(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498013
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】ロッド噴射口からの噴射仕様評価装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E02D3/12 102
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-70830(P2015-70830)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191223(P2016-191223A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】手塚 広明
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】川西 敦士
(72)【発明者】
【氏名】太田 光貴
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−174668(JP,A)
【文献】
特開2014−062366(JP,A)
【文献】
特開2007−132073(JP,A)
【文献】
特開2004−076530(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0011207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドに設けた噴射口から噴射される噴射物の噴射仕様を評価するための装置であって、
前記ロッドを固定する固定装置と、
前記噴射口から噴射される噴射物を受け止める標的装置と、
前記標的装置に噴射された噴射物の到達状態を測定する測定装置と、
前記噴射口と前記標的装置の相対的間隔を調整するために、前記標的装置または前記ロッドの少なくとも一方を移動させる噴射距離調整装置と、
前記噴射口から前記噴射物を噴射させる噴射装置と、
前記噴射口と前記標的装置との間に設けられ、前記噴射物が前記標的装置に向かって噴射されることを許容する噴射許容状態と、前記噴射物が前記標的装置に向かって噴射されることを阻止する遮蔽状態とに変換可能なシャッター装置と、
を備え、
前記シャッター装置は、前記噴射装置を駆動開始して、前記噴射口から噴射物が噴射され始めた当初は遮蔽状態とし、所定時間が経過して、評価を行いたい噴射圧又は噴射量の少なくとも一方に到達した時点で噴射許容状態とする、
ことを特徴とするロッド噴射口からの噴射仕様評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高圧噴射撹拌工法等で使用するロッドに設けた噴射口から噴射する噴射物の方向、圧力、拡散範囲等を確認するための噴射仕様評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧噴射撹拌工法を用いた地盤改良工事では、ロッドの先端部に設けた噴射口から水、硬化材、改良材や空気等の噴射物を噴射して削孔及び地盤改良を行うようになっている。この際、ロッドを回転又は揺動させることにより、所望の範囲で地盤改良を行うことができる。従来、高圧噴射撹拌工法により所望形状の地盤改良体を形成する技術が種々開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された技術は、地盤に貫入したロッドの噴射口から、空気を含む高圧流体ジェットを噴射して地盤を切削しつつ攪拌する工程と、ロッドを上昇させる工程とを行うことにより、地盤改良体を形成する高圧噴射攪拌工法に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−62616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、噴射口から噴射される噴射物の噴射方向、噴射圧力、噴射範囲等の噴射仕様は、形成する地盤改良体の出来形や品質に影響を与える。そこで、設計通りの地盤改良体を形成するには、予め噴射仕様を確認しておく必要がある。
【0006】
しかし、現在用いられている噴射仕様の確認装置は、実験用のロッドを用いて噴射仕様を評価しているため、実験値を取得して平均的な評価を行うことはできるが、実際に現場で使用するロッドの噴射仕様について個々の評価を行うことはできない。また、噴射仕様を評価する際には、実際の現場の状況に合わせて、細かな評価を行う必要がある。すなわち、実際に現場で使用するロッドの噴射口は、設計に基づき製造されているが、噴射方向、噴射圧力、噴射範囲等にバラツキが生じることがある。また、ロッドを使用し続けた場合に、当初の精度を維持しているとは限らない。
【0007】
特に、住宅が密集した住宅地において、既存の建造物を撤去せずに地盤改良工事を行う必要がある場合には、噴射仕様を正確に把握して設計通りの方向に地盤改良体を形成しなければならない。すなわち、狭隘地における地盤改良工事では、噴射口から噴射する材液や空気等の噴射物の噴射仕様に基づいて的確な制御を行うことが工事品質の向上に直接結びつく。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、ロッドに設けた噴射口から噴射される噴射物の噴射仕様を適切に評価することが可能なロッド噴射口からの噴射仕様評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロッド噴射口からの噴射仕様評価装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明のロッド噴射口からの噴射仕様評価装置は、ロッドに設けた噴射口から噴射される噴射物の噴射仕様を評価するための装置であって、ロッドを固定する固定装置と、噴射口から噴射される噴射物を受け止める標的装置と、標的装置に噴射された噴射物の到達状態を測定する測定装置と、噴射口と標的装置の相対的間隔を調整する
ために、標的装置またはロッドの少なくとも一方を移動させる噴射距離調整装置と、噴射口から噴射物を噴射させる噴射装置と、
噴射口と標的装置との間に設けられ、噴射物が標的装置に向かって噴射されることを許容する噴射許容状態と、噴射物が標的装置に向かって噴射されることを阻止する遮蔽状態とに変換可能なシャッター装置とを備えている。
【0010】
そして、シャッター装置は、噴射装置を駆動開始して、噴射口から噴射物が噴射され始めた当初は遮蔽状態とし、所定時間が経過して、評価を行いたい噴射圧又は噴射量の少なくとも一方に到達した時点で噴射許容状態とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のロッド噴射口からの噴射仕様評価装置によれば、ロッドに設けた噴射口と標的装置との相対的距離を適宜変更して、噴射口から噴射される噴射物の噴射仕様を評価することができる。したがって、多種多様な設計に基づき製造された噴射ロッドについて、適切かつ正確に噴射性能を評価することができる。
【0012】
また、標的装置に対する噴射物の到達を制御するためのシャッター装置を備えているため、評価を行いたい噴射圧や噴射量等に到達した時点で噴射仕様の評価を行うことができるので、噴射開始時点から噴射物を標的装置に当て続けた場合と比較して、正確な評価値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るロッド噴射口からの噴射仕様評価装置の側面概略図。
【
図2】本発明の実施形態に係るロッド噴射口からの噴射仕様評価装置の平面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係るロッド噴射口からの噴射仕様評価装置の実施形態を説明する。
図1〜
図3は本発明の実施形態に係るロッド噴射口からの噴射仕様評価装置を説明するもので、
図1は側面概略図、
図2は平面概略図、
図3は
図1におけるA−A矢視図である。
【0015】
<ロッド噴射口からの噴射仕様評価装置の概要>
本発明の実施形態に係るロッド噴射口からの噴射仕様評価装置は、
図1〜
図3に示すように、筐体10内に収納されており、ロッド20を固定する固定装置30と、ロッド20の噴射口21から噴射する噴射物を受け止める標的装置40と、標的装置40に噴射された噴射物の噴射仕様を測定する測定装置50と、噴射口21から噴射物を噴射させる噴射装置60と、噴射物が標的装置40に到達するのを遮蔽又は許容するシャッター装置70とを備えている。
【0016】
さらに、噴射口21と標的装置40との相対的距離を調整するための装置として、噴射距離調整装置80を備えている。
【0017】
<ロッド>
本実施形態のロッド20は、例えば、高圧噴射撹拌工法で使用する噴射管等、地盤中に挿入することにより地盤改良を行う際に使用する管状の部材のことである。なお、ロッド20は、水や硬化材等の材液や空気等の噴射物を噴射するための噴射口21を有していれば、どのような管状部材であってもよい。一般的に、高圧噴射撹拌工法では、二重管等の多重管を使用し、1つまたは複数の噴射口21を有している。
【0018】
また、上述したように、噴射口21は、材液や空気等の噴射物を噴射するための開口であり、その形状、位置、数等に制限はない。一般的に、高圧噴射撹拌工法では、水や硬化材等の材液を噴射するための材液噴射口の周囲に、複数の空気噴射口を設けてある。また、2つ以上の噴射口21を所定の離隔をもって上下に並設し、あるいは軸方向に対する位相を異ならせて配置してもよい。
【0019】
<ロッド固定装置>
ロッド固定装置30は、
図1〜
図3に示すように、ロッド20を固定するための装置であり、クランプ、面ファスナー、バンド等、どのような機構の装置を用いてもよい。なお、ロッド20を固定した際に、噴射口21から噴射される噴射物の方向がずれないように、ロッド20を確実に固定する必要がある。本実施形態では、ロッド20を略鉛直方向に固定するためのクランプを上下に3箇所設けてある。また、ロッド20を確実に固定するために、クランプとロッド20との間に緩衝材を介在させることが好ましい。
【0020】
<標的装置>
標的装置40は、
図1及び
図2に示すように、噴射口21から噴射される噴射物を受け止めるための装置であり、例えば、噴射物の噴射方向に対して略直角方向に設けた板状の部材からなる。本実施形態では、測定位置よりも広がってしまった噴射物の飛沫を遮蔽するための一対の遮蔽板41を備えており、並べて設けた遮蔽板41の間隔内を噴射物が通過するようになっている。なお、
図2に示す例では、噴射物の通過位置に対して、左右に1対の遮蔽板41を設けているが、上下に1対の遮蔽板41を設けてもよいしし、さらに左右及び上下にそれぞれ1対の遮蔽板41を設けてもよい。
【0021】
<測定装置>
測定装置50は、
図1及び
図2に示すように、標的装置40に噴射された噴射物の到達状態を測定するための装置である。ここで、噴射物の到達状態とは、噴射物が噴射されて標的装置40に到達する際の状態のことである。したがって、測定装置50は、噴射物が噴射されて標的装置40に到達する際の状態を測定することができれば、どのような態様であってもよく、噴射物の熱を検知する感熱紙、噴射物の衝突圧力を検知する感圧紙、噴射物の噴射圧力を検知するロードセル、噴射物の噴射圧力によるひずみを検知するストレインゲージ等を用いることができる。なお、測定装置50として感熱紙を用いる場合には、噴射物は温度を検知させることが可能な温水や熱水となる。
【0022】
<シャッター装置>
シャッター装置70は、
図1及び
図2に示すように、噴射口21から噴射される噴射物を遮るための装置であり、噴射口21と標的装置40との間に設けられ、噴射物が標的装置40に向かって噴射されることを許容する噴射許容状態と、噴射物が標的装置40に向かって噴射されることを阻止する遮蔽状態とに変換可能となっている。
【0023】
本実施形態のシャッター装置70は、
図1及び
図2に示すように、一対の支持柱71に支持されて、上下方向に移動可能なシャッター72と、シャッター72を上下に移動させるシャッター移動シリンダー73とからなる。そして、シャッター移動シリンダー73を駆動して、噴射口21と標的装置40との間の噴射物の通過位置にシャッター72を進入させることにより、噴射物を遮蔽する遮蔽状態(
図1に示す状態)とし、噴射口21と標的装置40との間の噴射物の通過位置からシャッター72を退出させることにより、噴射物を通過させる噴射許容状態とする。
【0024】
なお、本実施形態ではシャッター72を移動させるための装置としてシャッター移動シリンダー73を用いているが、シリンダーを駆動する機構は、電気式、油圧式、エアー式等、どのような機構であってもよい。また、シリンダーを用いるのではなく、ラックアンドピニオン等を用いたギア機構及び駆動モーター等により、シャッター72を移動させるための装置を構成してもよい。
【0025】
このシャッター装置70は、噴射装置60を駆動開始して、噴射口21から噴射物が噴射され始めた当初は遮蔽状態とし、所定時間が経過して、評価を行いたい噴射圧や噴射量等に到達した時点で噴射許容状態とするようになっている。なお、噴射許容状態となる時間を調整することにより、測定装置50における測定を正確なものとすることができる。
【0026】
<噴射距離調整装置>
噴射距離調整装置80は、噴射口21と標的装置40の相対的間隔を調整するための装置であり、本実施形態では、標的装置40を移動させるようになっている。すなわち、噴射距離調整装置80は、
図1及び
図2に示すように、標的装置40を取り付けて支持する支持部81と、噴射物の噴射方向に沿って支持部81(標的装置40)を移動させるための標的移動シリンダー82とからなる。この噴射距離調整装置80により、噴射口21と標的装置40の位置を調整することができる。
【0027】
なお、本実施形態では標的装置40を移動させるための装置として標的移動シリンダー82を用いているが、シリンダーを駆動する機構は、電気式、油圧式、エアー式等、どのような機構であってもよい。また、シリンダーを用いるのではなく、ラックアンドピニオン等を用いたギア機構及び駆動モーター等により、噴射口21と標的装置40の相対的間隔を調整するための装置を構成してもよい。
【0028】
また、本実施形態では、標的装置40を移動させることにより、噴射口21と標的装置40の相対的間隔を調整しているが、ロッド20を移動させることにより、噴射口21と標的装置40の相対的間隔を調整してもよい。
【0029】
<噴射装置>
噴射装置60は、ロッド20に対して、水や硬化材等の材液や空気等の噴射物を供給するための装置であり、図示しないが、ポンプ、エアーコンプレッサー等により構成される。パイプやホース等を介して、噴射装置60をロッド20に連通接続することにより、ロッド20の噴射口21から噴射物を噴射することができる。
【0030】
<噴射仕様の評価>
本実施形態の噴射仕様評価装置を用いて、噴射口21から噴射される噴射物の噴射仕様を評価するには、まず、評価対象となるロッド20を固定装置30により固定するとともに、ロッド20の先端部を閉塞し、ロッドの基端部に噴射装置60を連通接続する。また、標的装置40に測定装置50を取り付ける。そして、噴射距離調整装置80を用いて、噴射口21から標的装置40までの距離を調整し、シャッター72により噴射物の噴射経路を遮蔽状態とする。
【0031】
続いて、噴射装置60を駆動して噴射口21から噴射物を噴射させ、所定時間が経過して、評価を行いたい噴射圧や噴射量等に到達した時点でシャッター72を移動させて、噴射物の噴射経路を開放状態とする。この際、噴射物の飛沫が生じるが、当該飛沫は一対の遮蔽板41により遮蔽される。そして、測定装置50に噴射物を衝突させて測定が終了すると、再び、シャッター72により噴射物の噴射経路を遮蔽状態とするとともに、噴射装置60の駆動を停止する。上述したように、本実施形態の噴射仕様評価装置では、複数の噴射口21から噴射される噴射物の噴射仕様を同時に評価することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 筐体
20 ロッド
21 噴射口
30 固定装置
40 標的装置
41 遮蔽板
50 測定装置
60 噴射装置
70 シャッター装置
71 支持柱
72 シャッター
73 シャッター移動シリンダー
80 噴射距離調整装置
81 支持部
82 標的移動シリンダー