(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パルプを主成分とする基紙の少なくとも一方の面に顔料とバインダーとを含有するインク吸収層を一層のみ設け、前記バインダーにはスチレン−ブタジエンラテックスを含み、前記顔料が40〜70質量%の軽質炭酸カルシウムおよび30〜60質量%のカオリンから成り、かつ、前記顔料にシリカおよび重質炭酸カルシウムを含まず、前記インク吸収層がカチオン性インク定着剤を含まず、BET比表面積が9m2/g以上であるインクジェット印刷用紙。
パルプを主成分とする基紙の少なくとも一方の面に顔料とバインダーとを含有するインク吸収層を一層のみ設け、前記バインダーにはスチレン−ブタジエンラテックスを含み、前記顔料が40〜70質量%の軽質炭酸カルシウムおよび30〜60質量%のカオリンから成り、前記インク吸収層がカチオン性インク定着剤を含まず、BET比表面積が9m2/g以上であるインクジェット印刷用紙。
前記バインダーのインク吸収層中の含有量が、顔料100質量部に対し3〜50質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のインクジェット印刷用紙。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を用いる印刷機としては、端末PC用プリンター、ファックス、または複写機に留まらず、多品種小ロット印刷、可変情報印刷可能とする、いわゆるオンデマンド印刷方式を採用しているインクジェット印刷機も登場しつつある。最近では、装置の高速化や高精細化に著しい進歩が見られることによる用途の拡大に伴い、一般印刷用塗工紙(例えば一般オフセット印刷用紙)と同程度の風合いを有する塗工紙にもインクジェット適性を付与する要望が増えてきている。
【0003】
インクジェット方式は、細かなインク滴を被転写物表面に吐出し、画像を形成する方式である。近年の技術進歩は目覚しく、非常に高画質となり、弱点であった画線部の保存性も顔料タイプのインクの出現により大幅に改善されてきた。
【0004】
従来、インクジェット用紙のインク吸収層としては、通常、シリカ、アルミナ、ベーマイト等の比表面積の大きな顔料を主成分として用いて塗工層の細孔容積を大きくしたものが使用されている。しかし、これらのインクジェット用紙は、一般的な印刷用塗工紙に比べその風合いが劣るだけでなく、高価であるため、オンデマンド印刷のような商業印刷の分野においては実用的ではない。
【0005】
また、インクジェット印刷用紙の技術としては、例えば、特許文献1(特開2004−091627)には、塗工層に使用する顔料であるカオリンの添加量を適正値に限定した印刷用紙が開示されている。しかしながら、インク吸収性を必ずしも満足できず、結果的にインク乾燥性が不十分となることがあった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)基紙
本発明のインクジェット印刷用紙は、パルプを主成分とする基紙、例えば、基紙中80質量%以上、90質量%以上、さらに95質量%以上のパルプを含有する基紙を使用すればよい。本発明の基紙に使用するパルプとしてはLBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプである。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。例えば、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)を全パルプ中80〜100質量部含むパルプを使用すればよい。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、本発明に係る基紙を構成するパルプは、インクジェット印刷用紙として適切な叩解度を有する紙料とすることが好ましい。適切な叩解度としては、例えば、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、350〜650mlCSFである。
【0013】
基紙には、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等の填料を含有させてもよい。基紙中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましい。より好ましくは3〜17質量部である。さらに好ましくは4〜15質量部である。2質量部以下では白色度向上、不透明度向上等の効果が得られないおそれがある。20質量部を超えると紙自体の強度が不足し、印刷・加工に耐えられず実質的に使用することが出来ないおそれがある。
【0014】
基紙にはパルプ、填料以外に内添サイズ剤、湿潤紙力増強剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などの各種助剤を、適宜含有させることができる。内添サイズ剤は、各種公知のものが使用でき、特に限定されず、例えば、強化ロジンサイズ剤、酸性ロジンサイズ剤、弱酸性ロジンサイズ剤、AKD、ASAである。前記内添紙力増強剤としては、従来公知の紙力増強剤を使用することが可能であり、例えば、澱粉系紙力増強剤、ポリアクリルアミド系紙力増強剤、ポリビニルアルコール系紙力増強剤である。
【0015】
基紙を抄紙する方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造できる。
【0016】
基紙とインク吸収層の表面には表面サイズ液を塗布しても良い。表面サイズ液としては、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの公知の水溶性高分子などが上げられるが特に限定されるものではない。基紙の坪量は、特に限定されないが、30〜300g/m
2であることが好ましい。
【0017】
また、基紙のインク吸収層の間には顔料とバインダーを主体とした塗工液を塗工して設けられるアンダー層を1層以上設けてもよい。
【0018】
(2)インク吸収層
本発明のインクジェット印刷用紙においては、基紙の少なくとも一方の面に、顔料とスチレン−ブタジエンラテックスを含有するインク吸収層を設ける。インク吸収層はインクジェット印刷用紙の最表層となるように設けることが好ましい。インク吸収層に用いる顔料としては、一般の印刷用塗工紙に使用されている公知の白色顔料を用いることができるが、本発明においては、前記顔料の10〜80質量%を軽質炭酸カルシウムとする。好ましくは20〜70質量%、更に好ましくは30〜60質量%である。軽質炭酸カルシウムの添加量が10質量%未満の場合はインク吸収層のBET比表面積が低くなるおそれがある。80質量%を超えると白紙光沢を損ない、インクジェット印刷適正に劣るおそれがある。さらに、軽質炭酸カルシウム以外の顔料として、例えば、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムの二次凝集体、重質炭酸カルシウム、カオリン(クレーを含む)、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、等のムキ顔料並びにプラスチックピグメント等の有機顔料であり、これらの中から目的に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択して使用される。例えば、本発明の顔料として、顔料全体に対して、カオリンを20〜90質量%および軽質炭酸カルシウムを10〜80質量%使用し、例えば、カオリンを25〜80質量%および軽質炭酸カルシウムを20〜75質量%使用し、好ましくは、カオリンを30〜70質量%および軽質炭酸カルシウムを30〜70質量%使用すればよい。
【0019】
本発明においては、インク吸収層に用いるバインダーとして、製造コスト及びインク吸収層の塗工層強度の観点からスチレンブタジエンラテックスを使用する。インク吸収層に用いるバインダーの50〜100質量%、好ましくは60〜90質量%、更に好ましくは70〜80質量%をスチレン−ブタジエンラテックスとすることで光沢度などの一般の印刷用塗工紙と同程度の風合いを保ちながら、塗工層強度を従来の印刷用塗工紙並みの強度にすることが可能であり、また安価であるので製造コストを低く抑えることが可能である。インク吸収層におけるスチレンブタジエンラテックスの配合量は特に限定されないが、全顔料100質量部に対し2〜50質量部とすることが好ましく、4〜40質量部、さらに4〜25質量部とすることがより好ましい。インク吸収層に用いるスチレン−ブタジエンラテックス以外のバインダーとしては、特に限定するものではなく、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、等の合成樹脂類等が例示できる。これらの中から目的に応じて1種あるいは2種以上を適宜選択して使用することができる。特に印刷用塗工紙で一般に用いられる澱粉とスチレンブタジエンラテックスの組み合わせがインク吸収層の塗工層強度及びコスト抑制の観点から好ましい。
【0020】
インク吸収層におけるバインダーの配合量は特に限定されないが、全顔料100質量部に対し3〜50質量部とすることが好ましく、5〜40質量部、さらには5〜20質量部、または5〜15質量部とすることがより好ましい。配合量が3質量部未満であると塗工層が脱落するおそれがあり、50質量部を超えるとインク吸収層のBET比表面積が低下しインク吸収性が悪化するおそれがある。
【0021】
本発明においては、前記インク吸収層のBET比表面積を9m
2/g以上とする。BET比表面積が9m
2/gより小さい場合はインク吸収性が悪化するためにインク乾燥性に劣る。好ましくは10m
2/gさらには11m
2/g以上が好ましい。インク吸収層のBET比表面積の上限は特に設けないが、50m
2/g以下さらには35m
2/g以下が好ましい。50m
2/gを超える場合はインク吸収層の塗工層強度が弱くなり、オフセット印刷等の一般印刷適性に劣る場合がある。ここで、BET比表面積は、BET法によって求めた単位質量あたりの表面積である。また、本発明において、インク吸収層のBET比表面積は、インクジェット印刷用紙のBET比表面積値(m
2/g)とオンデマンド印刷用紙の坪量(g/m
2)とインク吸収層の塗工量(g/m
2)から、次の(式1)の計算で求める。
【0022】
(式1)
インク吸収層のBET比表面積(m
2/g)=インクジェット印刷用紙のBET比表面積(m
2/g)×インクジェットの坪量(g/m
2)/インク吸収層の塗工量(g/m
2)
【0023】
BET法とは、気相吸着法による粉体の比表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料のもつ総表面積、すなわち比表面積を求める方法である。通常、吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、又は容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。なお、本発明においては、紙支持体のBET比表面積は無視できるほど小さいものとして扱う。
【0024】
また、前記インク吸収層には、必要に応じ各種助剤、例えば、潤滑剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が必要に応じて適宜配合される。ただし、本発明においては、インク吸収層にカチオン性インク定着剤を含有させない。カチオン性インク定着剤は一般のインクジェット記録用紙のインク吸収層に汎用されるものであるが、本発明においてはこれを用いずにインク吸収層を形成する。本発明においては、インク吸収層にバインダーとしてスチレン−ブタジエンラテックスと、顔料として軽質炭酸カルシウムとを含有させるが、これらの存在下で汎用のカチオン性インク定着剤を用いると、インク吸収層用塗料の増粘や凝集が起こり良好な塗工適正を得られないばかりか、場合によってはBET比表面積を低下させることとなり、結果的にインク吸収性を損ねるおそれがある。
【0025】
(3)塗工方式
前記インク吸収層を塗工する方式としては、特に限定することはなく、一般に使用されている塗工装置が使用される。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
【0026】
インク吸収層の塗工量としては、基紙の片面あたり、2〜40g/m
2であることが好ましい。絶乾塗工量が2g/m
2未満では所望のインク吸収性を得ることが困難となり、40g/m
2を超える場合はコスト的に不利となる。
【0027】
(4)キャレンダー処理
本発明においては、基紙にインク吸収層を塗工、乾燥した後にキャレンダー処理を行う事が好ましい。処理装置としては、通常のスーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、シューニップキャレンダー、ソフトキャレンダー、等が用いられる。その際の加圧装置形態、加圧ニップ数、温度条件等の処理条件を適宜調節して処理することが出来る。本発明においては、キャレンダー処理時に発生する汚れを防止するために、インク吸収層に潤滑剤を含有させることが好ましい。本発明ではインク吸収層にバインダーとしてスチレン−ブタジエンラテックスを含有させるため、スチレン−ブタジエンラテックスのガラス転移温度、粒子経、ブタジエン比率等によってはキャレンダー処理時にロール表面の汚れが発生しやすくなるが、インク吸収層に潤滑剤を含有させることにより、このロール汚れを抑制することができる。潤滑剤の含有量は顔料100質量部に対して0.005〜3.0質量部、さらには、0.008〜3.0質量部、0.01〜2.7質量部が好ましい。潤滑剤が3.0質量部を超える場合はインク吸収性が悪くなり、インク乾燥性に劣る恐れがある。潤滑剤0.005質量部未満の場合はキャレンダー汚れが発生して欠点が発生する恐れがある。前記潤滑剤はインク乾燥性とキャレンダー汚れの観点から、水分散性の高級脂肪酸塩およびその誘導体から選択されることが好ましい。前記水分散性の高級脂肪酸塩およびその誘導体は、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸バリウム、パルチミン酸カルシウムなどの水に難溶または不溶な高級脂肪酸塩を、分散乳化剤を用いて乳化し、水分散体としたものが挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り固形質量部及び固形質量%を示す。
【0029】
(実施例1)
(基紙の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス450mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、軽質炭酸カルシウム(TP−121:奥多摩工業社製)10部、カチオン化澱粉(ネオタック30T:日本食品加工社製)0.3部、中性ロジンサイズ剤(CC167:星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、これを用いて、長網多筒式抄紙機を用いて坪量70g/m
2の原紙を作製した。この原紙にゲートロールコーターにより、酸化澱粉(MS3800:日本食品化工社製)を両面で乾燥塗布量2.5g/m
2となるように塗布した。
【0030】
(インク吸収層塗工液の調製)
カオリン(コンツアー1500、イメリス社製)60部、軽質炭酸カルシウム(PC−700、白石工業社製)40部に分散剤(アロンT−50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作成した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(MS4600、日本食品加工社製)2部とスチレン−ブタジエンラテックス(PA0372、日本エイアンドエル株式会社)7部とを添加し、次いで潤滑剤として高級脂肪酸塩であるステアリン酸カルシウムの水分散物(DEF−963TF、日新化学研究所社製)2.5部と水を加えて固形分濃度50%のインク吸収層塗工液を調製した。
【0031】
(インクジェット印刷用紙の作製)
上記で得られた基紙の両面にインク吸収層塗工液をブレードコーターを用いて、基紙の片面当たり乾燥塗工量が10g/m
2になるように塗工、乾燥した。その後、キャレンダー処理を行い、坪量が92.5g/m
2のインクジェット印刷用紙を作製した。
【0032】
(実施例2)
実施例1において、軽質炭酸カルシウム(PC−700、白石工業社製)40部を二次凝集形状の軽質炭酸カルシウム(TP121SA、奥多摩工業社製)40部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。
【0033】
(実施例3)
実施例1において、カオリン(コンツアー1500、イメリス社製)の添加量を30部とし、軽質炭酸カルシウム(PC−700、白石工業社製)の添加量を70部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作成した。
【0034】
(実施例4)
実施例1において、カオリン(コンツアー1500、イメリス社製)の添加量を75部とし軽質炭酸カルシウム(PC−700、白石工業社製)の添加量を25部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作成した。
【0035】
(実施例5)
実施例1においてカオリン(コンツアー1500、イメリス社製)の添加量を80部とし、軽質炭酸カルシウム(PC−700、白石工業社製)の添加量を20部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作成した。
【0036】
(実施例6)
実施例1において、潤滑剤の添加量を0.01部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作成した。
【0037】
(実施例7)
実施例1において、潤滑剤の添加量を3.0部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作成した。
【0038】
(比較例1)
実施例1において、インク吸収層の軽質炭酸カルシウム(PC−700、白石工業社製)40部を重質炭酸カルシウム(カービラックス、イメリス社製)40部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。
【0039】
(比較例2)
実施例1において、インク吸収層の顔料を重質炭酸カルシウム(カービラックス、イメリス社製)100部のみとした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用紙を作製した。
【0040】
得られたインクジェット印刷用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0041】
(1)インクの乾燥性評価
以下のインクジェットプリンターを用いてベタ印字を行い、印刷後にPPC用紙を重ね、手で擦ってインクの転写量を目視で以下のように測定した。
【0042】
プリンター:PX−101A(EPSON社製)
◎:転写が全くなく実用できる。
○:転写量が少なく実用できる。
△:転写量が多いが、印刷の軽い絵柄なら実用できる。
×:転写量が多く実用不可。
【0043】
(2)インク吸収層のBET比表面積
得られたインクジェット印刷用紙を約3mm×3mmの大きさの小片にして複数切った後、これら約1gを105℃、10Pa以下で12時間真空脱気した後、窒素吸着法による細孔分布測定装置(トライスターII3020:島津製作所社製)を用いてBET比表面積値を測定した。また、本発明のインク吸収層のBET比表面積値は、次の(数1)の計算で求める。
【0044】
(数1)
インク吸収層のBET比表面積(m
2/g)=インクジェット印刷用紙のBET比表面積(m
2/g)×インクジェット印刷用紙の坪量(g/m
2)/インク吸収層の塗工量(g/m
2)
【0045】
【表1】
【0046】
表1から明らかなように、実施例1〜7で得られたインクジェット印刷用紙は、比較例1〜2に比べてインク乾燥性が良好であった。これより実施例1〜7で得られたインクジェット印刷用紙のインク吸収層は高いインク吸収性を有していると考えられる。これに対し、比較例1〜2で得られたインクジェット印刷用紙はインク乾燥性が劣る結果となった。インク吸収層のBET比表面積が9m
2/gを下回り、インク吸収性を満足できなかったものと考えられる。