特許第6497935号(P6497935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497935
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】毛髪洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20190401BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20190401BHJP
   A61K 8/45 20060101ALI20190401BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20190401BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20190401BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61K8/42
   A61K8/45
   A61K8/73
   A61K8/86
   A61Q5/02
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-262436(P2014-262436)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121102(P2016-121102A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】山村 野乃
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−182967(JP,A)
【文献】 特開平08−012993(JP,A)
【文献】 特開2014−148492(JP,A)
【文献】 特開平09−020740(JP,A)
【文献】 特開平08−134494(JP,A)
【文献】 特開2012−097016(JP,A)
【文献】 特開2012−251074(JP,A)
【文献】 米国特許第06514918(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
DWPI(Derwent Innovation)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜()を含有することを特徴とする毛髪洗浄剤。
(A)アシル基の炭素数が8〜22であるN−アシルグリシンを1.5〜9質量%
(B)アシル基の炭素数が8〜22である脂肪酸ジエタノールアミドを0.1〜10質量%
(C)ANH(CO)を0.1〜10質量%
Aは炭素数が8〜22のアシル基を示し、nはポリオキシプロピレン基の平均重合数でn=1〜3を示す。
(D)カチオン化ヒドロキシエチルセルロースを0.1〜0.9質量%
(E)アシル基の炭素数が8〜22であるN−アシル−N−メチル−β−アラニンを0.9〜9質量%
(F)ジオレイン酸PEG−120メチルグルコースを0.05〜5質量%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪洗浄剤に使用される界面活性剤は、一般的に洗浄力の点から、アルキル硫酸塩やアルキルエーテル硫酸塩等のスルホン酸構造を有するアニオン界面活性剤が使用されている。しかし、これらは洗浄力に優れるものの、脱脂力や皮膚刺激性が強く、肌荒れ、かさつき等を引き起こし、安全性に問題があった。
【0003】
一方、アミノ酸型界面活性剤の一種であるN−アシルグリシンは、洗浄力があり、低刺激性、生分解性が高く、安全な界面活性剤として知られている。しかし、泡立ちが弱く、増粘しにくいという特有の欠点を有していた。これらの欠点を改善するため、アルキルイミノジカルボキシレート型両性界面活性剤を併用する例(特許文献1)、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を併用する例(特許文献2)があるが、これらはいずれも泡立ちが不十分であり、また、泡質、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪の柔らかさ及び安定性についても問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−35979号公報
【特許文献2】特開2006−77184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、安全性の高いN−アシルグリシンを用いた使用感(泡立ち、泡質、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪の柔らかさ)及び安定性の良好な毛髪洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、下記(A)〜(D)を含有することを特徴とする毛髪洗浄剤を提供する。
(A)N−アシルグリシン
(B)脂肪酸ジエタノールアミド
(C)ANH(CO)
Aはアシル基を示し、nはポリオキシプロピレン基の平均重合数でn=1〜3を示す。
(D)カチオン性高分子
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、使用感が良好な、安定性の高い優れた毛髪洗浄剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いられる成分(A)N−アシルグリシンにおけるアシル基の脂肪酸部位としては、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸等の炭素数8〜22の脂肪酸を例として挙げることができる。N−アシルグリシンは、塩の形態として用いてもよく、塩の塩基成分には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、アルギニン等の塩基性アミノ酸等を例として挙げることができる。
【0009】
これらの中でも、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム(ココイルグリシンK(化粧品表示名称))を用いることが好ましい。炭素数が8未満であると、安全性に影響を及ぼす場合があり、炭素数が22を超えると、十分な泡立ちを得ることができない場合がある。
【0010】
成分(A)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明の毛髪洗浄剤全量に対して1.5〜9質量%の配合量が好ましい。配合量が1.5質量%未満であると、十分な泡立ちを得ることが出来ない場合があり、9質量%を超えると、安定性に影響を及ぼす場合がある。
【0011】
本発明で用いられる成分(B)脂肪酸ジエタノールアミドの脂肪酸部位としては、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸等の炭素数8〜22の脂肪酸を例として挙げることができる。
【0012】
これらの中でも、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(コカミドDEA(化粧品表示名称))を用いるのが好ましい。炭素数が8未満であると、安全性に影響を及ぼす場合があり、炭素数が22を超えると、十分な泡立ちを得ることができない場合がある。
【0013】
成分(B)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明の毛髪洗浄剤全量に対して0.1〜10質量%の配合量が好ましい。配合量が0.1質量%未満であると、十分な泡立ちを得ることが出来ない場合があり、10質量%を超えると、安定性に影響を及ぼす場合がある。
【0014】
本発明で用いられる成分(C)は、一般式ANH(CO)Hで表され、Aはアシル基、nはポリオキシプロピレン基(PPG)の平均重合数でn=1〜3を示す。アシル基の脂肪酸部位としては、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸等の炭素数8〜22の脂肪酸を例として挙げることができる。
【0015】
これらの中でも、アシル基がヤシ油脂肪酸で、n=2のPPG−2コカミド(化粧品表示名称)を用いるのが好ましい。炭素数が8未満であると、安全性に影響を及ぼす場合があり、炭素数が22を超えると、十分な泡立ちを得ることができない場合がある。
【0016】
成分(C)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明の毛髪洗浄剤全量に対しては、0.1〜10質量%の配合量が好ましい。配合量が0.1質量%未満であると、十分な泡立ちを得ることが出来ない場合があり、10質量%を超えると、安定性に影響を及ぼす場合がある。
【0017】
本発明で用いられる成分(D)カチオン性高分子としては、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化ローカストビーンガム、塩化ジメチルジアリル・アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体を例として挙げることができる。
【0018】
これらの中でも、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースのポリクオタニウム−10(化粧品表示名称)を用いるのが好ましい。
【0019】
成分(D)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明の毛髪洗浄剤全量に対しては、0.1〜0.9質量%の配合量が好ましい。配合量が、0.1質量%未満又は0.9質量%を超えると、すすぎ時の指通り及び乾燥後の髪の柔らかさに影響を及ぼす場合がある。
【0020】
本発明は、使用感をさらに向上させるため、成分(A)〜(D)に加え、成分(E)及び/又は成分(F)を含有させることができる。
【0021】
成分(E)は、N−アシル−N−メチル−β−アラニンであり、アシル基の脂肪酸部位としては、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸等の炭素数8〜22の脂肪酸を例として挙げることができる。N−アシル−N−メチル−β−アラニンは、塩の形態として用いてもよく、塩の塩基成分には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、アルギニン等の塩基性アミノ酸等を例として挙げることができる。
【0022】
これらの中でも、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム(ラウロイルメチルアラニンNa(化粧品表示名称))を用いることが好ましい。
【0023】
成分(E)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明の毛髪洗浄剤全量に対して、0.9〜9質量%の配合量が好ましい。配合量が0.9質量%未満又は9質量%を超えると、使用感に対する十分な効果を発揮することが出来ない場合がある。
【0024】
成分(F)は、ポリオキシエチレン脂肪酸メチルグルコシドであり、メチルグルコースに脂肪酸がエステル結合で、オキシエチレン基(PEG)がエーテル結合でつながった構造をしている。
【0025】
ポリオキシエチレン脂肪酸メチルグルコシドとしては、ジオレイン酸PEG−120メチルグルコース(化粧品表示名称)を用いることが好ましい。
【0026】
成分(F)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、本発明の毛髪洗浄剤全量に対して、0.05〜5質量%の配合量が好ましい。配合量が0.05質量%未満又は5質量%を超えると、使用感に対する十分な効果を発揮することが出来ない場合がある。
【0027】
本発明の毛髪洗浄剤には、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品等に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤、制汗剤、キレート剤、pH調整剤等を挙げることができる。
【0028】
本発明の毛髪洗浄剤は、常法により製造され、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状等の剤型とすることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は、特に断りのない限り質量%である。
【0030】
表1に示す毛髪洗浄剤を、常法に従って製造した。
【0031】
そして、下記の方法で、泡立ち、泡質、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪の柔らかさ及び0℃での保存安定性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0032】
a)泡立ち、泡質、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪の柔らかさ
専門パネラー5名の合議により、下記の基準で評価した。

1)泡立ち
◎:非常に良い
○:良い
△:やや悪い
×:悪い

2)泡質
◎:クリーミーな泡質で、感触が非常に良い
○:普通の泡質で、感触が良い
△:普通の泡質で、感触がやや悪い
×:粗い泡質で、感触が悪い

3)すすぎ時の指通り
◎:きしみがなく、指通りが非常に良い
○:きしみが弱く、指通りが良い
△:きしみがやや強く、指が通りづらい
×:きしみが強く、指通りが悪い

4)乾燥後の髪の柔らかさ
◎:非常に柔らかい
○:柔らかい
△:柔らかさに少し欠ける
×:ゴワつく
【0033】
b)0℃での保存安定性
0℃で30日間保存した後、外観を観察した。
○:変化なし
△:やや析出物が見られる
×:析出物が見られる
【0034】
表1に示された結果から明らかなように、各実施例で得られた毛髪洗浄剤は、泡立ち、泡質、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪の柔らかさ及び安定性すべての面で優れていた。一方、比較例の毛髪洗浄剤は、泡立ち、泡質、すすぎ時の指通り、乾燥後の髪の柔らかさ、安定性のいずれか又は二以上の項目で劣っていた。








【0035】
【表1】