(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497946
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】折戸装置
(51)【国際特許分類】
E06B 3/48 20060101AFI20190401BHJP
E05D 15/26 20060101ALI20190401BHJP
E05F 1/16 20060101ALI20190401BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
E06B3/48
E05D15/26
E05F1/16 C
E05D15/06 117
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-12373(P2015-12373)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-138371(P2016-138371A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(72)【発明者】
【氏名】持田 典之
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−083988(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3101743(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/48
E05D 15/00−15/58
E05F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠内で開口幅方向に移動可能な移動体から軸を介して回動可能に吊持された第1扉体の戸尻側端部と、戸尻側が回動可能に支持された第2扉体の戸先側端部と、を回動可能に連結し、前記移動体が開口幅方向に移動することで前記第1扉体と前記第2扉体が屈伸して建物開口部を開閉する折戸装置であって、
前記上枠内には、戸先側端部に位置して自閉装置が設けてあり、前記自閉装置と前記移動体はワイヤによって連結されており、
前記上枠の下端には、開口幅方向に延びる溝が形成されており、折戸開閉時に前記軸は前記溝内を通って開口幅方向に移動し、
折戸開放時に前記ワイヤは、前記上枠内で前記溝の直上に位置して開口幅方向に引き出され、
前記上枠内には、戸先側部位に位置して塞ぎ部材が設けてあり、前記塞ぎ部材の戸尻側端部は、全閉状態における前記第1扉体の幅方向中間部位よりも戸先側に位置しており、前記塞ぎ部材は、前記ワイヤが延びる高さ位置よりも下方かつ前記溝の上方に位置して、前記溝を塞ぐ底面を備えており、前記塞ぎ部材の底面は、折戸開放時に引き出された前記ワイヤの少なくとも戸先側部位を下方から覆う、
折戸装置。
【請求項2】
前記ワイヤは、前記自閉装置の下方部位に設けたガイドプーリを巻回して前記上枠内で前記溝の直上に位置して開口幅方向に延びる、
請求項1に記載の折戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
折戸は構造上開き戸に比べ、扉の軌跡面積が小さく、広い有効開口を得ることが可能である。また、引戸のような戸袋スペースを必要とせず、扉の開閉が軽いなどの長所がある。そのため、折り戸は、車椅子利用者などが使用するのに適している。
【0003】
折戸には、幅広の親扉1´と、幅狭の子扉2´と、を有し、親扉の戸尻側と子扉の戸先側が連結要素6´を介して回動可能に連結されており、上枠3´内にはレールが設けてあり、親扉1´が上端に設けた戸車8´によって回動可能に吊持されており、親扉1´は、戸車8´が前記レール上を走行することで開口幅方向に回動しながら移動可能であり、子扉2´が戸尻側を基点として回動可能であり、上枠3´内に戸先側に位置して自閉装置9´を設け、自閉装置9´と戸車8´をワイヤ10´で連結したものがある(
図10参照)。特許文献1にも類似の構成を備えた扉装置が開示されている。
【0004】
特許文献1では、ワイヤ(
図26参照)は上枠内の上方の奥まった高さに位置しているが、
図10に示す態様では、ワイヤ10´は上枠3´の下端に近接した部位で延びており、扉開放時に建物開口部の直上に位置して引き出されることになり、下方から故意にワイヤに触れたり、あるいは誤操作や清掃時等に意図せず偶然にワイヤに触れてしまうことがある。特に、ワイヤ10´が、自閉装置9´の下方部位に設けたガイドプーリを巻回して開口幅方向に延びるような場合に、接触によってワイヤがガイドプーリから外れ(外れた部分を10aで示す)、ワイヤが外れたままで開閉動作が繰り返されると、閉鎖障害を引き起こしたり、ワイヤが周囲の部材(例えば、自閉装置9´の取付金具94´)に接触して損傷ないし切断したり、当該周囲の部材が損傷してしまうおそれがある。
【特許文献1】特許第3321098号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、折戸の扉開放時に引き出される自閉装置のワイヤに下方から接触することを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が採用した技術手段は、上枠内で開口幅方向に移動可能な移動体から軸を介して回動可能に吊持された第1扉体の戸尻側端部と、戸尻側が回動可能に支持された第2扉体の戸先側端部と、を回動可能に連結し、前記移動体が開口幅方向に移動することで前記第1扉体と前記第2扉体が屈伸して建物開口部を開閉する折戸装置であって、
前記上枠内には、戸先側端部に位置して自閉装置が設けてあり、前記自閉装置と前記移動体はワイヤによって連結されており、
前記上枠の下端には、開口幅方向に延びる溝が形成されており、折戸開閉時に前記軸は前記溝内を通って開口幅方向に移動し、
折戸開放時に前記ワイヤは、前記上枠内で前記溝の直上に位置して開口幅方向に引き出され、
前記上枠内には、戸先側部位に位置して、前記ワイヤが延びる高さ位置よりも下方に位置して、前記溝を塞ぐ塞ぎ部材が設けてあり、前記塞ぎ部材は、折戸開放時に引き出された前記ワイヤの少なくとも戸先側部位を下方から覆う、
折戸装置、である。
後述する実施形態では、移動体として、走行ローラを備えた戸車が例示されている。
【0007】
1つの態様では、前記ワイヤは、前記自閉装置の下方部位に設けたガイドプーリを巻回して前記上枠内で前記溝の直上に位置して開口幅方向に延びる。
後述する実施形態では、第1扉体は幅広の親扉、第2扉体は幅狭の子扉であるが、第1扉体、第2扉体は、同幅であってもよい。
後述する実施形態では、折戸装置は手動開放されるが、電動開放・自閉装置による閉鎖であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、上枠内には、戸先側部位に位置して、前記ワイヤが延びる高さ位置よりも下方に位置して、前記溝を塞ぐ塞ぎ部材が設けてあり、前記塞ぎ部材は、折戸開放時に引き出された前記ワイヤの少なくとも戸先側部位を下方から覆うようにしたので、折戸の扉開放時に引き出されるワイヤの戸先側部位に下方から接触することが防止され、誤操作やいたずら等によってワイヤが外れることが防止され、結果として、閉鎖障害を引き起こしたり、ワイヤが損傷ないし切断したり、周囲の部品が破損したりすることが無い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】折戸装置の正面図(開口部全閉状態)である。
【
図2】折戸装置の平面図(開口部全閉状態、開口部全開状態)である。
【
図4】折戸装置の正面図(開口部全閉状態)であり、開口部上方の上枠内を示している。
【
図9】本実施形態に係る折戸装置の作用を説明する斜視図である。
【
図10】従来の折戸装置の作用を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、折戸装置の正面図(開口部全閉状態を示す)、
図2は、折戸装置の平面図(開口部全閉状態及び開口部全開状態を示す)であって、折戸装置は、屈伸可能に連結された幅広の親扉1と幅狭の子扉2によって建物開口部を開閉するようになっている。図示の態様では、親扉1の幅寸法は子扉2の幅寸法の略2倍である。建物開口部は、上枠3と、戸先側縦枠4と、戸尻側縦枠5と、床面FLとによって囲まれた空間として形成されている。親扉1、子扉2は共に正面視長方形状を有しており、親扉1が戸先側、子扉2が戸尻側に位置している。すなわち、親扉1の戸先側端部が折戸全体としての戸先側、子扉2の戸尻側端部が折戸全体としての戸尻側となっている。
【0011】
親扉1の戸尻側端部と子扉2の戸先側端部とは上下の連結要素6を介して互いに回動可能に連結されており、子扉2の戸尻側部位は建物開口部の戸尻側に回動可能に支持されている。
図2に示すように、開口部全閉姿勢では、親扉1と子扉2は平面視一直線状となっており、開口部開放時には親扉1と子扉2が屈折して、開口幅方向に対して直交する姿勢にまで回動しながら折り畳まれ、開口部全開姿勢では、親扉1と子扉2は平面視平行状となっている。
【0012】
上枠3は、開口幅方向に延びる長尺要素であり、
図3、
図7に示すように、対向状の側部30、31と、上面32と、から断面視コ字形状を有し、上枠3の下端には、開口幅方向に延びる溝33が形成されている。図示の態様では、上枠3の一方の側部30は側壁であり、他方の側部31は側カバーから形成されており、側カバーの上端は、上面32の一方の端縁に対して着脱可能となっている。側部30の垂直面300と側部31の垂直面310との間には内部空間が形成されており、側部30の底面301と側部31の底面311との間に、上記内部空間と連通する溝33が形成されている。
【0013】
図3、
図4に示すように、上枠3内には、開口幅方向に延びるガイド部材7が設けてある。ガイド部材7は垂直部と水平部から断面視L形状を有し、垂直部を側部30の垂直面300に固定することで、上枠3内において水平部が持ち出し状に設けてある。水平部の先端の上面にレール70が形成されている。図示の態様では、レール70は開口幅方向に水平状に延びている。水平部の下面には、案内溝71が形成されている。
【0014】
親扉1の幅寸法の中間部位の上端に戸車8が設けてある。
図5に示すように、戸車8は、垂直部80と水平部81とから断面視L形状に形成された支持プレートと、垂直部80に縦姿勢で装着された走行ローラ82と、水平部81上に横姿勢で装着された振れ止めローラ83と、水平部81の下面に回転自在に設けた垂直状の軸部84と、軸部84の下端に設けた水平状の取付プレート85と、を備えており、戸車8は、取付プレート85を介して親扉1の上面に取り付けられている。
【0015】
親扉1は軸部84によって戸車8に対して回動自在に吊持されている。親扉1は、回動しながら開口幅方向に移動可能となっている。親扉1が回動しながら開口幅方向に移動する時には、戸車8の走行ローラ82がレール70上を転動しながら走行するようになっており、この時に、振れ止めローラ83が案内溝71によって案内される。軸部84は、上枠3の下端の溝33に沿って開口幅方向に移動するようになっている。
【0016】
このような折戸装置において、全閉姿勢から親扉1が戸尻側へ回動しながら移動すると同時に子扉2が戸尻側を基点に回動することで、親扉1と子扉2が平面視直線姿勢から折り畳まれていき、平面視平行姿勢となって全開姿勢となる。より具体的には、折戸装置が全閉姿勢にある時に、取手1´を掴んで親扉1を引くないし押すことで、親扉1が回動して開きながら戸車8がレール70に案内されることで戸尻側に移動し、同時に、子扉2が戸尻側を基点として回動しながら開き、親扉1と子扉2は平面視直線状の姿勢から折れ畳まれながら平面視平行姿勢となって扉体は開放姿勢となる。
【0017】
図4に示すように、上枠3内には、戸先側に位置して自閉装置9が設けてある。戸車8はワイヤ10を介して自閉装置9と連結されており、戸尻側に回動しながら移動して開放された親扉1及び子扉2は、自閉装置9によってワイヤ10を介して戸先側に引っ張られ、戸先側に回動しながら移動して全閉姿勢となる。より具体的な態様では、ワイヤ10の基端側は自閉装置9の巻取部に巻き取られ、他端は支持プレートの垂直部80に連結されている。自閉装置9は、ワイヤ10を介して戸車8を閉鎖方向に付勢する手段を備えており、全閉姿勢にある親扉1がワイヤ10を引き出しつつ回動しながら戸尻側に移動する時に、親扉1を戸先側(閉鎖方向)に移動させる力を蓄積するようになっている。戸尻側へ回動しながら移動した親扉1の取手1´を離して自由とすると、回動しながら戸尻側に移動した親扉1は、戸車8がワイヤ10によって戸先側に引かれることで、回動しながら戸先側に移動して開口部全閉姿勢となる。
【0018】
図6に示すように、自閉装置9は、ワイヤ10の巻取部(図示せず)と、巻取部を回転可能に支持する垂直状の取付プレート90と、取付プレート90に設けられ、巻取部及び巻取部から引き出されたワイヤ10を巻取方向に付勢する付勢手段(例えば、ぜんまいバネからなる)を内蔵したケーシング91と、ケーシング91の下方に位置して、取付プレート90に設けたガイドプーリ92、93と、を備えている。
図7に示すように、自閉装置9は、取付プレート90に固定した取付金具94によって上枠2の側部30の垂直面300に固定されている。ケーシング91の面部には、ラチェットと爪からなる調整手段95が設けてあり、調整手段95によって付勢手段の強度を調整可能となっている。
【0019】
ガイドプーリ92、93は開口幅方向に離間して並設されており、ガイドプーリ93がガイドプーリ92よりも戸先側から離間している。ワイヤ10はケーシング91の下端から下方に引き出され、ガイドプーリ92、93間を通り、ガイドプーリ93を巻回して水平状に案内され、水平状に延びて戸車8に固定されている。ワイヤ10が延びる高さ位置は、上枠3の内部空間の下方部位であり、上枠3の下端の溝33の直上で溝33に近接した高さ位置で延びている。ワイヤ10はレール70より下側で延びている。
【0020】
図8に示すように、上枠3内には、戸先側部位に位置して、ワイヤ10が延びる高さ位置よりも下方に位置して、上枠3の下端の溝33を塞ぐ塞ぎ部材11が設けてあり、塞ぎ部材11は、折戸開放時に引き出されたワイヤ10の少なくとも戸先側部位を下方から覆うようになっている。塞ぎ部材11は、上枠3の側部30の垂直面300に取り付けられている。
【0021】
塞ぎ部材11は、水平状の底面110と、立ち上がり状の対向する側面111、112と、から断面視コ字形状を備えており、底面110は、開口幅方向の第1幅寸法と、開口幅方向に直交する方向の第2幅寸法(側面111、112間の寸法)と、を備えており、第2幅寸法は、上枠3の下端の溝33の幅寸法よりも大きい。塞ぎ部材11は、側面111を側部30の垂直面300の下方部位に固定することで、底面110が溝33の戸先側部位を塞ぐように水平状に延びている。図示の態様では、塞ぎ部材11は、断面視コ字形状を有しているが、少なくとも底面110を備えていればよく、例えば、水平状の底面110と側面111から断面視L形状(側面112を有しない)であってもよい。
【0022】
折戸装置が全閉姿勢にある時に、取手1´を掴んで親扉1を引くないし押すことで、親扉1が回動して開きながら戸車8がレール7に案内されることで戸尻側に移動し、この時、戸車8の戸尻側への移動にしたがってワイヤ10が自閉装置9の巻取部からガイドプーリ93を介して引き出されるが、ワイヤ10は上枠3の戸先側に設けた塞ぎ部材11の底面110の上方を通過し、上枠3の下端の溝33の戸先側部位は、塞ぎ部材11によって塞がれているので、引き出されたワイヤ10の戸先側部位に下方から接触することが防止される。よって、いたずらや意図しない偶然の接触によってワイヤ10がガイドプーリ93から外れることが防止され、結果として、ワイヤが外れたままで開閉動作が繰り返されることにより、閉鎖障害を引き起こしたり、ワイヤが損傷ないし切断したり、周囲の部品が破損したりすることがない。
【0023】
実験を行ったところ、引き出されたワイヤ10において、ガイドプーリ93に近い部位に接触することでワイヤ10がより外れやすいことがわかり、図示の態様では、上枠3内の戸先側部位に位置して塞ぎ部材11を設けた。
図9に示すように、塞ぎ部材11は上枠3の内部の戸先側部位にのみ設けられており、塞ぎ部材11の戸尻側において引き出されたワイヤ10は上枠3の溝33に露出しているが、ガイドプーリ93から離隔した部位に接触してもワイヤ10は簡単に外れることがない。なお、塞ぎ部材11の戸尻側端部を戸尻側へ延ばしてなるべく溝33を塞ぐようにしてもよいが、塞ぎ部材11の戸尻側端部を、全閉状態における戸車8を越えて延ばすことはできない。
【0024】
上枠3の下端には、戸先側部位に位置してラッチ受けプレート12が設けてある。ラッチ受けプレート12は、側部30、31の底面301、311と略同じ高さに延びており、開口部全閉時に親扉1の上面から突出するラッチ(図示せず)を受け入れるようになっている。本発明の塞ぎ部材は、このラッチ受けプレート12を戸尻側に延長することで同一部材から形成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 親扉(第1扉体)
2 子扉(第2扉体)
3 上枠
30 側部
33 溝
7 ガイド部材
70 レール
8 戸車(移動体)
82 走行ローラ
84 軸
9 自閉装置
93 ガイドプーリ
10 ワイヤ
11 塞ぎ部材