(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るシャッターの防火構造の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念について説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物の開口部に設けられたシャッターの防火構造に関するものである。
【0021】
ここで、「建物」とは、その具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設、及び公共施設等を含む概念である。また、「建物の開口部」とは、建物の躯体の一部分(例えば、壁、天井、又は床等)において窓や入り口を設置するために形成された開口部である。また、「シャッター」とは、防犯や防火のために、建物の開口部に取り付けられる巻上げ戸であり、例えば、窓シャッター、軽量シャッター、重量シャッター等を含む概念である。また、シャッターの開閉構造は任意であり、例えば「上下開閉式のシャッター」や「左右開閉式のシャッター」として構成することができる。また、シャッターの駆動方式は任意であり、例えば、開口部の開閉を電動で行う「完全自動型の電動式のシャッター」や、開口部の開放を手動で行い、開口部の閉鎖を電動で行う「半自動型の電動式のシャッター」として構成することができる。また、シャッターの後述するシャッター収納部には「電子機器」が設けられているものとする。この「電子機器」の目的、機能、構造は任意であり、例えば、遠隔操作が可能なリモコン式のシャッターにおける「受信機」や、シャッターを電子的に制御する「制御ユニット」として構成することができる。以下、実施の形態では、シャッターが、戸建て住宅の如き建物の壁であって窓を有する壁に配置された上下開閉式且つ完全自動型の電動式の窓シャッターであり、シャッター収納部には受信機が設けられている場合について説明する。
【0022】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0023】
(構成)
最初に、実施の形態に係るシャッターの防火構造が適用されるシャッターの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るシャッターを示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、
図2は、シャッター収納部の正面図、
図3は、
図2のシャッター収納部のA−A矢視断面図である。なお、以下の説明では、
図1のX方向をシャッターの左右方向(−X方向をシャッターの左方向、+X方向をシャッターの右方向)、
図1のY方向をシャッターの前後方向(+Y方向をシャッターの前方向(建物の屋外側の方向)、−Y方向をシャッターの後方向(建物の屋内側の方向))、
図1のZ方向をシャッターの上下方向(+Z方向をシャッターの上方向、−Z方向をシャッターの下方向)と称する。また、
図1(a)では、後述する受信機40及び後述する開閉機50を点線で示し、
図2では、後述するシャッター収納部20を一部破断して示す。
【0024】
この
図1に示すように、シャッター1は、概略的に、枠体10、シャッター収納部20、シャッターカーテン30、送信機(図示省略)、受信機40、開閉機50、及び巻き取り軸60を備えて構成されている。このシャッター1は、上述のように窓シャッターであって、
図1に示すように、建物の躯体2に形成された開口部3には窓(図示省略)が設けられており、この開閉式の窓の屋外側にシャッターカーテン30が設けられている。このため、シャッターカーテン30は、開口部3を、当該開口部3の開口面内ではなく当該開口部3の開口面よりも屋外側において開閉することになるが、このような開閉であっても、開口部3を介した人や物の出入りを制限するための開閉を行う点において同様であるため、「開口部3を開閉する」ものとして説明する。ただし、窓には公知の開閉式のサッシ窓等を採用することができるので、その説明は省略する。
【0025】
また、これらシャッター1の各部は、電気的に以下のように接続されている。すなわち、送信機と受信機40とは相互に無線通信可能に接続されている。受信機40は、商用電源(図示省略)に対して
図2に示す第1電力線5を介して接続されており、この第1電力線5を介して商用電源から受信機40への電力供給が行われる。また、受信機40は、開閉機50に対して
図2に示す第2電力線6及び信号線7を介して接続されており、第2電力線6を介して受信機40から開閉機50への電力供給が行われると共に、信号線7を介して受信機40から開閉機50への信号出力が行われる。なお、これら第1電力線5、第2電力線6、及び信号線7は、特許請求の範囲における「配線」に対応する。
【0026】
(構成−枠体)
枠体10は、建物の躯体2に形成された開口部3に設けられるものである。この枠体10は、複数の枠材を相互に組み合わせることによって構成されている。具体的には、複数の枠材は、左縦枠(図示省略)、右縦枠11、及び下枠12から構成されている。そして、これら左縦枠、右縦枠11、及び下枠12は、それぞれ開口部3の周縁における建物の躯体2の外面に公知の方法で直接的に固定されている。
【0027】
また、左縦枠と右縦枠11の各々には、ガイドレール13が設けられている。ガイドレール13は、シャッターカーテン30を開口部3の開閉方向(本実施の形態においては、上下方向)に沿って移動するように案内するものである。このガイドレール13は、横断面形状が略コ字状となるように形成された長尺体であり、左縦枠又は右縦枠11の前面(本実施の形態においては、建物の躯体2の外面)において、当該ガイドレール13の長手方向が左縦枠と右縦枠11の長手方向に略沿う方向で配置され、左縦枠又は右縦枠11に対して固定具等によって固定されている。
【0028】
(構成−シャッター収納部)
シャッター収納部20は、シャッター1の各部を収納するための中空体であり、建物における開口部3の上端近傍位置に取り付けられている。このシャッター収納部20の内部には、受信機40、開閉機50、及び巻き取り軸60が収納されている。この巻き取り軸60にてシャッターカーテン30が巻装されている状態では、シャッターカーテン30も、シャッター収納部20の内部に収納される(なお、
図3では、開口部3を全開した状態において、巻き取り軸60によって巻装されたシャッターカーテン30の外縁を2点鎖線で示す)。このシャッター収納部20は、例えば、折り曲げ成形された複数のスチール製の板状体を、ビスや取付ネジ等の取付具によって相互に接続して形成することができる。
【0029】
(構成−シャッターカーテン)
シャッターカーテン30は、巻き取り軸60によって巻き取り又は巻き出しされることで、開口部3を全開した状態、開口部3を全閉した状態、あるいは半開状態とする遮蔽手段である。このシャッターカーテン30は、
図3に示すように、複数のスラット31を備えて構成されており、各スラット31の上下の両端部には嵌合部33が設けられている。この嵌合部33は、複数のスラット31を相互に嵌合接続するために各スラット31の上下の両端部に設けられたもので、これら両端部を屈曲させることによって形成されている。また、このシャッターカーテン30の左右方向の両端部の各々は、ガイドレール13のコ字状の開放端部を介してガイドレール13の内部に挿入されており、上下方向においてはガイドレール13の内部をスライド移動可能であり、かつ、前後方向においてはガイドレール13の外部に脱落しないように規制されている。
【0030】
また、シャッターカーテン30の上端部には、連結スラット(図示省略)が接続されている。この連結スラットは、シャッターカーテン30を巻き取り軸60の後述する巻き取りシャフト(図示省略)に連結するためのものであり、シャッターカーテン30の上端部の左右方向全長にわたって形成されている。また、シャッターカーテン30の下端部には、座板32が接続されている。この座板は、シャッターカーテン30によって開口部3を全閉した状態において建物の床面と近接し、又は接触するように配置されたものであり、シャッターカーテン30の下端部の左右方向全長にわたって形成されている。
【0031】
(構成−送信機)
送信機は、シャッターカーテン30を操作するため操作信号を送信する外部機器であり、シャッターカーテン30やシャッター収納部20から離れた任意の位置において使用可能な可搬型の機器である。この送信機は、操作部と、無線通信部と、制御部とを備えて構成されている(いずれも図示省略)。なお、この送信機は、例えば公知のリモコン等によって構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0032】
操作部は、送信機に対する操作入力を受け付ける操作手段である。無線通信部は、図示しない無線アンテナを介して受信機40との間で無線にて通信を行うための公知の無線通信手段である(なお、受信機40の後述する無線通信部についても同様とする)。制御部は、送信機の各部を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成される(なお、受信機の後述する制御部、及び開閉機50の後述する制御ユニットの制御部についても同様とする)。
【0033】
(構成−受信機)
受信機40は、送信機から受信した信号を開閉機50に送信する電子機器である。
図4に示すように、この受信機40は、シャッター収納部20の内部において、後述する防火ケースに収納された状態で設置されるものであり、筐体41と電子機器本体(図示省略)を備えて構成されている。なお、この受信機40は、例えば公知の受信機等によって構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
筐体41は、受信機40の基本構造体であり、電子機器本体を収納することによって外部から保護する保護手段である。この筐体41は、例えば、樹脂等の可燃性部材にて形成された長尺な略箱状体であり、当該筐体41の長手方向が左右方向に略沿うように設置されている。この筐体41には挿通孔(図示省略)が設けられており、この挿通孔を介して第1電力線5、第2電力線6、及び信号線7が外部に引き出されている。
【0035】
電子機器本体は、受信機40の電子機能を担う部分であり、プリント基板に対して、無線通信部、電力供給部、及び制御部を実装等して構成されている(いずれも図示省略)。無線通信部は、図示しない無線アンテナを介して送信機との間で無線通信を行うための無線通信手段である。電力供給部は、商用電源から第1電力線5を介して供給された電力を第2電力線6を介して開閉機50に供給するための電力供給手段である。制御部は、受信機40の各部を制御する制御手段である。これら電子機器本体の一部は、樹脂等の可燃性部材にて形成されている。
【0036】
(構成−開閉機)
図1、2において、開閉機50は、巻き取り軸60を回転駆動することによって電動でシャッターカーテン30を昇降させる昇降手段である。この開閉機50は、開閉機本体と、制御ユニットを備えて構成されている(いずれも図示省略)。なお、この開閉機50は、例えば公知の開閉機等によって構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0037】
開閉機本体は、巻き取り軸60を駆動するための機器であり、例えば、巻き取り軸60を回転駆動させる公知のモータを備えて構成されている。
【0038】
制御ユニットは、開閉機50を制御するためのユニットであり、通信部、電源部、及び制御部を備えて構成されている(いずれも図示省略)。ここで、通信部は、受信機40と信号線7を介して通信する通信手段である。電源部は、受信機40から第2電力線6を介して供給された電力を開閉機50の各部に供給する電源手段である。制御部は、開閉機50の各部を制御する制御手段である。
【0039】
このように構成された開閉機50は、シャッター収納部20の前側部の内側面に対して、第1接続片22を介して取付ネジ23により固定されている。
【0040】
(構成−巻き取り軸)
巻き取り軸60は、シャッターカーテン30を巻き取り又は巻き出すことにより、シャッターカーテン30を昇降させる昇降手段である。この巻き取り軸60は、シャッター収納部20の長手方向に沿って配置されており、この巻き取り軸60にはシャッターカーテン30の上端に連結された連結スラット(図示省略)が接続されていて、この巻き取り軸60を回転させることで、連結スラットを介してシャッターカーテン30を巻き取り又は巻き出すことができる。ただし、この巻き取り軸60は、例えば公知の巻き取り軸等によって構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
(構成−シャッターの防火構造)
次に、シャッター1の防火構造について説明する。このシャッター1は、火災の熱によって受信機40が燃焼又は溶融した場合に当該受信機40を介して火災が延焼することを抑制するため、シャッター収納部20の内部に防火ケース70を備えている。
図4は、防火ケース70の側面図、
図5は、防火ケース70の後述する第1収納部80を示す図であり、(a)は背面図、(b)は底面図、(c)は右側面図、
図6は、防火ケース70の後述する第2収納部90を示す図であり、(a)は背面図、(b)は底面図、(c)は右側面図である。
【0042】
(構成−シャッターの防火構造−防火ケース)
防火ケース70は、受信機40を収納する収納手段であり、火災の熱によって受信機40が燃焼又は溶融した場合に当該受信機40を介して当該火災が延焼することを抑制するための収納手段である。この防火ケース70は、長尺な略箱状体であり、当該筐体41の長手方向が左右方向に略沿うように設置されている。具体的には、この防火ケース70は、第1収納部80と第2収納部90とを相互に組み合わせて構成されている。
【0043】
このうち、第1収納部80は、受信機40の外形よりも一回り大きな内形の中空箱状体であり、その一側面(本実施の形態においては後面であり、
図5に符号80aとして示す面)が開放されている。第2収納部90は、第1収納部80の外形よりも一回り大きな内形の中空箱状体であり、その一側面(本実施の形態においては前面であり、
図6に符号90aとして示す面)が開放されている。そして、第1収納部80の内部に、受信機40を収納した状態において、第1収納部80の開放側の側面(本実施の形態においては、後面)と第2収納部90の開放側の側面(本実施の形態においては、前面)とが相互に向かい合うような方向で、第1収納部80を第2収納部90で覆うことにより、防火ケース70が構成されている。この状態において、これら第1収納部80と第2収納部90とは、相互に固定されている。この固定のための具体的な構造は任意であり、公知の嵌合構造や固定具を用いた固定構造を適用することができるが、防火性のある固定構造を用いることが好ましく、本実施の形態においては、第2収納部90の下面に形成されたネジ孔91及び第1収納部80の下面に形成されたネジ孔81を介して、取付ネジ71を第2収納部90から第1収納部80にネジ込むことにより、これら第1収納部80と第2収納部90とが相互に固定されている。
【0044】
また、この防火ケース70は、任意の材質で製造することができるが、例えば、火災の熱によって受信機40が燃焼又は溶融した場合に当該受信機40を介して当該火災が延焼することを抑制する観点からは、耐火性を有する材質であることが好ましく、さらには一般的な製造上のニーズからは、製造コストを低減することが可能な材質であることが好ましい。このため、実施の形態においては、防火ケース70の材質として鋼材が採用されている。あるいは、これに限られず、例えば、石膏材や耐火繊維等の材質が採用されてもよい。
【0045】
また、この防火ケース70は、任意の方法で製造することができるが、例えば、スチール製の板状体を折り曲げ成形することにより製造することができる。
【0046】
このように構成された防火ケース70の内部に受信機40を収納しているので、火災の熱によって受信機40が燃焼又は溶融した場合であっても、火災が延焼することを抑制することができるので、受信機40を備えたシャッター1の防火性能を向上させることが可能になる。このため、受信機40を備えたシャッター1を防火用シャッターとして採用することが可能になる。このことにより、例えば、同一の建物に複数のシャッターを設置する場合において、従来であれば、防火が不要な場所には受信機40を備えたシャッターを設置することができるが、防火が必要な場所には受信機40を備えていないシャッターを設置する必要があり、シャッターの仕様や操作方法を統一することができなかったのに対して、本発明によれば、いかなる場所にも受信機40を備えたシャッター1を設置することが可能になり、シャッターの仕様や操作方法を統一することが可能になる。
【0047】
(構成−シャッターの防火構造−防火ケースの固定構造)
次に、防火ケース70の固定構造について説明する。この防火ケース70の固定構造としては、防火ケース70をシャッター収納部20の内部に設置できる限りにおいて任意の構造を採用することができるが、本実施の形態においては、以下に示す固定構造が採用されている。
【0048】
まず、シャッター収納部20の内部に、当該シャッター収納部20の長手方向に沿って、防火ケース70と開閉機50とが並設されている。具体的には、本実施の形態においては、
図1、2に示すように、シャッター収納部20が左右方向に沿った長手形状として形成されており、これに伴って、防火ケース70と開閉機50とが左右方向に沿って並設されている。これら防火ケース70と開閉機50との相互の位置関係は任意であるが、例えば、巻き取り軸60における開閉機50との接続箇所に近い位置に開閉機50を配置することが好ましいため、巻き取り軸60における開閉機50との接続箇所(本実施の形態においては巻き取り軸60の右側の端部近傍箇所)、開閉機50、防火ケース70の順に並設することが好ましい。このように、防火ケース70と開閉機50とを並設した理由は以下の通りである。すなわち、例えば、シャッター収納部20の長手方向に直交する方向(短手方向)に沿って、防火ケース70と開閉機50とを並設することも考えられる。しかしながら、このような場合には、シャッター収納部20の短手方向の長さが、シャッター収納部20の長手方向の長さに比べて短いので、シャッター収納部20の長手方向に沿って、防火ケース70と開閉機50とを並設した場合に比べて、シャッター収納部20の内部空間の使用効率が低下することにより、防火ケース70及び開閉機50を設置する上でスペース的な制約を受ける可能性が生じたり、シャッター収納部20を従来よりも大型化する必要が生じたりし得る。そこで、このような問題を解消するために、実施の形態においては、シャッター収納部20の長手方向に沿って、防火ケース70と開閉機50とを並設することで、シャッター収納部20の内部空間形状に沿って防火ケース70と開閉機50とを配置することができ、シャッター収納部20の内部空間の使用効率を向上させることが可能になる。
【0049】
また、防火ケース70と開閉機50とが相互に固定されている。具体的には、
図2に示すように、第2接続片24には、当接部92が一体成形されている。この当接部92は、防火ケース70に対して開閉機50を固定するための固定手段であり、第2接続片24の開閉機50側の端面から、開閉機50に向けて突出するように配置されている。この当接部92は、一対の当接片92a、92bによって側面略L字状に形成されており、一方の当接片92aは、開閉機50における防火ケース70側の端部の上面に当接する位置において水平方向に沿って配置されており、他方の当接片92bは、開閉機50における防火ケース70側の端部の前面に当接する位置において鉛直方向に沿って配置されている。そして、当接部92と開閉機50における防火ケース70側の端部とが、結束バンド94によって相互に固定されることによって、防火ケース70と開閉機50とが相互に固定されている。なお、当接部92の当接片92a、92bには、結束バンド94が嵌まり込む溝部(図示省略)が形成されており、この溝部に嵌まり込むように結束バンド94を結束することで、結束バンド94を一層強固に当接部92に固定することができる。このように防火ケース70と開閉機50とを相互に固定したので、防火ケース70と開閉機50とを相互に一体に取り扱って設置作業を行うことができ、防火ケース70と開閉機50の設置性を一層向上させることができる。
【0050】
さらに、防火ケース70と受信機40とが相互に共通の固定構造によってシャッター収納部20に対して固定されている。すなわち、シャッター収納部20の前側部の内側面には、第2接続片24が設けられている。この第2接続片24は、
図3に示すように、側面略S字状に形成されたものであって、その下端部においてシャッター収納部20に対して取付ネジ25によって固定されており、その上端部が防火ケース70の前面側に延出している。一方、受信機40の筐体41には複数のネジ孔44が形成されると共に、防火ケース70の第1収納部80における前面には複数のネジ孔44に対応する位置にネジ孔82が形成されており、これらネジ孔44とネジ孔82とを順次挿通する共通の取付ネジ72を第2接続片24にネジ込むことによって、防火ケース70と受信機40とがシャッター収納部20に対して固定されている。このように、共通の取付ネジ72を第2接続片24にネジ込むことにより、防火ケース70と受信機40とをシャッター収納部20に対して固定することで、これら防火ケース70と受信機40とを相互に個別的にシャッター収納部20に対して固定する場合に比べて、固定構造の簡易化を図ることが可能になる。
【0051】
(構成−シャッターの防火構造−配線構造)
次に、防火ケース70の配線構造について説明する。この防火ケース70の配線構造としては、上述した第1電力線5、第2電力線6、及び信号線7を介して防火ケース70と受信機40とを相互に接続できる限りにおいて任意の構造を採用することができるが、本実施の形態においては、以下に示す配線構造が採用されている。
【0052】
すなわち、防火ケース70には、防火ケース70の内部に収容された受信機40に接続されている第1電力線5、第2電力線6、及び信号線7を、防火ケース70の外部に引き出すための3つの配線孔73〜75が形成されている。これら3つの配線孔73〜75の各々は、第1収納部80に形成された3つの第1開口部83〜85と、第2収納部90に形成された3つの第2開口部95〜97との相互の重複部分として構成されている(
図4においては、図示の便宜上、この重複部分にハッチングを付加し、第1電力線5、第2電力線6、及び信号線7は省略する)。
【0053】
具体的には、第1収納部80における開閉機50と対向する側面には、3つの第1開口部83〜85が形成されている。これら3つの第1開口部83〜85は、それぞれ第1収納部80における開放側の側面(本実施の形態においては、後面)に連通する溝部として形成されており、相互に間隔を隔てて配置されている。一方、第2収納部90における開閉機50と対向する側面には、3つの第2開口部95〜97が形成されている。これら3つの第2開口部95〜97は、それぞれ第2収納部90における開放側の側面(本実施の形態においては、前面)に連通する溝部として形成されている。そして、最も上方位置の第1開口部83と最も上方位置の第2開口部95とは、上下方向において相互に対応する位置に形成されていると共に、相互にほぼ同様の高さで形成されており、第2収納部90によって第1収納部80を覆った状態において、それぞれの端部が相互に重複するように形成されていて、この重複部分が配線孔73となっている。同様に、上下中央位置の第1開口部84と上下中央位置の第2開口部96とは、上下方向において相互に対応する位置に形成されていると共に相互にほぼ同様の高さで形成されており、第2収納部90によって第1収納部80を覆った状態において、それぞれの端部が相互に重複するように形成されていて、この重複部分が配線孔74となっている。また同様に、最も下方位置85の第1開口部と最も下方位置の第2開口部97とは、上下方向において相互に対応する位置に形成されていると共に相互にほぼ同様の高さで形成されており、第2収納部90によって第1収納部80を覆った状態において、それぞれの端部が相互に重複するように形成されていて、この重複部分が配線孔75となっている。
【0054】
このように形成された3つの配線孔73〜75のうち、最も上方位置の配線孔73からは第1電力線5、上下中央位置の配線孔74からは第2電力線6、最も下方位置の配線孔75からは信号線7がそれぞれ引き出されている。このように、第1収納部80における開閉機50と対向する側面に第1開口部83〜85を形成すると共に、第2収納部90における開閉機50と対向する側面に第2開口部95〜97を形成したので、第1収納部80や第2収納部90における他の側面に第1開口部83〜85や第2開口部95〜97を形成した場合に比べて、第1開口部83〜85及び第2開口部95〜97と開閉機50との相互間の距離を短くでき、配線作業に要する手間を低減することが可能になる。また、第1開口部83〜85と第2開口部95〜97との相互の重複部分として配線孔73〜75を形成したので、既存の受信機40の配線の先端部に、配線孔73〜75の内形よりも大きな外形のコネクタ(図示省略)が設けられている場合であっても、第1開口部83〜85と第2開口部95〜97との重複部分に対してコネクタを挿通させることなく配線のみを挿通させることができ、防火ケース70に対する受信機40の設置性を向上させることが可能になる。
【0055】
(構成−防火構造の取付方法)
次に、防火構造の取付方法について説明する。ただし、以下では、シャッター収納部20に対する受信機40、開閉機50、及び防火ケース70の取り付けについて説明することとし、これら以外の部分については従来と同様に取り付けることができるためにその説明を省略する。なお、この防火構造の取付方法は、例えば、工場等において行うことが可能である。
【0056】
最初に、防火ケース70の内部に受信機40を収納すると共に、防火ケース70を第2接続片24に固定する。この際、受信機40の第1電力線5、第2電力線6、及び信号線7の先端側の一部を、防火ケース70の配線孔73〜75を介して防火ケース70の外部に引き出しておく。具体的には、防火ケース70の第1収納部80を第2収納部90で覆う際に、第1電力線5、第2電力線6、及び信号線7を、まずは第1収納部80の第1開口部83〜85にそれぞれ挿通し、次いで、第2収納部90の第2開口部95〜97にそれぞれ挿通させることにより、配線孔73〜75を介して外部に引き出す。また、防火ケース70の前面側に第2接続片24を配置し、受信機40の筐体41のネジ孔44と第1収納部80のネジ孔82とに順次挿通させた取付ネジ72を、第2接続片24にネジ込むことによって、防火ケース70及び受信機40を第2接続片24に固定する。その後、第1収納部80の下面に形成されたネジ孔81と第2収納部90の下面に形成されたネジ孔91とを順次挿通する取付ネジ71をネジ込むことによって、第1収納部80と第2収納部90とを相互に固定する。
【0057】
そして、開閉機50と防火ケース70とを相互に固定する。具体的には、開閉機50の端部を第2接続片24の当接部92に当接させ、これら開閉機50の端部と当接部92とを結束バンド94で結束することで、開閉機50と防火ケース70とを相互に固定する。そして、防火ケース70から引き出された配線のうち、第2電力線6及び信号線7を開閉機50に接続する。
【0058】
次いで、開閉機50及び防火ケース70をシャッター収納部20に取付ける。この際、最初に、開閉機50の左右方向の両端部のうち、防火ケース70とは反対側の端部(本実施の形態において右側の端部)を、シャッター収納部20の当該端部側に設けられているブラケットに挿通させる。そして、この挿通部分を支点として、これら開閉機50及び防火ケース70を回転させながらシャッター収納部20における所定位置に配置する。その後、
図2に示すように、防火ケース70と固定されている第2接続片24をシャッター収納部20に取付ネジ25により固定する。より具体的には、第2接続片24をケースアングルに固定する。次いで、開閉機50を第1接続片22を介して取付ネジ23によりシャッター収納部20に固定する。より具体的には、
図2の第1接続片22による2つの固定箇所のうち、図示左側の固定箇所においては、ブラケット曲げ片に固定を行い、図示右側の固定箇所においては、ケースアングルに固定を行う。ただし、これら第2接続片24や第1接続片22を介した固定の順序は任意に変更することができる。そして、防火ケース70から引き出された配線のうち、第1電力線5を商用電源に接続する。これにてシャッター収納部20に対する受信機40、開閉機50、及び防火ケース70の取り付けが終了する。
【0059】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、火災の熱によって受信機40が燃焼又は溶融した場合であっても、火災が延焼することを抑制することができるので、受信機40を備えたシャッター1の防火性能を向上させることが可能になる。このため、例えば、受信機40を備えたシャッター1を防火用シャッターとして採用することが可能になる。このことにより、例えば、同一の建物に複数のシャッターを設置する場合において、従来であれば、防火が不要な場所には受信機40を備えたシャッターを設置することができるが、防火が必要な場所には受信機40を備えていないシャッターを設置する必要があり、シャッターの仕様や操作方法を統一することができなかったのに対して、本実施の形態によれば、いかなる場所にも受信機40を備えたシャッター1を設置することが可能になり、シャッターの仕様や操作方法を統一することが可能になる。
【0060】
また、シャッター収納部20の短手方向に沿って、防火ケース70と開閉機50とを並設した場合に比べて、シャッター収納部20の長手方向に沿って、防火ケース70と開閉機50とを並設することにより、シャッター収納部20の内部空間形状に沿って防火ケース70と開閉機50とを配置することができ、シャッター収納部20の内部空間の使用効率を向上させることが可能になる。
【0061】
また、第1収納部80における開閉機50と対向する側面に第1開口部を形成すると共に、第2収納部90における開閉機50と対向する側面に第2開口部を形成したので、第1収納部80や第2収納部90における他の側面に第1開口部や第2開口部を形成した場合に比べて、第1開口部及び第2開口部と開閉機50との相互間の距離を短くでき、配線作業に要する手間を低減することが可能になる。また、第2収納部90によって第1収納部80を覆った状態において、第1開口部と第2開口部との重複部分に、受信機40と開閉機50とを相互に接続する配線を挿通可能としたので、例えば、既存の受信機40の配線の先端部にコネクタが設けられている場合であっても、第1開口部と第2開口部との重複部分に対してコネクタを挿通させることなく配線のみを挿通させることができ、防火ケース70に対する受信機40の設置性を向上させることが可能になる。
【0062】
また、防火ケース70と開閉機50とを相互に固定したので、防火ケース70と開閉機50とを相互に一体に取り扱って設置作業を行うことができ、防火ケース70及び開閉機50の設置性を一層向上させることができる。
【0063】
また、防火ケース70を鋼材にて形成したので、火災の熱によって受信機40が燃焼又は溶融した場合であっても、火災が延焼することを容易に抑制することが可能になる。
【0064】
また、樹脂製の筐体41を備えた受信機40を防火ケース70に収納することによって防火構造を構築することができるので、例えば、既存の受信機40であっても大幅な設計変更や改造を行うことなく容易に防火シャッターに適用することが可能になる。
【0065】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0066】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、本発明に係るシャッター1の防火構造の防火性能が従来と同程度であっても、従来と異なる構造により従来と同程度の設置性を確保できている場合には、本願の課題は解決している。
【0067】
(電子機器について)
上記実施の形態では、電子機器は、受信機40であると説明したが、これに限られず、シャッター収納部20の内部に収納されている電子機器であればよく、例えば、開閉機50の制御ユニットであってもよい。また、電子機器の具体的な構造も任意であり、少なくともその一部に可燃性部材が設けられていればよい。
【0068】
(防火ケースについて)
上記実施の形態では、防火ケース70が、一側面を開放した略箱形状の第1収納部80と、一側面を開放した第2収納部90とを備えていると説明したが、これに限られない。例えば、防火ケース70の製造コストを低減するために、一側面を開放した略箱形状の第1収納部80と、この開放側の側面を塞ぐ平板状の第2収納部90とを備えてもよい。この場合には、第1収納部80における開閉機50と対向する側面のみに、信号線7、第1電力線5、及び第2電力線6の各々を挿通するための開口部を形成してもよい。また、シャッター収納部20の内部に、複数の防火ケース70を設置してもよい。また、1つの防火ケース70の内部に、複数の電子機器を収容してもよい。
【0069】
(防火ケースの固定構造について)
上記実施の形態では、シャッター収納部20の内部に、シャッター収納部20の長手方向に沿って、防火ケース70と開閉機50とを並設していると説明したが、これに限られない。例えば、シャッター収納部20の内部に、シャッター収納部20の長手方向に沿って、開閉機50と防火ケース70以外の他の装置とが並設されることで、シャッター収納部20の長手方向に沿って、防火ケース70と開閉機50とを並設することができない場合には、シャッター収納部20の短手方向に沿って、防火ケース70と開閉機50とを並設してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、防火ケース70と開閉機50とを相互に固定していると説明したが、これに限られない。例えば、製造上の都合により、あらかじめ工場等で防火ケース70と開閉機50とを相互に固定することができない場合には、防火ケース70と開閉機50とを相互に固定しなくてもよい。
【0071】
(防火ケースの配線構造について)
上記実施の形態では、防火ケース70における開閉機50と対向する側面に3つの配線孔73〜75を形成すると説明したが、これに限られない。例えば、防火ケース70と開閉機50との相互間に他の装置が介在すること等の理由により、防火ケース70における開閉機50と対向する側面に3つの配線孔73〜75を形成することが難しい場合には、3つの配線孔73〜75の全部又は一部を、防火ケース70における他の側面に形成してもよい。
【0072】
(付記)
付記1のシャッターの防火構造は、建物の開口部に設けられたシャッターの防火構造であって、前記シャッターのシャッター収納部に設けられた耐火性の収納手段であって、電子機器を収納する収納手段であり、火災の熱によって前記電子機器が燃焼又は溶融した場合に当該電子機器を介して当該火災が延焼することを抑制するための収納手段を備えた。
【0073】
付記2のシャッターの防火構造は、付記1に記載のシャッターの防火構造において、前記電子機器として、外部機器から受信した信号を、シャッターカーテンの巻き取り軸を駆動させる開閉機に送信する受信機を備え、前記シャッター収納部の内部に、当該シャッター収納部の長手方向に沿って、前記収納手段と前記開閉機とを並設した。
【0074】
付記3のシャッターの防火構造は、付記2に記載のシャッターの防火構造において、前記収納手段は、略箱形状の第1収納部と、前記第1収納部を覆う略箱形状の第2収納部と、を備え、前記第1収納部における前記開閉機と対向する側面には、第1開口部を形成し、前記第2収納部における前記開閉機と対向する側面には、第2開口部を形成し、前記第2収納部によって前記第1収納部を覆った状態において、前記第1開口部と前記第2開口部との重複部分に、前記受信機と前記開閉機とを相互に接続する配線を挿通可能とした。
【0075】
付記4のシャッターの防火構造は、付記2又は3に記載のシャッターの防火構造において、前記収納手段と前記開閉機とを相互に固定した。
【0076】
付5のシャッターの防火構造は、付記1から4のいずれか一項に記載のシャッターの防火構造において、前記収納手段を、鋼材にて形成した。
【0077】
付記6のシャッターの防火構造は、付記1から5のいずれか一項に記載のシャッターの防火構造において、前記電子機器は、樹脂製の筐体と、前記筐体の内部に収納された電子機器本体と、を備えた。
【0078】
(付記の効果)
付記1に記載のシャッターの防火構造によれば、火災の熱によって電子機器が燃焼又は溶融した場合であっても、火災が延焼することを抑制することができるので、電子機器を備えたシャッターの防火性能を向上させることが可能になる。このため、例えば、受信機を備えたシャッターを防火用シャッターとして採用することが可能になる。このことにより、例えば、同一の建物に複数のシャッターを設置する場合において、従来であれば、防火が不要な場所には受信機を備えたシャッターを設置することができるが、防火が必要な場所には受信機を備えていないシャッターを設置する必要があり、シャッターの仕様や操作方法を統一することができなかったのに対して、本発明によれば、いかなる場所にも受信機を備えたシャッターを設置することが可能になり、シャッターの仕様や操作方法を統一することが可能になる。
【0079】
付記2に記載のシャッターの防火構造によれば、シャッター収納部の短手方向に沿って、収納手段と開閉機とを並設した場合に比べて、シャッター収納部の長手方向に沿って、収納手段と開閉機とを並設することにより、シャッター収納部の内部空間形状に沿って収納手段と開閉機とを配置することができ、シャッター収納部の内部空間の使用効率を向上させることが可能になる。
【0080】
付記3に記載のシャッターの防火構造によれば、また、第1収納部における開閉機と対向する側面に第1開口部を形成すると共に、第2収納部における開閉機と対向する側面に第2開口部を形成したので、第1収納部や第2収納部における他の側面に第1開口部や第2開口部を形成した場合に比べて、第1開口部及び第2開口部と開閉機との相互間の距離を短くでき、配線作業に要する手間を低減することが可能になる。また、第2収納部によって第1収納部を覆った状態において、第1開口部と第2開口部との重複部分に、受信機と開閉機とを相互に接続する配線を挿通可能としたので、例えば、既存の受信機の配線の先端部にコネクタが設けられている場合であっても、第1開口部と第2開口部との重複部分に対してコネクタを挿通させることなく配線のみを挿通させることができ、収納手段に対する受信機の設置性を向上させることが可能になる。
【0081】
付記4に記載のシャッターの防火構造によれば、収納手段と開閉機とを相互に固定したので、収納手段と開閉機とを相互に一体に取り扱って設置作業を行うことができ、収納手段及び開閉機の設置性を一層向上させることができる。
【0082】
付記5に記載のシャッターの防火構造によれば、収納手段を鋼材にて形成したので、火災の熱によって電子機器が燃焼又は溶融した場合であっても、火災が延焼することを容易に抑制することが可能になる。
【0083】
付記6に記載のシャッターの防火構造によれば、樹脂製の筐体を備えた電子機器を収納手段に収納することによって防火構造を構築することができるので、例えば、既存の受信機であっても大幅な設計変更や改造を行うことなく容易に防火シャッターに適用することが可能になる。