネルギーを相応に節約することができる。
【0041】
そのために、図4及び5に示された実施例はそれぞれ電気コンタクト30を有しており、図4に示された実施例では、この配置が故障状態にある場合、電気コンタクト30は閉じられている。図5に示されている実施例では、この配置が正常状態にある場合、電気コンタクトは閉じられている。この場合、図5による実施例では、アーマチュア29が安全装置ハウジング27に達すると、電磁石22の半径方向の外部巻線の電流回路が切断される。他方、図4に示されている実施例では、電気コンタクト30の切断後も外部巻線の磁気エネルギーが十分に残っており、それによって一度加速されたアーマチュア29を正常位置にまで移せるように寸法が決められている場合、コンタクト30から直接電源供給を行うことができる。
【0042】
該当する安全装置9、詳細には図4及び5に該当する安全装置9は、必ずしも偏向ロッド16又は偏向エレメント15に設けられていなくてもよい。代わりに、例えば図6に図式的に示されているように、この安全装置がハウジング23の適切な位置に取り付けられている場合は、ロッド18に直接作用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 円錐摩擦リング変速機
2 ギャップ
3 円錐
4 摩擦リング
5 調整手段
6 ガイドエレメント
7 調整ドライブ
8 制御可能な調整装置
9 安全装置
10コンバータ
11バイアス印加エレメント
12スプリング
13モジュール
14作用領域
15偏向エレメント
16偏向ロッド
17ストッパ
18ロッド
19調整ブリッジ
20偏向装置
21安全アクチュエータ
22電磁石
23ハウジング
24偏心ブッシュ
25ロッドレバー
26カウンタピース
27安全装置ハウジング
28タブ
29アーマチュア
30電気コンタクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6