特許第6498100号(P6498100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498100
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   F01M13/00 L
   F01M13/00 E
   F01M13/00 G
   F01M13/00 H
   F01M13/00 K
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-215069(P2015-215069)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-82744(P2017-82744A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】石田 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】堀切 浩次
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036433(JP,A)
【文献】 特開2013−108497(JP,A)
【文献】 米国特許第05970962(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0300297(US,A1)
【文献】 特開2011−007151(JP,A)
【文献】 特開2013−124566(JP,A)
【文献】 特開2007−224776(JP,A)
【文献】 実開昭62−136785(JP,U)
【文献】 特開2006−317096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体(1)とブローバイガス通路(4)とオイルセパレータ(5)と分離液ドレイン通路(6)を備え、ブローバイガス通路(4)はエンジン本体(1)から導出され、オイルセパレータ(5)はブローバイガス通路(4)に設けられ、分離液ドレイン通路(6)はオイルセパレータ(5)の底部(7)とエンジン本体(1)の間に設けられている、エンジンにおいて、
オイルセパレータ(5)はドレインヒータ(8)を備え、ドレインヒータ(8)はオイルセパレータ(5)の底部(7)に配置され、
オイルセパレータ(5)の底部(7)はドレイン導出パイプ(17)を備え、ドレインヒータ(8)の放熱体(22)はドレイン導出パイプ(17)に配置され、
ドレインヒータ(8)を構成するパイプ状ヒータ(18)は、放熱パイプ(38)を放熱体(22)とし、
パイプ状ヒータ(18)は、ホルダ(37)と放熱パイプ(38)と発熱部(39)を備え、ホルダ(37)は筒状に形成され、放熱パイプ(38)は外パイプ(38a)とこの外パイプ(38a)内の内パイプ(38b)で構成され、発熱部(39)の熱が外パイプ(38a)と内パイプ(38b)に伝達され、外パイプ(38a)内で内パイプ(38b)の内外を通過する分離液(6a)が、外パイプ(38a)と内パイプ(38b)からの放熱で加熱されるように構成され、
放熱パイプ(38)の上端部は、ホルダ(37)からドレイン導出パイプ(17)内に突出されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)の発熱体(9)はオイルセパレータ(5)の底壁(7a)に沿って配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたエンジンにおいて、
オイルセパレータ(5)の底部(7)は逆流抑制装置(11)を備え、逆流抑制装置(11)は逆止弁室周壁(12)と逆止弁(13)を備え、逆止弁室周壁(12)はオイルセパレータ(5)の底壁(7a)から下向きに突設され、逆止弁(13)は逆止弁室周壁(12)内に収容され、分離液ドレイン通路(6)からオイルセパレータ(5)への分離液(6a)の逆流を抑制するように構成され、
ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)(16)の発熱体(9)は逆流抑制装置(11)に配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載されたエンジンにおいて、
ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)の発熱体(9)は逆止弁室周壁(12)の外周面に沿って配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載されたエンジンにおいて、
ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(16)の発熱体(9)は逆止弁(13)のフロート部(13b)に配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
オイルセパレータ(5)は樹脂層(14)を備え、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)の発熱体(9)は樹脂層(14)内に埋設されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
オイルセパレータ(5)は放熱板(10)を備え、放熱板(10)はオイルセパレータ(5)の内底部に配置され、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)の発熱体(9)の熱が放熱板(10)でオイルセパレータ(5)の内底部に放熱されるように構成されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)はPTCヒータ(15)で構成されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(16)はIHヒータ(16)で構成されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
ブローバイガス通路(4)はブローバイガスヒータ(19)を備えている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項11】
請求項10に記載されたエンジンにおいて、
キースイッチ(20)とタイマ(21)と電源(23)を備え、キースイッチ(20)を介して電源(23)にブローバイガスヒータ(19)が連携され、キースイッチ(20)とタイマ(21)を介して電源(23)にドレインヒータ(8)が連携され、
キースイッチ(20)がエンジン運転位置(20a)に投入されたエンジン運転中は、キースイッチ(20)を介した電源(23)からの通電でブローバイガスヒータ(19)が発熱され、キースイッチ(20)がエンジン停止位置(20b)に投入されたエンジン停止後の所定時間は、キースイッチ(20)とタイマ(21)を介した電源(23)からの通電でドレインヒータ(8)が発熱されるように構成されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、寒冷時に分離液ドレイン通路が氷結で閉塞される不具合を抑制することができるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン本体とブローバイガス通路とオイルセパレータと分離液ドレイン通路を備え、ブローバイガス通路はエンジン本体から導出され、オイルセパレータはブローバイガス通路に設けられ、分離液ドレイン通路はオイルセパレータの底部とエンジン本体の間に設けられているエンジンがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−63803号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》 寒冷時に分離液ドレイン通路が氷結で閉塞されることがある。
特許文献1のものでは、寒冷時に分離液ドレイン通路が氷結で閉塞されることがある。その原因は次のように推定される。
寒冷時にエンジンを始動した後、短時間でエンジンを停止すると、エンジン運転中に発生したブローバイガス中の水分が、エンジン停止後にオイルセパレータの底部で凝縮し、エンジン停止中に氷結する。これが何度も繰り返されると、氷結が成長し、分岐液ドレイン通路が氷結で閉塞される。
この場合、オイルセパレータでブローバイガスから分離したオイルや水分を含む分離液がオイルセパレータから排出されず、再ミスト化され、オイルセパレータのオイルや水分の分離機能が低下する。
【0005】
本発明の課題は、寒冷時に分離液ドレイン通路が氷結で閉塞される不具合を抑制することができるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図2に例示するように、エンジン本体(1)とブローバイガス通路(4)とオイルセパレータ(5)と分離液ドレイン通路(6)を備え、ブローバイガス通路(4)はエンジン本体(1)から導出され、オイルセパレータ(5)はブローバイガス通路(4)に設けられ、分離液ドレイン通路(6)はオイルセパレータ(5)の底部(7)とエンジン本体(1)の間に設けられている、エンジンにおいて、
図1(A)〜(D),図4(A)〜(C),図5(A)〜(C)に例示するように、オイルセパレータ(5)はドレインヒータ(8)を備え、ドレインヒータ(8)はオイルセパレータ(5)の底部(7)に配置され、
図1(A)(E),図4(A),図5(A)に例示するように、ドレインヒータ(8)を構成するパイプ状ヒータ(18)は、放熱パイプ(38)を放熱体(22)とし、
パイプ状ヒータ(18)は、ホルダ(37)と放熱パイプ(38)と発熱部(39)を備え、ホルダ(37)は筒状に形成され、図3(A)〜(D)に例示するように、放熱パイプ(38)は外パイプ(38a)とこの外パイプ(38a)内の内パイプ(38b)で構成され、発熱部(39)の熱が外パイプ(38a)と内パイプ(38b)に伝達され、外パイプ(38a)内で内パイプ(38b)の内外を通過する分離液(6a)が、外パイプ(38a)と内パイプ(38b)からの放熱で加熱されるように構成され、
図1(A),図4(A),図5(A)に例示するように、放熱パイプ(38)の上端部は、ホルダ(37)からドレイン導出パイプ(17)内に突出されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 寒冷時に分離液ドレイン通路が氷結で閉塞される不具合を抑制することができる。
図1(A)〜(D),図4(A)〜(C),図5(A)〜(C)に例示するように、オイルセパレータ(5)はドレインヒータ(8)を備え、ドレインヒータ(8)はオイルセパレータ(5)の底部(7)に配置されているので、ブローバイガス(4a)中の水分がオイルセパレータ(5)の底部(7)に溜まっても、ドレインヒータ(8)の発熱により、氷結が成長せず、寒冷時に分離液ドレイン通路(6)が氷結で閉塞される不具合を抑制することができる。
《効果》 ドレイン導出パイプの氷結を抑制することができる。
図1(A)(D),図4(A),図5(A)に例示するように、オイルセパレータ(5)の底部(7)はドレイン導出パイプ(17)を備え、ドレインヒータ(8)の放熱体(22)はドレイン導出パイプ(17)に配置されているので、ドレイン導出パイプ(17)の氷結を抑制することができる。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 オイルセパレータの底部を効率的に加熱することができる。
図1(A)(B),図4(A)(B),図5(A)(B)に例示するように、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)の発熱体(9)はオイルセパレータ(5)の底壁(7a)に沿って配置されているので、広範囲に亘って発熱体(9)を配置することができ、オイルセパレータ(5)の底部(7)を効率的に加熱することができる。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 逆流抑制装置の氷結を抑制することができる。
図1(A)〜(C),図4(A)〜(C),図5(A)〜(C)に例示するように、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)(16)の発熱体(9)は逆流抑制装置(11)に配置されているので、逆流抑制装置(11)の氷結を抑制することができる。
【0010】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 逆流抑制装置を効率的に加熱することができる。
図4(A)(B)に例示するように、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)の発熱体(9)は逆止弁室周壁(12)の外周面に沿って配置されているので、広範囲に亘って発熱体(9)を配置することができ、逆流抑制装置(11)を効率的に加熱することができる。
【0011】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項3または請求項4に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 フロート部の氷結を抑制することができる。
図5(A)〜(C)に例示するように、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(16)の発熱体(9)は逆止弁(13)のフロート部(13b)に配置されているので、フロート部(13b)の氷結を抑制することができる。
【0012】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 発熱体の汚染を防止することができる。
図1(A)〜(C),図4(A)〜(C),図5(A)〜(C)に例示するように、オイルセパレータ(5)は樹脂層(14)を備え、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)の発熱体(9)は樹脂層(14)内に埋設されているので、ブローバイガス(4a)等の接触による発熱体(9)の汚染を防止することができる。
【0013】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 オイルセパレータの内底部を効率的に加熱することができる。
図1(A)(B),図4(A)(B),図5(A)(B)に例示するように、オイルセパレータ(5)は放熱板(10)を備え、放熱板(10)はオイルセパレータ(5)の内底部に配置され、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)の発熱体(9)の熱が放熱板(10)でオイルセパレータ(5)の内底部に放熱されるように構成されているので、オイルセパレータ(5)の内底部を効率的に加熱することができる。
【0014】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 既存のエンジンへのドレインヒータの追加を容易に行うことができる。
図1(A)〜(C),図4(A)〜(C)に例示するように、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(15)はPTCヒータ(15)で構成されているので、既存のエンジンにドレインヒータ(8)を追加しても、PTCヒータ(15)のPTC特性により、センサーやマイコン等による外部的制御を必要とせず、既存のエンジンへのドレインヒータ(8)の追加を容易に行うことができる。
【0015】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 発熱体の配置の自由度を高めることができる。
図5(A)〜(C)に例示するように、ドレインヒータ(8)を構成するシート状のヒータ(16)はIHヒータ(16)で構成されているので、発熱体(9)にワイヤを接続する必要がなく、発熱体(9)の配置の自由度を高めることができる。
【0016】
【0017】
(請求項10に係る発明)
請求項10に係る発明は、請求項1から請求項9のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 寒冷時に分離液ドレイン通路が氷結で閉塞される不具合を抑制することができる。
図1(A),図2に例示するように、ブローバイガス通路(4)はブローバイガスヒータ(19)を備えているので、ブローバイガス(4a)が加熱され、ブローバイガス(4a)中の水分がオイルセパレータ(5)内で凝縮し難く、分離液ドレイン通路(6)が氷結で閉塞される不具合を抑制することができる。
【0018】
(請求項11に係る発明)
請求項11に係る発明は、請求項10に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 寒冷時に分離液ドレイン通路が氷結で閉塞される不具合を抑制することができる。
図1(A)に例示するように、キースイッチ(20)がエンジン運転位置(20a)に投入されたエンジン運転中は、キースイッチ(20)を介した電源(23)からの通電でブローバイガスヒータ(19)が発熱され、キースイッチ(20)がエンジン停止位置(20b)に投入されたエンジン停止後の所定時間は、キースイッチ(20)とタイマ(21)を介した電源(23)からの通電でドレインヒータ(8)が発熱されるように構成されているので、ブローバイガス(4a)中の水分がオイルセパレータ(5)の底部(7)に溜まっても、ドレインヒータ(8)の発熱により、氷結が成長せず、寒冷時に分離液ドレイン通路(6)が氷結で閉塞される不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの要部を説明する図で、図1(A)は要部縦断面図、図1(B)は図1(A)のB部拡大図、図1(C)は図1(A)のC−C線拡大断面図、図1(D)は図1(A)のD部拡大図、図1(E)は図1(A)のE−E線拡大断面図である。
図2図1のエンジンの模式図である。
図3図1のエンジンで用いるブローバイガスヒータの放熱部を説明する図で、図3(A)は基本例の端面図、図3(B)は第1変形例の端面図、図3(C)は第2変形例の端面図、図3(D)は第3変形例の端面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るエンジンの要部を説明する図で、図4(A)は要部縦断面図、図4(B)は図4(A)のB部拡大図、図4(C)は図4(A)のC−C線拡大断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るエンジン要部を説明する図で、図5(A)は要部縦断面図、図5(B)は図5(A)のB部拡大図、図5(C)は図5(A)のC−C線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図3は本発明の第1実施形態、図4は第2実施形態、図5は第3実施形態を説明する図で、各実施形態では、立形の直列多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0021】
まず、第1実施形態について説明する。
エンジンの概要は、次の通りである。
図2に示すように、エンジン本体(1)とブローバイガス通路(4)とオイルセパレータ(5)と分離液ドレイン通路(6)を備え、ブローバイガス通路(4)はエンジン本体(1)から導出され、オイルセパレータ(5)はブローバイガス通路(4)に設けられ、分離液ドレイン通路(6)はオイルセパレータ(5)の底部(7)とエンジン本体(1)の間に設けられている。
【0022】
図2に示すように、エンジン本体(1)は、シリンダブロック(25)とシリンダヘッド(26)とシリンダヘッドカバー(27)とブリーザ室(28)とオイルパン(29)とエアクリーナ(30)と吸気通路(31)と排気通路(32)を備えている。
シリンダブロック(25)はクランクケース(25a)とシリンダ部(25b)を備え、クランクケース(25a)の上部にシリンダ部(25b)が設けられている。シリンダヘッド(26)はシリンダ部(25b)の上部に組み付けられ、シリンダヘッドカバー(27)はシリンダヘッド(26)の上部に組み付けられ、ブリーザ室(28)はシリンダヘッドカバー(27)に設けられている。オイルパン(29)はクランクケース(25a)の下部に組み付けられている。吸気通路(31)はエアクリーナ(30)とシリンダヘッド(26)との間に設けられ、排気通路(32)はシリンダヘッド(26)から導出されている。ブローバイガス通路(4)はブリーザ室(28)と吸気通路(31)の間に設けられている。オイルセパレータ(5)はブローバイガス通路(4)の途中に設けられている。
【0023】
図1(A)に示すように、オイルセパレータ(5)は、ケーシング(33)とフィルタ(34)と入口パイプ(35)と出口パイプ(36)を備え、ケーシング(33)は上下端が塞がれた有底円筒型に形成され、フィルタ(34)は上下端が開口された円筒型に形成され、ケーシング(33)内に収容され、入口パイプ(35)と出口パイプ(36)はケーシング(33)の周壁から外向きに突出され、入口パイプ(35)とブローバイガス通路(4)の上流側部分が連通され、出口パイプ(36)とブローバイガス通路(4)の下流側部分が連通され、入口パイプ(35)と出口パイプ(36)がフィルタ(34)を介して連通され、ブローバイガス(4a)がフィルタ(34)を通過する際に、ブローバイガス(4a)に含まれるオイル分や水分が分離され、分離液(6a)としてオイルセパレータ(5)の底部(7)に溜まる。
【0024】
図1(A)〜(D)に示すように、オイルセパレータ(5)はドレインヒータ(8)を備え、ドレインヒータ(8)はオイルセパレータ(5)の底部(7)に配置されている。
この第1実施形態は、3個のドレインヒータ(8)を備えている。
第1のドレインヒータ(8)は、シート状のPTCヒータ(15)で、オイルセパレータ(5)の底部(7)の底壁(7a)に配置され、第2のドレインヒータ(8)は、シート状のPTCヒータ(15)で、オイルセパレータ(5)の底部(7)の逆流抑制装置(11)に配置され、第3のドレインヒータ(8)は、パイプ状ヒータ(18)で、オイルセパレータ(5)の底部(7)のドレイン導出パイプ(17)に配置されている。
【0025】
第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)に沿って配置されている。
第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は、シート状で、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)の内面及び/又は外面に沿って配置することができる。この第1実施形態では、第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)の内面に沿って配置されている。
【0026】
図1(A)〜(C)に示すように、オイルセパレータ(5)の底部(7)は逆流抑制装置(11)を備え、逆流抑制装置(11)は逆止弁室周壁(12)と逆止弁(13)を備え、逆止弁室周壁(12)はオイルセパレータ(5)の底壁(7a)から下向きに突設され、逆止弁(13)は逆止弁室周壁(12)内に収容され、分離液ドレイン通路(6)からオイルセパレータ(5)への分離液(6a)の逆流を抑制するように構成されている。
【0027】
図1(A)〜(C)に示すように、逆止弁(13)は、弁部(13a)とフロート部(13b)を備えている。逆止弁(13)は弁部(13a)とフロート部(13b)が一体であっても、別体であってもよいが、この第1実施形態では、逆止弁(13)は弁部(13a)とフロート部(13b)が一体である。弁部(13a)の上方には弁部(13a)と嵌合する弁座(13c)が配置されている。
【0028】
図1(A)〜(C)に示すように、第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は逆流抑制装置(11)に配置されている。
第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)はシート状で、逆止弁室周壁(12)の内面、外面、逆止弁(13)の弁体(13a)、フロート部(13b)、弁座(13c)のうち、1以上の部分に配置することができる。この第1実施形態では、第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は逆止弁室周壁(12)の内面に沿って配置されている。
【0029】
図1(A)(B)に示すように、逆止弁室周壁(12)の内面はスペーサ突条(12a)を備え、スペーサ突条(12a)は、逆止弁室周壁(12)の軸長方向に向けて長く形成され、逆止弁室周壁(12)の周方向に所定間隔を保持して、複数配置され、逆止弁(13)の外周面を受け止め、逆止弁(13)の外周面が逆止弁室周壁(12)の内面と接触するのを防止し、逆止弁(13)の摺動抵抗を低減させている。ドレインヒータ(8)の発熱体(9)は隣り合うスペーサ突条(12a)(12a)の間に配置されている。
【0030】
図1(A)〜(C)に示すように、オイルセパレータ(5)は樹脂層(14)を備え、第1と第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は樹脂層(14)内に埋設されている。
樹脂層(14)はウレタン樹脂製のポッテング材で、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)の内面に沿う第1のドレインヒータ(8)のシート状の発熱体(9)と、逆止弁室周壁(12)の内面に沿う第2のドレインヒータ(8)のシート状の発熱体(9)が樹脂層(14)内に埋設されて、固定されている。
【0031】
図1(A)(B)に示すように、オイルセパレータ(5)は放熱板(10)を備え、放熱板(10)はオイルセパレータ(5)の内底部に配置され、第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)の熱が放熱板(10)でオイルセパレータ(5)の内底部に放熱されるように構成されている。
放熱板(10)は円環状の銅板で構成され、第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)の発熱面よりも広い面積の受熱面と放熱面を備え、樹脂層(14)の上面に接触している。
【0032】
図1(A)〜(C)に示すように、第1と第2のドレインヒータ(8)はPTCヒータ(15)で構成され、PTCヒータ(15)は、PTC特性、すなわち、温度が上がるにつれ、電気抵抗値が正の係数を持って変化する性質を備えたヒータで、温度が緩やかに上昇した後、所定の温度で安定する自己制御機能を備えている。
【0033】
図1(A)(D)に示すように、オイルセパレータ(5)の底部(7)はドレイン導出パイプ(17)を備え、第3のドレインヒータ(8)の放熱体(22)はドレイン導出パイプ(17)に配置されている。
【0034】
図1(A)(E)に示すように、第3のドレインヒータ(8)を構成するパイプ状ヒータ(18)は、放熱パイプ(38)を放熱体(22)としている。
パイプ状ヒータ(18)は、ホルダ(37)と放熱パイプ(38)と発熱部(39)を備え、ホルダ(37)は筒状に形成され、放熱パイプ(38)は外パイプ(38a)とこの外パイプ(38a)内の内パイプ(38b)で構成され、発熱部(39)の熱が外パイプ(38a)と内パイプ(38b)に伝達され、外パイプ(38a)内で内パイプ(38b)の内外を通過する分離液(6a)が、外パイプ(38a)と内パイプ(38b)からの放熱で加熱されるように構成されている。
パイプ状ヒータ(18)では、外パイプ(38a)の内周面に内パイプ(38b)の外周面が接触し、発熱部(39)の熱が外パイプ(38a)を介して内パイプ(38b)に伝達されるように構成されている。
放熱パイプ(38)の上端部は、ホルダ(37)からドレイン導出パイプ(17)内に突出されている。
【0035】
図1(E)と図3(A)に示すように、パイプ状ヒータ(18)の放熱パイプ(38)の基本例は、単一の外パイプ(38a)内の単一の内パイプ(38b)の周壁が内外交互に折り返された放射状の襞(40)で構成されている。放熱パイプ(38)の基本例では、外パイプ(38a)を内パイプ(38b)よりも突出させ、或いは、外パイプ(38a)を内パイプ(38b)よりも突出させて用いることができる。
図3(B)(C)(D)に示すように、放熱パイプ(38)は第1〜第3変形例のように変形して用いることができる。
【0036】
図3(A)に示す基本例では、外パイプ(38a)の軸長方向に伸びる内パイプ(38b)の襞(40)は、外パイプ(38a)の中心軸線と平行な向きとなっているが、図3(B)に示す第1変形例では、外パイプ(38a)の軸長方向に伸びる内パイプ(38b)の襞(40)は、外パイプ(38a)の中心軸線(38c)と平行な向きに対し、傾斜状に交差している。(
【0037】
図3(A)に示す基本例では、内パイプ(38b)は襞(40)を備えた単一のパイプで構成されているが、図3(C)に示す第2変形例では、内パイプ(38b)は複数本の丸パイプで、単一の外パイプ(5)内に束状に配置されている。
また、図3(C)に示す第2変形例では、複数の内パイプ(38b)は外パイプ(38a)の中心軸線(38c)と平行に向きであるが、図3(D)に示す第3変形例では、複数の内パイプ(38b)は外パイプ(38a)の中心軸線(38c)と平行な向きに対し、傾斜状に交差している。放熱パイプ(38)の第1〜第3変形例では、基本例と同様、外パイプ(38a)を内パイプ(38b)よりも突出させ、或いは、外パイプ(38a)を内パイプ(38b)よりも突出させて用いることができる。
【0038】
図1(A),図2に示すように、ブローバイガス通路(4)はブローバイガスヒータ(19)を備えている。
ブローバイガスヒータ(19)は第3のドレインヒータ(8)を構成するパイプ状ヒータ(18)と同じ構造で、オイルセパレータ(5)の入口パイプ(35)と出口パイプ(36)にそれぞれ配置され、ブローバイガスヒータ(19)の放熱パイプ(38)の一端部は、ホルダ(37)からオイルセパレータ(5)の入口パイプ(35)内と出口パイプ(36)内に突出している。
【0039】
図1(A)に示すように、キースイッチ(20)とタイマ(21)と電源(23)を備え、キースイッチ(20)を介して電源(23)にブローバイガスヒータ(19)が連携され、キースイッチ(20)とタイマ(21)を介して電源(23)にドレインヒータ(8)が連携されている。
キースイッチ(20)がエンジン運転位置(20a)に投入されたエンジン運転中は、キースイッチ(20)を介した電源(23)からの通電でブローバイガスヒータ(19)が発熱され、キースイッチ(20)がエンジン停止位置(20b)に投入されたエンジン停止後の所定時間は、キースイッチ(20)とタイマ(21)を介した電源(23)からの通電でドレインヒータ(8)が発熱されるように構成されている。
電源(23)はバッテリである。
【0040】
次に、図4(A)〜(C)に示す第2実施形態について説明する。
この第2実施形態では、第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)はオイルセパレータ(5)の底壁(7a)の外面に沿って配置され、第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は逆止弁室周壁(12)の外周面に沿って配置されている。これらのシート状の発熱体(9)は、いずれも樹脂層(14)内に埋設され、固定されている。
他の構成及び機能は、図1(A)〜(E)に示す第1実施形態と構成及び機能と同じで、図4(A)〜(C)中、第1実施形態と同一の要素には、図1(A)〜(E)と同一の符号を付しておく。
【0041】
次に、図5(A)〜(C)に示す第3実施形態について説明する。
この第3実施形態では、第1のドレインヒータ(8)と第2のドレインヒータ(8)はシート状のIHヒータ(16)で構成されている。
第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)に沿って配置されている。
第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は、シート状で、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)の内面及び/又は外面に沿って配置することができる。この第3実施形態では、第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)の内面に沿って配置されている。
【0042】
図5(A)〜(C)に示すように、第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は逆流抑制装置(11)に配置されている。
第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)はシート状で、逆止弁室周壁(12)の内面、外面、或いは逆止弁(13)の弁部(13a)、フロート部(13b)、弁座(13c)のうち、1以上の部分に配置することができる。この第3実施形態では、第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は逆止弁(13)のフロート部(13b)の外面に沿って配置されている。
第1と第2のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は鉄製のシートである。
【0043】
第1のドレインヒータ(8)のIHコイル(41)は、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)に沿って配置されている。
第1のドレインヒータ(8)のIHコイル(41)は、シート状で、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)の内面及び/又は外面に沿って配置することができる。この第3実施形態では、第1のドレインヒータ(8)の発熱体(9)は、オイルセパレータ(5)の底壁(7a)の外面に沿って配置されている。
【0044】
図5(A)〜(C)に示すように、第2のドレインヒータ(8)のIHコイル(41)は、逆流抑制装置(11)に配置されている。
第2のドレインヒータ(8)のIHコイル(41)はシート状で、逆止弁室周壁(12)の内面、外面、或いは逆止弁(13)の弁部(13a)、フロート部(13b)、弁座(13c)のうち、1以上の部分に配置することができる。この第3実施形態では、第2のドレインヒータ(8)のIHコイル(41)は、逆止弁室周壁(12)の外面に沿って配置されている。
【0045】
図5(A)に示すように、第3実施形態のエンジンは、キースイッチ(20)とタイマ(21)とIH制御回路(42)と電源(23)を備え、キースイッチ(20)を介して電源(23)にブローバイガスヒータ(19)が連携され、キースイッチ(20)とタイマ(21)とIH制御回路(42)を介して電源(23)にドレインヒータ(8)のIHコイル(41)が連携されている。
キースイッチ(20)がエンジン運転位置(20a)に投入されたエンジン運転中は、キースイッチ(20)を介した電源(23)からの通電でブローバイガスヒータ(19)が発熱され、キースイッチ(20)がエンジン停止位置(20b)に投入されたエンジン停止後の所定時間は、キースイッチ(20)とタイマ(21)とIH制御回路(42)を介した電源(23)からの通電でドレインヒータ(8)が発熱されるように構成されている。
IH制御回路(42)は高周波電力をIHコイル(41)に送るインバータ回路部とインバータ回路部を制御する制御部を備えている。
他の構成及び機能は、図1(A)〜(E)に示す第1実施形態と構成及び機能と同じで、図5(A)〜(C)中、第1実施形態と同一の要素には、図1(A)〜(E)と同一の符号を付しておく。
【0046】
本発明の第1〜第3実施形態の内容は以上の通りであるが、本発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、第1〜第3実施形態で、第1のドレインヒータ(8)にPTCヒータ(15)を用い、第2のドレインヒータ(8)にIHヒータ(16)を用いてもよく、逆に、第1のドレインヒータ(8)にIHヒータ(16)を用い、第2のドレインヒータ(8)にPTCヒータ(15)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
(1) エンジン本体
(2) ブリーザ室
(3) 吸気通路
(4) ブローバイガス通路
(5) オイルセパレータ
(6) 分離液ドレイン通路
(6a) 分離液
(7) 底部
(7a) 底壁
(8) ドレインヒータ
(9) 発熱体
(10) 放熱板
(11) 逆流抑制装置
(12) 逆止弁室周壁
(13) 逆止弁
(13a) 弁部
(13b) フロート部
(13c) 弁座
(14) 樹脂層
(15) PTCヒータ
(16) IHヒータ
(17) ドレイン導出パイプ
(18) 放熱体
(19) ブローバイガスヒータ
(20) キースイッチ
(20a) エンジン運転位置
(20b) エンジン停止位置
(21) タイマ
(22) 放熱体
(23) 電源
図1
図2
図3
図4
図5