特許第6497710号(P6497710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6497710金属−高分子サンドイッチ板およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497710
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】金属−高分子サンドイッチ板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20190401BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   B32B15/08 M
   B32B15/08 N
   B21B1/22 H
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-543337(P2016-543337)
(86)(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公表番号】特表2016-539831(P2016-539831A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】EP2014065142
(87)【国際公開番号】WO2015039782
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】102013110282.4
(32)【優先日】2013年9月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514309479
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】THYSSENKRUPP STEEL EUROPE AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】レツラー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,クラウス−ペーター
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−127332(JP,A)
【文献】 特開平2−41702(JP,A)
【文献】 特開平6−246305(JP,A)
【文献】 特開平4−80027(JP,A)
【文献】 特開2003−205576(JP,A)
【文献】 特開昭61−212428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B21B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製被覆板(1a、12a)と、当該被覆板(1a、12a)の間に配置され、当該被覆板に接着により接合される少なくとも1つの高分子層(18b)とを有する金属−高分子サンドイッチ板(18)であって、
2つの被覆板(1a、12a)のうち少なくとも1枚は、その表面(1、1**、12、12**)の粗さが両面で相違する金属板により形成され、その算術平均粗さの差が少なくとも0.4μmであり、
それぞれの被覆板(1a、12a)の、高分子層(18b)に面した面(1、12)は、高分子層(18b)に面していない面(1**、12**)に比べて、粗さが小さいことを特徴とする金属−高分子サンドイッチ板。
【請求項2】
請求項1に記載の金属−高分子サンドイッチ板において、
粗さが両面で相違する前記金属板のそれぞれの面の算術平均粗さの範囲が0.25−5μmであることを特徴とする金属−高分子サンドイッチ板。
【請求項3】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属−高分子サンドイッチ板において、
高分子層(18b)に面しない被覆板(1a、12a)の2つの外面(1**、12**)の粗さが相違し、前記2つの外面の算術平均粗さの差が少なくとも0.4μmであることを特徴とする金属−高分子サンドイッチ板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属−高分子サンドイッチ板において、
高分子層(18)に面する被覆板(1a、12a)の2つの内面(1、12)の粗さが相違し、前記2つの内面の算術平均粗さの差が少なくとも0.4μmであることを特徴とする金属−高分子サンドイッチ板。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属−高分子サンドイッチ板において、
被覆板(1a、12a)の、高分子層(18)に面しない外面(1**、12**)に、金属腐食防止層が設けられていることを特徴とする金属−高分子サンドイッチ板。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属−高分子サンドイッチ板において、
前記高分子層(18)が、ポリアミド、ポリエチレン、またはポリアミドとポリエチレンの混合物により製造されることを特徴とする金属−高分子サンドイッチ板。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属−高分子サンドイッチ板において、
高分子層(18)の厚さが0.1から0.8mmの範囲であることを特徴とする金属−高分子サンドイッチ板。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属−高分子サンドイッチ板において、
前記被覆板(1a、12a)が鋼および/またはアルミニウムにより製造され、その厚さが0.1から0.5mmの範囲であることを特徴とする金属−高分子サンドイッチ板。
【請求項9】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属−高分子サンドイッチ板の製造方法において、
片面に高分子が塗布された少なくとも2枚の板状または帯状の金属板(1’、12)を提供するステップであって、当該金属板のうち少なくとも1枚はその表面(1、1**;12、12**)の粗さが両面で相違し、算術平均粗さの差が少なくとも0.4μmとなるように構成される、ステップと、
高分子層(1b、12b)の間に接着接合を作るために、高分子層(1b、12b)を結合する前に、金属板(1’、12)のうち少なくとも1枚の金属板の高分子が塗布された面を活性化するステップであって、高分子層(1b、12b)の活性化が金属板の高分子が塗布された面から直接行われる、ステップと、
高分子が塗布された面により金属板(1’、12)を接合してサンドイッチ板(18)を形成するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項に記載の製造方法において、
それぞれの提供された金属板(1’、12)のそれぞれの面の算術平均粗さが0.25−5μmであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項または請求項10に記載の製造方法において、
前記提供された金属板(1’、12)のそれぞれの高分子層(1b、12b)に面した面(1、12)の粗さが、高分子層(1b、12b)に面していない面(1**、12**)に比べて、小さいことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項乃至請求項11のいずれかに記載の製造方法において、
前記提供された金属板(1’、12)の、高分子層(1b、12b)に面していない2つの外面(1**、12**)の粗さが相違し、前記2つの外面の算術平均粗さの差が少なくとも0.4μmであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項乃至請求項12のいずれかに記載の製造方法において、
前記提供された金属板(1’、12)の、高分子層(1b、12b)に面した2つの内面(1、12)の粗さが相違し、前記2つの内面の算術平均粗さの差が少なくとも0.4μmであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の金属−高分子サンドイッチ板(18)の自動車部品の製造への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属被覆板と、当該被覆板の間に配置され、当該被覆板に接着により接合される少なくとも1つの高分子層とを有する金属−高分子サンドイッチ板に関する。加えて、本発明はそのようなサンドイッチ板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量構造は、特に燃料消費やCO2の排出を抑制するために、自動車構造においてますます重要になっている。自動車の軽量化のために知られた方法は、車体構造において従来の鋼板に代えてアルミ板や鋼−高分子複合板を用いることである。
【0003】
本出願人は、被覆板として2枚の薄鋼板およびこの間に配置された高分子のコア層からなる鋼−高分子複合板をLITECOR(登録商標)という商号で販売している。例えば、被覆板は0.2−0.3mmの範囲の厚さで、高分子コア層はおよそ0.3mm以上の厚さである。当該サンドイッチ材料より作られた部品は、同等のアルミ板と同程度の軽量性を得られるが、顕著に費用が低くなる。加えて、当該サンドイッチ材料は非常に高い曲げ剛性および凹みに対する剛性により特徴付けられる。特に、当該サンドイッチ材料は従来の鋼板の良好な形成特性を有しており、過度な変形を加えても剥離性を示さない。
【0004】
サンドイッチ材料LITECOR(登録商標)に用いられる被覆板は、高分子層との積層の前に、所望の板の粗さを得るため、スキンパス圧延にかけられる。前記被覆板の粗さは、意図するサンドイッチ材料のさらなる加工により決定される、顧客の要望によって設定される。顧客はサンドイッチ材料の2つの表面が「潤滑ポケット」、つまりサンドイッチ材料を形成するプロセスにおいて減摩油や潤滑油を導入するための小さなくぼみ、を有するように、サンドイッチ板の被覆材の粗さが比較的大きいことを要求することが多い。従来は実質的に均一な粗さがこの被覆板の表面に設けられていた。
【0005】
これから進んで、本発明の目的は前述の種類のサンドイッチ板をさらなる加工特性の点において、さらなる改良を達成することである。本発明のさらなる目的は、対応する金属−高分子サンドイッチ板の信頼できる製造のための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の教示によれば、前述の目的は請求項1に記載の特徴を有する金属−高分子サンドイッチ板により達成できる。本発明の金属−高分子サンドイッチ板の好適な実施例は請求項1を引用する請求項に記載されている。
【0007】
本発明の金属−高分子サンドイッチ板は、2枚の被覆板のうちの少なくとも1枚が、表面の粗さの相違する金属板により形成され、算術平均粗さ(Ra)の差が少なくとも0.4μm、好ましくは少なくとも0.5μmであることを特徴とする。
【0008】
本発明は、上面と下面(外面と内面)で粗さが相違する被覆板を作り、顧客の望むサンドイッチ材料の外表面の粗さの最適条件と、被覆板と高分子層の接合についての最適条件が意のままに満たされるようにする考えに基づいている。
【0009】
本出願人により行われた実験は、本発明にかかる金属−高分子サンドイッチ板の非常によい深絞り加工および耐剥離特性は特に、好ましい態様によると、金属板のそれぞれの面の算術平均粗さ(Ra)の範囲が0.25−5μm、好ましくは0.5−2.5μmであるときに得られることを明らかにした。ここで、後で高分子層と結合される方の金属板(被覆板)の面は、金属板と高分子層の結合を強くするために、比較的小さい算術平均粗さ(Ra)が好ましくは設けられており、高分子層に面しない金属板の反対側には、金属板の高分子層に結合される面の算術平均粗さ(Ra)よりも大きい場合または小さい場合のある、顧客の要望に対応した算術平均粗さ(Ra)が設けられている。被覆板の外側の粗さが比較的大きいと、金属−高分子サンドイッチ板の好ましい深絞り特性を与える。これに対し、被覆板の外側の粗さが比較的小さいと、例えば自動車の外表面や建物の外装において被覆面の高品質な外観を得るためなどの最適条件を与える。
【0010】
本発明の金属−高分子サンドイッチ板の好適な実施例は、それぞれの被覆板の高分子層に面した面の粗さが、高分子層に面していない面と比べて小さくなるよう提供される。
【0011】
2枚の被覆板は、その表面の粗さの点から、実質的に同じであっても、選択的に互いに異なっていてもよい。したがって、例として、負荷絞りを補助する潤滑油や接合剤を導入するための凹みが提供されるよう、積層工程の後には高分子層に面しない方の被覆板の面に比較的大きい粗さを設けながら、例として、自動車の外表面や建物の外装において必要な最適条件を満たすために、積層工程の後には高分子層に面しない第2の被覆板の面に比較的小さい粗さを設けてもよい。
【0012】
よって、さらなる本発明の金属−高分子サンドイッチ板の好適な実施例は、高分子層に面しない被覆板の外面の粗さが相違し、前記外面の算術平均粗さ(Ra)の差が少なくとも0.4μm、好ましくは少なくとも0.5μmであることを特徴とする。
【0013】
本発明の金属−高分子サンドイッチ板のさらなる実施例は、高分子層に面した被覆板の内面の粗さが相違し、前記内面の算術平均粗さ(Ra)の差が少なくとも0.4μm、好ましくは少なくとも0.5μmであることを特徴とする。この実施例は、本発明に従って設定される粗さを有する被覆板の製造に関して、特に有利となる場合がある。
【0014】
本発明の金属−高分子サンドイッチ板のさらなる好適な実施例においては、その被覆板のうち少なくとも1枚は二相鋼製である。二相鋼は、複雑な強度関連車体部品を製造するために高ストレッチ構成要素で冷間形成を行うのに特に適している。高い凹みへの耐性により、冷間圧延された二相鋼は特に車体構造の外表面の領域において、かなりの重量節減の可能性を提供する。二相鋼の高い強化能力は、形成中の材料の局所的な収縮のリスクを低減し、低い変形温度においても、部品の変形領域における降伏強度の大幅な増加につながる。部品(金属−高分子サンドイッチ板)の究極の強度は、熱処理、特に表面被覆の焼成により得られまたは増加できる。これにより30MPaより大きな追加的な強度の増加が得られる。
【0015】
2枚の被覆板のうち少なくとも1枚は、Mnを0.8−2.9重量%、Siを0.1−1.0重量%、Alを0.015−2.0重量%で含む鋼から作られることが好ましい。例として、被覆板の鋼は以下の化学組成を質量部(重量%)で溶融分析において有する:
0.08−0.23 のC
0.40−1.0 のSi
0.80−2.9 のMn
最大0.085 のP
最大0.015 のS
0.015−2.0 のAl
最大0.15 のNi+Nb
最大1.40 のCr+Mo
最大0.20 のV
最大0.005 のB
残部は鉄と不可避的不純物。
【0016】
さらに、完成品では外側に配置される本発明の金属−高分子サンドイッチ板の被覆板は、好ましくは480から1150MPaの範囲の引張強度を有する。被覆板、したがって外装用シートの高い凹みに対する耐性はこのようにして得られるのである。
【0017】
本発明の金属−高分子サンドイッチ板の寿命を延ばすため、被覆板には、さらなる本発明の好ましい実施例においては、少なくとも高分子層に面していない外側の面に金属腐食防止層を提供してもよい。
【0018】
鋼からなる被覆板の代わりに、本発明の金属−高分子サンドイッチ板は少なくとも1枚の、例えばアルミニウムやマグネシウムなどの軽金属からなる被覆板を有してもよい。被覆板がアルミニウム製である場合、5xxx系および6xxx系、例えば5000または6000に属する合金を用いることが好ましい。これに対し被覆板がマグネシウム製であるとき、AZ31系およびこれ以上、並びにAM50に属する合金を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の金属−高分子サンドイッチ板に係る高分子層は好ましくはポリアミド、ポリエチレン、またはポリアミド−ポリエチレン混合物により製造される。ポリエチレンとポリアミドは、金属表面のコーティングにおいて特に高い加工性を有することと、加熱などの単純な操作により活性化できることを特徴とする。ポリアミドとポリエチレンの混合は、1つの層中で、2つのポリマーの特性の好適な組み合わせを与える。
【0020】
本発明の金属−高分子サンドイッチ板に係る高分子層の厚さは、好ましくは0.1から0.8mmの範囲であり、被覆板の厚さはそれぞれの場合において好ましくは、例として0.1から0.5mmの範囲である。
【0021】
本発明の第2の教示によれば、上述の目的は請求項10に記載の特徴を有する方法により達成される。本発明の方法の好適な実施例は請求項10を引用する請求項に規定されている。
【0022】
本発明の方法は:
片面に高分子が塗布された少なくとも2枚の板状または帯状の金属板を提供するステップであって、当該金属板のうち少なくとも1枚はその表面の粗さが相違し、算術平均粗さ(Ra)の差が少なくとも0.4μm、好ましくは少なくとも0.5μmとなるように構成される、ステップと、
高分子層の間に接着接合を作るために、高分子層を結合する前に、金属板のうち少なくとも1枚の金属板の高分子が塗布された面を活性化するステップであって、高分子層の活性化が金属板の高分子が塗布された面から直接行われる、ステップと、
高分子が塗布された面により金属板を接合してサンドイッチ板を形成するステップと
を含む。
【0023】
活性化が金属層を通じて高分子層を加熱することにより行われていた、従来から知られたプロセスと異なり、本発明の方法において高分子層は直接活性化される、つまり活性化は高分子表面側から行われ、結果として高分子層と金属層(被覆板)の間の結合への悪影響が効果的に防げられる。特に、接合中にまたは後ほど取り付けられる半製品部が剥離するリスクを顕著に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、具体例と併せて図面を用いて、以下に詳細に説明されている。
図1図1は、表面の粗さが相違する金属板を製造するためのスキンパス圧延装置の概観を示す図である。
図2図2は、片面に高分子層を有する金属板を被覆するための装置の概観を示す図である。
図3図3は、本発明の金属−高分子サンドイッチ板を製造するための装置の概観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は帯状金属板1のスキンパス圧延用の装置を示している。金属板1は好ましくは、例えば厚さの範囲が0.1から0.5mmの鋼板である。当該装置は、スキンパス圧延される金属片1よりも小さい厚さのローラギャップを設定するスキンパスローラ2a、2bを有する圧延フレームワークを具える。スキンパス圧延は、金属片1のそれぞれの表面に粗さ構造をもたらし、または設ける。スキンパスローラ2a、2bのそれぞれはこの目的から特定の表面構造を有している。
【0026】
本発明によると、粗さの異なる表面構造を有するスキンパスローラ2a、2bが金属片1をスキンパス圧延するために用いられる。例えば、上部スキンパスローラ2aは比較的なめらかな表面構造を有しており、下部スキンパスローラ2bは比較的粗い表面構造を有している。これは、スキンパスローラ2a、2bの表面部が概略的に拡大して表されている図1aおよび図1bに、異なる大きさのドーム型またはイボ状の隆起領域3a、3bとして示されている。実際、これらの比較的小さい隆起領域3a、3bは、異なる形状、例えばI字形、二重I字形、H字形やX字形を有するものであってもよい。4a、4bは駆動ローラまたは偏向ローラを意味している。
【0027】
スキンパスローラ2a、2bは、圧延される金属片1aが粗さの相違する表面1、1**を持ち、金属片の2つの表面の算術平均粗さ(Ra)の差が少なくとも0.4μm、好ましくは少なくとも0.5μmとなるように設計されている。
【0028】
スキンパス圧延前に、金属片1は好ましくは金属腐食防止層が1面または両面に提供されていることが好ましい。金属腐食防止層で金属片1を被覆することは、例えば溶融浸漬被覆や電解被覆により達成できる。
【0029】
スキンパス圧延後、それぞれの面1、1**に異なる粗さが設けられた金属片1aは、コイル状に巻かれ、その後一時的に保管され、または高分子層1bを片面に塗布するための装置にさらに直接移送される。そのような装置は概略的に図2に示されている。
【0030】
スキンパス圧延された金属片1aは、先ず、高分子層1bが片面に塗布される前に、1以上の処理ステーションにおいて前処理される。金属片1aは、例として、始めに処理ステーション6においてアルカリ条件下で脱脂および/または洗浄される。次の処理ステーション7においては、金属片表面が、1またはそれ以上の化学的前処理槽において不動態化され、被覆に備えられる。さらに、接合剤や接着物を片面に塗布するために処理ステーション8が提供されてもよい。この前処理の後、選択的に接合剤または接着物が提供された、金属片1aの片面1に高分子層1bが塗布される。高分子層1bは、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、またはこれらポリマーの混合からなる。高分子層は予め作成された高分子フィルムの形態で、金属片1aに積層されてもよい。圧延ローラ9a、9bを有する積層装置9は、例として、この目的のために用いてもよい。積層装置9のローラ9a、9bのうち少なくとも1つは、金属片1aと高分子層(高分子フィルム)1bとの接着を増加させるために、選択的に加熱されてもよい。金属片に塗布される高分子層1bの厚さは0.1から0.8mmの範囲である。図2に示されているように予め作成された高分子フィルムを用いる代わりに、高分子層1bは金属片1aへポリマーを直接押し出すことによっても塗布することができる。
【0031】
高分子層1bの塗布後、片面が被覆された金属片1aは冷却および/または乾燥装置10にかけられる。金属片はその後コイル11を形成するために巻き取られた後、一時的に保管され、または被覆板(金属板)12aもしくは同様に片面に高分子層12bが塗布された被覆板(金属板)12aを接合するための装置にさらに直接移送される。
【0032】
図3は金属−高分子サンドイッチ板(サンドイッチ複合材料)を製造するための装置を示している。この装置は帯状半製品1’、12のためそれぞれ、繰り出しリール13、14を具える。2つの半製品1’、12のうち少なくとも1つ、または両方の半製品1’、12は金属片であり、好ましくは鋼片であり、これらは片面にポリマーが塗布されており、例えば図1および図2に示された装置により製造できる。
【0033】
2つの帯状半製品1’、12はそれぞれの繰り出しリール13、14から繰り出され、半製品1’、12の2つの高分子層1b、12bが向かい合って互いに接触するように、1組のローラ15、16に供給される。半製品1’、12がローラ15、16により設定されるローラギャップに供給される直前に、両方の半製品1’、12の高分子層1b、12bは、ポリマー表面側から働く手段17により活性化される。
【0034】
活性化が、例えば金属層の加熱、つまり金属層側からの加熱により影響されていた従来の方法に対して、高分子層をポリマー側または高分子塗布された半製品のポリマー表面から活性化することにより、結合を形成するポリマー表面を活性化するために必要なエネルギーのみを導入すればよくなる。金属と高分子の間の結合の比較的強い加熱はこれにより効果的に避けられる。加えて、ポリマー表面の直接的な活性化は、溶媒やオゾンなどの他の活性化手段の利用を可能にする。
【0035】
例えば熱入力を起こす手段17のような、ポリマー表面を活性化するために、特に単純な手段が提供される。これらは、放射および/または対流により、少なくとも1つ、好ましくは両方の半製品のポリマー表面を加熱できる。放熱器としては、例えばLED、レーザ、マイクロ波放射器、または赤外放射源などを用いることができる。ポリマー表面を熱するために単純な温風送風機を用いることができ、正確な境界温度に設定することができる。ポリマーは溶けるとその表面形状を喪失してしまうので、境界温度は、例えば、高分子層のポリマーの融点以下とすることができる。しかし、ポリマー表面の活性化の際に、後でローラペア15、16の間で達成される2つの高分子層1b、12bの結合のため、ガラス転移温度の範囲で加熱をしてもよい。
【0036】
ポリマー表面の温度を測定する手段は、製造工程を良好に制御出来るように、好ましくはポリマー表面を活性する手段17に組み込まれる。ローラ15、16が設定するローラギャップの間で、2つの半製品1’、12は、2つの高分子層1b、12bが互いに接触するように、互いに押しつけられる。これについて、図3は2つの高分子層1b、12bが互いに接する瞬間のサンドイッチ複合材料の断面図を含んでいる。
【0037】
高分子層1b、12bの活性化により、複合材料18の図3の次の概略的な断面図に表されているように、高分子層1b、12bの接合の後、これらは続いて、1つの高分子層を形成する。2つの金属被覆板1a、12a、好ましくは、鋼板はこれにより1つの高分子層18bを挟むこととなる。製造されるサンドイッチ複合材料の強さは、上述の範囲の0.1mmから0.5mmの間でのシート厚の選択と、鋼種との組合せにより与えられる。例えば、厚さの大幅な増加または大幅な減少は、サンドイッチ複合材料18の金属被覆板1a、12aについて、高強度鋼種、特に二相鋼を選択することにより、同時に強度を保ちながら、達成することができる。
【0038】
図3のように片面がポリマー被覆された2つの半製品1’、12を用いる代わりに、片面がポリマー被覆された1つのみの半製品1’または12を用いて、これを金属板12aまたは1a、好ましくは鋼板と組み合わせてサンドイッチ複合材料を作ることも可能である。2つの被覆板1a、12aのうち少なくとも1つが表面の粗さの相違する金属板により形成され、算術平均粗さ(Ra)の差が少なくとも0.4μm、好ましくは少なくとも0.5μmであることが重要である。
【0039】
それぞれの被覆板1a、12aの高分子層1b、12bまたは18bに面した面の粗さが、高分子層1b、12bまたは18bに面していない面に比べて小さいことが好ましい。さらに、高分子層1b、12bまたは18bに面していない被覆板1a、12aの外面の粗さは、好ましくは相違し、前記外面の算術平均粗さ(Ra)の差が少なくとも0.4μm、好ましくは少なくとも0.5μmである。
【0040】
この方法により製造されるサンドイッチ複合材料は、次に、巻き取りリールにより巻き取られ、移送または一時的な保管のためにコイル19へ成形される。
【0041】
本発明の実施例は図に示された例に制限されない。むしろ、特許請求の範囲に規定する本発明を利用する数々の変形を、あげられた例と異なる実施例においても、包含することができる。したがって、本発明は3層金属−高分子サンドイッチ板のみならず、5層、7層などの金属−高分子サンドイッチ板に応用することもできる。
【0042】
図3に示された例の変形において、帯状の被覆板に別々に接合剤を塗布し、続いて塗布した接合剤を乾かすことも本発明の範囲である。このように被覆された2つの被覆板(被覆片)は、その後、接合剤が塗布された面がそれぞれ向かい合うように接合される。次いで、これらの被覆片は、帯状高分子フィルムを中間層(コア層)として実質同時に接合される。2つの被覆板とその間に配置された高分子フィルムにより形成された複合材料は、先ず加熱され、選択的にローラにより再び圧延され、その後冷却される。
図1
図2
図3