【実施例】
【0030】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0031】
図2において、符号1は、建造物の屋根である。この屋根1は、この屋根1の基部となるトラス構造物2と、このトラス構造物2に締結具3により支持される一方、その上面側で屋根1の外面材を支持する母屋材4とを備えている。
【0032】
上記トラス構造物2は、多数のビーム材7と、これら各ビーム材7の端部同士を締結具8により連結する多数の球形状ジョイント部9とを有している。また、上記ビーム材7は、木材製で横断面が矩形のビーム本体12と、このビーム本体12の端部を上記締結具8により上記ジョイント部9に連結させる金属製の連結板13とを有し、この連結板13は、上記ビーム本体12の端部に形成されたスリット形状の切り欠き14に密嵌状に挿入される。
【0033】
全図において、上記ビーム本体12の端部と連結板13とを締結により連結する金属製の締結具16が設けられる。この場合、上記切り欠き14を挟む上記ビーム本体12の端部の各部分が第1、第2被連結材17,18とされ、上記連結板13が第3被連結材19とされる。
【0034】
上記締結具16は、互いに重ねられて面当接する上記第1〜第3被連結材17〜19に形成された同一軸心21上の各貫通孔22〜24と、これら各貫通孔22〜24に対し圧入される横断面が円形の軸体25と、この軸体25の軸方向の一端部に形成され、この軸体25よりも径大の鍔部26と、上記軸体25の他端部に形成される雄ねじであるねじ部27と、このねじ部27に螺合される袋ナットである螺合体28とを有している。具体的には、上記鍔部26は、上記軸体25の一端部に形成される雄ねじである他のねじ部31に着脱可能に螺合されて、上記軸体25の一端部に取り付けられる。
【0035】
なお、上記第1、第2被連結材17,18は、互いに別体であってもよく、また、これらのうちのいずれか一方のみが上記ビーム本体12の端部を構成するようにしてもよい。また、上記鍔部26は、上記軸体25の一端部に一体的に形成してもよい。また、上記ねじ部27や他のねじ部31を雌ねじとし、上記螺合体28や鍔部26に、上記雌ねじに螺合される雄ねじを形成してもよい。
【0036】
上記軸体25の長さ寸法は、上記第1〜第3被連結材17〜19の合計厚さ寸法よりもわずかに短い寸法とされる。上記軸体25は、その全体が上記貫通孔22〜24の全体に圧入されることにより、これら貫通孔22〜24の軸方向における所定位置に位置させられる。そして、上記第1〜第3被連結材17〜19は、上記軸体25の各端部に形成されたねじ部27と他のねじ部31とに螺合される上記鍔部26と螺合体28とにより挟み付けられて、互いに締結される。
【0037】
図1,3,4において、上記締結具16の鍔部26と螺合体28とにより、上記第1〜第3被連結材17〜19を挟み付けて締結するに際し、この締結作業が容易かつ迅速にできるようにするため、金属製の締結用治具35が用いられる。
【0038】
上記締結用治具35は、上記軸体25の軸心21上で上記ねじ部27に嵌脱可能に嵌合される横断面が円形の誘導治具36を備えている。この誘導治具36は、上記ねじ部27の軸方向の外方に向かってのテーパ形状とされて上記貫通孔22〜24への上記軸体25の圧入を誘導する。具体的には、この軸体25と誘導治具36の基部との各外径は互いに同寸法とされる。また、上記誘導治具36の基部に有底の雌ねじ37が形成され、この雌ねじ37が上記ねじ部27に着脱可能に螺合される。このねじ部27への誘導治具36の雌ねじ37の螺合状態(
図3,4)で、上記ねじ部27に上記誘導治具36は全体的に外嵌し、かつ、この誘導治具36の基部の端面は上記軸体25の他端部の端面に圧接する。
【0039】
なお、上記ねじ部27が雌ねじである場合には、上記誘導治具36の基部に上記雌ねじに螺合される雄ねじを形成すればよい。また、上記ねじ部27に対する誘導治具36の嵌合は、ねじによらずに弾性的な係止具によるものであってもよい。
【0040】
また、上記締結用治具35は、上記軸体25の軸心21上で上記他のねじ部31に着脱可能に螺合する円柱形状の入力治具38を備えている。この入力治具38は、上記貫通孔22〜24への軸体25の圧入用の外力Fを入力する。具体的には、上記入力治具38の外径は上記軸体25の外径よりも大きい寸法とされる。また、上記入力治具38には上記他のねじ部31側の端部に有底の雌ねじ39が形成され、この雌ねじ39が上記他のねじ部31に着脱可能に螺合される。この他のねじ部31への入力治具38の雌ねじ39の螺合状態(
図3,4)では、上記他のねじ部31に上記入力治具38は全体的に外嵌し、この入力治具38の上記他のねじ部31側の端面は上記軸体25の一端部の端面に圧接する。
【0041】
なお、上記他のねじ部31が雌ねじである場合には、上記入力治具38に上記雌ねじに螺合される雄ねじを形成すればよい。また、上記軸体25の一端部に上記鍔部26が一体的に形成される場合には、上記締結用治具35には入力治具38は不要である。
【0042】
上記締結用治具35の誘導治具36と入力治具38とには、それぞれ径方向に貫通する係合孔である係合部40が形成される。この係合部40には係合ピンである工具41が係脱(嵌脱)可能に係合(嵌入)される。そして、この係合状態で上記工具41を回動操作すれば、上記誘導治具36と入力治具38とはその軸心21回りに回動可能とされる。
【0043】
なお、上記係合部40は、工具41であるスパナが係合可能な少なくとも一対の平坦面を有するよう形成してもよい。
【0044】
上記した互いに当接する複数の第1〜第3被連結材17〜19同士を連結するに際し、これら被連結材17〜19を上記締結用治具35を用いて締結具16により締結する締結方法につき説明する。
【0045】
まず、
図3,4で示すように、上記軸体25の一端部の他のねじ部31に上記入力治具38を螺合させると共に、上記軸体25の他端部のねじ部27に上記誘導治具36を嵌合する。
【0046】
次に、上記誘導治具36の先細先端部を上記貫通孔22〜24に挿入した後、上記軸体25の一端部の入力治具38にハンマーなどにより外力Fを入力して、上記軸体25を上記貫通孔22〜24の軸方向における所定位置にまで圧入させる。この圧入により、上記入力治具38が上記被連結材17〜19の外面に当接するとき、上記貫通孔22〜24に対する所定位置、つまり、この貫通孔22〜24の全体にわたり上記軸体25の全体が圧入される。
【0047】
次に、
図1で示すようように、上記ねじ部27と他のねじ部31とから誘導治具36と入力治具38とを離脱させ、次に、
図1の矢印と、
図2とで示すように、上記ねじ部27と他のねじ部31とに螺合体28と鍔部26とを螺合させ、これら鍔部26と螺合体28とで上記各被連結材17〜19を挟み付ければ、上記締結作業が終る。
【0048】
上記構成によれば、互いに当接する複数の被連結材17〜19同士を締結するに際し用いられる締結用治具35は、上記ねじ部27に嵌脱可能に嵌合され、このねじ部27の軸方向の外方に向かってのテーパ形状とされて上記貫通孔22〜24への上記軸体25の圧入を誘導する誘導治具36を備えている。
【0049】
このため、互いに当接する複数の被連結材17〜19同士を締結する締結作業をするに際し、上記締結用治具35を用いれば、上記貫通孔22〜24への軸体25の圧入作業は、この軸体25が上記誘導治具36により貫通孔22〜24内へ案内されることにより円滑かつ軽快にでき、よって、上記被連結材17〜19同士の締結作業は容易かつ迅速にできる。
【0050】
また、上記圧入作業時、上記ねじ部27はこのねじ部27に嵌合された上記誘導治具36により保護されると共に上記ねじ部27の各ねじ山先端が上記貫通孔22〜24の内周面に大きい摩擦力を与えることは上記誘導治具36により防止される。よって、上記圧入時に、上記貫通孔22〜24の内周面やねじ部27が何らかの外力により損傷させられることは防止される。この結果、上記被連結材17〜19同士の間に所望の締結状態が得られる。
【0051】
また、前記したように、軸体25の軸方向の一端部に上記鍔部26を螺合可能とさせる他のねじ部31が形成され、この他のねじ部31に螺合され、上記圧入用の外力Fを入力する入力治具38を備えている。
【0052】
このため、上記貫通孔22〜24への軸体25の圧入時には、上記他のねじ部31に入力治具38を螺合させて、この入力治具38に上記圧入用の外力Fを入力させればよい。そして、このように入力治具38に外力Fを入力させるとき、上記他のねじ部31は上記入力治具38に保護されて上記圧入用の外力Fにより損傷させられることは防止される。よって、上記被連結材17〜19同士の間に所望の締結状態が得られる。
【0053】
また、前記したように、入力治具38を上記軸体25よりも径大となるよう形成し、上記貫通孔22〜24に軸体25を圧入させることにより上記入力治具38が上記被連結材17〜19の外面に当接するとき、上記貫通孔22〜24の軸方向における所定位置に上記軸体25が圧入されるようにしている。
【0054】
このため、上記貫通孔22〜24に軸体25を圧入させるとき、上記入力治具38が上記被連結材17〜19の外面に当接するまで上記圧入を進行させれば、上記貫通孔22〜24の適正位置への軸体25の圧入が自動的に達成される。よって、その分、上記被連結材17〜19同士の締結作業は更に容易かつ迅速にできる。
【0055】
また、前記したように、誘導治具36、および/もしくは入力治具38に、その治具を軸心21回りに回動可能とさせる工具41を係脱可能に係合させる係合部40を形成している。
【0056】
このため、上記締結用治具35を用いて上記貫通孔22〜24に軸体25を圧入させた後、上記ねじ部27や他のねじ部31から上記誘導治具36や入力治具38を離脱させる離脱作業をするとき、上記係合部40に工具41を係合させて上記治具36,38を軸心21回りに回動させれば、上記治具36,38の離脱作業が容易にできる。よって、その分、上記被連結材17〜19同士の締結作業が、より容易かつ迅速にできる。