【実施例】
【0015】
日本では、昭和55年以前の高度経済成長期に、多くの建築物が建設され(いわゆる建築ラッシュ)、これに伴い多くの防火水槽や貯水槽等の地下水槽が地中に埋設されたが、近年、これらは長い年月を経て耐久限度に達しつつあり、漏水や崩落の危機にあるものが多いと言われている(このような地下水槽を原容積構造体と称し、符号「A1」を付す)。本発明は、例えば
図1・
図2に示すように、上記のような原容積構造体A1の内側に新たな水槽を造り(これを補修容積構造体と称し、符号「A」を付す)、原容積構造体A1と補修容積構造体Aとの間(空隙)にモルタル系充填材2を充填し、原容積構造体A1を補修し、貯水槽(貯液槽)としての機能を再生するものである。
【0016】
このように本発明の「地中埋設された容積構造体の補修構造」は、原容積構造体A1に対し、その内部に補修容積構造体Aを液密状態に設け、補修容積構造体Aにおける外殻面を、原容積構造体A1の内壁面(内側表面)にほぼ沿うように配設するものであり、これは言わば補修容積構造体Aと原容積構造体A1とを型枠、すなわち原容積構造体A1を外枠とし、補修容積構造体Aを内枠として、その間にモルタル系充填材2を充填する構造である。
なお、以下の説明では、上記
図1に示すように、主に原容積構造体A1として円筒状のものを例に挙げて説明するが、原容積構造体A1は直方体のものでも構わない。
【0017】
補修容積構造体Aは、分割構成された複数基の補修要素体1を組み合わせて、組み付けられるものであり、その組み付けにはボルト・ナットによる締結手段3が適用され、また内枠を構成する各補修要素体1の面部材(後述する天面板11、底面板12、外側板13など)が、溶接(例えばアーク溶接など)によって液密状に接合される。ここで、締結手段3としては、
図1に示すような通常の六角ボルト・六角ナットの他、蝶ボルト・蝶ナット、六角穴付きボルト等、種々のボルト・ナットを適用することが可能である。
なお、本実施例では補修容積構造体Aが円筒状であることに因み、一基の補修要素体1は、平面視円形を成す補修容積構造体Aの中心から60度ずつ等分(六等分)された扇形に形成される(すなわち、一基の補修要素体1は、円筒状の補修容積構造体Aが縦方向に六等分された形状と成る)。因みに、本明細書に記載する「縦方向」とは、原容積構造体A1の埋設方向(設置方向)であり、ここではほぼ鉛直方向(円筒の長さ方向)となる。また、これは特許請求の範囲に記載する「縦割り」についても同じ方向を意味する。
【0018】
以下、補修要素体1について更に詳細に説明する。
補修要素体1は、一例として
図1に示すように、天面板11と底面板12と外側板13とを具えて成り、これらが溶接等で一体的に形成される。一基の補修要素体1は、本実施例では一例として
図3に示すように、側断面視で「コ」字状を成す立体形状として形成され、一基ずつ(一ピースずつ)原容積構造体A1の内部に搬入される。
また、天面板11と底面板12と外側板13は、一定の板厚を有する鋼板等の板材で形成される。そして、天面板11と底面板12そのものは、ほぼ同一の略扇形を成すように形成され、特にここでは上述したように中心角60度の略扇形に形成される。ここで「略(扇形)」としたのは、上記
図1(c)・
図3に示すように、扇形の中心側先端部を幾らか切り欠いておくためであり、その理由は、例えば
図4(a)に示すように、立体形成した補修要素体1を原容積構造体A1の内部に搬入する場合、中心側先端部を幾らか切り欠いておくことにより、原容積構造体A1に干渉する恐れが低くなり(ほぼなくなり)、搬入作業が能率的に行えるためである。また、略扇形を成す天面板11と底面板12の中心側先端部を鋭角(いわゆるピン角)に形成しておくと、この部位が全ての補修要素体1(ここでは六ピース)に突き当たるようになるため、その合わせ(いわゆる収まり)が極めて難しく、例えば最後の補修要素体1を搬入した場合に中心側先端部が干渉してしまい、全ての補修要素体1の収まりが不安定になることが懸念される。
【0019】
なお、天面板11と底面板12において切り欠かれた中心側先端部には、後に塞ぎ板14が取り付けられ(溶接され)、中心側先端部を切り欠いたことによって生じる孔が液密状に塞がれる。因みに、特許請求の範囲に記載する「(補修容積構造体の)外殻面」とは、天面板11、底面板12、外側板13、塞ぎ板14等で液密状(密封状)に形成される補修容積構造体Aの外側表面を意味する。
また外側板13は、天面板11と底面板12とにおける、略扇形の円弧部分(上下)を連結する部材であり、曲面状に形成される。
なお、天面板11、底面板12、外側板13には適宜補強が施されるため、以下、このような補強構造について説明する。
【0020】
まず天面板11と底面板12とに施す補強構造について説明する。
天面板11及び底面板12においては、一例として
図1・
図3に示すように、略扇形を形成する二つの半径部分に沿って補強部材が取り付けられ、この補強部材を縁補強11F・12Fとし、ここでは断面「L」字を成す山形鋼(アングル材)が用いられる。
なお、隣接する補修要素体1同士は、上述したようにボルト・ナットによる締結手段3によって組み付けられるものであり、このためのボルト挿通孔3hが、この縁補強11F・12Fに開口される。
また、この縁補強11F同士(12F同士)の途中部分を連結するような補強部材が、一例として二本取り付けられ、これは略扇形を成す天面板11及び底面板12を横断するような周方向(弦方向)に取り付けられ、この部材を骨補強11B(12B)とする。なお、この骨補強11B・12Bについても、ここでは断面「L」字を成す山形鋼(アングル材)が用いられる。
因みに、縁補強11F・12F及び骨補強11B・12B等の補強部材は、貯水空間の内側に設けられる。すなわち補強部材は、底面板12に対しては上部に設けられ、天面板11に対しては下部に設けられ、このように補強部材を補修容積構造体Aの内側空間に設けるのは(原容積構造体A1と補修容積構造体Aとの間に設けないのは)、外側板11についても同様であり、これは原容積構造体A1と補修容積構造体Aとの間に充填するモルタル系充填材2を空隙の隅々まで行きわたらせるためである。
【0021】
次に、外側板13に施す補強構造について説明する。
外側板13については、一例として
図1・
図3に示すように、このものの縦と横(弧)のほぼ真ん中を通過するように補強部材を取り付けるものであり、これらを各々、縦骨補強13V・横骨補強13Hとし、本実施例ではどちらも一定厚さの板状部材が用いられる。
なお、ここでも「縦」は、原容積構造体A1の埋設方向(設置方向)を示し、本実施例では、ほぼ鉛直方向(円筒の長さ方向)となり、「横」は、この縦方向に直交する方向(周方向)となる。
また、このようなことから縦骨補強13Vは直線状に形成され、横骨補強13Hは曲線状(弧状)に形成され、これらは途中で交差(直交状態に交差)するように構成される。
【0022】
また、外側板13は、周方向の長さ(扇形の弧の長さ)が、天面板11及び底面板12の周方向長さと同じ寸法に形成されながらも、一例として
図3に示すように、外側板13の接続端部側を、天面板11及び底面板12の形成範囲から張り出すようにずらして形成される。
これは外側板13同士の接続部(溶接部)を、天面板11及び底面板12の端部からずらすことで、外側板13同士の溶接部が、天面板11及び底面板12の端部(縁補強11F・12F)に掛からないようにし、外側板13同士の接続部を全て溶接するためである。
また外側板13における接続端部の外周側には、短い幅寸法(周方向寸法)の突き当てガイド板131を設けるものであり、この突き当てガイド板131の縦方向寸法(軸方向寸法)は、外側板13とほぼ同じ長さ寸法に形成される。
【0023】
このように本実施例では、外側板13における接続端部の外周側に、更に突き当てガイド板131を設けるものであり、これにより接続端部に段差が形成され、この段差によって、隣接する外側板13(接続される外側板13)の一端部を係止(位置決め)する構造となっている。なお、特許請求の範囲に記載する「相じゃくり状」とは、このような段差によって隣接する外側板13を係止(位置決め)することを指している。因みに、「相じゃくり(加工)」とは、通常、突き合わせ状態に接ぎ合わせる板同士の端部を、板厚の半分ずつ欠き取って、板同士を板厚で接ぎ合わせる構造(加工)を言い、上記突き当てガイド板131の作用が、これに似ているため、「相じゃくり状」と称したものである。
【0024】
また、上記突き当てガイド板131は、隣接する外側板13の係止(位置決め)作用を担うだけでなく、溶接時のチルプレートとしても機能する。すなわち、外側板13同士は、上述したように組み付け後、補修容積構造体Aの内側から施される溶接によって接合されるが、この溶接時に、外側板13だけでなく、裏面に設けたチルプレートとしての突き当てガイド板131まで溶かし込むことにより、充分な溶接厚さを確保するものであり、これにより外側板13同士をより強固に且つ確実に接合することができる(より高い液密状態が確保できる)。
因みに、外側板13同士の溶接をはじめ、天面板11同士の溶接、底面板12同士の溶接、あるいは外側板13を張り出し形成したことによる外側板13の張り出し部と底面板12との溶接等は、上述したように組み付け後の補修容積構造体Aの内側からしか行えず、外側板13を天面板11及び底面板12に対し張り出させて設けることや、外側板13における接続端部の外周側に突き当てガイド板131を設けること等は、このような内側からの溶接でも外側板13同士を液密状に溶接するための工夫である。
【0025】
また外側板13の接続端部を天面板11及び底面板12の形成範囲から張り出すようにずらしたことに伴い、外側板13の横骨補強13Hは、接続端部の反対側(これを接続対向側とする)が、一例として
図3に示すように、外側板13の端縁から張り出すように形成される。
また、この横骨補強13Hが、外側板13の接続対向側の短縁と交差する部位には、切り欠きHCが形成される。この切り欠きHCは、補修容積構造体Aの内側から外側板13同士を溶接する際、接続部の全てにわたって(上から下まで全て)溶接を行うための構成である。すなわち、この切り欠きHCによって、上記交差部分でも未溶接箇所を発生させないものである。
【0026】
また、このような構成上、天面板11同士の溶接部位と、底面板12同士の溶接部位ととは、
図4(b)に示すように、補修要素体1の平面視で同じ角度位置となるが、天面板11及び底面板12に対し外側板13をずらすようにしたことに伴い、これらと外側板13同士の溶接部位とは異なる角度位置となる(角度差が生じる)。
【0027】
また、補修要素体1には、一例として
図1(a)・
図3に示すように、縁補強11F・12Fを介して天面板11と底面板12とを連結する補強部材が取り付けられ、これを柱補強15とする。この柱補強15としては、例えば断面矩形状の角パイプ材が適用され、天面板11及び底面板12における骨補強11B・12Bと、縁補強11F・12Fとの交差部分同士を縦に連結するように設けられる。
【0028】
また補修要素体1の底部(接地部)には、一例として
図2(b)に示すように、原容積構造体A1の内部に搬入した後の補修要素体1を、原容積構造体A1の内部で自由に移動させることができる搬送体16を設置することが好ましく、これにより例えば人力でも補修要素体1を適宜の位置に移動させることができる。すなわち、補修要素体1は一基でも(六等分したうちの一基)、約1.3トンという相当な重量があるが、搬送体16を設けておくことで、原容積構造体A1が限られた狭い内部であっても、重い補修要素体1を所望の位置に自由に移動させることができ、スムーズに組み付け作業に移行できる。
【0029】
なお、搬送体16としては、ボール、ローラ、ベアリング等を転動させて移動させるキャスタータイプのものが挙げられる他、スライダーボードを適用することもでき、この場合には、例えば原容積構造体A1の床面に予めスライダーボードを敷設しておき、この上に補修要素体1を搬入した後、スライダーボード上を滑らせて補修要素体1を所望の位置に移動させることが可能である。
因みに搬送体16は、補修要素体1(補修容積構造体A)とともにモルタル系充填材2によって固められ、埋設されるものである(モルタル系充填材2を注入する前に取り出すことはしない)。
【0030】
また、
図2(b)に示す符号17は、補修要素体1の周囲に、縦に配置される電食棒(電気防食用の金属棒)であり、これは一例として12本、等角度間隔に配置される(いわゆる12等配)。すなわち、土中等の電解質中に設置される被防食体としての補修要素体1よりもマグネシウム等のイオン化傾向の大きい金属を接続し、両者間の電位差を利用して補修要素体1に防食電流を流す方式であり、このための金属が上記電食棒である(いわゆる流電陽極方式)。
因みに、補修容積構造体Aは、直接、土中に埋設されるのではなく、モルタル系充填材2を介して埋設されるため、このモルタル系充填材2によって電食が防止できる場合には、電食棒17は必ずしも設ける必要はない。
【0031】
補修要素体1は、以上のような基本構造を有するものであり、一基のユニット化、すなわち補強構造が施された天面板11・底面板12・外側板13を、柱補強15とともに、側断面視、「コ」字状に立体形成する作業は、補修要素体1を補修現場(原容積構造体A1の埋設場所)に運搬する前に別途工場などで行っておくことが好ましい。これは、換言すれば、望ましくは、補修要素体1を断面「コ」字状に立体形成した状態で施工現場に運搬するものであり、その後、現場で補修要素体1を一基ずつクレーン等で吊り上げて、原容積構造体A1の内部に搬入して行くものである。なお、搬入後に、各補修要素体1を接続する作業及び天面板11・底面板12・外側板13等の隣接する板部材同士の溶接作業を行うにあたっては、原容積構造体A1と補修容積構造体Aとの間隙が極めて狭く、とても人が入り込めるような空間は確保できないため(補修容積構造体Aの容積確保の目的)、当然ながら補修容積構造体Aの内側から行うことになり、上記作業も当然、補修容積構造体Aの内側から行うことを前提として設計・考慮される。
【0032】
ここで上記説明では天面板11と底面板12と外側板13とを当初から別々に形成し、これらを溶接等で一体化するように説明したが、例えば当初から天面板11と底面板12と外側板13とがつながった一枚の板材を、断面「コ」字状に折り曲げて形成することも可能であり(文字通りの一体形成)、特許請求の範囲に記載する「一体的(に形成)」とは、このような場合も包含する。
【0033】
次に、劣化した原容積構造体A1を、上記補修容積構造体A(複数基の補修要素体1)を適用して補修する方法の一例について説明する。
この方法は、
(1)要素準備工程と、
(2)天面除去工程と、
(3)要素搬入工程と、
(4)要素組立工程と、
(5)要素溶接工程と、
(6)空隙充填工程と、
(7)埋戻し工程
とを含むものである。
【0034】
なお、実質的な補修作業に先立ち、当然、補修対象となる原容積構造体A1の老朽程度や劣化箇所等は、事前に調査・検討されるものであり、例えば小さな亀裂や凹凸などが原容積構造体A1の内壁面にあれば、モルタルやパテ等を用いて、このような部位を補修しておくことが好ましい。因みに、このような下地調整とも言うべき事前処理を行うことによって、原容積構造体A1の内壁面がほぼ平滑になり、後に原容積構造体A1と補修容積構造体Aとの間(空隙)に充填するモルタル系充填材2が、当該空隙内の隅々にまで到達し易くなり、充填不良が防止できる。
また、このような事前調査で、原容積構造体A1の劣化が著しく、原容積構造体A1自体の強度が極端に低下している場合には、当然、本発明の補修方法は適用されず、原容積構造体A1自体が、ある程度の強度や耐久性を備えているものに当該補修方法が適用される。
更に、上記事前調査では、原容積構造体A1の現状、例えば上部に建物や外階段等が存在するか、またどの程度掛かっているのか、あるいはどの程度の作業用開口Pが開口できるのか等の調査・検討も併せて行われる。
以下、本補修方法における上記(1)〜(7)の各工程毎に説明する。
【0035】
(1)要素準備工程
要素準備工程では、補修対象となる原容積構造体A1の大きさや形状あるいは原容積構造体A1がどの程度の地中深さに埋設されているか等の埋設状況、更には原容積構造体A1の上に何が存在するのか(例えば建物、外階段、道路等)の周辺環境、また場合によっては埋設土壌の地質や硬さ等も考慮して、補修容積構造体Aの仕様、及び補修容積構造体Aをどのように分割するのかや、何基に分割するのか等を割り出し、これに基づき天面板11、底面板12、外側板13や各種補強部材の仕様が決定され、この仕様に基づいて各構成部材が設計・製作され、各補修要素体1毎にユニット化される(本実施例では側断面視「コ」字状に立体形成される)。
この補修要素体1のユニット化(一基のユニット化)は、上述したように、各々、補強構造が施された天面板11・底面板12・外側板13を、柱補強15とともに溶接等により一体的に接合するものであり、これは上述したように補修現場(原容積構造体A1の埋設場所)ではなく、別途工場などで行っておくことが好ましい。
【0036】
また、天面板11・底面板12・外側板13・柱補強15は、ユニット化する以前の段階で、既に表面に防錆処理が施されていることが望ましい。もちろん、このような防錆処理は、全ての補修要素体1を補修容積構造体Aとして、原容積構造体A1の内部で組み付けた後(溶接後)に、補修容積構造体Aの内側表面に施すことも可能である。
また、マンホールHが取り付けられる補修要素体1については、この要素準備工程で天面板11にマンホールH用の孔を開口しておき、更にはここに円筒状のマンホール接続路Rを溶接等で接合しておくことが好ましい。もちろん、天面板11へのマンホールH用の孔開け、及びマンホール接続路Rの溶接(接合)は、必ずしもこの段階で行う必要はなく、補修要素体1を補修容積構造体Aとして円筒形に組み付けた状態で行っても構わない。
因みに、例えば
図2(b)中、補修容積構造体Aの床面においてマンホールHの下方に形成されている凹陥部は、地下水槽(補修容積構造体A)内の水(液体)を全て吸水する際の集水ピットTである。
【0037】
(2)天面除去工程
一方、このような要素準備工程に伴い(要素準備工程の前後または同時並行で)、施工現場では、原容積構造体A1の上部を開放する天面除去工程が実施される。この工程は、一例として
図5に示すように、原容積構造体A1の上部を覆っている土砂及び原容積構造体A1の上部(天井)の一部を、少なくとも補修要素体1が上方から搬入できる大きさに除去して、工事用開口Pを形成する工程である。なお、ここでは原容積構造体A1の上部を半分程度、開口するようにしているが、工事用開口Pの大きさは補修要素体1の大きさや作業性等を考慮して適宜決定される。
また、原容積構造体A1の上部を覆っている土砂の除去や原容積構造体A1の上部(天井)の部分的な破壊(崩壊)は、パワーシャベルや、このもののアーム先端に油圧ブレーカをアタッチメントとして付け替えた重機(建設機械)を適用することができる。
因みに原容積構造体A1の上部を破壊する際には、最初にマンホールHから網を原容積構造体A1の内に入れておき、これを内部で広げてから上部(天井)を壊すと、崩壊した破片が、ほぼ網の中に収まるため、後はこの網をクレーンなどで吊り上げて、破片を外に運び出すことができ、能率的に作業が行える。
【0038】
(3)要素搬入工程
要素搬入工程は、一例として
図6(a)に示すように、前記工事用開口Pから補修要素体1を原容積構造体A1の内部に一基ずつクレーン等で吊り上げながら搬入する工程である。
ここで本実施例では、一例として
図3に示すように、補修要素体1において平面視扇形を成す天面板11及び底面板12の中心側先端部が幾らか切り欠かれているため、半円程度の作業用開口Pでも補修要素体1の平面投影形状(扇形)が、この作業用開口P内に充分収まり、補修要素体1を原容積構造体A1の内部に搬入する(降ろす)際、補修要素体1が原容積構造体A1に接触することなく、確実に搬入することができる(
図4(a)参照)。
【0039】
なお、補修要素体1の搬入においては、一基目の補修要素体1を原容積構造体A1の内部に搬入したら(降ろしたら)、続く二基目の補修要素体1が搬入し易いように、一基目の補修要素体1を、例えば
図6(b)に示すように、人力等により原容積構造体A1の奥側に押し込み、工事用開口Pの直下に一基目の補修要素体1が存在しないようにしておくものである(
図6(c)参照)。このようにすることで、二基目の補修要素体1が、一基目の補修要素体1と干渉することなく、二基目の補修要素体1を確実に原容積構造体A1内に搬入する(降ろす)ことができる。
もちろん二基目の補修要素体1を搬入したら、二基目の補修要素体1も、一基目の補修要素体1と同様に奥側に押し込み(工事用開口Pを開放するようにしておき)、一基目の補修要素体1の隣接位置に配置する。この際、二基目の補修要素体1を、一基目の補修要素体1に対し、ボルト・ナットによる締結手段3で仮止め(仮締め)しておくことが好ましい。このようにすることで、一基目の補修要素体1が、二基目の補修要素体1の位置決め作用、または仮止め治具の機能も果たす。また、このような搬入・押し込み・仮止め作業は、全ての補修要素体1が原容積構造体A1の内部に収容するまで順次繰り返される。
【0040】
なお、原容積構造体A1内に最後に搬入する(降ろす)補修要素体1は、マンホールH付きのものであり、これは搬入の最終段階では、作業用開口Pに原容積構造体A1を一基のみ降ろす開口(空間)が開き、マンホールH付きの補修要素体1は原容積構造体A1の内部に押し込まないためである。もちろん、全ての補修要素体1を原容積構造体A1の内部に搬入した後、マンホール接続路R及びマンホールHを取り付ける場合には、最終的に作業用開口Pに臨む補修要素体1(最後に搬入した補修要素体1)に、これらを取り付ければよく、補修要素体1を搬入する順序は特に関係ない。
【0041】
(4)要素組立工程
要素組立工程では、原容積構造体A1の内部に搬入した全ての補修要素体1をボルト・ナットによる締結手段3により本締めし、組立完成状態とする。
ここで上記説明では仮止め(仮締め)を行った後、本締めという工程を採っており、このような工程を経ることで、本締め段階で補修要素体1の微調整が行い易くなるものである。もちろん、上記要素搬入工程で各補修要素体1を互いに当接位置(隣接位置)に配置するだけで、各補修要素体1の位置決めが行え(隣接位置に確実に配置でき)、本要素組立工程でボルト・ナットによる締結が円滑に行える場合には、上記要素搬入工程での仮止めは必ずしも必要ない。
【0042】
(5)要素溶接工程
要素溶接工程では、各補修要素体1における天面板11・底面板12・外側板13同士を隣り合う接続位置で、補修容積構造体Aの内側から溶接し、内枠となる補修容積構造体Aを液密状に形成する。もちろん、各補修要素体1を溶接した後は、補修容積構造体Aの中央上下が塞ぎ板14で閉鎖・溶接され、これにより補修容積構造体AはマンホールH以外が密閉(密封)された空間となる。
なお、上記要素準備工程において、供給される天面板11・底面板12・外側板13等に防錆処理が施されていない場合には、溶接後のこの段階で補修容積構造体Aの内側から防錆処理を施すことが可能である。
因みに、溶接等の作業を終了した作業者は、マンホールHから地上に出るものである。
【0043】
(6)空隙充填工程
空隙充填工程では、モルタル系充填材2を、原容積構造体A1と補修容積構造体Aとの空隙に流し込み、充填する。これは上述したように、あたかも原容積構造体A1と補修容積構造体Aを型枠として、すなわち原容積構造体A1を外枠、補修容積構造体Aを内枠として、その間にモルタル系充填材2を充填する工程であり、このために内枠として機能する補修要素体1を、上記のように液密状の補修容積構造体Aとして形成したものである。
【0044】
(7)埋戻し工程
埋戻し工程では、前記原容積構造体A1の天井部を部分的に壊して形成した工事用開口Pを、コンクリートの打設により塞ぎ、更にその上方に土砂を被せて埋め戻し、現状復帰させる。このような工程を経ることで、原容積構造体A1は、内側に補修容積構造体Aを具えた、言わば二重殻構造の貯水槽としての補修が完了となる。
【0045】
〔他の実施例〕
本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、全て同じ仕様の補修要素体1に均等に分割したが、作業用開口Pを比較的大きく開口することができるのであれば(原容積構造体A1の上部(天井)の半分より大きいサイズで、一例として中心角200度程度の扇形の開口)、例えば一基目に搬入する補修要素体1としては、平面視で中心角180度程度の扇形とすることが可能である。また、これに続いて二基目に搬入する補修要素体1としては、平面視で中心角120度程度の扇形とし、最後に搬入する三基目の補修要素体1として、平面視で中心角60度程度の扇形に形成することが可能である。このようにすることで、原容積構造体A1が狭い密閉空間である場合、この空間内での接続作業や溶接作業を減らすことができる。このように複数基の補修要素体1は、原容積構造体A1の内部空間に補修要素体1が収まるに従い、平面視での中心角を小さくするように形成することが可能であり、必ずしも全ての補修要素体1を同一の仕様に形成する必要はない。なお上記のように補修要素体1の平面視角度(中心角角度)を約180度、120度、60度と各々別々のサイズに分けて形成することも、特許請求の範囲に記載する「分割」に含まれ、必ずしも「等分(に分割)」を指すものではない。もちろん、作業用開口Pを比較的大きく開口することができるような場合には、補修容積構造体Aを均等に二等分する構成、すなわち各補修要素体1の平面視の中心角を180度とした二分割構成とすることも可能である。
【0046】
また、先に述べた基本の実施例では、個々の補修要素体1については、平面視、扇形を成すように形成した。つまり外側板13が円弧状の板(曲板)となるように形成した。これは各補修要素体1を組み付けた際の補修容積構造体Aの容積(貯水量)を極力向上させるためである。しかしながら、補修要素体1の構造そのものとしては、この外側板13は、必ずしも円弧状(曲板状)に形成する必要はなく、平面視で弦のような線分(直線)として形成することも可能であり、その場合、一つひとつの補修要素体1は、フラットな外側板13を有し、平面視三角形状に形成される。
【0047】
更に、先に述べた基本の実施例では、原容積構造体A1として円筒状のものを例示したが、原容積構造体A1としては、例えば
図7に示すように、直方体状のものを補修対象とすることも可能である。
なお、ここでは原容積構造体A1の態様から、補修容積構造体Aを縦割りで長手方向に三分割した補修要素体1を想定している。因みに、上記基本の実施例では、原容積構造体A1が円筒状であることから、複数基の補修要素体1は、最終的に無端状に連結される構成としたが、ここでは複数基の補修要素体1が、無端状に連結されるのではなく、両端部に位置する補修要素体1が出現し、従って両端部に位置する補修要素体1と、それ以外の補修要素体1とでは仕様を異ならせるものである。具体的には、まず両端部に位置しない補修要素体1(ここでは真ん中の補修要素体1)は、外側板13が対向的に二枚配置され、側断面視で「ロ」字状となる。一方、両端部に位置する補修要素体1は、これと同じ仕様では、両端部が開口状態になってしまうため(液密状にならないため)、例えば本
図7に併せ示すように、開口端部となる部位に、端面板18が設けられ、密閉状に溶接される(塞がれる)。もちろん、この端面板18にも、適宜の補強構造を施すことが好ましいが、天面板11・底面板12・外側板13や、これらの補強部材との干渉は回避するように構成される。例えば、端面板18と接続される外側板13は、天面板11及び底面板12からの張り出しが生じないように形成される等、この場合も補修容積構造体Aが原容積構造体A1の内側で液密状の内枠を形成するように構成される。
なお、原容積構造体A1が直方体状を成す場合には、内部空間のサイズ等にもよるが、補修要素体1は、外側板13が対向的に二枚配置されることから、柱補強15は省略することができる。