(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反射面を有する鏡体部と、前記鏡体部を支持するための支持部と、一端が前記支持部に固定され他端が前記鏡体部に固定されたアーム部と、与えられた電気信号に基づいて前記アーム部に変形を生じさせる圧電素子と、を備え、前記圧電素子により前記アーム部を変形させることにより、前記鏡体部の前記支持部に対する相対位置を制御することができる可動反射装置において、
前記アーム部が、n本(但し、n≧2)の橋梁体と(n+1)個の中間接続体とを有し、1本の接続経路に沿って前記支持部の所定箇所と前記鏡体部の所定箇所とを接続しており、
前記n本の橋梁体は、それぞれ所定の長手方向軸に沿って伸びる板状の構造体であり、
個々の橋梁体の両端のうち、前記接続経路上で前記支持部に近い側を根端部と呼び、前記接続経路上で前記鏡体部に近い側を先端部と呼んだ場合に、第1番目の中間接続体は前記支持部の所定箇所と第1番目の橋梁体の根端部とを接続し、第i番目の中間接続体(但し、2≦i≦n)は第(i−1)番目の橋梁体の先端部と第i番目の橋梁体の根端部とを接続し、第(n+1)番目の中間接続体は第n番目の橋梁体の先端部と前記鏡体部の所定箇所とを接続し、
第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体のそれぞれには、根端部側に配置された根端部側圧電素子と、先端部側に配置された先端部側圧電素子とが設けられており、第n番目の橋梁体には、根端部近傍から先端部近傍まで伸びた縦貫圧電素子が設けられており、
前記根端部側圧電素子、前記先端部側圧電素子、前記縦貫圧電素子は、いずれも橋梁体の上面もしくは下面に設けられ、与えられた電気信号に基づいて、橋梁体の表面を長手方向軸に沿って伸縮させることができることを特徴とする可動反射装置。
請求項1〜16のいずれかに記載の可動反射装置を2組用意し、第1の可動反射装置の鏡体部を、第2の可動反射装置全体に置き換えることにより構成された複合可動反射装置であって、
前記第1の可動反射装置のアーム部によって、前記第1の可動反射装置の支持部と前記第2の可動反射装置の支持部とが接続されており、前記第1の可動反射装置の圧電素子により前記第1の可動反射装置のアーム部を変形させることにより、前記第2の可動反射装置の支持部の前記第1の可動反射装置の支持部に対する相対位置が制御できるようにし、
前記第2の可動反射装置のアーム部によって、前記第2の可動反射装置の支持部と前記第2の可動反射装置の鏡体部とが接続されており、前記第2の可動反射装置の圧電素子により前記第2の可動反射装置のアーム部を変形させることにより、前記第2の可動反射装置の鏡体部の前記第2の可動反射装置の支持部に対する相対位置が制御できるようにしたことを特徴とする複合可動反射装置。
請求項5〜11のいずれかに記載の可動反射装置を2組用意し、第1の可動反射装置の鏡体部を、第2の可動反射装置全体に置き換えることにより構成された複合可動反射装置であって、
前記第1の可動反射装置のアーム部によって、前記第1の可動反射装置の支持部と前記第2の可動反射装置の支持部とが接続されており、前記第1の可動反射装置の圧電素子により前記第1の可動反射装置のアーム部を変形させることにより、前記第2の可動反射装置の支持部の前記第1の可動反射装置の支持部に対する相対位置が制御できるようにし、
前記第2の可動反射装置のアーム部によって、前記第2の可動反射装置の支持部と前記第2の可動反射装置の鏡体部とが接続されており、前記第2の可動反射装置の圧電素子により前記第2の可動反射装置のアーム部を変形させることにより、前記第2の可動反射装置の鏡体部の前記第2の可動反射装置の支持部に対する相対位置が制御できるようにし、
前記第1の可動反射装置の共通基準軸と前記第2の可動反射装置の共通基準軸とが直交するように配置されていることを特徴とする複合可動反射装置。
請求項1〜18のいずれかに記載の可動反射装置もしくは複合可動反射装置と、これら可動反射装置もしくは複合可動反射装置の圧電素子に対して駆動信号を供給して駆動する駆動部と、を備えた反射面駆動システムであって、
前記可動反射装置を構成するアーム部が、所定の水平面に沿って配置された板状部材によって構成され、
前記駆動部は、個々の圧電素子に対して、当該圧電素子が設けられている橋梁体の領域が長手方向に関して下に凸となる変形を生じさせる谷型変形駆動信号と、当該圧電素子が設けられている橋梁体の領域が長手方向に関して上に凸となる変形を生じさせる山型変形駆動信号と、を選択的に供給する機能を有し、
前記駆動部は、鏡体部に所定の姿勢をとらせる制御を行う際に、特定のアーム部に供給する電気信号として、前記谷型変形駆動信号および前記山型変形駆動信号のうちの一方を第1の駆動信号とし他方を第2の駆動信号として、当該特定のアーム部の根端部側圧電素子および縦貫圧電素子に対しては前記第1の駆動信号を供給し、当該特定のアーム部の先端部側圧電素子には前記第2の駆動信号を供給することを特徴とする反射面駆動システム。
反射面を有する鏡体部と、前記鏡体部を支持するための支持部と、一端が前記支持部に固定され他端が前記鏡体部に固定されたアーム部と、与えられた電気信号に基づいて前記アーム部に変形を生じさせる圧電素子と、を備え、前記圧電素子により前記アーム部を変形させることにより、前記鏡体部の前記支持部に対する相対位置を制御することができる可動反射装置において、
前記アーム部が、n本(但し、n≧2)の橋梁体と(n+1)個の中間接続体とを有し、1本の接続経路に沿って前記支持部の所定箇所と前記鏡体部の所定箇所とを接続しており、
前記n本の橋梁体は、それぞれ所定の長手方向軸に沿って伸びる板状の構造体であり、
個々の橋梁体の両端のうち、前記接続経路上で前記支持部に近い側を根端部と呼び、前記接続経路上で前記鏡体部に近い側を先端部と呼んだ場合に、第1番目の中間接続体は前記支持部の所定箇所と第1番目の橋梁体の根端部とを接続し、第i番目の中間接続体(但し、2≦i≦n)は第(i−1)番目の橋梁体の先端部と第i番目の橋梁体の根端部とを接続し、第(n+1)番目の中間接続体は第n番目の橋梁体の先端部と前記鏡体部の所定箇所とを接続し、
第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体のそれぞれには、根端部側に配置された根端部側圧電素子と、先端部側に配置された先端部側圧電素子とが設けられており、
前記根端部側圧電素子および前記先端部側圧電素子は、いずれも橋梁体の上面もしくは下面に設けられ、与えられた電気信号に基づいて、橋梁体の表面を長手方向軸に沿って伸縮させることができ、
前記第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体のそれぞれに設けられた一対の圧電素子は、当該橋梁体の長手方向軸に関して、一方が他方よりも長く設定されており、長い方の圧電素子を長尺素子と呼び、短い方の圧電素子を短尺素子と呼んだ場合に、奇数番目の橋梁体については、根端部側圧電素子が短尺素子、先端部側圧電素子が長尺素子であり、偶数番目の橋梁体については、根端部側圧電素子が長尺素子、先端部側圧電素子が短尺素子であることを特徴とする可動反射装置。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0041】
<<< §1. 板状のアーム部を用いる一般的な可動反射装置 >>>
はじめに、板状のアーム部を用いる可動反射装置の基本的な構造を説明する。
図1は、従来の一般的な可動反射装置100を示す図であり、
図1(a) は上面図、
図1(b) は正断面図、
図1(c) は側断面図である。ここでは、便宜上、図示のように、XYZ三次元直交座標系を定義して以下の説明を行うことにする。
【0042】
図1(a) の上面図に示すとおり、この可動反射装置100を構成する基本構造体は、XY平面に沿って広がる板状の部材によって構成されており、矩形の枠状構造体からなる支持部110と、2本のU字状アーム部120,130と、中央に配置された矩形の板状部材からなる鏡体部160と、を有している。ここでは、説明の便宜上、この基本構造体の上面にXY平面をとり、鏡体部160の上面中央位置に原点Oをとることにより、XYZ三次元直交座標系を定義している。なお、
図1(a) に示すL1軸およびL2軸は、Y軸に平行な長手方向軸である。
【0043】
図1(a) の上面図では、図の右方向がX軸正方向、図の上方向がY軸正方向、図の紙面垂直手前方向がZ軸正方向になる。一方、
図1(b) の正断面図は、この可動反射装置100をXZ平面で切った断面図であり、図の右方向がX軸正方向、図の上方向がZ軸正方向になる。また、
図1(c) の側断面図は、この可動反射装置100を長手方向軸L1に沿って切った断面図であり、図の左方向がL1軸(Y軸)正方向、図の上方向がZ軸正方向になる。
【0044】
図1(a) に示すとおり、支持部110は、右辺枠部111,上辺枠部112,左辺枠部113,下辺枠部114という4組の枠部によって構成された矩形の枠状構造体であり、鏡体部160を支持する役割を果たす。支持部110と鏡体部160とは、2本のアーム部120,130によって接続されている。第1のアーム部120は、左辺枠部113上の固定点Q1と鏡体部160の左辺上の固定点Q2とをU字状の経路に沿って接続する役割を果たし、第2のアーム部130は、右辺枠部111上の固定点Q3と鏡体部160の右辺上の固定点Q4とをU字状の経路に沿って接続する役割を果たす。
【0045】
第1のアーム部120は、Y軸に平行な長手方向軸L1に沿って伸びる第1番目の橋梁体121とY軸に平行な長手方向軸L2に沿って伸びる第2番目の橋梁体122とを有している。同様に、第2のアーム部130は、Y軸に平行な長手方向軸に沿って伸びる第1番目の橋梁体131および第2番目の橋梁体132を有している。そして、各橋梁体121,122,131,132の上面には、それぞれ圧電素子E1,E2,E3,E4が設けられている。また、鏡体部160の上面には、反射面を有する反射層165が設けられている。ここに示す例の場合、可動反射装置100の構造は、YZ平面に関して面対称になる。後述する
図7〜
図21に示す各可動反射装置100A〜100FFについても、同様に、その構造はYZ平面に関して面対称になる。なお、
図1(a) におけるハッチングは、圧電素子E1〜E4および反射層165の形成領域を示すためのものであり、断面を示すためのものではない(以後に示す各上面図についても同様)。
【0046】
図1(b) に示すとおり、ここでは、可動反射装置100を構成する基本構造体(支持部110,アーム部120,130,鏡体部160を有する一体板状部材)の上面にXY平面を定義しているため、圧電素子E1〜E4および反射層165の下面は、XY平面上に位置することになる。この例の場合、基本構造体として、縦3.0mm、横4.5mm程度の板状部材を用いており、各橋梁体121,122,131,132の長さは2.0mm程度である。また、橋梁体121,122を含む第1のアーム部120および橋梁体131,132を含む第2のアーム部130の厚み(たとえば、0.01mm)は、支持部110(各枠部111〜114)および鏡体部160の厚み(たとえば、0.50mm)よりも小さく設定されている(なお、図面は、説明の便宜上、実際とは異なる寸法比で描かれている)。このため、支持部110および鏡体部160は十分な剛性を有するが、アーム部120,130は、ある程度の弾性変形を生じる。このような弾性変形によって、鏡体部160の支持部110に対する相対位置が変化することになる。
【0047】
図1(a) に示すように、第1のアーム部120の上面の所定箇所(長手方向軸L1,L2と橋梁体121,122の両端部との交点位置)には、参照点P11,P12,P21,P22が定義されている。
図1(c) には、このうち、橋梁体121の上面の両端に位置する2つの参照点P11,P12が描かれている。同様に、参照点P21,P22は、橋梁体122の上面の両端に位置する点ということになる。これら各参照点P11〜P22は、§2において、アーム部120の反りに基づく変位を説明する際に用いられる。
【0048】
図2(a) は、
図1に示す圧電素子E1の詳細な層構造を示す正断面図であり、
図1(b) に示されている圧電素子E1の近傍を拡大した図に相当する。
図1(b) ,(c) では、図示の便宜上、各圧電素子E1〜E4を単一の層からなる構造体として描いているが、実際には、各圧電素子は3層構造を有している。
図2(a) は、圧電素子E1の層構造を説明する正断面図であるが、他の圧電素子E2〜E4の層構造も全く同様である。
【0049】
図2(a) に示すとおり、圧電素子E1は、上方電極Ea,圧電材料層Eb,下方電極Ecの3層構造を有している。圧電材料層Ebは、たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの材料(圧電特性を示す材料)からなる層であり、上方電極Eaおよび下方電極Ecは、この圧電材料層Ebに対して上下方向に電圧を印加するために利用される電極である。これら一対の電極Ea,Ecは、一般的な導電性材料(たとえば、アルミニウムや銅などの金属)からなる導電層によって構成すればよい。なお、圧電材料層Ebとしては、図の垂直方向に電界がかかった場合に、図の水平方向に伸縮が生じる圧電特性を示す材料を用いるようにする。
【0050】
この
図2(a) に示す圧電素子E1において、上方電極Eaおよび下方電極Ecの間に所定極性の電圧を印加すると、圧電材料層Ebが水平方向(図の左右方向および紙面垂直方向)に伸縮変形するため、橋梁体121の上面に対して伸縮応力が加わることになる。その結果、後述するように、橋梁体121に反りが生じる。
【0051】
結局、各圧電素子E1〜E4は、XY平面に平行な方向に広がる圧電材料層Ebと、圧電材料層Ebの上面に形成された上方電極Eaと、圧電材料層Ebの下面に形成された下方電極Ecと、を有し、上方電極Eaと下方電極Ecとの間に電圧を印加することにより、XY平面に平行な方向に伸縮する特性を有する素子ということになる。
【0052】
図示の例の場合、個々の圧電素子E1〜E4は、各橋梁体121,122,131,132の上面に設けられているため、下方電極Ecが各橋梁体の上面に固着されているが、本発明を実施するにあたって、圧電素子は、必ずしも各橋梁体の上面に設ける必要はない。たとえば、個々の圧電素子E1〜E4を、各橋梁体121,122,131,132の下面に設けるようにしてもかまわない。この場合、上方電極Eaを各橋梁体の下面に固着すればよい。もちろん、一部の圧電素子を橋梁体の上面に設け、他の一部の圧電素子を橋梁体の下面に設けるようにしてもかまわない。
【0053】
図2(b) ,(c) は、
図2(a) に示す圧電素子E1の変形例を示す正断面図である。
図2(b) に示す変形例は、
図2(a) に示す下方電極Ecの代わりに、共通下方電極Edを設けた例である。共通下方電極Edは、第1のアーム部120の上面全体に形成された導電層であり、圧電素子E1の下方電極として機能するだけでなく、圧電素子E2の下方電極としても機能する。
【0054】
別言すれば、
図2(b) に示す変形例の場合、物理的に単一の導電層からなる共通下方電極Edの一部分(
図1(a) の圧電素子E1を示す斜線ハッチング領域に対応する部分)が圧電素子E1の下方電極として機能し、他の一部分(
図1(a) の圧電素子E2を示す斜線ハッチング領域に対応する部分)が圧電素子E2の下方電極として機能することになる。当然ながら、両圧電素子E1,E2の下方電極は導通し、常に等電位になる。
図2(b) では、便宜上、共通下方電極Edを利用した圧電素子に、符号「E1′」を付して示してある。
【0055】
一方、
図2(c) に示す変形例は、
図2(b) に示す変形例において、更に、圧電材料層Ebの代わりに、共通圧電材料層Eeを設けた例である。共通圧電材料層Eeは、共通下方電極Edの上面全体に形成された圧電材料層であり、圧電素子E1の圧電材料層として機能するだけでなく、圧電素子E2の圧電材料層としても機能する。
【0056】
別言すれば、
図2(c) に示す変形例の場合、物理的に単一の導電層からなる共通下方電極Edの一部分(圧電素子E1の上方電極Eaに覆われた部分)が圧電素子E1の下方電極として機能し、物理的に単一の圧電材料層からなる共通圧電材料層Eeの一部分(圧電素子E1の上方電極Eaに覆われた部分)が圧電素子E1の圧電材料層として機能する。また、物理的に単一の導電層からなる共通下方電極Edの他の一部分(圧電素子E2の上方電極Eaに覆われた部分)が圧電素子E2の下方電極として機能し、物理的に単一の圧電材料層からなる共通圧電材料層Eeの他の一部分(圧電素子E2の上方電極Eaに覆われた部分)が圧電素子E2の圧電材料層として機能する。
図2(c) では、便宜上、共通下方電極Edおよび共通圧電材料層Eeを利用した圧電素子に、符号「E1''」を付して示してある。
【0057】
結局、
図1に示す4組の圧電素子E1〜E4として、
図2(a) に示す圧電素子E1のような個別の層構造を有する圧電素子を採用した場合は、個々の圧電素子E1〜E4が、それぞれ個別の上方電極Ea、圧電材料層Eb、下方電極Ecを有することになる。この場合、これら上方電極Ea、圧電材料層Eb、下方電極EcのXY平面への正射影投影像は互いに重なり合う(正射影投影像は、いずれも
図1(a) に斜線ハッチングを施した領域になる)。
【0058】
これに対して、
図1に示す4組の圧電素子E1〜E4として、
図2(b) に示す圧電素子E1′のような層構造を有する圧電素子を採用した場合は、まず、第1のアーム部120および第2のアーム部130の上面に共通下方電極Edを形成し、この共通下方電極Edの上面の所定位置(
図1(a) に斜線ハッチングを施した領域)に個々の圧電素子を構成するための個々の圧電材料層Ebを形成し、最後に、これら個々の圧電材料層Ebの上面に個々の上方電極Eaを形成すればよい。そうすれば、共通下方電極Edのうち個々の圧電材料層Ebが形成されている領域(
図1(a) に斜線ハッチングを施した領域)が、個々の圧電素子の下方電極Ecとして機能することになる。
【0059】
一方、
図1に示す4組の圧電素子E1〜E4として、
図2(c) に示す圧電素子E1''のような層構造を有する圧電素子を採用した場合は、まず、第1のアーム部120および第2のアーム部130の上面に共通下方電極Edを形成し、この共通下方電極Edの上面に共通圧電材料層Eeを形成し、最後に、この共通圧電材料層Eeの上面の所定位置(
図1(a) に斜線ハッチングを施した領域)に個々の圧電素子を構成するための個々の上方電極Eaを形成すればよい。そうすれば、共通圧電材料層Eeのうち個々の上方電極Eaが形成されている領域(
図1(a) に斜線ハッチングを施した領域)が、個々の圧電素子の圧電材料層Ebとして機能し、共通下方電極Edのうち個々の上方電極Eaが形成されている領域が、個々の圧電素子の下方電極Ecとして機能することになる。
【0060】
このように、
図2(b) に示す層構造を採用した場合は、複数の圧電素子について下方電極Edが共通になり、
図2(c) に示す層構造を採用した場合は、更に圧電材料層Eeも共通になるが、上方電極Eaだけは独立した個別電極になるため、個々の圧電素子はいずれも別個独立した圧電素子として動作することができる。要するに、
図2(a) ,(b) ,(c) のいずれの層構造を採用した場合も、実質的に圧電素子として機能する部分は、個別の上方電極Eaが形成された部分になるので、圧電素子の平面的な配置が、
図1(a) に斜線ハッチングを施した4箇所の領域になることに変わりはない。
【0061】
以後、本願の説明を行う際に、アーム部に設けられた圧電素子の配置を、
図1(a) のような上面図において斜線ハッチングを施した領域として示すことにするが、圧電素子の実際の層構造は
図2(a) ,(b) ,(c) のいずれを採用してもかまわない。
図2(a) の層構造を採用した場合、上面図における斜線ハッチング領域は、3層構造を有する個別の圧電素子自身の配置を示すことになるが、
図2(b) ,(c) の層構造を採用した場合、上面図における斜線ハッチング領域は、3層構造を有する圧電素子のうちの個別の上層電極の配置を示すことになる。
【0062】
なお、
図2(b) ,(c) の層構造を採用する場合、第1のアーム部120の上面領域全体および第2のアーム部130の上面領域全体を、それぞれ共通下方電極Edもしくは共通圧電材料層Eeの形成領域とすることもできるが、実用上は、支持部110および鏡体部160も含めた基本構造体の上面領域全体を形成領域とするのが好ましい。
【0063】
たとえば、
図2(c) の層構造を採用する場合であれば、支持部110,アーム部120,130,鏡体部160を含む基本構造体の上面全体に共通下方電極Edを形成し、その上面全体に共通圧電材料層Eeを形成し、その上面の所定箇所(
図1(a) に斜線ハッチングを施した領域)に、それぞれ個別の上方電極Eaを形成すればよい。この場合、鏡体部160にも上方電極Eaを形成するようにすれば、鏡体部160に形成した上方電極Ea(
図1(a) に二重斜線ハッチングを施した領域)を反射層165として利用することができる。このような層構造を採用すれば、製造プロセスを単純化することができる。なお、アーム部120,130を金属などの導電性材料によって構成した場合は、その上層部分を共通下方電極Edとして利用することができるので、別個に共通下方電極を形成する必要はない。
【0064】
続いて、各圧電素子E1〜E4について、両電極間に所定極性の電圧を印加した場合に、橋梁体に生じる変形の態様を説明する。
図3は、
図1に示す圧電素子E1に所定極性の電圧を印加することにより生じる橋梁体121の変形態様を示す側断面図(軸L1に沿って切った断面図)である。ここに示す圧電素子E1は、
図2(a) に示す層構造を採用したものであり、橋梁体121の上面に、下方電極Ec,圧電材料層Eb,上方電極Eaを積層した構造を有している。
【0065】
まず、
図3(a) は、圧電素子E1に何ら駆動信号を供給しないときの状態を示している。
図2(a) が、XZ平面で切断した正断面図であるのに対して、
図3(a) は、長手方向軸L1に沿って切断した側断面図であるため、橋梁体121は図の左右方向(長手方向軸L1に沿った方向)に伸びる板状構造を有しており、圧電素子E1も同様に、図の左右方向(長手方向軸L1に沿った方向)に伸びる板状構造を有している。
【0066】
図3(b) は、駆動部180から圧電素子E1の上下の電極Ea,Ecに対して、所定極性の電圧を加えた場合の変形態様を示している。図示の例の場合、駆動部180から上方電極Ea側が正、下方電極Ec側が負となるような極性の電圧を印加している。その結果、圧電材料層Ebには、水平方向に縮む方向への応力が生じ、橋梁体121の上面には縮む方向への力が加わる。そのため、橋梁体121は、長手方向に関して下に凸となる反りを生じ、図示のとおり、全体が谷型に変形する。
【0067】
一方、
図3(c) は、駆動部180から両電極Ea,Ec間に逆極性の電圧を加えた場合の変形態様を示している。図示の例の場合、駆動部180から上方電極Ea側が負、下方電極Ec側が正となるような極性の電圧を印加している。その結果、圧電材料層Ebには、水平方向に伸びる方向への応力が生じ、橋梁体121の上面には伸びる方向への力が加わる。そのため、橋梁体121は、長手方向に関して上に凸となる反りを生じ、図示のとおり、全体が山型に変形する。
【0068】
もっとも、圧電材料層Ebの厚み方向に印加する電圧の極性と、圧電材料層Ebに生じる伸縮応力との関係は、用いる圧電材料層Ebに施されている分極処理によって異なる。すなわち、図示の例の場合、上方が正になるような極性の電圧を印加すると谷型変形を生じ(
図3(b) )、上方が負になるような極性の電圧を印加すると山型変形を生じ(
図3(c) )ているが、逆向きの分極処理を施した圧電材料層を用いると、谷型および山型の変形態様も逆転する。また、図示の例は、橋梁体121の上面に圧電素子E1を設けた例であるが、橋梁体121の下面に圧電素子E1を設けた場合も、谷型および山型の変形態様が逆転する。
【0069】
そこで、本願では、橋梁体に対して、その長手方向に関して下に凸となる変形を生じさせる駆動信号を「谷型変形駆動信号」と呼び、上に凸となる変形を生じさせる駆動信号を「山型変形駆動信号」と呼ぶことにする。また、図面上では、下に凸となる変形を生じている橋梁体の断面部分には「丸谷」マークを描き、上に凸となる変形を生じている橋梁体の断面部分には「丸山」マークを描くことにする。「谷型変形駆動信号」および「山型変形駆動信号」の具体的な極性は、用いる圧電材料層に対して施された分極処理の方向や、圧電素子の配置(橋梁体の上面か下面か)によって定まることになる。
【0070】
図3(b) は、圧電素子E1に対して、駆動部180から谷型変形駆動信号を供給したときの状態を示す側断面図であり、「丸谷」マークが描かれた橋梁体121は谷型変形を生じている。一方、
図3(c) は、圧電素子E1に対して、駆動部180から山型変形駆動信号を供給したときの状態を示す側断面図であり、「丸山」マークが描かれた橋梁体121は山型変形を生じている。
【0071】
図1に示す可動反射装置100の場合、駆動部180から4組の圧電素子E1〜E4のそれぞれに対して、「谷型変形駆動信号」もしくは「山型変形駆動信号」を供給すれば、各橋梁体121,122,131,132は、それぞれ谷型変形もしくは山型変形を生じ、鏡体部160を変位させることができる。各圧電素子E1〜E4に供給する駆動信号の極性を選択することにより、鏡体部160の変位方向を制御することができ、駆動信号の大きさ(電圧)を調整することにより、鏡体部160の変位量を制御することができる。以上が、板状のアーム部を用いる一般的な可動反射装置の基本構造および基本動作である。
【0072】
<<< §2. 本発明の基本原理 >>>
ここでは、まず、
図1に示す可動反射装置100において、鏡体部160に所定の変位を生じさせるために、各アーム部120,130をどのように変形させればよいかを検討する。
図4は、
図1に示す可動反射装置100の橋梁体121の一端を固定した状態で、圧電素子E1に各駆動信号を与えたときの橋梁体121の変形態様を示す側断面図(軸L1に沿って切った断面図)である。図が繁雑になるのを避けるため、ここでは圧電素子E1の図示は省略する。
【0073】
アーム部は、所定の接続経路に沿って、支持部上の固定点と鏡体部上の固定点とを接続する構成要素である。たとえば、
図1に示す例の場合、第1のアーム部120は、1本のU字状の接続経路に沿って、支持部110上の固定点Q1と鏡体部160上の固定点Q2とを接続する構成要素であり、第2のアーム部130は、1本のU字状の接続経路に沿って、支持部110上の固定点Q3と鏡体部160上の固定点Q4とを接続する構成要素である。
【0074】
そこで本願では、1本のアーム部を構成する複数の橋梁体や後述する複数の中間接続体について、当該アーム部の接続経路上で、支持部110に近い側から順番に番号を付けて呼ぶことにする。たとえば、
図1(a) に示す第1のアーム部120の場合、接続経路上で固定点Q1に近い位置に配置された橋梁体121を第1番目の橋梁体と呼び、固定点Q2に近い位置に配置された橋梁体122を第2番目の橋梁体と呼ぶ。同様に、第2のアーム部130の場合、接続経路上で固定点Q3に近い位置に配置された橋梁体131を第1番目の橋梁体と呼び、固定点Q4に近い位置に配置された橋梁体132を第2番目の橋梁体と呼ぶ。
【0075】
また、1本の橋梁体の両端については、接続経路上で支持部110に近い側の端部を根端部と呼び、鏡体部160に近い側の端部を先端部と呼ぶことにする。たとえば、
図1(a) に示す第1のアーム部120の場合、第1番目の橋梁体121については、図の上端に位置する参照点P11側が根端部、図の下端に位置する参照点P12側が先端部になり、第2番目の橋梁体122については、図の下端に位置する参照点P21側が根端部、図の上端に位置する参照点P22側が先端部になる。
【0076】
図4(a) 〜(c) では、橋梁体121の根端部(図の左端)が固定されている状態が示されているが、これは、橋梁体121の根端部が後述する中間接続体を介して支持部110の固定点Q1に固定されているためである。また、
図4(a) 〜(c) では、橋梁体121の先端部(図の右端)が自由端として描かれているが、実際には、この第1番目の橋梁体121の先端部には、後述する中間接続体を介して、第2番目の橋梁体122の根端部が接続されている。
【0077】
図4(a) は、圧電素子E1に何ら駆動信号を供給しないときの状態を示しており、橋梁体121は変形せずに基準姿勢を保っている。
図4(b) は、圧電素子E1に谷型変形駆動信号を供給したときの変形状態を示している(破線は変形前の位置を示す)。たとえば、駆動部180から圧電素子E1に対して、
図3(b) に示すような極性の電圧を印加すると、橋梁体121の上面には横方向に縮む応力が作用して谷型に変形する。このとき、橋梁体121の根端部(図の左端)が固定されていれば、この谷型変形によって、橋梁体121の先端部(図の右端)は上方に変位することになる。
【0078】
一方、
図4(c) は、圧電素子E1に山型変形駆動信号を供給したときの変形状態を示している(破線は変形前の位置を示す)。たとえば、駆動部180から圧電素子E1に対して、
図3(c) に示すような極性の電圧を印加すると、橋梁体121の上面には横方向に伸びる応力が作用して山型に変形する。このとき、橋梁体121の根端部(図の左端)が固定されていれば、この山型変形によって、橋梁体121の先端部(図の右端)は下方に変位することになる。
【0079】
続いて、第2番目の橋梁体122の変形も加えて、第1のアーム部120全体の変位を考えてみる。
図5(a) は、
図1(a) に示す可動反射装置100の第1のアーム部120に関して、橋梁体121の根端部(左端)を固定した状態で、橋梁体121,122の双方に谷型変形を生じさせたときの変形態様を示す側断面図である。実際には、橋梁体122は橋梁体121の奥に位置するため、同一の断面図に両者の断面が現れることはないが、
図5(a) では、説明の便宜上、同一の断面図に、橋梁体121の断面と橋梁体122の断面とを併せて描いてある。実際には、橋梁体121の断面部分は、長手方向軸L1に沿って切った側断面であり、橋梁体122の断面部分は、長手方向軸L2に沿って切った側断面である。
【0080】
図5に描かれている参照点P11〜P22は、
図1(a) の上面図の各位置に示された点であり、いずれも各橋梁体の端部上面に定義されている。
図1(a) の上面図を見ればわかるように、参照点P11は、支持部110側の固定点Q1の近傍に定義された点であり、ここでは、説明の便宜上、静止固定点であるものとする。一方、参照点P22は、鏡体部160側の固定点Q2の近傍に定義された点であり、参照点P11に対して変位を生じる点である。参照点P22の変位は、鏡体部160の変位に対応したものになる。
【0081】
駆動部180から圧電素子E1,E2の双方に谷型変形駆動信号を供給すると、橋梁体121,122はいずれも谷型に変形する。ここで、橋梁体121の根端部(参照点P11)が固定されていると、前述したとおり、橋梁体121の先端部(参照点P12)は上方に変位する。一方、橋梁体122の根端部(参照点P21)は橋梁体121の先端部(参照点P12)に接続されているため、橋梁体121の先端部(参照点P12)の変位に応じた変位を生じることになる。
図5(a) において、参照点P21が参照点P12とともに上方に変位しているのはこのためである。
【0082】
なお、実際には、橋梁体121の先端部と橋梁体122の根端部との間には、中間接続体(
図1(a) の上面図におけるU字状部分の一部)が存在し、この中間接続体が捻れるように変形するため、参照点P12と参照点P21の上下方向の位置は一致しないが、
図5(a) の側断面図では、説明の便宜上、両参照点P12,P21を同じ位置に描いてある。また、
図5(a) の側断面図では、説明の便宜上、橋梁体121と橋梁体122の位置ずれが誇張されて描かれているが、両者のずれは、両者間を接続する中間接続体の捻れによって生じるものであるため、実際には、両者のずれは、図示されているほど大きくはない。
【0083】
図示のように、橋梁体121が谷型に変形すると、橋梁体121の先端部(参照点P12)が上方に変位し、これに中間接続体を介して接続された橋梁体122の根端部(参照点P21)も上方に変位する。しかも、橋梁体122も谷型に変形するので、橋梁体122の先端部(参照点P22)は、図示のように上方に変位する。ここで、中間接続体には捻れが生じるため、上述したように、橋梁体121と橋梁体122の位置には、図に示すようなずれが生じる。
【0084】
これとは逆に、駆動部180から圧電素子E1,E2の双方に山型変形駆動信号を供給すると、橋梁体121,122はいずれも山型に変形する。橋梁体121の根端部(参照点P11)は固定されているので、橋梁体121が山型に変形すると、橋梁体121の先端部(参照点P12)が下方に変位し、これに接続された橋梁体122の根端部(参照点P21)も下方に変位する。しかも、橋梁体122も山型に変形するので、橋梁体122の先端部(参照点P22)は、
図5(a) とは逆に、下方に変位する。
【0085】
このように、圧電素子E1,E2の双方に谷型変形駆動信号を供給すると、参照点P22は、参照点P11の位置を基準として上方に変位量d1だけ変位し、逆に、圧電素子E1,E2の双方に山型変形駆動信号を供給すると、参照点P22は、参照点P11の位置を基準として下方に変位量d1だけ変位する。この変位量d1は、圧電素子に供給する駆動信号の電圧に応じた値になり、より高い電圧を印加すれば、変位量d1も大きなものになる。
【0086】
したがって、
図1に示す従来型の可動反射装置100において、駆動部180から圧電素子E1,E2に対して供給する駆動信号の極性および電圧を調整することにより、第1のアーム部120の変形状態を制御することができ、鏡体部160上の固定点Q2の変位方向および変位量を制御することができる。同様に、駆動部180から圧電素子E3,E4に対して供給する駆動信号の極性および電圧を調整することにより、第2のアーム部130の変形状態を制御することができ、鏡体部160上の固定点Q4の変位方向および変位量を制御することができる。こうして、支持部110に対する固定点Q2,Q4の変位を制御することにより、鏡体部160を所望の姿勢にもってゆくことができ、反射層165の向きを調整することができる。
【0087】
本発明の目的は、
図1に示す従来型の可動反射装置100を改良して、より効率的に鏡体部160の変位量を確保することができるようにすることにある。たとえば、この可動反射装置100をスマートフォンなどのモバイル機器に組み込んで利用する場合、MEMS技術を利用することにより小型化を図ることができるが、このようなモバイル機器では、動作電圧が低く、消費電力も小さく抑える必要がある。したがって、低電圧かつ低消費電力で駆動した場合にも、鏡体部160の変位量を十分に確保できるようにするのが好ましい。
【0088】
本願発明者は、このような観点に基づいて、
図1に示す従来型の可動反射装置100の変位動作を解析したところ、必ずしも効率的な変位動作が可能な構造にはなっていない点に気がついた。以下にその理由を説明する。
【0089】
いま、
図5(a) に示すように、橋梁体121,122の双方を谷型に変形させて(すなわち、圧電素子E1,E2の双方に谷型変形駆動信号を供給して)、参照点P22を上方に変位させる場合を考えてみる。
図5(b) は、このときの橋梁体121の変形状態のみを抽出して示した側断面図である。橋梁体121は左端(根端部)を固定した状態において谷型に反るため、必然的に右端(先端部)が上がるように変形する。当該変形は、「参照点P12を上方に押し上げる」という点において、「参照点P22を上方に変位させて変位量d1を大きくする」という正の効果を生むことになる。しかしながら、当該変形は、「右端(先端部)に左下がりの傾斜角をつける」という点において、「参照点P22を下方に変位させて変位量d1を小さくする」という負の効果を生む要因にもなる。
【0090】
この負の効果を生む要因は、
図5(b) にθ1,θ2として示した傾斜角により説明することができる。
図5(b) に示す傾斜角θ1は、第1番目の橋梁体121の先端部(図では太線で示す)の傾斜角であり、破線で示す基準水平ラインに対してなす角度である。第1番目の橋梁体121が根端部から先端部まで、すなわち、図の左側から右側へと伸びていることを考えると、傾斜角θ1は、橋梁体が根端部から先端部へと伸びるに従って、上方へ向かう正の角度として把握することができる。このように、本願では、橋梁体が根端部から先端部へ向かって伸びる場合に、上方へ向かって伸びてゆく場合の傾斜角を正の角度とし、下方へ向かって伸びてゆく場合の傾斜角を負の角度として把握することにする。
【0091】
一方、第2番目の橋梁体122に着目すると、第2番目の橋梁体122が根端部から先端部まで伸びる方向は、図の右側から左側へ向かう方向になる。
図5(b) に示す傾斜角θ2は、第2番目の橋梁体122の根端部(太線で示す第1番目の橋梁体121の先端部とほぼ同じになる)が先端部へと向かう際の傾斜角である。この傾斜角θ2は、やはり破線で示す基準水平ラインに対してなす角度であるが、第2番目の橋梁体122の根端部にとっては、下方へ向かう負の角度になる。
【0092】
前述したとおり、第1番目の橋梁体121の先端部と第2番目の橋梁体122の根端部とは、中間接続体を介して接続されており、この中間接続体に多少の捻れが生じるため、橋梁体121の傾斜角θ1の絶対値と橋梁体122の傾斜角θ2の絶対値とは、完全には一致しないが、ほぼ同じ大きさになる。したがって、傾斜角θ1の絶対値が大きくなればなるほど、傾斜角θ2の絶対値も大きくなる。別言すれば、第1番目の橋梁体121の反りを大きくして、参照点P12をできるだけ上方に押し上げるようにすればするほど、第2番目の橋梁体122の姿勢が左下がりになってしまい、参照点P22を押し下げるという逆効果が働くことになる。
【0093】
本願発明者は、このような現象に鑑みて、第1番目の橋梁体121の変形態様を、
図5(b) のような単純な谷型の変形態様ではなく、
図5(c) のように、谷型・山型を組み合わせ変形態様にすれば、上記問題を解決できるという着想に至った。
図5(b) に示す変形態様では、第1番目の橋梁体121を全長にわたって谷型に変形させているが、
図5(c) に示す変形態様では、第1番目の橋梁体121を根端部側領域121aと先端部側領域121bとに分け、根端部側領域121aについては谷型に変形させ、先端部側領域121bについては山型に変形させている。
【0094】
このように、第1番目の橋梁体121の変形態様を根端部側と先端部側とで異ならせるようにすると、上記問題を解決することができる。すなわち、根端部側領域121aを谷型に変形させることにより、先端部側領域121b全体を上方に押し上げる効果が得られ、同時に、先端部側領域121bを山型に変形させることにより、先端部側領域121bの先端部(右端)に右下がりの傾斜角をつけることができる。
【0095】
図5(c) に示す傾斜角θ3は、第1番目の橋梁体121の先端部(図では太線で示す)の傾斜角であり、破線で示す基準水平ラインに対してなす角度である。
図5(b) では、傾斜角θ1が上方へ向かう正の角度であり、太線で示す先端部が右上がりになっていたのに対し、
図5(c) では、傾斜角θ3が下方へ向かう負の角度であり、太線で示す先端部が右下がりになっている。一方、
図5(c) に示す傾斜角θ4は、第2番目の橋梁体122の根端部の傾斜角であり、やはり破線で示す基準水平ラインに対してなす角度である。
図5(b) では、傾斜角θ2が下方へ向かう負の角度であり、第2番目の橋梁体122が左下がりに伸びてゆくことになるのに対して、
図5(c) では、傾斜角θ4が上方へ向かう正の角度であり、第2番目の橋梁体122が左上がりに伸びてゆくことになる。
【0096】
ここで、第1番目の橋梁体121の先端部に定義された参照点P12の位置に着目すると、
図5(b) に示す変形態様における参照点P12の位置の方が、
図5(c) に示す変形態様における参照点P12の位置よりも高くなる。したがって、「参照点P12をできるだけ上方に変位させる」という観点では、
図5(b) に示す変形態様の方が好ましい。しかしながら、ここで第1のアーム部120を変形させている最終目的は、「第2番目の橋梁体122の先端部に定義された参照点P22をできるだけ上方に変位させる」ことであり、そのような観点では、
図5(c) に示す変形態様の方が好ましいことになる。
【0097】
図6は、
図1に示す可動反射装置100の第1のアーム部120に関して、橋梁体121の左端(根端部)を固定した状態で、各部に谷型変形もしくは山型変形を生じさせたときの橋梁体121,122の変形態様を示す側断面図である。ここでも、説明の便宜上、同一の断面図に、橋梁体121の断面と橋梁体122の断面とを併せて描いてある。実際には、橋梁体121の断面部分は、長手方向軸L1に沿って切った側断面であり、橋梁体122の断面部分は、長手方向軸L2に沿って切った側断面である。
【0098】
図6(a) は、第1番目の橋梁体121と第2番目の橋梁体122との双方について、
図5(c) に示す変形態様を採用した結果を示している。すなわち、この
図6(a) に示す変形態様では、第1番目の橋梁体121については、
図5(c) に示す変形態様と同様に、第1番目の橋梁体121を根端部側領域121aと先端部側領域121bとに分け、根端部側領域121aについては谷型に変形させ、先端部側領域121bについては山型に変形させている。また、第2番目の橋梁体122についても、根端部側領域122aと先端部側領域122bとに分け、根端部側領域122aについては谷型に変形させ、先端部側領域122bについては山型に変形させている。
【0099】
図5(a) に示す従来の変形態様と
図6(a) に示す本発明に係る変形態様とを比較すると、右端の参照点P12の変位量に関しては前者の方が好ましい結果になるが、左端の参照点P22の変位量に関しては後者の方が好ましい結果が得られている。すなわち、
図5(a) に示す変位量d1に比べて、
図6(a) に示す変位量d2の方が大きくなっている。これは、第2番目の橋梁体122の根端部(右端)の姿勢が、前者の場合、左下がりの方向に伸びてゆく姿勢になっているのに対して、後者の場合、左上がりの方向に伸びてゆく姿勢になっているためである。ここでの最終目的は、参照点P22をできるだけ上方に変位させることであるから、
図5(a) に示す変形態様よりも
図6(a) に示す変形態様の方が好ましいことは明らかである。
【0100】
一方、
図6(b) は、第1番目の橋梁体121については
図5(c) に示す変形態様を採用し、第2番目の橋梁体122については、
図5(a) に示す変形態様を採用した結果を示している。すなわち、この
図6(b) に示す変形態様では、第1番目の橋梁体121については、
図5(c) に示す変形態様と同様に、第1番目の橋梁体121を根端部側領域121aと先端部側領域121bとに分け、根端部側領域121aについては谷型に変形させ、先端部側領域121bについては山型に変形させている。一方、第2番目の橋梁体122については、全長にわたって谷型に変形させている。
図6(b) では、
図6(a) と対比する関係上、第2番目の橋梁体122についても、根端部側領域122aと先端部側領域122bとに分けて示してあるが、根端部側領域122aも先端部側領域122bも変形態様は同じ谷型であり、全長にわたって谷型に変形していることになる。
【0101】
図6(a) に示す変形態様と
図6(b) に示す変形態様とを比較すると、左端の参照点P22の変位量については、後者の方が好ましい結果が得られることがわかる。すなわち、
図6(a) に示す変位量d2に比べて、
図6(b) に示す変位量d3の方が更に大きくなっている。これは、第2番目の橋梁体122の先端部(左端)の姿勢が左上がりの状態のままになっているためである。ここでの最終目的は、参照点P22をできるだけ上方に変位させることであるから、
図6(a) に示す変形態様よりも
図6(b) に示す変形態様の方が更に好ましいことになる。
【0102】
以上、参照点P22を上方に変位させる場合の変形態様について説明したが、逆に、参照点P22を下方に変位させる場合は、山型の変形と谷型の変形をそっくり入れ替えればよい。したがって、ここでは、参照点P22を下方に変位させる場合の変形態様についての具体的な説明は省略する。また、これまで第1のアーム部120についての変形態様についての説明を行ったが、第2のアーム部130についての変形態様も全く同様である。
【0103】
<<< §3. 本発明の基本的な実施形態 >>>
上述した§2では、
図1に示す可動反射装置100のアーム部120において、
図5(a) に示すような従来型の変形態様を採るよりも、
図6(a) もしくは
図6(b) に示すような新たな変形態様を採る方が、参照点P22の変位量を大きくする上で好ましいことを説明した。ただ、実際には、
図1に示す従来型の可動反射装置100の構造では、
図6(a) もしくは
図6(b) に示すような新たな変形態様を採ることはできない。それは、
図1に示す可動反射装置100の場合、各橋梁体121,122,131,132には、それぞれ1組の圧電素子E1,E2,E3,E4しか設けられていないためである。
【0104】
たとえば、
図6(a) に示す変形態様を採用する場合、各橋梁体121,122,131,132のそれぞれについて、根端部側領域と先端部側領域とで谷型・山型が逆になるような変形を生じさせる必要がある。また、
図6(b) に示す変形態様を採用する場合、各橋梁体121,131のそれぞれについて、根端部側領域と先端部側領域とで谷型・山型が逆になるような変形を生じさせる必要がある。
図1に示す可動反射装置100の圧電素子構成では、このような変形を生じさせることはできない。そこで、実際には、圧電素子の構成を次のように変更した新たな可動反射装置を用意する必要がある。
【0105】
まず、
図6(a) に示す変形態様を採用するためには、
図7に上面図を示すような可動反射装置100Aを用いればよい。
図1(a) に示す可動反射装置100と
図7に示す可動反射装置100Aとの相違点は、圧電素子の構成のみである。すなわち、前者では、各橋梁体121,122,131,132の上面に、それぞれ1組の圧電素子E1,E2,E3,E4が設けられていたが、後者では、各橋梁体121,122,131,132の上面に、それぞれ2組ずつの圧電素子E11,E12、E21,E22、E31,E32、E41,E42が設けられている。ここでは、各橋梁体の根端部側に配置された圧電素子を根端部側圧電素子E11,E21,E31,E41と呼び、各橋梁体の先端部側に配置された圧電素子を先端部側圧電素子E12,E22,E32,E42と呼ぶことにする。
【0106】
図1(a) に示す可動反射装置100と
図7に示す可動反射装置100Aとは、上述したとおり、圧電素子の構成のみが異なり、その他の構成要素は全く同一である。そこで、
図7では、
図1と同一の構成要素については同一符号を用いて示してある。これら同一の構成要素についての説明は省略する。
【0107】
一方、
図6(b) に示す変形態様を採用するためには、
図8に上面図を示すような可動反射装置100Bを用いればよい。
図1(a) に示す可動反射装置100と
図8に示す可動反射装置100Bとの相違点は、やはり圧電素子の構成のみである。すなわち、前者では、各橋梁体121,122,131,132の上面に、それぞれ1組の圧電素子E1,E2,E3,E4が設けられていたが、後者では、各橋梁体121,131の上面には、それぞれ2組ずつの圧電素子E11,E12、E31,E32が設けられており、各橋梁体122,132の上面には、それぞれ1組ずつの圧電素子E20,E40が設けられている。ここで、
図8に示す圧電素子E20,E40は、
図1に示す圧電素子E2,E4と全く同じものであるが、便宜上、異なる符号を付して示すことにする。
【0108】
この
図8においても、各橋梁体の根端部側に配置された圧電素子を根端部側圧電素子E11,E31と呼び、各橋梁体の先端部側に配置された圧電素子を先端部側圧電素子E12,E32と呼ぶことにする。また、圧電素子E20,E40は、根端部近傍から先端部近傍まで伸びた単一の圧電素子であるため、ここでは、縦貫圧電素子と呼ぶことにする。
【0109】
図1(a) に示す可動反射装置100と
図8に示す可動反射装置100Bとは、上述したとおり、圧電素子の構成のみが異なり、その他の構成要素は全く同一である。そこで、
図8においても、
図1と同一の構成要素については同一符号を用いて示してある。これら同一の構成要素についての説明も省略する。
【0110】
結局、
図1に示す可動反射装置100では、1本のU字型アーム部に2組の圧電素子が配置されており、
図7に示す可動反射装置100Aでは、1本のU字型アーム部に4組の圧電素子が配置されており、
図8に示す可動反射装置100Bでは、1本のU字型アーム部に3組の圧電素子が配置されていることになる。そこで、ここでは、
図1に示す可動反射装置100を2素子型の可動反射装置、
図7に示す可動反射装置100Aを4素子型の可動反射装置、
図8に示す可動反射装置100Bを3素子型の可動反射装置と呼び、一般に、1本のアーム部にk組の圧電素子が配置されている可動反射装置をk素子型の可動反射装置と呼ぶことにする。
【0111】
前述したとおり、参照点P22の変位量をできるだけ大きくする、という最終目的を達成するためには、
図6(b) に示す変形態様を採用するのが好ましい。そして、この
図6(b) に示す変形態様を実現するには、
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bおよびその派生となる奇数素子型の可動反射装置(後述)を用いるのが好ましい。
【0112】
もちろん、
図6(b) に示す変形態様は、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aを用いても実現することができるが、その場合は、橋梁体122上に設けられた一対の圧電素子E21,E22に対して同一の駆動信号を与え、橋梁体132上に設けられた一対の圧電素子E41,E42に対して同一の駆動信号を与えることになるので、わざわざ2組の圧電素子を分けて設けることは無駄である。2組の独立した圧電素子を分けて設けると、両者間に空隙部が生じ、駆動効率が低下することになる。また、配線の手間も増えることになる。
【0113】
このような点を考慮すると、実用上、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aよりも、
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bの方が優れていることになる。本願発明は、この3素子型の可動反射装置100Bおよびその派生となる奇数素子型の可動反射装置(後述)を対象としたものであり、
図6(b) に示す変形態様に基づく駆動を前提としたものになる。
【0114】
図1に示す2素子型の可動反射装置100は、従来から利用されている一般的な装置であるが、
図5(a) に示すように、参照点P22の変位量d1は必ずしも十分には確保できない。これに対して、
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bであれば、
図6(b) に示す変形態様を生じさせるような駆動を行うことにより、参照点P22の変位量d3を十分に確保することが可能になる。すなわち、本発明によれば、平面形状がU字状をなす板状のアーム部によって鏡体部を支持する可動反射装置において、より効率的に鏡体部の変位量を確保することができる新たな構造が提供されることになる。
【0115】
なお、実際には、これまで述べてきた種々の構造をもった可動反射装置を動作させるためには、各圧電素子に対して駆動信号を供給して駆動する駆動部が必要になる。本願では、可動反射装置に駆動部を付加したシステム全体を反射面駆動システムと呼ぶことにする。
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bを用いて反射面駆動システムを構成するには、駆動部180として、次のような機能をもった電子回路を用意すればよい。
【0116】
ここでは、まず、鏡体部160上の固定点Q2,Q4を上方(Z軸正方向)に変位させる動作を行う場合を考える。このような動作を行うと、
図8に示す矩形状の鏡体部160の上辺が上方(Z軸正方向)に変位し、反射層165をY軸方向に傾斜させることができる。固定点Q2を上方に変位させるには、第1のアーム部120について、
図6(b) に示す変形を生じさせればよい。したがって、駆動部180は、根端部圧電素子E11に対しては谷型変形駆動信号を供給し、先端部圧電素子E12に対しては山型変形駆動信号を供給し、縦貫圧電素子E20に対しては谷型変形駆動信号を供給すればよい。同様に、固定点Q4を上方に変位させるには、第2のアーム部130について、
図6(b) に示す変形を生じさせればよい。したがって、駆動部180は、根端部圧電素子E31に対しては谷型変形駆動信号を供給し、先端部圧電素子E32に対しては山型変形駆動信号を供給し、縦貫圧電素子E40に対しては谷型変形駆動信号を供給すればよい。
【0117】
一方、鏡体部160上の固定点Q2,Q4を下方(Z軸負方向)に変位させる動作を行う場合を考える。このような動作を行うと、
図8に示す矩形状の鏡体部160の上辺が下方(Z軸負方向)に変位し、反射層165をY軸逆方向に傾斜させることができる。固定点Q2を下方に変位させるには、第1のアーム部120について、
図6(b) とは逆の変形を生じさせればよい。したがって、駆動部180は、根端部圧電素子E11に対しては山型変形駆動信号を供給し、先端部圧電素子E12に対しては谷型変形駆動信号を供給し、縦貫圧電素子E20に対しては山型変形駆動信号を供給すればよい。同様に、固定点Q4を下方に変位させるには、第2のアーム部130について、
図6(b) とは逆の変形を生じさせればよい。したがって、駆動部180は、根端部圧電素子E31に対しては山型変形駆動信号を供給し、先端部圧電素子E32に対しては谷型変形駆動信号を供給し、縦貫圧電素子E40に対しては山型変形駆動信号を供給すればよい。
【0118】
以上、
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bを例にとって、その基本構造およびその動作方法を述べたが、§2で述べた本発明の基本原理を適用可能な可動反射装置は、このような3素子型の可動反射装置に限られるものではなく、一般に、奇数素子型の可動反射装置を構成すれば、本発明の基本原理が適用可能である。
【0119】
たとえば、
図9は、本発明に係る7素子型の可動反射装置100Cの上面図である(ハッチングは個々の領域を示すためのものであり、断面を示すためのものではない)。
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bの場合、第1のアーム部120は、1箇所にU字状折り返し部が設けられた構造をなし、第1番目の橋梁体121と第2番目の橋梁体122という2組の橋梁体を有していた。第2のアーム部130についても同様である。
【0120】
これに対して、
図9に示す7素子型の可動反射装置100Cの場合、第1のアーム部120Cは、3箇所にU字状折り返し部が設けられた構造をなし、第1番目の橋梁体121C、第2番目の橋梁体122C、第3番目の橋梁体123C、第4番目の橋梁体124C、という4組の橋梁体を有している。しかも、第1のアーム部120C上には、合計7組の圧電素子が設けられている。同様に、第2のアーム部130Cは、3箇所にU字状折り返し部が設けられた構造をなし、第1番目の橋梁体131C、第2番目の橋梁体132C、第3番目の橋梁体133C、第4番目の橋梁体134C、という4組の橋梁体を有している。この第2のアーム部130C上にも、合計7組の圧電素子が設けられている。
【0121】
また、この可動反射装置100Cにおいても、枠状部材からなる支持部110C上の固定点Q1と矩形状の鏡体部160C上の固定点Q2とが第1のアーム部120Cによって接続されている。同様に、固定点Q3と固定点Q4とが第2のアーム部130Cによって接続されている。そして、各アーム部を変形させることにより、鏡体部160C上の反射層165Cを傾斜させることができる。
【0122】
ここで、7組の圧電素子の配置に着目すると、第1のアーム部120Cの場合、第1番目の橋梁体121C〜第3番目の橋梁体123Cについては、根端部側圧電素子と先端部側圧電素子という一対の圧電素子が配置されており、最後の第4番目の橋梁体124Cについては、根端部近傍から先端部近傍まで伸びた単一の縦貫圧電素子が配置されている。第2のアーム部130Cについても同様である。
【0123】
ここで、1本のアーム部において、第1〜第3番目の橋梁体については、根端部側圧電素子と先端部側圧電素子という一対の圧電素子を配置し、第4番目の橋梁体については、単一の縦貫圧電素子を配置する理由は、
図6(a) ,(b) の変形態様を参照すれば容易に理解できよう。一般に、1本のアーム部にn本の橋梁体が含まれる場合、このn本の橋梁体は、固定点Q1とQ2とを接続する接続経路に沿ってつづら折りに連なって接続されることになる。
図9に示す可動反射装置100Cは、n=4に設定した例であり、第1のアーム部120Cは、合計4本の橋梁体121C,122C,123C,124Cをつづら折りに連結することによって構成されている。
【0124】
このような構造において、たとえば、固定点Q2を上方(Z軸正方向)に変位させることを考えると、固定点Q1からQ2へ向かって、各橋梁体が徐々に上方へ傾斜してゆくような変形をさせる必要がある。そして、後続する橋梁体が存在する場合には、
図5(c) に示すように、先端部が下方に傾斜するような変形態様を採用するのが好ましく、後続する橋梁体が存在しない場合には、
図5(b) に示すように、先端部が上方に傾斜するような変形態様を採用するのが好ましい。
【0125】
別言すれば、
図9に示す第1のアーム部120Cの場合、第1番目の橋梁体121Cと第2番目の橋梁体122Cとの関係については、
図6(a) に示す変形態様を採り、第2番目の橋梁体122Cと第3番目の橋梁体123Cとの関係についても、
図6(a) に示す変形態様を採るが、第3番目の橋梁体123Cと第4番目の橋梁体124Cとの関係については、
図6(b) に示す変形態様を採るのが好ましい。
図9に示す第1のアーム部120Cにおいて、第1〜第3番目の橋梁体121C〜123Cについては、根端部側圧電素子と先端部側圧電素子という一対の圧電素子を配置し、第4番目の橋梁体124Cについては、単一の縦貫圧電素子を配置しているのは、このような変形態様を採ることができるようにするためである。第2のアーム部130Cについても同様である。
【0126】
この
図9に示す可動反射装置100Cにおいて、鏡体部160C上の固定点Q2,Q4を上方(Z軸正方向)に変位させるには、第1のアーム部120Cに関して、第1〜第3番目の橋梁体121C〜123C上の各根端部圧電素子に対しては谷型変形駆動信号を供給し、各先端部圧電素子に対しては山型変形駆動信号を供給し、第4番目の橋梁体124C上の縦貫圧電素子に対しては谷型変形駆動信号を供給すればよい。同様に、第2のアーム部130Cに関しては、第1〜第3番目の橋梁体131C〜133C上の各根端部圧電素子に対しては谷型変形駆動信号を供給し、各先端部圧電素子に対しては山型変形駆動信号を供給し、第4番目の橋梁体134C上の縦貫圧電素子に対しては谷型変形駆動信号を供給すればよい。逆に、鏡体部160C上の固定点Q2,Q4を下方(Z軸負方向)に変位させるには、上記における山型変形駆動信号と谷型変形駆動信号とを入れ替えればよい。
【0127】
図9には、7素子型の可動反射装置100Cを例示したが、もちろん、5素子型の可動反射装置(1本のアーム部に3本の橋梁体を設けた構造を有する装置)、9素子型の可動反射装置(1本のアーム部に5本の橋梁体を設けた構造を有する装置)などを用いても本発明の基本原理を適用することができる。
【0128】
要するに、§2で述べた本発明の基本原理を適用するには、1本のアーム部上に奇数k個の圧電素子を設けた奇数素子型の可動反射装置を構成し、最終番目の橋梁体(鏡体部に接続される橋梁体)には単一の縦貫圧電素子を設け、それ以外の橋梁体には、根端部側圧電素子と先端部側圧電素子という一対の圧電素子を設けるようにすればよい。そして、鏡体部が支持部に対して所定の相対位置をとるような制御を行う際には、各根端部側圧電素子および縦貫圧電素子に対しては、鏡体部の変位方向に応じて、谷型変形駆動信号および山型変形駆動信号のうちの一方の駆動信号を供給し、各先端部側圧電素子に対しては他方の駆動信号を供給するようにすればよい。
【0129】
参考までに、
図9に示す可動反射装置100Cについて、本発明の効果を検証した結果を示しておく。下記の結果1,2は、いずれもFEM解析用アプリケーションプログラムを搭載したコンピュータによるシミュレーションにより得られたものである。
<結果1>
解析対象:7素子型可動反射装置100C
得られた変位量d=1.76mm
<結果2>
解析対象:4素子型可動反射装置100C′
得られた変位量d=0.87mm
【0130】
上記結果1,2において、7素子型可動反射装置100Cとは、
図9に示す可動反射装置100Cそのものであり、4素子型可動反射装置100C′とは、この可動反射装置100Cにおける「根端部側圧電素子および先端部側圧電素子」を「単一の縦貫圧電素子」に置き換えた装置(
図1に例示するような従来型の装置)である。別言すれば、7素子型可動反射装置100Cでは、1本のアーム部を構成する4本の橋梁体のうち、3本については「根端部側圧電素子および先端部側圧電素子」が配置され、最後の1本については「単一の縦貫圧電素子」が配置されているのに対して、4素子型可動反射装置100C′では、1本のアーム部を構成する4本の橋梁体のすべてについて「単一の縦貫圧電素子」が配置されている。
【0131】
また、上記結果1,2において、得られた変位量dとは、各圧電素子に所定極性の同一電圧を印加したときに、固定点Q1に対する固定点Q2のZ軸方向に関する変位量dを示している。両結果を比較すればわかるように、同一電圧を印加しているにもかかわらず、従来型の可動反射装置100C′を用いた結果に比べて、本発明に係る可動反射装置100Cを用いた結果では、2倍以上の変位量が得られている。このように、本発明の基本原理を適用すれば、より効率的に鏡体部の変位量を確保することができるようになる。
【0132】
<<< §4. 本発明の基本構成 >>>
上述した§3では、本発明の基本的な実施形態を説明したが、ここでは、本発明に係る可動反射装置および反射面駆動システムの基本構成を一般論として述べ、本発明の本質的な構成要素を整理しておく。以下、便宜上、
図9に示した可動反射装置100Cを例にとった説明を行う。
【0133】
まず、本発明に係る可動反射装置の基本構成を、
図9の実施例を参照しながら説明する。
図9に示す可動反射装置100Cは、反射面165Cを有する鏡体部160Cと、鏡体部160Cを支持するための支持部110Cと、一端が支持部110Cに固定され他端が鏡体部160Cに固定されたアーム部120C,130Cと、与えられた電気信号に基づいて各アーム部120C,130Cに変形を生じさせる圧電素子(斜線ハッチングを施した領域に配置されている合計14組の素子)と、を備え、各圧電素子によりアーム部120C,130Cを変形させることにより、鏡体部160Cの支持部110Cに対する相対位置を制御する機能を有している。
【0134】
図10は、
図9に示す可動反射装置100Cの基本構造体を示す平面図である。ここで、様々な形態のハッチングは、個々の領域を示すためのものであり、断面を示すためのものではない。図において、「=」模様のハッチングを施した部分は、支持部110Cであり、この例の場合、矩形の枠状構造体をなす。アーム部120C,130Cおよび鏡体部160Cは、この枠状構造体からなる支持部110Cの内部に配置されている。
【0135】
図10に網目状ハッチングもしくはドットハッチングを施した部分はアーム部である。図示の例の場合、それぞれ3箇所にU字状構造部を有する2本のアーム部120C,130Cが設けられている。U字状構造部は、平面形状がU字状をなす板状部材によって構成されている。なお、U字状構造部の数は3組(
図10の例)に限定されず、1組(
図8の例)もしくは任意の複数組でかまわない。また、図示の例では、U字状構造部の一部分が湾曲した形状になっているが、本願にいう「U字状」とは、必ずしも湾曲部分を含んだ形状を指すものではなく、U字状構造部の輪郭は、直線のみによって構成されていてもかまわない。
【0136】
図に「+」模様のハッチングを施した部分は鏡体部160Cであり、図示の例の場合、矩形の板状部材によって構成されている。結局、基本構造体は、
図10に示すように、支持部110C,アーム部120C,130C,鏡体部160Cによって構成され、ここに示す実施例の場合は、全体が一体となった板状部材によって構成されている。この基本構造体において、アーム部120C,130Cは弾性変形を生じる必要があるが、支持部110Cおよび鏡体部160Cは、できるだけ剛体としての性質を維持しているのが好ましい。したがって、実用上は、基本構造体全体を金属や合成樹脂による板状部材によって構成し、
図1(b) ,(c) の断面図に示されているように、アーム部の厚みが小さくなるように、アーム部(特に、橋梁体の部分)をビーム状に加工して弾性変形が生じやすい構造にするのが好ましい。
【0137】
アーム部120C,130Cは、1本の接続経路に沿って支持部110Cの所定箇所と鏡体部160Cの所定箇所とを接続する役割を果たす。たとえば、
図10に示す例の場合、第1のアーム部120Cは、支持部110Cの固定点Q1と鏡体部160Cの固定点Q2とを、破線で示す接続経路R1に沿って接続する役割を果たす。同様に、第2のアーム部130Cは、支持部110Cの固定点Q3と鏡体部160Cの固定点Q4とを、破線で示す接続経路R2に沿って接続する役割を果たす。
【0138】
1本のアーム部は、n本(但し、n≧2)の橋梁体と(n+1)個の中間接続体とを有している。
図10に示す例は、n=4に設定した例であり、第1のアーム部120Cは、4本の橋梁体121C,122C,123C,124C(網目状ハッチングの部分)と5個の中間接続体M1,M2,M3,M4,M5(ドットハッチングの部分)とを有している。第2のアーム部130Cも同様である。
【0139】
ここで、n本の橋梁体は、それぞれ所定の長手方向軸に沿って伸びる板状の構造体であり、個々の橋梁体の各長手方向軸は、いずれも所定の共通基準軸に対して平行な軸になっている。
図10に示す例の場合、Y軸が共通基準軸に設定されており、第1のアーム部120Cを構成する4本の橋梁体121C,122C,123C,124Cは、いずれもY軸に平行な所定の長手方向軸(それぞれ破線で示す接続経路R1の一部)に沿って伸びる板状の構造体になっている。第2のアーム部130Cを構成する4本の橋梁体も同様である。
【0140】
なお、個々の橋梁体の各長手方向軸は、必ずしも共通基準軸に対して平行な軸に設定する必要はなく、1本の接続経路に沿って伸びるアーム部が構成されるのであれば、個々の橋梁体の長手方向軸は、任意の方向を向いていてもかまわない。ただ、実用上は、図示する各実施例に示されているように、個々の橋梁体の長手方向軸が共通基準軸に対して平行な軸になるように設定すれば、個々の中間接続体の部分でUターンする折り返しを生じさせることができ、いわゆる九十九折の形態で変形を生じさせることができるようになる。このため、アーム部の空間的な配置を効率化することが可能になり、省スペース化を図る上で好ましい。
【0141】
一方、(n+1)個の中間接続体は、第1番目の橋梁体を支持部に接続する役割と、接続経路に沿って隣接する一対の橋梁体を相互に接続する役割と、第n番目の橋梁体を鏡体部に接続する役割と、を果たす。すなわち、個々の橋梁体の両端のうち、接続経路上で支持部に近い側を根端部と呼び、接続経路上で鏡体部に近い側を先端部と呼んだ場合に、(n+1)個の中間接続体のうち、第1番目の中間接続体は支持部の所定箇所と第1番目の橋梁体の根端部とを接続し、第i番目の中間接続体(但し、2≦i≦n)は第(i−1)番目の橋梁体の先端部と第i番目の橋梁体の根端部とを接続し、第(n+1)番目の中間接続体は第n番目の橋梁体の先端部と鏡体部の所定箇所とを接続することになる。
【0142】
これを、
図10に示す第1のアーム部120Cについて、より具体的に説明すれば、第1のアーム部120Cは、網目状ハッチングで示す4本の橋梁体121C,122C,123C,124Cと、ドットハッチングで示す5個の中間接続体M1,M2,M3,M4,M5とを有している。そして、第1番目の中間接続体M1は支持部110Cの固定点Q1と第1番目の橋梁体121Cの根端部とを接続している。図示の例の場合、第1番目の中間接続体M1は、支持部110Cを構成する枠状構造体の内周面に固定されている。一方、第2番目の中間接続体M2は第1番目の橋梁体121Cの先端部と第2番目の橋梁体122Cの根端部とを接続し、第3番目の中間接続体M3は第2番目の橋梁体122Cの先端部と第3番目の橋梁体123Cの根端部とを接続し、第4番目の中間接続体M4は第3番目の橋梁体123Cの先端部と第4番目の橋梁体124Cの根端部とを接続し、第5番目の中間接続体M5は第4番目の橋梁体124Cの先端部と鏡体部160Cの固定点Q2とを接続している。
【0143】
図10に示す基本構造体の場合、図示のようなXYZ三次元直交座標系を定義したときに、アーム部を構成するn本の橋梁体および(n+1)個の中間接続体の上面がXY平面に含まれ、下面がXY平面に平行な所定平面に含まれ、Y軸を共通基準軸として、n本の橋梁体の長手方向軸が、いずれもY軸に平行な軸に設定されていることになる。
【0144】
図9に示す可動反射装置100Cは、
図10に示す基本構造体の各アーム部120C,130Cの上面に、それぞれ7組の圧電素子を配置することによって構成される。この圧電素子の配置を一般論で説明すれば、n本の橋梁体のうち、第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体のそれぞれには、根端部側に配置された根端部側圧電素子と、先端部側に配置された先端部側圧電素子とを設け、第n番目の橋梁体には、根端部近傍から先端部近傍まで伸びた縦貫圧電素子を設ければよい。
図9に示す可動反射装置100Cは、n=4に設定したものであり、4本の橋梁体121C,122C,123C,124Cのうち、第1番目〜第3番目の橋梁体121C,122C,123Cのそれぞれには、根端部側に配置された根端部側圧電素子と、先端部側に配置された先端部側圧電素子とが設けられ、第4番目の橋梁体124Cには、根端部近傍から先端部近傍まで伸びた縦貫圧電素子が設けられている。
【0145】
なお、
図9に示す可動反射装置100Cの場合、根端部側圧電素子、先端部側圧電素子、縦貫圧電素子は、いずれも橋梁体の上面に設けられているが、その一部もしくは全部を橋梁体の下面に設けてもかまわない。各圧電素子は、いずれも与えられた電気信号に基づいて、橋梁体の表面を長手方向軸に沿って伸縮させる機能を有している。
【0146】
本発明に係る反射面駆動システムは、上述した可動反射装置100Cに、電子回路によって構成された駆動部180を付加することによって構成される。駆動部180は、可動反射装置100Cの各圧電素子に対して所定の駆動信号を供給して駆動する機能を有する。
【0147】
具体的には、駆動部180は、個々の圧電素子に対して、当該圧電素子が設けられている橋梁体の領域が長手方向に関して下に凸となる変形を生じさせる谷型変形駆動信号(
図3(b) 参照)と、当該圧電素子が設けられている橋梁体の領域が長手方向に関して上に凸となる変形を生じさせる山型変形駆動信号(
図3(c) 参照)と、を選択的に供給する機能を有する。上述したとおり、可動反射装置100Cを構成する各アーム部120C,130Cは、所定の水平面(図示の例の場合はXY平面)に沿って配置された板状部材によって構成されている。したがって、駆動部180から上記各変形駆動信号を供給すると、橋梁体の所定領域は谷型もしくは山形に変形することになる。
【0148】
§3で述べたとおり、本発明の基本原理に応じた動作を行うためには、駆動部180は、鏡体部160Cが支持部110Cに対して所定の相対位置をとるような制御を行う際に、特定のアーム部に供給する電気信号として、谷型変形駆動信号および山型変形駆動信号のうちの一方を第1の駆動信号とし他方を第2の駆動信号として、当該特定のアーム部の根端部側圧電素子および縦貫圧電素子に対しては第1の駆動信号を供給し、当該特定のアーム部の先端部側圧電素子には第2の駆動信号を供給する動作を行えばよい。
【0149】
たとえば、駆動部180は、アーム部120C,130Cの鏡体部160Cに固定された端部(固定点Q2,Q4)を上方に変位させる際には、アーム部120C,130Cの根端部側圧電素子および縦貫圧電素子に対しては谷型変形駆動信号を供給し、先端部側圧電素子には山型変形駆動信号を供給すればよい。逆に、下方に変位させる際には、アーム部120C,130Cの根端部側圧電素子および縦貫圧電素子に対しては山型変形駆動信号を供給し、先端部側圧電素子には谷型変形駆動信号を供給すればよい。
【0150】
なお、駆動部180から各圧電素子に与える駆動信号は、直流駆動信号であっても、交流駆動信号であってもかまわない。個々の圧電素子に対して直流駆動信号を供給した場合、アーム部120C,130Cの所定の変形態様が維持されることになるので、鏡体部160Cが支持部110Cに対して所定の姿勢を維持するように制御することができる。
【0151】
一方、個々の圧電素子に対して、谷型変形駆動信号と山型変形駆動信号とを交互に周期的に繰り返す交流駆動信号を供給した場合、鏡体部160Cが支持部110Cに対して周期的な運動を行うように制御することができる。交流駆動信号の波形としては、正弦波形、矩形波形、鋸歯状波形など、任意の波形を利用することができる。ただ、供給する交流駆動信号の位相に関しては、個々の圧電素子ごとに、それぞれ正しい位相をもった信号が供給されるように配慮する必要がある。具体的には、根端部側圧電素子および縦貫圧電素子に対しては第1の位相をもった交流駆動信号が供給され、先端部側圧電素子に対しては、第1の位相とは逆の第2の位相をもった交流駆動信号が供給されるようにすればよい。
【0152】
<<< §5. 本発明の変形例 >>>
これまで、
図8に示す可動反射装置100Bおよび
図9に示す可動反射装置100Cについて、本発明の基本的な実施形態を説明してきた。ここでは、本発明のいくつかの変形例を述べておく。
【0153】
これまで述べてきた実施例では、いずれも2本のアーム部によって鏡体部を支持する構造を採っていた。たとえば、
図9に示す可動反射装置100Cでは、第1のアーム部120Cおよび第2のアーム部130Cという2本のアーム部によって鏡体部160Cを支持する構造がとられている。ここで、第1のアーム部120Cは、支持部110Cに設けられた第1の固定点Q1と鏡体部160Cに設けられた第2の固定点Q2とを結ぶ第1の接続経路R1に沿って配置され、第2のアーム部130Cは、支持部110Cに設けられた第3の固定点Q3と鏡体部160Cに設けられた第4の固定点Q4とを結ぶ第2の接続経路R2に沿って配置されている。
【0154】
しかしながら、本発明を実施する上で、アーム部の数は2本に限定されるものではなく、1本でもよいし、任意の複数本でかまわない。ただ、実用上は、鏡体部160Cを安定して支持するために、2本もしくは4本のアーム部を用いるのが好ましい。
【0155】
図11は、本発明の変形例に係る4アーム型の可動反射装置100Dの上面図である(これまでの上面図と同様に、ハッチングは個々の領域を示すためのものであり、断面を示すためのものではない)。この可動反射装置100Dの場合、反射層165Dが形成されている鏡体部160Dを、枠状構造体からなる支持部110Dの内部に支持するため、第1のアーム部120D,第2のアーム部130D,第3のアーム部140D,第4のアーム部150Dが設けられている。
【0156】
そして、第1のアーム部120Dは、支持部110Dに設けられた第1の固定点Q11と鏡体部160Dに設けられた第2の固定点Q12とを結ぶ第1の接続経路に沿って配置され、第2のアーム部130Dは、支持部110Dに設けられた第3の固定点Q13と鏡体部160Dに設けられた第4の固定点Q14とを結ぶ第2の接続経路に沿って配置され、第3のアーム部140Dは、支持部110Dに設けられた第5の固定点Q15と鏡体部160Dに設けられた第6の固定点Q16とを結ぶ第3の接続経路に沿って配置され、第4のアーム部150Dは、支持部110Dに設けられた第7の固定点Q17と鏡体部160Dに設けられた第8の固定点Q18とを結ぶ第4の接続経路に沿って配置されている。
【0157】
図示のとおり、鏡体部160Dは矩形状の板状部材によって構成されており、第1〜第4のアーム部120D,130D,140D,150Dは、それぞれ鏡体部160Dを構成する矩形の第1〜第4の隅部近傍に接続されている。このように、
図11に示す4アーム型の可動反射装置100Dの場合、矩形状の鏡体部160Dの4隅のそれぞれにアーム部を接続する構成を採っているため、鏡体部160Dを安定して支持することが可能になる。
【0158】
個々のアーム部120D,130D,140D,150Dには、それぞれ3組の圧電素子が配置されており、
図8に示す可動反射装置100Bと同様に、3素子型の可動反射装置ということになる。たとえば、第1のアーム部120Dを構成する第1番目の橋梁体121Dには、根端部側圧電素子E11および先端部側圧電素子E12が配置されており、第2番目の橋梁体122Dには、縦貫圧電素子E20が配置されている。第2〜第4のアーム部130D,140D,150Dについての圧電素子配置も同様である。
【0159】
この4アーム型の可動反射装置100Dでは、第1のアーム部120Dを駆動することにより固定点Q12を上下方向(Z軸方向)に変位させることができ、第2のアーム部130Dを駆動することにより固定点Q14を上下方向に変位させることができ、第3のアーム部140Dを駆動することにより固定点Q16を上下方向に変位させることができ、第4のアーム部150Dを駆動することにより固定点Q18を上下方向に変位させることができる。変位を生じさせる際に各圧電素子に供給する駆動信号については、これまで述べてきた基本的な実施形態と全く同様である。
【0160】
このように、4アーム型の可動反射装置100Dでは、鏡体部160Dの4隅についての上下方向の変位を独立して制御することができるため、反射層165Dの姿勢制御の自由度は向上する。たとえば、固定点Q12,Q14を上方に変位させ、固定点Q16,Q18を下方に変位させれば、反射層165DをY軸方向に傾斜させることができ、固定点Q12,Q16を上方に変位させ、固定点Q14,Q18を下方に変位させれば、反射層165DをX軸方向に傾斜させることができる。駆動信号として交流信号を用いれば、反射層165Dを所定軸方向に揺動運動させたり、歳差運動させたりすることも可能である。
【0161】
図12は、7素子型かつ4アーム型の可動反射装置100Eの上面図である。この可動反射装置100Eは、
図11に示す可動反射装置100Dの4本のアーム部を長くして、各アーム部に7組の圧電素子を配置したものである。この可動反射装置100Eの場合も、反射層165Eが形成されている鏡体部160Eと、枠状構造体からなる支持部110Eとの間に、4本のアーム部120E,130E,140E,150Eが設けられており、鏡体部160Eの4隅近傍の固定点Q12,Q14,Q16,Q18と、支持部110Eに設けられた固定点Q11,Q13,Q15,Q17とが接続されている。
【0162】
個々のアーム部120E,130E,140E,150Eは、それぞれ4本の橋梁体を有しており、その上面には、合計7組の圧電素子が配置されている。たとえば、第1のアーム部120Eは、第1番目の橋梁体121E,第2番目の橋梁体122E,第3番目の橋梁体123E,第4番目の橋梁体124Eを有しており、第2のアーム部130Eは、第1番目の橋梁体131E,第2番目の橋梁体132E,第3番目の橋梁体133E,第4番目の橋梁体144Eを有している。
【0163】
個々のアーム部上に設けられた7組の圧電素子の配置は、
図9に示す7素子型の可動反射装置100Cにおける配置と同様である。たとえば、第1のアーム部120Eを構成する第1番目の橋梁体121E,第2番目の橋梁体122E,第3番目の橋梁体123Eには、それぞれ根端部側圧電素子および先端部側圧電素子が配置されており、第4番目の橋梁体124Eには、単一の縦貫圧電素子が配置されている。第2〜第4のアーム部130E,140E,150Eについての圧電素子配置も同様である。
【0164】
この4アーム型の可動反射装置100Eは、
図11に示す4アーム型の可動反射装置100Dと同様に、鏡体部160Eの4隅についての上下方向の変位を独立して制御することができるため、反射層165Eの姿勢制御の自由度は向上する。個々のアームの具体的な駆動方法については、これまで述べてきた基本的な実施形態と全く同様であり、説明は省略する。
【0165】
図13は、7素子型かつ中央接続2アーム型の可動反射装置100Fの上面図である。この可動反射装置100Fは、
図9に示す可動反射装置100Cと同様に、2本のアーム部によって鏡体部を支持するものであるが、支持位置が若干異なっている。すなわち、この可動反射装置100Fでは、反射層165Fが形成されている鏡体部160Fと、枠状構造体からなる支持部110Fとの間に、2本のアーム部120F,130Fが設けられている。そして、第1のアーム部120Fは、支持部110Fの負のX軸上に設けられた固定点Q21と、鏡体部160Fの負のX軸上に設けられた固定点Q22とを接続し、第2のアーム部130Fは、支持部110Fの正のX軸上に設けられた固定点Q23と、鏡体部160Fの正のX軸上に設けられた固定点Q24とを接続する役割を果たす。
【0166】
図示のとおり、第1のアーム部120Fは、4つの橋梁体121F,122F,123F,124Fを有し、第2のアーム部130Fは、4つの橋梁体131F,132F,133F,134Fを有している。ここで、第2番目および第3番目の橋梁体122F,123F,132F,133Fは、第1番目および第4番目の橋梁体121F,124F,131F,134Fに比べて長くなっている。これまで述べてきた実施例では、各橋梁体が同じ長さを有していたが、橋梁体の長さは必ずしも同じにする必要はない。
【0167】
個々のアーム部120F,130F上に設けられた7組の圧電素子の配置は、
図9に示す7素子型の可動反射装置100Cにおける配置と同様である。たとえば、第1のアーム部120Fを構成する第1番目の橋梁体121F,第2番目の橋梁体122F,第3番目の橋梁体123Fには、それぞれ根端部側圧電素子および先端部側圧電素子が配置されており、第4番目の橋梁体124Fには、単一の縦貫圧電素子が配置されている。第2のアーム部130Fについての圧電素子配置も同様である。
【0168】
この2アーム型の可動反射装置100Fでは、固定点Q22,Q24についての上下方向の変位を独立して制御することができるため、反射層165FをX軸方向に傾斜させるのに適している。個々のアーム部の具体的な駆動方法については、これまで述べてきた基本的な実施形態と全く同様であり、説明は省略する。
【0169】
結局、この可動反射装置100Fでは、鏡体部160Fが矩形状の板状部材によって構成されており、第1のアーム部120Fは、この板状部材を構成する矩形の左辺の中央部に接続されており、第2のアーム部130Fは、この板状部材を構成する矩形の右辺(左辺の対辺)の中央部に接続されていることになる。
【0170】
このように、鏡体部を矩形状の板状部材によって構成し、当該鏡体部を2本のアーム部を用いて支持する場合、2本のアーム部の鏡体部に対する固定点は、必ずしも矩形の隅部に配置する必要はなく、
図13に示す例のように、矩形を構成する辺の中央部に配置してもかまわない。
【0171】
また、
図8に示す可動反射装置100Bや
図9に示す可動反射装置100Cでは、矩形状の鏡体部160,160Cの上辺の両端に固定点Q2,Q4を定義して、2本のアーム部で当該固定点Q2,Q4を支持しているが、2本のアーム部で矩形状の鏡体部の隅部を支持する場合、2本のアーム部は、必ずしも隣接する隅部に接続する必要はなく、4つの隅部のうちのいずれかの近傍に接続されているようにすれば足りる。したがって、たとえば、矩形の対角線の両端にある2つの隅部近傍に2本のアーム部を接続するようにしてもかまわない。
【0172】
<<< §6. 圧電素子の寸法比に関する解析 >>>
§2では、本発明の基本原理として、
図5(c) に示すような変形態様を示した。この変形態様の特徴は、橋梁体121を根端部側領域121aと先端部側領域121bとに分け、根端部側領域121aについては谷型に変形させ、先端部側領域121bについては山型に変形させる点にある。このように、本発明では、最終番目の橋梁体を除いて、各橋梁体について、根端部側領域の変形態様と先端部側領域の変形態様とを変える必要がある。そこで、たとえば、
図9に示す可動反射装置100Cの第1のアーム部120Cの場合、最終番目の橋梁体124Cを除く各橋梁体121C,122C,123Cについて、根端部側圧電素子と先端部側圧電素子という一対の圧電素子を設けている。
【0173】
ここで、鏡体部160Cを上方(Z軸正方向)に変位させる場合を考えると、根端部側圧電素子の役割は、
図5(c) における根端部側領域121aの変形態様を見ればわかるように、先端部側領域121b全体を上方に移動させることにある。一方、先端部側圧電素子の役割は、先端部側領域121bの端部を下方に反らせることにある。したがって、
図5(c) の参照点P12の変位(上下方向の変位)に関しては、根端部側圧電素子と先端部側圧電素子とは相反する作用を及ぼすことになる。すなわち、根端部側圧電素子は参照点P12を上方に変位させる作用を及ぼし、先端部側圧電素子は参照点P12を下方に変位させる作用を及ぼすことになる。
【0174】
そこで、本願発明者は、根端部側圧電素子の作用と先端部側圧電素子の作用とのバランスを調整することにより、鏡体部の変位量が最大になるような最適設計ができるのではないかと考えた。すなわち、
図8〜
図13に示した可動反射装置100B〜100Fでは、同一の橋梁体に配置される根端部側圧電素子と先端部側圧電素子として、同じサイズの圧電素子(幅、長さ、厚みが同じ)を用いているが、両者のサイズのバランスを変えることにより両者の作用のバランスを調整すれば、鏡体部の変位量を更に増加させることができるのではないかと考えた。
【0175】
圧電素子による変形効果を最大限に発揮させるためには、各橋梁体の表面を占める圧電素子の面積をできるだけ広くした方がよい。したがって、圧電素子の占有面積をできるだけ広く確保したまま、根端部側圧電素子の作用と先端部側圧電素子の作用とのバランスを調整するには、長手方向の寸法比を調整するのが最も適切である。そこで、本願発明者は、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aと、
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bを解析対象として選び、根端部側圧電素子と先端部側圧電素子との寸法比をいろいろと変えて変位量を測定し、最も大きな変位量が得られる寸法比の値がいくつになるかを調べる解析を行った。以下に、その解析結果を示す。この解析結果は、FEM解析用アプリケーションプログラムを搭載したコンピュータによるシミュレーションにより得られたものである。
【0176】
まず、
図14は、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aについて、圧電素子の寸法比のバリエーションと変位量dとの関係を求めた第1の解析結果を示す図である。
図14(a) は、解析に用いた4素子型の可動反射装置100A1の平面図である。ここでは、図が繁雑になるのを避けるため、基本構造体の輪郭と第1のアーム部120上に配置された4組の圧電素子(斜線ハッチングを施した部分)のみを示すことにする。図示のとおり、第1番目の橋梁体121の上面には、根端部側圧電素子E11および先端部側圧電素子E12が配置され、第2番目の橋梁体122の上面には、根端部側圧電素子E21および先端部側圧電素子E22が配置されている。
【0177】
この可動反射装置100A1の特徴は、根端部側圧電素子E11の寸法(長手方向の長さをいう。以下同様)と先端部側圧電素子E22の寸法を同一の長さαに設定し、先端部側圧電素子E12の寸法と根端部側圧電素子E21の寸法を同一の長さβに設定した点である。ここでは、橋梁体上面における圧電素子の配置可能領域を予め定めておき、先端部側圧電素子および根端部側圧電素子は、当該配置可能領域にいっぱいになるように配置することにした。両素子間には若干の空隙が必要になるが、当該空隙部分を除いて、配置可能領域の全域に、先端部側圧電素子および根端部側圧電素子が配置されることになる。したがって、両圧電素子の寸法の和「α+β」は常に一定に維持され、寸法値αを大きくすれば、寸法値βは小さくなる関係になる。
【0178】
図14(b) に示す表は、上述した解析の結果を示すものである。図示のとおり、圧電素子の寸法比α:βを9通りに変化させた場合について(供給する駆動信号は同一)、それぞれ変位量dの値が求められている。たとえば、表のNo.1の欄に示す結果は、
図14(a) に示す可動反射装置100A1において、寸法比α:βを1:9(すなわち、β/α=9)に設定した場合に得られる変位量dがd=+0.47であることを示している。ここで、変位量dは、
図14(a) に示す参照点P11に対する参照点P22のZ軸方向に関する変位量である。なお、変位量dの単位はmmであるが、変位量dは、アーム部120の各部の寸法、材質、圧電素子の材料、印加電圧などに依存して定まる量であるため、その絶対値自体には大きな意味はない。
【0179】
図14(a) に示す可動反射装置100A1は、基本的には、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aであり、第1のアーム部120の変形態様は、
図6(a) に示すようなものになる。したがって、駆動時には、根端部側圧電素子E11,E21には、谷型変形駆動信号が供給され、先端部側圧電素子E12,E22には、山型変形駆動信号が供給される。
図14(b) に示す表のNo.5の欄に示す結果は、
図14(a) に示す可動反射装置100A1において、寸法比α:βを1:1(すなわち、β/α=1)に設定した場合に得られる変位量dがd+0.15であることを示している。ここで、寸法比α:β=1:1に設定した可動反射装置100A1は、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aに他ならない。
【0180】
図14(b) の表に示す解析結果を検討すると、寸法比α:β=1:1に設定した場合に比べて、寸法値βの比率を大きくした場合の方が、得られる変位量dは大きくなっていることがわかる。すなわち、
図14(a) に示されている可動反射装置100A1のように、寸法値α<寸法値βとした方が、変位量dは大きくなる。今回解析した9通りのバリエーションの中では、表のNo.1の欄に示すように、寸法比α:βを1:9(すなわち、β/α=9)に設定した場合に、変位量dは最大になっている。逆に、寸法値α>寸法値βとした場合は、表のNo.6〜9の欄に示すように、変位量dは負の値になる。すなわち、寸法値α>寸法値βとした場合は、参照点P22を上方に変位させることを目的として駆動信号を供給しているにもかかわらず、参照点P22は下方に変位してしまうことになる。
【0181】
続く、
図15は、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aについて、圧電素子の寸法比のバリエーションと変位量dとの関係を求めた第2の解析結果を示す図である。
図15(a) は、解析に用いた4素子型の可動反射装置100A2の平面図である。ここでも、図が繁雑になるのを避けるため、基本構造体の輪郭と第1のアーム部120上に配置された4組の圧電素子(斜線ハッチングを施した部分)のみを示すことにする。図示のとおり、第1番目の橋梁体121の上面には、根端部側圧電素子E11および先端部側圧電素子E12が配置され、第2番目の橋梁体122の上面には、根端部側圧電素子E21および先端部側圧電素子E22が配置されている。このような圧電素子の配置は、基本的には、
図14(a) に示す可動反射装置100A1における圧電素子の配置と同じである。
【0182】
図15(a) に示す可動反射装置100A2の特徴は、根端部側圧電素子E11,E21の寸法を同一の長さαに設定し、先端部側圧電素子E12,E22の寸法を同一の長さβに設定した点である。
図14(a) と
図15(a) とを、各圧電素子の寸法αおよびβに注目して比較すると、両者の相違がよくわかるであろう。両者の相違を、言葉で簡単に説明すれば、次のように言うことができる。まず、
図14(a) に示す可動反射装置100A1では、図の上方に配置された一対の圧電素子E11,E22の寸法を同一の長さαに設定し、図の下方に配置された一対の圧電素子E12,E21の寸法を同一の長さβに設定している。一方、
図15(a) に示す可動反射装置100A2では、根端部側圧電素子E11,E21の寸法を同一の長さαに設定し、先端部側圧電素子E12,E22の寸法を同一の長さβに設定している。
【0183】
図15(b) に示す表は、上述した可動反射装置100A2についての解析の結果を示すものである。図示のとおり、圧電素子の寸法比α:βを9通りに変化させた場合について(供給する駆動信号は同一)、それぞれ変位量dの値が求められている。ここでも、変位量dは、
図15(a) に示す参照点P11に対する参照点P22のZ軸方向に関する変位量である。
【0184】
図15(a) に示す可動反射装置100A2も、基本的には、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aであり、第1のアーム部120の変形態様は、
図6(a) に示すようなものになる。したがって、駆動時には、根端部側圧電素子E11,E21には、谷型変形駆動信号が供給され、先端部側圧電素子E12,E22には、山型変形駆動信号が供給される。
図15(b) に示す表のNo.5の欄に示す結果は、
図15(a) に示す可動反射装置100A2において、寸法比α:βを1:1(すなわち、β/α=1)に設定した場合に得られる変位量dがd=+0.145であることを示している。ここで、寸法比α:β=1:1に設定した可動反射装置100A2は、
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aに他ならない。
【0185】
なお、
図14(b) の表のNo.5の欄に示す結果「+0.15」と
図15(b) の表のNo.5の欄に示す結果「+0.145」との間には、若干の相違が生じているが、これはデータとして表示している変位量dの有効桁数の相違に起因するものである。各表のNo.5の欄の結果は、いずれも寸法比α:β=1:1に設定した
図7に示す4素子型の可動反射装置100Aについての結果になるので、得られた変位量dの値は、本来は同じになるものである。
【0186】
図15(b) の表に示す解析結果を検討すると、変位量dの値は、寸法値α,βの設定に関わらず、いずれも正になっており、参照点P22は常に上方に変位している。また、寸法値α<寸法値βとした方が、変位量dは大きくなる傾向にある。しかしながら、変位量dの絶対値を
図14(b) の表と比較すると、
図15(b) の表では全般的に小さくなっていることがわかる。これは、参照点P22の変位量dを大きくするためには、
図15(a) に示す圧電素子の寸法比設定よりも、
図14(a) に示す圧電素子の寸法比設定の方が好ましいことを示している。
【0187】
最後に示す
図16は、
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bについて、圧電素子の寸法比のバリエーションと変位量dとの関係を求めた解析結果を示す図である。
図16(a) は、解析に用いた3素子型の可動反射装置100Bの平面図である。ここでも、図が繁雑になるのを避けるため、基本構造体の輪郭と第1のアーム部120上に配置された3組の圧電素子(斜線ハッチングを施した部分)のみを示すことにする。図示のとおり、第1番目の橋梁体121の上面には、根端部側圧電素子E11および先端部側圧電素子E12が配置され、第2番目の橋梁体122の上面には、縦貫圧電素子E20が配置されている。
【0188】
この可動反射装置100Bの特徴は、第1番目の橋梁体121上に配置された根端部側圧電素子E11の寸法を長さαに設定し、先端部側圧電素子E12の寸法を長さβに設定した点である。ここでも、根端部側圧電素子E11および先端部側圧電素子E12は、第1番目の橋梁体121上の配置可能領域にいっぱいになるように配置される。したがって、両圧電素子の寸法の和「α+β」は常に一定に維持され、寸法値αを大きくすれば、寸法値βは小さくなる関係になる。一方、第2番目の橋梁体122の上面には、単一の縦貫圧電素子E20が配置されており、その寸法は常に長さγに固定される。ここで、γ=α+β+δである(δは、根端部側圧電素子E11と先端部側圧電素子E12との間に設けられる空隙部の寸法)。
【0189】
図16(b) に示す表は、上述した解析の結果を示すものである。図示のとおり、圧電素子の寸法比α:βを9通りに変化させた場合について(寸法γ,δは固定:供給する駆動信号は同一)、それぞれ変位量dの値が求められている。ここでも、変位量dは、
図16(a) に示す参照点P11に対する参照点P22のZ軸方向に関する変位量である。
【0190】
図16(a) に示す可動反射装置100Bは、基本的には、
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bであり、第1のアーム部120の変形態様は、
図6(b) に示すようなものになる。したがって、駆動時には、根端部側圧電素子E11および縦貫圧電素子E20には、谷型変形駆動信号が供給され、先端部側圧電素子E12には、山型変形駆動信号が供給される。
図16(b) に示す表のNo.5の欄に示す結果は、
図16(a) に示す可動反射装置100Bにおいて、寸法比α:βを1:1(すなわち、β/α=1)に設定した場合に得られる変位量dがd=+0.29であることを示している。ここで、寸法比α:β=1:1に設定した可動反射装置100Bは、
図8に示す3素子型の可動反射装置100Bに他ならない。
【0191】
図16(b) の表に示す解析結果を検討すると、変位量dの値は、寸法値α,βの設定に関わらず、いずれも正になっており、参照点P22は常に上方に変位している。また、寸法値α<寸法値βとした方が、変位量dは大きくなる傾向にある。しかも、上方への変位量d(正の変位量d)を、
図14(b) の表や
図15(b) の表と比較すると、いずれの場合も、
図16(b) の表に示す結果が最も大きくなっていることがわかる。これは、参照点P22の変位量dを大きくするためには、
図16(a) に示す圧電素子の配置形態が最も好ましいことを示している。なお、
図16(a) に示す配置形態において、α:β=10:0とした場合は、
図1(a) に示す2素子型の装置と等価になり、変位量dは、
図16(b) の表のNo.9の結果よりも更に小さくなる。
【0192】
図17は、
図16(b) に示す可動反射装置100Bについての解析結果に基づいて作成された「寸法比β/αと変位量dとの関係を示すグラフ」である。横軸の寸法比β/αは対数尺度になっている。グラフの横軸の範囲(寸法比β/αについての範囲)は、ほぼ0.1〜10の範囲になっている。これは、
図16(b) の表に示すとおり、解析を行った範囲が、ほぼこの範囲になっているためである。なお、この範囲外の寸法比β/αを設定した場合、一方の圧電素子の寸法値が極端に小さくなり、電極に対する配線が困難になるなどの実装上の問題が生じるため、実用上はあまり好ましくない。
【0193】
このグラフに示されている寸法比β/αの範囲に関する限り、寸法比β/αが大きいほど変位量dも大きくなることがわかる。ただ、グラフには、第1ショルダー部S1と第2ショルダー部S2が現れている。このような2箇所にショルダー部S1,S2が現れる理由は不明であるが、実用上は、第2ショルダー部S2より右側の領域、すなわち、寸法比β/αが1.5以上となる領域に入るような設計を行うのが好ましい。寸法比β/αが2以上になると、変位量dの増加度合は飽和状態になるので、寸法比β/αを極端に大きくしても実用上の意味はない。寸法比β/αを極端に大きくすると、一方の寸法値が極端に小さくなり、電極に対する配線が困難になるなどの実装上の問題が生じるため好ましくない。したがって、実用上は、寸法比β/αの下限を1.5とし、上限を実装上の問題が生じる直前の値(たとえば、9程度)とするのが好ましい。このグラフによれば、下限値を1.5とし、上限値を9とすれば、少なくとも当該範囲に関しては、良好な変位量dを得ることができることが示されている。
【0194】
図16(b) に示す解析結果は、
図16(a) に示す構造をもった可動反射装置100Bについて、種々の解析パラメータを設定してコンピュータによるFEM解析を行うことにより得られたものである。解析パラメータとしては、アーム部の長さ、幅、厚み、材質(弾性係数)、圧電素子の幅などを設定することになる。本願発明者は、これら解析パラメータを何通りかに変更して解析を繰り返し実行したが、寸法比β/αと変位量dとの関係を示すグラフの形状に大きな変化はなく、特に第2ショルダー部S2の位置は、寸法比β/α=1.5と一定であった。このことから、寸法比β/α=1.5の位置にショルダー部が現れることは、特定の解析パラメータを設定した場合にのみ現れる個別の現象ではなく、解析パラメータの値に依存しない普遍的な現象であるものと考えられる。また、いずれの解析結果においても、少なくとも寸法比β/α=9に至るまでは、十分良好な変位量dが得られた。
【0195】
本願発明者は、更に、
図9に示す7素子型の可動反射装置100Cについても同様の解析を行った。その結果、
図14〜
図16に示す解析結果に整合する結果が得られた。
図9に示す7素子型の可動反射装置100Cの場合、第1番目の橋梁体121C,第2番目の橋梁体122C,第3番目の橋梁体123Cの上面にそれぞれ2組の圧電素子が配置されている。そこで、
図14(a) に示すように、図の上方に配置された圧電素子の寸法をα、図の下方に配置された圧電素子の寸法をβとして、寸法比β/αの値を変化させ、変位量dがどのように変化するかを解析したところ、
図17のグラフと同様に、寸法比β/αが大きくなるほど変位量dが増加するグラフが得られ、寸法比β/α=1.5の位置にショルダー部が現れた。また、少なくとも寸法比β/α=9に至るまでは、十分良好な変位量dが得られた。
【0196】
このことから、
図17のグラフに現れている特徴(圧電素子の寸法比の最適条件)は、1本のアーム部に2本の橋梁体が含まれる
図16(a) に示す3素子型の可動反射装置100Bだけでなく、複数n本の橋梁体が含まれる一般的な奇数素子型の可動反射装置についても同様に現れるものと推定できる。
【0197】
アーム部が、複数n本の橋梁体を含む奇数素子型の可動反射装置の場合、第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体のそれぞれに一対の圧電素子(根端部側圧電素子および先端部側圧電素子)が設けられることになる。この場合、上記「圧電素子の寸法比の最適条件」を考慮すれば、各橋梁体に設けられた一対の圧電素子は、当該橋梁体の長手方向軸に関して、一方が他方よりも長く設定されているようにすると、より大きな変位量dを確保できることになる。ここで、長い方の圧電素子を長尺素子と呼び、短い方の圧電素子を短尺素子と呼ぶことにすると、奇数番目の橋梁体については、根端部側圧電素子が短尺素子、先端部側圧電素子が長尺素子になり、偶数番目の橋梁体については、根端部側圧電素子が長尺素子、先端部側圧電素子が短尺素子になるようにすればよい。
【0198】
図16(a) に示す可動反射装置100Bは、n=2に設定した3素子型の可動反射装置であるが、第1番目(奇数番目)の橋梁体121については、根端部側圧電素子E11が寸法値αをもった短尺素子、先端部側圧電素子E12が寸法値βをもった長尺素子になっている。上記「圧電素子の寸法比の最適条件」によれば、寸法比β/αは、1.5以上に設定するのが好ましい。なお、この3素子型の可動反射装置の場合、第2番目(偶数番目)の橋梁体122については、短尺素子および長尺素子の代わりに、寸法値γをもった縦貫圧電素子が配置されている。
【0199】
一方、
図9に示す7素子型の可動反射装置100Cの場合、第1番目〜第3番目の橋梁体には、寸法値α=βとなるような同じ寸法の2組の圧電素子が配置されているが、上記「圧電素子の寸法比の最適条件」を考慮すれば、実用上は、
図9に示す可動反射装置100Cの代わりに、
図18に示す7素子型の可動反射装置100CCのような構成を採るのが好ましい。
【0200】
この可動反射装置100CCは、枠状部材からなる支持部110Cと矩形の板状部材からなる鏡体部160Cとの間を、2本のアーム部120C,130Cによって接続し、各アーム部にそれぞれ7組の圧電素子を配置したものであり、n=4に設定した7素子型の可動反射装置であるが、第1番目および第3番目(奇数番目)の橋梁体については、根端部側圧電素子が短尺素子、先端部側圧電素子が長尺素子になっており、第2番目(偶数番目)の橋梁体については、根端部側圧電素子が長尺素子、先端部側圧電素子が短尺素子になっている。このような構成にすれば、上記「圧電素子の寸法比の最適条件」を満たすことになり、より大きな変位量dを確保することができるようになる。なお、第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体のそれぞれについて、短尺素子の寸法をα、長尺素子の寸法をβとすれば、寸法比β/αは、前述したとおり、1.5以上に設定するのが好ましい。
【0201】
同様に、
図11に示す4アーム型の可動反射装置100Dの場合は、上記「圧電素子の寸法比の最適条件」を考慮すれば、
図19に示す可動反射装置100DDのような構成を採るのが好ましい。また、
図12に示す7素子型かつ4アーム型の可動反射装置100Eの場合は、
図20に示す可動反射装置100EEのような構成を採るのが好ましく、
図13に示す7素子型かつ中央接続2アーム型の可動反射装置100Fの場合は、
図21に示す可動反射装置100FFのような構成を採るのが好ましい。いずれの場合も、短尺素子の寸法値αと長尺素子の寸法値βの比であるβ/αを、1.5以上に設定するのが好ましい。
【0202】
なお、全n本(但し、n≧2)の橋梁体を有するアーム部について、第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体に、それぞれ寸法値αをもった短尺素子と寸法値βをもった長尺素子を設け、奇数番目の橋梁体については、根端部側を短尺素子、先端部側を長尺素子とし、偶数番目の橋梁体については、根端部側を長尺素子、先端部側を短尺素子とし、更に、好ましくは寸法比β/αを1.5以上にする、という設定を行うことにより、当該アーム部の最先端部の変位を向上させる、という手法は、第n番目の橋梁体に設ける圧電素子がどのような形態のものであっても有効である。
【0203】
たとえば、
図16,
図18,
図19,
図20,
図21の実施例は、第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体には、短尺素子と長尺素子とを設け、第n番目の橋梁体には、縦貫圧電素子を設けた例であるが、第n番目の橋梁体には、必ずしも縦貫圧電素子を設けなくても、上記手法による効果を得ることができる。たとえば、
図14に示すように、第n番目(この例では、n=2)の橋梁体に短尺素子と長尺素子とを設けた例についても、上記手法の効果は有効である。
【0204】
図14に示す例の場合、第1番目(奇数番目)の橋梁体121については、一対の圧電素子E11,E12が設けられており、第2番目(第n番目)の橋梁体122についても、一対の圧電素子E21,E22が設けられている。別言すれば、橋梁体121,122のいずれにも2組の圧電素子が設けられている、という点では、
図14に示す例は、
図7に示す例と同じである。しかしながら、
図14の例の場合、第1番目(奇数番目)の橋梁体121については、圧電素子E11を短尺素子とし、圧電素子E12を長尺素子としているため、
図7の例に比べて、第2番目(第n番目)の橋梁体122の根端部から先端部へ向かって伸びる方向に形成される傾斜角θ4(
図5(c) 参照)をより大きくする効果が得られる。
【0205】
結局、一般論としては、全n本(但し、n≧2)の橋梁体からなるアーム部について、第1番目〜第(n−1)番目の橋梁体に、それぞれ短尺素子と長尺素子とを設け、奇数番目の橋梁体については、根端部側を短尺素子、先端部側を長尺素子とし、偶数番目の橋梁体については、根端部側を長尺素子、先端部側を短尺素子とする、という設定による効果(アーム部の最先端部の変位を向上させる効果)は、
図14に示す4素子型の可動反射装置100A1のように、第n番目の橋梁体にも、根端部側圧電素子と先端部側圧電素子とを設ける例についても有効である。また、好ましくは寸法比β/αを1.5以上に設定する、という条件も、同様に有効である。要するに、上記設定による効果は、第n番目の橋梁体についての圧電素子構成に関わらず有効である。
【0206】
<<< §7. 複合可動反射装置の実施形態 >>>
最後に、これまで述べてきた可動反射装置を2組用意し、これらを組み合わせることにより構成した複合可動反射装置について説明する。ここで説明する複合可動反射装置は、いわゆるジンバル構造を採用して、2組の可動反射装置を入れ子状に組み合わせたものであり、第1の可動反射装置の鏡体部を、第2の可動反射装置全体に置き換えることにより構成される。
【0207】
図22は、このような複合可動反射装置の第1の実施形態を示す上面図である。ここでも、ハッチングは個々の領域を示すためのものであり、断面を示すためのものではない。図示の複合可動反射装置200Aは、第1の可動反射装置210Aと第2の可動反射装置220Aとを融合させたものであり、第1の可動反射装置210Aにおいて、本来は鏡体部となるべき部分を、第2の可動反射装置220A全体に置き換えることにより構成されている。
【0208】
第1の可動反射装置210Aの外周部は、枠状部材からなる支持部211Aによって構成され、この支持部211Aの内側に、第1のアーム部212Aおよび第2のアーム部213Aが接続されている。これまで述べてきた可動反射装置であれば、これら2本のアーム部212A,213Aによって、鏡体部が支持されることになるが、図示の複合可動反射装置200Aの場合、鏡体部は、第2の可動反射装置220A全体に置き換えられている。
【0209】
すなわち、この複合可動反射装置200Aの場合、第1の可動反射装置210Aの2本のアーム部212A,213Aは、第1の可動反射装置210Aの支持部211Aと第2の可動反射装置220Aの支持部221Aとを接続する役割を果たす。2本のアーム部212A,213Aの上面には、圧電素子が配置されており(図における斜線ハッチング部分)、図示されていない駆動部から駆動信号を供給することにより変形させることができる。こうして、第1の可動反射装置210Aの圧電素子により第1の可動反射装置のアーム部212A,213Aを変形させることにより、第2の可動反射装置220Aの支持部221Aの、第1の可動反射装置210Aの支持部211Aに対する相対位置を制御することができる。
【0210】
一方、第2の可動反射装置220Aは、これまで述べてきた可動反射装置と同じ構成をもった装置であり、支持部221Aと、2本のアーム部222A,223Aと、鏡体部224Aと、を有している。鏡体部224Aには反射層(図における二重斜線ハッチング部分)が形成されており、鏡体部224Aを変位させることにより、反射層の姿勢を制御することができる。
【0211】
第2の可動反射装置220Aの2本のアーム部222A,223Aは、第2の可動反射装置220Aの支持部221Aと第2の可動反射装置220Aの鏡体部224Aとを接続する役割を果たす。2本のアーム部222A,223Aの上面には、圧電素子が配置されており(図における斜線ハッチング部分)、図示されていない駆動部から駆動信号を供給することにより変形させることができる。こうして、第2の可動反射装置220Aの圧電素子により第2の可動反射装置220Aのアーム部222A,223Aを変形させることにより、第2の可動反射装置220Aの鏡体部224Aの、第2の可動反射装置220Aの支持部221Aに対する相対位置を制御することができる。
【0212】
しかも、第1の可動反射装置210Aの共通基準軸(アーム部212A,213Aを構成する橋梁体が伸びる長手方向軸:図ではY軸)と、第2の可動反射装置220Aの共通基準軸(アーム部222A,223Aを構成する橋梁体が伸びる長手方向軸:図ではX軸)と、は直交するように配置されている。
【0213】
第1の可動反射装置210Aおよび第2の可動反射装置220Aは、基本的には、各アーム部にそれぞれ3組の圧電素子を配した3素子型の可動反射装置である。より具体的に言えば、
図8に示す可動反射装置100Bにおいて、第2のアーム部130の支持部110に対する接続点を、上方の参照点Q3から下方の点へと移動させ、第2のアーム部130の鏡体部160に対する接続点を、鏡体部160右上隅の参照点Q4から右下隅の点へと移動させ、第2のアーム部130のU字状構造を上下反転させた構成を採用したものである。このような構成を採用すると、矩形状の鏡体部160の対角線位置にある2つの隅点が2本のアーム部によって支持されることになり、一方のアーム部を上方に駆動し、他方のアーム部を下方に駆動することにより、鏡体部160を所定の枢軸まわりに回動させることができる。
【0214】
また、根端部側圧電素子および先端部側圧電素子の寸法α,βについては、
図16に示す例のように、α<βなる設定を行い、かつ、寸法比β/αを、1.5以上に設定することにより、§6で説明した「圧電素子の寸法比の最適条件」を満たすようにしたものである。
【0215】
したがって、
図22に示す複合可動反射装置200Aの場合、第1の可動反射装置210Aを駆動することにより、第2の可動反射装置220A全体を第1の枢軸まわりに回動させることができる。一方、第2の可動反射装置220Aを駆動することにより、鏡体部224Aを第2の枢軸まわりに回動させることができる。結局、第1の可動反射装置210Aと第2の可動反射装置220Aとの双方を駆動すれば、鏡体部224Aを、第1の枢軸まわりに回動させることも、第2の枢軸まわりに回動させることも可能になり、鏡体部224Aを任意の姿勢に制御することができる。
【0216】
図23は、複合可動反射装置の第2の実施形態を示す上面図である。図示の複合可動反射装置200Bは、第1の可動反射装置210Bと第2の可動反射装置220Bとを融合させたものであり、第1の可動反射装置210Bにおいて、本来は鏡体部となるべき部分を、第2の可動反射装置220B全体に置き換えることにより構成されている。
【0217】
第1の可動反射装置210Bの支持部211Bの内側には、第1のアーム部212Bおよび第2のアーム部213Bが接続されており、これら2本のアーム部によって、第2の可動反射装置220Bの支持部221Bが支持されている。また、第2の可動反射装置220Bの支持部221Bの内側には、第1のアーム部222Bおよび第2のアーム部223Bが接続されており、これら2本のアーム部によって、鏡体部224Bが支持されている。やはり各アーム部の上面には、圧電素子が配置されており(図における斜線ハッチング部分)、図示されていない駆動部から駆動信号を供給することにより変形させることができる。
【0218】
ここで用いられている第1の可動反射装置210Bおよび第2の可動反射装置220Bは、基本的には、3素子型の可動反射装置であり、寸法比β/αを1.5以上に設定することにより、§6で説明した「圧電素子の寸法比の最適条件」を満たすような設計がなされている。しかも、第1の可動反射装置210Bの共通基準軸(図ではX軸)と、第2の可動反射装置220Bの共通基準軸(図ではY軸)と、は直交するように配置されている。したがって、鏡体部224BをX軸を枢軸として回動させることも、Y軸を枢軸として回動させることも可能になり、鏡体部224Bに形成された反射層(図における二重斜線ハッチング部分)を任意の姿勢に制御することができる。
【0219】
図24は、複合可動反射装置の第3の実施形態を示す上面図である。図示の複合可動反射装置200Cは、第1の可動反射装置210Cと第2の可動反射装置220Cとを融合させたものであり、第1の可動反射装置210Cにおいて、本来は鏡体部となるべき部分を、第2の可動反射装置220C全体に置き換えることにより構成されている。
【0220】
第1の可動反射装置210Cの支持部211Cの内側には、第1のアーム部212Cおよび第2のアーム部213Cが接続されており、これら2本のアーム部によって、第2の可動反射装置220Cの支持部221Cが支持されている。また、第2の可動反射装置220Cの支持部221Cの内側には、第1のアーム部222Cおよび第2のアーム部223Cが接続されており、これら2本のアーム部によって、鏡体部224Cが支持されている。やはり各アーム部の上面には、圧電素子が配置されており(図における斜線ハッチング部分)、図示されていない駆動部から駆動信号を供給することにより変形させることができる。
【0221】
ここで用いられている第1の可動反射装置210Cおよび第2の可動反射装置220Cは、基本的には、3素子型の可動反射装置であり、寸法比β/αを1.5以上に設定することにより、§6で説明した「圧電素子の寸法比の最適条件」を満たすような設計がなされている。しかも、第1の可動反射装置210Cの共通基準軸(図ではY軸)と、第2の可動反射装置220Cの共通基準軸(図ではX軸)と、は直交するように配置されている。したがって、鏡体部224CをX軸を枢軸として回動させることも、Y軸を枢軸として回動させることも可能になり、鏡体部224Cに形成された反射層(図における二重斜線ハッチング部分)を任意の姿勢に制御することができる。
【0222】
図25は、複合可動反射装置の第4の実施形態を示す上面図である。図示の複合可動反射装置200Dは、第1の可動反射装置210Dと第2の可動反射装置220Dとを融合させたものであり、第1の可動反射装置210Dにおいて、本来は鏡体部となるべき部分を、第2の可動反射装置220D全体に置き換えることにより構成されている。
【0223】
第1の可動反射装置210Dの支持部211Dの内側には、第1のアーム部212Dおよび第2のアーム部213Dが接続されており、これら2本のアーム部によって、第2の可動反射装置220Dの支持部221Dが支持されている。また、第2の可動反射装置220Dの支持部221Dの内側には、第1のアーム部222Dおよび第2のアーム部223Dが接続されており、これら2本のアーム部によって、鏡体部224Dが支持されている。やはり各アーム部の上面には、圧電素子が配置されており(図における斜線ハッチング部分)、図示されていない駆動部から駆動信号を供給することにより変形させることができる。
【0224】
ここで用いられている第1の可動反射装置210Dおよび第2の可動反射装置220Dは、基本的には、3素子型の可動反射装置であり、寸法比β/αを1.5以上に設定することにより、§6で説明した「圧電素子の寸法比の最適条件」を満たすような設計がなされている。しかも、第1の可動反射装置210Dの共通基準軸(図ではX軸)と、第2の可動反射装置220Dの共通基準軸(図ではY軸)と、は直交するように配置されている。したがって、鏡体部224DをX軸を枢軸として回動させることも、Y軸を枢軸として回動させることも可能になり、鏡体部224Dに形成された反射層(図における二重斜線ハッチング部分)を任意の姿勢に制御することができる。