(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497799
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】竪配管の施工方法および該方法に用いられる竪管部材
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20190401BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20190401BHJP
F16L 59/04 20060101ALI20190401BHJP
F16L 59/147 20060101ALI20190401BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
E04G21/14
F16L1/00 C
F16L59/04
F16L59/147
E04B1/94 F
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-215461(P2014-215461)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-79776(P2016-79776A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】村松 貴之
【審査官】
村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−055067(JP,A)
【文献】
特開2003−056742(JP,A)
【文献】
実開昭56−173274(JP,U)
【文献】
特開2012−225403(JP,A)
【文献】
特開平06−241352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14−21/22
E04B 1/94
F16L 1/00
F16L 59/04−59/05
F16L 59/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の竪管部材を垂直状態で順次揚重し、建物の各階の床スラブに形成された開口部に挿通させて固定する竪配管の施工方法であって、
竪管部材の上下端部と建物の各階の床スラブに対応する部分を除いて竪管部材の周面を予め発泡ゴム系断熱材で被覆しておき、竪管部材の周面が露出した部分において竪管部材を床スラブに固定し、上の竪管部材の下端と下の竪管部材の上端を接続した後、竪管部材の周面が露出した部分をグラスウールからなる断熱材で被覆することを特徴とする竪配管の施工方法。
【請求項2】
複数の竪管部材を垂直状態で順次揚重し、建物の各階の床スラブに形成された開口部に挿通させて固定する竪配管の施工方法であって、
竪管部材の上下端部と建物の各階の床スラブに対応する部分を除いて竪管部材の周面を予め発泡ゴム系断熱材で被覆しておき、竪管部材の周面が露出した部分に支持金物を取り付けて竪管部材を床スラブに固定し、上の竪管部材の下端と下の竪管部材の上端を接続した後、竪管部材の周面が露出した部分をグラスウールからなる断熱材で被覆することを特徴とする竪配管の施工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の竪配管の施工方法に用いられる竪管部材であって、予め発泡ゴム系断熱材が被覆されていることを特徴とする、竪管部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の竪配管を施工する方法と該方法に用いられる竪管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
空調設備や衛生設備などの各種建築設備用の竪配管を高層建築物等の建物に施工する場合、複数本に分割された竪管部材を例えばタワークレーンなどで垂直状態で順次揚重し、それらをフレームや固定部材などを用いてユニット化して竪配管を施工する工法が従来から採用されている(例えば特許文献1〜3参照)。かかる工法によれば、竪配管の建築物への取付工事と建築工事の鉄骨建方とを同時に行え、施工の容易性、工期の短縮化を図ることができる。
【0003】
施工に用いられる竪管部材の上端には吊り下げピースが取り付けられており、それらにシャックルなどの連結具でワイヤを接続し、ワイヤをタワークレーンなどの揚重機によって巻き上げながら竪管部材を垂直状態の姿勢で吊り上げて揚重する。そして、吊り下げピースをガイドとして上下の竪管部材の端部を突き合せ、溶接等の手段によって両者を接続することにより、建物内に竪配管が施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3688837号公報
【特許文献2】特許第4750326号公報
【特許文献3】特許第5300311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうして建物に施工された竪配管には例えば空調用の冷温水、各種熱媒などが通されるため、竪配管を断熱材で被覆することが必要となる。従来竪配管の施工においては、断熱材の性質から竪管部材に予め断熱材を装着することはせず、現場に竪管部材を設置して竪配管を組み立てた後に、竪配管全体を断熱材で被覆するのが一般的であった。なぜならば、断熱材として一般的に使用されているグラスウールは不燃材料であるが吸湿性のある繊維構造であり、施工前の竪配管にグラスウールを装着した場合、施工前の保管状態において雨などにさらされると吸湿・保水してしまう。また同様に断熱材として使用されているポリスチレンフォームは多少の耐水性はあるが可燃材料であり、施工前の保管状態において現場で発生する溶接火花などによって燃えてしまう心配がある。このため竪管部材にグラスウールやポリスチレンフォームからなる断熱材を装着した場合、施工前の保管状態において耐火性のあるビニールシートなどで養生しておくことが必要となる。
【0006】
一方、現場工数を削減する観点からは、現場で竪配管を組み立てた後に断熱材で被覆するよりは、予め施工前の竪管部材に断熱材を装着しておき、現場での作業をなるべく低減させることが望ましい。しかるに従来は養生しておくといった手間が煩雑であるため、竪配管を組み立てた後に全体を断熱材で被覆せざるを得なかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、現場工数をなるべく低減できる竪配管の施工方法とその方法に用いられる竪管部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、複数の竪管部材を垂直状態で順次揚重し、建物
の各階の床スラブに形成された開口部に挿通させて固定する竪配管の施工方法であって、竪管部材の上下端部と建物
の各階の床スラブに対応する部分を除いて竪管部材の周面を予
め発泡ゴム系断熱材
で被覆しておき、
竪管部材の周面が露出した部分において竪管部材を
床スラブに固定し、上の竪管部材の下端と下の竪管部材の上端を接続した後、
竪管部材の周面が露出した部分をグラスウールからなる断熱材で被覆することを特徴とする竪配管の施工方法が提供される。
【0009】
また本発明によれば、複数の竪管部材を垂直状態で順次揚重し、建物の各階の床スラブに形成された開口部に挿通させて固定する竪配管の施工方法であって、竪管部材の上下端部と建物の各階の床スラブに対応する部分を除いて竪管部材の周面を予め発泡ゴム系断熱材で被覆しておき、竪管部材の周面が露出した部分に支持金物を取り付けて竪管部材を床スラブに固定し、上の竪管部材の下端と下の竪管部材の上端を接続した後、竪管部材の周面が露出した部分をグラスウールからなる断熱材で被覆することを特徴とする竪配管の施工方法が提供される。
【0010】
また本発明によれば、上記竪配管の施工方法に用いられる竪管部材であって、
予め発泡ゴム系断熱材が被覆されていることを特徴とする、竪管部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、竪配管を施工する現場では竪管部材の端部と建物への設置部分のみを断熱材で被覆すれば良いので、現場工数を低減することができる。発泡ゴム系断熱材は独立気泡構造であり透湿しにくいため吸湿・保水することがほとんどなく、また酸素指数が36程度と高いため現場で燃える心配が無いといった利点がある。そのため施工前に現場で保管する場合でも養生の手間が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】上下端部と建物への設置部分を除いて発泡ゴム系断熱材が被覆されている本発明の実施の形態にかかる竪管部材の説明図である。
【
図4】一番上の竪管部材を揚重してる状態の説明図である。
【
図5】一番上の竪管部材を建物に設置した状態の説明図である。
【
図6】上から二番目の竪管部材を揚重してる状態の説明図である。
【
図7】上の竪管部材の下端と下の竪管部材の上端を接続する状態の説明図である。
【
図8】竪管部材を建物に設置して竪管部材の上下端を接続した後、竪管部材の上下端部と建物への設置部分を断熱材で被覆する状態の説明図である。
【
図9】竪管部材を建物に設置する場合の一具体例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態にかかる竪配管の施工方法と竪管部材を図面を参照にして説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
図1に示すように、竪管部材1は両端が開口した中空円筒形状の管材10の上端1aには吊り下げピース11が取り付けられている。吊り下げピース11の上端部には、後述するように吊り下げ用のワイヤ31を接続する孔12が設けられている。また、吊り下げピース11の内側面は、上に位置する竪管部材1の下端1bを接続する際にガイドとなるガイドテーパー面13が形成されている。さらに竪管部材1の側面(管材10の側面)には、管材10の中心軸に対して直交するように突出した、管材10よりも径の小さい取出し管15が接続されている。各取出し管15の先端には弁16が取り付けられている。この実施の形態に示す竪管部材1(管材10)の長さ(高さ)Lは、後述するように竪配管5が施工される建物3の三階分の高さとほぼ等しく、例えば12.3mである。
【0015】
図1に示すように、竪管部材1に装着される発泡ゴム系断熱材2は、所定の厚さtを持った矩形板状の発泡ゴム系断熱基材20を、竪管部材1の管材10の周面を覆うようにC字状に湾曲させた形状を有している。後述するように、この発泡ゴム系断熱基材20を竪管部材1の管材10の周面に外側から巻き付け、端面21同士を突き合せることにより、竪管部材1の周面を発泡ゴム系断熱材2によって被覆することができる。
【0016】
発泡ゴム系断熱基材20は、天然ゴムまたは合成ゴムに有機発泡剤、架橋剤、軟化剤などを練り込み、密閉された型内で加硫しながら発泡剤を分解させてスポンジ状に形成するものが例示でき、ここでは株式会社K−FLEX JAPAN製の商品名K−FLEX ST(チューブタイプ)の例で説明する。この製品からなる発泡ゴム系断熱基材20は、ゴムラテックスを泡立たせたまま凝固させた後、加硫して作る柔軟な多孔質のスポンジ状ゴムである(同社HP クイックシステムのページ参照)。なお、シートタイプの発泡ゴム系断熱基材20を切断し、竪管部材1に巻き付けて接着剤で固定しても良い。発泡ゴム系断熱材2(発泡ゴム系断熱基材20)の厚さtは、竪配管1に通される熱媒が冷水の場合は例えば50mm程度、温水の場合は例えば19mm程度とする。
【0017】
発泡ゴム系断熱基材20の一方の端面21には、取出し管15を受容する切欠き部22が設けられている。この切欠き部22は、発泡ゴム系断熱基材20の一方の端面21の一部を取出し管15の形状に合わせた大きさに鋏等で切り取ることにより、容易に設けることができる。後述するように、竪管部材1の周面を発泡ゴム系断熱材2によって被覆する際に、竪管部材1の側面(管材10の側面)から突出している取出し管15をこの切欠き部22に受容することによって、竪管部材1の周面に発泡ゴム系断熱材2を密着させて被覆することができる。
【0018】
発泡ゴム系断熱材2の高さhは、後述するように竪配管5を施工する建物3の各階の天井高さHよりも僅かに短い長さとなっている。
【0019】
そして
図3に示すように、建物3の三階分の高さとほぼ等しい長さを有する竪管部材1において、各階に対応させて上段と中段と下段の各高さに発泡ゴム系断熱材2(2a、2b、2c)をそれぞれ取り付けて被覆する。この場合、竪管部材1の側面(管材10の側面)から突出している取出し管15を、発泡ゴム系断熱基材20の一方の端面21に設けられた切欠き部22に受容させて管材10に巻き付けた発泡ゴム系断熱基材20の端面21同士を突き合せることにより、竪管部材1の周面に発泡ゴム系断熱材2を密着させて被覆することができる。発泡ゴム系断熱基材20の端面21同士を突き合せる際に寸法誤差などの要因で端面21同士の間に隙間が生じた場合は適当な詰め物やシール材を用いて隙間をシール止めしておく。
【0020】
また、このように竪管部材1を発泡ゴム系断熱材2で被覆する場合、竪管部材1の上端部および下端部と、上段の発泡ゴム系断熱材2aと中段の発泡ゴム系断熱材2bとの間、および、中段の発泡ゴム系断熱材2bと下段の発泡ゴム系断熱材2cとの間には、発泡ゴム系断熱材2によって被覆されず、竪管部材1(管材10)の周面が露出した部分25をそれぞれ設けるようにする。なお上述したように、竪管部材1(管材10)の長さ(高さ)Lは建物3の三階分の高さとほぼ等しく(例えば12.3m)、一方で発泡ゴム系断熱材2の高さhは建物3の各階の天井高さHよりも僅かに短い長さであるため、両者の長さの関係から、このように竪管部材1の上端部および下端部と、上段の発泡ゴム系断熱材2aと中段の発泡ゴム系断熱材2bとの間、および、中段の発泡ゴム系断熱材2bと下段の発泡ゴム系断熱材2cとの間に、竪管部材1(管材10)の周面が露出した部分25をそれぞれ設けることが可能である。
【0021】
なお、竪管部材1の製造作業(管材10の切断、吊り下げピース11、取出し管15、弁16の取り付けなど)や、竪管部材1への発泡ゴム系断熱材2の取り付け作業は、現場以外の工場などで予め行っておく。また、
図3中に一点鎖線で示したように、竪管部材1を被覆した発泡ゴム系断熱材2の外側に取出し管15が飛び出ている場合は、取出し管15の飛び出ている部分をさらに断熱材26で被覆しておいても良い。取出し管15は、例えば各階に設けたファンコイルユニット等の空調機器に熱媒を供給するための横引管に接続され、各階の天井部または床部の高さに位置させる。この場合、取出し管15の飛び出ている部分を被覆する断熱材26には、発泡ゴム系断熱材2と同様の素材を用いることが望ましい。
【0022】
こうして現場以外の工場などで予め発泡ゴム系断熱材2で被覆しておいた竪管部材1を、竪配管5の施工に必要な本数だけトラック等の運搬手段に積み込んで建物3の建設現場に搬入する。そして建物3の建設現場では、
図4に示すように、タワークレーンなどの揚重機器30から繰り出したワイヤ31の先端を、一本目の竪管部材1(管材10)の上端1aに取り付けられた吊り下げピース11に接続する。この場合、吊り下げピース11の上端部に設けられている孔12に、シャックル等を利用してワイヤ31の先端を接続することにより、竪管部材1を容易に吊り下げることが可能である。
【0023】
そして揚重機器30を操作してワイヤ31を巻き上げ、一本目の竪管部材1を建物3の内部において上昇させていく。なお、建物3の各階を構成する床スラブ35には、竪管部材1を上下方向に通過させるための図示しないシャフト用開口部が設けられており、竪管部材1はそのシャフト用開口部を通って建物3内を上昇させられる。
【0024】
こうして
図5に示すように竪管部材1を建物3内における所定の高さまで上昇させ、一本目の竪管部材1を建物3の床スラブ35に固定する。この場合、竪管部材1の上端部および下端部と、上段の発泡ゴム系断熱材2aと中段の発泡ゴム系断熱材2bとの間、および、中段の発泡ゴム系断熱材2bと下段の発泡ゴム系断熱材2cとの間には発泡ゴム系断熱材2によって被覆されていない、竪管部材1(管材10)の周面が露出した部分25がそれぞれ設けられているので、それらの露出した部分25に適当な治具等(例えばインシュレーション・スリーパー(断熱支持金物))を取り付けて床スラブ35に固定することができ、発泡ゴム系断熱材2は作業の邪魔とならない。なお、このように竪管部材1を建物3の床スラブ35に固定する作業が容易に行えるように、竪管部材1(管材10)の周面が露出した部分25の上下方向の幅(高さ)は数十cm程度とすると良い。こうして一本目の竪管部材1を建物3の床スラブ35に固定した後、ワイヤ31を一本目の竪管部材1から取り外す。
【0025】
次に
図6に示すように、揚重機器30から繰り出したワイヤ31の先端を二本目の竪管部材1(管材10)の上端1aに取り付けられた吊り下げピース11に接続する。この場合も同様に、吊り下げピース11の上端部に設けられている孔12に、シャックル等を利用してワイヤ31の先端を接続することにより、竪管部材1を容易に吊り下げることが可能である。
【0026】
そして一本目の竪管部材1の下端1bに二本目の竪管部材1の上端1aが密着するまで二本目の竪管部材1を上昇させる。この場合、
図7に示すように、二本目の竪管部材1の上端1aに取り付けられた吊り下げピース11のガイドテーパー面13に一本目の竪管部材1の下端1bを当てがいながら二本目の竪管部材1を上昇させていくことにより、一本目の竪管部材1の下端1bと二本目の竪管部材1の上端1aを正確に位置合わせして密着させることができる。
【0027】
こうして一本目の竪管部材1の下端1bに二本目の竪管部材1の上端1aを密着させた後、一本目の竪管部材1の下端1bと二本目の竪管部材1の上端1aを溶接等によって接続するとともに、二本目の竪管部材1を建物3の床スラブ35に固定する。この場合も同様に、二本目の竪管部材1の上端部および下端部と、上段の発泡ゴム系断熱材2aと中段の発泡ゴム系断熱材2bとの間、および、中段の発泡ゴム系断熱材2bと下段の発泡ゴム系断熱材2cとの間には発泡ゴム系断熱材2によって被覆されていない、竪管部材1(管材10)の周面が露出した部分25がそれぞれ設けられているので、それらの露出した部分25において一本目の竪管部材1の下端1bと二本目の竪管部材1の上端1aを溶接等することができるとともに、管材10の周面に適当な治具等を取り付けて二本目の竪管部材1を床スラブ35に固定することができ、発泡ゴム系断熱材2は作業の邪魔とならない。こうして一本目の竪管部材1の下端1bと二本目の竪管部材1の上端1aを溶接等によって接続し、二本目の竪管部材1を建物3の床スラブ35に固定した後、ワイヤ31を二本目の竪管部材1から取り外す。
【0028】
以後同様の工程を適宜繰り返し行い、建物3内のシャフト用開口部において所定本数の竪管部材1を直列に接続するとともに、各階の床スラブ35に竪管部材1を順次固定する。その後、
図8に示すように、竪管部材1(管材10)の周面が露出した部分25である竪管部材1の上下端1a、1bの接続部分および各発泡ゴム系断熱材2同志の間を断熱材36で被覆する。なお、このように竪管部材1の上下端1a、1bの接続部分および各発泡ゴム系断熱材2同志の間を被覆する断熱材36には、安価なグラスウールやロックウールなどを用いることができる。
【0029】
また各竪管部材1の取出し管15に設けられた弁16には、必要に応じて横引き管40を接続し、竪管部材1に通される冷温水や各種熱媒などを、建物3内の各階に適宜引き込めるようにする。なお、
図8中に一点鎖線で示したように、横引き管40を断熱材41で被覆しても良い。このように横引き管40を被覆する断熱材41にも、安価なグラスウールやロックウールなどを用いることができる。
【0030】
こうして建物3の内部に竪配管5が施工される。竪管部材1は現場搬入前に予め発泡ゴム系断熱材2で被覆されているので、竪配管5を施工する現場では竪管部材1の上下端1a、1bの接続部分と床スラブ35への固定部分や横引き管40をだけを断熱材36や断熱材41で被覆すれば良く、現場工数を低減することができる。また、予め竪管部材1を被覆しておく発泡ゴム系断熱材2は独立気泡構造であり透湿しにくいため吸湿・保水することがほとんどなく、また酸素指数が36程度と高いため現場で燃える心配が無いといった利点がある。そのため施工前に現場で保管する場合でも養生の手間が不要になる。なお発泡ゴム系断熱材2は紫外線に弱く、長時間日射に晒されることは望ましくない。そのため竪配管5が施工された後一か月以内程度には建物3の外装を行うことが好ましい。
【0031】
以上、本発明の実施の形態を例示して説明したが、本発明は例示した形態に限定されない。例えば図示の形態では建物3の三階分の高さとほぼ等しい長さを有する竪管部材1に3つの発泡ゴム系断熱材2を装着する例を説明したが、竪管部材1の長さは任意であり、また、竪管部材1に装着される発泡ゴム系断熱材2の個数も適宜変更される。また発泡ゴム系断熱材2の一例として株式会社K−FLEX JAPAN製の商品名K−FLEX ST(チューブタイプ)を示したが、同様に独立気泡構造で透湿しにくく難燃性の発泡ゴム系断熱材2であれば、他の製品を用いることができる。
【0032】
ここで
図9は、竪管部材1を建物3に設置する場合の一具体例を示している。この例では、上下階に位置する二つの床スラブ35のうち、上階の床スラブ35にスリーパー(インシュレーション・スリーパー(断熱支持金物))50を用いて竪管部材1を支持し、下階の床スラブ35には竪管部材1を支持しない形態を示している。なお、竪管部材1は建物3の各階の床スラブ35に固定する必要はなく、この例のように一部の階に対して支持することももちろん可能である。
【0033】
この
図9に示す形態では、竪管部材1の周囲が発泡ゴム系断熱材2とロックウールなどの断熱材51で予め被覆されている。但し、竪管部材1の周面には、発泡ゴム系断熱材2と断熱材51の何れにも被覆されず、竪管部材1の周面が露出した部分25が設けられている。なお、この
図9に示す形態では、スリーパー50を介して竪管部材1が支持される上階の床スラブ35に対応する箇所には竪管部材1の周面が露出した部分25が設けられているが、竪管部材1が支持されない下階の床スラブ35に対応する箇所では、竪管部材1の周面はロックウールなどの断熱材51で予め被覆された状態となっている。
【0034】
この
図9に示す形態では、上階の床スラブ35にスリーパー50を用いて竪管部材1を支持した後、建物3(上階の床スラブ35)への設置部分(竪管部材1の周面が露出した部分25)をグラスウールやロックウールなどの断熱材52で被覆する。この場合も先と同様に、竪配管5を施工する現場では竪管部材1の床スラブ35への固定部分など断熱材52で被覆するだけで足りるので、現場工数を低減できる。
【0035】
なお、この
図9に示した形態のように、竪管部材1の周囲を発泡ゴム系断熱材2の他にロックウールなどの断熱材51で予め被覆しておくことも可能である。また、床スラブ35に竪管部材1を支持しない箇所については、竪管部材1の周面が露出した部分25を設けておく必要はなく、発泡ゴム系断熱材2やロックウールなどの断熱材51で予め被覆しておくことができる。また、竪管部材1を床スラブ35に支持する治具として用いられるスリーパー50は、難燃性に優れ、広い温度範囲で使用が可能である。かかるスリーパー50を用いることにより、竪管部材1の伸縮にも対応でき、性能劣化を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、建物の竪配管を施工に有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 竪管部材
2 発泡ゴム系断熱材
3 建物
5 竪配管
10 管材10
11 吊り下げピース
12 孔
13 ガイドテーパー面
15 取出し管
20 発泡ゴム系断熱基材20
21 端面
22 切欠き部
25 竪管部材(管材)の周面が露出した部分
26 断熱材
30 揚重機器
31 ワイヤ
35 床スラブ
36 断熱材
40 横引き管
41 断熱材