【実施例1】
【0015】
(システムの概要)
図1は本発明の見守り介護記録システムの全体構成を示す概念図である。
介護施設12には、介護サービス関係の情報を管理するためのローカルサーバ14が設けられている。左上の一点鎖線の円内に示した部分である。ローカルサーバ14は、施設内をカバーする無線LAN等のネットワーク16と接続されている。
【0016】
介護施設12で働く各介護スタッフ20は、それぞれ持ち運びできる端末装置18を所持している。介護スタッフ20は、
図1の左下の円内に示した。全てのローカルサーバ14と端末装置18とはネットワーク16を介して接続され、管理用のデータを収集して管理するコンピュータシステムを構成している。各介護スタッフ20は、端末装置18を使用して、作業の結果をローカルサーバ14に入力する。また、端末装置18は、施設内部の居室等に設けられたエアコン24等の機器の遠隔操作機能も有している。
【0017】
図1の右下の円内に示した利用者22の居室には、制御ボード23が設けられている。利用者22は制御ボード23を操作して介護スタッフ20を呼び出すことができる。制御ボード23による呼び出し信号はローカルサーバ14を経由して端末装置18に送信されて表示される。利用者22は、制御ボード23を操作して、自分の居室のエアコン24を調節したり、居室内の図示しない照明をオンオフしたりすることができる。
【0018】
利用者22が制御ボード23によりエアコン24等を操作すると、その結果がローカルサーバ14に送信されて記録される。同時に、担当する介護スタッフ20の端末装置18にも送信されて表示される。この機能により、利用者22の好む環境を介護スタッフ20が知ることができる。さらに、利用者22が誤った操作をしたときには、介護スタッフ20が是正することができる。そして、こうした結果がローカルサーバに送信されて記録され、その後の介護サービス向上に役立てることができる。
【0019】
さらに、利用者の居室には、図示していないが、睡眠計や人感センサといった、利用者の睡眠等の生活状態を検出する生活状態把握用センサが設けられている。また、居室の温湿度、照度、粉塵、騒音等を含む環境を測定する居住環境把握用センサが設けられている。このほかに、利用者の電気やガスや水道の使用状況を検出する生活行動把握用センサが設けられている。これらのセンサの出力は、無線あるいは信号ケーブルを通じてセンサ管理端末49に集められる。センサ管理端末49は、ネットワーク16を介してローカルサーバ14に接続されている。
【0020】
また、
図1には、介護施設12のほかに、同様の設備を持つ他の施設26を例示した。これらの施設にも、同様のローカルサーバ14が設けられている。そして、各施設のローカルサーバ14は、いずれもネットワークを介してクラウドサーバ27に接続されている。さらに、介護施設12から出て自宅28に戻って生活をしている元利用者や、施設を利用せずに自宅28で在宅介護を受けている他の利用者の生活行動や体の状態を観察するために、端末装置29を設けている。
【0021】
これにより、このシステムは、施設外からも様々な情報を収集することができる。利用者22の自宅28に取り付けられた端末装置29は、自宅28の温湿度環境や在宅介護の内容、主な生活行動等を取得して記憶保持する機能を持つ。自宅の電力使用量をリアルタイムで計測記録することもできる。端末装置29が取得した情報は、ネットワークを通じてクラウドサーバ27に転送されるように構成されている。
【0022】
介護施設12では、利用者22の健康状態や、利用者22に提供する介護サービスの内容や生活環境等の、利用者22に関するあらゆる情報を記録して最適な介護サービスのために使用する。施設内の全ての情報はローカルサーバ14に集められる。なお、これらの情報は利用者22にとって重要な個人情報であり、高度なセキュリティをもって管理されなければならない。
【0023】
そこで、この図の例では、全ての情報をクラウドサーバ27に集約してその記憶装置に記憶し、ローカルサーバ14や端末装置18には必要最小限の情報しか残さないクラウドシステムを採用している。このクラウドシステム自体は既知のものであるから、説明を省略し、以下の実施例では、ローカルサーバ14が介護施設12の管理運営に必要な情報一切を記憶して制御する例を説明する。
【0024】
(ローカルサーバの構成)
図2はローカルサーバの構成を説明する機能ブロック図である。
ローカルサーバ14は、演算処理装置30と記憶装置32とを備える。ローカルサーバ14の演算処理装置30は、コンピュータプログラムによって、ケア管理手段34と、環境センサ監視手段36と、適正値判定手段38と、報告書作成手段40と、統計処理手段42として機能する。
【0025】
これらの手段の動作のために、記憶装置32には、ケアオペレーション入力画面44と、ケア管理データファイル46と、センサ監視データ48と、報告書データ50と、統計データ52と、介護スケジュールデータ53とが記憶されている。この図では、主要な機能ブロックとデータのみを示した。上記の各手段と記憶されたデータについては、以下の実施例で具体例を示しながら説明する。
【0026】
(端末装置の機能)
ローカルサーバ14にデータを入力するための全ての操作は、例えば、タブレット式の端末装置18で行うようにする。勿論、ノートパソコンでもスマートホンでも構わない。この端末装置18には、提供する介護サービスの内容を入力して記憶する機能、介護サービスのスケジュールをカレンダや表を使用して表示する機能、利用者の生活行動や体の状態を入力する機能が備えられている。さらに、利用者22からの呼び出しの有無を表示する機能、利用者22の居室の温湿度等の環境を表示する機能、居室のエアコンや照明のオンオフを遠隔制御して調整する機能等が備えられている。
【0027】
(ケアオペレーション入力画面)
図3はケアオペレーション入力画面44の説明図である。
介護スタッフ20は、
図3に示したケアオペレーション入力画面44を使用して、利用者22に対する介護サービスの記録を行う。利用者22を指定してこの画面を起動すると、ケアオペレーション入力画面44の先頭に、利用者名54と居室番号56と現在時刻58が自動的に表示される。担当者名は、端末装置18を操作する介護スタッフ20の名前で、ある。また、利用者22によって、介護スタッフ20に対する呼び出しがあった場合には、その状態が呼び出しの有無表示60の部分に表示される。
【0028】
ケア管理手段34は、介護スケジュールデータ53を読み出して、介護サービスのスケジュールを端末装置18に表示する。チェックリスト62はこの介護スケジュールを表示する部分で、介護スタッフ20が行うべき介護サービスの種類が列挙されている。
【0029】
介護スタッフ20はその都度実行した介護サービスについて、チェックマークを入力する。また、介護スタッフ20は利用者22の健康状態を観察し、健康状態記録64の部分に、その観察結果を入力する。健康状態の種類は、ドロップダウンリストによって選択することができる。このほかに、 利用者22の体温や脈拍や呼吸などを測定し、その結果を入力する。さらに、 チェックリスト62に列挙されたオペレーション以外のその他のケアオペレーションを行った場合に、その記録を入力する部分も設けられている。
【0030】
ケアオペレーション入力画面44には、居室環境を表示する領域が向けられている。利用者22の居室に設けられた各種センサの出力は、
図1で説明したようにネットワーク16を通じてローカルサーバ14に設けられた環境センサ監視手段36により読み取られる。そしてその結果がケアオペレーション入力画面44に自動的に表示される。
【0031】
介護スタッフ20は、 温度測定値66や湿度測定値68や照度測定値70を確認して、その都度適切な状態に調整する。なお、この調整結果が標準値と比較して適正かどうかを、ローカルサーバ14に設けられた適正値判定手段38が自動的に判断する。そして、その結果をケアオペレーション入力画面44に表示する。○は適正範囲にあるという判断結果を表示したものである。△は適正値からやや外れているという判断結果を表示したものである。なお、後で説明するように、適正値判定手段38は介護スタッフ20や利用者22による調整の結果をもとに適正値を自動修正する学習機能を備えるとよい。
【0032】
居室環境を表示する領域の部分は、
図1に示した利用者22の使用する制御ボード23にも表示される。利用者22も同様の画面を使用して、自分で居室環境を調整することができる。そして、利用者22が誤って温度調整をした場合には、適正値判定手段38が自動的に適正でないという判断結果を表示する。同時に、例えば警報音を発生させる。この判断結果と警報音は、介護スタッフ20の端末装置18にも出力される。従って、利用者22自身が誤った操作を修正しない場合でも、介護スタッフ20が遠隔操作によってそれを修正することができる。
【0033】
このほかに、 ケアオペレーション入力画面44には、家電電源状態72が表示されており、テレビジョンを遠隔操作によりオンオフするためのボタンが設けられている。ケアオペレーション入力画面44を使用して、必要な介護サービスを行った後に、入力完了ボタン74を操作すると、その結果をローカルサーバ14の記憶装置32に記憶させることができる。
【0034】
即ち、端末装置18による操作結果はケア管理手段34により取得され、介護サービスの内容と利用者の健康状態が、入力時刻データとともにケア管理データファイル46に書き込まれる。
【0035】
なお、環境センサ監視手段36が取得した利用者の居室環境の測定結果は、センサ監視データ48として、24時間自動的に連続的にローカルサーバ14の記憶装置32に書き込まれ、いつでも、その履歴を確認することができる。なお、
図3に示したセンサ監視データは、
図1を用いて説明した生活状態把握用センサや居住環境把握用センサや生活行動把握用センサの出力を含めたものである。
【0036】
(管理データファイルの例)
図4は管理データファイルの一例を示す説明図である。
図のように、ケア管理データファイル46には、ケア管理手段34によって、利用者22毎に、例えば、その居室、家族の連絡先等の事項のほかに、毎日どのようなケアオペレーションが行われたかの記録が追記される。例えば、その日時、オペレーションの内容、健康状態が記録される。さらに、上記のシステムを利用して、居室の温度、湿度、照度が書き込まれる。そして、先に説明したように、利用者本人がエアコン等を操作して居室の環境を調整した記録と、操作誤りの記録、介護スタッフによる居室環境の調整結果が、操作時刻データとともに記録される。これらの記録によって、その利用者のための介護の最適化を図ることができる。
【0037】
例えば、居室の室温は
図4の下側に示したように制御される。まず、適正値判定手段38(
図3)は、ケア管理データファイル46を参照して、室温の適正値を読み出して、室温T1に自動制御する。ここで、例えば、利用者22が制御ボード23(
図1)を使用して室温を上げる操作をした。その結果、上限値Wを越えて室温がT2になってしまった。適正値判定手段38は介護スタッフ20の所持する端末装置18に警報を表示する。介護スタッフ20はT1とT2の関係からその間の適温T3に室温を修正した。これが利用者22の感じる適温ということができる。その結果がケア管理データファイル46に自動的に書き込まれて、温度(適正値)がT3に修正される。なお、利用者の操作が図の破線のように上限値Wを越えない範囲のT4であれば、これが利用者の希望する室温と言える。その場合、適正値判定手段38は自動的に適正値をT4に修正する処理を実行する。
【実施例2】
【0038】
図5は、報告書作成手段40と統計処理手段42の動作説明図である。
(報告書作成手段)
介護サービスの内容と居室環境等のデータと利用者の健康状態とを、ケア管理データファイル46を使用してデータファイル化し、ローカルサーバ14のケア管理データファイル46に蓄積した。これにより、個々のデータの相関関係を明らかにすることができ、その後の介護サービスの改善に役たてることができる。例えば、
図5の(a)に示すように、報告書作成手段40はケア管理データファイル46を読み出して、利用者の健康状態をグラフ化する。体重、体温等の変化と、施された介護サービスの種類を時系列に表示する。
図4の下側に示したようなグラフを含めるとよい。
【0039】
この介護サービス実績記録を使用すると、各利用者の家族に対して、施設では利用者にどのような処置を施し、どのような環境で介護をしているか、具体的に報告をすることができる。即ち、介護スタッフによる様々な介護サービスの内容を記録に残すことによって、施設の利用者の家族に対する介護サービス報告書とすることができる。これも実績記録の重要な役割と言える。この介護サービス実績記録は、クラウドサーバ27にアップロードして施設の利用者の家族がインターネットで閲覧できるようにすることが好ましい。
【0040】
(比較処理手段)
また、利用者の健康状態の推移と、それぞれの時期に施されたケアオペレーションの内容とを時系列的に比較すると、それらのケアオペレーションが適切だったかどうかという判断に使用できる。これに居室環境の推移も含めればなおよい。利用者がどのような状態のときにどのような居室環境を設定して、どのような介護サービスを行うことが最適かを研究できる。また、医療機関への報告データをとし、介護医療のための研究資料とすることができる。また、居室毎の比較データや施設毎の比較データを収集することにより、新たな施設を設計するときの、利用者の居住環境の改善に役立てることができる。
【0041】
(在宅介護との比較処理例)
本発明のシステムによれば、介護施設12に一時的に入居してその後施設を離れた利用者について、継続的な管理サービスをすることができる。介護施設12に入居中に利用者22に施した介護サービスと、在宅介護により施されている介護サービスの内容を比較する。また、介護施設12に入居中の居室環境と自宅28での居室環境とを比較し、利用者22の健康状態の変化との関係を見ることができるようにする。
【0042】
これにより、利用者22が順調に健康を維持できているか、あるいは、介護施設12を出たことによって適切な介護サービスが受けられず、体調が悪化したのか、介護施設12に戻るべきかといった判断をすることができる。施設を出て在宅介護に切り替えた場合にも同様のシステムで経過観察すれば、そのまま在宅介護を続けるか施設に戻るかの判断を的確に判定することができる。
【0043】
また、同様の設備を持つ複数の施設について、取得したデータを比較することによって、適切な介護サービスのあり方を見いだすための資料にすることができる。また、介護施設では、在宅介護よりも居室環境を最適化でき、それが健康状態の改善に寄与することを示すデータを作ることができる。従って、これまでもっぱら在宅介護を利用していた人が介護施設に入るべきかどうかの判断資料を提供できる。さらに、新たな介護施設を建設する場合に、各施設のサービス履歴を取得して、より効率のよい設備の設計に役立てることができる。また、介護施設と関わりのある設備メーカや食料品メーカ等に、様々な改善提案をすることが可能になる。
【0044】
(セキュリティ管理機能)
上記の実施例によれば、介護スタッフ20がそれぞれタブレット端末を所持して、タブレット端末から入力されたデータは施設毎に設けられたローカルサーバ14により処理される。しかしながら、ローカルサーバ14に利用者22の個人情報が大量に蓄積されると、セキュリティを確保することが容易でない。その場合には、ローカルサーバ14は必要最小限のデータのみを記憶し、クラウドサーバ27に全てのデータを転送して保存するとよい。このようにして集中管理をすれば、個人情報の取り扱いを一箇所で厳格に管理することができる。
【0045】
(利用者の自動的な見守り機能)
特別の場合を除いて、利用者22の状態を監視カメラで常時監視するのはプライバシーの侵害になるおそれがある。そこで、居室毎に各種の通信機器、例えばカメラ付きの端末装置18を置いて、この端末装置18で利用者22の状態を常時撮影する。また、音声やその他の音等も録音する。そして、端末装置18が取得したデータは、介護サービス上必要不可欠な場合以外、利用者22もしくはその家族の同意無しに見ることができないようにする。利用者22の状態の撮影だけでなく、利用者22の移動やエアコン24操作等の様々な行動をこの端末装置18で取得して標準値と比較判定処理をして、適切な操作を自動的に指示するようにすれば、自動見守り機能を高めることができる。
【0046】
図6は、上記のシステムによる情報収集の仕組みと報告書の利用法説明図である。
介護スタッフが所持する端末装置18は、生活状態表示(在・不在)、室内環境表示(温湿度、照度)、生活行動表示(TV鑑賞、入浴、呼出)、環境状況評価(空調、家電の消し忘れ等)、環境制御支援(適正な空調設定、快眠制御)、機器操作機能(遠隔制御)、介護行動記録等の機能を備えることが好ましい。この端末装置18により取得された情報は、ローカルサーバ14を経由してクラウドサーバの記憶装置に記憶される。
【0047】
介護施設の各居室には、生活状態把握用センサ(睡眠計、人感センサ)、居住環境把握用センサ(温湿度、照度、粉塵、騒音)、生活行動把握用センサ(電気、ガス、水道、呼出記録)、機器の遠隔制御装置(エアコン、照明、TV、家電)等が設けられているとよい。睡眠計は就寝時刻や起床時刻を測定する。人感センサは、利用者の居室の入退出等の状態を検出する。即ち、生活状態把握用センサは、睡眠等の状態を含む利用者の生活状態を検出する。これにより利用者が規則正しく健康的に生活をしているか等を確認できる。
【0048】
また、居住環境把握用センサは、利用者の居室の温湿度等を含む環境を測定する。利用者が居室内で常に快適に生活をしているかどうかをを確認できる。一方、利用者が居室内の設備を使用すると電気やガスや水道が消費される。生活行動把握用センサは、電気の消費量等を含む利用者の生活行動を検出する。電気やガスや水道の消費量を検出すると、利用者が居室内で活発に様々な行動をしているかどうかを確認できる。
【0049】
これらのセンサの取得したデータは、いずれも利用者の介護方法の評価とその後の方針選択にきわめて重要な役割を果たす。この実施例のシステムを採用する施設では、これらのデータを漏れなくリアルタイムで取得し記録できる。各センサにより取得されたデータは、ローカルサーバ14を経由してクラウドサーバの記憶装置に記憶される。
【0050】
こうして、介護施設の様々な情報がクラウドサーバ27に集積されて、クラウドサーバ27の記憶装置に記憶される。そして、介護記録、生活記録、統計処理データ、各種報告書は、利用者の家族がネットワークを通じて閲覧することができる。また、それぞれ許された範囲で、施設運営管理者、医療機関、自治体、サービス業者が閲覧して、それぞれの業務に役立てることができる。
【0051】
図7は、室温設定の最適化自動制御のためのプロフローチャートである。
この処理により、利用者毎の居室毎の環境設定を自動的に最適化することができる。これは、環境センサ監視手段36と適正値判定手段38との連携処理により実現する。概略は
図4を用いて説明した。具体的にはこの図のような手順で制御される。まず、ステップS11で、環境センサ監視手段36は、利用者の居室の室温測定をする。次に、適正値判定手段38は、ステップS12でケア管理データファイルを読む。そして、ステップS13で、室温の適正値を読む。ステップS14では、室温と適正値を比較する。
【0052】
ステップS15では、差分が閾値以上かどうかという判断をする。ここでは、適正値に対して室温の狂いが誤差の範囲かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS16の処理に移行して、自動的に室温を適正値になるように制御する。ノーのときはステップS17の処理に移行する。
【0053】
ステップS17では、室温が、利用者あるいは介護スタッフにリモコン等で制御されたかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときは、その適否を判断するために、ステップS18以下の処理に移行する。ノーのときはそのまま待機する。
【0054】
ステップS18では、リモコン等で制御された制御値と上記の適正値とを比較する。この場合は、ある程度広い範囲で室温の上限値と下限値を設定しておく。ステップS19では、差分が閾値以上かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS20の処理に移行し制御のやり直しを求めるように警報を端末装置に表示する。
【0055】
利用者が制御しても、介護スタッフが制御しても、制御の誤りは介護スタップが端末装置を使用して修正するようにする。ステップS20で警報を表示した後は、ステップS17に戻る。一方、適正値判定手段38は、ステップS19で制御範囲が適正と判断すると、ステップS21に進み、制御値を新たな適正値に設定し、ステップS22でケア管理データファイルを更新する。こうして、自動的に、利用者の好む最適値に室温が調整される。なお、湿度、証明、その他の環境設定についても、重複する説明を省略するが、同様の制御が可能である。
【0056】
(発明の効果)
以上説明したとおり、介護スタッフ20が提供したサービスやとその結果は、端末装置18により漏れなく取得され、ケア管理データファイル46として保存される。利用者22の居室環境や、利用者22自身による操作記録も同様に保存される。これらのデータを解析して、介護サービスの最適化を図ることができる。さらに、複数の介護施設のデータを集約して比較し、介護サービスの標準化を図ることもできる。また、利用者22の家族に対して、収集したデータを公開し、利用者22の介護について十分なサービスを提供して、必要な責任を全うしていることを証明するために役立てることができる。
【0057】
例えば、一ヶ月間の体温の推移、血縁の推移、血糖値の推移、毎日の運動(歩行計)、毎日の睡眠時間、毎日の食事による摂取カロリー、入浴、着替え支援、歩行支援、運動支援等を時系列に表示すると、これらの相関関係が明確になる。即ち、利用者の健康状態と居室環境と施された介護サービスの相関関係がきわめて重要なことかわかる。これにより、利用者毎にどのような居室環境でどのような介護サービスを施したときに健康状態が改善されるか、良い状態が維持できるかを判断する有効な資料が得られる。
【0058】
特に、新たな介護施設を設計する場合に、居室の設計、居室毎の環境設定のための設備構造、介護スタッフによる端末装置の操作性、介護サービスの種類や方法、必要な介護設備等について、上記の総合的な比較データが重要な参考情報として利用できる。さらに、介護施設における介護と在宅介護の場合の長所短所の比較が、データの加工により定量的に把握でき、利用者毎の最適な介護環境の選択に重要な資料となる。