特許第6497763号(P6497763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6497763
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】水質浄化システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20190401BHJP
   C02F 3/10 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   C02F11/00 Z
   C02F3/10 ZZAB
【請求項の数】7
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-118243(P2018-118243)
(22)【出願日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年6月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510161668
【氏名又は名称】株式会社セイネン
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 岳人
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 美智代
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−210844(JP,A)
【文献】 特開2013−184983(JP,A)
【文献】 特開2013−184074(JP,A)
【文献】 特開2010−042372(JP,A)
【文献】 特開2010−000403(JP,A)
【文献】 特開2000−237779(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105268487(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00− 3/34
C02F 1/00− 1/78
C02F 11/00−11/20
B01D 23/00−35/04
B01D 35/08−37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質浄化装置に被処理水を通水して、前記被処理水中の生物汚泥を減容および/または減量する、水質浄化方法であって、
前記水質浄化装置が、
生物曝気槽と、
バサルト繊維、熱可塑性ポリマーを含むバサルト繊維、フェライト鉄を含むバサルト繊維、または、ケイ素−フェライト鉄を含むバサルト繊維と、還元型グルタチオンを含む化学処理剤とを含有する水槽である反応槽と、
沈殿槽とをこの順に有し、
前記化学処理剤が、水4000質量部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム800〜1600質量部と、還元型グルタチオン0.010〜1.000質量部と、50U/mgのグリセロール脱水素酵素0.001〜0.050質量部に相当するユニット数のグリセロール脱水素酵素とを混合し、さらにインキュベートして混合液(A)を調製し、調製した混合液(A)5200質量部と、5000U/gの酵母溶解酵素10〜300質量部に相当するユニット数の酵母溶解酵素と、グリセリン500〜1600質量部とを混合し、さらにインキュベートして混合液(B)を調製し、調製した混合液(B)800質量部と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1000〜4000質量部と、エチレンジアミン四酢酸10〜100質量部に相当するモル数のエチレンジアミン四酢酸および/またはその水溶性塩と、前記ペルオキソ二硫酸ナトリウムならびに前記エチレンジアミン四酢酸および/またはその水溶性塩を溶解できる量の水とを混合し、さらにインキュベートして混合液(C)を調製し、調製した混合液(C)をそのままで、または水で希釈して得られる化学処理剤である、水質浄化装置である、水質浄化方法
【請求項2】
水質浄化装置に被処理水を通水して、前記被処理水中の生物汚泥を減容および/または減量する、水質浄化方法であって、
前記水質浄化装置が、
生物曝気槽と、
バサルト繊維、熱可塑性ポリマーを含むバサルト繊維、フェライト鉄を含むバサルト繊維、または、ケイ素−フェライト鉄を含むバサルト繊維と、酸化型グルタチオンを含む生物処理剤とを含有する水槽である反応槽と、
沈殿槽とをこの順に有し、
前記生物処理剤が、水4000質量部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム800〜1600質量部と、酸化型グルタチオン0.001〜0.100質量部と、50U/mgのグリセロール脱水素酵素0.001〜0.100質量部に相当するユニット数のグリセロール脱水素酵素とを混合し、さらにインキュベートして混合液(A)を調製し、調製した混合液(A)5200質量部と、5000U/gの酵母溶解酵素50〜150質量部に相当するユニット数の酵母溶解酵素と、グリセリン800〜1500質量部とを混合し、さらにインキュベートして混合液(B)を調製し、調製した混合液(B)800質量部と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1000〜4000質量部と、エチレンジアミン四酢酸10〜200質量部に相当するモル数のエチレンジアミン四酢酸またはその水溶性塩と、前記混合液(B)、前記ペルオキソ二硫酸ナトリウムおよび前記エチレンジアミン四酢酸またはその水溶性塩を溶解できる量の水を混合し、さらにインキュベートして混合液(C)を調製し、調製した混合液(C)をそのままで、または水で希釈して得られる生物処理剤である、水質浄化装置である、水質浄化方法
【請求項3】
前記水槽が、水槽内の酸化還元電位(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHおよび浮遊物質量(SS)からなる少なくとも一つの測定値を制御される請求項1または2に記載の水質浄化方法
【請求項4】
前記水槽内の酸化還元電位(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHおよび浮遊物質量(SS)からなる少なくとも一つの測定値が制御される請求項1に記載の水質浄化方法であって、前記水槽は前記化学処理剤の定量ポンプを備え、前記化学処理剤の定量ポンプを制御して、前記少なくとも一つの測定値を所定範囲内に保持する水質浄化方法
または
前記水槽内の酸化還元電位(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHおよび浮遊物質量(SS)からなる少なくとも一つの測定値が制御される請求項2に記載の水質浄化方法であって、前記水槽は前記生物処理剤の定量ポンプを備え、前記生物処理剤の定量ポンプを制御して、前記少なくとも一つの測定値を所定範囲内に保持する水質浄化方法
【請求項5】
沈殿槽、返送汚泥設備および汚泥処理設備からなる群から選択される少なくとも一つが不要である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水質浄化方法
【請求項6】
水質浄化装置に被処理水を通水して、前記被処理水中の生物汚泥を減容および/または減量する、水質浄化方法であって、
前記水質浄化装置が、
フェライト鉄を含むバサルト繊維と、還元型グルタチオンを含む化学処理剤、または、酸化型グルタチオンを含む生物処理剤とを含有する水槽を有し、
前記化学処理剤が、水4000質量部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム800〜1600質量部と、還元型グルタチオン0.010〜1.000質量部と、50U/mgのグリセロール脱水素酵素0.001〜0.050質量部に相当するユニット数のグリセロール脱水素酵素とを混合し、さらにインキュベートして混合液(A)を調製し、調製した混合液(A)5200質量部と、5000U/gの酵母溶解酵素10〜300質量部に相当するユニット数の酵母溶解酵素と、グリセリン500〜1600質量部とを混合し、さらにインキュベートして混合液(B)を調製し、調製した混合液(B)800質量部と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1000〜4000質量部と、エチレンジアミン四酢酸10〜100質量部に相当するモル数のエチレンジアミン四酢酸および/またはその水溶性塩と、前記ペルオキソ二硫酸ナトリウムならびに前記エチレンジアミン四酢酸および/またはその水溶性塩を溶解できる量の水とを混合し、さらにインキュベートして混合液(C)を調製し、調製した混合液(C)をそのままで、または水で希釈して得られる化学処理剤であり、
前記生物処理剤が、水4000質量部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム800〜1600質量部と、酸化型グルタチオン0.001〜0.100質量部と、50U/mgのグリセロール脱水素酵素0.001〜0.100質量部に相当するユニット数のグリセロール脱水素酵素とを混合し、さらにインキュベートして混合液(A)を調製し、調製した混合液(A)5200質量部と、5000U/gの酵母溶解酵素50〜150質量部に相当するユニット数の酵母溶解酵素と、グリセリン800〜1500質量部とを混合し、さらにインキュベートして混合液(B)を調製し、調製した混合液(B)800質量部と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1000〜4000質量部と、エチレンジアミン四酢酸10〜200質量部に相当するモル数のエチレンジアミン四酢酸またはその水溶性塩と、前記混合液(B)、前記ペルオキソ二硫酸ナトリウムおよび前記エチレンジアミン四酢酸またはその水溶性塩を溶解できる量の水を混合し、さらにインキュベートして混合液(C)を調製し、調製した混合液(C)をそのままで、または水で希釈して得られる生物処理剤である、水質浄化装置である、水質浄化方法
【請求項7】
水質浄化装置に被処理水を通水して、前記被処理水中の生物汚泥を減容および/または減量する、水質浄化方法であって、
前記水質浄化装置が、
ケイ素−フェライト鉄を含むバサルト繊維と、還元型グルタチオンを含む化学処理剤、または、酸化型グルタチオンを含む生物処理剤とを含有する水槽を有し、
前記化学処理剤が、水4000質量部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム800〜1600質量部と、還元型グルタチオン0.010〜1.000質量部と、50U/mgのグリセロール脱水素酵素0.001〜0.050質量部に相当するユニット数のグリセロール脱水素酵素とを混合し、さらにインキュベートして混合液(A)を調製し、調製した混合液(A)5200質量部と、5000U/gの酵母溶解酵素10〜300質量部に相当するユニット数の酵母溶解酵素と、グリセリン500〜1600質量部とを混合し、さらにインキュベートして混合液(B)を調製し、調製した混合液(B)800質量部と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1000〜4000質量部と、エチレンジアミン四酢酸10〜100質量部に相当するモル数のエチレンジアミン四酢酸および/またはその水溶性塩と、前記ペルオキソ二硫酸ナトリウムならびに前記エチレンジアミン四酢酸および/またはその水溶性塩を溶解できる量の水とを混合し、さらにインキュベートして混合液(C)を調製し、調製した混合液(C)をそのままで、または水で希釈して得られる化学処理剤であり、
前記生物処理剤が、水4000質量部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム800〜1600質量部と、酸化型グルタチオン0.001〜0.100質量部と、50U/mgのグリセロール脱水素酵素0.001〜0.100質量部に相当するユニット数のグリセロール脱水素酵素とを混合し、さらにインキュベートして混合液(A)を調製し、調製した混合液(A)5200質量部と、5000U/gの酵母溶解酵素50〜150質量部に相当するユニット数の酵母溶解酵素と、グリセリン800〜1500質量部とを混合し、さらにインキュベートして混合液(B)を調製し、調製した混合液(B)800質量部と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1000〜4000質量部と、エチレンジアミン四酢酸10〜200質量部に相当するモル数のエチレンジアミン四酢酸またはその水溶性塩と、前記混合液(B)、前記ペルオキソ二硫酸ナトリウムおよび前記エチレンジアミン四酢酸またはその水溶性塩を溶解できる量の水を混合し、さらにインキュベートして混合液(C)を調製し、調製した混合液(C)をそのままで、または水で希釈して得られる生物処理剤である、水質浄化装置である、水質浄化方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を利用して汚泥を減量できる水質浄化方法、その方法に用いる担持体およびその方法を用いる水質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から行われている生物処理を用いた有機物含有廃水処理は、生物量に対して汚泥が増え続けるといずれの処理法も汚泥を系外に排出することが必要になる。
【0003】
具体的には、原水調整槽で被処理水の水量・負荷量を調整し、生物曝気槽へ送り、有機物は生物曝気槽で沈殿槽から移送された返送汚泥と撹拌混合する。返送汚泥と被処理水とを撹拌混合することで、被処理水中の有機物は微生物と同化、吸着および/または異化作用を起し、沈殿槽に導入すると被処理水中の有機物は沈降分離して、上澄水は処理水として排出され、沈降した有機物と微生物とは返送され曝気槽へ送られる。
【0004】
送られた汚泥の量が、設定された溶存酸素(DO)量・槽内浮遊生物量(MLSS、活性汚泥浮遊物質:mixed liquor suspended solids、SS(浮遊物質濃度をmg/Lで示したもの))として適切でない場合は、現状では脱水機で脱水処理して産業廃棄物として系外処分される。
【0005】
また、返送された汚泥を多く保有する目的で接触材(ろ過材)である担体・生物膜を設置してMLSS容積負荷を上げる処理が運用されているが、生物処理法は生物量が増加しないと構築していけないシステムで、生物量に対して汚泥が増え続けるといずれの処理法も汚泥を系外に排出することが必要になる。
【0006】
特許文献1には、「通水経路中に配設された濾過材中に被濾過水である原水を通水することで濾過を行う濾過装置において、前記濾過材が、耐熱・不燃性の長繊維材をパーマネントウェーブ状に加工し、塊状に集積した集積体から成るパーマネントウェーブ濾過材本体と、前記耐熱・不燃性の長繊維材と同質の長繊維材を網状に加工し、前記パーマネントウェーブ濾過材本体の少なくとも一部表面を被覆する形状を成すことにより該パーマネントウェーブ濾過材本体の形態を保持可能な濾過材被覆網状体と、を有し、前記濾過材被覆網状体中に前記パーマネントウェーブ濾過材本体を内装固定した状態で用いる構成であることを特徴とする濾過装置。」(請求項1)が記載され、さらに、上記耐熱・不燃性の長繊維材がバサルト繊維であること(請求項3)が記載されている。また、「バサルト繊維は、使用可能温度域が−260〜650℃と広いため様々な条件下での濾過処理に用いることができ、柔軟で且つ高剛性であるため濾過材素材に適している。また、耐熱温度が高く、不燃性(焼結温度は1000℃以上)であるため、再生時の強熱処理に際しても何ら問題なく、当該強熱処理時には汚濁物等の被濾過物のみを燃焼して減量乃至は除去することができる。」([0031]段落)と記載されている。
【0007】
特許文献2には、「湖沼等の閉鎖水域内の水を導入して浄化した後、前記閉鎖水域内に還流する水循環路を有する水浄化システムにおいて、該水循環路に間隔をあけて複数の汚泥沈降槽を有し、該汚泥沈降槽の間の水循環路内に接触繊維からなる濾過材を複数個並列垂下させてあり、水循環路の上流から下流に向かって複数個の濾過材に対する汚泥付着が次々と進捗することで水浄化を行う構成であることを特徴とする水浄化システム。」(請求項1)が記載され、さらに、上記接触繊維がバサルト繊維であること(請求項4)が記載されている。また、「汚泥沈降槽3は、閉鎖水域から導入された水に含まれる汚泥の内、水中を沈降する汚泥を沈殿させることで貯溜する槽であり、該汚泥沈降槽3内に貯溜堆積した汚泥は一定期間毎或いは一定量堆積する毎にバキューム等の回収手段によって回収除去する。」([0047]段落)と記載されている。
【0008】
非特許文献1には、バサルト繊維の水処理資材としての利用の可能性を検証するために、生活排水中の懸濁物質の付着能および剥離性について調査したことが記載されている(要旨)。
【0009】
非特許文献2には、バサルト繊維(BF)および有機/無機化合物をグラフトした変性バサルト繊維(MBF)バイオアフィニティーを、バクテリア付着率およびバサルト繊維への固定化率に関して比較したことが記載されている(要旨)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−000403号公報
【特許文献2】特開2010−042372号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】堀尾明宏、外4名、「バサルト繊維による浄化槽処理水中の懸濁物質の付着能の評価」、土木学会論文集G(環境)、土木学会、2017年、第73巻、第7号、p.III_63−III_69
【非特許文献2】Xiaoying Zhang、外8名、「Surface Modification of Basalt Fiber with Organic/Inorganic Composites for Biofilm Carrier Used in Wastewater Treatment」、ACS Sustainable Chemistry & Engineering、American Chemical Society、2018年2月5日、第6巻、第2号、pp.2596−2602
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1および特許文献2は、いずれも、バサルト繊維等をろ過材に用いる汚水の水浄化装置を記載しているが、どのような程度の汚水がろ過材によってどの程度浄化できるかについては、全く記載がない。
【0013】
また、特許文献1および特許文献2のいずれにも、嫌気性細菌、通性嫌気性細菌、好気生菌等の微生物を利用して汚泥を減量する方法は記載されていない。
【0014】
また、非特許文献1および非特許文献2のいずれにも、バサルト繊維と化学処理剤または生物処理剤との併用、およびフェライト鉄を含むバサルト繊維またはケイ素−フェライト鉄を含むバサルト繊維の使用による水質浄化装置および水質浄化方法は記載されていない。
【0015】
上記事情に鑑みて、本発明の目的は、環境に優しい素材を用いて、嫌気性細菌、通性嫌気性細菌、好気生菌等の微生物を利用して汚泥を減量できる水質浄化装置および水質浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、以下に記載する構成を採用することにより、上記課題を解決できることを知得した。
【0017】
[1] バサルト繊維と、還元型グルタチオンを含む化学処理剤とを含有する水槽を有する水質浄化装置。
[2] 上記化学処理剤が、ヘキサメタリン酸塩と、還元型グルタチオンと、グリセロール脱水素酵素と、酵母溶解酵素と、グリセリンと、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸と、水とを含有する水系組成物である、上記[1]に記載の水質浄化装置。
[3] バサルト繊維と、酸化型グルタチオンを含む生物処理剤とを含有する水槽を有する水質浄化装置。
[4] 上記生物処理剤が、ヘキサメタリン酸塩と、酸化型グルタチオンと、グリセロール脱水素酵素と、酵母溶解酵素と、グリセリンと、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸と、水とを含有する水系組成物である、上記[3]に記載の水質浄化装置。
[5] 上記水槽が、水槽内の酸化還元電位(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHおよび浮遊物質量(SS)からなる少なくとも一つの測定値を制御される上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の水質浄化装置。
[6] 上記水槽内の酸化還元電位(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHおよび浮遊物質量(SS)からなる少なくとも一つの測定値が制御される上記[1]もしくは[2]に記載の水質浄化装置であって、上記水槽は上記化学処理剤の定量ポンプを備え、上記化学処理剤の定量ポンプを制御して、上記少なくとも一つの測定値を所定範囲内に保持する水質浄化装置、
または
上記水槽内の酸化還元電位(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHおよび浮遊物質量(SS)からなる少なくとも一つの測定値が制御される上記[3]もしくは[4]に記載の水質浄化装置であって、上記水槽は上記生物処理剤の定量ポンプを備え、上記生物処理剤の定量ポンプを制御して、上記少なくとも一つの測定値を所定範囲内に保持する水質浄化装置。
[7] 沈殿槽、返送汚泥設備および汚泥処理設備からなる群から選択される少なくとも一つが不要である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の水質浄化装置。
[8] フェライト鉄を含むバサルト繊維を含有する水槽を有する水質浄化装置。
[9] ケイ素−フェライト鉄を含むバサルト繊維を含有する水槽を有する水質浄化装置。
[10] 還元型グルタチオンを含む化学処理剤を含有する水槽中に配設されたバサルト繊維からなる担持体に被処理水を通水して、上記被処理水中の生物汚泥を減容および/または減量する、水質浄化方法。
[11] 酸化型グルタチオンを含む生物処理剤を含有する水槽中に配設されたバサルト繊維からなる担持体に被処理水を通水して、上記被処理水中の生物汚泥を減容および/または減量する、水質浄化方法。
[12] 上記バサルト繊維が、熱可塑性ポリマー、フェライト鉄およびケイ素−フェライト鉄からなる群から選択される少なくとも一つを含む変性バサルト繊維である、上記[10]または[11]に記載の水質浄化方法。
[13] 水質浄化装置または水質浄化方法に用いられ、水槽中で微生物を吸着できる担持体であって、バサルト繊維が、熱可塑性ポリマー、フェライト鉄およびケイ素−フェライト鉄からなる群から選択される少なくとも一つを有する変性バサルト繊維。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、環境に優しい素材を用いて、嫌気性細菌、通性嫌気性細菌、好気生菌等の微生物を利用して汚泥を減量できる水質浄化装置および水質浄化方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の水質浄化装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施例3の変性バサルト繊維担持体および特定の化学処理剤による水質浄化方法の稼働後の状況を評価した測定結果を示すグラフである。
図3図3は、従来技術の活性汚泥法の水槽での汚泥の浮遊状態(上)と、本発明の水質浄化方法のバサルト繊維担持体に汚泥が吸着した水槽(下)を比較した写真である。
図4図4は、従来技術の活性汚泥法のフロック(左)と、本発明の水質浄化方法の生物巣(右)とを比較する写真である。
図5A図5Aは、比較例3、実施例10および実施例11の各容器中の被処理水の経時的状況変化(スタート時〜3時間後)を表す写真を示す。
図5B図5Aは、比較例3、実施例10および実施例11の各容器中の被処理水の経時的状況変化(5時間後〜24時間後)を表す写真を示す。
図6A図6Aは、比較例5および実施例14の各水槽の被処理水の経時的状況変化(スタート日〜3日目)を表す写真を示す。
図6B図6Bは、比較例5および実施例14の各水槽の被処理水の経時的状況変化(4日目〜5日目)を表す写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔水質浄化装置〕
本発明の水質浄化装置は、
(1)バサルト繊維および、還元型グルタチオンを含む化学処理剤または酸化型グルタチオンを含む生物処理剤、を含有する水槽(好ましくは、水循環槽)を有する水質浄化装置、または
(2)フェライト鉄を含む変性バサルト繊維またはケイ素−フェライト鉄を含む変性バサルト繊維、を含有する水槽(好ましくは、水循環槽)を有する水質浄化装置、の二種類の水質浄化装置である。
上記二種類の水質浄化装置を組み合わせて、(3)フェライト鉄を含むバサルト繊維またはケイ素−フェライト鉄を含む変性バサルト繊維、および、還元型グルタチオンを含む化学処理剤または酸化型グルタチオンを含む生物処理剤、を含有する水槽(好ましくは、水循環槽)を有する水質浄化装置としてもよい。
本発明の水質浄化方法は、還元型グルタチオンを含む化学処理剤または酸化型グルタチオンを有する水系循環経路中に配設されたバサルト繊維からなる担持体に、被処理水を通水して、被処理水中の生物汚泥を減容および・または減量する、水質浄化方法である。本発明の方法は、限定されないが本発明の水質浄化装置を用いて行うのが好ましい。
なお、本明細書において、上記水槽は、水路や池を含む概念とする。
【0021】
〔水質浄化方法〕
本発明の水質浄化方法は、生物汚泥処理システムの脱水装置・乾燥・それに伴う凝集剤等が必要ではなく、槽内にバサルト等の長繊維を担持体として敷設して、水槽内の酸化還元電位値(ORP)、溶存酸素値(DO)および浮遊物質量(SS)等の少なくとも一つの測定値をモニターしながら還元型グルタチオンを含む化学処理剤を添加して、増殖した生物汚泥(偏性嫌気性細菌・通性嫌気性細菌)を、生態学的酸化還元(レドックス)反応で減容および・または減量する処理法である。
(生物巣の形成)
被処理水は、バサルト繊維で構成された担持体を設置された反応槽に送られ撹拌装置により混合される。被処理水中の有機物は反応槽内やバサルト繊維に吸着され細胞分裂を繰り返し、偏性嫌気性細菌に同化されバサルト繊維表面に吸着して三次元の生物塊(巣)を構築する。その周りに酸素に対する耐性のある通性嫌気性細菌、さらにその周りに好気性細菌、さらにその周りに原生動物が生息する生物巣が多数形成される。反応槽内の担持体に生物巣が多数形成され、さらに連続的に被処理水が通水される状態で、槽内の浮遊MLSSが減容、減量され、好ましくはゼロになり、処理水として放流できる。
図4に、従来技術の活性汚泥法のフロック(左)と、本発明の水質浄化方法の生物巣(右)とを比較した写真を示す。フロックが巨大化したのが本発明の生物巣であるが、本発明の生物巣は、バサルト繊維担持体を中心に偏性嫌気性細菌、通性嫌気性細菌および好気性細菌が大きな生物巣を形成することが観察できる。図4では、フロックが楕円状に写っていると仮定してその長軸、または短軸の長さは、約110〜180mmであり、本発明方法の生物巣の大きさも同様に断面楕円体であると仮定してその長軸、または短軸の長さは、約100〜220mである。生物巣の大きさはバサルトの長さにより変動する。図4の生物巣はバサルト繊維の長さが160mmを使用した。したがって生物巣の大きさは使用するバサルト長さの50%から150%の長軸または短軸を有する大きさである。
本発明の装置又は方法では、従来の汚泥処理法で必要であった沈殿槽、返送汚泥設備、または汚泥処理設備が不要となる。好ましくはこれらのうち2つまたは3つが不要となる。
この生物巣が形成されることで、通常の活性汚泥処理法のBOD・MLSSに対する負荷を大幅に大きくすることが可能になり、反応槽の有効設置容積が少なくなり削減される。
【0022】
(脱窒素処理)
バサルト繊維担持体に形成された生物巣は、無機窒素化合物を異化的に硝酸還元し、脱窒素処理が行なえると考えられる。偏性嫌気性細菌により、無機窒素化合物を、硝酸を電子受容体として一酸化窒素、亜酸化窒素、窒素等に変換し、大気へ放出する脱窒処理が可能である。その反応は、以下であると考えられる。
NO + e → NO
NO + e → NO ↑
NO + e → NO ↑
O + e → N
【0023】
(生物巣の維持)
生物巣の嫌気性微生物類が増加し生物巣のバランスが崩れると、偏性嫌気性細菌、通性嫌気性細菌、さらにその周りに好気性細菌が形成する生物巣の維持が困難になる。従来活性汚泥処理法で酸素を供給する酸素法は、長時間曝気処理が必要である。酸化池処理には、生物生態の消長である内生呼吸相を利用して自己消化する方法があるがいずれも膨大な設置容積が必要になり、生物を絡めた処理は必ず生物の増殖が優位でなければ成立しない。
本発明に用いるバサルト等の長繊維担持体も同様である。このため、増殖し続ける生物汚泥を常時モニターするセンサーを水槽に備えることが好ましい。酸化還元電位値(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHおよび浮遊物質量(SS)等の少なくとも一つの測定値をモニターしながら好ましくは還元型グルタチオンを含む化学処理剤を添加して生物巣を適切な状態に維持する。還元型グルタチオンを含む化学処理剤を用いないで、フェライト鉄を含むバサルト繊維担持体を含有する水槽を有する水質浄化装置を用いる場合は、バサルト繊維担持体と水槽との関係を撹拌条件、送液条件を最適化するまたは適切化する方向に制御する。
図3に、従来技術の活性汚泥法の浮遊状態(上)と、本発明の水質浄化方法の水槽(下)を比較した写真を示す。図3から本発明の方法を用いる水槽では生物巣が十分成長し汚泥の減容、減量ができる。従来技術の汚泥の水槽は全体が汚泥で濁っているのに対し、本発明では生物巣以外では汚泥がほとんどなく水槽が澄んで見えることが示される。水槽の外寸は300×160×235mmを用いている。図4に、従来技術の活性汚泥法のフロックの構造(左)と、本発明の水質浄化方法の生物巣の構成(右)とを比較した写真を示す。従来技術のフロックでは、偏性嫌気性細菌、通性嫌気性細菌は見られるが、好気生菌は集まっておらず生物巣が活発化している様子はない。本発明の水質浄化方法では、生物巣ができそれが活発に活動している様子がわかる。
【0024】
(水槽の制御)
好ましくは、水槽において、水槽内の酸化還元電位(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHおよび浮遊物質量(SS)からなる少なくとも一つの測定値が制御される。制御の方法は限定されず、例えば以下のような方法の一つ以上を用いることができる。
水槽内の酸化還元電位(ORP)、溶存酸素値(DO)、pHまたは浮遊物質量(SS)が所定範囲に入るように制御する。または、これらの制御を2つ以上組み合わせる。
溶存酸素値(DO)、活性汚泥量(MLSS)、生物学的酸素要求量(BOD)、全窒素量(TN)、全有機炭素(TOC)または浮遊物質量(SS)がそれぞれ、または単独で減少する方向に制御する。または所定値になる方向に制御する。または、これらの制御を組み合わせる。
【0025】
(生物汚泥の減容および・または減量の機序)
生物巣を適切な状態に維持して、生物巣内の酸素(O)に耐性を保有しない偏性嫌気性細菌、耐性を保有する通性嫌気性細菌は共に、後に説明する変性バサルト繊維担持体または化学処理剤と処理水中の有機物の反応により供出される活性酸素種のスーパーオキシドアニオンイオン(O)が大量に生成され耐性の無い偏性嫌気性細菌は細胞内のプロトン(水素)と生態学的酸化還元(レドックス)反応を行い電子(e)の伝達が停止して存在が消滅する。また、細胞内に保有されていた炭素が解離された水槽中の炭素は、スーパーオキシドアニオンイオン(O)により大気に二酸化炭素(CO)として放出される。酸素(O)耐性を持っている通性嫌気性細菌は表層部に耐性をもつ細胞膜を、イオン体であるスーパーオキシドアニオンイオン(O)が水和物にして生態学的酸化還元(レドックス)反応により生物汚泥が減容・減量される。機序について発明者はこのように考えているが、本発明はこれらの機序に限定されない。
【0026】
〔前処理方法〕
上記の水質浄化方法で必要な場合は、前処理方法として、好ましくは以下の方法を用いることができる。
水系循環経路中に配設されたバサルト繊維からなる担持体に、被処理水を通水する方法で、処理時間の限定はないがおよそ1時間から50時間程度通水する。必要な場合は水中ミキサー等で撹拌を行なう。前処理を行うとバサルト繊維に嫌気性細菌及び通性嫌気性細菌が吸着・同化し易くなり、本発明の水質浄化方法の効率が良くなる。前処理方法では従来の汚泥処理法で既設されている曝気槽にバサルト繊維からなる担持体を設置して行うことができ、前処理により反応槽内の浮遊MLSS量が低減して沈殿槽へのMLSS負荷を低減することができ、汚泥沈降率(SV)が少なくなり改善され、本発明の水質処理方法の能力が向上して水質浄化能力の増産を実現させることが可能である。
【0027】
(バサルト繊維)
バサルト繊維の原料は天然の玄武岩で、玄武岩に含まれている成分は二酸化ケイ素(SiO)が約50%で絶縁体で誘電体の性質を保有している。また、赤鉄鋼別名ヘムタイト及び酸化鉄(Fe・FeO)が約15%含有しているため周辺がマイナスに帯電することにより磁性を示し、バサルト繊維に電場が発生して水中に浮遊している生物汚泥(MLSS)やSS分・有機物を吸着できる。バサルト繊維は、繊維径が極細(20μm以下)であり、生物消長の対数増殖相の細胞分裂した微細な偏性嫌気性細菌を電荷により吸着させることができる。バサルト繊維はバサルト長繊維又はバサルト担持体であることが好ましく、バサルト長繊維担持体であることがより好ましい。
バサルト繊維からなるバサルト繊維担持体は、水槽中で、バサルト繊維を房状に吊り下げたり、緩い縄状に吊り下げたり、塊状、網状に設置したりして、偏性嫌気性細菌、その周りに酸素に対する耐性のある通性嫌気性細菌、さらにその周りに好気性細菌、さらにその周りに原生動物が生息する生物巣が形成できるように水槽内に設置される。
【0028】
(フェライト鉄変性バサルト繊維)
バサルト繊維は、上記のようにある程度を束ねてそのまま用いることもできる。また、フェライト鉄を含むフェライト変性バサルト繊維担持体として用いることができる。フェライト鉄を含ませる方法は限定されないが、熱可塑性ポリマー樹脂を用いる変性は、樹脂繊維と撚って撚糸にしたり、樹脂と混合したり、樹脂で一部結着したり、樹脂をコーテイングしたりできる。樹脂変性するとバサルト繊維は、水中で形状維持出来るので好ましい。熱可塑性樹脂はポリプロピレンが例示できるが、限定されない。さらに樹脂表面にポリビニルアルコール(PVA)を用いて、粉体のフェライト鉄(Fe)を混合してもよい。フェライト鉄(Fe)を装填した変性バサルト繊維を用いた変性バサルト繊維担持体は、被処理水中で電場を強化できるので、本発明の水質浄化方法または水質浄化装置に好ましく用いることができる。ここで、フェライトは酸化鉄を主成分とするセラミックスの総称であり、マグネタイトはFeの特定の化合物をいう。変性バサルト繊維を含むバサルト担持体は、一部の長繊維が変性されていてもよいし全部の長繊維が変性されていてもよくいずれも変性バサルト繊維担持体という。
【0029】
(ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維)
ケイ素−フェライト鉄(Si−Fe)粉を含有するグリーンラスト懸濁液を製造して、バサルト繊維に、ケイ素−フェライト鉄粉を含む変性バサルト繊維担持体として用いることができる。バサルト繊維の表面改質(酸浸漬及び中和・洗浄)を施し乾燥して使用する。グリーンラスト懸濁液をpH調整の目的にて水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カルシウム水溶液を一定量添加して任意のPH値に調整してバサルト繊維に塗布もしくは浸漬後、乾燥を行い、変性バサルト繊維担持体として装着する。
また、グリーンラスト懸濁液の物性として、被処理水中で2価鉄と3価鉄は混在している。電子の移動による2価鉄⇔3価鉄の酸化還元(レドックス)反応により価数の変化を起こす。一部のグリーンラスト懸濁液は、酸化還元反応後、フェライト鉄が生成される。
【0030】
静電気的な相互作用では、鉄−粒子系の両者の電荷の符号が異なるときには、両者のゼータ電位の積が小さいほど、静電気的な引力が増加し、粒子が固体表面に付着しやすくなるとしている。また、電荷の符号が同じであるときには、両者のゼータ電位の積が小さいほど、静電気的な反発力が減少し、粒子が固体表面に付着しやすくなるとの概念がある。本発明の水質浄化方法または水質浄化装置に好ましく用いることができる。
(グリーンラストによるフェライト生成)
グリーンラスト懸濁液 FeIIIFeII(OH)3x+2y−z(A
フェライト生成式 MeFe(3−x)(OH) + 1/2 O → MeFe(3−x) + 3H
同等な格子点にある酸化数の異なる原子間で電子が遷移し、電荷移動が生じることにより、原子価が時間的・空間的に変動する原子価揺動反応により生成される。
【0031】
(本発明に用いる還元型グルタチオンを含む化学処理剤)
本発明に用いる還元型グルタチオンを含む化学処理剤は、好ましくは、ヘキサメタリン酸塩と、還元型グルタチオンと、グリセロール脱水素酵素と、酵母溶解酵素と、グリセリンと、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸と、水とを含有する水系組成物である。さらに好ましくは、特許第5194223号公報の請求項1に記載の「水4000質量部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム800〜1600質量部と、還元型グルタチオン0.010〜1.000質量部と、50U/mgのグリセロール脱水素酵素0.001〜0.050質量部に相当するユニット数のグリセロール脱水素酵素とを混合し、さらに5日間以上インキュベートして混合液(A)を調製し、調製した混合液(A)5200質量部と、5000U/gの酵母溶解酵素10〜300質量部に相当するユニット数の酵母溶解酵素と、グリセリン500〜1600質量部とを混合し、さらに3日間以上インキュベートして混合液(B)を調製し、調製した混合液(B)800質量部と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1000〜4000質量部と、エチレンジアミン四酢酸10〜100質量部に相当するモル数のエチレンジアミン四酢酸および/またはその水溶性塩と、前記ペルオキソ二硫酸ナトリウムならびに前記エチレンジアミン四酢酸および/またはその水溶性塩を溶解できる量の水とを混合し、さらに5日間以上インキュベートして混合液(C)を調製し、調製した混合液(C)をそのままで、または水で希釈して得られる化学処理剤」である。この化学処理剤の製造方法および利用方法は、特許第5194223号公報に記載されている。
【0032】
(本発明に用いる酸化型グルタチオンを含む生物処理剤)
本発明に用いる酸化型グルタチオンを含む生物処理剤は、好ましくは、ヘキサメタリン酸塩と、酸化型グルタチオンと、グリセロール脱水素酵素と、酵母溶解酵素と、グリセリンと、ペルオキソ二硫酸塩と、エチレンジアミン四酢酸と、水とを含有する水系組成物である。さらに好ましくは、特許第5238946号公報の請求項1に記載の「水4000質量部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム800〜1600質量部と、酸化型グルタチオン0.001〜0.100質量部と、50U/mgのグリセロール脱水素酵素 0.001〜0.100質量部に相当するユニット数のグリセロール脱水素酵素とを混合 し、さらに5日間以上インキュベートして混合液(A)を調製し、調製した混合液(A)5200質量部と、5000U/gの酵母溶解酵素50〜150質量部に相当するユニット数の酵母溶解酵素と、グリセリン800〜1500質量部とを混合し、さらに3日間以上インキュベートして混合液(B)を調製し、調製した混合液(B)800質量部と、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1000〜4000質量部と、エチレンジアミン四酢酸10〜200質量部に相当するモル数のエチレンジアミン四酢酸またはその水溶性塩と、前記混 合液(B)、前記ペルオキソ二硫酸ナトリウムおよび前記エチレンジアミン四酢酸またはその水溶性塩を溶解できる量の水を混合し、さらに5日間以上インキュベートして混合液(C)を調製し、調製した混合液(C)をそのままで、または水で希釈して得られる生物処理剤」である。この生物処理剤の製造方法および利用方法は、特許第5238946号公報に記載されている。
【0033】
〔本発明の水質浄化装置〕
本発明の水質浄化装置の一例である図1を用いて具体的に説明する。
生物曝気槽11、反応槽13、および沈殿槽15をこの順に配置し、それぞれの槽にはバサルト繊維担持体10が設置されている。設置方法は限定されないが、バサルト繊維を房状に吊り下げたり、緩い縄状に吊り下げたり、塊状、網状に設置したりすることが例示できる。生物曝気槽11、反応槽13、および沈殿槽15内には、水中撹拌ミキサー17が必要により設置されて槽内の水槽を撹拌する。
【0034】
生物曝気槽11には、被処理水流入ライン4から、被処理水が流入され、生物曝気槽11から反応槽13へは、移送ライン5で被処理水を移送する。反応槽13内へは、化学処理剤注入装置19から適宜還元型グルタチオンを含む化学処理剤が注入され、バサルト繊維担持体と化学処理剤を用いて水質浄化が行なわれる。反応槽13で浄化された被処理水は、移送ライン6で、沈殿槽15へ送られる。必要な場合は沈殿槽15に設置された返送ライン7を使って、沈殿を含む処理水が反応槽13に返送される。沈殿槽15で沈殿と分離された処理水は放流ライン9から放流され取り出される。沈殿槽15の下部の沈殿を含む処理水は、適宜循環ライン8で、生物曝気槽11に戻されて循環処理される。
各処理槽内の適切な位置に、酸化還元電位計(ORP計)21、pH計22、その他溶存酸素計(DO)、浮遊物量計(SS)等が設置され、それらの測定値をモニターしながら循環槽で水質浄化を行う。好ましくはそれらの測定値をモニターしながら化学処理剤注入装置19から化学処理剤を添加して水質浄化を制御する。
【0035】
(バサルト繊維担持体の撹拌方法)
本発明の水質浄化システム(本発明の装置および方法)は、偏性嫌気性細菌を主体に水処理をするため、生態系酸化還元(レドックス)反応で菌類の消滅を避ける目的で、撹拌混合はミキサーを使用して流速・撹拌範囲等を回転数で適切に制御することが好ましい。また、ブロアー等の空気(酸素)をバサルト繊維担持体に供給する場合は、振動付与手段として主流を避け副流を生物巣に送気する等の操作条件を選択することが好ましい。直接、生物巣に水流が当たると、不必要に生物巣が消滅する場合がある。本発明のバサルト繊維担持体は、繊維径が10〜25μm、特に10〜15μm極細で吸着性に優れているため撹拌が満たされている水流の揺れや振動により静電動作作用により平衝を保つことにより酵素の生成量を向上させることができると考えている。
これに対して、従来の活性汚泥処理法などで通気撹拌が不十分であると水槽の底部の角などに生物汚泥が堆積し腐敗により大きな塊になり硫化還元細菌の温床になりその下部に炭素から隔離された汚泥が浮上して水質を悪化させる要因になる。
【0036】
本発明のシステムの使用は、従来行われている通常の生物処理法の余剰汚泥処理において、余剰になる汚泥を処理するために、適切な撹拌装置を組み込んだ水槽設備にバサルト繊維担持体を適宜設置して、余剰の活性汚泥をバサルト繊維担持体に吸着および・または同化させ、特定の化学処理剤を使用して酸化還元(レドックス)反応にて生物汚泥の分解を行うことができる。この方法は、従来用いられている水槽等の装置設備をそのまま利用でき、さらに従来必要であった汚泥の脱水装置、それに伴う薬剤、動力費、また、産業廃棄物の処分費用が抑制でき、好ましくは無くなりコスト低減ができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
本発明において、「〜」を用いて表される範囲は「〜」の両端を含むものとする。例えば、「A〜B」と表される範囲には、「〜」の両端である「A」および「B」を含むものとする。
また、本発明において、「バサルト繊維担持体」は、複数のバサルト繊維を束ねたものを含む担持体を意味する。
また、本発明において、「水循環槽」は、循環水が流入および流出する水槽を意図する。図1でいえば、生物曝気槽11、反応槽13、および沈殿槽15は、いずれも、水循環槽に該当する。
【0038】
<バサルト繊維+化学処理剤>
[実施例1]
食品加工工場の活性汚泥処理システムの汚泥濃縮槽の濃縮汚泥(浮遊MLSS量16000mg/L)を使用してバサルト繊維に吸着・同化させた後、還元型グルタチオンを含む化学処理剤を添加して酸化還元反応による汚泥の減容・減量を行った。
【0039】
1.化学処理剤の準備
化学処理剤を、特許第5194223号公報に記載の製造方法(実施例1)、具体的には、以下の製造手順に従って製造した。
〈製造手順〉
(1)精製水(電気抵抗率1MΩ・cm、以下同じ)4000gに、ヘキサメタリン酸ナトリウム1200gと、還元型グルタチオン200mgと、グリセロール脱水素酵素(50U/mg)10mgとを添加して撹拌・混合し、さらに0〜5℃、常圧(概ね1013hPa)で、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(A)とした(表1の「混合液(A)」の欄を参照)。
(2)その後、混合液(A)5200gに、酵母溶解酵素(5000U/g)100gと、グリセリン1020gとを添加して撹拌・混合し、さらに、37〜40℃、常圧(概ね1013hPa)で、5日間、インキュベートした。この混合液を混合液(B)とした(表1の「混合液(B)」の欄を参照)。
(3)その後、精製水16860gに、混合液(B)600gと、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2500gと、エチレンジアミン四酢酸40gとを添加して撹拌・混合し、常温(概ね20℃)常圧(概ね1013hPa)で、紫外線を避け、インキュベートした。この混合液を混合液(C)とした(表1の「混合液(C)」の欄を参照)。
(4)混合液(C)を、そのまま、化学処理剤とした。以下の実施例では、この化学処理剤を「化学処理剤Y」ということとする。
【0040】
【表1】
【0041】
2.被処理水(試料)の準備
食品加工工場の活性汚泥処理システムの汚泥濃縮槽の濃縮汚泥8Lを10L容のビーカーに入れ、浮遊MLSS量および分離水ORP(酸化還元電位)を測定した(ブランク)。次に、濃縮汚泥を入れた10L容ビーカーに、バサルト繊維担持体(バサルト繊維30g、直径13μmの極細繊維)を入れ、汚泥をバサルト繊維に吸着・同化させるシーディングを行った。バサルト繊維担持体をビーカーに投入後、4時間後〜10時間後まで、2時間ごとに浮遊MLSS量、分離水TOC(全有機炭素量)、および分離水ORPを測定した(4時間、6時間、8時間、10時間)。水温は24℃に保った。
浮遊MLSS、分離水TOC、および分離水ORPの測定値を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
3.化学処理剤による汚泥の減容・減量
上記の処理により得られた10時間後の汚泥を被処理水(試料)として用いた。
10L容ビーカー内の被処理水(試料)8Lに、上記の方法により準備した化学処理剤Yを1000mg/L添加して、汚泥の減容・減量実験を行った。
化学処理剤Yをビーカーに添加する直前(スタート時)、化学処理剤Yを添加してから2時間後、4時間後、5時間後に浮遊MLSS量、分離水TOC、および分離水ORPを測定した。
浮遊MLSS、分離水TOC、および分離水ORPの測定値を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
被処理水(試料)に化学処理剤Yを添加してから5時間後にビーカーからバサルト繊維担持体を取り出し、乾燥後、使用後のバサルト繊維の重量を測定し、使用前のバサルト繊維の重量と比較した。
使用前のバサルト繊維の重量・・・30.01g
使用後のバサルト繊維の重量・・・30.02g
【0046】
4.結果の説明
表2に示す結果から、バサルト繊維による汚泥吸着は10時間で約92質量%であった。
また、表3に示す結果から、化学処理剤Y添加5時間後の汚泥減容・減量は97.3質量%(バサルト繊維による汚泥吸着は97質量%)を達成することができた。
【0047】
<バサルト繊維+生物処理剤>
[実施例2]
食品加工工場の活性汚泥処理システムの汚泥濃縮槽の濃縮汚泥(浮遊MLSS量16000mg/L)を使用してバサルト繊維に吸着・同化させた後、酸化型グルタチオンを含む生物処理剤を添加して酸化還元反応による汚泥の減容・減量を行った。
【0048】
1.生物処理剤の準備
生物処理剤を、特許5238946号公報に記載の製造方法(実施例1)、具体的には、以下の製造手順に従って製造した。
〈製造手順〉
(1)精製水(電気抵抗率1MΩ・cm、以下同じ)4000gに、ヘキサメタリン酸ナトリウム1200gと、酸化型グルタチオン20mgと、グリセロール脱水素酵素(50U/mg)10mgとを配合して撹拌・混合し、さらに0〜5℃に温度制御した冷蔵庫内で、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(A)とした(表4の「混合液(A)」の欄を参照)。
(2)その後、混合液(A)5200gに、酵母溶解酵素(5000U/g)100gと、グリセリン1020gとを添加して撹拌・混合し、さらに37〜40℃に温度制御したインキュベーター内で、5日間、インキュベートした。この混合液を混合液(B)とした(表4の「混合液(B)」の欄を参照)。
(3)その後、精製水16600gに、混合液(B)800gと、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2500gと、エチレンジアミン四酢酸100gとを添加して撹拌・混合し、さらに室温(20±15℃)で、紫外線を避けながら、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(C)とした(表4の「混合液(C)」の欄を参照)。
(4)混合液(C)を、そのまま、生物処理剤とした。以下の実施例では、このようにし
て製造した生物処理剤を「生物処理剤X」ということとする。
【0049】
【表4】
【0050】
2.被処理水(試料)の準備
食品加工工場の活性汚泥処理システムの汚泥濃縮槽の濃縮汚泥8Lを10L容のビーカーに入れ、浮遊MLSS量および分離水ORP(酸化還元電位)を測定した(ブランク)。次に、濃縮汚泥を入れた10L容ビーカーに、バサルト繊維担持体(バサルト繊維30g、直径13μmの極細繊維)を入れ、汚泥をバサルト繊維に吸着・同化させるシーディングを行った。バサルト繊維担持体をビーカーに投入後、4時間後〜10時間後まで、2時間ごとに浮遊MLSS量、分離水TOC(全有機炭素量)、および分離水ORPを測定した(4時間、6時間、8時間、10時間)。水温は24℃に保った。
浮遊MLSS、分離水TOC、および分離水ORPの測定値を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
3.生物処理剤による汚泥の減容・減量
上記の処理により得られた10時間後の汚泥を被処理水(試料)として用いた。
10L容ビーカー内の被処理水(試料)8Lに、上記の方法により準備した生物処理剤Xを1000mg/L添加して、汚泥の減容・減量実験を行った。
生物処理剤Xをビーカーに添加する直前(スタート時)、生物処理剤Xを添加してから2時間後、4時間後、5時間後に浮遊MLSS量、分離水TOC、および分離水ORPを測定した。
浮遊MLSS、分離水TOC、および分離水ORPの測定値を表6に示す。
【0053】
【表6】
【0054】
被処理水(試料)に生物処理剤Xを添加してから5時間後にビーカーからバサルト繊維担持体を取り出し、乾燥後、使用後のバサルト繊維の重量を測定し、使用前のバサルト繊維の重量と比較した。
使用前のバサルト繊維の重量・・・30.01g
使用後のバサルト繊維の重量・・・30.02g
【0055】
4.結果の説明
表5に示す結果から、バサルト繊維による汚泥吸着は10時間で約92質量%であった。
また、表6に示す結果から、生物処理剤X添加5時間後の汚泥減容・減量は97.3質量%(バサルト繊維による汚泥吸着は97質量%)を達成することができた。
【0056】
[実施例3]
〔バサルト繊維担持体と酸化型グルタチオンを含む生物処理剤を含有する水循環槽を有する水質浄化装置を用いた水質浄化〕
図1に示す設備を有する染色加工工場の既設連続活性汚泥処理による廃水施設の生物曝気槽11にバサルト繊維担持体10を敷設し、他の水槽にも同様にアサルト長繊維担持体10を敷設し、pH・酸化還元電位系(ORP)を設置して特定の生物処理剤の定量ポンプとON/OFF制御(設定値入力)を行い、水質および槽内浮遊MLSS量の調査を行った。
槽内被処理水の撹拌の主動力としてブロワーを使用せず、水中ミキサーによる低酸素運転により、嫌気性細菌と通性嫌気性細菌および好気性細菌の三次元の生物巣をバサルト繊維担持体に形成させ、酸素不足時はORP計に連動した生物処理剤Xの量を制御して自動的に酸素(スーパーオキシドイオン)補給を行い、処理水質を確保した、また、廃水の無負荷日を検知して槽内の浮遊MLSS値が設定値よりも高い(平衡状態が崩れる)場合は、生物巣の吸着汚泥(嫌気性細菌および通性嫌気性細菌)を生態学的酸化還元(レドックス)反応で消滅させ、生物巣の吸着保有量を適切状態に制御した。
表7に、被処理水の浮遊MLSS測定値、ORP測定値およびCOD測定値を時系列とともに示す。
【0057】
【表7】
【0058】
上記方法の処理方法による状況追跡の結果、生物処理剤との併用効果によるものと考えられる汚泥減容効果を通年に及んで効果を示し、余剰汚泥として汚泥処分は一度も行っておらず、環境負荷を大幅に低減できる結果が得られた。バサルト繊維担持体の汚泥を保有する優劣は、比表面積の差と投入量による。バサルト繊維担持体と生物処理剤とを使用すれば何れの材質においても半永久的に浄化機能が維持される。生物収支から考えて汚泥による浄化機能が閉塞されずに維持できる結果が得られた。生物処理剤の添加を制御してバサルト繊維担持体に吸着した生物汚泥の平衡状態の変動に対し浮遊MLSS量を把握することによりコントロールが可能であることが判明した。
【0059】
<フェライト鉄変性バサルト繊維>
[比較例1/実施例3、4]
〈比較例1〉
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。バサルト繊維担持体はフェライト鉄を含まず、被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0060】
1.被処理水の準備
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水を準備した。
【0061】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維30gを有するバサルト繊維担持体1を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを分析した。結果を表8に示す。
【0062】
〈実施例3、4〉
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、フェライト鉄を含む変性バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0063】
1.被処理水の準備
比較例1と同様に、食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水を準備した。
【0064】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維30gを有するフェライト変性バサルト繊維担持体を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
上記フェライト変性バサルト繊維担持体は、バサルト繊維を水中で形状を維持するためのポリプロピレン樹脂繊維の表面にポリビニルアルコール(PVA)でフェライト鉄(Fe)を装填して電場を強化した変性バサルト繊維担持体である。使用したマグネタイトを含むフェライト鉄は、化学処理剤を使用した常温フェライト法(特許第5194223号公報の8、18/51頁の記載参照)で硫酸第一鉄(FeSO4・7HO)と水酸化ナトリウム水溶液(48%)を反応させて製造した。出来上がったフェライト化した鉄(Fe)の粒子径は0.3〜1.1μmで、マイナス電荷を帯び、強磁性体を示した。製造したフェライト鉄を30gのバサルトに2質量%添加した変性バサルト繊維担持体2(実施例3)および4質量%添加した変性バサルト繊維担持体3(実施例4)を表8に示すように用いた。
超微細なフェライト鉄をバサルト繊維の担持体製造工程でバサルトに含有させ、生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを測定した。結果を表8に示す。
【0065】
【表8】
【0066】
[比較例2/実施例5〜7]
〈比較例2〉
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。バサルト繊維担持体はフェライト鉄を含まず、被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0067】
1.被処理水の準備
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水の混合液を準備した。
【0068】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維40gを有するバサルト繊維担持体4を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを分析した。結果を表9に示す。
【0069】
〈実施例5〜7〉
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、フェライト鉄を含む変性バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0070】
1.被処理水の準備
比較例2と同様に、食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水の混合液を準備した。
【0071】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維40gを有するフェライト変性バサルト繊維担持体を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
上記フェライト変性バサルト繊維担持体は、バサルト繊維を水中で形状を維持するためのポリプロピレン樹脂繊維の表面にポリビニルアルコール(PVA)でフェライト鉄(Fe)を装填して電場を強化した変性バサルト繊維担持体である。使用したマグネタイトを含むフェライト鉄は、化学処理剤を使用した常温フェライト法(特許第5194223号公報の8、18/51頁の記載参照)で硫酸第一鉄(FeSO4・7HO)と水酸化ナトリウム水溶液(48%)を反応させて製造した。出来上がったフェライト化した鉄(Fe)の粒子径は0.3〜1.1μmで、マイナス電荷を帯び、強磁性体を示した。製造したフェライト鉄を40gのバサルトに2質量%添加した変性バサルト繊維担持体5(実施例5)、4質量%添加した変性バサルト繊維担持体6(実施例6)、および5質量%添加した変性バサルト繊維担持体7(実施例7)を表9に示すように用いた。
超微細なフェライト鉄をバサルト繊維の担持体製造工程でバサルトに含有させ、生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを分析した。結果を表9に示す。
【0072】
【表9】
【0073】
<フェライト鉄変性バサルト繊維+化学処理剤>
[実施例8]
〔フェライト鉄を含むバサルト繊維担持体と還元型グルタチオンを含む化学処理剤を含有する水循環槽を有する水質浄化装置を用いた水質浄化〕
図1に示す設備を有する染色加工工場の既設連続活性汚泥処理による廃水施設の生物曝気槽11にバサルト繊維担持体10(フェライト変性バサルト繊維担持体;超微細なフェライト鉄の含有量は4〜5%である)を敷設し、他の水槽にも同様にバサルト繊維担持体10を敷設し、pH・酸化還元電位計(ORP)を設置して化学処理剤Yの定量ポンプとON/OFF制御(設定値入力)を行い、水質および槽内浮遊MLSS量の調査を行った。
槽内被処理水の撹拌の主動力としてブロワーを使用せず、水中ミキサーによる低酸素運転により、嫌気性細菌と通性嫌気性細菌および好気性細菌の三次元の生物巣をバサルト繊維担持体に形成させ、酸素不足時はORP計に連動した化学処理剤Yの量を制御して自動的に酸素(スーパーオキシドイオン)補給を行い、処理水質を確保した。また、廃水の無負荷日を検知して槽内の浮遊MLSS値が設定値よりも高い(平衡状態が崩れる)場合は、生物巣の吸着汚泥(嫌気性細菌および通性嫌気性細菌)を生態学的酸化還元(レドックス)反応で消滅させ、生物巣の吸着保有量を適切状態に制御した。
表10に、流入原水の水量・水質を示す。
なお、使用したバサルト繊維の設置本数は1m換算で450本相当であり、総繊維量は約40.5kgであった。
【0074】
【表10】
【0075】
なお、表10中、pH、BOD、SS、n−He、COD、T−NおよびT−Pは、それぞれ、以下に記載する意味である。
pH 水素イオン濃度指数
BOD 生物化学的酸素要求量
SS 浮遊物質量
n−He n−ヘキサン抽出物質量
COD 化学的酸素要求量
T−N 全窒素量
T−P 全リン量
【0076】
使用したバサルト繊維は13μmの極細繊維であった。バサルト繊維の成分中には、プラスの電荷を持つ成分とマイナスの電荷をもつ成分がありそれらの物質間で揺れる事で、静電気が発生し、電子が移動し帯電が発生、プラスに帯電した部位から順に負に帯電した嫌気性微生物を誘導し、高速的な吸着作用をもたらす。好ましい態様であるこの働きを任意的に保有した強磁性を示すマグネタイト(Fe)を含むフェライト鉄を混入させ、水中の形状維持のポリプロピレン繊維に装着し電場と静電気作用を活発化したものが変性バサルト繊維担持体である。また、必要な振動を発生させるために好ましく且つ省エネルギーである水中ミキサーをメイン動力として利用した。
【0077】
化学処理剤Yは、実施例1と同様、特許第5194223号公報の実施例1の製造手順に従って製造したものである。
【0078】
図2に実施例8の稼働後の状況を評価した測定結果をグラフで表示する。CODmnは、JIS規格のCOD測定法で過マンガン酸を使用した表記である。CODmnは、沈殿槽から分離した放流水で測定し、SV30およびMLSSは、図1の最終バサルト設置槽(沈殿槽15)の放流ライン9の手前で採取した試料で測定した値である。ここで、SV30(活性汚泥沈殿率:sludge volume)は、30分静置して沈殿する活性汚泥の比率%を表す。
【0079】
バサルト繊維担持体の汚泥を保有する優劣は、比表面積の差と投入量による。バサルト繊維担持体と化学処理剤とを使用すればいずれの材質においても半永久的に浄化機能が維持される。生物収支から考えて汚泥による浄化機能が閉塞されずに維持できる結果が得られた。バサルト繊維生物担持体の優れた水質浄化能力と化学処理剤による担持体維持に効果的な結果が得られた。化学処理剤の添加を制御してバサルト繊維担持体に吸着した生物汚泥の平衡状態の変動に対し浮遊MLSS量を把握することによりコントロールが可能であることが判明した。また、稼働開始より11ケ月現在に至るまで系外への余剰生物汚泥の廃棄処分は行われなかった。
【0080】
<ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維>
[比較例3/実施例10、11]
1.ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体の製造
ケイ素−フェライト鉄(Si−Fe)粉を含有するグリーンラスト懸濁液(ケイ素−フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液)を調製し、これをバサルト繊維の表面改質に用いた。より詳細には、バサルト繊維を上記ケイ素−フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液に浸漬または塗布し、中和および洗浄を行い、乾燥することにより、バサルト繊維に表面改質を施した。上記グリーンラスト懸濁液は、水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カルシウム水溶液を用いてpHを調整して用いた。この表面改質したバサルト繊維を組み付け、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体として用いた。
【0081】
(1)ケイ素フェライト鉄(Si−Fe)粉を含有するグリーンラスト懸濁液の調製
・材料
二酸化ケイ素(SiO)(65%)
グリーンラスト懸濁液(全鉄濃度 32000mg/L。pH10.5、ORP(測定値) −720mV)
水酸化ナトリウム水溶液(48%)
・調製手順
グリーンラスト懸濁液500mLを500mL容ビーカーに入れ、撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液(48%)2.8mLを添加し、グリーンラスト懸濁液のpHを10.5に調整した。
pHの調製後、二酸化ケイ素(粉末)0.5gを、ビーカー内のグリーンラスト懸濁液に、撹拌しながら穏やかに添加した。
二酸化ケイ素(粉末)添加後の懸濁液のpH、酸化還元電位(ORP)、溶存酸素濃度(DO)、ケイ素濃度(Si)、および色相を表11に示す。
【0082】
【表11】
【0083】
次に、二酸化ケイ素(粉末)を添加してから14時間後に懸濁液の撹拌を停止した。撹拌停止後の懸濁液の上澄のpH、酸化還元電位(ORP)、溶存酸素濃度(DO)、ケイ素濃度(Si)、色相、およびケイ素を含むグリーンラスト澱物の沈降率(沈降率)を表12に示す。
【0084】
【表12】
【0085】
グリーンラスト懸濁液に二酸化ケイ素を添加した後、二酸化ケイ素から酸素が分離したことにより溶存酸素濃度(DO)が上昇したが、12時間後には色相が黒褐色となり、ケイ素を含むグリーンラスト澱物の沈降が始まった(表11)。
【0086】
ケイ素を含むグリーンラスト澱物の沈降が始まり、上澄の溶存酸素濃度(DO)が低下するとともに、ケイ素濃度(Si)も0.01mg/L以下に減少して、フェライト生成が進行していることがわかった。
【0087】
その後、ビーカー内の懸濁液を再度撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.5に調整した。pHと水酸化ナトリウム水溶液の定量ポンプを設定値pH10.5±0.2の範囲にて制御して12時間撹拌を行い、撹拌停止後に沈降分離を行い、5時間後に沈降澱物にネオジム磁石(表面磁束密度0.42T、吸着力25.48N、径10mm)を入れたところ沈降澱物は全て吸着した。
沈降澱物はフェライト化され磁気分離、ろ過分離することができ、ケイ素−フェライト鉄(磁性鉄粉)として製造できた。
上記の製造方法で造られたケイ素−フェライト鉄粉を含有するグリーンラスト懸濁液を使用した。
【0088】
(2)バサルト繊維の変性処理
ケイ素−フェライト鉄粉を含有するグリーンラスト懸濁液(ケイ素−フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液)に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH7.35のケイ素−フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液(懸濁液A)およびpH9.31のケイ素含有フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液(懸濁液B)を調製した。
懸濁液Aおよび懸濁液Bのそれぞれに、表面改質処理前のバサルト繊維担持体を浸漬し、自然乾燥することによって、表面改質(変性)処理を行った。以下では、懸濁液Aを用いて表面改質したバサルト繊維担持体をケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体A、懸濁液Bを用いて表面改質したバサルト繊維担持体をケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体Bという。
【0089】
2.水質浄化試験
(1)試験方法
表面改質処理を行っていないバサルト繊維担持体(未変性バサルト繊維担持体)(比較例3)、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体A(実施例10)、およびケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体B(実施例11)を用いて、水質浄化試験を行った。
2000mL容の容器(ビーカー)を3つ準備して、各容器に被処理水として食品工場の活性汚泥(浮遊MLSS量 2000mg/L)を2000mLずつ入れた。
次に、各容器に、それぞれ、未変性バサルト繊維担持体、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体Aおよびケイ素−フェライト鉄変性バサルトを入れ、初期吸着性に注目して比較を行った。
計測値については、各バサルト繊維担持体に吸着した状態で指定時間毎に分離液を採水して計量を行った。計量項目は、活性汚泥液中の有機浮遊物質量(MLSS)、酸化還元電位(ORP)、電気伝導度、および濁度を測定した。
表13に試験結果(MLSS、酸化還元電位(ORP)、電気伝導度、濁度)を示す。また、図5に、各容器中の被処理水の経時的状況変化を表す写真を示す(図5A スタート〜3時間後、図5B 5時間後〜24時間後)。
【0090】
【表13】
【0091】
(2)試験結果
(MLSS)
MLSS量のバサルト繊維担持体への吸着率は、66%(比較例3)、92.5%(実施例10)、94.0%(実施例11)であった。
グリーンラストで表面改質した変性バサルト繊維担持体Aおよび変性バサルト繊維担持体Bは、未変性バサルト繊維担持体と比較して、優れた浮遊生物汚泥の吸着性を示した。
【0092】
(ORP)
酸化還元電位値の変動について、バサルト繊維は、ORP値が還元域(−)に推移すると吸着性が増強することが実験結果に表されている。試験結果は、−80mV(比較例3)、−117mV(実施例10)、−102mV(実施例11)であった。
【0093】
(電気伝導度)
電気伝導度について、電気伝導度は電気の通りやすさを示す指標で液中に含まれるイオンが電気を運ぶ役割を担うので、含まれる電解質の濃度が高くなれば電気伝導度の値は高くなる。
比較例3では、スタートから1時間後に31.4mS/mであったが、24時間後には31.2mS/mであり、微少ながら下がっていた。
実施例10では、スタートから1時間後に46.9mS/mであったが、24時間後には46.9mS/mであり、微少ながら下がっていた。
実施例11では、スタートから1時間後に54.0mS/mであったが、24時間後には53.6mS/mであり、微少ながら下がっていた。
ただし、バサルト繊維担持体を水没(スタート)から1時間後の電気伝導度が、比較例3は31.4mS/m、実施例10は46.9mS/m、実施例11は54.0mS/mと、測定開始時の初期値において相違がある。変性バサルトの表面加工されたグリーンラスト懸濁液により電解質濃度が向上したと考えられる。
【0094】
(濁度)
濁度の24時間後のバサルト吸着分離液の濁度を計量した。それぞれの除去率は、比較例3で50.8%、実施例10で87.1%、実施例11で92.6%であった。この結果より、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体Aおよびケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体Bは、未変性バサルト繊維担持体と比較して、優れた汚泥吸着性を示した。
【0095】
[比較例4/実施例12、13]
比較例3、実施例10、11と同様にして準備した未変性バサルト繊維担持体(比較例4)、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体A(実施例12)、およびケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体B(実施例13)を用いて、水質浄化試験を行った。
2000mL容の容器(ビーカー)を3つ準備して、各容器に被処理水として食品工場の原水(浮遊MLSS量 2000mg/L)を2000mLずつ入れた。通気ポンプ(能力0.5L/minn)で撹拌を行い、水温を20℃に保持して、被処理水の酸化還元電位(ORP)を連続計測した。被処理水のpHを7.6に設定し、pHを連続計測しながら、水酸化ナトリウム水溶液(48%)の定量ポンプを自動制御してシーディング(設置時立上げ)を想定してバッチ実験を実施した。被処理水である食品工場の原水の初期値は、pH7.4、酸化還元電位(ORP) −60mV、化学的酸素要求量(COD) 1100mg/L、全有機炭素量(TOC) 1010mg/L、全窒素(T−N) 70.4mg/L、全リン(T−P) 21.5mg/Lであった。
表14に被処理水のpHおよびORPの計測結果を示す。
【0096】
【表14】
【0097】
pHについて、比較例4は7日間の間に変動が無かったが、実施例12では4日目に酸性側の6.75に推移し、実施例13でも4日目に酸性側の6.23に推移したが、実施例12、13とも、5日目には7.5以上を示した。
酸化還元電位(ORP)について、1〜4日目までは、緩やかであるが酸化側(+)に推移し、5日目以降は比較例3、実施例12および13のすべてで還元側(−)に推移し、7日目では実施例12は−204mvに低下し、実施例13については−246mvを示した。これは、原水液中の有機酸が変性バサルトに含まれるイオンにより生成されたことで4〜5日目に酸化から還元を呈したと考えられた。
【0098】
表15に、化学的酸素要求量(COD)、全有機炭素炭素量(TOC)、全窒素(T−N)、全リン(T−P)を示す。
【0099】
【表15】
【0100】
COD値の挙動は、被処理水中の有機酸により3日目以降、比較例4、実施例12、実施例13のいずれも下降(還元)を呈し、7日目には、比較例4は520mg/L、実施例12は480mg/L、実施例13は460mg/Lとなった。
TOC値の挙動は、被処理水中の有機酸の溶出によるTOC値の上昇が停止し3日目以降、比較例4、実施例12、実施例13のいずれも下降(還元)を呈し、7日目には、比較例4は940mg/L、実施例12は770mg/L、実施例13は740mg/Lとなった。
【0101】
T−N値の挙動は、被処理水中の有機酸の溶出によるT−N値の上昇は1日目で停止し3日目以降、比較例4、実施例12、実施例13のいずれも下降(還元)を呈し、7日目には、比較例4は57.4mg/Lとなったが、実施例12は27.5mg/L、実施例13は21.6mg/Lとなり、変性バサルト繊維の酸化態窒素除去効果が高いことが示された。
【0102】
T−P値の挙動は、1日目に比較例4のみがT−P値が微量上昇したが、その後は下降を呈した。実施例12および実施例13は、いずれも、1日目から下降を呈した。7日目には、比較例4は17.7mg/L、実施例12は11.4mg/L、実施例13は6.6mg/Lとなった。これは、変性バサルト繊維に塗布したグリーンラスト懸濁液に含まれていた鉄イオンがリンと結合したことによるリン除去効果が示されたものと考えられた。
表16に、COD、TOC、T−N、およびT−Pの除去率をまとめて示す。
【0103】
【表16】
【0104】
表16に示す結果から、実施例13の除去効率が最良であった。
【0105】
[比較例5/実施例14]
比較例3、未変性のバサルト繊維10g(比較例5)、実施例11と同様にしてバサルト繊維10gを表面改質したケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維(実施例14)を用いて、水質浄化試験を行った。
4000mL容の実験水槽を2つ準備して、各水槽に未変性バサルト繊維担持体(比較例5)またはケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体(実施例14)を組み付けた。被処理水として食品工場排水処理施設の嫌気槽汚泥と流入原水の混合液を用いた。水中ミキサーで撹拌を行い、流入原水は移送定量ポンプを用いて、24時間連続的に実験水槽に流入するように設定した。
流入原水の水質は、1〜4日の流入原水はpH4.7〜5.8、全有機炭素量(TOC)1160mg/Lであり、5〜6日の流入原水はpH7.3〜7.6、TOC 963mg/Lであった。
設定移送水量は、166mL/h、約4000mL/dayとした。
表17に、試験結果(pH、酸化還元電位(ORP)、溶存酸素量(DO)、全有機炭素量(TOC)、鉄イオン濃度(Fe))を示す。
また、図6に、各水槽の被処理水の経時的状況変化を表す写真を示す(図6A スタート〜3日目、図6B 4日目〜5日目)。
【0106】
【表17】
【0107】
未変性のバサルト繊維を用いた比較例5に比べて、グリーンラストで変性したバサルト繊維を用いた実施例14の方が、高い除去効果が得られた。また、実施例14の比較例5と比較しての初期処理性能の向上も確認された。グリーンラスト懸濁液を使用のため、被処理液中の溶解性鉄含有量(Fe;mg/L)を測定したが、測定限界以下であった。スタート時にバサルト繊維担持体に赤黄色の溶解性鉄が一部確認されたが、30分程度撹拌した後は、溶解性鉄が確認されなかった。溶解性鉄の検出は無く、生態的な収支および2価鉄と3価鉄の酸化還元反応による循環サイクルが構築され、変性バサルト繊維担持体および生物体内に取り込まれたと考えられる。
また、変性バサルト繊維担持体は、バサルト繊維にグリーンラスト懸濁液が立体的に絡まっており、フェライト鉄(Fe2−3)とケイ素−フェライト鉄(Si−Fe)がランダムに配置されていると考えられる。金属(鉄)−粒子系(有機汚泥)の静電気的な相互作用の概念によれば、両者の電荷の符号が異なるときには、両者のゼータ電位の積が小さいほど、静電気的な引力が増加し、粒子が固体表面に付着しやすくなる。また、電荷の符号が同じであるときには、両者のゼータ電位の積が小さいほど、静電気的な反発力が減少し、粒子が固体表面に付着しやすくなる。このことは、金属が電子受容体として作用し偏性嫌気性細菌への電子供与体として働き微生物間の電子伝達速度を向上させているためであると考えられる。
【0108】
[比較例6/実施例15〜17]
〈比較例6〉
化学工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水の混合液の水質浄化を、バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。バサルト繊維はグリーンラストを含まず、被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0109】
1.被処理水の準備
化学工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水を準備した。
【0110】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維40gを有するバサルト繊維担持体を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを分析した。結果を表18に示す。
【0111】
〈実施例15〜17〉
化学工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、ケイ素−フェライト鉄(Si−Fe)を含む変性バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0112】
1.被処理水の準備
比較例6と同様に、化学工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水を準備した。
【0113】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維40gを有するケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
上記ケイ素−鉄フェライト変性バサルト繊維担持体は、実施例11と同様の方法によって、バサルト繊維にケイ素−フェライト鉄を2質量%(実施例15)、4質量%(実施例16)、5質量%(実施例17)添加したものである。
生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに処理水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを測定した。結果を表18に示す。
【0114】
【表18】
【0115】
バサルト繊維にケイ素−フェライト鉄を添加しなかった比較例6に比べ、添加した実施例15〜17の方が、吸着効果が優れていた。
しかし、ケイ素−フェライト鉄添加量が異なる実施例15〜17の間では、吸着効果に大きな差はなかった。
【0116】
<ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維+生物処理剤>
[実施例18]
〔ケイ素−フェライト鉄を含むバサルト繊維担持体と酸化型グルタチオンを含む生物処理剤を含有する水循環槽を有する水質浄化装置を用いた水質浄化〕
図1に示す設備を有する染色加工工場の既設連続活性汚泥処理による廃水施設の生物曝気槽11にバサルト繊維担持体10(ケイ素−フェライト変成バサルト繊維担持体)を敷設し、他の水槽にも同様にバサルト繊維担持体10を敷設し、pH・酸化還元電位計(ORP)を設置して特定の生物処理剤の定量ポンプとON/OFF制御(設定値入力)を行い水質および槽内浮遊MLSS値の調査を行った。
撹拌の主動力としてブロワーを使用せず、水中ミキサーによる低酸素運転により偏性嫌気性細菌と通性嫌気性細菌・好気性細菌の三次元の生物巣をバサルト繊維担持体に形成させ、酸素不足時はORP計に連動した生物処理剤Yの量を制御して自動的に活性酸素補給を行い、処理水質を確保した。また、廃水の無負荷日を検知して槽内の浮遊MLSS値が設定値より高い(平衡状態が崩れる)場合は、生物巣の吸着汚泥(嫌気性細菌及び通性嫌気性細菌)を生態学的酸化還元(レドックス)反応で消滅させ、生物巣の吸着保有量を適切状態に制御した。
表19に、流入原水の水量・水質をおよび変性バサルト繊維担持体設置内容を示す。
なお、使用したバサルト繊維の設置本数は1m換算で450本相当であり、総繊維量は約40.5kgであった。
【0117】
【表19】
【0118】
なお、表19中、pH、BOD、SS、n−He、COD、T−NおよびT−Pは、それぞれ、以下に記載する意味である。
pH 水素イオン濃度指数
BOD 生物化学的酸素要求量
SS 浮遊物質量
n−He n−ヘキサン抽出物質量
COD 化学的酸素要求量
T−N 全窒素量
T−P 全リン量
【0119】
使用したバサルト繊維は13μmの極細繊維であった。バサルト繊維の成分中には、プラスの電荷を持つ成分とマイナスの電荷をもつ成分がありそれらの物質間で揺れる事で、静電気が発生し、電子が移動し帯電が発生、プラスに帯電した部位から順に負に帯電した嫌気性微生物を誘導し、高速的な吸着作用をもたらす。好ましい態様であるこの働きを任意的に保有した強磁性を示すマグネタイト(Fe3O4)・ヘマタイト(Fe2O3)を含むグリーンラスト懸濁液を使用して、バサルト繊維の表面に酸洗浄・中和・水洗浄・乾燥の加工を行い塗布等して担持体に装着し電場と静電気作用を活発化したものが変性バサルト繊維担持体である。また、必要な振動を発生させるために好ましく且つ省エネルギーである水流撹拌装置(水中ミキサー)をメイン動力として利用した。
生物処理剤Xは、実施例2と同様、特許第5238946号公報の実施例1の製造手順に従って製造したものである。
【0120】
汚泥の収支が平衡状態を迎えた後の処置については、ORP計と連動した生物処理剤(特許第5238946号)を使用した自動制御にて、汚泥の平衡状態を解消し、汚泥を削減できる。処理能力を維持に役立てる事を可能にでき、担体の特性である肥厚化した担体の交換の必要性が解消し、更には汚泥処理・処分が必要無く、経済性を兼ね備えた生物処理が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の水質浄化方法は、生態学的酸化還元(レドックス)反応を利用しているので、従来の活性汚泥法に比べて、曝気槽の容積がコンパクト化でき、電力費用が大幅減になりエネルギー消費が少なくて済み、ミキサーを使用するため騒音がない、返送汚泥、沈殿槽が不要である場合は、薬品、汚泥処分の費用が削減できる等の少なくとも一つの効果があり、産業上有用である。
【0122】
この理由から、従来の活性汚泥法の運転で問題となってきた、夏場の溶存酸素不足に対処でき、被処理水の負荷変動による溶存酸素不足に対応でき、停電時の酸素補給にも対処できる。また槽内の酸素不足や堆積物の腐敗で発生する硫化水素対策が可能であり、電力費の削減ができ、生物巣の膜や担持体の洗浄を容易にすることもできる等の少なくとも一つの効果があり、被処理水の水質浄化に有用である。
【符号の説明】
【0123】
4 被処理水流入ライン
5、6 移送ライン
7 返送ライン
8 循環ライン
9 放流ライン
10 バサルト繊維担持体
11 生物曝気槽
13 反応槽
15 沈殿槽
16 散気管
17 水中撹拌ミキサー
19 化学処理剤注入装置
21 ORP計
22 pH計
【要約】
【課題】水質浄化装置および水質浄化方法を提供する。
【解決手段】バサルト繊維と、化学処理剤または生物処理剤とを含有する水循環槽を有する水質浄化装置、およびその水質浄化装置を用いる水質浄化方法。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B