特許第6498110号(P6498110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日軽金アクト株式会社の特許一覧 ▶ 中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000002
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000003
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000004
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000005
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000006
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000007
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000008
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000009
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000010
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000011
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000012
  • 特許6498110-段差乗り越え用ブリッジ 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498110
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】段差乗り越え用ブリッジ
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/10 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   E01C9/10 B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-244230(P2015-244230)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-110376(P2017-110376A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391007460
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 学
(72)【発明者】
【氏名】犬童 隆喜
(72)【発明者】
【氏名】萩原 貴司
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋司
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−160229(JP,U)
【文献】 実開昭53−002529(JP,U)
【文献】 実開昭55−050168(JP,U)
【文献】 特開2003−063397(JP,A)
【文献】 実開昭50−033475(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0117502(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対峙する一対の桁部材間に踏板部材が等間隔に配置された複数のブリッジ形成体を、連結部材を介して長手方向に連結した状態で、道路に生じた段差や亀裂等に掛け渡される段差乗り越え用ブリッジであって、
上記ブリッジ形成体は、垂直片の上下端に水平上片及び水平下片を有する断面形状に形成される上記桁部材を具備し、上記桁部材の互いに連結される長手方向の端部における上記垂直片に貫通孔が設けられ、
上記連結部材は、上記水平上片と水平下片間に挿入可能に形成されると共に、上記貫通孔と合致可能な係合孔が設けられ、
隣接する上記ブリッジ形成体の上記水平上片と水平下片間に上記連結部材が挿入された状態で、係止ピンが上記貫通孔及び係合孔を貫通して上記ブリッジ形成体を連結し、上記係止ピンが上記貫通孔及び係合孔から抜き取られた状態で、上記ブリッジ形成体を分離可能に形成してなる、ことを特徴とする段差乗り越え用ブリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載の段差乗り越え用ブリッジにおいて、
上記桁部材の互いに連結される長手方向の端部の外側に、上記水平上片、水平下片及び垂直片と協働して挿入空間を形成する外壁が設けられると共に、上記外壁には上記垂直片に設けられた貫通孔と対応する貫通孔が設けられ、
上記連結部材は、上記挿入空間内に挿入可能に形成される、ことを特徴とする段差乗り越え用ブリッジ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の段差乗り越え用ブリッジにおいて、
上記係止ピンは、上記貫通孔及び係合孔より大径の頭部と、上記貫通孔及び係合孔内を貫通するピン本体と、上記ピン本体の先端側に該ピン本体に対して直交する方向に変位可能に枢着される抜け止め部材と、を具備してなる、ことを特徴とする段差乗り越え用ブリッジ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の段差乗り越え用ブリッジにおいて、
上記桁部材の垂直片における対峙する桁部材側の対向面には、上記踏板部材を載置する凸条が長手通しに突設されると共に、上記凸条の下方には凸条より対向面側に突出する厚さを有する補強板が設けられ、かつ、上記補強板には上記桁部材に設けられた貫通孔と連通する貫通孔が設けられている、ことを特徴とする段差乗り越え用ブリッジ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の段差乗り越え用ブリッジにおいて、
上記複数のブリッジ形成体は、上記段差や亀裂等の一方に接地される第1の端部ブリッジ形成体と、上記段差や亀裂等の他方に接地される第2の端部ブリッジ形成体と、上記第1の端部ブリッジ形成体と第2の端部ブリッジ形成体との間に配置される少なくとも1つの中間ブリッジ形成体と、を具備することを特徴とする段差乗り越え用ブリッジ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の段差乗り越え用ブリッジにおいて、
上記貫通孔及び係合孔が上記ブリッジ形成体の長手方向に複数設けられ、それぞれの貫通孔及び係合孔に上記係止ピンが貫通可能に形成されることを特徴とする段差乗り越え用ブリッジ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の段差乗り越え用ブリッジにおいて、
上記貫通孔及び係合孔が上記ブリッジ形成体の長手方向に対して直交する上下方向に複数設けられ、それぞれの貫通孔及び係合孔に上記係止ピンが貫通可能に形成されることを特徴とする段差乗り越え用ブリッジ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の段差乗り越え用ブリッジにおいて、
上記段差に接地される上記ブリッジ形成体の端部下面には、接地面に対して摩擦抵抗の増大を促す滑り止め部が設けられ、
上記滑り止め部は、上記ブリッジ形成体の端部下面に散点状に形成されたエンボス模様、上記ブリッジ形成体の端部下面に被覆されるゴム膜又は粘着性樹脂コーティング膜のいずれかで形成されていることを特徴とする段差乗り越え用ブリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に段差や亀裂等が発生した場合に、車両等がその段差を乗り越えるようにすることができる段差乗り越え用ブリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、地震等の災害発生時には、高速道路や一般道などに大きな崩壊が発生することがあり、この場合は緊急車両や道路管理車等のパトロール車は一刻も早く災害発生現場へ到着する必要がある。ところが、現場へ行くまでの道路の途中にも、規模は小さいものの多数の段差や亀裂等が発生している場合が多い。
【0003】
上記のような道路の途中に発生している小さな段差や亀裂等も車両の通行を妨げる場合があり、この時は土盛りをしたり土嚢を積み上げたりして段差等をなくし車両の通行を確保していた。このため、土を積載したトラックを当初から併走させたり、現場から緊急に応援要請を発したりする必要があり、そのための作業員及びトラックが必要になるという問題があった。また、土盛り等の作業に時間を要し、災害発生現場への到着が遅くなるという問題も指摘されていた。
【0004】
そこで、本件出願人は、例えば特許文献1や特許文献2に示されるような、アルミニウム製の梯子状ブリッジ(以下にアルミブリッジという)を利用して、段差や亀裂間にこのブリッジを渡し、車両のタイヤをブリッジに沿って案内することで車両の通行を確保できないか検討してみた。
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されるようなアルミブリッジは、車両をトラックの荷台に積み込むのに使用するための梯子状ブリッジであり、3〜4mものはあるもののパトロール車の荷台に乗せることが困難なことから、それに対応することはできないものであった。
【0006】
一方、アルミブリッジをパトロール車に積載しようとすると、その長さはせいぜい1m程度とコンパクトなものにする必要があり、2m以上の長いアルミブリッジを運ぶには別途トラック等の手配が必要になり、作業員や費用が多く必要になるという問題が生じた。
【0007】
したがって、基本の長さは1m程度のコンパクトなものでパトロール車に積載可能であり、現場では約2〜4m以上の長いアルミブリッジに組み立てることができて大きな段差や亀裂等にも対応できるという、相反した二つの要求のいずれにも対応することができる段差乗り越え用ブリッジの開発が要望されていた。
【0008】
従来、複数のブリッジ形成部材を組立可能にしたものとして、道路等に生じた段差や亀裂等の一方に接地される第1の斜路部材と、段差や亀裂等の他方に接地される第2の斜路部材と、上記第1の斜路部材と第2の斜路部材を連結する連結手段とを有するスロープ装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
特許文献3において、上記連結手段は、隣接する斜路部材に跨がって延びる垂直な板状部材と、この板状部材を各斜路部材に固定するボルトからなる固定手段とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−143297号公報
【特許文献2】特開2000−335307号公報
【特許文献3】特開2013−47445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3に記載のものにおいては、隣接する斜路部材に跨がって延びる垂直な板状部材をボルトによって各斜路部材に固定する構造であるため、組み立て時の連結作業に手間を要すると共に、使用後の分解作業においても手間を要する懸念がある。
また、連結手段を構成する板状部材は斜路部材の外側面に当接した状態で、ボルトで固定されているため、板状部材とボルトが外部に露出して、体裁も良くない上、車両の走行の振動等によってボルトが緩んでガタツキが生じ、強度が低下する懸念がある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、道路に段差や亀裂等が生じた現場において、複数のブリッジ形成体の組立・分離を容易にすることができ、組立状態において連結を強固にすることができる段差乗り越え用ブリッジを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の段差乗り越え用ブリッジは、対峙する一対の桁部材間に踏板部材が等間隔に配置された複数のブリッジ形成体を、連結部材を介して長手方向に連結した状態で、道路に生じた段差や亀裂等に掛け渡される段差乗り越え用ブリッジであって、 上記ブリッジ形成体は、垂直片の上下端に水平上片及び水平下片を有する断面形状に形成される上記桁部材を具備し、上記桁部材の互いに連結される長手方向の端部における上記垂直片に貫通孔が設けられ、 上記連結部材は、上記水平上片と水平下片間に挿入可能に形成されると共に、上記貫通孔と合致可能な係合孔が設けられ、 隣接する上記ブリッジ形成体の上記水平上片と水平下片間に上記連結部材が挿入された状態で、係止ピンが上記貫通孔及び係合孔を貫通して上記ブリッジ形成体を連結し、上記係止ピンが上記貫通孔及び係合孔から抜き取られた状態で、上記ブリッジ形成体を分離可能に形成してなる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0014】
この場合、上記桁部材は、垂直片の上下端に水平上片及び水平下片を有する断面形状に形成されていれば任意の断面形状でよく、例えば断面が略C字状、略H字状あるいは略I字状のいずれであってもよい。
【0015】
このように構成することにより、隣接するブリッジ形成体の桁部材に設けられた水平上片と水平下片間に連結部材が挿入された状態で、係止ピンをブリッジ形成体に設けられた貫通孔と連結部材に設けられた係合孔に貫通してブリッジ形成体を連結し、ブリッジを組み立てることができる。また、係止ピンを上記貫通孔及び係合孔から抜き取った状態で、ブリッジ形成体を分離可能にすることができる。
【0016】
本発明において、上記桁部材の互いに連結される長手方向の端部の外側に、上記水平上片、水平下片及び垂直片と協働して挿入空間を形成する外壁を設けると共に、上記外壁に上記垂直片に設けられた貫通孔と対応する貫通孔を設け、上記連結部材を、上記挿入空間内に挿入可能に形成するのが好ましい(請求項2)。
【0017】
このように構成することにより、隣接するブリッジ形成体の桁部材に設けられた挿入空間内に連結部材が挿入された状態で、係止ピンをブリッジ形成体の外壁と垂直片に設けられた貫通孔と連結部材に設けられた係合孔に貫通してブリッジ形成体を連結することができる。
【0018】
また、本発明において、上記係止ピンは、上記貫通孔及び係合孔より大径の頭部と、上記貫通孔及び係合孔内を貫通するピン本体と、上記ピン本体の先端側に該ピン本体に対して直交する方向に変位可能に枢着される抜け止め部材と、を具備してなるのが好ましい(請求項3)。
【0019】
このように構成することにより、係止ピンをブリッジ形成体に設けられた貫通孔と連結部材に設けられた係合孔に貫通した状態で、ピン本体に対して抜け止め部材を直交する方向に変位させて、係止ピンが貫通孔及び係合孔から抜け出るのを防止することができる。
【0020】
また、本発明において、上記桁部材の垂直片における対峙する桁部材側の対向面に、上記踏板部材を載置する凸条が長手通しに突設すると共に、上記凸条の下方に凸条より対向面側に突出する厚さを有する補強板を設け、かつ、上記補強板に上記桁部材に設けられた貫通孔と連通する貫通孔を設けるのが好ましい(請求項4)。
【0021】
このように構成することにより、係止ピンを貫通孔及び係合孔から抜き取る際に、補強板によって係止ピンが凸条に当たって凸条が損傷を受けるのを阻止することができる。
【0022】
また、本発明において、ブリッジ形成体は、少なくとも上記段差や亀裂等の一方に接地される第1の端部ブリッジ形成体と、上記段差や亀裂等の他方に接地される第2の端部ブリッジ形成体の2種類でよいが、段差や亀裂等間の距離が長い場合を考慮して、複数のブリッジ形成体は、上記段差や亀裂等の一方に接地される第1の端部ブリッジ形成体と、上記段差や亀裂等の他方に接地される第2の端部ブリッジ形成体と、上記第1の端部ブリッジ形成体と第2の端部ブリッジ形成体との間に配置される少なくとも1つの中間ブリッジ形成体と、を具備するのが好ましい(請求項5)。
【0023】
このように構成することにより、段差や亀裂等の距離に応じて、第1の端部ブリッジ形成体と第2の端部ブリッジ形成体を連結するか、あるいは、第1及び第2の端部ブリッジ形成体間に1つ又は複数の中間ブリッジ形成体を連結してブリッジを組み立てることができる。
【0024】
また、本発明において、上記貫通孔及び係合孔を上記ブリッジ形成体の長手方向に複数設け、それぞれの貫通孔及び係合孔に上記係止ピンを貫通可能に形成する(請求項6)か、上記貫通孔及び係合孔を上記ブリッジ形成体の長手方向に対して直交する上下方向に複数設け、それぞれの貫通孔及び係合孔に上記係止ピンを貫通可能に形成する(請求項7)ようにしてもよい。
【0025】
このように構成することにより、ブリッジ形成体の長手方向又は長手方向に対して直交する上下方向に設けられた複数の貫通孔及び係合孔のそれぞれに係止ピンを貫通して隣接するブリッジ形成体を連結することができる。
【0026】
加えて、本発明において、上記段差や亀裂等に接地される上記ブリッジ形成体の端部下面には、接地面に対して摩擦抵抗の増大を促す滑り止め部が設けられ、上記滑り止め部は、上記ブリッジ形成体の端部下面に散点状に形成されたエンボス模様、上記ブリッジ形成体の端部下面に被覆されるゴム膜又は粘着性樹脂コーティング膜のいずれかで形成されているのが好ましい(請求項8)。
【0027】
このように構成することにより、ブリッジ形成体の端部下面に設けられた滑り止め部が段差や亀裂等の接地面に接してブリッジがずり落ちるのを防止することができる。特に、加重の受け側となる段差や亀裂等の下側のブリッジ形成体の端部下面に設けられる滑り止め部によってブリッジの滑り防止効果が高くなり安全性が向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0029】
(1)請求項1記載の発明によれば、隣接するブリッジ形成体の桁部材に設けられた水平上片と水平下片間に連結部材が挿入された状態で、係止ピンをブリッジ形成体に設けられた貫通孔と連結部材に設けられた係合孔に貫通してブリッジ形成体を連結し、また、係止ピンを上記貫通孔及び係合孔から抜き取った状態で、ブリッジ形成体を分割可能にすることができる。したがって、道路に段差や亀裂等が生じた現場において、ブリッジ形成体の組立・分離を容易にすることができる。また、組立状態において、隣接するブリッジ形成体の水平上片と水平下片間の空間内に連結部材が挿入されているので、連結部材全体が外部に突出することがなく体裁が良い上、ブリッジ形成体の連結を強固にすることができる。
【0030】
(2)請求項2記載の発明によれば、隣接するブリッジ形成体の桁部材に設けられた挿入空間内に連結部材が挿入された状態で、係止ピンをブリッジ形成体の外壁と垂直片に設けられた貫通孔と連結部材に設けられた係合孔に貫通してブリッジ形成体を連結するので、上記(1)に加えて、更に連結部材全体が露出することがなく、体裁が良い上、ブリッジ形成体の連結をより強固にすることができる。
【0031】
(3)請求項3記載の発明によれば、係止ピンが貫通孔及び係合孔から抜け出るのを防止することができるので、上記(1),(2)に加えて、更にブリッジ形成体の連結を確実にすることができる。
【0032】
(4)請求項4記載の発明によれば、係止ピンを貫通孔及び係合孔から抜き取る際に、補強板によって係止ピンが凸条に当たって凸条が損傷を受けるのを阻止することができるので、貫通孔及び係合孔への係止ピンの貫通・抜き取りの繰返し操作によっても凸条が損傷することがなく、桁部材と踏板部材からなるブリッジ形成体を強固な構造とすることができる。
【0033】
(5)請求項5記載の発明によれば、段差や亀裂等の距離に応じて複数のブリッジ形成体を連結してブリッジを組み立てることができるので、段差や亀裂等の大きさに応じて、ブリッジ形成体の数を増やしてブリッジの長さを任意の長さとして利用することができる。
【0034】
(6)請求項6,7記載の発明によれば、ブリッジ形成体の長手方向又は長手方向に対して直交する上下方向に設けられた複数の貫通孔及び係合孔のそれぞれに係止ピンを貫通して隣接するブリッジ形成体を連結することができるので、上記(1)〜(5)に加えて、更にブリッジ形成体の連結を強固にすることができる。
【0035】
(7)請求項8記載の発明によれば、上記(1)〜(6)に加えて、更にブリッジ形成体の端部下面に設けられた滑り止め部が段差や亀裂等の接地面に接してブリッジがずり落ちるのを防止することができる。特に、加重の受け側となる段差や亀裂等の下側のブリッジ形成体の端部下面に設けられる滑り止め部によってブリッジの滑り防止効果が高くなり安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る段差乗り越え用ブリッジの使用状態を示す断面図(a)及び(a)のI部の一部を切り欠いて示す拡大図(b)である。
図2】本発明に係る段差乗り越え用ブリッジの一例を示す平面図(a)、正面図(b)及び右側面図(c)である。
図3】上記ブリッジの端部側の底面図である。
図3A】本発明における別の滑り止め部を用いたブリッジの端部側の底面図である。
図4図2(a)のII−II線に沿う断面図(a)、図2(b)のIII−III線に沿う拡大断面図(b)及び図4(a)のIV部拡大断面図(c)である。
図5】本発明におけるブリッジ形成体の連結部を示す要部正面図(a)及び(a)のV−V線に沿う拡大断面図(b)である。
図6】上記ブリッジ形成体の連結部を示す斜視図(a)及び(a)のVI−VI線に沿う断面図(b)である。
図6A】本発明における連結部材の連結解除後の状態を示す斜視図である。
図7】本発明における連結部材を示す斜視図である。
図8】本発明における係止ピンを示す斜視図である。
図9】上記ブリッジ形成体の別の連結状態を示す要部正面図である。
図10】上記ブリッジ形成体の更に別の連結状態を示す要部正面図(a)及び(a)のVII−VII線に沿う断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、図1に示すように、道路20に生じた段差21に、本発明に係る段差乗り越え用ブリッジ(以下にブリッジ1という)を掛け渡した場合について説明する。なお、ブリッジ1は、段差21の一方の上側21aと他方の下側21bに2本平行に掛け渡されて、各ブリッジ1に車両(自動車)のタイヤが走行可能になっている。
【0038】
上記ブリッジ1は、対峙する一対の桁部材3間に踏板部材4が等間隔に配置された複数のブリッジ形成体2A,2B,2Cと、隣接するブリッジ形成体2A,2B,2Cを連結する連結部材7と、連結部材7とブリッジ形成体2A,2B,2Cを固定する係止ピン5とを具備する。
【0039】
本実施形態では、図1図2及び図4に示すように、複数のブリッジ形成体2A,2B,2Cは、段差21の一方の上側21aに接地される第1の端部ブリッジ形成体2Aと、段差21の他方の下側21bに接地される第2の端部ブリッジ形成体2Bと、第1の端部ブリッジ形成体2Aと第2の端部ブリッジ形成体2Bとの間に配置される中間ブリッジ形成体2Cと、を具備している。
【0040】
ブリッジ形成体2A,2B,2Cを構成する桁部材3は、図4(b)及び図5(b)に示すように、垂直片31の上下端に水平上片32及び水平下片33を有する断面形状のアルミニウム製押出形材にて形成されている。この場合、桁部材3は、外方側が開口する断面略C字状に形成されており、垂直片31の内側面すなわち対峙する桁部材3の対向面には、踏板部材4の端部を載置する凸条34が長手通しに突設されている。なお、垂直片31の内側面における凸条34の下方には凸条34より内方側に突出する厚さを有する補強板35が溶接によって固着されている。
【0041】
また、桁部材3の互いに連結される長手方向の端部の外側には、水平上片32、水平下片33及び垂直片31と協働して略矩形状の挿入空間8を形成する外壁3aが設けられている。この場合、アルミニウム製の板材を桁部材3に溶接することで、外壁3aが設けられる。なお、水平上片32の端部上面にはアルミニウム製の上部補強板3bが溶接によって固着されている。このように、上部補強板3bを設けることによって、連結されたブリッジ形成体2A,2B,2Cの連結部の強度を高めることができる。
【0042】
上記のように形成される桁部材3における上記外壁3aと垂直片31及び補強板35の対応する部位には、係止ピン5が貫通可能な貫通孔9が設けられている。
【0043】
なお、第1の端部ブリッジ形成体2Aは、長手方向の端部側の垂直片31の上部が先端に向かって下り勾配状に切り欠かれ、下り勾配に沿って水平上片32が折り曲げられて溶接されている。また、垂直片31の端部側の下部には、垂直部と水平部を有する段状に切り欠かれて切欠部36が設けられており、切欠部36の下部と第1の端部ブリッジ形成体2Aの先端を覆うアルミニウム製の下面形成部材10Aが溶接によって固着されている。なお、下面形成部材10Aは、下面に散点状に形成されたエンボス模様によって滑り止め部11が形成されている(図3参照)。
【0044】
一方、第2の端部ブリッジ形成体2Bは、長手方向の端部側の垂直片31の上部が先端に向かって下り勾配状に切り欠かれ、下り勾配に沿って水平上片32が折り曲げられて溶接されている。また、第2の端部ブリッジ形成体2Bの先端部には、先端面と下面を覆う断面L字状のアルミニウム製の下面形成部材10Bが溶接によって固着されている。なお、下面形成部材10Bは、下面に散点状に形成されたエンボス模様によって滑り止め部11が形成されている(図3参照)。
【0045】
上記のように、第1及び第2のブリッジ形成部体2A,2Bの端部下面に滑り止め部11を設けることにより、段差21の接地面に接してブリッジ1がずり落ちるのを防止することができる。特に、加重の受け側となる段差21の下側の第2の端部ブリッジ形成体2Bの端部下面に設けられる滑り止め部11によってブリッジ1の滑り防止効果が高くなり安全性が向上する。
【0046】
なお、上記説明では、滑り止め部11が散点状に形成されたエンボス模様によって形成される場合について説明したが、滑り止め部11は必ずしもエンボス模様である必要はなく、図3Aに示すように、第1及び第2の端部ブリッジ形成体2A,2Bの端部下面すなわち下面形成部材10A,10Bに被覆されるゴム膜又は粘着性樹脂コーティング膜等の膜を被覆して滑り止め部11Aを形成してもよい。
【0047】
上記踏板部材4は、例えばアルミニウム製押出形材にて形成されており、図4(c)に示すように、踏み面を形成する水平片4aの両端に一対の脚片4bを有すると共に、水平片4aの下面中央に補強リブ4cが垂設され、水平片4aの上面には互いに平行な複数の滑り止め用凸条4dが設けられている。なお、両脚片4bは、該脚片4bの下端から対向する内方側に向かって折曲片を有する断面L字状に形成されている。また、補強リブ4cは断面逆T字状に形成されている。
【0048】
上記のように形成されるブリッジ形成体2A,2B,2Cは、例えば桁部材3の長さが100cmで、桁部材3間の幅を55cmとして、幅が15cmの4枚の踏板部材4を5cmの間隔をおいて等間隔に配置した構造となっている。なお、上記ブリッジ形成体2A,2B,2Cを構成する桁部材3と踏板部材の4材質や各長さ等は一例であって、用途に応じて任意に選択・設計できることは勿論である。このように上記ブリッジ形成部体2A,2B,2Cの長さを100cm程度とすることにより、パトロール車等にも積載可能となって容易に現場へ持ち込むことができる。
【0049】
上記連結部材7は、上記挿入空間8に挿入可能に形成されると共に、上記貫通孔9と合致可能な2つの係合孔6が設けられている。この場合、図5ないし図7に示すように、連結部材7は、挿入空間8内に摺動可能に挿入される断面略C字状のステンレス製部材にて形成されており、連結部材7の外側開口部7aには板材7bが溶接されている。そして、連結部材7の垂直片と板材7bにおける対向位置には、貫通孔9と合致可能な係合孔6が設けられている。この場合、連結部材7は挿入空間8の高さより若干低い高さを有し、長さは46cmとなっているが、用途に応じて任意に設計できることは勿論である。
【0050】
上記係止ピン5は、図6及び図8に示すように、貫通孔9及び係合孔6の直径より大径を有して、外壁3aに当接可能な頭部5aと、貫通孔9及び係合孔6内を貫通するピン本体5bと、ピン本体5bの先端側に該ピン本体5bに対して直交する方向に変位可能に枢着される抜け止め部材5cと、を具備してなる。この場合、ピン本体5bは円柱状に形成され、先端側にピン本体5bの長手方向に沿う縦溝5dが開口されており、縦溝5dの両側壁を貫通する枢支ピン5eによって板状の抜け止め部材5cがピン本体5bに対して直交する方向に変位可能に枢着されている。
【0051】
上記ブリッジ形成体2A,2B,2Cを連結するには、隣接するブリッジ形成体例えば第1の端部ブリッジ形成体2Aと中間ブリッジ形成体2Cの挿入空間8内に連結部材7を挿入して貫通孔9と係合孔6を合致させた状態で、外側から係止ピン5を貫通孔9及び係合孔6に貫通してブリッジ形成体2A,2Cを連結する。この際、係止ピン5の抜け止め部材5cをピン本体5bに対して直交する方向に変位させることで、係止ピン5が貫通孔9及び係合孔6から抜け出るのを防止することができる。
なお、抜け止め部材が上方側に変位して桁部材3に当たる場合、補強板35が凸条34より突出しているので、凸条34が損傷を受けることはない。
【0052】
上記のようにして、それぞれ隣接するブリッジ形成体2A,2B,2Cの桁部材に設けられた貫通孔9及び連結部材7に設けられた係合孔6に係止ピン5を貫通することで、ブリッジ形成体2A,2B,2Cを連結してブリッジ1を簡単に組み立てることができる。
また、組立状態において、隣接するブリッジ形成体2A,2B,2Cの挿入空間8内に連結部材7が挿入されているので、連結部材7全体が外部に露出することがなく体裁が良い上、ブリッジ形成体2A,2B,2Cの連結を強固にすることができる。
【0053】
一方、隣接するブリッジ形成部体2A,2B,2Cを分離する場合は、係止ピン5を貫通孔9及び係合孔6から抜き取り、連結部材7を隣接するブリッジ形成部体2A,2Cの一方例えば第1の端部ブリッジ形成体2A側へ移動して、第1の端部ブリッジ形成体2Aと中間ブリッジ形成部体2Cを分離する。同様にして、第2の端部ブリッジ形成体2Bと中間ブリッジ形成体2Cを分離する。なお、図6Aに示すように、分離の際に移動された連結部材7は、連結部材7が移動された側の貫通孔9と連結部材7の係合孔6に係止ピン5を貫通させておけば、連結部材7が紛失する心配がない。
【0054】
分離したブリッジ形成部体2A,2B,2Cは、長さが100cm程度と短いので、取り扱い性に優れており、またパトロール車等にも積載可能であるので、どの現場にも容易に持ち込むことができることとなる。
【0055】
なお、ブリッジ形成体2A,2B,2Cの連結と分離を繰り返して行うには、その都度、係止ピン5を貫通孔9及び係合孔6に対して貫通、抜き取りする。係止ピン5を抜き取る際、係止ピン5の先端部例えば抜け止め部材5cが凸条34に当たると凸条34が損傷を受ける虞があるが、凸条34の下方に凸条34より対向面側に突出する厚さを有する補強板35が設けられているため、係止ピン5が凸条34に当たって凸条34が損傷を受けることがない。
【0056】
なお、上記実施形態では、ブリッジ形成部体2A,2B,2Cの桁部材3の端部側に1つの貫通孔9を設け、連結部材7に2つの係合孔6を設けた場合について説明したが、図9に示すように、桁部材3の端部側に、ブリッジ形成部体2A,2B,2Cの長手方向に複数例えば2つの貫通孔9a,9bを設け、連結部材7に4つの係合孔6a,6a,6b,6bを設けてもよい。また、これに代えて、図10に示すように、ブリッジ形成部体2A,2B,2Cの長手方向に対して直交する上下方向に複数例えば2つの貫通孔9c,9dを設け、連結部材7にそれぞれの貫通孔9c,9dに合致する4つの係合孔6c,6c,6d,6dを設けてもよい。
【0057】
このように、貫通孔9a〜9dと係合孔6a〜6dを設け、それぞれに係止ピン5を貫通することによって、ブリッジ形成部体2A,2B,2Cの連結を更に強固にすることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、3つのブリッジ形成体2A,2B,2Cを連結する場合について説明したが、段差や亀裂等の大きさに応じて、ブリッジ形成部体2A,2B,2Cの枚数を増減することができる。例えば、段差や亀裂等の大きさが4m以上の場合には、中間ブリッジ形成体2Cの数を増やしてブリッジ1の長さを4m以上の任意の長さにする。また、逆に、段差や亀裂等の大きさが3m以下の場合には、第1の端部ブリッジ形成体2Aと第2の端部ブリッジ形成体2Bを連結してブリッジ1の長さを3m以下にすることができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、桁部材3が断面略C字状に形成される場合について説明したが、桁部材3は垂直片31の上下端に水平上片32及び水平下片33を有する断面形状であればよく、例えば断面略H字状あるいは断面略I字状であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、桁部材3の長手方向の端部の外側に、水平上片32、水平下片33及び垂直片31と協働して挿入空間8を形成する外壁3aを設ける場合について説明したが、必ずしもこのような構造でなくてもよい。例えば、外壁3aを設けずに、水平上片32と水平下片33の間の空間内に連結部材7を挿入させて、係止ピン5を垂直片31に設けられた貫通孔9及び連結部材7に設けられた係合孔6に貫通してブリッジ形成体2A,2B,2Cを連結してもよい。
【0061】
この場合においても、連結部材7は水平上片32と水平下片33との間の空間内に挿入されるので、連結部材7が外部に突出することがなく、体裁が良い上、ブリッジ形成体2A,2B,2Cの連結を強固にすることができる。
【0062】
次に、本発明に係る段差乗り越え用ブリッジの使用例について説明する。
例えば、地震等の災害が発生して道路に大きな崩壊等が発生すると、道路管理会社のパトロール車は一刻も早く災害発生現場へ到着して、事故の状況を把握する必要がある。この場合、現場へ行くまでの道路の途中にも、多数の段差21(亀裂も含む)が発生していることが多い。このとき、パトロール車に搭載されたブリッジ形成体2A,2B,2Cを現場で連結して所望の長さのブリッジ1とし、段差21にセットすれば、タイヤ通過用の簡易道が形成されて、車両は簡単に段差21を乗り越えて先へ進むことが可能となる。
【0063】
また、段差21の乗り越え後は、ブリッジ1を分離してブリッジ形成体2A,2B,2Cとして回収し、パトロール車に積み込んで先へ進み、以後、同様にして段差21を乗り越えながら自力で、短時間かつ最も少ない作業量で目的地へ到達することができる。
しかも、ブリッジ形成体2A,2B,2Cの連結及び分離作業は係止ピン5の貫通作業のみであり、また、何の工具も必要としないため、誰でも容易かつ短時間に行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ブリッジ
2A 第1の端部ブリッジ形成部体
2B 第2の端部ブリッジ形成部体
2C 中間ブリッジ形成部体
3 桁部材
3a 外壁
31 垂直片
32 水平上片
33 水平下片
34 凸条
35 補強板
4 踏板部材
5 係止ピン
5a 頭部
5b ピン本体
5c 抜け止め部材
6,6a〜6d 係合孔
7 連結部材
8 挿入空間
9,9a〜9d 貫通孔
11,11A 滑り止め部
20 道路
21 段差
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図6A
図7
図8
図9
図10