(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6497973
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】切替可能な弁の制御方法、該方法を実施可能なコンピュータプログラム、該コンピュータプログラムが格納された記憶媒体、該記憶媒体を含む電子制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20190401BHJP
F02M 61/10 20060101ALI20190401BHJP
H01F 7/18 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
F16K31/06 310A
F02M61/10 L
H01F7/18 G
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-36451(P2015-36451)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-161412(P2015-161412A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年10月18日
(31)【優先権主張番号】10 2014 203 538.4
(32)【優先日】2014年2月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ルップ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ポッセルト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス グッチャー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス ハメドヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヤーン
【審査官】
小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−511658(JP,A)
【文献】
特開平04−153542(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0116252(US,A1)
【文献】
特開平06−140238(JP,A)
【文献】
特開2010−014109(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102009047453(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/02−31/08
F02M 61/04−61/12
F02D 41/04,41/20
H01F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弁の駆動時に、弁運動を減速させる制動パルスを付加的に発生させる、
切替可能な弁の制御方法において、
少なくとも1つの前記弁の給電電圧の電圧値を測定し(330)、前記制動パルスの時点及び/又は期間を、測定された前記電圧値に基づき決定し(335)、
少なくとも1つの前記弁に対し駆動時に供給される制御電流を測定し(405)、測定された制御電流が第1の閾値を超えているか否かを判定し(410)、前記第1の閾値を超えている場合には、前記制動パルスの時点及び/又は期間を、測定された前記電圧値に基づき補正し(335)、次いで、対応して補正された少なくとも1つの制動パルスをトリガする(425)ことを特徴とする、
切替可能な弁の制御方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記弁を、制動パルスなしで駆動し(300)、前記弁の当接時点を求め(310,315)、求められた前記当接時点に基づき、以降でトリガすべき1つ又は複数の制動パルスの時点及び/又は期間を決定する(320)、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制動パルスの時点及び/又は期間を実験により決定する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記制動パルスの時点及び/又は期間を、測定された前記電圧値に基づき補正し(335)、次いで、対応して補正された少なくとも1つの制動パルスをトリガする(340)、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの補正された前記制動パルスをトリガしたときに、求められた前記当接時点に該制動パルスが及ぼす作用を測定し(345)、補正された前記制動パルスのトリガが、前記当接時点に第2の閾値よりも小さい作用を及ぼしている場合には、前記制動パルスの時点及び/又は期間を変更し(355)、対応して変更された制動パルスをトリガする(340)、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記当接時点に及ぼす作用を、振動センサ、音響マイクロフォン又は圧電マイクロフォンにより測定する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記制御電流を、一定の値に対し相対的に表し、該電流の値の比に依存して、少なくとも1つの制動パルスをトリガする、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電流の値の比に基づき、前記制動パルスの時点及び/又は期間を求める、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記切換可能な弁は車両内燃機関の噴射弁である、
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法の各ステップを実施するために構成されているコンピュータプログラム(29)。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラム(29)が格納されている、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体(31)。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(31)を含む電子制御装置(27)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの弁の駆動時に、弁運動を減速させる制動パルスを付加的に発生させる、切替可能な弁特に車両内燃機関噴射弁の制御方法に関する。さらに本発明は、本発明による方法を実施可能なコンピュータプログラム、該コンピュータプログラムを格納するためのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、ならびに本発明による方法を実施可能な電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車又はそれよりも多くの車輪を有する車両において、燃料を内燃機関の吸気ダクト又は燃焼室へ、制御しながら噴射するために用いられる噴射弁たいていは電磁弁は、バッテリ電圧によってじかに駆動されるか、又はいわゆるブースタ電圧によって駆動される。このブースタ電圧は、バッテリ電圧をそれよりも高い電圧レベル例えば65Vに変換することによって形成される。
【0003】
噴射弁駆動のためにバッテリ電圧をそのまま使用することは、特に吸気管噴射を行う内燃機関において一般的である。この場合、車両の電気負荷のスイッチオン/スイッチオフ過程に起因して、ならびに電流発生器(例えばいわゆる「オルタネータ」)による調整された充填過程に起因して、バッテリ電圧が比較的大きい変動を受ける。このような電圧変動は、周知のように噴射弁の駆動に悪影響を及ぼす。
【0004】
さらに、本願で対象としている噴射弁の開放時、弁プランジャが行程ストッパに音を立てて当接することも知られている。特に二輪車の場合には、シャシによって騒音が比較的僅かにしか減衰しないので、このような挙動によって乗り心地が損なわれてしまう。このため二輪車の場合にはそれ自体知られているように、行程ストッパに弁が上述のように当接する少し前に、所定の期間にわたり、有利には実験により求められた期間にわたり、個々の噴射弁の電流回路を遮断して、弁の動きを緩慢にする制動パルスを発生させる。しかしながらバッテリ電圧の既述の変動は、このような遮断の時点及び期間に大きな影響を及ぼすものであり、そのことから騒音低減に対する制動パルスの有効性が著しく劣化してしまう。
【0005】
さらに知られているのは、噴射弁をスイッチオフするときにも同様の措置を行うことであり、つまりこの場合には弁を短期間、再びスイッチオンするのである。このようなケースにおいてバッテリ電圧が変動すると、その結果として、弁のスイッチオフがそもそも弁の騒音に作用を及ぼさないか、又は弁の噴射量が意図通りではなく変化してしまう。
【0006】
DE 10 2009 047 453 A1には、噴射弁の作動方法が開示されている。この文献によれば、弁開放運動終了時、既述のプランジャのプランジャコイルにおける磁界の変化に起因してこのコイルに発生する電流又は電圧を測定して評価することにより、プランジャ及び弁ニードルの運動終了に関する衝突情報もしくは衝突の時点及び強さが求められる。この場合、これ以降の弁の駆動は、求められた衝突情報に基づき行われる。このようにして、この種の弁の電磁プランジャもしくは弁ニードルの当接速度を下げることができ、それによって騒音放出ならびにこの種の弁の構成部材の機械的摩耗が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 10 2009 047 453 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、噴射弁の騒音を低減するための上述の制動パルスを適応制御して駆動することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によればこの課題は、少なくとも1つの前記弁の給電電圧の電圧値を測定し、前記制動パルスの時点及び/又は期間を、測定された前記電圧値に基づき決定することにより解決される。
【0010】
殊に本発明によれば、車両内に配置された給電電圧源(例えば車載バッテリ)の目下の電圧が測定され、測定された電圧値に基づき、既述の制動パルスの適切な時点ならびに適切な期間が決定される。
【0011】
ここで上述の(適切な)時点を、一般的なタイムスケールとしてもよいし、或いは内燃機関の動作と時間的に相関する別の値例えばクランク角などとしてもよい。
【0012】
個々の車両に搭載されている給電電圧源(バッテリ電圧)によってのみ給電される噴射弁であれば、目下のバッテリ電圧を考慮することで、制動パルスのレベルを従来技術よりもいっそう正確に調整することができる。このようにすれば、バッテリ電圧に偏差が生じたときに騒音が大きくなる現象を回避することができ、もしくはバッテリ電圧に偏差が生じたときに騒音低減のために噴射量を多くする必要もなくなる。
【0013】
本発明によれば殊に、いかなるバッテリ電圧であろうと、騒音低減に関してできるかぎり最良の作用もしくは効果で、この種の制動パルスを精密に調整できるようになる。
【0014】
本発明による方法の第1実施形態によれば、噴射弁が最初は制動パルスなしで駆動される。この場合には従来技術に従い、弁の少なくとも1つの衝突時点もしくは当接時点が求められる。このようにして求められた少なくとも1つの当接時点に基づき、騒音低減に適した制動パルストリガの時点及び期間が決定される。
【0015】
制動パルスの期間は、実験によりまえもって設定してもよいし、或いは衝突時点もしくは当接時点に依存して定めてもよい。
【0016】
目下発生しているバッテリ電圧に依存して、制動パルスの時点及び期間が補正され、適切に補正された制動パルスがトリガされる。この場合、制動パルスが既述の当接時点に及ぼす作用が測定される。その際、制動パルスが騒音低減作用を有していないことが判明すると、制動パルスの時点及び/又は期間が変更され、適切に変更された制動パルスがトリガされる。したがって、適切な制動パルスが取得されるまで、この方法を繰り返し実行することができる。
【0017】
本発明による方法の第2実施形態は、ここで対象とする弁が弁座に及ぼす力は、ひいては弁の閉鎖力は、弁に給電される制御電流の関数である、という既知の事実に基づくものである。弁が閉鎖されるときの騒音発生レベルも、この弁の力に左右される。それゆえ、本発明に従って騒音を低減する際にこの実施形態で提案されるのは、所定の制御電流が発生しているときにはじめて既述の制動パルスをトリガすることであり、つまり目下生じているバッテリ電圧に基づき、制動パルスの時点及び期間を決定することである。
【0018】
ただし、ここで対象とする弁を駆動するために設けられている電力スイッチの測定抵抗の許容範囲が比較的広いことから、制御電流の絶対測定をじかに行うことはできない。しかしながら、一定の最終値に対し相対的な制御電流としてならば表すことができ、もしくは計算することができる。このような電流値の比に基づいて、制動パルスのトリガをアクティブにすることができ、やはりここで有利であるのは、制御電流の比の値に基づき、時点及び期間に関して制動パルスの適切な値を求めることである。
【0019】
これに加え、弁ニードルのリフト時点、或いは弁ニードルが上方行程ストッパに当接した時点を求めるために、捕捉された電流信号もしくは電流経過特性を評価することができる。この当接時点に発生する電流値を、制動パルスの時点及び期間を設定する際に付加的に利用することができる。
【0020】
つまり、ニードルの開放もしくは当接のための電流値が個々の最大値に到達する時点に対し相対的に、制動パルストリガ時点を設定することができる。このようにすることで制動パルスの時点及び期間を、バッテリ電圧に依存することなく、常にできるかぎり最適に設定できるようになる。
【0021】
本発明による方法を特に、吸気管噴射が行われる内燃機関を備えた二輪車又はそれよりも多くの車輪を有する車両に適用することができる。ただし本発明による方法は基本的に、あらゆる形式の切替可能な電磁弁に適用可能であり、ここで説明する燃料噴射用もしくは燃料直接噴射用の噴射弁に限定されるものではない。したがって尿素調量システム(HWL)、水量調整システム、ならびにサーモテクノロジーの加熱システムにおける媒体の分量調整に利用することも、考慮の対象となる。
【0022】
本発明による方法を簡単に自動化することができ、例えば相応に構成された制御装置又は既存のエンジン制御装置に実装することによって自動化可能であり、例えば内燃機始動時に、或いは内燃機関動作中に少なくとも時折、実施することができる。
【0023】
以下の説明ならびに添付した図面には、本発明のその他の利点ならびに実施形態が示されている。
【0024】
なお、自明の通り、これまでに挙げた特徴ならびに以下でさらに説明する特徴を、それぞれ記載どおりの組み合わせだけでなく、それとは別の組み合わせでも、或いはそれぞれ単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術として公知であり本願で扱う形式の電磁弁を略示した断面図
【
図2】弁の衝突時点もしくは当接時点を求めるための公知の方法を例示する目的で、
図1に示した電磁弁の弁ニードルの変位の時間経過特性を示す図
【
図3】本発明による方法の第1実施例を示すフローチャート
【
図4】本発明による方法の第2実施例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
DE 10 2009 047 453 A1に既に記載されているように、
図1には電磁弁10のいくつかの部材が示されており、例えばこの弁は、内燃機関の燃料直接噴射用インジェクタ11の噴射弁として使用することができる。この図では電磁弁10は閉鎖されている。さらにこの図には、プランジャコイル12がプランジャ14とともに示されており、プランジャ14は給電時、プランジャコイル12の中に引き込まれる。プランジャ14の運動は、下方行程ストッパ16と上方行程ストッパ18とにより制限される。
【0027】
電磁弁10の閉鎖時、プランジャ14は下方行程ストッパ16上に載置されている。プランジャ14に設けられた軸線方向の孔を通して、弁ニードル20が案内されており、弁ニードル20は、この図では上側である端部において、ディスク状プレート22と固定的に接続されている。このプレート22に対しコイルばね24が作用を及ぼし、それによって弁ニードル20が閉鎖方向に向けて付勢される。
【0028】
この図では下側であるインジェクタ11の端部には、弁座26が配置されている。弁ニードル20が弁座26の上に載置されているとき、吐出口28は閉鎖されている。例えば燃料ダクトなど電磁弁10におけるその他の部材は、図示されていない。すべての運動は、
図1であれば垂直方向に行われる。
【0029】
さらに、コンピュータプログラム29及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体31を含む開ループ及び/又は閉ループ制御装置27がシンボリックに描かれており、この装置は、後述の方法に従い電磁弁10を制御する役割を担う。
【0030】
プランジャコイル12が給電されると、プランジャ14はその際に発生する磁界によって、この図であれば上方へ向かって運動する。この場合、プランジャ14は最初にディスク状プレート22に当接し、このプレート22をコイルばね24の力に抗して弁ニードル20とともに移動させる。プランジャ14の運動は、上方行程ストッパ18のところで終了する。プランジャコイル12に流れるプランジャ電流が大きくなればなるほど、この運動は速くなり、弁ニードル20及び
プレート22はそれらの慣性によって、プランジャ14の上方行程ストッパ18を僅かに超えて短期間、振動する。ただし、
図1にはこの点は描かれていない。
【0031】
図2には、
図1に示した電磁弁10の弁ニードル20の、開放フェーズ中の変位32(「行程」)に関するタイムチャートが示されている。横軸34は時間を表し、縦軸は変位32を表す。このタイムチャートの左下方の座標原点近くに、電磁弁10の変位開始を表す時点36が書き込まれている。変位32を表す曲線は、この時点からスタートしてほぼ直線状に急峻に上昇する経過38を辿っており、この経過38は、電磁弁10の第1運動フェーズを示している。このタイムチャートの上方部分に書き込まれた水平方向の破線40は、プランジャ運動に対する上方行程ストッパ18を表している。時点42において、上方行程ストッパ18にいったん到達する。
【0032】
この図から読み取れるように、弁ニードル20は、プランジャ14の上方行程ストッパ18を変位量44だけ超えて動き続け、その後、向きを変え、時点46においてプランジャ14に逆方向で衝突する。逆方向で衝突した弁ニードル20の運動エネルギーは、その際にプランジャ14に伝達されるので、その後、弁ニードル20とプランジャ14の双方はともに、変位量48だけ上方行程ストッパ18から逆方向に押し戻され、この動きは、これに続く経過49においてプランジャ14が磁気力により上方行程ストッパ18に向かって再び押されるまで続く。おおよそ時点50のところで電磁弁10の開放フェーズが終了し、プランジャコイル12の給電状態が変えられるか又は給電が遮断されて、さらにその右側に位置する曲線部分52で電磁弁10の閉鎖が行われる。
【0033】
このように、時点42においてプランジャ14は上方行程ストッパ18に衝突するが、その結果として、プランジャ14に強い負の加速が発生し、プランジャコイル12の電圧及び/又は電流に変化が生じる。時点46において逆方向に衝突した弁ニードル20に押されて、同様にプランジャ14に負の加速がさらに発生し、その結果としてやはり、プランジャコイル12の電圧及び/又は電流に変化が生じる。
図2に示されているように、プランジャ14における上述の2回目の加速過程は、初回よりもいくらか弱くなっている。差分値54によって表されているのは、弁ニードル20の「飛翔時間」又は「過剰行程時間」であり、この時間中、弁ニードル20はプランジャ14から離れて浮き上がり、上方行程ストッパ18を超えて跳ね上がる。
【0034】
上方行程ストッパ18に衝突した時点を正確に求める目的で、プランジャコイル12の電圧及び/又は電流の既述の変化が、
図3に示した本発明による方法の実施例に従って検出及び評価される。次に、
図3を参照しながらこの実施例について説明する。
【0035】
本発明の第1実施例に対応する
図3に示されているルーチンによれば、噴射弁が最初に制動パルスなしで駆動される(ステップ300)。その際、
図3に示されている方法(破線で囲んだステップ305)に従い、単一の噴射弁について複数の当接時点が求められ(ステップ310)、求められた値から平均当接時点が算出される(ステップ315)。このようにして計算された当接時点の値に基づき、騒音低減にできるかぎり適した制動パルストリガ時点が決定される(ステップ320)。同様に、騒音低減にできるかぎり適した制動パルス期間を、実験により求めて固定的に設定することができ、或いはそのつど求められた平均当接時点に依存して計算もしくは設定することができる(ステップ325)。
【0036】
制動パルスをトリガする時点もその期間も、測定された目下のバッテリ電圧(ステップ330)に依存して補正するのが有利である(ステップ335)。この実施例では、例えば実験などにより事前に求められた補正データが格納されている補正テーブル333に基づき、適切な補正が行われる。
【0037】
この実施例によれば補正テーブル333には、制動パルスの時点と期間とから成る値のペアが、バッテリ電圧に依存してエントリされている。ただし、これらのデータセットの詳しい構造もしくは配列はここでは重要ではなく、したがって他の手法で補正データを利用できるようにしてもよい。なお、この種のテーブルを利用するのは、破線で表したことからもわかるように一例にすぎず、補正値をリアルタイムで計算することもできる。
【0038】
その後、個々の噴射弁が、適切に補正された制動パルスによって駆動され(ステップ340)、その際、既述の当接時点に対する制動パルスの騒音低減作用が測定される(ステップ345)。
【0039】
本発明による方法を自動化する場合には特に、この作用を振動センサ、音響マイクロフォン又圧電マイクロフォンなどによって測定することができる。
【0040】
これに続く判定ステップ350によって、制動パルスが既述の作用を及ぼしていないと判定された場合には、制動パルスの時点及び/又は期間が変更され(ステップ355)、既に説明したステップ340〜350が新たに実行される。したがって例えば、騒音低減に適した制動パルスが取得されるまで、この方法を繰り返し実行することができる。このケースでは、取得された制動パルスつまり例えば時点及び期間が、ステップ360に従い記憶され、それ以降、それらの値を用いて内燃機関の1つ又は複数の噴射弁を駆動することができる。
【0041】
破線365内で実行されるステップは、有利な実施形態を示したものにすぎず、ステップ340に従い適用される補正された制動パルスが、既に十分な騒音低減作用を及ぼしている場合には、必要に応じてこれらのステップを省いてもよい。さらに例えば、内燃機関の実際の稼動前に上述の補正テーブルを既に作成しておく目的で、内燃機関もしくは内燃機関噴射システムの試験台又は検査台において、これらのステップを既にまえもって実施することもできる。
【0042】
図4には、本発明の第2実施例による別のルーチンが示されている。噴射弁は最初に制動パルスなしで駆動され(ステップ400)、この駆動時に発生した制御電流が測定される(ステップ405)。既に述べたようにこの制御電流は、特に弁閉鎖時に発生する騒音作用レベルの尺度とみなすことができる。したがって次いでステップ410において、測定された制御電流が例えば実験により予め設定された閾値を超えたか否かがチェックされる。閾値を超えていなければ、再びルーチンの最初(ステップ400)にジャンプして戻り、既述のステップ400〜410までが新たに実行される。
【0043】
判定ステップ410において、制御電流が閾値を超えていると判定された場合には、目下のバッテリ電圧が測定され(ステップ415)、制動パルスの時点及び期間について予め定められていた初期値(例えば内燃機関もしくは噴射システムの特定のタイプの構造、特定の型式、又は特定の製造ロットに対する標準値)が、(
図3で説明したように)適切に補正される(ステップ420)。したがってこの場合にはそもそも、(所定の騒音発生に対する尺度となる)所定の制御電流が発生したときにはじめて、制動パルスを用いた噴射弁の駆動425がアクティブになる。
【0044】
その後、できるかぎり効果的な制動パルスに必要とされるデータ(即ち特に時点及び期間)を得る目的で、ここでも破線450で表されているように、
図3に既に示した後続のステップ430〜445をオプションとして実行することができる。つまりこの場合も、既述の当接時点に対する制動パルスの騒音低減作用が測定され(ステップ430)、制動パルスが既述の作用を有しているか否かが判定される(ステップ435)。制動パルスが騒音低減作用を有していなければ、この場合も制動パルスの時点及び/又は期間を変更することができ(ステップ440)、ステップ425〜435を新たに実行することができる。このようにして取得された制動パルスを、やはり記憶させることができる(ステップ445)。
【0045】
制御電流を既述のように測定する(ステップ405)のではなく、事前に測定により求められた一定の最大値もしくは最終値に対し相対的に制御電流を表すこともできる。この場合、得られた電流値の比I
momentan/I
maxに依存して、制動パルスのトリガをアクティブにすることができる。さらにこの電流比の値に基づき、制動パルスの適切な値(時点及び/又は期間)を決定することもできる。
【0046】
また、弁ニードルの開放もしくは当接のための電流値が個々の最大値に達する時点に対し相対的に、制動パルスのトリガ時点を設定することもできる。このようにすることで制動パルスの時点及び期間を、バッテリ電圧に依存することなく、常にできるかぎり最適に設定できるようになる。
【0047】
これまで説明してきた方法を、内燃機関を制御するための電子制御装置用の制御プログラムとして実装してもよいし、或いは1つ又は複数の対応する電子制御ユニット(ECU)として実装してもよい。