(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記他の照射手段は、上記n回のパスによる印刷が完了した上記記録媒体において、上記最後のm回のパスで当該記録媒体上に吐出され未硬化である上記インクに複数のパスにより光を照射して硬化させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子を点灯している上記列と、上記他の複数の照射素子を消灯、または点灯している上記他の複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが交互になるように、上記他の複数の照射素子を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
上記照射制御手段は、上記最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子を、上記複数の照射素子を点灯している上記列と、上記複数の照射素子を消灯、または点灯している
上記複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが交互になるように制御することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録媒体上に形成されたカラーインク層は、複数のインク滴が半球状またはそれに近い形状に盛り上がっており、カラーインク層の表面には凹凸がある。この状態において、特許文献1に記載されているような印刷方法によってカラーインク層上にオーバープリント層を形成した場合、カラーインク層の凹凸の影響により、オーバープリント層の表面を十分に平坦化させることができない。結果、記録場板の表面には光沢ムラが生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高光沢な印刷物を得ることができるインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置は、上記の課題を解決するために、プラテン上に載置された記録媒体に複数のパスにより印刷を行うインクジェット印刷装置において、上記記録媒体に対して、光の照射を受けることで硬化するインクを吐出しながら主走査方向に往復移動するヘッドと、上記記録媒体上の上記インクに光を照射する複数の照射素子であって、パスごとに対応する複数の照射素子からなる照射手段と、上記複数のパスの回数をnとした場合に、n−m回目(mは、nよりも小さい1以上の整数)までのパスに対応する上記複数の照射素子を点灯し、最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子を消灯または上記n−m回目までのパスに対応する上記複数の照射素子よりも低い照度にすることにより、上記最後のm回のパスで上記記録媒体上に吐出されたインクを未硬化にするように、上記複数の照射素子を制御する照射制御手段とを備える。
【0008】
上記の構成によれば、n−m回目のパスで形成されたマット調のインク層が、記録媒体(または下層)の表面の凹凸を平滑化する。その結果、最後のm回目のパスで吐出されたインクが濡れ広がり、表面が平坦化されたグロス調のインク層が形成され、高光沢な印刷物を得ることができる。
【0009】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置は、上記n回のパスによる上記印刷が完了した上記記録媒体上の上記インクに光を照射することにより、上記最後のm回のパスで当該記録媒体上に吐出され未硬化である上記インクに光を照射して硬化させる、上記複数の照射素子とは異なる他の複数の照射素子からなる他の照射手段をさらに備え、上記他の照射手段は、上記主走査方向に直交する副走査方向において、上記照射手段に対して下流側に配置されている。さらに、上記他の照射手段は、上記複数の照射素子とは異なる他の複数の照射素子からなり、上記n回のパスによる印刷が完了した上記記録媒体において、上記最後のm回のパスで当該記録媒体上に吐出され未硬化である上記インクに複数のパスにより光を照射して硬化させる。
【0010】
上記の構成によれば、記録媒体の最表面に形成されるグロス調のインク層の表面を平坦化して高光沢に仕上げながらも、当該グロス調のインク層を十分に硬化させることができる。なお、照射手段による光照射を複数のパスで行うことにより、記録媒体上の未硬化インクの硬化をよりきめ細かに制御することができる。
【0011】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記他の照射手段は、上記他の複数の照射素子を上記主走査方向に配列した列を、上記主走査方向に直交する副走査方向に複数配列してなしており、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子を点灯している上記列と、上記他の複数の照射素子を消灯、または点灯している上記他の複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが存在するように、上記他の複数の照射素子を制御する。
【0012】
上記の構成によれば、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯または低い照度にしている列と存在しているため、照射手段の照射強度が抑えられている。結果、記録媒体の最表面に形成されるグロス調のインク層は弱い光で硬化されるため、過硬化を抑制することができる。その結果、硬化収縮を抑えることができ、表面に皺が発生するのを防ぐことができる。
【0013】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子を点灯している上記列と、上記他の複数の照射素子を消灯、または点灯している上記他の複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが交互になるように、上記他の複数の照射素子を制御する。
【0014】
上記の構成によれば、複数の照射素子を点灯している2つの列の境目では光が強まってしまうため、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯または低い照度にしている列とを交互にすることにより、照度を分散して均一化することができる。
【0015】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射手段は、上記複数の照射素子を上記主走査方向に配列した列を、上記主走査方向に直交する副走査方向に複数配列してなしており、上記照射制御手段は、最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子において、上記複数の照射素子を点灯している上記列と、上記複数の照射素子を消灯、または点灯している上記複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが存在するように、上記複数の照射素子を制御する。
【0016】
上記の構成によれば、最後のm回のパスに対応する部分の照射手段には、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯している列とが存在しているため、当該最後のm回のパスに対応する部分の照射手段における照射強度が抑えることができる。
【0017】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射制御手段は、上記最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子を、上記複数の照射素子を点灯している上記列と、上記複数の照射素子を消灯、または点灯している上記複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが交互になるように制御する。
【0018】
上記の構成によれば、複数の照射素子を点灯している2つの列の境目では光が強まってしまうため、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯または低い照度にしている列とを交互にすることにより、照度を分散して均一化することができる。
【0019】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置は、上記主走査方向に並び、かつ、上記ヘッドから上記副走査方向を見て左右に一つずつ並ぶ上記他の照射手段を2つ備えており、一方の上記他の照射手段における上記他の複数の照射素子を点灯している上記列と、他方の上記他の照射手段における上記他の複数の照射素子を消灯または上記低い照度にしている上記列とが、上記主走査方向において対向している。
【0020】
上記の構成によれば、記録媒体上に形成されたグロス調のインク層を均一な照度で硬化させることができる。
【0021】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子の点灯および消灯の切替制御、または上記他の複数の照射素子の照度調整を行う。なお、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子個々の点灯および消灯を切替制御、または上記他の複数の照射素子個々の照度調整を行ってもよいし、上記他の複数の照射素子の上記列ごとに点灯および消灯を切替制御、または上記他の複数の照射素子の上記列ごとに照度調整を行ってもよい。
【0022】
上記の構成によれば、他の複数の照射素子の点灯および消灯を切替制御したり、照度調整を行ったりすることにより、他の照射手段による光の照射を制御することができる。ここで、他の複数の照射素子個々の切替制御または照度調整を行うことにより、点灯している照射素子の割合を変えたり、照射素子ごとに照度を変えたりすることができ、よりきめ細かな照射制御が可能となる。また、他の複数の照射素子の列ごとに切替制御または照度調整を行うことにより、照射素子の列単位での制御が可能となるため、制御が容易であり、照射制御手段の制御回路は複雑にならない。
【0023】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子に対して、二値のデジタル信号を出力することにより、点灯および消灯の切替制御を行ってもよいし、上記他の複数の照射素子に対して供給する電流値を調整することにより、照度調整を行ってもよい。
【0024】
上記の構成によれば、切替制御は、二値のデジタル信号による制御、すなわちオン/オフ(点灯および消灯)のみの制御となるため、制御が容易であり、照射制御手段の制御回路は複雑にならない。また、照度調整は、照射素子に供給する電流値を調整することでよりきめ細かな照射制御が可能となり、所望の照度またはそれに近い照度に照射素子を制御することができる。
【0025】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置は、上記n回のパスによる上記印刷が完了した上記記録媒体を、上記照射手段と対向する位置から搬送する搬送手段と、上記搬送手段による上記記録媒体の搬送方向において、上記照射手段に対して下流側に位置し、上記記録媒体上のインクに光を照射する他の照射手段とをさらに備える。
【0026】
上記の構成によれば、記録媒体の最表面に形成されるグロス調のインク層の表面を平坦化して高光沢に仕上げながらも、当該グロス調のインク層を十分に硬化させることができる。
【0027】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記n−m回目までのパスにより、着色インクで形成された着色層と、および当該着色層を被覆するインクで形成された被覆層の一部とが形成され、上記最後のm回のパスにより、上記被覆層の一部の上に、残りの上記被覆層が形成される。
【0028】
上記の構成によれば、着色層上に被覆層をマット調のインク層およびグロス調のインク層によって形成することにより、記録媒体に対して高光沢なオーバーコートを実現している。
【0029】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷方法は、上記の課題を解決するために、プラテン上に載置された記録媒体に複数のパスにより印刷を行うインクジェット印刷方法において、上記記録媒体に対して、光の照射を受けることで硬化するインクを吐出するインク吐出工程と、パスごとに対応する複数の照射素子から、上記記録媒体上の上記インクに光を照射する照射工程とを含み、上記照射工程において、上記複数のパスの回数をnとした場合に、n−m回目(mは、nよりも小さい1以上の整数)までのパスに対応する上記複数の照射素子を点灯し、最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子を消灯または上記n−m回目までのパスに対応する上記複数の照射素子よりも低い照度にすることにより、上記最後のm回のパスで上記記録媒体上に吐出されインクを未硬化にするように、上記複数の照射素子を制御する。
【0030】
上記の方法によれば、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、n−m回目のパスで形成されたマット調のインク層が、記録媒体(または下層)の表面の凹凸を平滑化する。その結果、最後のm回目のパスで吐出されたインクが濡れ広がり、表面が平坦化されたグロス調のインク層が形成され、高光沢な印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1の実施形態〕
<インクジェット印刷装置1>
以下、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット印刷装置について、
図1および
図2を用いて詳細に説明する。
図1は、インクジェット印刷装置1の内部構造を示す斜視断面図である。
図2は、インクジェット印刷装置1が備えるキャリッジ3の構造を模式的に示す図である。
【0034】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、Yバー2、キャリッジ3、プレプラテン4、プリントプラテン5(プラテン)、アフタープラテン6、駆動ローラ7a、および従動ローラ7bを備えている。
図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、照射制御部20をさらに備えている。インクジェット印刷装置1は、メディアM(記録媒体)に対して複数のパスにより印刷を行うマルチパス方式のインクジェット印刷装置である。
【0035】
(Yバー2)
Yバー2は一方向に延在している。Yバー2が延在する方向はインクジェット印刷装置1の主走査方向である。換言すれば、主走査方向とはプリントプラテン5の面方向に平行な一方向である。なお、主走査方向に垂直な方向が副走査方向である。メディアMは副走査方向に搬送される。
【0036】
(キャリッジ3)
図2に示すように、キャリッジ3は、ヘッド8、右照射部9A(照射手段)、および左照射部9B(照射手段)を備えている。キャリッジ3はYバー2に取り付けられており、主走査方向に往復移動をする。これにより、キャリッジ3はプリントプラテン5に対して相対的に移動し、その結果、後述するヘッド8がプリントプラテン5に対して相対的に移動する。本実施形態では、主走査方向においては、ヘッド8が移動し、メディアMは主走査方向に移動しない形態について説明する。しかし、本発明に係るインクジェット印刷装置はこれに限定されるものではなく、ヘッドが固定されており、メディアが主走査方向に往復移動するものであってもよい。
【0037】
(ヘッド8)
ヘッド8はメディアMに対して、光の照射を受けることで硬化するインクを吐出するものである。具体的には、ヘッド8には複数のノズル列N1〜N8が形成されている。ノズル列N1〜N8各々には、複数のノズルが形成されており、各ノズルからインクが吐出される。インクとしては、右照射部9Aおよび左照射部9Bにより照射される光で硬化されるものであればよく、例えば当該光を紫外線として、インクを紫外線硬化型インクとすることが好ましい。本実施形態では、ヘッド8は紫外線硬化型インクを吐出するものである形態として説明する。
【0038】
複数のノズル列N1〜N8は、主走査方向に沿って配列されている。例えば、複数のノズル列N1〜N8からは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、またはブラック(K)等のカラーインク、ホワイトインク(W)、あるいは保護層を形成するためのクリアインク(CL)または接着層を形成するためのプライマ(P)等を吐出される。
【0039】
複数のノズル列N1〜N8は、パスごとに対応する領域に分割されている。
図2の例では、ノズル列N1〜N4の副走査方向における紙面上半分の領域が1パス目に対応し、紙面下半分の領域が2パス目に対応する。同様に、ノズル列N5〜N8の副走査方向における紙面上半分の領域が3パス目に対応し、紙面下半分の領域が4パス目に対応する。
【0040】
(プラテン)
プレプラテン4、プリントプラテン5、アフタープラテン6は、メディアMを載せるための台である。プリントプラテン5は、キャリッジ3と対向する位置に位置している。プレプラテン4は、メディアMの搬送方向(副走査方向)におけるプリントプラテン5からみた上流側に位置している。また、アフタープラテン6は、メディアMの搬送方向(副走査方向)におけるプリントプラテン5からみた下流側に位置している。
【0041】
(ローラ)
駆動ローラ7aはメディアMを副走査方向に搬送するものである。駆動ローラ7aはローラから構成されている。また、従動ローラ7bは、駆動ローラ7aによるメディアMの搬送を補助するためのものである。駆動ローラ7aを駆動することにより、従動ローラ7bは従動回転し、メディアMは移動する。
【0042】
(右照射部9Aおよび左照射部9B)
右照射部9Aおよび左照射部9Bは、ヘッド8よりメディアM上に吐出されたインクを硬化させる光を照射するためのものである。光としては、ヘッド8から吐出されるインクを硬化させるものであればよく、例えば当該インクを紫外線硬化型インクとして、光を紫外線とすることが好ましい。本実施形態では、右照射部9Aおよび左照射部9Bは紫外線を吐出するものである形態として説明する。
【0043】
右照射部9Aおよび左照射部9Bは、主走査方向に並び、かつ、右照射部9Aと左照射部9Bとの間にヘッド8が配置されるように、配置されている。これにより、右照射部9Aおよび左照射部9Bは、ヘッド8の移動方向と同方向、すなわち主走査方向に移動する。つまり、ヘッド8がインクを吐出しながら移動すると、吐出されたインクに対して、すぐに右照射部9Aおよび左照射部9Bから紫外線が照射されることになる。
【0044】
右照射部9Aは、ヘッド8の右方(紙面左側)に配設される。右照射部9Aは、紫外線を発光可能なLED等の複数の照射素子からなる。同様に、左照射部9Bは、ヘッド8の左方(紙面右側)に配設される。左照射部9Bは、紫外線を発光可能なLED等の複数の照射素子からなる。右照射部9Aおよび左照射部9Bでは、それぞれ複数の照射素子を主走査方向に配列した列が、副走査方向に複数配列されている。右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの複数の照射素子は、各パスに対応して分割されている。
図2の例では、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの複数の照射素子は4分割されており、紙面上側から順に1パス目、2パス目、3パス目、および4パス目に対応する。
【0045】
(照射制御部20)
照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bによる光の照射を制御するものである。例えば、照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子の点灯および消灯を切替制御したり、照度調整を行ったりする。なお、照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bのそれぞれに対して、独立して照射素子の点灯状態を制御できる構成となっている。
【0046】
照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子への電流の供給を制御することにより、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子の点灯状態を制御可能となっている。具体的には、照射制御部20が照射素子の切替制御を行う場合は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子に対して、二値のデジタル信号を出力することにより、点灯および消灯の切替制御を行っている。この場合、照射素子は、二値のデジタル信号による制御、すなわちオン/オフ(点灯および消灯)のみの制御となるため、制御が容易であり、照射制御部20の制御回路は複雑にならない。
【0047】
また、照射制御部20が照射素子の照度調整を行う場合は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子に対して供給する電流値を調整することにより、照度調整を行っている。この場合、照射素子に供給する電流値を調整することでよりきめ細かな照射制御が可能となり、所望の照度またはそれに近い照度に照射素子を制御することができる。本実施形態では、照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子の点灯および消灯を切替制御する形態として説明する。
【0048】
なお、照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子をまとめて、点灯および消灯の切替制御または照度調整を行うことができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子個々の点灯および消灯を切替制御してもよいし、照射素子個々の照度調整を行ってもよい。これにより、右照射部9Aおよび左照射部9Bにおいて、点灯している照射素子の割合を変えたり、照射素子ごとに照度を変えたりすることができ、よりきめ細かな照射制御が可能となる。
【0049】
あるいは、照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子を主走査方向に配列した列ごとに点灯および消灯を切替制御してもよいし、列ごとに照度調整を行ってもよい。これにより、照射素子の列単位での制御が可能となるため、制御が容易であり、照射制御部20の制御回路は複雑にならない。
【0050】
<インクジェット印刷方法>
以下、インクジェット印刷装置1によるインクジェット印刷方法について、
図3と再び
図2とを参照して説明する。
図3は、インクジェット印刷装置1によるインクジェット印刷方法を説明する模式図である。なお、以下に説明するインクジェット印刷方法では、
図2に示すように、4パスで印刷を行う場合(インクを4回重ねて付着させることにより印刷を行う場合)を例示している。また、ノズル列N1〜N4からは、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、およびブラック(K)のカラーインクが吐出され、ノズル列N5〜N8からは、クリアインク(CL)が吐出されることを想定する。
【0051】
まず、駆動ローラ7aおよび従動ローラ7bが回転することにより、メディアMがプリントプラテン5上に搬送されると、キャリッジ3をYバー2に沿って主走査方向へ往復移動させながら、ヘッド8の下面に形成されたノズルからインクを吐出させてメディアMに付着させる(インク吐出工程)。この走査が行われているとき、右照射部9Aおよび左照射部9Bからは、メディアMに向けて紫外線が照射されており、これによりメディアMに付着したインクが硬化されて印刷が施されるようになっている。
【0052】
(カラーインク層P1の形成工程)
具体的には、キャリッジ3が右動(紙面左側へ移動)を開始すると、ノズル列N1〜N4の副走査方向における紙面上半分の領域(1パス目に対応する領域)からのみカラーインクが吐出される。キャリッジ3からは、キャリッジ3が右動を開始した旨の情報が照射制御部20に送られ、照射制御部20は受け取った情報に基づき、ヘッド8から1パス目のカラーインクが吐出される間、1パス目に対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子を点灯するように制御を行う。これにより、1パス目では、右照射部9Aから紫外線がメディアMに照射された後、ヘッド8から吐出された1パス分のカラーインクがメディアMに付着し、その後左照射部9Bから紫外線がメディアMに照射される。
【0053】
上記の1パス目において、キャリッジ3がメディアMの右端まで移動した後、1パス幅だけメディアMを前方(副走査方向)に送る。そして、キャリッジ3が左動(紙面右側へ移動)を開始すると、ノズル列N1〜N4の副走査方向における紙面下半分の領域(2パス目に対応する領域)からのみカラーインクが吐出される。キャリッジ3からは、キャリッジ3が左動を開始した旨の情報が照射制御部20に送られ、照射制御部20は受け取った情報に基づき、ヘッド8から2パス目のカラーインクが吐出される間、2パス目に対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子を点灯するように制御を行う。
【0054】
これにより、2パス目では、左照射部9Bから紫外線がメディアMに照射された後、ヘッド8から吐出された1パス分のカラーインクがメディアMに付着され、その後右照射部9Aから紫外線がメディアMに照射される。この2パス目までが実行されることにより、
図3中の(a)に示すように、メディアMにはカラーインク層P1が形成されることになる。
【0055】
(第1クリアインク層P2の形成工程)
上記の2パス目において、キャリッジ3がメディアMの左端まで移動した後、1パス目の後と同様にしてメディアMを1パス幅だけ前方に送る。そして、キャリッジ3が右動を開始すると、ノズル列N5〜N8の副走査方向における紙面上半分の領域(3パス目に対応する領域)からのみクリアインクが吐出される。キャリッジ3からは、キャリッジ3が右動を開始した旨の情報が照射制御部20に送られ、照射制御部20は受け取った情報に基づき、ヘッド8から3パス目のクリアインクが吐出される間、3パス目に対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子を点灯するように制御を行う。
【0056】
これにより、3パス目では、右照射部9Aから紫外線がメディアMに照射された後、ヘッド8から吐出された1パス分のクリアインクがメディアMに付着し、その後左照射部9Bから紫外線がメディアMに照射される。そのため、メディアMのカラーインク層P1上に塗布されたクリアインクは、右照射部9Aおよび左照射部9Bによってすぐに硬化される。結果、
図3中の(b)に示すように、メディアMのカラーインク層P1上には、マット調のインク層である第1クリアインク層P2が形成されることになる。
【0057】
(第2クリアインク層P3の形成工程)
上記の3パス目において、キャリッジ3がメディアMの右端まで移動した後、2パス目の後と同様にしてメディアMを1パス幅だけ前方に送る。そして、キャリッジ3が左動を開始すると、ノズル列N5〜N8の副走査方向における紙面下半分の領域(4パス目に対応する領域)からのみクリアインクが吐出される。キャリッジ3からは、キャリッジ3が左動を開始した旨の情報が照射制御部20に送られ、照射制御部20は受け取った情報に基づき、ヘッド8から4パス目のクリアインクが吐出される間、4パス目に対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子を消灯するように制御を行う。
【0058】
これにより、4パス目では、右照射部9Aからは紫外線がメディアMに照射されずにヘッド8から吐出された1パス分のクリアインクがメディアMに付着し、その後も左照射部9Bからは紫外線がメディアMに照射されない。そのため、メディアMの第1クリアインク層P2上に塗布されたクリアインクは、
図3中の(c)に示すように、右照射部9Aおよび左照射部9Bによってすぐに硬化されず、第1クリアインク層P2上に濡れ広がる。その結果、
図3中の(d)に示すように、メディアMの第1クリアインク層P2上には、表面が十分に平坦化したグロス調のインク層である第2クリアインク層P3が形成されることになる。
【0059】
このように、3パス目で形成されるマット調の第1クリアインク層P2が、2パス目までに形成されたカラーインク層P1の表面の凹凸を平滑化する。その結果、最後の4パス目で吐出されたクリアインクは平滑化された表面を濡れ広がり、表面が平坦な第2クリアインク層P3が形成される。そのため、カラーインク層P1の表面に凹凸が形成されたとしても、最表面となる第2クリアインク層P3の表面が平坦化されることにより、高光沢な印刷物を得ることができる。
【0060】
以上により、インクジェット印刷装置1では、3パス目までのパスに対応する複数の照射素子を点灯し、最後の4パス目のパスに対応する複数の照射素子を消灯するように、複数の照射素子を制御することによって、高光沢な印刷物を得ることができる。したがって、インクジェット印刷装置1では、複数のパスの回数をnとした場合に、n−m回目(mは、nよりも小さい1以上の整数)までのパスに対応する複数の照射素子を点灯し、最後のm回のパスに対応する複数の照射素子を消灯することにより、最後のm回のパスでメディアM上に吐出されたインクを未硬化にするように制御していると換言することができる。
【0061】
これにより、n−m回目までのパスにより、カラーインク(着色インク)で形成されたカラーインク層(着色層)と、当該カラーインク層を被覆するクリアインク(インク)で形成されたクリアインク層(被覆層)の一部とが形成され、最後のm回のパスにより、当該クリアインク層(被覆層)の一部の上に残りのクリアインク層が形成される。これにより、n−m回目のパスで形成されたマット調のインク層が、記録媒体(または下層)の表面の凹凸を平滑化する。その結果、最後のm回目のパスで吐出されたインクが濡れ広がり、表面が平坦化されたグロス調のインク層が形成され、高光沢な印刷物を得ることができる。
【0062】
なお、以上では、マット調のインク層およびグロス調のインク層をクリアインクによって形成することにより、メディアMに対して高光沢なオーバーコートを実現している。しかしながら、本発明は必ずしもこれに限定されるわけではなく、マット調のインク層およびグロス調のインク層をカラーインクによって形成することもできる。
【0063】
また、
図3に示した、メディアM上に形成されるインク層の層構成はあくまで一例であり、カラーインクまたはクリアインクからなるマット調のインク層およびグロス調のインク層との2層構成であってもよい。あるいは、ホワイトインクからなる下地層と、カラーインクからなるカラーインク層と、クリアインクからなるマット調のインク層およびグロス調のインク層との4層構成であってもよく、特に限定はない。
【0064】
なお、照射制御部20が複数の照射素子を消灯するパスの回数(m回)は、予めユーザによってインクジェット印刷装置1に入力された回数であってもよいし、印刷する画像の解像度等に応じて照射制御部20が定めた回数であってもよい。
【0065】
また、上述したように、照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bそれぞれの照射素子の照度調整を行うこともできる。したがって、照射制御部20が、最後のm回のパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子を、n−m回目までのパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子よりも低い照度にすることにより、最後のm回のパスでメディアM上に吐出されたインクを未硬化にするように制御する構成も可能である。上記の構成であっても、最後のm回のパスで吐出されたインクが濡れ広がり、表面が平坦化されたグロス調のインク層が形成され、高光沢な印刷物を得ることができる。
【0066】
<ヘッド8によるインク吐出量>
ここで、マット調のインク層とグロス調のインク層との厚みについて説明する。マット調のインク層が薄いと、マット調のインク層を形成する際にメディアM(下層)の表面の凹凸の影響を受け、メディアMの表面の凹凸を十分に平滑化することができない。また、グロス調のインク層が厚いと、グロス調のインク層を形成する際に硬化収縮してしまい、表面に皺が発生してしまう。そこで、以上の点に鑑みてマット調のインク層およびグロス調のインク層の厚みを定めることが好ましい。
【0067】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置1では、ヘッド8から吐出するインクの吐出量を制御することにより、マット調のインク層およびグロス調のインク層の厚みを制御している。例えば、20%〜40%のインク吐出量でマット調のインク層を形成し、60%〜80%のインク吐出量でグロス調のインク層を形成することが好ましく、30%のインク吐出量でマット調のインク層を形成し、70%のインク吐出量でグロス調のインク層を形成することがより好ましい。例えば、マット調のインク層を3パスで形成し、グロス調のインク層を3パスで形成する場合には、前半の3パスで10%ずつのインク吐出量でマット調のインク層を形成し、後半の3パスで23.3%ずつのインク吐出量でグロス調のインク層を形成することにより、30%のインク吐出量で形成されたマット調のインク層と、70%のインク吐出量で形成されたグロス調のインク層とを実現できる。
【0068】
ただし、メディアMの材質および使用するインクに応じて、マット調のインク層およびグロス調のインク層の厚みとして適当な厚みが異なる。そこで、インクジェット印刷装置1は、マット調のインク層およびグロス調のインク層の厚みを変更可能にするために、ヘッド8から吐出するインクの吐出量をパスごとに制御する吐出制御部(吐出制御手段;図示せず)を備えている。例えば、30%のインク吐出量でマット調のインク層を形成し、70%のインク吐出量でグロス調のインク層を形成する場合、
図2の例では3パス目で30%のインク吐出量でクリアインクを吐出して第1クリアインク層P2を形成し、4パス目で70%のインク吐出量でクリアインクを吐出して第2クリアインク層P3を形成している。
【0069】
なお、パスごとのインク吐出量を一定にし、マット調のインク層とグロス調のインク層とを形成する際のパス数を変えることにより、それぞれの厚みを変えることも可能である。しかしながら、この場合ではマット調のインク層と比較してグロス調のインク層を形成する際のパス数が多くなるため、右照射部9Aおよび左照射部9Bを消灯している時間が長くなる。結果、グロス調のインク層を形成する際に、硬化されていないインクが空気に曝されている状態が長くなり、グロス調のインク層の表面に埃または塵等が付着してしまう可能性がある。
【0070】
そこで、本実施形態のように、パスごとのインク吐出量を変えることにより、グロス調のインク層を形成する際のパス数を減らすことができる。そのため、グロス調のインク層を形成する際に、硬化されていないインクが空気に曝されている状態を短くすることができ、グロス調のインク層の表面に埃または塵等が付着してしまうのを防ぐことができる。
【0071】
<照度調整>
上述したように、照射制御部20は、照度調整を行うことも可能であり、照射制御部20が、最後のm回のパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子を、n−m回目までのパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子よりも低い照度にすることにより、最後のm回のパスでメディアM上に吐出されたインクを未硬化にするように制御する構成も可能である。この場合は、最後のm回のパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子に供給する電流値が、n−m回目までのパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子に供給する電流値よりも低くなるように制御すればよい。
【0072】
あるいは、以下の方法で最後のm回のパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子の照度を調整してもよい。右照射部9Aおよび左照射部9Bでは、それぞれ複数の照射素子を主走査方向に配列した列が、副走査方向に複数配列されている。そこで、照射制御部20は、最後のm回のパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子において、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯、または点灯している複数の照射素子よりも低い照度にしている列とが存在するように、複数の照射素子を制御する。
【0073】
これにより、最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bには、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯している列とが存在しているため、当該最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける照射強度が抑えられる。
【0074】
ここで、最後のm回のパスに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子において、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯、または点灯している複数の照射素子よりも低い照度にしている列とが交互になるように、複数の照射素子を制御することが好ましい。複数の照射素子を点灯している2つの列の境目では光が強まってしまうため、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯または低い照度にしている列とを交互にすることにより、照度を分散して均一化することができる。
【0075】
なお、最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bにおいて、複数の照射素子を点灯している列と、点灯している複数の照射素子よりも低い照度にしている列とが交互になるように制御することも可能である。この場合、照射制御部20は、第1値の電流が供給されている複数の照射素子の列と、第1値よりも低い第2値の電流が供給されている複数の照射素子の列とが交互になるように、最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子に電流を供給すればよい。
【0076】
あるいは、最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子の列ごとに、点灯している照射素子と、消灯している照射素子とが交互になるように、複数の照射素子を制御してもよい。または、最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bにおいて、点灯している照射素子と、消灯している照射素子とがランダムに配置されるように、複数の照射素子を制御してもよい。これにより、最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bには、点灯している照射素子と、消灯している照射素子とが存在しているため、当該最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける照射強度が抑えられる。
【0077】
なお、最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子の列ごとに、点灯している照射素子と、点灯している照射素子よりも低い照度の照射素子とが交互になるように、複数の照射素子を制御することも可能である。または、最後のm回のパスに対応する部分の右照射部9Aおよび左照射部9Bにおいて、点灯している照射素子と、点灯している照射素子よりも低い照度の照射素子とがランダムに配置されるように、複数の照射素子を制御することも可能である。
【0078】
この場合、照射制御部20は、点灯している照射素子よりも低い照度の照射素子に関しては、点灯している複数の照射素子に供給されている電圧値よりも低い電圧値を供給して照度を下げればよい。
【0079】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態に係るインクジェット印刷装置について、
図4を用いて詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置が備えるキャリッジ3Aの構造を模式的に示す図である。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態と同一の機能および作用を示す部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
<キャリッジ3A>
図4に示すように、キャリッジ3Aは、ヘッド8、右照射部9A(照射手段)、左照射部9B(照射手段)、および照射部10A,10B(他の照射手段)を備えている。照射部10A,10Bは、右照射部9Aおよび左照射部9Bと同様に、ヘッド8よりメディアM上に吐出されたインクに紫外線を照射するためのものである。光としては、ヘッド8から吐出されるインクを硬化させるものであればよく、例えば当該インクを紫外線硬化型インクとして、光を紫外線とすることが好ましい。本実施形態では、照射部10A,10Bは紫外線を吐出するものである形態として説明する。
【0081】
照射部10A,10Bは、主走査方向に並び、かつ、それぞれ右照射部9Aと左照射部9Bとの下方(すなわち、副走査方向において、右照射部9Aおよび左照射部9Bに対して下流側)に配置されている。また、照射部10A,10Bは、ヘッド8から副走査方向を見て左右に一つずつ並んでいる。これにより、照射部10A,10Bは、ヘッド8の移動方向と同方向、すなわち主走査方向に移動する。インクジェット印刷装置1は、メディアM(記録媒体)に対して複数のパスにより印刷を行った後、メディアMに対して照射部10A,10Bから紫外線を照射し、最後のパス(本図の場合は、4パス目)で当該メディアM上に吐出され未硬化であるインクを硬化させる。照射部10A,10Bによる紫外線照射は、1パスで行われてもよいし、複数のパス(本図の場合は、2パス)で行われてもよい。照射部10A,10Bによる紫外線照射を複数のパスで行うことにより、メディアM上の未硬化インクの硬化をよりきめ細かに制御することができる。
【0082】
照射部10A,10Bは、紫外線を照射する照射素子を1つ以上備えている。照射部10A,10Bは、照射素子として、紫外線を発光可能なLED等の光源を複数備えるものであってもよいし、メタルハライドランプ等の光源を1つ備えるものであってもよい。本図では、照射部10A,10Bは、複数の照射素子からなる。照射部10A,10Bの複数の照射素子は、各パスに対応して分割されている。
図4の例では、照射部10A,10Bの複数の照射素子は2分割されており、紙面上側から順に5パス目および6パス目に対応する。
【0083】
なお、
図4では、キャリッジ3Aに2つの照射部10A,10Bを搭載する構成を示しているが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。例えば、キャリッジ3Aに、2つの照射部10A,10Bのいずれか1つを搭載してもよい。
【0084】
<照射制御部20>
照射制御部20は、右照射部9Aおよび左照射部9Bによる光の照射に加えて、照射部10A,10Bによる光の照射を制御する。例えば、照射制御部20は、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子の点灯および消灯を切替制御したり、照度調整を行ったりする。なお、照射制御部20は、照射部10Aおよび照射部10Bのそれぞれに対して、独立して照射素子の点灯状態を制御できる構成となっている。
【0085】
照射制御部20は、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子への電流の供給を制御することにより、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子の点灯状態を制御可能となっている。具体的には、照射制御部20が照射素子の切替制御を行う場合は、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子に対して、二値のデジタル信号を出力することにより、点灯および消灯の切替制御を行っている。この場合、照射素子は、二値のデジタル信号による制御となるため、すなわちオン/オフ(点灯および消灯)のみの制御となるため、制御が容易であり、照射制御部20の制御回路は複雑にならない。
【0086】
また、照射制御部20が照射素子の照度調整を行う場合は、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子に対して供給する電流値を調整することにより、照度調整を行っている。この場合、照射素子に供給する電流値を調整することでよりきめ細かな照射制御が可能となり、所望の照度またはそれに近い照度に照射素子を制御することができる。本実施形態では、照射制御部20は、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子の点灯および消灯を切替制御する形態として説明する。
【0087】
なお、照射制御部20は、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子をまとめて、点灯および消灯の切替制御または照度調整を行うことができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、照射制御部20は、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子個々の点灯および消灯を切替制御してもよいし、照射素子個々の照度調整を行ってもよい。これにより、照射部10A、10Bにおいて、点灯している照射素子の割合を変えたり、照射素子ごとに照度を変えたりすることができ、よりきめ細かな照射制御が可能となる。
【0088】
あるいは、照射制御部20は、照射部10A,10Bそれぞれの照射素子を主走査方向に配列した列ごとに点灯および消灯を切替制御してもよいし、列ごとに照度調整を行ってもよい。これにより、照射素子の列単位での制御が可能となるため、制御が容易であり、照射制御部20の制御回路は複雑にならない。
【0089】
<インクジェット印刷方法>
以下、本実施形態に係るインクジェット印刷装置によるインクジェット印刷方法について、再び
図4を参照して説明する。なお、以下に説明するインクジェット印刷方法では、
図4に示すように、4パスで印刷を行う場合(インクを4回重ねて付着させることにより印刷を行う場合)を例示している。また、ノズル列N1〜N4からは、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、およびブラック(K)のカラーインクが吐出され、ノズル列N5〜N8からは、クリアインク(CL)が吐出されることを想定する。
【0090】
4パス目までの印刷処理は、第1の実施形態と同じであるため、ここではその説明は省略する。本実施形態に係るインクジェット印刷装置では4パスの印刷が完了すると、照射部10A,10BがメディアMに対して、メディアM上のインクに紫外線を照射する。具体的には、上記の4パス目において、キャリッジ3がメディアMの左端まで移動した後、メディアMを1パス幅だけ前方(副走査方向)に送る。そして、キャリッジ3が右動(紙面左側へ移動)を開始すると、キャリッジ3からは、キャリッジ3が右動を開始した旨の情報が照射制御部20に送られ、照射制御部20は受け取った情報に基づき、5パス目に対応する照射部10A,10Bにおける複数の照射素子を点灯するように制御を行う。これにより、5パス目では、照射部10Aから紫外線がメディアMに照射された後、照射部10Bから紫外線がメディアMに照射される。
【0091】
上記の5パス目において、キャリッジ3がメディアMの右端まで移動した後、メディアMを1パス幅だけ前方に送る。そして、キャリッジ3が左動(紙面右側へ移動)を開始すると、キャリッジ3からは、キャリッジ3が左動を開始した旨の情報が照射制御部20に送られ、照射制御部20は受け取った情報に基づき、6パス目に対応する照射部10A,10Bにおける複数の照射素子を点灯するように制御を行う。
【0092】
これにより、6パス目では、照射部10Bから紫外線がメディアMに照射された後、照射部10Aから紫外線がメディアMに照射される。この5パス目および6パス目が実行されることにより、4パス目でメディアM上に吐出され未硬化であるクリアインクに対して光が照射され硬化する。そのため、メディアMの最表面に形成される第2クリアインク層P3の表面を平坦化して高光沢に仕上げながらも、当該第2クリアインク層P3を十分に硬化させることができる。
【0093】
<照射制御部20による照射制御>
メディアMの第2クリアインク層P3は、強い光で硬化させると硬化収縮が起こり、表面に皺が発生する可能性があるため、弱い光で硬化させることが好ましい。そこで、照射制御部20は、照射部10A,10Bから照射される光が弱光となるように制御している。これについて、
図5を参照して説明する。
図5は、複数の照射素子への電流の供給値の一例を示す図である。
【0094】
図5中の(a)に示すように、照射制御部20は、1パス目から3パス目までに対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子には400mAの電流を供給し、4パス目に対応する右照射部9Aおよび左照射部9Bにおける複数の照射素子には、0mAの電流を供給する。これに対して、5パス目および6パス目に対応する照射部10A,10Bにおける複数の照射素子には、照射制御部20は、0mAまたは50mAの電流を供給する。
【0095】
具体的には、照射部10A,10Bは、それぞれ複数の照射素子を主走査方向に配列した列を、副走査方向に複数配列してなしており、照射制御部20は、複数の照射素子に0mAの電流を供給している(すなわち、複数の照射素子を消灯している)列と、複数の照射素子に50mAの電流を供給している(すなわち、複数の照射素子を点灯している)列とが存在するように、複数の照射素子を制御している。
【0096】
これにより、照射部10A,10Bからは弱光が照射されているのに加えて、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯している列と存在しているため、照射部10A,10Bの照射強度が抑えられている。結果、メディアMの第2クリアインク層P3は弱い光で硬化されるため、過硬化を抑制することができる。その結果、硬化収縮を抑えることができ、表面に皺が発生するのを防ぐことができる。
【0097】
ここで、照射制御部20は、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯している列とが交互になるように、複数の照射素子を制御している。複数の照射素子を点灯している2つの列の境目では光が強まってしまうため、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯している列とを交互にすることにより、照度を分散して均一化することができる。
【0098】
照度をより均一化するために、照射部10Aにおける複数の照射素子を点灯している列には、照射部10Bにおける複数の照射素子を消灯している列が相対し、照射部10Aにおける複数の照射素子を消灯している列には、照射部10Bにおける複数の照射素子を点灯している列が相対している。換言すれば、一方の照射部における複数の照射素子を点灯している列と、他方の照射部における複数の照射素子を消灯している列とが、主走査方向において対向している。なお、照射部10Aにおける複数の照射素子を点灯している列と、照射部10Bにおける複数の照射素子を消灯している列とが相対していることによる効果は、前段の処理(1パス目から4パス目までの印刷処理)に関係なく有効である。すなわち、上記の構成により、メディアM上のインク層を均一な照度で硬化させることができる。
【0099】
図5中の(b)では、
図5中の(a)において点灯していた複数の照射素子を消灯し、消灯していた複数の照射素子を点灯し、照射部10A,10Bにおける複数の照射素子の点灯状態を反転させている。例えば、パスごとに
図5中の(a)の点灯状態と、
図5中の(b)の点灯状態とを切り替えることにより、ヘッド8の各ノズルから吐出されるインク滴が受ける紫外線の照射量を均一化することができる。
【0100】
なお、
図5に示した電流の供給値はあくまで一例であり、本発明はこれらの供給値に限定されるわけではない。例えば、照射制御部20は、複数の照射素子に第1値の電流を供給している列と、複数の照射素子に第1値よりも低い第2値の電流を供給している列とが存在するように、照射部10A,10Bの複数の照射素子を制御してもよい。すなわち、照射制御部20は、第1の照度の複数の照射素子の列と、第1の照度よりも低い第2の照度の複数の照射素子の列とが存在するように、照射部10A,10Bの複数の照射素子を制御してもよい。上記の構成であっても、硬化収縮を抑えることができ、表面に皺が発生するのを防ぐことができる。
【0101】
また、第1値の電流が供給されている複数の照射素子の列と、第1値よりも低い第2値の電流が供給されている複数の照射素子の列とが交互になるように、照射部10A,10Bの複数の照射素子に電流を供給してもよい。すなわち、照射制御部20は、第1の照度の複数の照射素子の列と、第1の照度よりも低い第2の照度の複数の照射素子の列とが交互になるように、照射部10A,10Bの複数の照射素子を制御してもよい。上記の構成であっても、照度を分散して均一化することができる。
【0102】
あるいは、照射部10A,10Bにおける複数の照射素子の列ごとに、点灯している照射素子と、消灯している照射素子とが交互になるように、複数の照射素子を制御してもよい。または、照射部10A,10Bにおいて、点灯している照射素子と、消灯している照射素子とがランダムに配置されるように、複数の照射素子を制御してもよい。これらの構成であっても、照度を分散して均一化することができる。
【0103】
なお、照射部10A,10Bにおける複数の照射素子の列ごとに、点灯している照射素子と、点灯している照射素子よりも低い照度の照射素子とが交互になるように、複数の照射素子を制御することも可能である。または、照射部10A,10Bにおいて、点灯している照射素子と、点灯している照射素子よりも低い照度の照射素子とがランダムに配置されるように、複数の照射素子を制御することも可能である。
【0104】
この場合、照射制御部20は、点灯している照射素子よりも低い照度の照射素子に関しては、点灯している複数の照射素子に供給されている電圧値よりも低い電圧値を供給して照度を下げればよい。
【0105】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態に係るインクジェット印刷装置について、
図6を用いて詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置1Aの内部構造を模式的に示す図である。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態と同一の機能および作用を示す部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0106】
<照射部10>
本実施形態に係るインクジェット印刷装置1Aは、照射部10(他の照射手段)をさらに備えている。照射部10は、右照射部9Aおよび左照射部9Bにより紫外線が照射されたメディアM上のインクに、さらに紫外線を照射するものである。照射部10は、アフタープラテン6と対向する位置に位置している。すなわち、照射部10は、メディアMの搬送方向(副走査方向)におけるプリントプラテン5からみた下流側(すなわち、搬送方向において、右照射部9Aおよび左照射部9Bに対して下流側)に位置している。照射部10は、ヘッド8による画像の描画が終了したメディアMに対して紫外線を照射する。
【0107】
<インクジェット印刷方法>
以下、本実施形態に係るインクジェット印刷装置1Aによるインクジェット印刷方法について説明する。なお、複数のパスの印刷処理は、第1の実施形態と同じであるため、ここではその説明は省略する。
【0108】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置1Aでは、すべてのパスの印刷が完了し、メディアM上に所望の画像が形成されると、駆動ローラ7a(搬送手段)および従動ローラ7b(搬送手段)が回転することにより、メディアMはプリントプラテン5上(すなわち、右照射部9Aおよび左照射部9Bと対向する位置)から搬送される。メディアMが、搬送方向の下流側に位置する照射部10へと搬送されると、メディアM上のインクに対して、照射部10から紫外線が照射される。照射部10から照射される紫外線は、メディアMの最表面に形成されているグロス調のインク層を硬化させる。これにより、メディアMの最表面に形成されるグロス調のインク層の表面を平坦化して高光沢に仕上げながらも、当該グロス調のインク層を十分に硬化させることができる。
【0109】
なお、グロス調のインク層の表面に皺が発生するのを防ぐために、第2の実施形態に係る照射部10A,10Bのように、照射部10から照射される光が弱光となるように制御されていることが好ましい。したがって、照射部10には、照射部10A,10Bと同じような構成および制御を適用することができる。
【0110】
〔第4の実施形態〕
以下、本発明の第4の実施形態に係るインクジェット印刷装置について、
図7を用いて詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置1Bの構造を模式的に示す図である。
【0111】
本発明に係るインクジェット印刷装置として、
図7に示すようなフラットベッドタイプのインクジェット印刷装置1Bを用いることもできる。インクジェット印刷装置1Bは、第1サブアセンブリ11の上方に第2サブアセンブリ12が組み付けられてなる。第1サブアセンブリ11は、メディア(記録媒体)を固定保持するフラットベッド13の左右それぞれに、前後に延びる前後移動機構15が設けられて構成されている。第2サブアセンブリ12は、左右に延びる長尺状のガイドバー部材16に沿って左右に移動可能にキャリッジ17が取り付けられて構成されている。フラットベッド13は、メディアを載置する矩形状の載置台14を備えており、載置台14の上面に形成された多数の小孔を介して負圧吸引することによりメディアを固定保持可能になっている。
【0112】
このように構成されるインクジェット印刷装置1Bにおいては、ガイドバー部材16が、フラットベッド13に対して前後に移動可能になっており、フラットベッド13に保持されたメディアの表面に対向しながらキャリッジ17が前後左右に移動する。この移動時にキャリッジ17のヘッドからインクが噴射され、メディアの上面に所望の文字または図柄が印刷される。
【0113】
図示はしていないが、インクジェット印刷装置1Bは、第1の実施形態に係るインクジェット印刷装置1と同様に、照射制御部をさらに備えている。また、キャリッジ17は、第1の実施形態に係るキャリッジ3と同様の構成を有している。これにより、インクジェット印刷装置1Bにおいても、複数のパスの回数をnとした場合に、n−m回目(mは、nよりも小さい1以上の整数)までのパスに対応する複数の照射素子を点灯し、最後のm回のパスに対応する複数の照射素子を消灯する制御を行うことができる。
【0114】
この結果、n−m回目までのパスにより、カラーインク(着色インク)で形成されたカラーインク層(着色層)と、当該カラーインク層を被覆するクリアインク(インク)で形成されたクリアインク層(被覆層)の一部とが形成され、最後のm回のパスにより、当該クリアインク層の一部の上に、残りのクリアインク層が形成される。これにより、n−m回目のパスで形成されたマット調のインク層が、記録媒体(または下層)の表面の凹凸を平滑化する。その結果、最後のm回目のパスで吐出されたインクが濡れ広がり、表面が平坦化されたグロス調のインク層が形成され、高光沢な印刷物を得ることができる。
【0115】
また、インクジェット印刷装置1Bにおいては、キャリッジ17が第2の実施形態に係るキャリッジ3Aと同様の構成を有していてもよいし、インクジェット印刷装置1Bが第3の実施形態に係る照射部10と同様の構成の照射部を有していてもよい。これにより、メディアの最表面に形成されるグロス調のインク層の表面を平坦化して高光沢に仕上げながらも、当該グロス調のインク層を十分に硬化させることができる。
【0116】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0117】
<付記事項>
本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置は、プラテン(プリントプラテン5)上に載置された記録媒体(メディアM)に複数のパスにより印刷を行うインクジェット印刷装置1において、上記記録媒体に対して、光の照射を受けることで硬化するインクを吐出しながら主走査方向に往復移動するヘッド8と、上記記録媒体上の上記インクに光を照射する複数の照射素子であって、パスごとに対応する複数の照射素子からなる照射手段(右照射部9Aおよび左照射部9B)と、上記複数のパスの回数をnとした場合に、n−m回目(mは、nよりも小さい1以上の整数)までのパスに対応する上記複数の照射素子を点灯し、最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子を消灯または上記n−m回目までのパスに対応する上記複数の照射素子よりも低い照度にすることにより、上記最後のm回のパスで上記記録媒体上に吐出されたインクを未硬化にするように、上記複数の照射素子を制御する照射制御手段(照射制御部20)とを備える。
【0118】
上記の構成によれば、n−m回目のパスで形成されたマット調のインク層が、記録媒体(または下層)の表面の凹凸を平滑化する。その結果、最後のm回目のパスで吐出されたインクが濡れ広がり、表面が平坦化されたグロス調のインク層が形成され、高光沢な印刷物を得ることができる。
【0119】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置は、上記n回のパスによる上記印刷が完了した上記記録媒体上の上記インクに光を照射することにより、上記最後のm回のパスで当該記録媒体上に吐出され未硬化である上記インクに光を照射して硬化させる、上記複数の照射素子とは異なる他の複数の照射素子からなる他の照射手段(照射部10A,10B)をさらに備え、上記他の照射手段は、上記主走査方向に直交する副走査方向において、上記照射手段に対して下流側に配置されている。さらに、上記他の照射手段は、上記n回のパスによる印刷が完了した上記記録媒体において、上記最後のm回のパスで当該記録媒体上に吐出され未硬化である上記インクに複数のパスにより光を照射して硬化させる。
【0120】
上記の構成によれば、記録媒体の最表面に形成されるグロス調のインク層の表面を平坦化して高光沢に仕上げながらも、当該グロス調のインク層を十分に硬化させることができる。なお、照射手段による光照射を複数のパスで行うことにより、記録媒体上の未硬化インクの硬化をよりきめ細かに制御することができる。
【0121】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記他の照射手段は、上記他の複数の照射素子を上記主走査方向に配列した列を、上記主走査方向に直交する副走査方向に複数配列してなしており、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子を点灯している上記列と、上記他の複数の照射素子を消灯、または点灯している上記他の複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが存在するように、上記他の複数の照射素子を制御する。
【0122】
上記の構成によれば、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯または低い照度にしている列と存在しているため、照射手段の照射強度が抑えられている。結果、記録媒体の最表面に形成されるグロス調のインク層は弱い光で硬化されるため、過硬化を抑制することができる。その結果、硬化収縮を抑えることができ、表面に皺が発生するのを防ぐことができる。
【0123】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子を点灯している上記列と、上記他の複数の照射素子を消灯、または点灯している上記他の複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが交互になるように、上記他の複数の照射素子を制御する。
【0124】
上記の構成によれば、複数の照射素子を点灯している2つの列の境目では光が強まってしまうため、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯または低い照度にしている列とを交互にすることにより、照度を分散して均一化することができる。
【0125】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射手段は、上記複数の照射素子を上記主走査方向に配列した列を、上記主走査方向に直交する副走査方向に複数配列してなしており、上記照射制御手段は、最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子において、上記複数の照射素子を点灯している上記列と、上記複数の照射素子を消灯、または点灯している上記複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが存在するように、上記複数の照射素子を制御する。
【0126】
上記の構成によれば、最後のm回のパスに対応する部分の照射手段には、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯している列とが存在しているため、当該最後のm回のパスに対応する部分の照射手段における照射強度が抑えることができる。
【0127】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射制御手段は、上記最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子を、上記複数の照射素子を点灯している上記列と、上記複数の照射素子を消灯、または点灯している上記複数の照射素子よりも低い照度にしている上記列とが交互になるように制御する。
【0128】
上記の構成によれば、複数の照射素子を点灯している2つの列の境目では光が強まってしまうため、複数の照射素子を点灯している列と、複数の照射素子を消灯または低い照度にしている列とを交互にすることにより、照度を分散して均一化することができる。
【0129】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置は、上記主走査方向に並び、かつ、上記ヘッドから上記副走査方向を見て左右に一つずつ並ぶ上記他の照射手段を2つ備えており、一方の上記他の照射手段における上記他の複数の照射素子を点灯している上記列と、他方の上記他の照射手段における上記他の複数の照射素子を消灯または上記低い照度にしている上記列とが、上記主走査方向において対向している。
【0130】
上記の構成によれば、記録媒体上に形成されたグロス調のインク層を均一な照度で硬化させることができる。
【0131】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子の点灯および消灯の切替制御、または上記他の複数の照射素子の照度調整を行う。なお、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子個々の点灯および消灯を切替制御、または上記他の複数の照射素子個々の照度調整を行ってもよいし、上記他の複数の照射素子の上記列ごとに点灯および消灯を切替制御、または上記他の複数の照射素子の上記列ごとに照度調整を行ってもよい。
【0132】
上記の構成によれば、他の複数の照射素子の点灯および消灯を切替制御したり、照度調整を行ったりすることにより、他の照射手段による光の照射を制御することができる。ここで、他の複数の照射素子個々の切替制御または照度調整を行うことにより、点灯している照射素子の割合を変えたり、照射素子ごとに照度を変えたりすることができ、よりきめ細かな照射制御が可能となる。また、他の複数の照射素子の列ごとに切替制御または照度調整を行うことにより、照射素子の列単位での制御が可能となるため、制御が容易であり、照射制御手段の制御回路は複雑にならない。
【0133】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記照射制御手段は、上記他の複数の照射素子に対して、二値のデジタル信号を出力することにより、点灯および消灯の切替制御を行ってもよいし、上記他の複数の照射素子に対して供給する電流値を調整することにより、照度調整を行ってもよい。
【0134】
上記の構成によれば、切替制御は、二値のデジタル信号による制御、すなわちオン/オフ(点灯および消灯)のみの制御となるため、制御が容易であり、照射制御手段の制御回路は複雑にならない。また、照度調整は、照射素子に供給する電流値を調整することでよりきめ細かな照射制御が可能となり、所望の照度またはそれに近い照度に照射素子を制御することができる。
【0135】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置は、上記n回のパスによる上記印刷が完了した上記記録媒体を、上記照射手段と対向する位置から搬送する搬送手段(駆動ローラ7aおよび従動ローラ7b)と、上記搬送手段による上記記録媒体の搬送方向において、上記照射手段に対して下流側に位置し、上記記録媒体上のインクに光を照射する他の照射手段(照射部10)とをさらに備える。
【0136】
上記の構成によれば、記録媒体の最表面に形成されるグロス調のインク層の表面を平坦化して高光沢に仕上げながらも、当該グロス調のインク層を十分に硬化させることができる。
【0137】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置においては、上記n−m回目までのパスにより、着色インクで形成された着色層と、および当該着色層を被覆するインクで形成された被覆層の一部とが形成され、上記最後のm回のパスにより、上記被覆層の一部の上に、残りの上記被覆層が形成される。
【0138】
上記の構成によれば、着色層上に被覆層をマット調のインク層およびグロス調のインク層によって形成することにより、記録媒体に対して高光沢なオーバーコートを実現している。
【0139】
さらに、本発明の一態様に係るインクジェット印刷方法は、プラテン(プリントプラテン5)上に載置された記録媒体(メディアM)に複数のパスにより印刷を行うインクジェット印刷方法において、上記記録媒体に対して、光の照射を受けることで硬化するインクを吐出するインク吐出工程と、パスごとに対応する複数の照射素子から、上記記録媒体上の上記インクに光を照射する照射工程とを含み、上記照射工程において、上記複数のパスの回数をnとした場合に、n−m回目(mは、nよりも小さい1以上の整数)までのパスに対応する上記複数の照射素子を点灯し、最後のm回のパスに対応する上記複数の照射素子を消灯または上記n−m回目までのパスに対応する上記複数の照射素子よりも低い照度にすることにより、上記最後のm回のパスで上記記録媒体上に吐出されインクを未硬化にするように、上記複数の照射素子を制御する。
【0140】
上記の方法によれば、本発明の一態様に係るインクジェット印刷装置1と同様の効果を奏することができる。