特許第6497764号(P6497764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6497764-ナトリウム排出を目的とした食品組成物 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497764
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】ナトリウム排出を目的とした食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20190401BHJP
   A61P 3/12 20060101ALI20190401BHJP
   A61K 31/734 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   A23L33/10
   A61P3/12
   A61K31/734
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-125691(P2018-125691)
(22)【出願日】2018年7月2日
(65)【公開番号】特開2019-13220(P2019-13220A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2017-130296(P2017-130296)
(32)【優先日】2017年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513327333
【氏名又は名称】トイメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】竹下 英徳
(72)【発明者】
【氏名】前田 涼子
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−130523(JP,A)
【文献】 特開昭59−034853(JP,A)
【文献】 特開2009−057343(JP,A)
【文献】 特表平11−510499(JP,A)
【文献】 フードリサーチ, 1996, Vol.111, pp.76-79
【文献】 日本家政学会誌, 1988, Vol.39, No.3, pp.187-195
【文献】 近田浩之, 日本栄養・食糧学会大会講演要旨集, 2008, Vol.62. p.188, 2F-14p
【文献】 繊維と工業, 2009, Vol.65, No.12, pp.444-448
【文献】 株式会社キミカ, アルギン酸カリウム, [online], 2017.06.13, [2018.08.16 検索], <URL:https://www.kimica.jp/products/KaAlgin/>
【文献】 株式会社キミカ, アルギン酸カルシウム, [online], 2017.05.31, [2018.08.16 検索], <URL:https://www.kimica.jp/products/CaAlgin/>
【文献】 FOOD STYLE21, 2007, Vol.11, No.8, pp.62,63
【文献】 朝倉富子, 公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団,平成22年度助成研究報告集 II 医学 食品科学編, 2012, pp.99-104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00−33/29
A61K 31/33−33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸アンモニウムを有効成分として含有し,さらにアルギン酸カルウシムを含むことを特徴とするナトリウム排出用食品組成物。
【請求項2】
アルギン酸アンモニウムの粘度が,20℃の1%(w/v)濃度において,20から900mPa・sである請求項1に記載のナトリウム排出用食品組成物。
【請求項3】
さらにアルギン酸アンモニウムの粘度が,20℃の1%(w/v)濃度において,100から400mPa・sである請求項2に記載のナトリウム排出用食品組成物。
【請求項4】
ナトリウム含量が,1重量%以下である請求項1から3のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物。
【請求項5】
金属成分含量(ナトリウムを除く)が,0.0001から5.0重量%である請求項1から4のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物。
【請求項6】
カプセル剤,散剤,顆粒剤,錠剤,液剤,ゼリー剤,及びグミ剤のいずれかの形態である,請求項1から5のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物。
【請求項7】
賦形剤,増粘剤・安定化剤,酸化防止剤,pH調整剤,乳化剤,甘味料,酸味料,調味料,着色料,香料,保存料から選択される1種又は2種以上の添加剤を含み,かつ,これらがナトリウムを含まない添加物から選択される請求項1から6のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物。
【請求項8】
さらに,前記添加剤が,カリウムを含まない添加物から選択される請求項7に記載のナトリウム排出用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ナトリウム排出を目的とした食品組成物に関する。さらに詳しく言うと本発明は,体内に摂取することにより,消化管内においてナトリウムを吸着し,体外への排泄を促進する食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析をはじめとして,腎機能に障害を持つ患者の多くは,非常に厳しい食事制限が課されている。特に食塩の過剰摂取は,健康に極めて悪い影響を及ぼすことから,基本的には無塩・減塩の食事となってしまう。結果として,患者の濃い味の食べ物に対する渇望は,健常者の想像を絶するものである。
このような事情から,体外への塩分排出を促進する組成物に関する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開99/033478号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には,λ−カラギーナンの金属塩を有効成分とするナトリウムイオン吸収阻害剤に関する発明が開示されており,好ましい金属塩としてカリウムをはじめとするアルカリ金属塩ないしアルカリ土類金属が例示されている。加えて,従来技術として,アルギン酸塩の吸着能が十分満足できるものでなかったことが開示されている。
【0005】
かかる先行技術は,カラギーナンにより消化管内においてナトリウムを吸着し,体外に排出しうる点において有用である。しかるに先行技術は,腎機能障害を持つ患者の場合には,適用が好ましくない点において課題を有するものである。
すなわち,腎機能障害を持つ患者の場合,腎臓からのカリウム排出が十分でないため,高カリウム血症を発症するおそれがある。そのため,腎機能障害を持つ患者は,カリウム制限が必要となるのが通常である。これよりカリウムを好適な金属として適用しうる先行技術は,腎機能障害を持つ患者の場合には,適用が好ましくない点において課題を有するものである。
【0006】
先行技術をはじめとして,ナトリウム排出を目的とした組成物として十分確立された技術は未だないのが現状である。これより発明者らは,従来の技術常識にとらわれることなく,エビデンスの明確なナトリウム排出用食品組成物の研究開発に着手したものである。
【0007】
上記事情を背景として本発明では,ナトリウム排出を目的とした食品組成物の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは,鋭意研究の結果,従来の技術常識に反し,アルギン酸塩が種々の素材と比較して排塩作用に優れることを明らかにし,アルギン酸塩を有効成分とするナトリウム排出用食品組成物に関する発明を完成させた。
発明者らは,さらに検討を重ね,アルギン酸について,カリウム上昇を抑制したアルギン酸塩を有効成分とするナトリウム排出用食品組成物に関する発明を完成させた。
【0009】
本発明は,一態様として,ナトリウム排出用食品組成物として提供される。
[a1] アルギン酸アンモニウムを有効成分として含有し,さらにアルギン酸カルウシムを含むことを特徴とするナトリウム排出用食品組成物。
[a2]アルギン酸アンモニウムの粘度が,20℃の1%(w/v)濃度において,20から900mPa・sである[a1]に記載のナトリウム排出用食品組成物。
[a3] さらにアルギン酸アンモニウムの粘度が,20℃の1%(w/v)濃度において,100から400mPa・sである[a2]に記載のナトリウム排出用食品組成物。
[a4] ナトリウム含量が,1重量%以下である[a1]から[a3]のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物。
[a5] 金属成分含量(ナトリウムを除く)が,0.0001から5.0重量%である[a1]から[a4]のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物。
[a6] カプセル剤,散剤,顆粒剤,錠剤,液剤,ゼリー剤,及びグミ剤のいずれかの形態である,[a1]から[a5]のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物。
[a7] 賦形剤,増粘剤・安定化剤,酸化防止剤,pH調整剤,乳化剤,甘味料,酸味料,調味料,着色料,香料,保存料から選択される1種又は2種以上の添加剤を含み,かつ,これらがナトリウムを含まない添加物から選択される[a1]から[a6]のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物。
[a8] さらに,カリウムを含まない添加物から選択される[a7]に記載のナトリウム排出用食品組成物。
[a9] [a1]から[a8]のいずれかに記載のナトリウム排出用食品組成物であって,腎機能障害の予防を目的に用いられる腎機能障害予防用食品組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明により,ナトリウム排出を目的とした食品組成物の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の食品組成物の試作例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のナトリウム排出を目的とした食品組成物について説明を行う。
【0017】
本発明のナトリウム排出を目的とした食品組成物は,アルギン酸塩(ナトリウム塩を除く)を含有することを特徴とする。すなわち,アルギン酸が,消化管内においてナトリウムを吸着し,そのまま体外へ排泄される役割を果たすものである。
【0018】
アルギン酸は,(C6H8O6)nで表される化合物であり,有効成分として用いる限り特に限定する必要はない。
すなわち,藻類などに含まれる天然由来のものを用いてもよいし,化学的に合成したものを用いてもかまわない。また,アルギン酸は,ナトリウム吸着という本発明の趣旨を損なわない限り,化学構造の一部を置換ないし修飾したものを用いても構わない。
【0019】
アルギン酸塩は,ナトリウム排出の役割を果たす限り特に限定する必要はなく,種々の分子量のものを用いることができる。
アルギン酸塩の粘度平均分子量として,典型的には,100から1,000万のものを用いることができ,より好ましくは1,000から900万,さらに好ましくは1万から900万,特に好ましくは10万から900万,最も好ましくは10万から800万のものを用いることができる。
【0020】
アルギン酸塩は,粘度の観点から種々のものを用いることができる。すなわち,アルギン酸塩そのものは同一の分子量を有するものでは通常ないことから,原料として用いる場合に粘度によりこれを特定するものである。
アルギン酸塩の粘度として,典型的には,20℃での1%(w/v)濃度における粘度が10から1000mPa・sのもの,又は20℃での10%(w/v)濃度における粘度が10から3000mPa・sのものを用いればよく,より好ましくは20℃での1%(w/v)濃度における粘度が20から900mPa・s,さらに好ましくは100から900mPa・s,特に好ましくは100から400mPa・s,最も好ましくは300から400mPa・sのものを用いることができる。
【0021】
アルギン酸塩としては,ナトリウム塩でない限り特に限定する必要はなく,種々の塩とすることができる。このような塩として,例えば,有機カチオン塩,カルシウム塩,マグネシウム塩,鉄塩,亜鉛塩などが挙げられる。
なお,本発明におけるアルギン酸塩はナトリウム塩を除外するものであるが,技術的な制限から,微量が混入することまでを排除する趣旨ではない。すなわち,アルギン酸塩は,アルギン酸ナトリウムを原料として,塩の置換反応により化学的に製造される場合があることから,この場合に微量に含まれるナトリウム塩までをも排除する趣旨ではない。
【0022】
アルギン酸塩として,有機カチオン塩を用いることが好ましい。これにより,有効成分からの金属塩の放出を抑制することが可能となり,腎機能に障害を持つ患者などにも安全に適用しうるという効果を有する。
有機カチオン塩としては,アルギン酸塩の形成が可能であり,かつ,安全性を担保しうる限り特に限定する必要はなく,種々の有機カチオンを用いることができる。
【0023】
アルギン酸有機カチオンの含量は,食品組成物としての形成が可能である限り特に限定する必要はなく,種々の重量比とすることができる。
このような重量比として,例えば,アルギン酸有機カチオンの含量が重量%の下限として,0.1%,1.0%,10.0%,20.0%,30.0%など,重量%の上限として1.0%,10.0%。20.0%,30.0%,40.0%,50.0%,60.0%,70.0%,80.0%,90.0%,99.9%などとすることができる。これらより,例えば,アルギン酸有機カチオンの含量を,0.1から10.0%,0.1から99.9%,10.0から99.9%などとすることができる。
【0024】
有機カチオン塩は,アンモニウム塩(アルギン酸アンモニウム)とすることが好ましい。
これにより,他のアルギン酸塩などと比較して,本発明の食品組成物のナトリウム排出能を,顕著に優れたものとできる効果を有する。加えてアルギン酸アンモニウムは,高すぎない適度な粘性を有することから,取扱性や成形性に優れるという効果を有する。
【0025】
アルギン酸アンモニウムを用いる場合,典型的には,20℃での1%(w/v)濃度における粘度が,20から900mPa・sのものを用いればよい。また,アルギン酸アンモニウムとして,より好ましくは20℃での1%(w/v)濃度における粘度が100から400mPa・s,さらに好ましくは300から400mPa・sのものを用いることできる。
これにより,アルギン酸アンモニウムの取扱性や成形性をさらに向上させることができ,本発明の剤形化をより容易にできる効果を有する。
【0026】
本発明においてアルギン酸有機カチオンに加えて,さらにアルギン酸無機カチオン(アルギン酸金属塩;ナトリウムを除く)を含有することができる。
これにより,粘度特性の異なるアルギン酸有機カチオンとアルギン酸無機カチオンを組み合わせ食品組成物に対応した粘度特性としつつ,ナトリウム吸着能を保持することが容易となり,本発明の食品組成物の取扱性や成形性を向上させる効果を有する。
アルギン酸有機カチオンとアルギン酸無機カチオンについては,食品組成物の態様により,種々の比率とすることができるが,アルギン酸有機カチオン塩に対するアルギン酸無機カチオンの重量比(アルギン酸無機カチオン重量/アルギン酸有機カチオン重量)を,典型的には,0.05から10,より好ましくは0.1から10,さらに好ましくは0.1から1.0とすることができる。
【0027】
用いるアルギン酸無機カチオンは,ナトリウム塩でない限り特に限定する必要はなく,種々の金属塩を用いることができるが,典型的には,カリウム塩,カルシウム塩,マグネシウム塩,鉄塩,亜鉛塩などから1種もしくは2種以上を選択することができる。
アルギン酸無機カチオンとして,カリウム塩を除くことが好ましい。これにより,本発明の食品組成物摂取後のカリウム放出を防ぐことができ,腎機能に障害を持つ患者などにも安全に適用しうるという効果を有する。
また,アルギン酸無機カチオンとして,多価カチオン塩とすることが好ましい。これにより,アルギン酸塩における金属イオンの含量を少ないままナトリウム排出保持能を維持することが可能となり,本発明の食品組成物摂取後の金属放出を低減することにより,腎機能に障害を持つ患者や高血圧が懸念される健常者などにも安全に適用しうるという効果を有する。
さらに,アルギン酸無機カチオンとして,カルシウム塩を用いることが好ましい。アルギン酸カルシウムは,粘性が特に低いことから,前述の有機カチオン塩と組み合わせることにより,食品組成物としての形成性を向上させ,ナトリウム吸着能を保持しつつ,最適な剤形化を図ることができるという効果を有する。
【0028】
本発明の食品組成物において,アルギン酸有機カチオン塩としてアルギン酸アンモニウムを選択し,かつ,これにアルギン酸カルシウムを含んだ組成とすることが好ましい。これにより,本発明の食品組成物のナトリウム吸着能を優れたものとしつつ,食品としての種々の態様に対応しやすい組成とすることができ,本発明の食品組成物の性能ならびにバリエーションを広げることができる効果を有する。
この場合,アルギン酸アンモニウムとアルギン酸カルシウムは,種々の重量比で構成することができるが,アルギン酸塩中のアルギン酸アンモニウムの重量比の下限として,10%,30%,50%,70%,90%など,上限として30%,50%,70%,90%,99%などとすることができる。これより,アルギン酸アンモニウムの重量比として,10から99.9%,30から99.9%,50から99.9%,70から99.9%などとすることができる。
【0029】
本発明の食品組成物については,消化管内への摂取が可能である限り特に限定する必要はなく種々の態様を採用することができる。このような態様として,固形食品,半固形食品,及び液体飲料などが挙げられ,例えば,カプセル剤(ハードカプセル及びソフトカプセルを含む),散剤,顆粒剤,錠剤(速崩錠及びチュアブル錠を含む),液剤(果汁飲料,緑茶,紅茶,ウーロン茶,麦茶,コーヒー,炭酸飲料,スポーツ飲料,乳飲料,乳酸菌飲料などの清涼飲料を含む),ゼリー剤,グミ剤などに加え,米飯;そば,うどん,はるさめ,中華麺,即席麺,カップ麺を含む各種の麺類;カレールー,シチュー,各種スープ類;アイスクリーム,アイスシャーベット,かき氷等の冷菓;飴,クッキー,キャンディー,ガム,チョコレート,錠菓,スナック菓子,ビスケット,ジャム,クリーム,その他の焼き菓子等の菓子類;かまぼこ,はんぺん,ハム,ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳,発酵乳等の乳製品;サラダ油,てんぷら油,マーガリン,マヨネーズ,ショートニング,ホイップクリーム,ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース,ドレッシング,味噌,醤油,たれ等の調味料;惣菜;ふりかけ;漬物などが挙げられる。
【0030】
本発明の食品組成物においては,アルギン酸塩に加え,種々の添加物を含むことができる。このような添加物として,例えば,賦形剤,増粘剤・安定化剤,酸化防止剤,pH調整剤,乳化剤,甘味料,酸味料,調味料,着色料,香料,保存料などが挙げられる。
【0031】
賦形剤としては,例えば,D−ソルビトール,マンニトール,キシリトール,プロピレングリコールなどの糖アルコール,ブドウ糖,白糖,乳糖,果糖などの糖類,結晶セルロース,リン酸水素カルシウム,コムギデンプン,コメデンプン,トウモロコシデンプン,バレイショデンプン,デキストリン,β−シクロデキストリン,軽質無水ケイ酸,酸化チタン,メタケイ酸アルミン酸マグネシウム,タルク,カオリン,オニオンパウダー,オリーブパウダー,オリーブ油,ゼラチン,カゼイン,ペクチンなどが挙げられる。
【0032】
増粘剤・安定化剤としては,例えば,ペクチン,デキストラン,グリセリン,多糖類(グァーガム,アラビアガム,キサンタンガム,ジェランガム,スクレロガム,タマリンドシードガム),でんぷん類(ヒドロキシプロピルデンプン,リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン),寒天,ゼラチン,メチルセルロースなどが挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては,例えば,L-アスコルビン酸類(L-アスコルビン酸,L-アスコルビン酸カルシウム,L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル,L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル),エリソルビン酸,ブチルヒドロキシアニソール,γ-オリザノール,カテキン,カンゾウ油性抽出物,クエルセチン,クエン酸,モノクエン酸グリセリル,トコトリエノール,トコフェロール類(d-α-トコフェロール,d-γ-トコフェロール,d-δ-トコフェロール),レシチン,フェルラ酸,メラロイカ精油,ヒマワリ種子抽出物,ブドウ種子抽出物,プロポリス抽出物,ヘゴ・イチョウ抽出物,ヤマモモ抽出物,ローズマリー抽出物などが挙げられる。
【0034】
pH調整剤としては,例えば,クエン酸,グルコン酸,コハク酸,リンゴ酸,リン酸,マレイン酸,酒石酸,乳酸,乳酸カルシウム,酢酸アンモニウム,メグルミン,グルコノ−δ−ラクトンなどを用いることができる。
【0035】
乳化剤としては,例えば,ステアリルトリエタノールアミン,ラウリル硫酸ナトリウム,ラウリルアミノプロピオン酸,レシチン,塩化ベンザルコニウム,塩化ベンゼトニウム,モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,カルボキシメチルセルロースナトリウム,メチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子;例えばシェラックロウ,ミツロウ,カルナバロウ,鯨ロウ,ラノリン,液状ラノリン,還元ラノリン,硬質ラノリン,環状ラノリン,ラノリンワックス,キャンデリラロウ,モクロウ,モンタンロウ,セラックロウ,ライスワックスなどワックス類,ショ糖脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル,プロピレングリコール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ステアロイル乳酸カルシウム,クエン酸カルシウム,リン酸カルシウム塩類,エンジュサポニン,ダイズサポニン,チャ種子サポニン,ビートサポニン,スフィンゴ脂質,トマト糖脂質,植物性ステロール,植物レシチン,酵素分解レシチン,卵黄レシチン,ユッカフォーム抽出物,オオムギ殻皮抽出物,キラヤ抽出物などが挙げられる。
【0036】
甘味料として,例えば,サッカリン類,糖質類,コーンシロップ,アスパルテーム,エリスリトール,D-ソルビトール,D-キシロース,D-リボース,L-アラビノース,L-ソルボース,L-フコース,L-ラムノース,ソーマチン,アセスルファムK,クルクリン,タウマチン,ステビア抽出物,カンゾウ抽出物,テンリョウチャ抽出物,ナイゼリアベリー抽出物などを用いることができる。
【0037】
酸味料として,例えば,アジピン酸,クエン酸,グルタコノデルタラクトン,グルコン酸,コハク酸,酒石酸,炭酸ガス,乳酸,酢酸,氷酢酸,フマル酸,リンゴ酸,リン酸,イタコン酸,α-ケトグルタル酸,フィチン酸などを用いることができる。
【0038】
調味料として,例えば,アミノ酸類,核酸類,有機酸類,無機塩類を用いることができる。
【0039】
着色料としては,例えば,β−アポ−8’−カロテナール,β-ガラクトシダーゼ,クロロフィリン,クロロフィル,鉄クロロフィリンナトリウム,イモカロテン,タール色素,アカネ色素,アナトー色素,アルカネット色素,ウコン色素,オレンジ色素,カカオ色素,カラメル類,クサギ色素,カロブ色素,クチナシ色素類,クーロー色素,オレンジ果汁,エルダーベリー果汁,クランベリー果汁,ストロベリー果汁,チェリー果汁,パイナップル果汁,ブドウ果汁,プラム果汁,ブルーベリー果汁,ラズベリー果汁,レモン果汁などを用いることができる。
【0040】
着香料としては,例えば,イソチオシアネート類,インドール類,エステル類,エーテル類,ケトン類,脂肪酸類,脂肪族高級アルコール類,脂肪族高級アルデヒド類,高級単価水素類,チオアルコール類,チオエーテル類,テルペン系炭化水素類,フェノールエーテル類,フェノール類,フルフラール類,芳香族アルコール類,芳香族アルデヒド類,ラクトン類などを用いることができる。
【0041】
保存料としては,例えば,安息香酸類,イマザリル,オルトフェニルフェノール,ジフェニル,ソルビン酸,チアベンダゾール,プロピオン酸,ウド抽出物,エゴノキ抽出物,カワラヨモギ抽出物,ツヤプリシン抽出物,ペクチン分解物,ホオノキ抽出物,レンギョウ抽出物などが挙げられる。
【0042】
本発明において,これら賦形剤,増粘剤・安定化剤,酸化防止剤,pH調整剤,乳化剤,甘味料,酸味料,調味料,着色料,香料,保存料などの添加物は,アルギン酸塩の性能を損なわないよう,ナトリウムを用いない添加物を選択することが好ましい。さらには,ナトリウムと合わせてカリウムをも用いない添加物を選択することが好ましい。
本発明において,「ナトリウムを含まない添加物」ないし「カリウムを含まない添加物」とは,これらの金属イオンを構成分子ないし構成成分として含まない添加物として定義される。また,「ナトリウムを含まない添加物を選択」ないし「カリウムを含まない添加物を選択」とは,本発明において,これらの金属イオンを構成分子ないし構成成分として含む添加物を除外するものとして定義されるが,完全に排除する趣旨ではない。
すなわち,例えば,添加物の目的以外の十分な効能・効果を奏することなく,権利の迂回を目的としてこれらの金属イオンを構成分子として含む添加物を選択し,食品組成物としてわずかながら含むことは,本発明の趣旨に沿った添加物の使用として権利の及ぶものである。このような迂回的な使用の目安として,例えば,食品組成物中のナトリウムないしカリウムの金属イオンの重量比率が典型的には1%以下,もしくは0.5%以下,さらには0.3%以下であり,アルギン酸塩に対するナトリウムないしカリウムの金属イオン重量比率が典型的には10%以下,もしくは5%以下,または3%以下,1%以下などである。
【0043】
本発明の食品組成物において,金属成分含量(ナトリウムを除く)を少なく抑えることが好ましい。これにより,有効成分によるナトリウム排出と食品組成物による金属塩摂取の最小化を図ることが可能となり,腎機能に障害を持つ患者や高血圧が懸念される健常者などにも安全に適用しうるとともに,本発明の食品組成物の効果を最大化することができる効果を有する。
金属成分含量(ナトリウムを除く)については,典型的には,その重量比の下限として0%,0.0001%,0.001%,0.01%などであり,上限として0.1%,1.0%,3.0%,5.0%などから選択することができ,これにより,食品組成物全体における金属塩の重量比率として,例えば,0.0001%から5.0%,0.001%から5.0%,0.01%から5.0%などとすることができる。
【0044】
本発明の食品組成物について,摂取する時間は特に限定されるものではないが,ナトリウムの排出効果をより顕著に奏するという観点から,食前に摂取することが好ましい。
【0045】
また,本発明の食品組成物については,1回あたりの摂取量は得に限定されるものではないが,ナトリウムの排出効果をより顕著に奏するという観点から,アルギン酸塩(ナトリウム塩を除く)として,1回あたり10〜5000mgが好ましく,50〜3000mgがより好ましく,100〜1000mgがさらに好ましい。
【0046】
本発明の食品組成物は,その用途としてナトリウム排出用として用いられるが,さらには,腎機能障害の予防を目的に腎機能障害予防用食品組成物としても用いることができる。
本発明における腎機能障害予防用とは,狭義には,腎機能に障害を既に有している者を対象として,透析患者,腎不全患者,糖尿病患者などに対して用いられるものとして定義され,広義には,腎機能に障害を有していないものの,これが懸念される者として,高血圧,肥満体質などの健常人に対して用いられるものとして定義される。
【0047】
本発明の食品組成物は,ナトリウム排出用ないし腎機能障害予防用など,これらの用途を備えた機能性表示食品,特定保健食品等の保健機能食品,特別用途食品などとして用いることができる。
【実施例】
【0048】
ここでは,実施例を用いて,本発明のナトリウム排出用食品組成物についてさらに詳述するが,本発明の内容を実施例に限定して解釈すべきでないことはいうまでもない。
【0049】
<<実験1,各サンプルを用いた塩化ナトリウム吸着実験>>
各サンプルについて,スクリーニング的に,塩化ナトリウムに対する吸着能を調べることを目的に検討を行った。
【0050】
<実験方法>
1.遠沈管に1%塩化ナトリウム溶液を分注した。この遠沈管1本に対し,各サンプルを加えて混和し,10分間以上,室温にて静置した。
2.コンパクト塩分計(HORIBA Scientific,型式B-721)にて,遠沈管内溶液のナトリウム濃度の測定を行った。
3.また,コントロールとして,サンプルを加えず同様の操作で測定を行った。このコントロールにおけるナトリウム濃度測定値を100%として,各サンプルにおける吸着能の評価を行った。すなわち,値が小さければ小さいほど,水溶液中に遊離するナトリウムの濃度が低く,サンプルへのナトリウム吸着能が大きいことを示している。
4.なお,コントロールを含むすべてのサンプルについて,n=3で検討を行った。
【0051】
1.結果を表1に示す。
(1) 検討を行ったサンプルのうち,複数のサンプルで100%に満たない値を示した。
(2) 特に,実験例1(PAL),実験例4(GEG),実験例16(CAL),実験例17(AAL)は,90%に満たない値であり,優れた吸着能を示した。
(3) この中でも,実験例17のアルギン酸アンモニウムは,特に優れた吸着能を示した。なお,このアルギン酸アンモニウムについては,推定分子量が10万から900万,20℃における1%(w/v)濃度溶液の粘度が300から400mPa・sのものを用いた。
2.これらの結果より,以降の検討では,実験例1,実験例4,実験例16,実験例17について,詳細に検討を行うこととした。
【0052】
【表1】
【0053】
<<実験2,サンプル濃度の検討>>
実験1の検討より,吸着能に優れると思われるサンプルが見い出されたことから,これらについて,濃度をふってさらに検討を行った。
【0054】
<実験方法>
1.実験1と同様の手法により行った。
2.なお,遠沈管に添加するサンプルについては,1/2倍,1倍,2倍,4倍量とし,この際,溶液粘度が高すぎるものについては除外した。
【0055】
<実験結果>
1.結果を,表2に示す。
2.すべてのサンプルで,サンプル濃度依存的に,遊離塩化ナトリウム濃度は減少していた。
3.これより,すべてのサンプルにおいて,濃度依存的にナトリウムを吸着しているものと考えられた。
4.この中でも,アルギン酸アンモニウムは,特に優れた吸着能を示した。加えて,PALやGEGにおいては高濃度になると溶液粘度が高くなりすぎる一方,アルギン酸アンモニウムやアルギン酸カルシウムは溶液粘度の観点からそのような現象はおこらず,取扱性に優れることが分かった。
【0056】
【表2】
【0057】
<<実験3.pHによる測定値の比較>>
各サンプルについて,消化管におけるナトリウム吸着を想定し,pHをふって検討を行った。
【0058】
<実験方法>
1.実験1と同様の手法で行い,サンプルについては,1倍量にて検討を行った。
2.なお,1%塩化ナトリウム溶液については,pH未調整のもの(pH6.8)に加え,胃内を想定するとともに測定機器の測定限界であるpH3.0のものを用いて検討を行った。pHの調整については,1N塩酸を用いた。
3.また,測定については,ナトリウム濃度に加え,カリウム濃度を,コンパクトカリウム計(HORIBA Scientific, 型式B731)にて測定を行った。
【0059】
<実験結果>
1.ナトリウム濃度の測定結果を表3の左に示す。
(1) いずれのサンプルにおいても,pH3.0における検討において,遊離ナトリウム濃度が高い値を示した。
(2) この中で,AALについてはほとんど変わらない値を示した。
2.カリウム濃度の測定結果を表3の右に示す。
(1) PAL,GEGについてカリウム濃度の大きな増加がみられた。これらについては,サンプルそのものがカリウム塩として構成されていることから,ナトリウムと置換することにより,カリウムが遊離したものと考えられた。
(2) AALについて,カリウム濃度の若干の増加がみられた。これについては,サンプル中に不純物としてカリウムが含まれていることが要因と思われた。
(3) CALでは,カリウム濃度の増加は見られなかった。
3.これらの結果から,アルギン酸アンモニウムは,酸性条件においても優れたナトリウム吸着能を保持していることが分かった。加えて,アルギン酸アンモニウムならびにアルギン酸カルシウムでは,他のサンプルと比較して,遊離カリウム濃度が低いことが分かった。
【0060】
【表3】
【0061】
<<実験4.塩分吸着能の検討>>
各サンプルについて,インビボにおいての効果を確認すべく,検討を行った。
【0062】
<実験方法>
1.マウスに,各サンプル,塩化ナトリウムの順で,経口投与を行った。
2.上記サンプル等の投与前,投与後1時間,2時間において,それぞれマウス眼窩静脈から採血を行った。
3.採血した血液について遠心分離を行い,血漿成分のナトリウム濃度ならびにカリウム濃度の測定を行った。
【0063】
<実験結果>
1.サンプル間で比較したナトリウム濃度ならびに抑制率の結果を表4に示す。なお,抑制率については,各時間点のコントロールにおけるナトリウム濃度増加分を100%としてこれをどれだけ抑制したの観点から,下記式(数1)に従い,算出した。
【0064】
【数1】
【0065】
(1) コントロールにおいて,投与後1時間において,血漿中ナトリウム濃度が0.90%まであがり,投与後2時間においては,0.78%とやや下がった値であったが,投与前よりも高い値に落ち着いていた。
(2) PALでは,投与後1時間において血漿中ナトリウム濃度が0.87%,投与後2時間で0.74%と,コントロールと比較して低い値であった。また,抑制率では,投与後1時間において11.1%,投与後2時間において26.67%であった。
(3) CALでは,投与後1時間において血漿中ナトリウム濃度が0.79%,投与後2時間で0.67%と,コントロールと比較して大きく低下していた。また,抑制率では,投与後1時間において40.74%,投与後2時間において73.33%と大きな値を示した。
(4) AALでは,投与後1時間において血漿中ナトリウム濃度が0.77%,投与後2時間で0.68%と,コントロールと比較して大きく低下していた。また,抑制率では,投与後1時間において48.15%,投与後2時間において66.67%と大きな値を示した。
2.これらの結果から,いずれのサンプルにおいてもインビボにおける血漿中ナトリウム濃度の上昇抑制効果が確認された。その中においても,CALならびにAALでは,極めて優れたナトリウムの排出効果が確認された。また,AALは,CALの半分の投与量でCALと同等の効果を示したことから,血漿中ナトリウム濃度の上昇抑制効果に最も優れることが確認された。
【0066】
【表4】
【0067】
3.カリウム濃度測定結果を表5に示す。
(1) コントロールにおいて,投与後1時間において,血漿中ナトリウム濃度が213ppmまであがり,投与後2時間においては,195ppmとやや下がった値であったが,投与前よりも高い値に落ち着いていた。
(2) PALでは,投与後1時間で200ppm,投与後2時間で270ppmと経時的に増加していった。これは,PALのカリウムがナトリウムと置換することにより放出され,消化管より吸収された影響と考えられる。
(3) CALでは,投与後1時間で183ppm,投与後2時間で173ppmと,コントロールと比較して低下していた。
(4) AALでは,投与後1時間で170ppm,投与後2時間で198ppmと,コントロールと比較して低下していた。
4.これらの結果から,PALでは血漿中カリウム濃度上昇の影響が大きくみられる一方,CALならびにAALでは,血漿中におけるカリウム濃度増加の影響はほとんどないといえる。
【0068】
【表5】
【0069】
5.アルギン酸アンモニウムにおいて,投与濃度を振って検討した結果を表5に示す。
(1) いずれの投与量においても,投与後15分から,コントロールと比較して低い血漿中ナトリウム濃度を示し,その傾向は,投与後1時間,投与後2時間においても確認された。
(2) また,投与量が増えるほど血漿中ナトリウム濃度が低い傾向にあり,濃度依存的に血漿中ナトリウム濃度を抑制することが分かった。
【0070】
【表6】
【0071】
6.アルギン酸カルシウムにおいて,投与濃度を振って検討した結果を表6に示す。本検討においてはコントロールの検討を行っていないが,投与量が増えるほど血漿中ナトリウム濃度が低い傾向にあり,濃度依存的に血漿中ナトリウム濃度を抑制すると考えられた。
【0072】
【表7】
【0073】
<<実験5.試作例を用いたインビトロにおける検討>>
これまでの結果から,アルギン酸アンモニウムならびにアルギン酸カルシウムを有効成分とした試作例を作製し,その効果を調べた。
【0074】
<実験方法>
検討を行った各試作例について,実験3の方法に準じて,検討を行った。
【0075】
1.アルギン酸アンモニウム,アルギン酸カルシウム,オニオンパウダー(賦形剤)を有効成分とした試作例を用いて検討を行った結果を表8に示す。なお,各試作例について,有効成分濃度を1倍量として検討を行った。
2.全ての試作例において,遊離塩化ナトリウム濃度ならびに遊離カリウム濃度は低下していた。
3.これらのうち,溶液粘度を考慮して,試作例2,試作例5,試作例9の成分組成をより有用性の高い組成と判断し,以降の検討を行った。
【0076】
【表8】
【0077】
4.試作例2,試作例5,試作例9の成分組成に準じた試作例について,成分濃度をふって検討を行った結果を表7に示す。
5.全ての試作例について,遊離ナトリウム濃度は低下していた。一方,遊離カリウム濃度については,試作例16ならびに試作例19を除き,低下していた。
6.これらのうち,溶液粘度を考慮すると,試作例14,試作例15,試作例17,試作例20,試作例21が,より優れた効果を発揮するものと考えられた。
【0078】
【表9】
【0079】
7.賦形剤として,オリーブパウダーを用いて検討を行った結果を表10に示す。なお,各試作例について,有効成分濃度を1倍量として検討を行った。
8.全ての試作例で,遊離ナトリウム濃度は低下していた。
9.一方,遊離カリウム濃度は,試作例25を除き,増加していた。
(1) 試作例23から試作例25については,試作例15,試作例18,試作例21と同様の検討であり,異なるのは,賦形剤成分のみである。
(2) 試作例23等については,いずれも試作例15等と比較して,遊離カリウム濃度が高かったことから,オリーブパウダー由来のカリウムであるものと思われた。
【0080】
【表10】
【0081】
<<実験6.試作例を用いたインビボにおける検討>>
これまでの結果から,試作例2,試作例5,試作例9が排塩剤としてより有用と判断し,これらの組成成分を持った試作例を用いて,インビボにおける検討を行った。
【0082】
<実験方法>
実験4に準じて,検討を行った。
【0083】
<実験結果>
1.ナトリウム濃度測定の結果を表11に示す。
(1) コントロールにおいて,投与後1時間において,血漿中ナトリウム濃度が0.86%まであがり,投与後2時間においては,0.72%とやや下がった値であったが,投与前よりも高い値に落ち着いていた。
(2) 試作例26では,投与後1時間において血漿中ナトリウム濃度が0.81%,投与後2時間で0.74%と,コントロールと比較してやや低い値であった。
(3) 試作例27では,投与後1時間において血漿中ナトリウム濃度が0.76%,投与後2時間で0.67%と,コントロールと比較して低下していた。
(4) 試作例28では,投与後1時間において血漿中ナトリウム濃度が0.78%,投与後2時間で0.67%と,コントロールと比較して低下していた。
【0084】
【表11】
【0085】
3.カリウム濃度測定結果を表12に示す。
(1) コントロールにおいて,投与後1時間において,血漿中ナトリウム濃度が230ppmまであがり,投与後2時間においては,180ppmとやや下がった値であったが,投与前よりも高い値に落ち着いていた。
(2) 試作例26では,投与後1時間で165ppm,投与後2時間で240ppmと経時的に増加していった。
(3) 試作例27では,投与後1時間で200ppm,投与後2時間で200ppmと,コントロールと比較すると,より低い傾向であった。
(4) 試作例28では,投与後1時間で190ppm,投与後2時間で210ppmと,経時的に増加していた。
【0086】
【表12】
【0087】
実施例より本発明のナトリウム排出用食品組成物は,アルギン酸塩(ナトリウム塩を除く)を有効成分とする排塩組成物であり,特に好ましい構成として,アルギン酸アンモニウム塩を20〜70%,アルギン酸カルシウム塩を20〜70%の重量比率で含むとともに,賦形剤として野菜パウダー又はハーブパウダーを用いる構成とすることが考えられる。これにより,優れたナトリウム吸着能を発揮するとともに,血中カリウム濃度の上昇を防ぐことが可能となると考えられる。
【0088】
<<実験7.飲料を用いた検討>>
アルギン酸アンモニウムとアルギン酸カルシウムを用いた試作例を飲料に用いて,どの程度の塩分濃度抑制がみられるかを調べるため,検討を行った。
【0089】
<実験方法>
1.実験1と同様の手法により行った。
2.なお,用いる試作例については,飲料中における最終濃度を50mg/mLとした(原料飲料中のサンプル含有比率としては,およそ5%程度)。
【0090】
<実験結果>
1.結果を表13ならびに表14に示す。表中,NCはネガティブコントロールとして飲料原液を,PCはポジティブコントロールとして飲料原液に塩化ナトリウムを1%(w/v)添加したものを示す。また,抑制率については,NCと比較した場合のPCにおけるナトリウム濃度増加分を100%として,これをどれだけ抑制したの観点から,下記式(数2)に従い,算出した。
【0091】
【数2】
【0092】
(1) 全ての検討において,試作例の添加により塩分濃度が低下していた。
(2) また,一部例外はあるものの,検討を行ったほとんどにおいても,アルギン酸アンモニウムの比率が増加するにつれ,塩分濃度が低下する傾向であった。
(3) 抑制率を見てみると,全ての飲料で,少なくとも30%を越える抑制率を示すサンプルが確認された。また,No3,6,9,12,13,15においては抑制率が40%を越え優れた抑制効果を示すサンプルが確認された。さらにNo1,12においては抑制率が50%以上と,顕著な抑制効果を示すサンプルが確認された。
【0093】
【表13】
【表14】
【0094】
2.カリウム濃度の測定結果を表15に示す。
(1) もともとカリウム含有量が極めて低い飲料(No9,10,11,14)については,サンプルの添加により,カリウム濃度がわずかではあるが増加ないしはほぼ同じ濃度を維持していた。
(2) 一方,カリウム含有量が比較的高いと思われる飲料については,サンプルの添加により,カリウム濃度が減少していた。すなわち,これらの飲料については,ナトリウムの抑制のみならず,カリウムについても抑制効果があることが分かった。
【0095】
【表15】
【0096】
3.一部の飲料において,塩化ナトリウムとサンプル(被験物質)の添加の順番を変えて検討した結果を表16,表17に示す。いずれの飲料においても,添加の順番により,塩分濃度ならびにカリウム濃度の結果に変化はなかった。
【0097】
【表16】
【表17】


図1