【実施例】
【0019】
図1には、既設管を更生する更生管の組立単位部材となる更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に垂直に立設された同形状の側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に垂直に立設された同形状の端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。
【0020】
セグメント1は、本実施例では、円周を複数等分する所定角度、例えば6等分する60度の円弧状に湾曲した形状となっている。ただし、セグメントは円弧形ないし扇形に限定されず、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形等にすることもできる。
【0021】
内面板101の上面にはセグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、側板と同様な形状の複数、本実施例では4個の内部板106、107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。セグメント1の強度が十分な場合には、内部板106、107の一方または両方を省くこともできる。
【0022】
側板102、103には、セグメント1を管長方向に連結するボルトとして構成された連結部材11及びナット12(
図4に示す)を通すための円形の挿通穴102a、103aが周方向に等間隔に複数形成される。側板102の挿通穴102aと側板103の挿通穴103aは、周方向の位置が一致している。
【0023】
側板102、103の周方向端部には、セグメント1を周方向に連結する作業に利用するための開口部102b、103bが形成される。セグメントを周方向に接続する際には、開口部102b、103bを介してボルト・ナット等の連結部材をセットしたり締め付けたりする。
【0024】
端板104、105は、側板102と側板103の間に配置される部材で、端板104、105には、セグメント1を周方向に連結するボルト等の連結部材を通すための円形の挿通穴104a、105aが複数形成される。
【0025】
内部板106は、側板102、103と外形がほぼ同一の薄板部材で、その下部にはセグメント1を管長方向に連結する連結部材11(
図4に示す)を通すための円形の挿通穴106aが等間隔に複数形成される。挿通穴106aの周方向の位置は側板102、103の挿通穴102a、103aの周方向の位置と一致している。
【0026】
内部板107は、側板102、103と外形がほぼ一致する薄板部材で、複数の切り欠きが形成される。切り欠きの下部は連結部材が挿入できる半円形の挿通穴107aとして機能し、その周方向の位置は、側板102、103、内部板106の挿通穴102a、103a、106aの周方向の位置と一致している。
【0027】
内面板101、側板102、103、端板104、105、内部板106、107は、何れも透明、半透明あるいは不透明な同じプラスチックでできており、公知の成形技術を用いて一体に成形される。
【0028】
図2(a)、(b)は、セグメント1の周方向の連結方法を説明する図である。2個のセグメント1、1を一方のセグメントの端板105と他方のセグメントの端板104が当接するように保持し、セグメントの側板102の開口部102bからボルト6を挿通穴104a、105aに挿通してナット7を螺合させ、両端板104、105を締め付けることにより、2個のセグメント1、1は周方向に連結される。
【0029】
このようなボルト止めは、側板102とこれと隣接する内部板106の間、および、側板103とこれと隣接する内部板106の間の2箇所で行われる。この2箇所での連結では、連結強度が不十分な場合には、複数個所で連結を行い、周方向の連結を強化する。
【0030】
セグメント1を順次周方向に一周分連結させると、
図3に示すようなリング状の閉じた所定の短い長さの短管体10(以下、管ユニットという)を組み立てることができる。管ユニット10は、円管を管長方向Xに垂直に所定幅D1で輪切りに切断したときに得られる形状となっており、その外径が更生すべき既設管の内径より少し小さな値となっている。セグメント1は、この管ユニット10を、径方向Rに沿った切断面で周方向に複数個に分割(好ましくは等分)したときに得られる部材に相当する。
【0031】
なお、
図3では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107等の補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。
【0032】
このような管ユニット10は、各セグメントが、
図4に示したように、管長方向に延びる連結部材11とナット12を用いて他の管ユニットのセグメントと連結され、管長方向に延ばされる。
【0033】
セグメントを管長方向に連結する際には、セグメントの一方側の側板に複数の金属製ナット12が固定される。ナット12は、
図4に示したように、セグメント1a、1b、1cの一方側の側板102の挿通穴102aから隣接する内部板106に当接するまで挿入され、その状態で内部板106の逆側からボルト13をナット12にねじ込むことにより内部板106に固定される。ナット12の管長方向の長さは、側板102と内部板106の間隔より長く、側板102からはみ出て他のセグメントの側板103の厚さと同等あるいはそれ以上となっている。
【0034】
一方、連結部材11は、一端にナット12と螺合するネジ部11aが形成され、他端につば14aを有する頭部14が固定された金属製のボルトとして構成される。
【0035】
図4は、連結部材11をナット12に螺合することによりセグメント1bと1cが管長方向に連結された状態を示している。セグメント1bにセグメント1aを連結する場合、図示したように、セグメント1bの側板102からはみ出ているナット12を、セグメント1aの側板103の穴103aに通過させ、両セグメント1a、1bの側板103、102を突き合わせる。
【0036】
続いて、連結部材11を、セグメント1aの側板102の挿通穴102a、内部板106の挿通穴106a、内部板107の切り欠き107aに通し、ネジ部11aをセグメント1bに固定されているナット12にねじ込む。これにより、連結部材11とナット12が連結される。その後、頭部14のつば14aがセグメント1aの最左端の内部板106に圧接するまで連結部材11をナット12にねじ込み、両セグメント1a、1bをボルト締めして固定する。
【0037】
ナット12は一つのセグメントに周方向に複数個固定され、例えば、要求される強度に応じて側板102に設けられた穴102aの一つ置き、あるいは複数個置きに固定される。
【0038】
このようにして、管ユニットのセグメントを、他の管ユニットのセグメントと管長方向に連結することにより、管ユニットを管長方向に任意の長さに連結することができ、管ユニットないしセグメントからなる更生管を構築することができる。
【0039】
このように構成されたセグメント1を用いて既設管を更生する方法を説明する。
【0040】
まず、
図5に示すように、マンホール20を介して既設管21内にセグメント1を搬入し、
図2、
図3に示すように、セグメント1を周方向に順次連結して管ユニット10を組み立てる。
【0041】
続いて、管ユニット10を、
図4に示す方法で、連結部材11とナット12を用いて順次管長方向に連結し、既設管21内に更生管40を敷設する。
【0042】
ところで、敷設した更生管40は、前述のように、プラスチック材からなり比重が小さく充填材に浮くので、これを下方に押えて既設管21と同心の位置から少し下方にずれた位置で、その外周の下端が既設管21の管底に接する位置に位置調整する必要がある。このため、本実施例では、管ユニット10を複数個連結して更生管40を組み立てるにあたり、
図6(a)〜(d)に示す長尺形状のスペーサ50を更生管40の上側外周の複数箇所において、その外周と既設管4の内壁面の間に挿入して位置調整する。スペーサ50は単体で、あるいは場所によっては複数を積み重ねて挿入する。
【0043】
スペーサ50は、
図6(a)〜(d)に示すように、全体として長尺形状を有し、上面部51から底面部52へと向かって短手方向の幅が徐々に拡幅した台形柱形状の棒状部材である。スペーサ50の長手方向の両端部53,54はいずれも斜めに切り落とされている。また、複数のスペーサ50を積み重ねた際に、下側に位置するスペーサ50の上面部51が、上側に位置するスペーサ50の底面部52に嵌合するよう、底面部52には上面部51の形状に即した形状の空間55が設けられている。なお、本実施例においては、スペーサ50の長手方向の長さLは440mm、短手方向の長さ(幅)Wは26.5mm、厚み方向の長さ(厚み)Tは10mmとしているが、これに限られるものではなく、スペーサ50が一般に長尺形状の棒状部材と認識できる寸法を有してさえいればよい。
【0044】
上面部51は、
図6(a)に示すように、平坦な矩形領域を上面に有する平板形状を有している。上面部51には底面部52側に形成された空間55へと貫通する複数の円孔511が設けられており、本実施例においては、円孔511は等間隔に10個並べて設けられている。
【0045】
スペーサ50の長手方向の両端部のうちの一つの端部53が斜めに切り落とされた方向と、もう一方の端部54が斜めに切り落とされた方向とは平行になっている。具体的には、
図6(b)に示すように、端部53は上面部51側が長く残るように斜めに切り落とされ、端部54は底面部52側が長く残るように斜めに切り落とされており、端部53を斜めに切り落とした角度θ
1は端部54を斜めに切り落とした角度θ
2と同一となっている。また、端部53には連結用突起531が設けられており、端部54にはその連結用突起531が嵌合する形状の連結用凹み541が設けられている。連結用突起531及び連結用凹み541は、二つのスペーサ50を長手方向に連結させる際に位置決めのガイドとして機能するとともに、連結状態を保持するための手段としても機能する。
【0046】
底面部52には、
図6(d)に示すように、スペーサ50の内部を底面部52側から台形柱を削り取ったような形状の空間55が形成されている。すなわち、スペーサ50は、概ね平板形状の上面部51と、上面部51から下向きに傾斜して延びる2枚のスカート部材521a及び521bとから構成されており、上面部51とスカート部材521a及び521bとに囲まれた部分が空間55となっている。スカート部材521aは上面部51から角度θ
3だけ傾斜させた方向、スカート部材521bは上面部51から角度θ
4だけ傾斜させた方向にそれぞれ延設されており、角度θ
3と角度θ
4とは同一となっている。
【0047】
図6(c)に示すように、空間55内にはスペーサ50の剛性を高めるために補強リブ551が設けられている。補強リブ551は、端部53から端部54へと長手方向に延びる一本の横方向リブ5511と、横方向リブ5511に直交する複数の縦方向リブ5512とからなる。本実施形態においては、横方向リブ5511は短手方向中心軸に沿って1本設けられており、縦方向リブ5512は等間隔に11本設けられている。この結果、底面部52側から見たときに、隣り合う二つの縦方向リブ5512の中心に円孔511が位置するようになっている。なお、補強リブ551はスペーサ50の材質や求める剛性に応じて適宜設けることができる。
【0048】
本実施例のスペーサ50は、上記のように、短手方向の幅が上面部51から底面部52に向かって徐々に拡幅しているとともに、上面部51の形状に即した空間55が底面部52に形成されているため、複数を積み重ねて使用することが可能である。例えば二つのスペーサ50を厚み方向に積み重ねる場合、
図7に示すように、上側のスペーサ50Aの底面部52Aの短手方向両端部に位置する裾部、つまりスカート部材521Aa及び521Abが、下側のスペーサ50Bの上面部51Bとスカート部材521Ba及び521Bbの上面部51Bに近い部分とを覆うように積み重なる。このとき、下側のスペーサ50Bの上面部50Bが、上側のスペーサ50Aの空間55Aに設けられている補強リブ551Aに当接し、下側のスペーサ50Bのスカート部材521Ba及び521Bbの上面部51Bに近い部分が、上側のスペーサ50Aのスカート部材521Aa及び521Abの内側に当接する。このとき、複数のスペーサ50を積み重ねた状態が容易に崩れないよう、まとめて外周面をテープ等で巻いてもよい。
【0049】
また、本実施例のスペーサ50は、上記のように、長手方向の両端部53,54がいずれも斜めに切り落とされており、一つの端部53が斜めに切り落とされた方向と、もう一方の端部54が斜めに切り落とされた方向とが平行になっているため、複数を連結して使用することが可能である。例えば二つのスペーサ50を、
図8に示すように、一方のスペーサ50Aの端部53Aともう一方のスペーサ50Bの端部54Bとをつなぎ合わせるように長手方向に連結すると、一方のスペーサ50Aの端部53Aの連結用突起531Aがもう一方のスペーサ50Bの端部54Bの連結用凹み541Bに嵌合し、二つのスペーサ50A,Bの連結状態が保持される。このとき、複数のスペーサ50の連結状態を保持するためにテープ等で固定してから、既設管21の内壁面と更生管40の外周面との間の隙間に挿入してもよい。
【0050】
以上のようなスペーサ50を用いて更生管40の位置調整を行う場合、既設管21の内壁面と更生管40の外周の隙間の大きさに応じて、一つのスペーサ50を既設管21の内壁面と更生管40の外周との隙間に挿入することもできるし、複数のスペーサ50を積み重ねて既設管21の内壁面と更生管40の外周との隙間に挿入することもできる。このように、更生管40の外周と既設管21の内壁面の隙間の大きさに応じて積み重ねるスペーサの数を調整することにより、既設管再生工事における既設管21内での更生管40の位置の調整を簡単に短時間で適切に行うことできる。なお、スペーサ50は、上面部51が更生管40の外周側に、底面部52が既設管21の内壁面側にくるように挿入していく。
【0051】
スペーサ50を複数、例えば二つ積み重ねて挿入する場合、
図9(a)に示すように既設管21の内壁面と更生管40の外周との隙間に二つ積み重ねたスペーサ50を挿入する。スペーサ50を一つだけ挿入する場合、既設管21の内壁面と更生管40の外周との隙間にスペーサ50を挿入するが、
図9(b)に示すように端部53側から挿入してもよいし、
図9(c)に示すように端部54側から挿入してもよい。
【0052】
図9(b)に示すように端部53側からスペーサ50を挿入する場合は、端部53の先端が更生管40の外周側にあるため、既設管21の内壁面と更生管40の外周との隙間をバール等(不図示)で拡げ、できたスペースにスペーサ50を挿入していく。このように端部53側からスペーサ50を挿入すると、端部54が既設管21の内壁面側に位置するため、新たな管ユニット10を既設管21内に押し込んでいくときに管ユニット10がスペーサ50に引っ掛かることもなく、スペーサ50自体の有する長尺形状によって、管ユニット10を既設管21内に押し込む動きをガイドさせることができるため、既設管21内でスムーズに更生管を組み立てていくことができる。
【0053】
一方、
図9(c)に示すように端部54側からスペーサ50を挿入する場合は、端部54の先端が既設管21の内壁面側にあるため、既設管21の内壁面と更生管40の外周との隙間に当該先端を挿し込み、押し込んでいくことにより、スペーサ50自体が既設管21の内壁面と更生管40の外周との隙間を拡げつつ挿入されていく。つまり、端部54側からスペーサ50を挿入する場合はスペーサ50を隙間に挿入し易いという効果がある。
【0054】
更生管40の敷設を行いながら以上のようなスペーサによる位置調整を管ユニット10の複数個分で1m位の長さ毎に行い、更生管40の全長の敷設と位置調整が終了したら、下記の充填材の充填時に更生管40の変形を防ぐための不図示の支柱を更生管40内に数m位の間隔で上下に垂直、及び左右に水平に設置する。その後、
図10に示すように、充填材30を既設管21の内壁面と更生管40の外周の隙間のスペース及び更生管40を構成するセグメント部材1の内面板101の外側のスペースに充填する。充填材30は、セメントモルタル、あるいはエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等を主材とするレジンモルタル等からなる。その充填は、更生管40の長さの数m毎に、これを構成する上側のセグメント部材1の適当な位置に孔1aを形成して、これに充填用ホース11を接続し、このホース11から充填材30を注入して行う。なお、この充填の前に、組み立てた更生管40の全長の両端の外周と既設管21の内壁面の隙間を不図示のレジンパテやモルタルからなるシール材で塞いでおく。
【0055】
なお、スペーサ50の上面部51には円孔511が設けられているため、更生管40の位置調整に用いたスペーサ50の空間55内にも充填材30が流れ込むので、スペーサ50内に空洞ができることはない。
【0056】
充填材30の充填が終了した後、充填材30が凝結して硬化したら、孔1aをシール材で塞ぎ、不図示の支柱を撤去する等して既設管更生工事が完了する。
【0057】
以上のような実施例によれば、更生管40の外周と既設管21の内壁面の隙間の大きさに応じて積み重ねるスペーサの数を調整することにより、既設管再生工事における既設管21内での更生管40の位置の調整を簡単に短時間で適切に行うことできる。また、既設管21内で更生管40を組み立てていく際には、長手方向の両端部53,54が斜めに切り落とされていることによって、新たな管ユニット10を既設管21内に押し込んでいくときに管ユニット10がスペーサ50に引っ掛かることもなく、スペーサ50自体の有する長尺形状によって、管ユニット10を既設管内に押し込む動きをガイドさせることができるため、既設管21内でスムーズに更生管40を組み立てていくことができる。
【0058】
なお、上述した実施例のスペーサの構造において、底面部52に設けられた空間55の形状は、複数のスペーサ50を積み重ねた際に、下側に位置するスペーサ50の上面部51が上側に位置するスペーサ50の底面部52に嵌合するような形状となっていればよい。
【0059】
また、端部54に連結用突起531が設けられており、端部53にその連結用突起531が嵌合する形状の連結用凹み541が設けられていてもよい。
【0060】
なお、本発明による位置調整用スペーサ及びこれを用いた位置調整方法は、既設管更生工事における更生管の位置調整に限らず、固定物と位置調整される物との隙間にスペーサを挿入して行う位置調整に広く用いることができることは勿論である。