(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による三次元空間施工工法及び施工システムは以下のとおりである。
[項目1]
三次元空間で施工を行うための三次元施工工法であって、
略水平方向に相互に所定の間隔をおいて、第1、第2及び第3の支柱を設置し、
当該第1、第2及び第3の支柱の各々に、第1、第2及び第3の滑車を設置し、
前記第1、第2及び第3の支柱の、当該第1、第2及び第3の滑車が設置される位置に対して所定の距離だけ下方の位置に、第1、第2及び第3のロープ巻き取り機を設置し、
前記第1、第2及び第3の滑車に各々第1、第2及び第3のロープを通し、
当該第1、第2及び第3のロープの一端は、各々前記第1、第2及び第3のロープ巻き取り機に接続され、他端は作業者の着用具に接続され、
前記第1、第2及び第3の滑車が各々設置される位置、及び前記第1、第2及び第3の支柱の当該第1、第2及び第3の滑車が設置される位置の下方において地面と各々接する位置で定義される平面、及び上方から地面を見て、前記第1、第2及び第3の支柱が地面と接する点を結んで定義される平面で定義される三次元空間の所望の位置に作業者が移動可能なように、前記第1、第2及び第3の巻き取り機の、前記第1、第2及び第3のロープ各々の送り出し及び巻き取り長さ、及び、送り出し及び巻き取り速度を制御する、三次元施工工法。
[項目2]
前記第1、第2及び第3のロープ巻き取り機は、各々前記第1、第2及び第3の支柱の地面の接する位置に設置される、項目1に記載の三次元施工工法。
[項目3]
前記第1、第2及び第2の支柱の各々の間に、略水平方向に所定の間隔をおいて、第4、第5及び第6の支柱を設置し、
当該第4、第5及び第6の支柱の各々に第4、第5及び第6の滑車を設置し、
前記第4、第5及び第6の支柱の、当該第4、第5及び第6の滑車が設置される位置に対して所定の距離だけ下方の位置に、第4、第5及び第6のロープ巻き取り機を設置し、
前記第4、第5及び第6の滑車に各々第4、第5及び第6のロープを通し、
当該第4、第5及び第6のロープの一端は、各々第4、第5及び第6のロープ巻き取り機に接続される、項目1に記載の三次元施工工法。
[項目4]
当該第4、第5及び第6のロープの他端は運搬物に接続される、項目3に記載の三次元施工工法。
[項目5]
三次元空間で施工を行うための三次元施工システムであって、
略水平方向に相互に所定の間隔をおいて設置される、第1、第2及び第3の支柱と、
当該第1、第2及び第3の支柱に設置される、第1、第2及び第3の滑車と、
前記第1、第2及び第3の支柱の、当該第1、第2及び第3の滑車が設置される位置に対して所定の距離だけ下方の位置に設置される第1、第2及び第3のロープ巻き取り機と、
前記第1、第2及び第3の滑車に各々通される第1及び第2の第1、第2及び第3のロープと、
当第1、第2及び第3のロープ巻き取り機の各々の第1、第2及び第3のロープの送り出し及び巻き取りを制御する制御装置と、を有し、
当該第1、第2及び第3のロープの一端は、各々前記第1、第2及び第3のロープ巻き取り機に接続され、他端は作業者の着用具に接続され、
前記制御装置は、前記第1及び第2の滑車が各々設置される位置、及び前記構造物の当該第1及び第2の滑車が設置される位置の下方において地面と各々接する位置で定義される平面、及び上方から地面を見て、前記第1、第2及び第3の支柱が地面と接する点を結んで定義される平面で定義される三次元空間の所望の位置に作業者が移動可能なように、前記第1、第2及び第3の巻き取り機の、前記第1、第2及び第3のロープ各々の送り出し及び巻き取り長さ、及び、送り出し及び巻き取り速度を制御する、三次元施工システム。
[項目6]
前記第1、第2及び第3のロープ巻き取り機は、各々前記第1、第2及び第3の支柱の地面の接する位置に設置される、項目5に記載の三次元施工システム。
[項目7]
前記第1、第2及び第2の支柱の各々の間に、略水平方向に所定の間隔をおいて設置される、第4、第5及び第6の支柱と、
当該第4、第5及び第6の支柱の各々に設置される、第4、第5及び第6の滑車と、
前記第4、第5及び第6の支柱の、当該第4、第5及び第6の滑車が設置される位置に対して所定の距離だけ下方の位置に設置される、第4、第5及び第6のロープ巻き取り機と、
前記第4、第5及び第6の滑車に各々通される第4、第5及び第6のロープと、を有し、
当該第4、第5及び第6のロープの一端は、各々第4、第5及び第6のロープ巻き取り機に接続される、項目5に記載の三次元施工システム。
[項目8]
当該第4、第5及び第6のロープの他端は運搬物に接続される、項目7に記載の三次元施工工法。
【0015】
<第1の実施形態>
以下、図面を用いて本発明の第1の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムについて説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムの構成の一例を示す図である。
【0017】
図1において、まず、三次元空間施工システム1は、地面に対して略直立して設置される一対の支柱2A及び2Bを有する。支柱2A及び2Bの設置間隔は、施工対象物(例えば、構造物21)の大きさや施工範囲に応じて所定の距離とすることができる。支柱は、例えば、木製または鋼製の角柱や円柱状のものとすることができる。同様に、支柱の高さ方向の長さについても、施工対象物の大きさや施工範囲に応じて所定の長さとすることができる。
【0018】
また、支柱は、既知の方法により地面に固定することができるが、例えば、支柱の地面側の端部に車輪を設けることで支柱自体を自走させることもできるし、また、移動作業車の荷台に積載することで、作業車とともに移動することもできる。または、支柱に替えて移動クレーン車を用いることもできる。さらに、施工対象の構造物の一部に後述の滑車及びロープ巻き取り機を設置することが可能であれば、支柱を用いないこともできる。
【0019】
また、三次元空間施工システム1は、支柱2A及び2Bの地面と接する位置近傍に各々、ロープを巻き取り/送り出しが可能なロープ巻き取り機4A及び4B(例えば、ドラム)を有する。ロープ巻き取り機4A及び4Bは、後述の滑車5A及び5Bに対して下方に位置していれば、支柱2A及び2Bの任意の位置に各々固定されてもよいし、地面に設置されてもよい。ロープ巻き取り機4A及び4Bは、後述するように、ロープの巻き取り及び送り出しを自動で制御するために、電動モータ及びロープの巻き取り/送り出し量をカウントするカウンタ及び速度計を内蔵することが好ましい。
【0020】
また、三次元空間施工システム1は、支柱2A及び支柱2Bの上端に各々、滑車5A及び5Bを有する。例えば、滑車は、支柱にアンカーを設置し、アンカーから接続部材を介して設置することができるし、他の方法を用いることができる。上述のように、滑車5A及び5Bは、支柱に限らず、施工対象の構造物にも設置可能である。
【0021】
また、三次元空間施工システム1は、ロープ3A及び3Bを有する。ロープ3A及び3Bとして、任意の種類及び特性を有するロープを使用することが可能だが、引っ張り力に対応可能な強度を有するものが好ましい。ロープ3A及び3Bは各々、滑車5A及び5Bに通され、一端を巻き取り機4A及び4B(以後、「ドラム」という)に接続され、他端を作業員6の着用具(例えば、ハーネス)に接続される。
【0022】
このように、ロープ全体の構造として、ロープ3A及び3Bが作業員6を中心として、両端をドラムに接続されることで、作業員6は、構造物21の、滑車5A及び5Bの二点、及び、二点の下方の地面に接する位置で定義される作業空間において、ドラム4A及び4Bが各々、ロープ3A及び3Bを巻き取り、または、送り出すよう作動することで、自由に移動が可能となる。
【0023】
理論的には、作業員6以外の複数名の作業員がドラム4A及び4Bに待機し、作業員6の指示に従ってドラムによるロープの巻き取り/送り出しの作業を行うことで、作業員6の移動をサポートすることは可能であるが、本三次元空間施工システムにおいては、さらに制御装置7を有することで、作業空間内の移動を自動で行うことができる。
【0024】
制御装置7は、制御部8、記憶部7及び送受信部8を少なくとも有する。
【0025】
制御部8は、システム全体の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御、及びアプリケーションの実行及び認証処理に必要な情報処理等を行う演算装置である。例えば制御部10はCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部9に展開されたプログラム等を実行して各情報処理を実施する。
【0026】
記憶部9は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶と、を含む。メモリ11は、プロセッサ10のワークエリア等として使用され、また、ゲームサーバ1の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種設定情報等を格納する。
【0027】
また、図示しないが、制御装置7は、ストレージを有することもできる。ストレージは、アプリケーション・プログラム等の各種プログラムを格納する。各処理に用いられるデータを格納したデータベース(図示せず)がストレージに構築されていてもよい。
【0028】
送受信部10は、制御装置7をインターネット等のネットワークに接続する。なお、送受信部10は、Bluetooth(登録商標)及びBLE(Bluetooth Low Energy)の近距離通信インターフェースを備えていてもよい。送受信部10は、作業員6が、移動指示機器11を携帯して、作業空間内の移動を制御装置に指示する場合、移動指示機器からの指示信号を、ネットワークを介して受信する。
【0029】
また、図示しないが、制御装置7は、入出力部を備えることもできる。入出力装置は、例えば、作業員が作業空間内を移動するため、システムを操作するために指示を入力するキーボード・マウス類、タッチパネル等の情報入力機器、及びディスプレイ等の出力機器である。または、別途、特に緊急時に、作業空間内の移動その他の処理を指示する入力指示装置12を備えることもできる。
【0030】
また、図示しないが、制御装置7は、上記各要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号及び各種制御信号を伝達するバスを備えることができる。
【0031】
また、
図1において、作業員6が、構造物21の屋根で施工を行う場合、本施工システム1によれば、仮設足場が不要となる分、作業員の施工性の確保及びそれに伴う安全性の確保が必要となってくる。ここで、作業員の施工性を確保するために、(図示しない)作業員のウェイト制御装置を設けることができる。ウェイト制御装置は、ロープで作業者の体重を軽減する装置であり、例えば、入力指示器11または入力指示部12にウエイトコントロールダイヤルを追加し、作業員の体重を50%に軽減するよう指示すると、例えば、作業員の体重80kgが40kgにまで軽減される。例えば、作業員が屋根に立っている場合、ロープの引っ張り力が付加されていない状態では、作業員の体重80kgはそのまま屋根に作用するのに対し、ロープにより重力と反対方向に引っ張り力を付加することで屋根に作用する力を軽減し、かつ、その力を調整することが可能となる。引っ張り力の調整は、制御装置7とドラム4A及び4Bが連携して実行することができる。このように、作業員のウェイト制御をすることで、作業員は、仮設足場に立つような感覚で、屋根面を足掛かりに施工することができつつ、その自重を軽減することができるので、急こう配の屋根においても施工することが可能である。
【0032】
また、作業員6が屋根で作業を行う場合、作業員の安全性を確保するために、本施工システム1は、(図示しない)落下速度制御装置を備えることができる。落下速度制御装置は、屋根面端部より落下した場合でも、指定した速度以下(例:秒速1m以下)での低降下速度を確保し、墜転落事故を防止することが可能な装置であり、制動機構付きのウィンチ等を用いることができる。
【0033】
図2に、本発明の第1の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムのうち、作業員による移動指示機器の一例を示す図である。
図2に示すように、移動指示機器11は、例えば、作業員が携帯可能なように、腕時計のような形態を有することができる。移動指示機器11は、作業空間内を移動するための指示を行う操作パネルを有し、操作パネルは、例えば、地面に対して上下(高さ)・水平方向に移動するよう指示するボタン22、斜め方向に移動するよう指示するボタン23、指示を確定するための確定ボタン24、及び移動速度を調節するための移動速度調節ボタン25を備えることができる。
【0034】
特に、移動指示の誤操作を防止するため、移動指示を、方向ボタン22と確定ボタン24とを同時に押下することにより確定する仕様とすることもできる。また、移動速度は、例えば、作業空間における細かい移動に対応し得るために、低速域において、0.1m/s〜0.3m/sの範囲で調節可能とし、また、通常の移動速度として、1.0m/s、さらに、高速(プロフェッショナル用)の移動速度として、2m/2まで調節可能とすることが好ましい。また、速度に対応して、例えば、レベル1(0.1m/s)、レベル2(0.2m/s)、レベル3(0.3m/s)、レベル4(1.0m/s)、レベル5(2.0m/s)というように、作業者が複数のレベルに速度調節を指示できるようにすることもできる。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムのうち、三次元空間における作業員の移動の一例を示す図である。
【0036】
上述のように、作業空間における作業員の移動は、制御装置7の制御部8で実行されるプログラムによる処理により、作業員に指示に応じて、ドラムがロープの巻き取り/送り出しを制御することにより、実現することができる。以下、
図3乃至
図5を例に挙げながら、制御部8によって実行される処理を、手順を追って説明する。
【0037】
まず、
図4に示すように、例えば、作業員が、施工作業を開始するため、地面の地点Aから作業空間中央の所定の高さBまで移動するよう、移動指示器11の上方向のボタン22を用いて指示する。
【0038】
当該指示信号は、ネットワークを介して制御装置7の送受信部10において受信される(S101)。受信した指示信号は、制御装置7内において、制御部8に送信される。
【0039】
制御部8は、指示信号を基に、指示が示す移動方向を確認し、移動方向に応じて、ドラム4A及び4Bによる、各々ロープ3A及び3Bの巻き取り及び送り出し制御を決定する。まず、ドラム4A及び4Bが各々、ロープの巻き取り制御を行うか、送り出し制御を行うか、を決定し、移動距離に応じたロープの巻き取り/送り出し長さを決定する(S102)。
【0040】
例えば、
図4に示すように、作業員が、地点Aから地点Bまで真上方向に移動する指示を行う場合、制御部8は、ドラム4A及び4Bが、ロープ3A及び3Bを各々巻き取る制御を行うよう決定し、地点Aから地点Bまでの移動距離に応じたロープの巻き取り長さを、移動前後の滑車5A及び5Bから作業員6を結ぶロープ3A及び3Bの各々の長さを比較することで演算し、決定する。
【0041】
次に、制御部8は、指示信号を基に、移動方向に応じて、ドラム4A及び4Bによる、各々ロープ3A及び3Bの巻き取り及び送り出し速度を決定する(S103)。
【0042】
図4の例の場合、作業員は、地点Aから地点B、または、地点Bから地点Cに真上方向に移動する指示を行っているので、制御部8は、ドラム4A及び4Bが、等速でロープ3A及び3Bを巻き取るよう決定する。ここで、作業員からの速度調節の指示に応じて、速度を調節することもできる。地点Bから地点Cまで移動する指示を行う場合の巻き取り速度もまた同様である。
【0043】
次に、制御部8は、決定された、ドラム4A及び4Bによる、ロープの巻き取り/送り出し方向及び長さ、及び速度を制御する信号をドラム4A及び4Bに対して送信する(S104)。
【0044】
図4の例において、制御部8は、ドラム4A及び4Bが各々、等速で、演算により算出した長さだけロープを巻き取るよう制御信号を、ドラム4A及び4Bに対して各々送信する。ドラム4A及びドラム4Bは、制御信号に基づいて、指示された速度及び長さだけロープを巻き取るよう動作する。
【0045】
これにより、
図4において、ロープ3A及び3Bが等速で決められた長さだけ巻き取られ、これに伴い、作業者は地点Aから地点Bに移動することができる。
【0046】
ここで、作業者が、ロープ3A及びロープ3Bが限りなく水平な関係となる高さに近い位置(例えば、
図4における地点C)まで移動しようと試みると、ドラム4Aによるロープ3Aに対する引っ張り力及びドラム4Bによるロープ3Bに対する引っ張り力が増大し、最終的には、ロープの強度を上回り、ロープが破断する可能性がある。したがって、制御部8は、例えば、ロープ3A及び3Bがなす角度αが所定角度以下(例えば、120°以下)になったときに、ドラム4A及び4Bによるロープの巻き取りを停止するよう制御することができる。または、支柱2Aまたは2Bの所定の高さの位置にセンサを設け、作業者が所定の高さの位置にまで上昇したことを検出し、ドラム4A及び4Bの動作を停止させるよう制御することもできる。
【0047】
また、
図5に示すように、作業者が、地点Dから地点Eに向けて、真横(水平方向)に移動したい、と考え、移動指示器により指示を行うと、制御部8は、指示信号に基づき、ドラム4Aについては、ロープ3Aを移動距離に対応する分だけ巻き取り、ドラム4Bについては、ロープ3Bを移動距離に対応する分だけ送り出すよう決定する。また、ここで、ドラム4Aによる、ロープ3Aの巻き取り速度と、ドラム4Bによる、ロープ3Bの送り出し速度を等速としてしまうと、作業員を水平方向に移動させることは困難であるので、ドラム4Aの巻き取り速度とドラム4Bの送り出し速度とを制御する必要がある。制御部8は、ドラム4A及びドラム4Bの、各々ロープ3Aの巻き取り速度とロープ3Bの送り出し速度を算出し、巻き取り/送り出し速度をドラム4A及びドラム4Bを制御する信号を、ドラム4A及びドラム4Bに各々送信する。ドラム4A及び4Bは、制御信号に基づいて、指示された速度及び長さだけロープを巻き取り、または、送り出すよう制御する(例えば、
図5に示す例の場合、ドラム4Aによるロープ3Aの巻き取り速度より、ドラム4Bによるロープ3Bの送り出し速度の方が速くなるよう制御される)。これにより、
図5において、ロープ3A及び3Bが各々、決められた速度及び長さだけ巻き取られ、または、送り出され、これに伴い、作業者は地点Dから地点Eに水平移動することができる。
【0048】
図6は、本発明の第1の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムの構成の他の一例を示す図である。
【0049】
図6に示すように、三次元空間施工システム1の支柱2Aと支柱2Bとを接続する補強部材31が更に設けられている。補強部材22は、例えば、木製または鋼製の角柱や円柱状のものとすることができ、支柱2A及び2Bと同じ材料のものを使うことができる。補強部材31を設けることで、支柱2A及び2Bをはじめ、三次元施工空間システム全体の強度を強化することができる。
【0050】
また、補強部材31を利用して、ロープ破断等による作業者の転落を防止するためのバックアップ32を設けることができる。
【0051】
以上、本実施形態の三次元施工工法及び施工システムによれば、足場の施工を不要とするため工期を削減しつつ、施工構造物による高さを問題とすることなく、施工自由度を顕著に向上させることができ、かつ、安全装置であるロープを着用することが作業の前提となるため、安全装置の着用忘れによる事故が起きる可能性もなく、画期的な施工方法及び施工システムを提供することができる。
【0052】
<第2の実施形態>
図7は、本発明の第2の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムの構成の一例を示す図である。以下に言及する以外の本実施形態の施工システムの構成は、第1の実施形態と基本的に同じであるので、説明を省略する。
【0053】
図7(a)は、第1の実施形態による三次元空間施工システムを真上から見た図である。前述の通り、第1の実施形態においては、施工システムにおいて、一対のロープ3A及び3Bを備えており、基本的には、作業者は、ロープ3A及び3Bの設けられた範囲でのみ移動することができた。すなわち、真上から見て、一つの直線を往復する範囲で作業することが可能であった。
【0054】
図7(b)に示すように、本実施形態においては、三次元空間施工システム1は、さらにもう一対のロープ13A及び13Bを備える。その他の構成は、基本的に第1の実施形態において説明したシステム構成と同じであるため、本実施形態においては説明を省略するが、ロープ13A及び13Bを備えるにあたり、本施工システムは、一対の支柱、滑車、及びドラムを備える。
【0055】
図7(b)において、作業者は、ロープ3A及び3Bに接続されるが、作業空間を、ロープ13A及び13Bにより実現される作業空間に移動したいとするときに、自身の着用具(例えば、ハーネス)のロープ接続具(例えば、カラビナ)を使って、ロープ3Aをロープ13Aに付け替え、さらに、ロープ3Bをロープ13Bに付け替えることで、ロープ13A及び13Bによる可動空間に移動することが可能となる。
【0056】
本実施形態の三次元空間方法及び施工システムによれば、施工対象が複雑な構造物である場合など、より立体的な施工が必要となる場合に、より施工自由度を向上させることができる。
【0057】
<第3の実施形態>
図8は、本発明の第3の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムの概念を説明する図である。以下に言及する以外の本実施形態の施工システムの構成は、第1の実施形態と基本的に同じであるので、説明を省略する。
【0058】
図8は、第1及び第2の実施形態におけるシステム構成において、作業者が移動可能な作業空間(すなわち、作業者から見て左右方向)に対し、略直交する方向(すなわち、作業者から見て前後方向)にロープが揺動する様子を表している。特に、作業者が作業をする際に水平方向のベクトルが作業者を揺動させ作業がスムーズにいかない可能性が生じる、また、作業者が作業空間を移動する際に、ロープの前後方向への揺れが大きくなり、その結果、移動がスムーズにいかない可能性が生じる。
【0059】
図9は、本発明の第3の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムの構成の一例を示す図である。すなわち、本実施形態における三次元空間施工システムは、作業者から見て前後方向に形成される面で定義される領域のいずれかの位置、例えば、支柱や地面等の位置に、ロープ固定用の固定部41A、41B、42A、42B(例えば、アンカー)を設け、ロープ3A及び3Bの前後方向への揺れを防止するためのロープ14A及び14B、または、15A及び15Bの一端を、各々固定部41A及び41B、または、42A及び42Bに接続させ、他端を各々作業者の着用具(例えば、ハーネス)に接続させる。作業者から見て左右方向のロープ3A及び3Bの、作業者からみて前後方向に生じる揺れを防止することが目的でるので、作業者から見て前後方向に構成される面で定義される領域であれば、ロープを接続する固定部の設置位置は上下(高さ)方向のどの位置でも良い。図示しないが、作業者から見て上方に固定部を設け、揺動防止用ロープを設けることも可能である。
【0060】
<第4の実施形態>
図10は、本発明の第4の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムの構成の一例を示す図である。以下に言及する以外の本実施形態の施工システムの構成は、第1の実施形態と基本的に同じであるので、説明を省略する。
【0061】
本実施形態の特徴として、
図10に示すように、作業者が、3本のロープ3A、3B、3Cによって接続されており、その施工空間の自由度がより高くなっている。すなわち、作業者は、地面に対する上下(高さ)方向に加えて、水平面全体、すなわち、
図10における、ロープ3A、3B及び3Cを巻き取り/送り出すドラムで囲まれる領域内で作業することが可能である。
【0062】
さらに、本実施形態の特徴として、本施工システムは、
図10に示すように、ロープ16A、16B、16Cを設けており、これらのロープの一端は、各々のドラムに接続されるが、他端については作業者ではなく、運搬物に接続されている。特に、運搬物については、クレーンを支柱に替えて使用することも積極的に考えられるので、施工コストを削減することができる。
【0063】
本実施形態の施工システムにおいて、
図10において、作業者が施工空間を移動する際に、運搬物用のロープと交差して移動が阻まれることがある。例えば、
図10において、作業者が、ロープ3C上の位置からロープ3Aまたは3Bの位置に移動したいとする。このとき、ロープ3Aまたは3Bが、運搬物用ロープ16Aまたは16Bと各々交差するため、作業者はこれ以上移動しようとすると、ロープが絡まってしまい、施工に支障が生じることになる。そこで、作業者は、ハーネスに接続されているロープ3A乃至3Cのいずれかのロープを一本だけ一旦外して、運搬用ロープと交差しない状態となるよう、外したロープを再接続することができる。特に、作業者はロープを一本外したとしても、残り二本で依然として接続しているため、安定した状態でロープの脱着の作業をすることができる。このように、本実施形態のように、例え作業者用ロープと運搬物用ロープを設けたとしても、作業者は、施工自由度を損ねることなく広範囲で施工をすることができる。また、再接続の際に空間位置が偏っている場合は水平方向のベクトルが大きくなるため、3A乃至3Cの作業者側に移動用補助ロープを各々に付け、再接続の際に3つのロープのうち1つのロープの接続が損なわれない移動方式をとることもできる。
【0064】
<第5の実施形態>
図11は、本発明の第5の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムの構成の一例を示す図である。以下に言及する以外の本実施形態の施工システムの構成は、第1の実施形態と基本的に同じであるので、説明を省略する。
【0065】
図11に示すように、本実施形態の施工システムは、複数の作業者が同時に施工を行うことが可能なように、複数の作業者6A、6Bにロープ等で接続する接続部材51を設け、接続部材51は、ロープ3A及び3Bの一端に各々接続する。例えば、複数の作業者が、大きいサイズの平板等を、水平な状態を保ったまま運搬し、構造物の壁面に取り付けたいような場合、接続部材51に接続される作業者同士の間隔は適宜調整が可能であるので、平板のサイズに応じて、作業者の配置を検討したうえで、作業者を接続部材51に取り付けることができる。
【0066】
<第6の実施形態>
図12は、本発明の第5の実施形態による三次元空間施工工法及び施工システムの構成の一例を示す図である。
図12は、三次元空間施工システムのうち、特に、支柱2B周辺に着目した図である。
図12(a)(b)に各々示すように、例えば、破線で描かれた滑車の位置において、屋根軒先等の空中障害物がロープ3Bと干渉するのを避けるため、滑車5B自体を自在に移動させることにより、作業者と吊りポイントの間をクリアにすることができる。
【0067】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
本発明の一の実施形態は、三次元空間で施工を行うための三次元施工工法であって、略水平方向に相互に所定の間隔をおいて、第1、第2及び第3の支柱を設置し、第1、第2及び第3の支柱の各々に、第1、第2及び第3の滑車を設置し、第1、第2及び第3の支柱の、第1、第2及び第3の滑車が設置される位置に対して所定の距離だけ下方の位置に、第1、第2及び第3のロープ巻き取り機を設置し、第1、第2及び第3の滑車に各々第1、第2及び第3のロープを通し、第1、第2及び第3のロープの一端は、各々前記第1、第2及び第3のロープ巻き取り機に接続され、他端は作業者の着用具に接続され、第1、第2及び第3の滑車が各々設置される位置、及び第1、第2及び第3の支柱の当該第1、第2及び第3の滑車が設置される位置の下方において地面と各々接する位置で定義される平面、及び上方から地面を見て、第1、第2及び第3の支柱が地面と接する点を結んで定義される平面で定義される三次元空間の所望の位置に作業者が移動可能なように、第1、第2及び第3の巻き取り機の、第1、第2及び第3のロープ各々の送り出し及び巻き取り長さ、及び、送り出し及び巻き取り速度を制御する。