特許第6497768号(P6497768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497768
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】紙タオル束包装体
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/20 20060101AFI20190401BHJP
   A47K 10/42 20060101ALI20190401BHJP
   B65D 75/58 20060101ALI20190401BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   A47K10/20 Z
   A47K10/42 Z
   B65D75/58
   B65D83/08 B
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-202448(P2014-202448)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-67757(P2016-67757A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】冨田 亜沙美
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−051613(JP,A)
【文献】 特開2004−155445(JP,A)
【文献】 米国特許第04863064(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00−10/16
B65D 67/00−85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙タオルが折り畳まれ積層されてなる紙タオルの束が、上面に裂開口形成用のミシン目線が形成された軟質の包装フィルムにより包装され、前記ミシン目線を裂開して形成される裂開口から一枚ずつ紙タオルを順次取り出せるようにした紙タオル束包装体であって、
前記包装フィルムの上面部分の内側面に、前記ミシン目線に並行する縁を有する二枚の内フィルムが接着され、それらの内フィルムの縁が前記ミシン目線を跨いで互い違いに位置されて、その縁部が重なり合わされているとともに、それらの縁部が互いに自由とされ前記裂開口からの紙タオルの取り出しにともなってその上下方向の位置が入れ替わり可能とされている、ことを特徴とする紙タオル束包装体。
【請求項2】
前記包装フィルム及び内フィルムの厚さが20〜60μmである、請求項1記載の紙タオル束包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙タオルの束を包装フィルムで包装した紙タオル束包装体に関する。特に、複数枚の紙タオルを折り畳み積層してなるポップアップ式の紙タオルの束を軟質の包装フィルムにより包装した紙タオル束包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパータオルやキッチンタオルなどの紙タオルは、図10に示すように、複数枚を折り畳み重ねてなる所謂ポップアップ式の紙タオルの束120を、軟質の包装フィルム110によって包装して製品化されている。
【0003】
この紙タオル束包装体101は、包装フィルム110の上面部分にミシン目線等が設けられており、このミシン目線を裂開してスリット状の裂開口130を形成し、その裂開口130を広げて紙タオルの束120ごと包装フィルム110から取り出してディスペンサー等にセットして使用する態様のほか、ディスペンサーを用いずに包装フィルム110を外装として、その裂開口130から紙タオル102を一枚ずつポップアップして順次取り出して使用できるようになっている。
【0004】
そして、この後者の使用態様をとる場合には、裂開口130から露出する紙タオル一枚を引き出した際に、その引き出しにともなって包装フィルム110が軟質であるために、その上面部分が引き出される紙タオルとともに上方に持ち上がるように変形する。従来の紙タオル束包装体101は、使用初期の紙タオルの束120を構成する紙タオル102の枚数が多い際には、紙タオルの束120の上面と包装フィルム110の上面部分との距離が近く、また包装フィルム110と紙タオルの束120との間の余裕も少ないため、紙タオル102を引き出した際に包装フィルム110の上面部分が持ち上げられても、その変形具合が小さくまた変形の戻りも誘発され、紙タオルをポップアップ式に引き出すことができる。
【0005】
しかし、紙タオルの束120を構成する紙タオル102の枚数が少なくなった際には、紙タオル102を引き出した際に包装フィルム110の上面部分が持ち上げられると、軟質の包装フィルムの上部が束による形状保持性を失っており、その裂開口130が広く開口して戻らず、本来裂開口の縁によって保持されて、当該裂開口130から露出すべき紙タオルの一部が内部に落ち込んでしまうなど、一枚ずつポップアップして取り出すことが困難となることがあった。
【0006】
他方で、紙タオルは、手洗い後の手拭きなどに用いられるため、裂開口130から露出する紙タオルの一部を摘まんで引き上げる操作が、濡れた手で行われることがある。従来の紙タオル束包装体101では、その濡れた手で紙タオルを摘まんで引き上げる際に、手から滴り落ちた水分が裂開口130から内部に入り、束を濡らしてしまうおそれがあった。また、裂開口130から汚れ、埃等が入り込んで束を汚染する可能性があり衛生面で改善すべきところがあった。特に、これらの裂開口130からの水分等の侵入は、上記紙タオルの束120を構成する紙タオル102の枚数が少なくなり、裂開口130が大きく開いた状態では顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−150870号公報
【特許文献2】特開平11−278561号公報
【特許文献3】特許第4673395号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、内包される束を構成する紙タオルの枚数が少なくなっても、紙タオルが包装フィルム内に落ち込まず、使用開始から最後まで良好にポップアップして取り出すことができ、しかも包装フィルム内への水分等が侵入しがたい紙タオル束包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
【0010】
〔請求項1記載の発明〕
複数の紙タオルが折り畳まれ積層されてなる紙タオルの束が、上面に裂開口形成用のミシン目線が形成された軟質の包装フィルムにより包装され、前記ミシン目線を裂開して形成される裂開口から一枚ずつ紙タオルを順次取り出せるようにした紙タオル束包装体であって、
前記包装フィルムの上面部分の内側面に、前記ミシン目線に並行する縁を有する二枚の内フィルムが接着され、それらの内フィルムの縁が前記ミシン目線を跨いで互い違いに位置されて、その縁部が重なり合わされているとともに、それらの縁部が互いに自由とされ前記裂開口からの紙タオルの取り出しにともなってその上下方向の位置が入れ替わり可能とされている、ことを特徴とする紙タオル束包装体。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
前記包装フィルム及び内フィルムの厚さが20〜60μmである、請求項1記載の紙タオル束包装体。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によれば、内包される紙タオルの束を構成する紙タオルの枚数が少なくなっても、紙タオルが包装フィルム内に落ち込まず、使用開始から最後まで良好にポップアップして取り出すことができ、しかも包装フィルム内への水分等が侵入しがたい紙タオル束包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る紙タオル束包装体の斜視図である。
図2図1のA−A断面の概略図であり、本発明に係る紙タオル束包装体の断面図である。
図3】本発明に係る紙タオル束包装体の上面図である。
図4】本発明に係る紙タオル束包装体の未使用状態の上部の断面図である。
図5】本発明に係る紙タオル束包装体の紙タオル引き出し時の第一の状態を示す上部の断面図である。
図6】本発明に係る紙タオル束包装体の紙タオル引き出し時の第一の状態を示す斜視図である。
図7】本発明に係る紙タオル束包装体の紙タオル引き出し時の第二の状態を示す上部の断面図である。
図8】本発明に係る紙タオル束包装体の紙タオル引き出し時の第三の状態を示す上部の断面図である。
図9】本発明に係る紙タオル束包装体の紙タオル引き出し時の第三の状態を示す斜視図である。
図10】従来の紙タオル束包装体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次いで、本発明の実施の形態を図1〜9を参照しながら以下に詳述する。
【0015】
本実施形態に係る紙タオル束包装体1は、複数の紙タオル2を折り畳み積層してなる紙タオルの束20を、上面部分11にミシン目線3が形成された軟質の包装フィルム10により包装されたものであり、そのミシン目線3を裂開して形成される裂開口30から、一枚ずつ紙タオル2を順次取り出すようにして使用される。
【0016】
紙タオル2の束20は、方形の紙タオル2が二つ折りされ、その折り返し片の縁が上下に隣接する紙タオルの折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層された、所謂ポップアップ式とも称されるものであり、その外形は、最上位の紙タオルの折り返し片が位置する上面、最下位の紙タオルの折り返し片が位置する底面、各紙タオルの折り返し縁が並ぶ長側面、紙タオルの縁が並ぶ短側面とを有する、略直六面体をなしている。この構造の紙タオルの束20は、最上位又は最下位に位置する一枚の紙タオルの折り返し片を引っ張ると、その直下で隣接する次の一枚の折り返し片が、摩擦等により引きずられて引っ張られる。この紙タオル2の束20は、公知のインターフォルダによって製造することができる。なお、紙タオルの束20の大きさは、この種の束の一般的な大きさであり、上面及び底面の形状が、60〜130mm×200〜300mm、高さが30〜110mm程度である。
【0017】
紙タオル2は、特に限定されず1プライ、または2プライ以上の複数プライのものとすることができる。紙タオル2には、適宜のエンボスが施されていてもよい。特に、本発明の効果が顕著となる紙タオルは、JIS P 8124(1998)に基づく1プライ当たりの米坪が10〜70g/m2、とする。また、紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK H型」(尾崎製作所製)を用いて測定し、150〜500μmとする。乾燥引張紙力はJIS P 8113に基づき、乾燥引張紙力(縦)が800〜3000cN、乾燥引張紙力(横)が400〜2000cNである。湿潤引張紙力はJIS P 8135に基づき、湿潤引張紙力(縦)が200〜1500cN、湿潤引張紙力(横)100〜1000cNであり、伸び率(引張破断伸)が10〜40%のものである。なお、各引張紙力及び伸び率における試料は、25mm幅での測定値である。
【0018】
紙タオル2の束20の包装フィルム10による包装形態は、紙タオルの束20の短側面側に封止縁10Eを有するようにして、筒型フィルムの開口二方を閉じた筒型包装、束の短側面側及び底面側に封止縁を有するようにした、ピロー包装とすることができる。また、マチの有無は必ずしも限定されないが、紙タオルの束は高さを有する直六面体形状であるため、その形状に近い内方領域が形成される包装形態が好ましく、特に、長側面側にマチを有するガセット包装であるのが望ましい。ガセット包装は、紙タオル束の包装によく見られる包装形態であり、特に本発明の効果が顕著に発揮される。図示の形態では、その好適な、筒型フィルムの開口二方を閉じた筒型包装であり、特にマチ付のガセット包装となっている。
【0019】
包装フィルム10の材質は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン・酢酸ビニル重合体(EVA)などの公知の軟質のフィルムを用いることができる。複数フィルム素材が積層された積層フィルムであってもよい。中でも、柔軟で開口封止時の熱融着性にも優れるなど包装性や取扱い性に優れ、しかも安価であることから、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートが特に望ましい。
【0020】
包装フィルムの厚みは、20〜60μmとするのが望ましい。20μm未満であると、薄葉紙を保持するための強度が不十分であり、また熱融着により融着部が裂ける等の問題が生じる。60μmを超えると、熱融着等の加工性が悪くなり、生産性が大幅に低下するため、好ましくない。
【0021】
他方、ミシン目線3は、内方される紙タオルの束20の上面に対面して位置する包装フィルム10の上面部分11にスリット状の裂開口を形成するためのものであり、上面部分11の短手方向の中央部で、紙タオル包装体1の長手方向に延在するように直線状に形成されている。ミシン目線3は、一重ミシン目線のほか、二重ミシン目線、ジッパーミシン目線等のミシン目線により形成することができる。ミシン目線3の形成方法は、公知の技術によって形成することができ、また、カットタイ比等は、包装フィルムの材質、厚さ等を考慮して裂開可能な範囲を適宜に設定すればよい。
【0022】
ミシン目線3の長さは、紙タオルの束20の長手方向長さに対して100〜120%とするのが望ましい。また、その両側部が短側面側に至るまで延在していてもよい。100%以上とすることで、ミシン目線3を裂開して形成されるスリット状の裂開口30を介して紙タオルの束20から紙タオル2が引き出される際に、特に紙タオルの束20の長手方向の両端縁部において紙タオル2が裂開口30の両端部に引っ掛からずにスムーズに引き出せるようになる。また、紙タオル束包装体1を、裂開口30から一枚ずつ引き出して使用する態様ではなく、紙タオルの束20をディスペンサーにセットする使用態様とする際に、裂開口30をさらに広げてより広い開口を形成して内部の紙タオルの束20を取り出すことがしやすくなり、紙タオル束包装体1の付加価値性が高まる。
【0023】
他方、本実施形態に係る紙タオル束包装体1は、特徴的に包装フィルム10の上面部分11の内側面に、ミシン目線3に並行する縁41a,41bを有する二枚の内フィルム4A,4Bが接着されている。また、各内フィルム4A,4Bは、そのミシン目線3に並行する縁41a,41bが、ミシン目線3を跨いで互い違いに位置されており、それらの縁部41A、41Bは重なり合わされている。したがって、ミシン目線3は、その縁部41A、41Bに重なり部分上に位置している。なお、いずれの内フィルム4A、4Bが上面側又は底面側に位置するから特に限定されない。さらに、内フィルム4A,4Bの前記各縁部41A、41B同士は、接着等がされておらず互いに自由な状態となっている。したがって、本実施形態に係る紙タオル束包装体1では、紙タオルの束20から引き出される紙タオル2が、内フィルム4A、4Bの前記縁41a,41bの間を通って裂開口30から引き出される。
【0024】
なお、内フィルム4A、4Bにおけるミシン目線3と並行する縁41a、41bとは、その縁41a、41bがミシン目線3の延在方向と同方向に延在し、ミシン目線3に沿うように位置・形成されていることを意味する。図示の形態は、ミシン目線3と平行な直線状の縁41a、41bでありこの形態が好ましいが、そのほか、縁41a、41bがジグザグや波型に形成されていても、その縁全体として延存方向がミシン目線に沿って実質的に同方向となっていればよい。また、全体として短手方向中央部が膨出或は凹むようにやや湾曲するような縁であってもよい。
【0025】
内フィルム4A、4Bの材質は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン・酢酸ビニル重合体(EVA)などの公知の軟質のフィルムを用いることができる。複数フィルム素材が積層された積層フィルムであってもよい。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートが、安価でありやや包装フィルムよりやや剛性が高いことから望ましい。なお、包装フィルム1と内フィルム4A、4Bとは同素材である必要はない。
【0026】
内フィルム4A、4Bの厚みは、包装フィルム1と同様に、20〜60μmとするのが望ましい。但し、包装フィルムと同じ厚みである必要はない。20μm未満であると、薄葉紙を保持するための強度が不十分であり、また熱融着により融着部が裂ける等の問題が生じる。60μmを超えると、熱融着等の加工性が悪くなり、生産性が大幅に低下するため、好ましくない。
【0027】
内フィルム4A、4Bの大きさは、紙タオル束包装体の大きさ、ミシン目線の長さ、フィルムの素材等によって適宜にその大きさを設計することができる。上記一般的な大きさの紙タオルの束20の包装体であれば、短手方向長さL1が30〜70mm、また、長手方向の長さL2が、少なくとも100mm以上であるのが望ましく、上面部分11の長手方向の長さと同一以下とするのが特に望ましい。特に長手方向の長さが上記範囲であると、本発明の効果が良好に発揮される。
【0028】
他方、各フィルム4A、4Bの縁41a、41bの位置は、ミシン目線3から等距離にあるのが望ましく、また、縁部41A、41Bの重なり幅L3は、20〜40mmとするのが望ましい。紙タオル1を順次引き出しやすく、また、上記重なり幅とすることで、紙タオルの包装フィルム内への落ち込み防止の効果が効果的に発揮される。
【0029】
包装フィルム1と内フィルム4A、4Bとの接着は、各フィルムの素材の接着性等を考慮して、接着剤による接着、熱融着、超音波融着等のフィルム同士の接着技術から適宜選択して行なうことができる。包装フィルム1と内フィルム4A、4Bとの接着は、前記重なり合う縁部41A,41Bから離間した位置であればよい。好ましい接着態様は、接着部分42を前記位置においてミシン目線3に沿って形成し、内フィルム4A、4Bがその長手方向に沿って包装フィルム1に接着されるようにするのが望ましい。図示の形態では、ミシン目線3と平行に、内フィルム4A、4Bの長手方向のほぼ全域に亘る直線状の接着部分42、42を形成し、内フィルム4A、4Bがその長手方向に沿って包装フィルム1に接着されるようにしている。その他、直線状ではなく、点線状や所定間隔で部分的に接着部を配して、長手方向のほぼ全体に亘って包装フィルムに接着するようにしてもよい。包装フィルム1に対して内フィルム4A,4Bがその長手方向の全体に亘って接着されていると、紙タオル2の引き出し時に包装フィルム1内で、内フィルム4A、4Bが皺になったり撚れたりし難くなり、ポップアップ性がより良好になる。
【0030】
他方、本実施形態に係る紙タオル束包装体1は、以下のように機能・作用して、紙タオル2の包装フィルム1内への落ち込み等が防止され、使用開始から最後まで良好にポップアップすることができ、また、水分等の包装フィルム1内への侵入が防止される。
【0031】
まず、図4は、未使用の紙タオル束包装体1の状態を示す図である。そして、図5及び図6は、その未使用の状態から最初の一枚又はいくつかの紙タオル2を引き出した状態を示す図である。この図5及び図6に示されるように、本実施形態の紙タオル束包装体1では、最初の一枚又はいくつかの紙タオル2を引き出した状態では、裂開口30から露出している紙タオル2Aの折り返し縁2a側に位置する内フィルム4Aが裂開口30から露出された状態となり、その一方、その紙タオル2Aの折り返し縁2aと反対側にある内フィルム4Bは、包装フィルム1内に位置してその紙タオル2Aの直下の次に引き出されるべき紙タオル2Bの上に載った状態となる。
【0032】
そして、この状態は、紙タオルを引き出す度に各内フィルムにおけるその位置態様が交互に代わる。すなわち、図7に示すように、その露出している紙タオル2Aを引き出すと、本実施形態の紙タオル束包装体1では、包装フィルム1及び内フィルム4A,4Bが軟質のフィルムにより形成されているため、その引き出される紙タオル2Aの折り返し縁2a側に位置する内フィルム4Aの特に縁部41A側及びその内フィルム4A側の包装フィルム1のミシン目線3近傍が変形して、その紙タオル2Aとともに持ち上る。その際、その引き出されている紙タオル2Aの直下の次に引き出されるべき紙タオル2Bの一部も、ポップアップ式の束の構成上、その引き出されている紙タオル2Aにつられて裂開口30から露出するように上方へと持ち上げられる。そして、その次の紙タオル2Bの折り返し縁2b側に位置する内フィルム4Bの特に縁部41b側及び包装フィルム1のミシン目線3近傍も変形して、その次の紙タオル2Bの一部ととともに持ち上り、裂開口30が広く開口する。
【0033】
そして、図8及び図9に示すように、その引き出されるべき紙タオル2Aが完全に引き出されると、その紙タオル2Aの折り返し縁2a側に位置していた内フィルム4Aが紙タオル2Aから離れてその支持を失い、包装フィルム1や内フィルム4Aの形状保持力や重力によって、下方向に戻ろうとする力が作用し、内フィルム4Aとともにその内フィルム4Aが接着されている側の包装フィルム1の上面部がとともに下がり、次の次の紙タオル2Cの上面に載る。それとともに、次に引き出されるべき紙タオル2Bの一部が裂開口30から露出するともに、その次に引き出されるべき紙タオル2Bの折り返し縁2b側に位置する内フィルム4Bが裂開口30から露出されるようになる。
【0034】
このようにして、引き出される紙タオルの折り返し縁側の内フィルムの露出と、その次に引き出されるべき紙タオルの折り返し縁側の内フィルムの紙タオル上への移動が、紙タオル2を引き出す度に、各内フィルム4A、4Bで交互に行われ、裂開口30の直下には、いずれかの内フィルム4A、4Bが常に位置し、紙タオル2の落ち込みが防止されるとともに、裂開口30からの水分や塵、汚れ等の侵入が防止される。また、紙タオル上に載る内フィルム及び包装フィルムの上面部分が束上面を押さえるためスムーズにポップアップが行われる。
【0035】
さらに、特に、内フィルム4A、4Bによる包装フィルム1の上面部分の重量増によって、また、一部露出する紙タオルの部分が束形状に戻ろうとする復元力等によって、紙タオルの束20を構成する紙タオル2の枚数が少なくなってきても、包装フィルム1の上面部分が下方に下がっていくため、紙タオルの束20の上面と包装フィルム1の上面部分11との距離が離間しがたく、紙タオル2の枚数が少なくなっても裂開口30から露出する紙タオル2の一部は包装フィルム1内に落ち込み難い。
【0036】
また、本実施形態に係る紙タオル束包装体1では、裂開口30の内側に、各内フィルム4A、4Bの縁部41A、41Bの重なり部分を位置させることができ、例えば、裂開口30を形成して一度、紙タオル2を引き出して使用した後に、裂開口30から露出する紙タオル2を包装フィルム1内に戻すと、開口が上記縁部41A,41Bの重なりによって閉じるため、係る裂開口30を介して水分、塵、汚れなどが侵入しがたくなり、そのような使用を行うこともできる。
【0037】
上記の本実施形態の紙タオル束包装体1の機能・作用及びその効果は、上述のミシン目線3の長さ等の望ましい構成をとることにより、より顕著となる。また、特に、包装フィルム1と内フィルム4A,4Bとは、包装フィルム1よりも内フィルム4A,4Bの剛性を高くするほうが、上記機能が発揮されやすい。
【実施例】
【0038】
次に、本発明に係る紙タオル束包装体の効果について、具体的な例を示して明らかにしていく。まず、本発明の比較例として、内フィルム4A,4Bを設けていない紙タオル束包装体における紙タオルの取出し性について検討した。紙タオルは、1プライの米坪が24g/m2、2プライでの紙厚が350μm、長手方向の長さが230mm、短手方向の長さが210mmのエンボス加工された2プライのキッチンペーパーを用いた。束は、このキッチンペーパーを100組200枚の折畳み重ねてポップアップ式にしたものとした。
【0039】
包装フィルムは、厚さが40μmのポリエチレンとし、包装は、係る包装フィルムによって束をガセット包装としたものとした。なお、包装時における包装フィルムの上面部分の形状は、長手方向の長さが210mm、短手方向の長さが120mmであり、また、ミシン目線の長さは240mmとした。
【0040】
紙タオルの取出し性の試験は、以下の(1)〜(4)の手順で合計4回行なった。
(1)15mm×110mmの両面テープ(ニチバン株式会社製「ナイスタック(登録商標)NW-15」)2本を紙タオル束包装体1の底面部分に皺や弛みが生じないように貼り付ける。
(2)次いで、前記両面テープの剥離紙を剥がして、紙タオル束包装体を、表面が平滑な実験台に貼り付けて固定する。
(3)次いで、紙タオル束包装体のミシン目線を裂開して裂開口を形成し、その裂開口からキッチンペーパーの長手方向中央部をチャックして0.1〜0.3Nの力で垂直に引き出す。
(4)(3)の操作を全てのキッチンペーパーに対して行ない、包装フィルム内のキッチンペーパー100組のうち、引き出し後に次のキッチンペーパーが裂開口から落ち込んでしまったものの全組数のカウントと、落ち込んだ組みの順番(組目)を記録した。結果は下記表1のとおりである。なお、カッコ内が、落ち込んで取り出せなかったキッチンペーパーの順番(組目)を示している。
試験の結果は下記表1のとおりである。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示されるとおり、包装フィルムの上面部分の内側面に内フィルムを有さない紙タオル束包装体では、少なくとも6組の次に取り出されるキッチンペーパーが裂開口から落ち込んでしまい、取り出せなくなり、また、特に50組目以降、とりわけ90組目以降で顕著になる。
【0043】
続いて、本発明の実施例として、包装フィルムの上面部分の内側面に内フィルムを貼付した紙タオル束包装体について、比較例と同様に上記(1)〜(4)の手順で紙タオルの取り出し性の試験を行なった。実施例については、内フィルムの寸法と重なり幅の長さを変化させた複数の例を試験した。なお、実施例における内フィルムは、厚み30μmのポリエチレンであり、それ以外のキッチンペーパー、束、包装フィルム、包装形態は、比較例と同様とした。内フィルムの貼付態様は、一対の各内フィルムの縁はともに直線で、かつ、各縁がミシン目線3から等距離になるように貼り合わせた。
【0044】
試験の結果は下記表2〜4のとおりである。なお、表2は、内フィルムの長手方向長さが210mmで包装フィルムの上面部分の長手方向長さと一致している実施例の結果であり、表3は、内フィルムの長手方向長さが150mmの実施例の結果であり、表4は内フィルムの長手方向長さが、100mmの実施例の結果である。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
表2〜4に示されるとおり、本発明の実施例においては、内フィルムの長手方向長さが210mmの例において一組(85組目)の落ち込みが観察されたのみであり、内フィルムにより、顕著に紙タオルの落ち込みが防止されることが知見された。
【0049】
以上の結果から、本発明の紙タオル束包装体1によれば、内包される紙タオルの束を構成する紙タオルの枚数が少なくなっても、紙タオルが包装フィルム内に落ち込まず、使用開始から最後まで良好にポップアップして取り出すことができるようになる。
【符号の説明】
【0050】
1,101…紙タオル束包装体、2,2A,2B,2C,102…紙タオル、2a,2b…紙タオルの折り返し縁、3…ミシン目線、4A,4B…内フィルム、41a,41b…内フィルムのミシン目線側の縁、41A,41B…内フィルムのミシン目線側の縁部、42…接着部分、10,110…包装フィルム、10E…封止縁、20,120…紙タオルの束、11…包装フィルムの上面部分、30,130…裂開口、L1…内フィルムの短手方向長さ、L2…内フィルムの長手方向長さ、L3…内フィルムの縁部の重なり幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10