(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設定部は、前記第1閾高度範囲の両端点と、前記第2閾高度範囲の両端点と、を頂点とする四角形の形状が、前記第1閾高度範囲の両端を結ぶ線分を下底側とする台形となるように前記第1閾高度範囲と、前記第2閾高度範囲とを設定する
ことを特徴とする請求項6に記載の高度計。
前記設定部は、3つ以上の異なる時点において測定される高度の各々と比較される閾高度範囲の各々を、前記閾高度範囲の各々の鉛直方向上側の端点各々と、鉛直方向下側の端点各々との少なくともいずれか一方が、1つの曲線に含まれるように設定する
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の高度計。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付している。
図1は、本実施形態における電子機器10の外観構成を示す正面図である。
電子機器10は、例えば、高度を計測する高度計測機能付きの電子時計である。電子機器10は、現在時刻と高度を計測し、計測した高度に基づいて昇降速度を算出する。
【0021】
電子機器10は、操作入力部104と、表示部105とを備える。
操作入力部104は、例えば、複数(本実施形態では、2個)のキー入力手段(操作入力部)104A、104Bを備える。キー入力手段104A、104Bは、それぞれボタンを有し、操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に応じた操作信号を制御部101に出力する。
キー入力手段104Aは、例えば、ボタンが押下されることにより動作モードを切り替える操作を受け付ける。動作モードには、例えば、計測した現在時刻、高度および昇降速度を表示する「通常モード」と、高度に関する高度情報(例えば、高度および昇降速度)を記録する「高度ログモード」との2種類がある。電子機器10は、操作に応じて切り替えられた動作モードで動作する。
【0022】
キー入力手段104Bは、電子機器10が高度ログモードで動作しているとき、例えば、ボタンが押下されることにより表示部105に表示させる情報を切り替える操作を受け付ける。表示される情報には、例えば、「開始時表示」、「最大高度表示」、「現在高度表示」がある。開始時表示とは、記録を開始したときの高度情報である。最大高度表示とは、記録された高度情報が示す高度のうち最大となる高度(最大高度)に係る高度情報である。現在高度表示とは、高度ログモードで動作しているときに、その時点で取得した高度情報である。
【0023】
表示部105は、取得した情報を表示する。表示部105は、例えば、液晶ディスプレイ、セグメントディスプレイ、等である。
表示部105は、例えば、高度表示部105a、時刻表示部105b、および昇降速度表示部105cを含んで構成される。
図8(a)に示す例では、昇降速度を表示する昇降速度表示部105c、高度を表示する高度表示部105a、時刻を表示する時刻表示部105bの順で表示されている。
【0024】
図2は、本実施形態における電子機器10の構成を示すブロック図である。
電子機器10は、制御部101、発振回路102、分周回路103、操作入力部104、表示部105、電池106、気圧計測部107、高度計測部108、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)110およびROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)111を含んで構成される。
【0025】
制御部101は、電子機器10が備える各部の制御を行う。制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。
機能面で考察すると、制御部101は、高度変化判定部1011と、昇降速度算出部1012を含んで構成される。
【0026】
高度変化判定部1011は、現在までの予め定めた第1の時間間隔(例えば、5分)内に高度計測部108から入力された高度信号に基づいて高度変化状態を判定する。
高度変化状態とは、例えば、鉛直方向への移動量に基づいて分類される移動の状態であり、鉛直方向における移動状態の一例である。高度変化状態には、例えば、「昇降状態」、「非昇降状態」がある。また、昇降状態には、例えば、「上昇状態」、「下降状態」がある。上昇状態は、時間の経過とともに高度が高くなる状態である。上昇状態は、例えば、電子機器10を所持するユーザが上り勾配を有する登山道を歩行しているときに現れることがある。下降状態は、例えば、電子機器10を所持するユーザが下り勾配を有する登山道を歩行しているときに現れることがある。非昇降状態とは、有意な高度の変化が現れない状態、つまり、上昇状態、下降状態のいずれでもない状態である。非昇降状態は、例えば、電子機器10を所持するユーザが、平地を歩行している場合や、休息している場合に現れることがある。高度変化状態は、例えば、昇降状態と、非昇降状態との2パターンに分類されてもよいし、例えば、昇降速度の大きさに応じて、上昇状態、下降状態が複数パターンに分類されてもよい。つまり、高度変化状態は、上述した3パターンに限られず、任意の複数パターンであってもよい。具体的には、例えば、上昇状態は、「急上昇」、「通常上昇」、「緩やかな上昇」等にさらに分類されてもよく、また、下降状態は、「急下降」、「通常下降」、「緩やかな下降」等にさらに分類されてもよい。高度変化状態を判定する処理の例については、後述する。
【0027】
昇降速度算出部1012は、現在までの第2の時間間隔内に高度計測部108から入力された高度信号に基づいて昇降速度の移動平均値を算出する。第2の時間間隔は、第1の時間間隔よりも大きい値である。第2の時間間隔は可変であってもよい。第2の時間間隔が可変である場合には、第2の時間間隔が第1の時間間隔よりも大きくなるように定められる可能性があれば、一時的に第2の時間間隔が第1の時間間隔と等しくなってもよいし、第1の時間間隔よりも小さくなってもよい。
昇降速度算出部1012は、例えば、高度変化状態が変化したとき、第2の時間間隔を第1の時間間隔に縮小し、その後、予め定めた第3の時間間隔(第2の時間間隔の最大値)に達するまで時間経過と同じ進行度合いで第2の時間間隔を拡大する。昇降速度を算出する処理の例については、後述する。
【0028】
制御部101は、分周回路103から入力された計測信号に基づいて現在時刻を計時する。制御部101は、算出した昇降速度の移動平均値と、高度変化判定部1011でサンプリングした高度と、を含む高度情報を生成する。通常モードで動作しているとき、または、高度ログモードで動作し、かつキー入力手段104Bから操作信号が入力されないときは、制御部101は、計時した現在時刻を示す時刻情報と生成した高度情報を表示部105に出力し、表示部105に現在時刻、高度および昇降速度を表示させる。
【0029】
制御部101は、操作入力部104から入力された操作信号に応じた処理を行う。例えば、通常モードで動作しているときに、キー入力手段104Aから操作信号(高度ログモード)が入力されると、制御部101は、動作モードを通常モードから高度ログモードに切り替え、高度ログモードでの動作を開始する。高度ログモードでは、制御部101は、高度情報を予め定めた時間間隔でRAM110にログファイルとして記録する。また高度ログモードで動作しているときに、キー入力手段104Aから操作信号(通常モード)が入力されると、制御部101は、動作モードを高度ログモードから通常モードに切り替え、高度情報の記録を停止する。
【0030】
制御部101は、高度ログモードで動作し、かつ現在取得された高度情報を表示させているとき、キー入力手段104Bから操作信号(開始時表示)が入力されると、記録を開始した時点(開始時)での高度情報をRAM110から読み出す。制御部101は、読み出した高度情報を表示部105に出力し、表示させる。
制御部101は、高度ログモードで動作し、開始時における高度情報を表示させているとき、キー入力手段104Bから操作信号(最大高度表示)が入力されると、最大高度に係る高度情報をRAM110から読み出す。制御部101は、読み出した高度情報を表示部105に出力し、表示させる。
制御部101は、高度ログモードで動作し、かつ最大高度に係る高度情報を表示しているとき、キー入力手段104Bから操作信号(現在高度表示)が入力されると、制御部101は、現在の高度情報を表示部105に出力し、表示させる。
【0031】
発振回路102は、所定の周波数(発振周波数、例えば、32768Hz)の発振信号を生成し、生成した発振信号を分周回路103に出力する。
分周回路103は、発振回路102から入力された発振信号の発振周波数を分周して、所定の周波数(クロック周波数、例えば、100Hz)の計測の基準となる計測信号を生成する。
電池106は、電子機器10を構成する各部に、動作するための電力を供給する。
【0032】
気圧計測部107は、気圧を計測し、計測した気圧を示す気圧信号を高度計測部108に出力する。気圧計測部107は、例えば、気圧センサである。
高度計測部108は、気圧計測部107から入力された気圧信号に基づき高度を計測し、計測した高度を示す高度信号を制御部101に出力する。高度計測部108は、高度を計測する際、例えば、式(1)を用いて、入力された気圧信号が示す気圧Pを高度hに換算する。
【0033】
h={(P0/P)(1/5.257)−1}・(T+273.15)/0.0065…(1)
【0034】
式(1)において、P0は、所定の標高、例えば標高0m(海面の標高)における気圧1013hPaを示す。Tは温度(°C)を示す。
気圧計測部107と高度計測部108とで、高度を計測する高度計が構成される。
【0035】
RAM110は、電子機器10の各部での動作に用いられるデータ、各部で生成されたデータを記憶する。RAM110は、例えば、高度情報をログファイルとして記憶する。
ROM111には、制御部101が実行する動作用プログラムが予め記憶されている。この動作用プログラムは、制御部101の起動時に読み出され、制御部101は読み出された動作用プログラムで指定された処理を実行する。また、ROM111、RAM110には、各種閾値のデータ等が記憶されている。
【0036】
次に、高度変化判定部1011が高度変化状態を判定する処理の例について説明する。
高度変化判定部1011は、高度計測部108から入力された高度信号が示す高度を、予め定めた時間間隔(サンプリング間隔、例えば1分)ΔT毎にサンプリングする。以下の説明では、その時点でサンプリングされた高度を「現在の高度」と呼び、現在の高度よりも前にサンプリングされた高度を「過去の高度」と呼ぶ。また、サンプリングされた時刻のそれぞれを「サンプリング時刻」と呼ぶことがある。
【0037】
高度変化判定部1011は、現在時刻tよりも予め定めた第1の時間間隔ΔT1だけ過去の時刻t−ΔT1から現在時刻tまでの区間でサンプリングされた高度に基づいて高度変化状態を判定する。この時刻t−ΔT1から現在時刻tまでの区間を「判定区間」と呼ぶ。
ここで、高度変化判定部1011は、判定区間内でサンプリングされた高度の分布と、現在の高度hを基準として定められる高度の範囲(以下、「閾高度範囲」と称する。)とを比較して高度変化状態を判定することができる。以下では、閾高度範囲の下限値を「状態判定下限値」と称する。また、閾高度範囲の上限値を「状態判定上限値」と称する。また、高度変化判定部1011は、現在の高度hと判定区間内でサンプリングされた高度との差を算出し、その差と、所定の高度差(以下、「判定高度差」と称する。)とを比較して高度変化状態を判定することができる。閾高度範囲を用いた高度変化状態の判定と、判定高度差を用いた高度変化状態の判定とは、処理の順序が違うだけで実質的には同一である。ここでは、一例として、閾高度範囲を用いた高度変化状態の判定について説明する。
高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度が、いずれも状態判定下限値から状態判定上限値の間の範囲内にある場合、すなわち閾高度範囲内にある場合、現在時刻tの高度変化状態が非昇降状態であると判定する。
【0038】
高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度の少なくとも1つが、状態判定下限値よりも低い場合、現在時刻tの高度変化状態が上昇状態であると判定する。
高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度の少なくとも1つが、状態判定上限値よりも高い場合、現在時刻tの高度変化状態が下降状態であると判定する。
【0039】
なお、判定区間内でサンプリングされた高度には、状態判定下限値よりも低い高度と、状態判定上限値よりも高い高度との両方が含まれる場合がある。その場合、高度変化判定部1011は、例えば、状態判定下限値よりも低い高度と状態判定上限値よりも高い高度のうち、最も現在時刻tに近い時刻t’の高度に基づいて現在時刻tの高度変化状態を判定してもよい。即ち、時刻t’の高度が状態判定下限値よりも低い場合、高度変化判定部1011は、現在時刻tの高度変化状態が上昇状態であると判定する。時刻t’の高度が状態判定上限値よりも高い場合、高度変化判定部1011は、現在時刻tの高度変化状態が下降状態であると判定する。
【0040】
その他、高度変化判定部1011は、判定区間内でサンプリングされた高度に含まれる状態判定下限値よりも低い高度のサンプル数と、状態判定上限値よりも高い高度のサンプル数とを比較して、現在時刻tの高度変化状態を判定してもよい。即ち、状態判定下限値よりも低い高度のサンプル数が状態判定上限値よりも高い高度のサンプル数よりも多い場合、高度変化判定部1011は、上昇状態であると判定する。状態判定下限値よりも低い高度のサンプル数が状態判定上限値よりも高い高度のサンプル数と等しい場合、高度変化判定部1011は、非昇降状態であると判定する。状態判定下限値よりも低い高度のサンプル数が状態判定上限値よりも高い高度のサンプル数よりも少ない場合、高度変化判定部1011は、下降状態であると判定する。
【0041】
その他、高度変化判定部1011は、判定区間内でサンプリングされた高度の平均値が、状態判定下限値よりも低い場合に上昇状態と判定し、判定区間内でサンプリングされた高度の平均値が状態判定上限値よりも高い場合に下降状態と判定し、それ以外の場合に非昇降状態と判定してもよい。
このように、判定区間内でサンプリングされた高度の分布と、現在の高度を中心とする予め定めた高度の範囲と、を比較することで、測定誤差やノイズに対する影響を受けにくくなるので、高度変化状態を安定して判定することができる。
高度変化判定部1011は、判定した高度変化状態を示す高度変化状態情報とサンプリングした高度を昇降速度算出部1012に出力する。
【0042】
高度変化状態情報は、それぞれの高度変化状態に応じた値で表されてもよい。例えば、上昇状態、下降状態、非昇降状態は、それぞれ「+1」、「−1」、「0」といった値で表されてもよい。
【0043】
以上のように、高度変化判定部1011は、判定区間に含まれる各サンプリング時刻においてサンプリングされた高度が、各時刻における閾高度範囲に含まれるか否かに基づいて、高度変化状態を判定する。以下では、高度変化状態の判定に用いる高度軸−時間軸平面の領域、すなわち、判定区間および閾高度範囲により区切られる領域を「検出窓」と称する。つまり、検出窓とは、時刻が時刻t−ΔT1から現在時刻tまでであって、高度が状態判定下限値から状態判定上限値までである領域である。
【0044】
ここで、本実施形態に係る検出窓の形状について説明する。
図3は、本実施形態に係る検出窓W1の一例を示す図である。
図3に示すグラフにおいて、横軸は、時刻を示し、縦軸は、高度を示す。
検出窓W1は、測定基準時点tの高度h(t)を基準として定められる。ここで、測定基準時点tとは、高度変化状態の判定を行う基準の時点である。本実施形態では、電子機器10は、高度がサンプリングされる度にリアルタイムで高度変化状態の判定を行う。つまり、本実施形態において、測定基準時点tは、最新のサンプリング時刻であり、上述した現在時刻tである。
検出窓W1は、測定基準時点tにおける状態判定上限値P1および状態判定下限値P2
と、判定区間の両端のうち、測定基準時点とは異なる時点(以下、「過去基準時点」と称する。)t−ΔT1における状態判定上限値P3および状態判定下限値P4とを頂点とする四角形の領域である。
【0045】
測定基準時点tにおける状態判定上限値P1は、測定基準時点tにおいて測定された高度(以下、「基準高度」と称する。)h(t)から所定の判定高度差Δh(t)高い値である。測定基準時点tにおける状態判定下限値P2は、基準高度h(t)から所定の判定高度差Δh低い値である。つまり、測定基準時点tにおける閾高度範囲TA(t)は、(h(t)−Δh(t))〜(h(t)+h(t))の高度範囲である。
過去基準時点t−ΔT1における状態判定上限値P3は、基準高度h(t)から所定の判定高度差Δh(t−ΔT1)高い値である。過去基準時点t−ΔT1における状態判定下限値P4は、基準高度h(t)から所定の判定高度差Δh(t−ΔT1)低い値である。つまり、過去基準時点t−ΔT1における閾高度範囲TA(t−ΔT1)は、(h(t)−Δh(t−ΔT1))〜(Δh(t)+h(t−ΔT1))の高度範囲である。
ここで、本実施形態において、判定高度差Δh(t−ΔT1)は、判定高度差Δh(t)に比して小さい値が設定される。従って、検出窓W1の形状は、点P1と点P2とを結ぶ線分を下底とする等脚台形となる。
【0046】
点P1と点P3とを結ぶ線分(以下、「上限閾値線」と称する。)UTは、検出窓W1の判定区間における閾高度範囲の上限値の集合を表す。換言すると、上限閾値線UTは、検出窓W1の判定区間に含まれる各サンプリング時刻における状態判定上限値を表す点を、対応するサンプリング時刻の順に結んだ線分である。本実施形態において、判定高度差Δh(t−ΔT1)は、判定高度差Δh(t)に比して小さい値が設定されているため、上限閾値線UTは、正の傾きを有する線分である。
【0047】
点P2と点P4とを結ぶ線分(以下、「下限閾値線」と称する。)LTは、検出窓W1の判定区間における閾高度範囲の下限値の集合を表す。換言すると、下限閾値線LTは、検出窓W1の判定区間に含まれる各サンプリング時刻における状態判定下限値を表す点を、対応するサンプリング時刻の順に結んだ線分である。本実施形態において、判定高度差Δh(t−ΔT1)は、判定高度差Δh(t)に比して小さい値が設定されているため、下限閾値線LTは、負の傾きを有する線分である。
このように、判定区間に含まれる各時刻における閾高度範囲は、各時刻ごとに定められているとも言えるし、判定区間の両端の閾高度範囲により定められているとも言える。
【0048】
次に、検出窓の形状と、高度変化状態の判定との関係について説明する。
まず、等脚台形型の検出窓W1による高度変化状態の判定について説明する。
図4は、等脚台形型の検出窓W1による高度変化状態の判定結果と、実際の高度変化状態の例とを示す図である。
図4に示すグラフにおいて、横軸は、時刻を示し、縦軸は、高度を示す。
図4に示すグラフには、各サンプリング時刻において、サンプリングされた高度が示されている。
図4において、グラフの下部には、各サンプリング時刻におけるユーザの実際の高度変化状態(
図4中「ユーザの高度変化状態」)と、各サンプリング時刻における電子機器10による高度変化状態の判定結果(
図4中「判定結果」)とを示す。
図4に示す例において、検出窓W1の判定区間の長さ、すなわち第1の時間間隔は、サンプリング間隔の5倍に設定されている。つまり、閾高度範囲は、測定基準時点から遡って5点前までにサンプリングされた高度に対して定められる。
【0049】
図4のグラフが示す高度の変化から確認できるように、サンプリング時刻T1からサンプリング時刻T2までの間、ユーザは非昇降状態(「0」)である。また、サンプリング時刻T2からサンプリング時刻T7までの間、ユーザは上昇状態(「+1」)である。また、サンプリング時刻T7からサンプリング時刻T11までの間、ユーザは下降状態(「−1」)である。また、サンプリング時刻T11からサンプリング時刻T16までの間、ユーザは非昇降状態である。
【0050】
これに対して、等脚台形型の検出窓W1を用いた場合、サンプリング時刻T1からサンプリング時刻T3までの間、ユーザは、非昇降状態にあると判定されている。このとき、サンプリング時刻T1から、サンプリング時刻T3の1つ前のサンプリング時刻までの間では、検出窓W1の判定区間においてサンプリングされた各高度は、いずれも閾高度範囲内に存在している。
【0051】
また、サンプリング時刻T3からサンプリング時刻T9までの間、ユーザは、上昇状態にあると判定されている。このとき、サンプリング時刻T3から、サンプリング時刻T9の1つ前のサンプリング時刻までの間では、検出窓W1の判定区間においてサンプリングされた各高度のうち、少なくともいずれかが状態判定下限値に比して小さい値となっている。
【0052】
また、サンプリング時刻T9からサンプリング時刻T13までの間、ユーザは、下降状態にあると判定されている。このとき、サンプリング時刻T9から、サンプリング時刻T13の1つ前のサンプリング時刻までの間では、検出窓W1の判定区間においてサンプリングされた各高度のうち、少なくともいずれかが状態判定上限値に比して大きい値となっている。
また、サンプリング時刻T13からサンプリング時刻T16までの間、ユーザは、非昇降状態にあると判定されている。
【0053】
実際の高度変化状態と判定結果とを比較すると、実際の高度変化状態の遷移に追従して、実際の高度変化状態と一致する判定結果が得られていることが確認できる。具体的には、サンプリング時刻T2において、ユーザの高度変化状態は、非昇降状態から上昇状態に遷移している。そして、サンプリング時刻T2から2つ後のサンプリング時刻T3において、判定結果は、非昇降状態から上昇状態に遷移している。同様に、サンプリング時刻T7において、ユーザの高度変化状態は、上昇状態から下降状態に遷移しており、サンプリング時刻T7から2つ後のサンプリング時刻T9において、判定結果は、非昇降状態から上昇状態に遷移している。また、サンプリング時刻T11において、ユーザの高度変化状態は、下降状態から非昇降状態に遷移しており、サンプリング時刻T11から2つ後のサンプリング時刻T13において、ユーザの高度変化状態は、下降状態から非昇降状態に遷移している。また、図示はしないが、電子機器10は、上昇状態から下降状態への遷移、下降状態から上昇状態への遷移に対しても、実際の高度変化状態の遷移に追従して、実際の高度変化状態と一致する判定結果を得ることができる。
【0054】
次に、長方形型の検出窓W2による高度変化状態の判定について説明する。
図5は、長方形型の検出窓W2による高度変化状態の判定結果と、実際の高度変化状態の例とを示す図である。
図5に示すグラフは、
図4に示すグラフと同様である。また、
図5に示すユーザの高度変化状態は、
図4に示すユーザの高度変化状態と同様である。
図5に示す検出窓W2の判定区間の長さは、
図4に示す検出窓W1と同様である。ただし、検出窓W2は、測定基準時点における閾高度範囲と、過去基準時点における閾高度範囲とが同じ高度範囲である点で検出窓W2とは異なる。
【0055】
長方形型の検出窓W2を用いた場合、サンプリング時刻T1からサンプリング時刻T3までの間、ユーザは、非昇降状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T3からサンプリング時刻T9までの間、ユーザは、上昇状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T9からサンプリング時刻T13までの間、ユーザは、下降状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T13からサンプリング時刻T15までの間、ユーザは、非昇降状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T15からサンプリング時刻T16までの間、ユーザは、上昇状態にあると判定されている。
【0056】
検出窓W1と検出窓W2とによる判定結果を比較すると、サンプリング時刻T15までの判定結果は同様であることが確認できる。しかしながら、検出窓W2の場合、サンプリング時刻T15からサンプリング時刻T16までの間は上昇状態にあると判定されており、ユーザの実際の高度変化状態とは整合しない。つまり、検出窓W2の場合、サンプリング時刻T16における判定結果が正しくない。
【0057】
次に、長方形型の検出窓W3による高度変化状態の判定について説明する。
図6は、長方形型の検出窓W3による高度変化状態の判定結果と、実際の高度変化状態の例とを示す図である。
図6に示すグラフは、
図4に示すグラフと同様である。また、
図6に示すユーザの高度変化状態は、
図4に示すユーザの高度変化状態と同様である。
図6に示す検出窓W2の判定区間の長さは、
図4に示す検出窓W1、
図5に示す検出窓W2と同様である。また、検出窓W3は、検出窓W2と同様に、測定基準時点における閾高度範囲と、過去基準時点における閾高度範囲とが同じ高度範囲である。ただし、検出窓W3の閾高度範囲は、検出窓W2の閾高度範囲よりも広く設定されている。
【0058】
長方形型の検出窓W3を用いた場合、サンプリング時刻T1からサンプリング時刻T4までの間、ユーザは、非昇降状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T4からサンプリング時刻T5までの間、ユーザは、上昇状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T5からサンプリング時刻T6までの間、ユーザは、非昇降状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T6からサンプリング時刻T8までの間、ユーザは、上昇状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T8からサンプリング時刻T10までの間、ユーザは、非昇降状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T10からサンプリング時刻T13までの間、ユーザは、下降状態にあると判定されている。また、サンプリング時刻T13からサンプリング時刻T16までの間、ユーザは、非昇降状態にあると判定されている。
【0059】
検出窓W3とによる判定結果と、ユーザの実際の高度変化状態とを比較すると、例えば、サンプリング時刻T5からサンプリング時刻T6までの間において、ユーザの高度変化状態は上昇状態であるのに対して、判定結果は非昇降状態となっており、整合しない。また、例えば、サンプリング時刻T8からサンプリング時刻T9までの間において、ユーザの高度変化状態は下降状態であるのに対して、判定結果は非昇降状態となっており、整合しない。このように、検出窓W3では、上昇状態や下降状態が非昇降状態に誤判定される機会が増えている。
【0060】
ここで、検出窓W2と、検出窓W3による誤判定の理由について説明する。
検出窓W2は、相対的に狭い閾高度範囲を有している。従って、検出窓W1と同様に、ユーザが鉛直方向に遅い速度で移動する場合であっても、高度の変化を感度良く検出することができるため、高い精度で高度変化状態を判定することができる。しかしながら、サンプリングされる高度には、例えば、±1〜2[m]程度の測定誤差が含まれるため、実際には高度が変化していない場合であっても、測定誤差により、サンプリングされる高度の値は増減する。ここで、検出窓W2のように、想定的に狭い閾高度範囲が設定されている場合には、閾高度範囲から外れた高度が検出されることがある。そのため、例えば、
図5のサンプリング時刻T15からサンプリング時刻T16の間のように、実際には非昇降状態であるにも関わらず、上昇状態や下降状態と誤判定してしまうことがある。
【0061】
他方、検出窓W3は、相対的に広い閾高度範囲を有している。この場合、検出窓W2とは異なり、サンプリングされる高度が測定誤差により変動する場合であっても、非昇降状態を上昇状態や下降状態と誤判定することが少なくなる。しかしながら、高度方向に遅い速度で移動している場合には、高度の変化を検出することができない。従って、例えば、
図6のサンプリング時刻T5からサンプリング時刻T6までの間のように、実際には上昇状態であるにも関わらず、非昇降状態と誤判定してしまうことがある。また、
図6のサンプリング時刻T8からサンプリング時刻T10のように、実際には下降状態であるにも関わらず、非昇降状態と誤判定してしまうことがある。
このように、判定区間に均一な閾高度範囲を設けた場合、必ずしも精度よく高度変化状態を判定することはできなかった。
【0062】
これら長方形型の検出窓W2、W3に対して、検出窓W1は、台形型の形状の領域である。つまり、検出窓W1の場合、判定区間において、過去に遡る程、閾高度範囲は狭く設定され、測定基準時点に近づく程、閾高度範囲は広く設定されている。
ここで、検出窓W1が台形型であることによる作用効果を説明する。ここでは、説明の便宜上、ユーザが継続的な高度方向への移動を行っている場合を想定する。
【0063】
本実施形態において、検出窓W1は、測定基準時点において測定された基準高度に基づいて設定される。
サンプリング時刻が測定基準時点に近い場合、すなわち、サンプリング時刻から測定基準時点までの時間が相対的に短い場合、サンプリング時刻から測定基準時点までの間における実際の高度の変化量は相対的に小さくなる。また、サンプリング時刻が測定基準時点から離れている場合、すなわち、サンプリング時刻から測定基準時点までの時間が相対的に長い場合、サンプリング時刻から測定基準時点までの実際の高度の変化量は相対的に大きくなる。
これに対して、サンプリングにおける測定誤差の範囲は一定である。
【0064】
従って、サンプリング時刻が測定基準時点に近ければ近い程、該サンプリング時刻においてサンプリングされた高度と基準高度との間の高度差において、実際の移動による高度の変化に対する測定誤差の影響が大きくなる。また、サンプリング時刻が測定基準時点から離れていれば離れている程、該サンプリング時刻においてサンプリングされた高度と基準高度との間の高度差において、実際の移動による高度の変化に対する測定誤差の影響は少なくなる。
そこで、検出窓W1のように、測定基準時点側の閾高度範囲を広く設け、過去基準時点側の閾高度範囲を狭く設けることにより、サンプリングにおいて発生する測定誤差の影響を軽減しつつ、実際の高度の変化を感度良く検出することができる。
なお、上述の説明は、検出窓W2、W3のように、判定区間に渡って固定の下限閾値線や上限閾値線を採用することを排除するものではない。
以上が、検出窓の形状と、高度変化状態の判定との関係についての説明である。
【0065】
次に、昇降速度算出部1012が、昇降速度を算出する処理の例について説明する。
昇降速度算出部1012には、高度変化判定部1011から予め定めたサンプリング間隔ΔT毎にサンプリングされた高度が入力される。昇降速度算出部1012は、入力された現在の高度から直前の高度を差し引いて、現在の高度の差分を算出する。直前の高度とは、現在の高度の直前にサンプリングされた高度である。昇降速度算出部1012は、算出した差分をサンプリング間隔ΔTで除算して、現在の速度を算出する。
【0066】
昇降速度算出部1012は、起点時刻から現在時刻tまでの区間でサンプリング毎に算出した昇降速度を平均(移動平均)する。起点時刻は、現在時刻tよりも第2の時間間隔ΔT2だけ過去の時刻t−ΔT2である。移動平均を行うことで、サンプリング毎の昇降速度が平滑化される。以下の説明では、過去の時刻t−ΔT2から現在時刻tまでの区間を「移動平均区間」と呼び、移動平均区間の長さを「移動平均区間長」と呼ぶ。移動平均区間長はΔT2である。
【0067】
ここで、昇降速度算出部1012は、高度変化判定部1011から入力された高度変化状態情報に基づいて現在の高度変化状態が直前の高度変化状態から変化したか否かを判定する。高度変化状態が変化したと判定した場合には、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を第1の時間間隔ΔT1に縮小する。つまり、移動平均区間長(第2の時間間隔ΔT2)は、一時的に第1の時間間隔ΔT1と等しくなることがあるが、それ以外の場合には第1の時間間隔ΔT1よりも大きい。
【0068】
なお、高度変化状態が変化したと判定した場合、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を一時的に第1の時間間隔ΔTよりも短い時間間隔に定めてもよい。一時的とは、高度変化状態が変化したと判定されたサンプリング時刻、または、そのサンプリング時刻から予め定めた時間(例えば、第1の時間間隔だけ経過するまで)の時刻である。また、第1の時間間隔よりも短い時間間隔は、その限りにおいて、少なくとも2サンプル、つまり、現在と、直前のサンプリング時刻が含まれていればよい。
【0069】
これにより、高度変化状態が変化した場合、移動平均区間長を短くすることで、昇降速度の移動平均値を表示するまでのレスポンスを向上することが可能である。また、現在よりも移動平均区間長だけ遡った時刻までの過去の昇降速度、つまり高度変化状態が変化する前の昇降速度が無視されるので、その時点の高度変化状態に応じた利用者の実感に合った移動平均値が得られる。特に、高度変化状態が上昇状態から下降状態に変化する場合、あるいはその逆の場合に有効である。
【0070】
高度変化状態が変化していないと判定した場合には、昇降速度算出部1012は移動平均区間長が予め定めた第3の時間間隔(第2の時間間隔の最大値)に達したか否かを判定する。第3の時間間隔に達したと判定された場合には、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を変化させない。第3の時間間隔に達していないと判定された場合には、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を時間経過と同じ進行度合いで拡大する。ここで、昇降速度算出部1012は、例えば、移動平均区間の起点となるサンプリング時刻を変更せず、移動平均区間の終点を現在のサンプリング時刻と定める。
【0071】
なお、電子機器10の起動直後では高度変化状態情報が存在しないため、昇降速度算出部1012は、現在の昇降速度を0と定めてもよい。また、現在時刻が起動から第1の時間間隔までの間、昇降速度算出部1012は、起動から現在時刻までの間にサンプリングされた昇降速度を平均して現在の昇降速度を定めてもよい。その間、高度変化判定部1011は、高度変化状態を判定しなくてもよい。
【0072】
図7は、移動平均区間の設定例を示す図である。
図7(a)、(b)は、サンプリング時刻毎のサンプリングされた高度を×印で示し、サンプリング時刻t6〜t14に係る移動平均区間を、それぞれ水平方向の矢印dm6〜dm14で示す。
図7(a)、(b)の横軸、縦軸は、それぞれ時刻、高度を示す。横軸の下方には、各サンプリング時刻における高度変化状態の値を示す。+1、0、−1は、それぞれ上昇状態、非昇降状態、下降状態を示す。なお、
図7に示す例では、第1の時間間隔、第3の時間間隔はそれぞれ5、10サンプルである。
【0073】
図7(a)は、サンプリング時刻t1〜t5の間、高度変化状態が非昇降状態(0)、サンプリング時刻t6〜t13の間、高度変化状態が上昇状態(+1)、サンプリング時刻t14では、高度変化状態が非昇降状態(0)であることを示す。
矢印dm6は、サンプリング時刻t6における移動平均区間が5サンプルの区間t1〜t6であることを示す。
矢印dm7〜dm11は、サンプリング時刻t7からt11にかけて移動平均区間長が時間経過と同じ進行度合いで1サンプルずつ拡大することを示す。矢印dm7〜dm11のそれぞれについて、移動平均区間の起点は、矢印dm6に係る移動平均区間の起点(サンプリング時刻t1)と同一である。これに対し、矢印dm7〜dm11が示す移動平均区間の終点は、それぞれの時点での現在時刻(サンプリング時刻t7〜t11)となる。
これは、昇降速度算出部1012は、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達していないと判定したことによる。
【0074】
矢印dm12、dm13は、それぞれサンプリング時刻t12、t13において移動平均区間長が10サンプルと一定であり、移動平均区間の終点がそれぞれの時点での現在時刻となるように移動平均区間がシフトすることを示す。これは、昇降速度算出部1012が、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達したと判定したことによる。
矢印dm14は、サンプリング時刻t14における移動平均区間が5サンプルの区間t9〜t14であることを示す。これは、昇降速度算出部1012が、高度変化状態が上昇状態から非昇降状態に変化したことを検出したことに応じて、移動平均区間長を第1の時間間隔に縮小したことによる。
【0075】
図7(a)に示す例では、移動平均区間長が第3の時間間隔に達した後で、高度変化状態が変化したことに応じて、移動平均区間長が第1の時間間隔に縮小されるが、これには限られない。移動平均区間長が第3の時間間隔に達する前でも、高度変化状態が変化したことに応じて、移動平均区間長が第1の時間間隔に縮小されることがある。
【0076】
図7(b)は、サンプリング時刻t1〜t5の間、高度変化状態が非昇降状態(0)、サンプリング時刻t6〜t9の間、高度変化状態が上昇状態(+1)、サンプリング時刻t10〜t12の間、高度変化状態が非昇降状態(0)、サンプリング時刻t13、t14では、高度変化状態が下降状態(−1)であることを示す。
矢印dm6〜dm9は、サンプリング時刻t6からt9にかけて移動平均区間長が時間経過と同じ進行度合いで1サンプルずつ拡大することを示す。これは、昇降速度算出部1012は、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達していないと判定したことによる。
矢印dm10は、サンプリング時刻t10における移動平均区間が5サンプルの区間t5〜t10であることを示す。これは、昇降速度算出部1012が、高度変化状態が上昇状態から非昇降状態に変化したことを検出したことに応じて、移動平均区間長を第1の時間間隔に縮小したことによる。
【0077】
矢印dm11、dm12は、サンプリング時刻t11からt12にかけて移動平均区間長が時間経過と同じ進行度合いで1サンプルずつ拡大することを示す。これは、昇降速度算出部1012は、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達していないと判定したことによる。
矢印dm13は、サンプリング時刻t13における移動平均区間が5サンプルの区間t8〜t13であることを示す。これは、昇降速度算出部1012が、高度変化状態が非昇降状態から下降状態に変化したことを検出したことに応じて、移動平均区間長を第1の時間間隔に縮小したことによる。
矢印dm14は、サンプリング時刻t14において移動平均区間長が時間経過と同じ進行度合いで1サンプル間隔拡大することを示す。これは、昇降速度算出部1012は、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達していないと判定したことによる。
【0078】
次に、表示部105が表示する情報の例について説明する。
図8は、本実施形態に係る表示部105が表示する情報の例を示す。
図8(a)に示す例では、表示部105は、現在の昇降速度「0m/h」を昇降速度表示部105cに表示し、現在の高度「1600m」を高度表示部105aに表示し、現在時刻「P 10:08」を時刻表示部105bに表示する。「P 10:08」は、現在時刻が午後10時08分であることを示す。
【0079】
図8(b)に示す例では、表示部105は、現在の昇降速度「−280m/h」を昇降速度表示部105cに表示し、現在の高度「2150m」を高度表示部105aに表示し、現在時刻「A 8:48」を時刻表示部105bに表示する。「−280m/h」は、下降速度が280m/hであることを示す。つまり、負の昇降速度は下降速度を示し、正の昇降速度は上昇速度を示す。「A 8:48」は、現在時刻が午前8時48分であることを示す。
【0080】
図8(c)に示す例では、表示部105は、現在の昇降速度「190m/h」を昇降速度表示部105cに表示し、現在の高度「1750m」を高度表示部105aに表示し、現在時刻「P 2:48」を時刻表示部105bに表示する。「190m/h」は、上昇速度が190m/hであることを示す。「P 2:48」は、現在時刻が午後2時48分であることを示す。
【0081】
次に、本実施形態に係るデータ処理について説明する。
図9は、本実施形態に係るデータ処理を示すフローチャートである。
(ステップS101)高度変化判定部1011には、高度計測部108から入力された高度信号が示す高度を、予め定めた時間間隔ΔT毎にサンプリングする。その後、ステップS102に進む。
【0082】
(ステップS102)高度変化判定部1011は、過去の時刻t−ΔT1から現在時刻tまでの判定区間内でサンプリングされた高度に基づいて高度変化状態を判定する。高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度が、いずれも状態判定下限値から状態判定上限値の間の範囲内にある場合、現在時刻tの高度変化状態が非昇降状態であると判定する。高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度の少なくとも1つが、状態判定下限値よりも低い場合、現在時刻tの高度変化状態が上昇状態であると判定する。高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度の少なくとも1つが、状態判定上限値よりも高い場合、現在時刻tの高度変化状態が下降状態であると判定する。
高度変化判定部1011は、判定した高度変化状態を示す高度変化状態情報を昇降速度算出部1012に出力する。その後、ステップS103に進む。
【0083】
(ステップS103)昇降速度算出部1012は、高度変化判定部1011から入力された高度変化状態情報に基づいて現在の高度変化状態が直前の高度変化状態から変化したか否かを判定する。変化したと判定された場合には(ステップS103 YES)、ステップS104に進む。変化していないと判定された場合には(ステップS103 NO)、ステップS105に進む。
(ステップS104)昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を第1の時間間隔ΔT1に縮小して、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする。その後、ステップS108に進む。
【0084】
(ステップS105)昇降速度算出部1012は移動平均区間長が予め定めた第2の時間間隔の最大値ΔT2maxに達したか否かを判定する。最大値ΔT2maxに達したと判定された場合には(ステップS105 YES)、ステップS107に進む。達していないと判定された場合には(ステップS105 NO)ステップS106に進む。
【0085】
(ステップS106)昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を時間経過と同じ進行度合いで拡大して(サンプリング間隔ΔTだけ増加)、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする。その後、ステップS108に進む。
(ステップS107)昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を変化させずに、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする。その後、ステップS108に進む。
【0086】
(ステップS108)昇降速度算出部1012は、サンプリング毎に現在の高度から直前の高度を差し引いて、現在の高度の差分を算出し、算出した差分をサンプリング間隔Δtで除算して、現在の昇降速度を算出する。昇降速度算出部1012は、現在時刻までの移動平均区間での昇降速度を平均して昇降速度の移動平均値を算出する。その後、ステップS109に進む。
【0087】
(ステップS109)制御部101は、算出した昇降速度の移動平均値を含む高度情報を生成する。制御部101は、生成した高度情報を表示部105に出力し、表示部105に昇降速度を表示させる。その後、ステップS101に戻り、ステップS102からステップS109の処理をサンプリング間隔ΔT毎に繰り返す。
【0088】
なお、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を第1の時間間隔に縮小して、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする処理は(
図9、ステップS104)、RAM110に記憶された現在よりも第1の時間間隔だけ過去よりも前の高度や昇降速度を消去することにより実現できる。その場合、高度変化判定部1011は、サンプリング間隔ΔT毎にサンプリングした高度を、昇降速度算出部1012は、サンプリング間隔ΔT毎に算出した昇降速度をそれぞれRAM110に記憶する。移動平均値を算出する際、昇降速度算出部1012は、RAM110において消去されずに残った昇降速度を用い、それらの平均値を移動平均値として算出する。
【0089】
また、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を時間経過と同じ進行度合いで拡大して、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする処理を(
図9、ステップS106)、RAM110に記憶された高度や昇降速度を消去せずに保持することによって実現してもよい。
また、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を変化させずに、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする処理を(ステップS107参照)、RAM110に記憶された高度や昇降速度のうち、最も早く記憶された高度や昇降速度を消去することで実現してもよい。
【0090】
このように、昇降速度算出部1012が移動平均区間長を高度変化状態(例えば、昇降状態の変化)に応じて縮小することで、現在の昇降速度が取得されてから昇降速度の移動平均値が算出されるまでの遅延を緩和する。そのため、移動平均値は直近の昇降状態に追従しうる。そして、移動平均区間長を昇降状態の判定に用いる第1の時間間隔に縮小することで、移動平均を行う昇降速度の算出に用いた高度を、昇降状態の判定に用いた高度の共通にすることができるので、判定された高度変化状態と算出された昇降速度とを整合することができる。
【0091】
なお、昇降速度算出部1012は、高度変化状態情報が示す高度変化状態が非昇降状態である場合には、昇降速度の移動平均値を0と定め、移動平均値を算出する処理を省略してもよい。ただし、その場合でも昇降速度算出部1012は、高度変化状態の判定を行う。高度変化状態が非昇降状態である場合には、ユーザにとり昇降速度の移動平均値が有意でないため、その算出に係る処理を省略することで処理量を減少させることができる。
【0092】
なお、上述したように、高度変化判定部1011は、現在の高度hと判定区間内でサンプリングされた高度との差に基づいて、高度変化状態を判定してもよい。この場合における処理の概要について、
図10を参照して説明する。
図10は、本実施形態に係る検出窓W1の一例を示す第2図である。
図10に示す例では、測定基準時点tから過去基準時点t−ΔT1までの期間に、その端点を含む5つのサンプリング時刻t、tx、ty、tz、t−ΔT1が存在している。つまり、
図10に示す例では、サンプリング時刻t、tx、ty、tz、t−ΔT1は、それぞれ、サンプリング間隔ΔTずつ離れた時刻であり、各サンプリング時刻t、tx、ty、tz、t−ΔT1において、高度が測定されている。
【0093】
サンプリング時刻tにおける判定高度差は、Δh(t)である。同様に、サンプリング時刻tx、ty、tz、t−ΔT1における判定高度差は、それぞれ、Δh(tx)、Δh(ty)、Δh(tz)Δh(t−ΔT1)である。ここで、各サンプリング時刻における判定高度差は、測定基準時点であるサンプリング時刻tと各サンプリング時刻との時間間隔が大きくなる程、小さくなるように設定されている。つまり、測定基準時点tの1つ前のサンプリング時刻txにおける判定高度差Δh(tx)に比して、測定基準時点tの2つ前のサンプリング時刻tyにおける判定高度差Δh(ty)が小さく設定されている。また、測定基準時点tの2つ前のサンプリング時刻tyにおける判定高度差Δh(ty)に比して、測定基準時点tの3つ前のサンプリング時刻tzにおける判定高度差Δh(tz)が小さく設定されている。
【0094】
高度変化判定部1011は、高度変化状態の判定において、各サンプリング時刻tx、ty、tz、t−ΔT1において計測された高度と、測定基準時点tにおいて計測された高度(基準高度)との測定高度差を算出する。そして、算出した測定高度差を、各サンプリング時刻における判定高度差と比較する。具体的には、例えば、高度変化判定部1011は、サンプリング時刻txにおいて計測された高度h(tx)と、基準高度h(t)との測定高度差|h(t)−h(tx)|を算出し、サンプリング時刻txにおける判定高度差Δh(tx)と比較する。測定高度差|h(t)−h(tx)|が判定高度差Δh(tx)以下である場合は、サンプリング時刻txにおいて計測されたh(tx)が上述した閾高度範囲内に含まれることと同義である。また、差|h(t)−h(tx)|が判定高度差Δh(tx)以上である場合は、サンプリング時刻txにおいて計測された高度h(tx)が、上述した閾高度範囲に含まれないことと同義である。
このように、高度変化判定部1011は、測定高度差と判定高度差との大小を比較することにより高度変化状態を判定してもよい。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る電子機器10は、高度を計測する高度計測部(例えば、高度計測部108)と、現在までの予め定めた第1の時間間隔内で高度計測部が計測した高度に基づき高度変化の状態を判定する高度変化判定部(例えば、高度変化判定部1011)とを備える。また、電子機器10は、第1の時間間隔と等しく、あるいは第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔であって、現在までの第2の時間間隔内で高度計測部が計測した高度を用いて昇降速度を算出する昇降速度算出部(例えば、昇降速度算出部1012)を備える。
そのため、高度の変化状態が昇降速度を平均する時間間隔(第2の時間間隔)と等しいかそれよりも短い時間間隔(第1の時間間隔)の高度に基づいて算出されるので、その時点での昇降状態を反映し、かつ安定した昇降速度を計測することができる。
【0096】
また、電子機器10は、測定された測定高度を出力する高度測定部(例えば、高度計測部108)と、第1時点(例えば、測定基準時点)における測定高度である第1測定高度(例えば、基準高度)と、第1時点より前の第2時点(例えば、サンプリング時刻tx)における測定高度である第2測定高度(例えば、高度h(tx))と、第2時点より前の第3時点(例えば、サンプリング時刻ty)における測定高度である第3測定高度(例えば、高度h(ty))と、を記憶する測定高度記憶部(例えば、RAM110)と、所定の第1判定高度差(例えば、判定高度差Δh(tx))と、第1判定高度差に比して小さい所定の第2判定高度差(例えば、判定高度差Δh(ty))と、を記憶する判定高度差記憶部(例えば、ROM111、RAM110)と、第1測定高度と第2測定高度との差である第1測定高度差と、第1判定高度差との大小関係を比較し、かつ、第1測定高度と第3測定高度との差である第2測定高度差と、第2判定高度差との大小関係を比較し、自装置の鉛直方向における移動状態(例えば、高度変化状態)を判定する判定部(例えば、高度変化判定部1011)と、を備える
【0097】
また、電子機器10は、高度を測定する測定部(例えば、高度計測部108)と、所定の第1閾高度範囲と、第1閾高度範囲より狭い所定の第2閾高度範囲と、を設定する設定部(例えば、高度変化判定部1011)と、第1時点において測定された第1高度が第1閾高度範囲に含まれるか否かと、第1時点より前の第2時点において測定された第2高度が第2閾高度範囲に含まれるか否かと、に基づいて自装置の鉛直方向における移動状態(例えば、高度変化状態)を判定する判定部(例えば、高度変化判定部1011)と、を備える。
【0098】
これにより、電子機器10は、判定区間内において、計測された複数の高度に対して、互いに異なる閾値との比較により、鉛直方向における移動状態を判定することができる。従って、電子機器10は、実際の移動による高度の変化に対して測定誤差の影響が大きい場合には、閾値を大きく設けたり、測定誤差の影響が少ない場合には、閾値を小さく設けたりすることができるため、電子機器10は、鉛直方向における移動状態を精度良く判定することができる。
【0099】
また、電子機器10において、第1判定高度差は、第1時点と第2時点との時間間隔に応じた値である。また、第2判定高度差は、第1時点と第3時点との時間間隔に応じた値である。
これにより、電子機器10は、複数のサンプリング時刻における高度の計測値に対して、実際の坂道の昇り降りの傾斜状態や測定誤差等を考慮した重み付けを行い、鉛直方向における移動状態を判定することができる。換言すると、各時点(第2時点や第3時点)における判定高度差は時間に応じて変化する値として設定記憶されている。つまり、時間が変化しても同じ値として設定記憶されているものではない。従って、電子機器10は、鉛直方向における移動状態を実情に応じた値として精度良く判定することができる。
【0100】
また、電子機器10において、第2の判定高度差は、第2時点と第3時点との時間間隔に応じた値だけ、第1判定高度差に比して小さい。
これにより、電子機器10は、例えば、測定基準時点と、サンプリング時刻との時間間隔に応じて判定高度差を定めることができる。ここで、例えば、実際の移動による高度の変化に対する測定誤差の影響は、測定基準時点に近い程大きくなる。電子機器10は、例えば、測定基準時点と、サンプリング時刻との時間間隔が大きくなる程(過去の計測値となる程)、判定高度差を小さく設定することができるため、電子機器10は、鉛直方向における移動状態を実情に応じた値として精度良く判定することができる。例えば、緩やかな傾斜の坂道を昇降している状態においても、その状態判定を敏感に検出できるようになる。
【0101】
また、電子機器10において、判定部は、第1測定高度差が第1判定高度差以上、または、第2測定高度差が第2判定高度差以上である場合に、自装置が昇降状態であると判定する。つまり、各時点の測定高度差の少なくとも1つが判定高度差以上であれば、平地走行状態(非昇降状態)とは異なる昇降状態であると判定する。
これにより、電子機器10は、少なくとも2つの高度の測定値について、自装置が昇降状態であると判定することができる。従って、電子機器10は、昇降状態を精度良く判定することができる。
【0102】
判定高度差記憶部は、移動状態のそれぞれと対応する第1判定高度差と、第2判定高度差とを記憶し、判定部は、連続する2回の移動状態の判定において、前回の判定結果に対応する第1判定高度差と第2判定高度差とに基づいて、次回の移動状態の判定を行う。
これにより、電子機器10は、前回の移動状態の判定結果に応じて、判定高度差、すなわち、検出窓を変更することができる。従って、電子機器10は、鉛直方向における移動状態の変化を迅速に判定することができる。
【0103】
また、電子機器10において、設定部は、両端の限界値(例えば、状態判定上限値および状態判定下限値)のうちの少なくとも1つを第1閾値とする第1閾高度範囲と、両端の限界値のうちの少なくとも1つを第2閾値とする第2閾高度範囲であって、第1閾高度範囲より狭い第2閾高度範囲と、を設定し、判定部は、第1高度と第1閾高度範囲との比較結果と、第2高度と第2閾高度範囲との比較結果とのいずれか、または、両方に応じて変化傾向を判定することを特徴とする。
【0104】
これにより、電子機器10は、測定基準時点側においてサンプリングされた高度の測定誤差は広い閾高度範囲で排除する。また、緩やかな上り下りは、過去基準時点側における狭い閾高度範囲により検出する。従って、電子機器10は、高度の変化傾向を精度良く判定することができる。
【0105】
また、電子機器10において、設定部は、第1閾高度範囲の両端点と、第2閾高度範囲の両端点と、を頂点とする四角形の形状が、第1閾高度範囲の両端を結ぶ線分を下底側とする台形となるように第1閾高度範囲と、第2閾高度範囲とを設定する。
【0106】
これにより、電子機器10は、変化傾向の判定における第1高度と第2高度との重要度に重み付けすることができる。
【0107】
また、電子機器10は、第1高度と第2高度とを記憶する記憶部(例えば、RAM110、ROM111)を備え、判定部は、第2高度が第2閾高度範囲に含まれないことと、第1高度が第1閾高度範囲に含まれないこととの少なくともいずれかが満たされる場合、昇降移動状態(例えば、上昇状態、下降状態)と判定し、第2高度が第2閾高度範囲に含まれ、かつ、第1高度が第1閾高度範囲に含まれる場合、非昇降移動状態(例えば、被昇降状態)と判定することを特徴とする。
【0108】
これにより、電子機器10は、昇降移動状態と非昇降移動状態とを精度良く判定することができる。
【0109】
また、電子機器10において、設定部は、3つ以上の異なる時点において測定される高度の各々と比較される閾高度範囲の各々を、閾高度範囲の各々の鉛直方向上側の端点各々と、鉛直方向下側の端点各々との少なくともいずれか一方が、1つの直線に含まれるように設定する。
また、電子機器10において、設定部は、3つ以上の異なる時点において測定される高度の各々と比較される閾高度範囲の各々を、閾高度範囲の各々の鉛直方向上側の端点各々と、鉛直方向下側の端点各々との少なくともいずれか一方が、1つの曲線に含まれるように設定する。
【0110】
これにより、電子機器10は、例えば、鉛直方向における移動状態の判定において、第1時点と第2時点との間に測定される高度に対して、重み付けされた閾高度範囲を設定することができる。従って、電子機器10は、高度の変化傾向を精度良く判定することができる。
【0111】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上述した各実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態に係る電子機器10は、第1の実施形態に係る電子機器10と同様に高度計測機能付きの電子時計である。ただし、本実施形態では、高度変化状態の判定に用いる検出窓が第1の実施形態とは異なる。
【0112】
図11は、本実施形態に係る検出窓による高度変化状態の判定結果と、実際の高度変化状態の例とを示す図である。
図11に示すグラフにおいて、横軸は、時刻を示し、縦軸は、高度を示す。この横軸において、時間の進行は、
図4示すグラフに対応している。具体的には、
図11に示すサンプリング時刻T1’〜T16’は、それぞれ、
図4に示すサンプリング時刻T1〜T16に対応する。
【0113】
また、
図11に示すグラフは、
図4に示すグラフと同様に、各サンプリング時刻において、サンプリングされた高度を示す。
図11に示すグラフにおいて、サンプリング時刻T1’〜T11’の期間の高度の変化は、
図4に示すグラフにおけるサンプリング時刻T1〜T11の期間の高度の変化と同様である。ただし、
図11に示すグラフにおけるサンプリング時刻T12’以降の高度の変化は、
図4に示すグラフにおける、サンプリング時刻T12以降の高度の変化とは異なる。
図11に示すグラフにおいて、サンプリング時刻T12’以降のユーザの高度変化状態は、上昇状態である。
【0114】
図11に示す例では、3種類の検出窓を用いて高度変化状態の判定が行われている。これら3つの検出窓の判定区間の長さ、すなわち第1の時間間隔は、いずれもサンプリング間隔の5倍に設定されている。つまり、閾高度範囲は、測定基準時点から遡って5点前までにサンプリングされた高度に対して定められる。
【0115】
ここで、本実施形態に係る3種類の検出窓について説明する。
第1の検出窓W1は、第1の実施形態に係る検出窓W1と同一である。
第2の検出窓W4は、測定基準時点側を下底とする台形型の領域である。第2の検出窓W4の下限閾値線は、第1の検出窓W1と同様に設定されている。他方、第2の検出窓の上限閾値線は、第1の検出窓W1の上限閾値線よりも基準高度寄りに設定されている。つまり、第2の検出窓W4において、閾高度範囲は、基準高度の上側と下側とで均等に設定されておらず、基準高度から下側では相対的に広く、基準高度から上側では相対的に狭く設定されている。
第3の検出窓W5は、測定基準時点側を下底とする台形型の領域である。第3の検出窓W5の上限閾値線は、第1の検出窓W1と同様に設定されている。他方、第3の検出窓の下限閾値線は、第1の検出窓W1の下限閾値線よりも基準高度寄りに設定されている。つまり、第3の検出窓W5において、閾高度範囲は、基準高度の上側と下側とで均等に設定されておらず、基準高度から下側では相対的に狭く、基準高度から上側では相対的に広く設定されている。
【0116】
本実施形態に係る電子機器10は、上述した3種類の検出窓を高度変化状態の判定結果に応じて使い分ける。具体的には、測定基準時点において非昇降状態と判定した場合、次回の判定では、第1の検出窓W1を用いて高度変化状態の判定を行う。また、測定基準時点において上昇状態と判定した場合、次回の判定では、第2の検出窓W4を用いて高度変化状態の判定を行う。また、測定基準時点において下降状態と判定した場合、次回の判定では、第3の検出窓W5を用いて高度変化状態の判定を行う。
【0117】
ここで、検出窓を使い分ける理由について説明する。
まず、高度変化状態が非昇降状態である場合、ユーザの移動は上昇状態または下降状態へと遷移する可能性がある。このように、非昇降状態である場合、現在の移動方向から見た相対的な移動方向は、上昇方向と下降方向との両方が考えられるため、基準高度の上側と下側とで同程度の高度差の閾高度範囲を有する第1の検出窓W1を用いる。
【0118】
また、高度変化状態が上昇状態である場合、ユーザの移動は非昇降状態または下降状態へと遷移する可能性がある。つまり、上昇状態である場合、現在の移動方向から見た相対的な移動方向は、下降方向のみに限定される。従って、上昇状態である場合には、基準高度の上側の高度差が狭い閾高度範囲を有する第2の検出窓W4を用いることで、昇降状態から非昇降状態または下降状態への遷移を感度良く検出することができる。
【0119】
また、高度変化状態が下降状態である場合、ユーザの移動は非昇降状態または上昇状態へと遷移する可能性がある。つまり、下降状態である場合、現在の移動方向から見た相対的な移動方向は、上昇方向のみに限定される。従って、下降状態である場合には、基準高度の下側の高度差が狭い閾高度範囲を有する第3の検出窓W5を用いることで、下降状態から非昇降状態または上昇状態への遷移を感度良く検出することができる。
【0120】
次に、
図11を参照して、3種類の検出窓を用いた判定例を説明する。
図11に示すように、サンプリング時刻T1’からサンプリング時刻T3’まで間、ユーザは、非昇降状態であると判定されている。また、サンプリング時刻T3’からサンプリング時刻T8’までの間、上昇状態であると判定されている。また、サンプリング時刻T8’からサンプリング時刻T12’までの間、下降状態であると判定されている。また、サンプリング時刻T12’からサンプリング時刻T16’までの間、上昇状態であると判定されている。
【0121】
実際の高度変化状態と判定結果とを比較すると、第1の検出窓W1のみを用いた第1の実施形態と同様に、実際の高度変化状態の遷移に追従して、実際の高度変化状態と一致する判定結果が得られていることが確認できる。また、本実施形態に係る電子機器10は、第1の実施形態に係る電子機器10と比較して、高度変化状態の遷移をさらに遅延なく検出することができる。
【0122】
例えば、サンプリング時刻T7’(
図4のサンプリング時刻T7に対応)における上昇状態から下降状態への遷移は、第1の実施形態に係る電子機器10では、サンプリング時刻T7から2つ後のサンプリング時刻T9において検出されている。これに対して、本実施形態に係る電子機器10では、サンプリング時刻T7’から1つ後のサンプリング時刻T8’において、上昇状態から下降状態への遷移が検出されている。つまり、本実施形態に係る電子機器10では、サンプリング時刻T9’(
図4のサンプリング時刻T9に対応)よりも1つ前のサンプリング時刻T8’において、高度変化状態の遷移が検出されている。また、例えば、本実施形態に係る電子機器10は、サンプリング時刻T11’における下降状態から上昇状態への遷移を、サンプリング時刻T11’から1つだけ後のサンプリング時刻T12’において検出している。
【0123】
以上説明したように、本実施形態に係る電子機器10は、高度変化状態の判定結果に応じた検出窓を用いて高度変化状態を判定する。これにより、電子機器10は、高度変化状態の遷移を遅延なく検出することができる。
【0124】
[変形例]
次に、検出窓の変形例について説明する。
図12〜
図14は、それぞれ、本発明の変形例に係る検出窓W6〜W8を示す図である。
図12〜
図14に示す検出窓W6〜W8は、検出窓W1と同様に、測定基準時点t側と過去基準時点t−ΔT1側とにおいて、異なる閾高度範囲を有する。ただし、検出窓W1において、上限閾値線UTおよび下限閾値線LTは、それぞれ直線状であったのに対して、検出窓W6、W7において、上限閾値線UTおよび下限閾値線LTは、それぞれ曲線状である。このように、上限閾値線UTと下限閾値線LTとのいずれか、または、両方が曲線状であってもよい。また、この曲線は、2次以上の高次関数により表現されるものであってよい。
【0125】
また、検出窓W8において、上限閾値線UTおよび下限閾値線LTは、それぞれ、折れ線状である。具体的には、検出窓W8の上限閾値線UTおよび下限閾値線LTは、変更点から過去基準時点側において、傾きを有さず、閾高度範囲は固定である。この閾高度範囲の高度差は、例えば、サンプリングにおける測定誤差のうち、例えば90%等、所定の割合が収束する値とする。また、検出窓W8の上限閾値線UTと下限閾値線LTとは、それぞれ、変更点から測定基準時点側において、正の傾きと負の傾きとを有する直線である。このように、上限閾値線UTと下限閾値線LTとのいずれか、または、両方が折れ線状であってもよい。また、この折れ線は、任意の直線、または、曲線を組み合わせて表現されるものであってよい。また、高度の閾値は、各サンプリング時刻において、1つであってもよいし、3つ以上の複数であってもよい。
【0126】
なお、判定区間の長さは、上述したものに限られない。例えば、判定区間は、サンプリング間隔の3倍、4倍であってもよい。この場合、高度変化状態の判定において、閾高度範囲と比較する高度が3つ、4つに限定されるので、高度変化判定部1011は、判定区間の長さをサンプリング間隔の5倍とする場合に比して簡素な処理で高度変化状態を判定することができ、ハードウェア規模の増大を抑制することができる。また、判定区間の長さをサンプリング間隔の6倍以上としてもよい。このように、判定区間の長さは任意に調整されてよい。
【0127】
なお、上述したように、上昇状態、下降状態は、それぞれ、さらに細かく分類で判定されてもよい。
この場合は、高度変化判定部1011は、例えば、判定の根拠となったサンプリング時刻と測定基準時点との時間間隔の大きさに基づいて昇降状態の分類を行ってもよい。具体的には、高度変化判定部1011は、例えば、測定基準時点に近いサンプリング時刻において計測された高度が閾高度範囲を超えている場合、急上昇、又は、急下降の状態であると判定する。また、高度変化判定部1011は、例えば、測定基準時点に近いサンプリング時刻において計測された高度が閾高度範囲を超えておらず、過去基準時点に近いサンプリング時刻において計測された高度が閾高度範囲を超えている場合、緩やかな上昇、又は、緩やかな下降の状態であると判定する。
【0128】
また、高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内において計測された複数の高度のうち、閾高度範囲を超えている高度の数に基づいて、昇降状態の分類を行ってもよい。具体的には、高度変化判定部1011は、例えば、判定区間において上限閾値線UTを超えたサンプルが所定数より多い場合には、急下降していると判定する。また、上限閾値線UTを超えたサンプルが所定数より少ない場合には、緩やかに下降していると判定する。
このように、高度変化判定部1011は、各サンプリング時刻において計測された高度の各々と、各サンプリング時刻における閾高度範囲の各々との比較結果の分布に基づいて、昇降状態の分類を行ってもよい。
【0129】
なお、上述した実施形態における電子機器10が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0130】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0131】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、操作入力部104が備えるキー入力手段の個数は2個であるが、これには限られない。電子機器10が有する機能の数に応じて予め定めた数、例えば、1個でもよいし、2個よりも多くてもよい。
また、上述した実施形態では、電子機器10は高度計測機能付きの電子時計であるが、これには限られない。電子機器10は、例えば、高度計測機能を有していれば、いかなる電子機器、例えば、多機能携帯電話機(いわゆるスマートフォン)であってもよい。