【実施例】
【0037】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
本発明において、「〜」を用いて表される範囲は「〜」の両端を含むものとする。例えば、「A〜B」と表される範囲には、「〜」の両端である「A」および「B」を含むものとする。
また、本発明において、「バサルト繊維担持体」は、複数のバサルト繊維を束ねたものを含む担持体を意味する。
また、本発明において、「水循環槽」は、循環水が流入および流出する水槽を意図する。
図1でいえば、生物曝気槽11、反応槽13、および沈殿槽15は、いずれも、水循環槽に該当する。
【0038】
<バサルト繊維+化学処理剤>
[実施例1]
食品加工工場の活性汚泥処理システムの汚泥濃縮槽の濃縮汚泥(浮遊MLSS量16000mg/L)を使用してバサルト繊維に吸着・同化させた後、還元型グルタチオンを含む化学処理剤を添加して酸化還元反応による汚泥の減容・減量を行った。
【0039】
1.化学処理剤の準備
化学処理剤を、特許第5194223号公報に記載の製造方法(実施例1)、具体的には、以下の製造手順に従って製造した。
〈製造手順〉
(1)精製水(電気抵抗率1MΩ・cm、以下同じ)4000gに、ヘキサメタリン酸ナトリウム1200gと、還元型グルタチオン200mgと、グリセロール脱水素酵素(50U/mg)10mgとを添加して撹拌・混合し、さらに0〜5℃、常圧(概ね1013hPa)で、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(A)とした(表1の「混合液(A)」の欄を参照)。
(2)その後、混合液(A)5200gに、酵母溶解酵素(5000U/g)100gと、グリセリン1020gとを添加して撹拌・混合し、さらに、37〜40℃、常圧(概ね1013hPa)で、5日間、インキュベートした。この混合液を混合液(B)とした(表1の「混合液(B)」の欄を参照)。
(3)その後、精製水16860gに、混合液(B)600gと、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2500gと、エチレンジアミン四酢酸40gとを添加して撹拌・混合し、常温(概ね20℃)常圧(概ね1013hPa)で、紫外線を避け、インキュベートした。この混合液を混合液(C)とした(表1の「混合液(C)」の欄を参照)。
(4)混合液(C)を、そのまま、化学処理剤とした。以下の実施例では、この化学処理剤を「化学処理剤Y」ということとする。
【0040】
【表1】
【0041】
2.被処理水(試料)の準備
食品加工工場の活性汚泥処理システムの汚泥濃縮槽の濃縮汚泥8Lを10L容のビーカーに入れ、浮遊MLSS量および分離水ORP(酸化還元電位)を測定した(ブランク)。次に、濃縮汚泥を入れた10L容ビーカーに、バサルト繊維担持体(バサルト繊維30g、直径13μmの極細繊維)を入れ、汚泥をバサルト繊維に吸着・同化させるシーディングを行った。バサルト繊維担持体をビーカーに投入後、4時間後〜10時間後まで、2時間ごとに浮遊MLSS量、分離水TOC(全有機炭素量)、および分離水ORPを測定した(4時間、6時間、8時間、10時間)。水温は24℃に保った。
浮遊MLSS、分離水TOC、および分離水ORPの測定値を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
3.化学処理剤による汚泥の減容・減量
上記の処理により得られた10時間後の汚泥を被処理水(試料)として用いた。
10L容ビーカー内の被処理水(試料)8Lに、上記の方法により準備した化学処理剤Yを1000mg/L添加して、汚泥の減容・減量実験を行った。
化学処理剤Yをビーカーに添加する直前(スタート時)、化学処理剤Yを添加してから2時間後、4時間後、5時間後に浮遊MLSS量、分離水TOC、および分離水ORPを測定した。
浮遊MLSS、分離水TOC、および分離水ORPの測定値を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
被処理水(試料)に化学処理剤Yを添加してから5時間後にビーカーからバサルト繊維担持体を取り出し、乾燥後、使用後のバサルト繊維の重量を測定し、使用前のバサルト繊維の重量と比較した。
使用前のバサルト繊維の重量・・・30.01g
使用後のバサルト繊維の重量・・・30.02g
【0046】
4.結果の説明
表2に示す結果から、バサルト繊維による汚泥吸着は10時間で約92質量%であった。
また、表3に示す結果から、化学処理剤Y添加5時間後の汚泥減容・減量は97.3質量%(バサルト繊維による汚泥吸着は97質量%)を達成することができた。
【0047】
<バサルト繊維+生物処理剤>
[実施例2]
食品加工工場の活性汚泥処理システムの汚泥濃縮槽の濃縮汚泥(浮遊MLSS量16000mg/L)を使用してバサルト繊維に吸着・同化させた後、酸化型グルタチオンを含む生物処理剤を添加して酸化還元反応による汚泥の減容・減量を行った。
【0048】
1.生物処理剤の準備
生物処理剤を、特許5238946号公報に記載の製造方法(実施例1)、具体的には、以下の製造手順に従って製造した。
〈製造手順〉
(1)精製水(電気抵抗率1MΩ・cm、以下同じ)4000gに、ヘキサメタリン酸ナトリウム1200gと、酸化型グルタチオン20mgと、グリセロール脱水素酵素(50U/mg)10mgとを配合して撹拌・混合し、さらに0〜5℃に温度制御した冷蔵庫内で、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(A)とした(表4の「混合液(A)」の欄を参照)。
(2)その後、混合液(A)5200gに、酵母溶解酵素(5000U/g)100gと、グリセリン1020gとを添加して撹拌・混合し、さらに37〜40℃に温度制御したインキュベーター内で、5日間、インキュベートした。この混合液を混合液(B)とした(表4の「混合液(B)」の欄を参照)。
(3)その後、精製水16600gに、混合液(B)800gと、ペルオキソ二硫酸ナトリウム2500gと、エチレンジアミン四酢酸100gとを添加して撹拌・混合し、さらに室温(20±15℃)で、紫外線を避けながら、7日間、インキュベートした。この混合液を混合液(C)とした(表4の「混合液(C)」の欄を参照)。
(4)混合液(C)を、そのまま、生物処理剤とした。以下の実施例では、このようにし
て製造した生物処理剤を「生物処理剤X」ということとする。
【0049】
【表4】
【0050】
2.被処理水(試料)の準備
食品加工工場の活性汚泥処理システムの汚泥濃縮槽の濃縮汚泥8Lを10L容のビーカーに入れ、浮遊MLSS量および分離水ORP(酸化還元電位)を測定した(ブランク)。次に、濃縮汚泥を入れた10L容ビーカーに、バサルト繊維担持体(バサルト繊維30g、直径13μmの極細繊維)を入れ、汚泥をバサルト繊維に吸着・同化させるシーディングを行った。バサルト繊維担持体をビーカーに投入後、4時間後〜10時間後まで、2時間ごとに浮遊MLSS量、分離水TOC(全有機炭素量)、および分離水ORPを測定した(4時間、6時間、8時間、10時間)。水温は24℃に保った。
浮遊MLSS、分離水TOC、および分離水ORPの測定値を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
3.生物処理剤による汚泥の減容・減量
上記の処理により得られた10時間後の汚泥を被処理水(試料)として用いた。
10L容ビーカー内の被処理水(試料)8Lに、上記の方法により準備した生物処理剤Xを1000mg/L添加して、汚泥の減容・減量実験を行った。
生物処理剤Xをビーカーに添加する直前(スタート時)、生物処理剤Xを添加してから2時間後、4時間後、5時間後に浮遊MLSS量、分離水TOC、および分離水ORPを測定した。
浮遊MLSS、分離水TOC、および分離水ORPの測定値を表6に示す。
【0053】
【表6】
【0054】
被処理水(試料)に生物処理剤Xを添加してから5時間後にビーカーからバサルト繊維担持体を取り出し、乾燥後、使用後のバサルト繊維の重量を測定し、使用前のバサルト繊維の重量と比較した。
使用前のバサルト繊維の重量・・・30.01g
使用後のバサルト繊維の重量・・・30.02g
【0055】
4.結果の説明
表5に示す結果から、バサルト繊維による汚泥吸着は10時間で約92質量%であった。
また、表6に示す結果から、生物処理剤X添加5時間後の汚泥減容・減量は97.3質量%(バサルト繊維による汚泥吸着は97質量%)を達成することができた。
【0056】
[実施例3]
〔バサルト繊維担持体と酸化型グルタチオンを含む生物処理剤を含有する水循環槽を有する水質浄化装置を用いた水質浄化〕
図1に示す設備を有する染色加工工場の既設連続活性汚泥処理による廃水施設の生物曝気槽11にバサルト繊維担持体10を敷設し、他の水槽にも同様にアサルト長繊維担持体10を敷設し、pH・酸化還元電位系(ORP)を設置して特定の生物処理剤の定量ポンプとON/OFF制御(設定値入力)を行い、水質および槽内浮遊MLSS量の調査を行った。
槽内被処理水の撹拌の主動力としてブロワーを使用せず、水中ミキサーによる低酸素運転により、嫌気性細菌と通性嫌気性細菌および好気性細菌の三次元の生物巣をバサルト繊維担持体に形成させ、酸素不足時はORP計に連動した生物処理剤Xの量を制御して自動的に酸素(スーパーオキシドイオン)補給を行い、処理水質を確保した、また、廃水の無負荷日を検知して槽内の浮遊MLSS値が設定値よりも高い(平衡状態が崩れる)場合は、生物巣の吸着汚泥(嫌気性細菌および通性嫌気性細菌)を生態学的酸化還元(レドックス)反応で消滅させ、生物巣の吸着保有量を適切状態に制御した。
表7に、被処理水の浮遊MLSS測定値、ORP測定値およびCOD測定値を時系列とともに示す。
【0057】
【表7】
【0058】
上記方法の処理方法による状況追跡の結果、生物処理剤との併用効果によるものと考えられる汚泥減容効果を通年に及んで効果を示し、余剰汚泥として汚泥処分は一度も行っておらず、環境負荷を大幅に低減できる結果が得られた。バサルト繊維担持体の汚泥を保有する優劣は、比表面積の差と投入量による。バサルト繊維担持体と生物処理剤とを使用すれば何れの材質においても半永久的に浄化機能が維持される。生物収支から考えて汚泥による浄化機能が閉塞されずに維持できる結果が得られた。生物処理剤の添加を制御してバサルト繊維担持体に吸着した生物汚泥の平衡状態の変動に対し浮遊MLSS量を把握することによりコントロールが可能であることが判明した。
【0059】
<フェライト鉄変性バサルト繊維>
[比較例1/実施例3、4]
〈比較例1〉
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。バサルト繊維担持体はフェライト鉄を含まず、被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0060】
1.被処理水の準備
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水を準備した。
【0061】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維30gを有するバサルト繊維担持体1を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを分析した。結果を表8に示す。
【0062】
〈実施例3、4〉
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、フェライト鉄を含む変性バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0063】
1.被処理水の準備
比較例1と同様に、食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水を準備した。
【0064】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維30gを有するフェライト変性バサルト繊維担持体を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
上記フェライト変性バサルト繊維担持体は、バサルト繊維を水中で形状を維持するためのポリプロピレン樹脂繊維の表面にポリビニルアルコール(PVA)でフェライト鉄(Fe
3O
4)を装填して電場を強化した変性バサルト繊維担持体である。使用したマグネタイトを含むフェライト鉄は、化学処理剤を使用した常温フェライト法(特許第5194223号公報の8、18/51頁の記載参照)で硫酸第一鉄(FeSO4・7H
2O)と水酸化ナトリウム水溶液(48%)を反応させて製造した。出来上がったフェライト化した鉄(Fe
3O
4)の粒子径は0.3〜1.1μmで、マイナス電荷を帯び、強磁性体を示した。製造したフェライト鉄を30gのバサルトに2質量%添加した変性バサルト繊維担持体2(実施例3)および4質量%添加した変性バサルト繊維担持体3(実施例4)を表8に示すように用いた。
超微細なフェライト鉄をバサルト繊維の担持体製造工程でバサルトに含有させ、生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを測定した。結果を表8に示す。
【0065】
【表8】
【0066】
[比較例2/実施例5〜7]
〈比較例2〉
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。バサルト繊維担持体はフェライト鉄を含まず、被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0067】
1.被処理水の準備
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水の混合液を準備した。
【0068】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維40gを有するバサルト繊維担持体4を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを分析した。結果を表9に示す。
【0069】
〈実施例5〜7〉
食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、フェライト鉄を含む変性バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0070】
1.被処理水の準備
比較例2と同様に、食品工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水の混合液を準備した。
【0071】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維40gを有するフェライト変性バサルト繊維担持体を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
上記フェライト変性バサルト繊維担持体は、バサルト繊維を水中で形状を維持するためのポリプロピレン樹脂繊維の表面にポリビニルアルコール(PVA)でフェライト鉄(Fe
3O
4)を装填して電場を強化した変性バサルト繊維担持体である。使用したマグネタイトを含むフェライト鉄は、化学処理剤を使用した常温フェライト法(特許第5194223号公報の8、18/51頁の記載参照)で硫酸第一鉄(FeSO4・7H
2O)と水酸化ナトリウム水溶液(48%)を反応させて製造した。出来上がったフェライト化した鉄(Fe
3O
4)の粒子径は0.3〜1.1μmで、マイナス電荷を帯び、強磁性体を示した。製造したフェライト鉄を40gのバサルトに2質量%添加した変性バサルト繊維担持体5(実施例5)、4質量%添加した変性バサルト繊維担持体6(実施例6)、および5質量%添加した変性バサルト繊維担持体7(実施例7)を表9に示すように用いた。
超微細なフェライト鉄をバサルト繊維の担持体製造工程でバサルトに含有させ、生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを分析した。結果を表9に示す。
【0072】
【表9】
【0073】
<フェライト鉄変性バサルト繊維+化学処理剤>
[実施例8]
〔フェライト鉄を含むバサルト繊維担持体と還元型グルタチオンを含む化学処理剤を含有する水循環槽を有する水質浄化装置を用いた水質浄化〕
図1に示す設備を有する染色加工工場の既設連続活性汚泥処理による廃水施設の生物曝気槽11にバサルト繊維担持体10(フェライト変性バサルト繊維担持体;超微細なフェライト鉄の含有量は4〜5%である)を敷設し、他の水槽にも同様にバサルト繊維担持体10を敷設し、pH・酸化還元電位計(ORP)を設置して化学処理剤Yの定量ポンプとON/OFF制御(設定値入力)を行い、水質および槽内浮遊MLSS量の調査を行った。
槽内被処理水の撹拌の主動力としてブロワーを使用せず、水中ミキサーによる低酸素運転により、嫌気性細菌と通性嫌気性細菌および好気性細菌の三次元の生物巣をバサルト繊維担持体に形成させ、酸素不足時はORP計に連動した化学処理剤Yの量を制御して自動的に酸素(スーパーオキシドイオン)補給を行い、処理水質を確保した。また、廃水の無負荷日を検知して槽内の浮遊MLSS値が設定値よりも高い(平衡状態が崩れる)場合は、生物巣の吸着汚泥(嫌気性細菌および通性嫌気性細菌)を生態学的酸化還元(レドックス)反応で消滅させ、生物巣の吸着保有量を適切状態に制御した。
表10に、流入原水の水量・水質を示す。
なお、使用したバサルト繊維の設置本数は1m換算で450本相当であり、総繊維量は約40.5kgであった。
【0074】
【表10】
【0075】
なお、表10中、pH、BOD、SS、n−He、COD、T−NおよびT−Pは、それぞれ、以下に記載する意味である。
pH 水素イオン濃度指数
BOD 生物化学的酸素要求量
SS 浮遊物質量
n−He n−ヘキサン抽出物質量
COD 化学的酸素要求量
T−N 全窒素量
T−P 全リン量
【0076】
使用したバサルト繊維は13μmの極細繊維であった。バサルト繊維の成分中には、プラスの電荷を持つ成分とマイナスの電荷をもつ成分がありそれらの物質間で揺れる事で、静電気が発生し、電子が移動し帯電が発生、プラスに帯電した部位から順に負に帯電した嫌気性微生物を誘導し、高速的な吸着作用をもたらす。好ましい態様であるこの働きを任意的に保有した強磁性を示すマグネタイト(Fe
3O
4)を含むフェライト鉄を混入させ、水中の形状維持のポリプロピレン繊維に装着し電場と静電気作用を活発化したものが変性バサルト繊維担持体である。また、必要な振動を発生させるために好ましく且つ省エネルギーである水中ミキサーをメイン動力として利用した。
【0077】
化学処理剤Yは、実施例1と同様、特許第5194223号公報の実施例1の製造手順に従って製造したものである。
【0078】
図2に実施例8の稼働後の状況を評価した測定結果をグラフで表示する。CODmnは、JIS規格のCOD測定法で過マンガン酸を使用した表記である。CODmnは、沈殿槽から分離した放流水で測定し、SV30およびMLSSは、
図1の最終バサルト設置槽(沈殿槽15)の放流ライン9の手前で採取した試料で測定した値である。ここで、SV30(活性汚泥沈殿率:sludge volume)は、30分静置して沈殿する活性汚泥の比率%を表す。
【0079】
バサルト繊維担持体の汚泥を保有する優劣は、比表面積の差と投入量による。バサルト繊維担持体と化学処理剤とを使用すればいずれの材質においても半永久的に浄化機能が維持される。生物収支から考えて汚泥による浄化機能が閉塞されずに維持できる結果が得られた。バサルト繊維生物担持体の優れた水質浄化能力と化学処理剤による担持体維持に効果的な結果が得られた。化学処理剤の添加を制御してバサルト繊維担持体に吸着した生物汚泥の平衡状態の変動に対し浮遊MLSS量を把握することによりコントロールが可能であることが判明した。また、稼働開始より11ケ月現在に至るまで系外への余剰生物汚泥の廃棄処分は行われなかった。
【0080】
<ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維>
[比較例3/実施例10、11]
1.ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体の製造
ケイ素−フェライト鉄(Si−Fe
3O
4)粉を含有するグリーンラスト懸濁液(ケイ素−フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液)を調製し、これをバサルト繊維の表面改質に用いた。より詳細には、バサルト繊維を上記ケイ素−フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液に浸漬または塗布し、中和および洗浄を行い、乾燥することにより、バサルト繊維に表面改質を施した。上記グリーンラスト懸濁液は、水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カルシウム水溶液を用いてpHを調整して用いた。この表面改質したバサルト繊維を組み付け、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体として用いた。
【0081】
(1)ケイ素フェライト鉄(Si−Fe
3O
4)粉を含有するグリーンラスト懸濁液の調製
・材料
二酸化ケイ素(SiO
2)(65%)
グリーンラスト懸濁液(全鉄濃度 32000mg/L。pH10.5、ORP(測定値) −720mV)
水酸化ナトリウム水溶液(48%)
・調製手順
グリーンラスト懸濁液500mLを500mL容ビーカーに入れ、撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液(48%)2.8mLを添加し、グリーンラスト懸濁液のpHを10.5に調整した。
pHの調製後、二酸化ケイ素(粉末)0.5gを、ビーカー内のグリーンラスト懸濁液に、撹拌しながら穏やかに添加した。
二酸化ケイ素(粉末)添加後の懸濁液のpH、酸化還元電位(ORP)、溶存酸素濃度(DO)、ケイ素濃度(Si)、および色相を表11に示す。
【0082】
【表11】
【0083】
次に、二酸化ケイ素(粉末)を添加してから14時間後に懸濁液の撹拌を停止した。撹拌停止後の懸濁液の上澄のpH、酸化還元電位(ORP)、溶存酸素濃度(DO)、ケイ素濃度(Si)、色相、およびケイ素を含むグリーンラスト澱物の沈降率(沈降率)を表12に示す。
【0084】
【表12】
【0085】
グリーンラスト懸濁液に二酸化ケイ素を添加した後、二酸化ケイ素から酸素が分離したことにより溶存酸素濃度(DO)が上昇したが、12時間後には色相が黒褐色となり、ケイ素を含むグリーンラスト澱物の沈降が始まった(表11)。
【0086】
ケイ素を含むグリーンラスト澱物の沈降が始まり、上澄の溶存酸素濃度(DO)が低下するとともに、ケイ素濃度(Si)も0.01mg/L以下に減少して、フェライト生成が進行していることがわかった。
【0087】
その後、ビーカー内の懸濁液を再度撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.5に調整した。pHと水酸化ナトリウム水溶液の定量ポンプを設定値pH10.5±0.2の範囲にて制御して12時間撹拌を行い、撹拌停止後に沈降分離を行い、5時間後に沈降澱物にネオジム磁石(表面磁束密度0.42T、吸着力25.48N、径10mm)を入れたところ沈降澱物は全て吸着した。
沈降澱物はフェライト化され磁気分離、ろ過分離することができ、ケイ素−フェライト鉄(磁性鉄粉)として製造できた。
上記の製造方法で造られたケイ素−フェライト鉄粉を含有するグリーンラスト懸濁液を使用した。
【0088】
(2)バサルト繊維の変性処理
ケイ素−フェライト鉄粉を含有するグリーンラスト懸濁液(ケイ素−フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液)に水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH7.35のケイ素−フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液(懸濁液A)およびpH9.31のケイ素含有フェライト鉄粉含有グリーンラスト懸濁液(懸濁液B)を調製した。
懸濁液Aおよび懸濁液Bのそれぞれに、表面改質処理前のバサルト繊維担持体を浸漬し、自然乾燥することによって、表面改質(変性)処理を行った。以下では、懸濁液Aを用いて表面改質したバサルト繊維担持体をケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体A、懸濁液Bを用いて表面改質したバサルト繊維担持体をケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体Bという。
【0089】
2.水質浄化試験
(1)試験方法
表面改質処理を行っていないバサルト繊維担持体(未変性バサルト繊維担持体)(比較例3)、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体A(実施例10)、およびケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体B(実施例11)を用いて、水質浄化試験を行った。
2000mL容の容器(ビーカー)を3つ準備して、各容器に被処理水として食品工場の活性汚泥(浮遊MLSS量 2000mg/L)を2000mLずつ入れた。
次に、各容器に、それぞれ、未変性バサルト繊維担持体、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体Aおよびケイ素−フェライト鉄変性バサルトを入れ、初期吸着性に注目して比較を行った。
計測値については、各バサルト繊維担持体に吸着した状態で指定時間毎に分離液を採水して計量を行った。計量項目は、活性汚泥液中の有機浮遊物質量(MLSS)、酸化還元電位(ORP)、電気伝導度、および濁度を測定した。
表13に試験結果(MLSS、酸化還元電位(ORP)、電気伝導度、濁度)を示す。また、
図5に、各容器中の被処理水の経時的状況変化を表す写真を示す(
図5A スタート〜3時間後、
図5B 5時間後〜24時間後)。
【0090】
【表13】
【0091】
(2)試験結果
(MLSS)
MLSS量のバサルト繊維担持体への吸着率は、66%(比較例3)、92.5%(実施例10)、94.0%(実施例11)であった。
グリーンラストで表面改質した変性バサルト繊維担持体Aおよび変性バサルト繊維担持体Bは、未変性バサルト繊維担持体と比較して、優れた浮遊生物汚泥の吸着性を示した。
【0092】
(ORP)
酸化還元電位値の変動について、バサルト繊維は、ORP値が還元域(−)に推移すると吸着性が増強することが実験結果に表されている。試験結果は、−80mV(比較例3)、−117mV(実施例10)、−102mV(実施例11)であった。
【0093】
(電気伝導度)
電気伝導度について、電気伝導度は電気の通りやすさを示す指標で液中に含まれるイオンが電気を運ぶ役割を担うので、含まれる電解質の濃度が高くなれば電気伝導度の値は高くなる。
比較例3では、スタートから1時間後に31.4mS/mであったが、24時間後には31.2mS/mであり、微少ながら下がっていた。
実施例10では、スタートから1時間後に46.9mS/mであったが、24時間後には46.9mS/mであり、微少ながら下がっていた。
実施例11では、スタートから1時間後に54.0mS/mであったが、24時間後には53.6mS/mであり、微少ながら下がっていた。
ただし、バサルト繊維担持体を水没(スタート)から1時間後の電気伝導度が、比較例3は31.4mS/m、実施例10は46.9mS/m、実施例11は54.0mS/mと、測定開始時の初期値において相違がある。変性バサルトの表面加工されたグリーンラスト懸濁液により電解質濃度が向上したと考えられる。
【0094】
(濁度)
濁度の24時間後のバサルト吸着分離液の濁度を計量した。それぞれの除去率は、比較例3で50.8%、実施例10で87.1%、実施例11で92.6%であった。この結果より、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体Aおよびケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体Bは、未変性バサルト繊維担持体と比較して、優れた汚泥吸着性を示した。
【0095】
[比較例4/実施例12、13]
比較例3、実施例10、11と同様にして準備した未変性バサルト繊維担持体(比較例4)、ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体A(実施例12)、およびケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体B(実施例13)を用いて、水質浄化試験を行った。
2000mL容の容器(ビーカー)を3つ準備して、各容器に被処理水として食品工場の原水(浮遊MLSS量 2000mg/L)を2000mLずつ入れた。通気ポンプ(能力0.5L/minn)で撹拌を行い、水温を20℃に保持して、被処理水の酸化還元電位(ORP)を連続計測した。被処理水のpHを7.6に設定し、pHを連続計測しながら、水酸化ナトリウム水溶液(48%)の定量ポンプを自動制御してシーディング(設置時立上げ)を想定してバッチ実験を実施した。被処理水である食品工場の原水の初期値は、pH7.4、酸化還元電位(ORP) −60mV、化学的酸素要求量(COD) 1100mg/L、全有機炭素量(TOC) 1010mg/L、全窒素(T−N) 70.4mg/L、全リン(T−P) 21.5mg/Lであった。
表14に被処理水のpHおよびORPの計測結果を示す。
【0096】
【表14】
【0097】
pHについて、比較例4は7日間の間に変動が無かったが、実施例12では4日目に酸性側の6.75に推移し、実施例13でも4日目に酸性側の6.23に推移したが、実施例12、13とも、5日目には7.5以上を示した。
酸化還元電位(ORP)について、1〜4日目までは、緩やかであるが酸化側(+)に推移し、5日目以降は比較例3、実施例12および13のすべてで還元側(−)に推移し、7日目では実施例12は−204mvに低下し、実施例13については−246mvを示した。これは、原水液中の有機酸が変性バサルトに含まれるイオンにより生成されたことで4〜5日目に酸化から還元を呈したと考えられた。
【0098】
表15に、化学的酸素要求量(COD)、全有機炭素炭素量(TOC)、全窒素(T−N)、全リン(T−P)を示す。
【0099】
【表15】
【0100】
COD値の挙動は、被処理水中の有機酸により3日目以降、比較例4、実施例12、実施例13のいずれも下降(還元)を呈し、7日目には、比較例4は520mg/L、実施例12は480mg/L、実施例13は460mg/Lとなった。
TOC値の挙動は、被処理水中の有機酸の溶出によるTOC値の上昇が停止し3日目以降、比較例4、実施例12、実施例13のいずれも下降(還元)を呈し、7日目には、比較例4は940mg/L、実施例12は770mg/L、実施例13は740mg/Lとなった。
【0101】
T−N値の挙動は、被処理水中の有機酸の溶出によるT−N値の上昇は1日目で停止し3日目以降、比較例4、実施例12、実施例13のいずれも下降(還元)を呈し、7日目には、比較例4は57.4mg/Lとなったが、実施例12は27.5mg/L、実施例13は21.6mg/Lとなり、変性バサルト繊維の酸化態窒素除去効果が高いことが示された。
【0102】
T−P値の挙動は、1日目に比較例4のみがT−P値が微量上昇したが、その後は下降を呈した。実施例12および実施例13は、いずれも、1日目から下降を呈した。7日目には、比較例4は17.7mg/L、実施例12は11.4mg/L、実施例13は6.6mg/Lとなった。これは、変性バサルト繊維に塗布したグリーンラスト懸濁液に含まれていた鉄イオンがリンと結合したことによるリン除去効果が示されたものと考えられた。
表16に、COD、TOC、T−N、およびT−Pの除去率をまとめて示す。
【0103】
【表16】
【0104】
表16に示す結果から、実施例13の除去効率が最良であった。
【0105】
[比較例5/実施例14]
比較例3、未変性のバサルト繊維10g(比較例5)、実施例11と同様にしてバサルト繊維10gを表面改質したケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維(実施例14)を用いて、水質浄化試験を行った。
4000mL容の実験水槽を2つ準備して、各水槽に未変性バサルト繊維担持体(比較例5)またはケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体(実施例14)を組み付けた。被処理水として食品工場排水処理施設の嫌気槽汚泥と流入原水の混合液を用いた。水中ミキサーで撹拌を行い、流入原水は移送定量ポンプを用いて、24時間連続的に実験水槽に流入するように設定した。
流入原水の水質は、1〜4日の流入原水はpH4.7〜5.8、全有機炭素量(TOC)1160mg/Lであり、5〜6日の流入原水はpH7.3〜7.6、TOC 963mg/Lであった。
設定移送水量は、166mL/h、約4000mL/dayとした。
表17に、試験結果(pH、酸化還元電位(ORP)、溶存酸素量(DO)、全有機炭素量(TOC)、鉄イオン濃度(Fe))を示す。
また、
図6に、各水槽の被処理水の経時的状況変化を表す写真を示す(
図6A スタート〜3日目、
図6B 4日目〜5日目)。
【0106】
【表17】
【0107】
未変性のバサルト繊維を用いた比較例5に比べて、グリーンラストで変性したバサルト繊維を用いた実施例14の方が、高い除去効果が得られた。また、実施例14の比較例5と比較しての初期処理性能の向上も確認された。グリーンラスト懸濁液を使用のため、被処理液中の溶解性鉄含有量(Fe;mg/L)を測定したが、測定限界以下であった。スタート時にバサルト繊維担持体に赤黄色の溶解性鉄が一部確認されたが、30分程度撹拌した後は、溶解性鉄が確認されなかった。溶解性鉄の検出は無く、生態的な収支および2価鉄と3価鉄の酸化還元反応による循環サイクルが構築され、変性バサルト繊維担持体および生物体内に取り込まれたと考えられる。
また、変性バサルト繊維担持体は、バサルト繊維にグリーンラスト懸濁液が立体的に絡まっており、フェライト鉄(Fe
2−3O
4)とケイ素−フェライト鉄(Si−Fe
3O
4)がランダムに配置されていると考えられる。金属(鉄)−粒子系(有機汚泥)の静電気的な相互作用の概念によれば、両者の電荷の符号が異なるときには、両者のゼータ電位の積が小さいほど、静電気的な引力が増加し、粒子が固体表面に付着しやすくなる。また、電荷の符号が同じであるときには、両者のゼータ電位の積が小さいほど、静電気的な反発力が減少し、粒子が固体表面に付着しやすくなる。このことは、金属が電子受容体として作用し偏性嫌気性細菌への電子供与体として働き微生物間の電子伝達速度を向上させているためであると考えられる。
【0108】
[比較例6/実施例15〜17]
〈比較例6〉
化学工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水の混合液の水質浄化を、バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。バサルト繊維はグリーンラストを含まず、被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0109】
1.被処理水の準備
化学工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水を準備した。
【0110】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維40gを有するバサルト繊維担持体を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに分離水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを分析した。結果を表18に示す。
【0111】
〈実施例15〜17〉
化学工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水との混合液の水質浄化を、ケイ素−フェライト鉄(Si−Fe
3O
4)を含む変性バサルト繊維担持体を含有する水循環槽を用いて行った。被処理水には、化学処理剤および生物処理剤のいずれも添加しなかった。
【0112】
1.被処理水の準備
比較例6と同様に、化学工場排水処理施設の全嫌気槽汚泥と流入原水を準備した。
【0113】
2.被処理水の水質浄化処理
25L容量の実験水槽に被処理水を入れ、バサルト繊維40gを有するケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維担持体を実験水槽に投入し、実験水槽内の被処理水を水中ミキサーで撹拌した。
上記ケイ素−鉄フェライト変性バサルト繊維担持体は、実施例11と同様の方法によって、バサルト繊維にケイ素−フェライト鉄を2質量%(実施例15)、4質量%(実施例16)、5質量%(実施例17)添加したものである。
生物汚泥の吸着性と生物巣の形成状況を観察しながら撹拌、通水条件を制御した。浮遊MLSS、ならびに処理水の総有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)およびpHを測定した。結果を表18に示す。
【0114】
【表18】
【0115】
バサルト繊維にケイ素−フェライト鉄を添加しなかった比較例6に比べ、添加した実施例15〜17の方が、吸着効果が優れていた。
しかし、ケイ素−フェライト鉄添加量が異なる実施例15〜17の間では、吸着効果に大きな差はなかった。
【0116】
<ケイ素−フェライト鉄変性バサルト繊維+生物処理剤>
[実施例18]
〔ケイ素−フェライト鉄を含むバサルト繊維担持体と酸化型グルタチオンを含む生物処理剤を含有する水循環槽を有する水質浄化装置を用いた水質浄化〕
図1に示す設備を有する染色加工工場の既設連続活性汚泥処理による廃水施設の生物曝気槽11にバサルト繊維担持体10(ケイ素−フェライト変成バサルト繊維担持体)を敷設し、他の水槽にも同様にバサルト繊維担持体10を敷設し、pH・酸化還元電位計(ORP)を設置して特定の生物処理剤の定量ポンプとON/OFF制御(設定値入力)を行い水質および槽内浮遊MLSS値の調査を行った。
撹拌の主動力としてブロワーを使用せず、水中ミキサーによる低酸素運転により偏性嫌気性細菌と通性嫌気性細菌・好気性細菌の三次元の生物巣をバサルト繊維担持体に形成させ、酸素不足時はORP計に連動した生物処理剤Yの量を制御して自動的に活性酸素補給を行い、処理水質を確保した。また、廃水の無負荷日を検知して槽内の浮遊MLSS値が設定値より高い(平衡状態が崩れる)場合は、生物巣の吸着汚泥(嫌気性細菌及び通性嫌気性細菌)を生態学的酸化還元(レドックス)反応で消滅させ、生物巣の吸着保有量を適切状態に制御した。
表19に、流入原水の水量・水質をおよび変性バサルト繊維担持体設置内容を示す。
なお、使用したバサルト繊維の設置本数は1m換算で450本相当であり、総繊維量は約40.5kgであった。
【0117】
【表19】
【0118】
なお、表19中、pH、BOD、SS、n−He、COD、T−NおよびT−Pは、それぞれ、以下に記載する意味である。
pH 水素イオン濃度指数
BOD 生物化学的酸素要求量
SS 浮遊物質量
n−He n−ヘキサン抽出物質量
COD 化学的酸素要求量
T−N 全窒素量
T−P 全リン量
【0119】
使用したバサルト繊維は13μmの極細繊維であった。バサルト繊維の成分中には、プラスの電荷を持つ成分とマイナスの電荷をもつ成分がありそれらの物質間で揺れる事で、静電気が発生し、電子が移動し帯電が発生、プラスに帯電した部位から順に負に帯電した嫌気性微生物を誘導し、高速的な吸着作用をもたらす。好ましい態様であるこの働きを任意的に保有した強磁性を示すマグネタイト(Fe3O4)・ヘマタイト(Fe2O3)を含むグリーンラスト懸濁液を使用して、バサルト繊維の表面に酸洗浄・中和・水洗浄・乾燥の加工を行い塗布等して担持体に装着し電場と静電気作用を活発化したものが変性バサルト繊維担持体である。また、必要な振動を発生させるために好ましく且つ省エネルギーである水流撹拌装置(水中ミキサー)をメイン動力として利用した。
生物処理剤Xは、実施例2と同様、特許第5238946号公報の実施例1の製造手順に従って製造したものである。
【0120】
汚泥の収支が平衡状態を迎えた後の処置については、ORP計と連動した生物処理剤(特許第5238946号)を使用した自動制御にて、汚泥の平衡状態を解消し、汚泥を削減できる。処理能力を維持に役立てる事を可能にでき、担体の特性である肥厚化した担体の交換の必要性が解消し、更には汚泥処理・処分が必要無く、経済性を兼ね備えた生物処理が可能である。