特許第6498188号(P6498188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498188
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】調整可能なレンズ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20190401BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   G02B7/04 E
   G02B7/02 B
【請求項の数】19
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-520151(P2016-520151)
(86)(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公表番号】特表2016-535294(P2016-535294A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】EP2014071541
(87)【国際公開番号】WO2015052236
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】13187802.7
(32)【優先日】2013年10月8日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518044871
【氏名又は名称】オプトチューン コンシューマー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】アシュヴァンデン マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲッベルズ ピット
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−133210(JP,A)
【文献】 特開2009−251244(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0128357(US,A1)
【文献】 特開平04−076525(JP,A)
【文献】 特開2009−168971(JP,A)
【文献】 特開2013−085331(JP,A)
【文献】 特開2008−058391(JP,A)
【文献】 特開2006−330321(JP,A)
【文献】 特開2000−221421(JP,A)
【文献】 特開2010−113358(JP,A)
【文献】 特開2011−253586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐ 透明で弾性膨張可能な膜(10)と、
‐ 前記膜(10)と向き合う光学素子(20)と、
‐ 壁部材(300)であって、体積(V)が形成されるように前記光学素子(20)及び前記膜(10)が前記壁部材(300)に結合される、壁部材(300)と、
‐ 前記体積(V)内に存在する流体(F)と、
‐ 前記膜(10)に取付けられたレンズ成形部材(11)と、を備えるレンズ装置であって、
前記レンズ成形部材(11)を前記光学素子(20)に対して軸方向(A)に移動させて前記体積(V)の中に存在する前記流体(F)の圧力及びそれにより前記膜(10)の曲率を調節するように設計されたアクチュエータ手段(40)を備え、前記軸方向(A)は、前記光学素子(20)に沿って広がる平面に垂直に向けられ、及び、前記体積(V)を透過する光を偏向させるために前記体積(V)をプリズムに形成するように、前記アクチュエータ手段(40)は、前記レンズ成形部材(11)を前記平面に対して傾斜させるように設計され
前記レンズ成形部材(11)は、前記膜(10)の光学的活性且つ弾性膨張可能な領域(10c)の範囲を定め、前記弾性膨張可能な領域(10c)は、前記レンズ成形部材(11)の内縁まで延び、及び前記弾性膨張可能な領域(10c)は、調節される前記膜(10)の前記曲率を備え、
前記壁部材(300)は、プレート(300)の第1側面(300a)から前記プレート(300)の第2側面(300b)まで延びる連続的窪み(301)を有するプレートによって形成され、前記第2側面(300b)は前記第1側面(300a)から離れる方向を向き、前記光学素子(20)が前記第1側面(300a)に結合され、及び、前記膜(10)が前記第2側面(300b)に結合され、
前記アクチュエータ手段(40)は、複数の磁石(300、303)を備え、
前記アクチュエータ手段(40)は、複数のコイル(400、403)を備え、各々の磁石(300、303)に対して、前記複数のコイル(400、403)の異なるコイルが関連付けられ、前記各コイルは、前記平面又は前記光学素子(20)に対して垂直に動く、コイル軸の周りに巻かれた導線を備え、前記各コイル(400)は、前記各磁石に沿って延び、及び前記各磁石と向き合い、その結果、電流が前記各コイル(400、403)に印加されると、前記各磁石(300、303)と前記各コイル(400、403)とに、前記各コイル(400、403)中の前記電流の向きに応じて、互いに引き合うか又は互いに反発させることをもたらすローレンツ力が生成される、ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ手段(40)は、前記レンズ成形部材(11)を軸方向に移動させると同時に傾斜させるように設計されることを特徴とする、請求項1記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ手段(40)は、前記レンズ成形部材(11)に作用して前記レンズ成形部材(11)を軸方向に移動させ、及び前記レンズ成形部材(11)を傾斜させるように設計されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記レンズ装置(1)は、前記レンズ成形部材(11)の空間位置を検出するための位置センサ手段(60)を備えることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記光学素子(20)は透明であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記各磁石(300、303)は第1側面及び第2側面(300a、300b;303a、303b)を備え、前記第2側面(300b、303b)は前記第1側面(300a、303a)から離れる方向を向く、ことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記磁石(300)は、前記平面に垂直に、前記軸方向(A)に磁化されることを特徴とする、請求項記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記コイル(400、403)は、特に、環状又は輪状の形状を有するコイルフレーム(406)によって保持され、前記コイルフレーム(406)は前記磁石(300、303)と向き合い、及び、前記レンズ成形部材(11)は、前記コイルフレーム(406)に一体的に結合されることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記壁部材は、前記コイル(400、403)を保持するように設計されることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記磁石(300、303)は前記レンズ成形部材(11)に結合されることを特徴とする、請求項又は請求項のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記レンズ装置(1)は前記磁石(300、303)に対する前記コイル(400、403)の変位を計測するように設計された、又は前記コイル(400、403)に対する前記磁石(300、303)の変位を計測するように設計されたフィードバックセンサ(408)を備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記レンズ装置(1)は、前記レンズ装置の温度を計測するように設計された温度センサを備えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項13】
磁界誘導プレート(407)が、前記磁石(300、303)と前記磁界誘導プレート(407)の間の引力が強まるように配置され、前記引力は、前記膜(10)がより偏向したときに前記磁石(300、303)が前記磁界誘導プレート(407)に向かって移動すると大きくなることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項14】
前記光学素子(20)は、反射表面を有するミラーとして形成されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項15】
前記レンズ装置(1)は、前記レンズ装置(1)の相殺されるべき移動を検知するための移動センサ手段を備えることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項16】
前記レンズ装置(1)は、前記移動センサ手段に結合された制御ユニットを備え、前記制御ユニットは、前記移動センサ手段によって検知された相殺されるべき移動に応じて、前記アクチュエータ手段(40)を制御するように設計され、その結果、前記レンズ成形部材(11)が、前記アクチュエータ手段(40)により前記平面に対して傾斜されて、前記レンズ装置(1)を透過する入射光ビーム(A’)の方向を、前記検知された移動を相殺するように変えることを特徴とする、請求項15記載のレンズ装置。
【請求項17】
前記レンズ装置(1)は、前記膜(10)の前記体積(V)から離れる方向を向く側にさらに別の体積(V’)を備え、前記さらに別の体積(V’)はさらに別の流体(F’)で充填されることを特徴とする、請求項1〜16に記載のレンズ装置。
【請求項18】
求項1〜17のいずれか1項に記載のレンズ装置を用いて、レンズ装置(1)を調節する方法であって、前記レンズ装置(1)は、透明で弾性膨張可能な膜(10)と、前記膜(10)と向き合う光学素子(20)と、壁部材(300)であって、前記光学素子(20)及び前記膜(10)が前記壁部材(300)に結合されて体積(V)が形成される、壁部材(300)と、前記体積(V)内に存在する流体(F)と、前記膜(10)に結合されたレンズ成形部材(11)とを備え、前記光学素子(20)は前記レンズ成形部材(11)がそれに沿って延びる平面に対して傾斜されて、前記体積(V)を、前記体積(V)を透過する光を偏向させるためのプリズムに成形し、及び、特に、前記光学素子(20)が前記レンズ成形部材(11)に対して軸方向(A)に動かされ、その結果、前記体積(V)の中に存在する前記流体(F)の圧力及びそれにより前記膜(10)の曲率が調節され、前記軸方向(A)は、前記光学素子(20)に沿って広がる前記平面に垂直に向けられる、方法。
【請求項19】
求項1〜13151617のいずれか1項に記載のレンズ装置を用いる手ぶれ補正の方法であって、前記レンズ装置(1)は、透明で弾性膨張可能な膜(10)と、前記膜(10)と向き合う光学素子(20)と、壁部材(300)であって、前記光学素子(20)及び前記膜(10)が前記壁部材(300)に結合されて体積(V)が形成される、壁部材(300)と、前記体積(V)内に存在する流体(F)と、前記膜(10)に結合されたレンズ成形部材(11)とを備え、前記レンズ装置(1)の相殺されるべき移動が検知され、及び、アクチュエータ手段(40)が、前記検知された相殺されるべき移動に応じて制御され、その結果、前記レンズ成形部材(11)が、前記光学素子(20)がそれに沿って延びる平面に対して、前記アクチュエータ手段(40)によって傾斜されて、前記レンズ装置(1)を透過する入射光ビーム(A’)の方向を、前記検知された移動を相殺するように変える、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のプリアンブルに係る調整可能なレンズ装置に関する。さらに、本発明はレンズ装置を調節する方法並びに手ぶれ補正(image stabilization)又は光ビームの偏向及び成形をもたらす方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の種類のレンズ装置は、通常、透明で弾性膨張可能な膜、膜と対向又は向き合う光学素子、壁部材を備え、ここで光学素子と膜が壁部材に結合されて体積(volume)が形成され、少なくとも膜、光学素子、及び前記壁部材が、前記体積(容器とも呼ばれる)の範囲を定め、流体が前記体積内に存在し、レンズ成形部材が膜の外側に取付けられ、この膜の外面は前記体積から離れる方向を向く。
【0003】
特に手ぶれ補正のための調整可能なレンズ装置は最新技術において知られている。特許文献1は、液体レンズが、第1及び第2の不混和性液体の間の、エレクトロウェッティングにより変形可能な液液界面を備える撮像装置を記載している。
【0004】
さらに、特許文献2は、アクチュエータがフレキシブルレンズの両面に作用して一方の面を傾斜させ他方の面を湾曲させる、手ぶれ補正装置及び方法を開示している。
【0005】
さらに、特許文献3は、弾性固体である光学素子を備え、光学素子の電極に電圧を印加すると光学素子が変形してその光学特性を変える、電気アクティブレンズを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0295987(A1)号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0158617(A1)号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2338072(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に基づいて、本発明の根底にある課題は、簡単な方法で、レンズ装置の焦点を調整すること並びに光ビーム方向の調節(例えば、手ぶれ補正又はビーム方向変更のための)を可能にするレンズ装置を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の目的は、レンズ装置を調節する方法及び手ぶれ補正の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するレンズ装置によって解決される。
【0010】
このレンズ装置の好ましい実施形態が対応する従属請求項に記載されており、以下で説明される。
【0011】
請求項1により、レンズ装置は、光学素子を、レンズ成形部材に対して軸方向に(例えば、レンズ成形部材に向けて及びそれから離れるように)移動させて体積の中に存在する流体の圧力及びそれにより膜の曲率を調節するように設計されたアクチュエータ手段を備え、ここで、前記軸方向はレンズ成形部材が広がる平面に垂直に向き、及び/又は前記アクチュエータ手段は光学素子を前記平面に対して傾斜させ、具体的には体積を、体積内を進む光を偏向させるためのプリズムに成形するように設計される。
【0012】
具体的には、流体が体積内に存在し、その結果、膜に及ぼされる(例えば、レンズ成形部材を介して)圧力(又は力)を調節することによって膜の曲率を調節することができる。具体的には、流体が体積を完全に充填する。
【0013】
しかし、本発明の一態様(例えば、自動焦点用途のための)により、傾斜移動はオプション機能とすることができ、例えば、単に光学素子とレンズ成形部材の間の(相対的)軸方向移動だけが必要となる。
【0014】
一般に、本発明の一態様により、アクチュエータ手段は、むしろレンズ成形部材を光学素子に対して軸方向に移動させるように設計することもできる。その結果、前記軸方向は、代りに光学素子がそれに沿って延びる平面に垂直(例えば、光学素子に垂直)に向く。さらに、アクチュエータ手段は、それゆえに、レンズ成形部材を前記平面(光学素子)に対して傾斜させ、具体的には体積を、体積内を進む光を偏向させるためのプリズムに成形するように設計される。
【0015】
この意味で、具体的には、光学素子をレンズ成形部材に対して軸方向に移動させることは、例えば、光学素子が静止し、レンズ成形部材が動かされるこれらの構成要素間の相対的移動を意味する場合もある。同様に、この意味で、具体的には、光学素子を前記平面に対して傾斜させ、具体的には、体積を、体積を透過する光を偏向させるためのプリズムに成形することは、光学素子が静止し、前記平面(即ち、レンズ成形部材)が傾斜させられることを意味する場合もある。
【0016】
さらに、具体的には、レンズ成形部材が平面に広がるという概念は、レンズ成形部材が仮想平面に広がる若しくはそれを定める又はその仮想(拡張)平面に沿って延びることを意味する。具体的には仮想平面であるこの平面は、方向、例えば、前記平面に垂直に伸びる軸方向などを定めるのに使用することができる。具体的には、前記軸方向はレンズ成形器に垂直に伸びると言うこともできる。実施形態において、レンズ成形器が環状構造体である場合、前記構造体又はその表面は前記平面内に延びる(及び従って前記平面を定める又はそれに広がる)。
【0017】
具体的には、光学素子が軸方向に沿って動かされると、それに応じてレンズ成形部材が膜を押圧するか又は膜を引っ張る。
【0018】
レンズ成形部材が、固定されたレンズ成形部材に向かう光学素子/壁部材の移動により、膜を押圧すると、流体の基本的に不変の体積のために流体の圧力が上昇して膜を膨張させ、膜の前記曲率を増加させる。同様に、レンズ成形部材が膜をあまり押さないか又はさらに膜を引っ張るとき、流体の圧力が低下して膜を収縮させ、膜の前記曲率を減少させる。それに関して、増加する曲率は、膜がより顕著な凸型隆起を作ることができること、又は膜が凹若しくは平坦状態から凸状態に変化することを意味する。同様に、減少する曲率は、膜が顕著な凸状態からあまり顕著でない凸状態、又はさらには平坦若しくは凹状態に変化する、或は平坦又は凹状態からさらにより顕著な凹状態に変化する、ことを意味する。
【0019】
従って、換言すれば、本発明は、1つのみの構成要素、ここでは光学素子(又はそれに結合された壁部材などの1つの要素)をレンズ成形部材に対して軸方向に移動させることにより、及び前記構成要素を傾斜させることにより、膜を変形して調整可能なプリズムを設けることによって、自動焦点及び手ぶれ補正を可能にする。
【0020】
それゆえに、有利なことに、本発明は、膜を変形させるのに使用されるのと同じアクチュエータをx‐y走査(手ぶれ補正並びにビーム偏向のスキャナの構築を可能にする)のためにも使用することを可能にし、同時に膜は固定されたレンズ成形要素に取付けたままにすることができる。これはまた、合焦のために使用される可変レンズ表面の横ずれを防止して、光学システム全体のより優れた光学的品質をもたらすことを可能にする。
【0021】
傾斜するとき、アクチュエータ手段は、壁部材/光学素子を傾斜させても流体内の圧力が一定に保たれ、膜の曲率が一定に保たれるように制御されるように、設計することが好ましい。
【0022】
膜は、以下の材料、即ち、ガラス、ポリマ、エラストマ、プラスチック又は任意の他の透明且つ伸縮可能若しくはフレキシブルな材料のうちの少なくとも1つから作成することができる。例えば、膜は、PDMSとしても知られるポリ(ジメチルシロキサン)などのシリコーンベースのポリマ、又はPET若しくは二軸配向ポリエチレンテレフタレート(例えば、「マイラ(Mylar)」)などのポリエステル材料、から作成することができる。
【0023】
さらに、膜はコーティングを備えることができる。さらに、膜は構造化すること、例えば構造化された表面を備えることができる。
【0024】
さらに、前記流体は、液体金属、ゲル、液体、気体、又は変形させることができる任意の透明、吸収性若しくは反射性の材料とするか、或はそれらを含むことが好ましい。例えば、この流体はシリコーン油(例えば、ビスフェニルプロピルジメチコーン)とすることができる。さらに、この流体は、ペルフルオロポリエーテル(PFPE:perfluorinated polyether)不活性液体などのフッ素化ポリマを含むことができる。
【0025】
さらに、光学素子は、膜に比べて硬いことが好ましい。光学素子は、ガラス、プラスチック、ポリマ、又は金属から形成されるか、又はそれらを含むことが好ましい。光学素子は、(例えばガラスの)フラット窓、レンズ、ミラー、屈折、回折及び/又は反射構造部を有する微細構造素子を含むことができ、又はそれらとして形成することができる。
【0026】
さらに、本発明の好ましい実施形態に対して、光学素子はコーティング(例えば、反射防止)を備えることができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は、光学素子を軸方向に移動させ、同時に傾斜させるように設計される。軸方向移動及び傾斜移動を制御変数として定めることができることが好ましい。
【0028】
本発明の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は、壁部材に作用して光学素子を軸方向に移動させ及び光学素子を傾斜させるように設計される。代替的に、アクチュエータ手段は、レンズ成形部材に作用して、レンズ成形部材を移動及び/又は傾斜させるように設計される。さらに、上記の意味で、アクチュエータ手段は、光学素子とレンズ成形部材の間の相対的移動を生じるように設計することができ、この場合、光学素子及びレンズ成形部材は軸方向に沿って互いに対して移動させられるか又は互いに対して傾斜させられる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態により、壁部材は、例えば、連続的窪みを有する(例えば、プレートの中央に)矩形プレートによって形成され、この窪みは壁部材の第1側面から壁部材の第2側面まで延び、この第2側面は第1側面から離れる方向を向き、ここで、光学素子は第1側面に結合されて前記窪みを覆うことが好ましく、前記膜は壁部材の第2側面に結合されることが好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ成形部材は壁部材に、好ましくは壁部材の第2側面に、変形可能壁を介して結合される。本発明の別の好ましい実施形態により、レンズ成形部材は、変形可能壁を介して光学素子に結合することができる。次に、変形可能壁が壁部材/プレートの窪みを通して光学素子まで延び、それゆえに前記体積(窪みの内側ではなく)の範囲を定めることが好ましい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態により、前記変形可能壁はベローズとして形成される。
【0032】
前記ベローズは複数の領域を備えることが好ましく、2つの隣接する領域の各々が互いに折り目を介して結合され、その結果、前記隣接する領域が、それぞれの折り目の周りで互いに向けて及び互いから離れるように折畳まれる、具体的には光学素子がレンズ成形部材に向かって移動/傾斜されるときに前記隣接する領域が互いに向かって折畳まれる(少なくとも、光学素子とレンズ成形部材が互いに近づく領域において)こと、及び、光学素子がレンズ成形部材から離れるように移動/傾斜されるときに前記隣接する領域が互いから離れるように折畳まれる(少なくとも、光学素子とレンズ成形部材が互いから離れる領域において)ことが可能であることが好ましい。
【0033】
ベローズの折り目は、剛性細長部材によって構造的に補強することができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、ベローズは、ベローズの単一の環状折り目を介して結合された2つの環状領域を備える。
【0035】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ成形部材は、膜の光学的活性且つ弾性膨張可能(例えば円形)領域の範囲を定め、具体的には、前記領域がレンズ成形部材の(例えば、環状の)内縁まで延び、及び具体的には前記領域が、調節される膜の前記曲率を備える。
【0036】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ成形部材は支持体に堅く結合され、具体的にはこの支持体が壁部材の第2側面と向き合う。この支持体は、光学アセンブリを備えるか又はそれによって形成することができる。光学アセンブリは、画像センサ及び/又はレンズスタックに形成することができ、又はそれらを備えることができ、具体的には、前記レンズスタックは画像センサ(例えば、CCDセンサ)と膜の間に配置される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は、複数の導電コイル、具体的には少なくとも3つのコイル、又は4つのコイルを備え、これらのコイルは、具体的には窪みに沿って、壁部材の上に配置されるか又はそれに組み込まれる。各々のコイルは、窪みに沿って、2つの隣接するコイルから等間隔に配置されることが好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は、支持体に結合された磁石手段を備える。前記磁石手段は、それぞれが支持体に結合された複数の磁石を備えることが好ましく、それぞれの磁石が異なるコイルに関連付けられることが好ましい。前記磁石手段又は前記磁石は、前記コイルと相互作用し、コイルに電流が印加されるときに、それぞれの電流の方向に応じて、それぞれのコイルが支持体に向かって(前記軸方向に沿って)又は支持体から離れるように(前記軸方向に沿って)移動するように設計されることが好ましい。壁部材/プレートの変位量は電流に比例する。
【0039】
本発明の好ましい実施形態により、それぞれの磁石によって生成される磁束を成形するための磁束誘導構造体(例えば、磁気的に軟らかい例えば鉄などの材料製の)が各々の磁石に対して設けられ、ここで各々の磁束誘導構造体は、壁部材の関連する開口を通して、並びにそれぞれの磁石に関連付けられるコイルの中に又はそれを通して、突き出る末端領域を備える。磁束誘導構造体は、それぞれ支持体に結合されることが好ましい。
【0040】
さらに別の実施形態により、アクチュエータ手段は、支持体に接続された複数の、具体的には2つ、3つ又は4つの導電コイルを備える。コイルは、各々、関連付けられる磁束帰還構造体(例えば、磁気的に軟らかい例えば鋼などの材料製の)に隣接して配置されることが好ましい。
【0041】
さらに、アクチュエータ手段は、壁部材内又は上に配置された対応する複数の磁束誘導構造体を備えることが好ましく、ここで、各々の磁束誘導構造体は異なるコイルに関連付けられ、それぞれのコイル/磁束帰還構造体と向き合うか又は対向し、その結果、それぞれの帰還構造体/コイルと、関連付けられた磁束誘導構造体との間に間隙が存在する。
【0042】
しかし、さらに別の実施形態により、アクチュエータ手段が、コイルと向き合う又は対向する単一の磁束誘導構造体のみを備えることも可能である(例えば、壁部材自体が磁束誘導構造体を形成することができる)。さらに、さらに別の実施形態により、アクチュエータ手段が前記コイルに隣接する単一の帰還構造体のみを備えることも可能である。
【0043】
次に、コイルを電流が流れると、磁束は、それぞれの帰還構造体及びそれぞれの磁束誘導構造体を通して誘導される。システムは磁気抵抗を減らそうとするので、それぞれの磁束誘導構造体が、関連付けられる帰還構造体に引き付けられて、2つの磁気的に軟らかい構造体の間の間隙が減り、及び磁束の抵抗が減ることになる。それゆえに、壁部材及び光学素子が動かされる。これは、それぞれのコイル内の電流に応じて、壁部材を前記軸方向に沿って軸方向に動かすこと、及び/又は、壁部材をレンズ成形部材が広がる平面に対して傾斜させること、を可能にする。そのようなアクチュエータ手段はまた、リラクタンスアクチュエータとも呼ばれる。
【0044】
さらに別の実施形態により、アクチュエータ手段は、壁部材内又は上に配置された、複数の、具体的には、2つ、3つ又は4つの第1電極、並びに、支持体に結合された対応する複数の第2電極を備えることができ、ここで、各々の第1電極は異なる第2電極に関連付けられ、それぞれの第2電極と向き合うか又は対向し、その結果、それぞれの関連付けられる電極の間に間隙が存在する。それぞれの第1及び第2電極の間に電圧を印加することにより、光学素子を前記平面に対して軸方向に移動させ及び/又は傾斜させることができる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ装置は、光学素子、又は光学素子に結合された構成要素、例えば壁部材の、例えば、レンズ成形部材の位置などの基準位置に対する、空間位置を検出するための位置センサ手段を備える。光学素子の空間位置を定められた状態に調節することにより、レンズ装置の光学特性を定めることができる。これは、変形可能膜によって形成されるレンズの屈折力及び可変プリズムの角度を含む。
【0046】
リラクタンスアクチュエータの形態のアクチュエータ手段を使用するとき、位置センサ手段は、コイルを介して壁部材/光学素子の空間位置を計測するのに高周波電流信号を使用するように、有利に設計することができる。換言すれば、本発明の一実施形態において、具体的には、磁束誘導構造体(単数又は複数)740と帰還構造体(単数又は複数)700との間の間隙に関連付けられるリラクタンスアクチュエータのリラクタンスを直接検知するように設計することによって、壁部材/光学素子の空間位置を検出するのにアクチュエータ手段が使用される。
【0047】
壁部材が、移動によってコイルにより近づくと、コイル/帰還構造体と壁部材の間の間隙がより小さくなり、磁界のリラクタンスが減少し、従ってコイルのインダクタンスが増加し、それゆえに、これが前記間隙の幅及びそれゆえに壁部材/光学素子の空間位置の尺度となる。この方法の最大の利点は、これが出力信号と壁部材/光学素子の変位量(間隙幅)との間の線形関係を示すことである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態により、光学素子は透明である。この場合、レンズ装置はカメラの一部分とすることができ、又は、それ自体でカメラ、例えば、携帯電話のカメラを形成することができる。
【0049】
本発明の別の実施形態により、光学素子は、例えば、前記体積の方に向く反射表面を有するミラーとして形成される。例えば、前記ミラーは、膜を通してレンズに入り、前記体積内を進み、ミラーに当たり、次いで膜に向けて反射される光を、反射するように適合させることができる。
【0050】
この場合、レンズ装置はスキャナの一部分とすることができ、又はそれ自体でスキャナを形成することができる。
【0051】
さらに、光学素子はコーティングを備えることができる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態により、前記光学素子がミラーとして形成されるとき、壁部材はジョイントを介して、ブッシング内に摺動可能に配置された細長ピンに結合され、ここで、具体的には前記ブッシングは、レンズ装置の筐体及び/又は前記支持体に結合される。このようにして、光学要素/壁部材の移動/傾斜を安全に誘導することができる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ装置は、例えば、相殺すべきレンズ装置の意図しない急激な移動を検知するための移動センサ手段をさらに備える。この移動センサ手段は、揺れ移動及び/又は高さ移動、即ち、各々が光軸/軸方向に直交する2つの直交軸の周りの回転を検出するように設計することができる。
【0054】
本発明のさらに別の好ましい実施形態により、手ぶれ補正をもたらすために、レンズ装置は前記移動センサ手段と相互作用する制御ユニットを備え、この制御ユニットは、移動センサ手段によって検知される相殺すべき移動に応じてアクチュエータ手段を制御するように設計され、その結果、レンズ成形部材が広がる平面に対して光学素子がアクチュエータ手段により傾斜させられ、レンズ装置を透過する入射光ビームの方向を、前記検知された意図しない急激な移動を相殺するように変更する。このことは、意図しない移動が、例えば、画像センサの表面上のある特定の画像点の変位を生じ、これを、光学素子を傾斜させること及び従ってレンズ装置を通る入射光の光路を変更することによって補償することができるので可能であり、その結果、レンズ装置の望ましくない移動及び傾斜の前と同じ画像センサ位置に同じ対象点が行き着く。
【0055】
制御ユニットは、アクチュエータ手段が位置センサ手段によって検知された光学素子の実際の空間位置を、光学素子の基準空間位置に近づくように変更するように、アクチュエータ手段を制御するように設計されることが好ましく、その場合、光学素子(及びそれゆえに入射光ビームの方向)がレンズ成形部材に対して、意図しない急激な移動が相殺又は補償される(上記参照)ように傾斜される。ここで、代替的に、アクチュエータ手段は、位置センサ手段によって検知されたレンズ成形部材の実際の空間位置を変えることもできる(即ち、光学素子が静止する)。
【0056】
本発明のさらに別の一態様は、請求項28に記載の特徴を有する、レンズ装置を調節する方法、具体的には本発明によるレンズ装置を使用する方法に関する。
【0057】
請求項28によれば、レンズ装置は、透明で弾性膨張可能な膜、膜に向き合う又は対向する光学素子、壁部材であって、光学素子及び膜が壁部材に結合されて体積が形成される、壁部材、前記体積内に存在する流体、及び、膜の外側に結合されたレンズ成形部材を備え、膜の外側は前記体積から離れる方向を向き、及び、光学素子(又は代替的にレンズ成形部材)が、レンズ成形部材が広がる平面に対して(又は代替的にレンズ成形部材が傾斜される場合には光学素子に対して)傾斜されて体積を、体積内を透過する光を偏向させるためのプリズムに成形する。
【0058】
この方法はカメラ並びにスキャナなどに使用することができる。
【0059】
光学素子はまた、レンズ成形部材に対して(又は逆も同様)軸方向に、例えば、レンズ成形部材に向かうように及びそれから離れるように移動させて、体積の中に存在する流体の圧力及びそれゆえに前記膜の曲率を調節する(具体的にはレンズ装置の焦点を自動的に調節する)ことが好ましく、ここで、前記軸方向は前記平面に(又は、場合により、光学素子に対して)垂直に向く。
【0060】
光学素子は、壁部材又はプレートを前記軸方向に沿って軸方向に移動させることによって、軸方向に移動させることが好ましい。光学素子は、前記平面に対して壁部材又はプレートを傾斜させることによって、傾斜させることが好ましい。
【0061】
本発明のさらに別の態様は、請求項29に記載の特徴を有する手ぶれ補正をもたらす方法、具体的には、本発明によるレンズ装置を使用する方法、に関する。
【0062】
請求項29によれば、レンズ装置は、透明で弾性膨張可能な膜と、膜に向き合う又は対向する光学素子と、壁部材であって、光学素子及び膜が壁部材に結合されて体積が形成される、壁部材と、前記体積内に存在する流体と、膜の外側であって、前記体積から離れる方向を向く外側に結合されたレンズ成形部材とを備え、レンズ装置の、相殺すべき意図しない急激な移動が検知され(例えば、移動センサ手段により)、前記検知された相殺すべき移動に応じてアクチュエータ手段が制御され(例えば、制御ユニットにより)、その結果アクチュエータ手段によって光学素子が、レンズ成形部材が広がる平面に対して傾斜されて(又は、アクチュエータ手段によってレンズ成形器が、光学素子がそれに沿って延びる平面に対して傾斜されて)、レンズ装置内を透過する入射光ビームの方向を、前記検知された移動を相殺するように変更する(上記も参照されたい)。傾斜するとき、アクチュエータ手段は、流体内の圧力が一定に保たれ、従って膜の曲率が一定に保たれるように設計される(又は制御される)ことが好ましい。
【0063】
この方法の好ましい実施形態により、具体的にはレンズ装置の自動焦点をもたらすために、並行して、具体的には同時に、アクチュエータ手段によって光学素子がレンズ成形部材に対して(又は逆に)軸方向に、例えば、レンズ成形部材に向かって及びそれから離れるように動かされ、その結果、体積の中に存在する流体の圧力及びそれにより前記膜の曲率が調節され、ここで前記軸方向は、レンズ成形部材が広がる前記平面に垂直に向く。
【0064】
光学素子は、壁部材又はプレートを前記軸方向に沿って軸方向に移動させることによって、軸方向に移動させることが好ましい。光学素子は、壁部材又はプレートを前記平面に対して傾斜させることによって、傾斜させることが好ましい。
【0065】
本発明のさらに別の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は少なくとも1つの磁石を備える。この少なくとも1つの磁石は第1側面、及び第1側面から離れる方向を向く第2側面を有することができる。具体的には、この少なくとも1つの磁石は環状又は輪状の形状を備え、それにより、この少なくとも1つの磁石が、この少なくとも1つの磁石の第1側面から前記第2側面まで延びる連続的窪みを有する。
【0066】
具体的には、この少なくとも1つの磁石(又は複数の磁石、下記参照)は、前記平面に垂直に軸方向に磁化される。
【0067】
さらに、レンズ装置は具体的には、磁束を前記磁石に向けて誘導するための磁束帰還構造体を備える。具体的には前記帰還構造体(可能な材料に関しては上記も参照)は少なくとも1つの磁石に沿って延びる。
【0068】
この点において、具体的には、帰還構造体は環状又は輪状形状を備え、具体的には、少なくとも1つの磁石の第1側面又は第2側面に沿って延び又はそれと向き合う。
【0069】
さらに、具体的には、前記アクチュエータ手段は、前記少なくとも1つの磁石に関連付けられた少なくとも1つのコイルを備え、この少なくとも1つのコイルは、前記平面又は前記光学素子に対して垂直に伸びるコイル軸の周りに巻かれた導線を備える。具体的には、コイル軸は、少なくとも1つの磁石の円筒軸と一致するか又は少なくとも1つの磁石の該円筒軸に平行に伸びる。具体的には、さらに、少なくとも1つの磁石の磁化は、前記コイル軸及び/又は円筒軸に平行に伸びる。
【0070】
さらに、一実施形態により、前記コイルは少なくとも1つの磁石に沿って延び、少なくとも1つの磁石と向き合い(ここで、前記少なくとも1つのコイルは、具体的には、少なくとも1つの磁石の第1側面又は第2側面と向き合う)、その結果、電流がコイルに印加されると、ローレンツ力が生成され、このローレンツ力が、少なくとも1つのコイル内の電流の方向に応じて、少なくとも1つの磁石と少なくとも1つのコイルが互いに引き合うか又は互いに反発するようにさせ、具体的にはその結果、光学素子がレンズ成形部材に対して軸方向に動かされ(又は逆に、結果としてレンズ成形部材が光学素子に対して軸方向に動かされる。上記参照)、それにより体積の中に存在する流体の圧力及びそれゆえに前記膜の曲率が調節され(前記軸方向は、レンズ成形部材がそれに沿って、又は光学素子がそれに沿って延びる平面に垂直に向く。上記参照)、及び/又は、光学素子を、前記平面、例えば、レンズ成形部材に対して傾斜させ(又は逆に、レンズ成形部材を光学素子に対して傾斜させる。上記参照)、それにより、具体的には体積が、体積内を透過する光を偏向させるためのプリズムに成形される。
【0071】
上記において、前記少なくとも1つのコイルは全体にわたり1つのみの巻方向を有することができる。一実施形態において、1つのみのそのようなコイルが存在してよい。従って、コイルは、具体的には関連付けられる(例えば、単一の)磁石に沿って、前記磁石の環状又は輪状の経路に従って延び、磁石の一方又は他方の側面と向き合う。
【0072】
さらに、別の実施形態において、磁力及びそれらの効率を高めるために、少なくとも1つのコイルは、コイルの内側の第2部分を囲む外側の第1部分を備え(この第2部分は導電様式で第1部分に結合される)、ここで導線が前記平面又は前記光学素子に対して垂直に伸びる前記コイル軸の周りに巻かれ、その結果、コイルの各々の部分が少なくとも1つの磁石(この実施形態においては単一の磁石とすることができる)に沿って延び且つこの少なくとも1つの磁石と向き合い、ここで、前記第1部分において導線は、コイルの第2部分における導線の巻方向とは反対の巻方向を有し、その結果、電流がコイルに印加されると、電流は第1部分では一方向に流れ、コイルの第2部分においては反対方向に流れ、ローレンツ力が生成され、このローレンツ力が、コイルの前記部分内の電流の方向に応じて、コイル又は磁石をレンズ成形部材の方に引き付け、或はコイル又は磁石をレンズ成形部材から離れるように押しのける。具体的には、これは、上述の光学素子とレンズ成形部材の間の前記軸方向移動を生じるのを可能にする。
【0073】
ここで、(単一の)コイルの電気的に結合された複数部分を有する代りに、逆向きの巻方向又は逆方向の電流を有する2つの分離したコイルを備えることもできる。
【0074】
さらに別の実施形態により、具体的には、レンズ成形部材を光学素子に対して又は逆に傾斜させるために、この場合具体的にはレンズ装置の軸の周り(即ち、レンズ装置の体積の周り又は前記環状帰還構造体に沿って)に配置された複数の磁石が備えられる。次いで、具体的には、各々の磁石に対して、複数のコイルのうち、それぞれの磁石(例えば、その第1又は第2側面)と向き合う異なるコイルが関連付けられることが好ましい。
【0075】
そのような複数の磁石の場合、コイルは上記の前記第1及び第2部分を有する必要はない。具体的には、関連付けられた磁石の(具体的に細長の及び/又は湾曲した)輪郭(例えば、それぞれの磁石の第1又は第2側面の輪郭)に追随して、各々のコイルが具体的には細長の及び/又は湾曲した輪郭を有し、その結果、コイルの一方(例えば、外側)の半分(この半分は、具体的にはコイルの細長い寸法に沿って延びる)の中で電流が関連付けられた磁石に沿った第1の方向に流れるのと同時に、コイルの他方(例えば、内側)の半分(この他方の半分は具体的にはまたコイルの細長い寸法に沿って延びる)の中で電流が逆方向に流れる。
【0076】
上記において、一実施形態により、壁部材、又は壁部材の少なくとも一部分を少なくとも1つの磁石によって形成することができる。少なくとも1つの磁石(又は複数の磁石)を保持材料で取り囲むことができる。具体的には、壁部材は単一の磁石で形成することができる。具体的には、次に光学素子が少なくとも1つの磁石(又は壁部材)の第1側面に結合される。さらに、具体的には、次に前記膜が少なくとも1つの磁石(壁部材)の第2側面に結合される。さらに、この実施形態において、帰還構造体が具体的には少なくとも1つの磁石(壁部材)の第1側面に結合され、光学素子が具体的には前記帰還構造体を介して少なくとも1つの磁石(壁部材)の第1側面に結合される。
【0077】
さらに、この実施形態において、少なくとも1つのコイル又は複数のコイル(例えば、複数の関連付けられる磁石を有するときだけでなく単一の関連付けられる磁石を有するとき)が、具体的には環状又は輪状の形状を有するコイルフレームによって保持される。具体的には、前記コイルフレームは少なくとも1つの(又は単一の)磁石(例えば、膜が取付けられた磁石の第2側面)と向き合う。具体的には、レンズ成形部材がコイルフレームに、具体的には一体的に、結合される。
【0078】
上記において、別の実施形態により、壁部材は少なくとも1つのコイル(又は前記複数のコイル)を保持し、それにより具体的には少なくとも1つのコイルが前記体積を取り囲むように、設計することができる。さらに、位置センサ手段又はフィードバックセンサ、例えば、少なくとも1つの(又は単一の)コイルに対する少なくとも1つの(又は単一の)磁石の又は逆の空間位置を検出するためのホールセンサを壁部材に結合することができる。ここで、具体的には、壁部材は、光学素子及び膜と一緒に、流体並びに少なくとも1つのコイル又は複数のコイル及び結局は前記センサを保持するための容器(体積)を形成する。コイル及び壁部材はプリント回路基板とすることができる。
【0079】
具体的には、この実施形態において、少なくとも1つの磁石又は複数の磁石が、レンズ成形部材に、具体的には一体的に、結合される。
【0080】
さらに別の実施形態により、レンズ装置は、レンズ装置の温度を計測する温度センサを備える。計測された温度は、レンズを較正し、制御信号に応答してレンズの屈折力の温度感受性をより小さくするのに使用することができる。
【0081】
さらに、本発明の一実施形態により、磁界誘導プレートが、少なくとも1つの(又は単一の)磁石と磁界誘導プレートとの間の引力が高まるように、配置され、その結果、レンズ(例えば、膜)がより撓むときに前記磁石が磁界誘導プレートに向かって移動すると、引力が増加する。
【0082】
さらに、一実施形態により、レンズ装置はいわゆる2層液体レンズとして形成することができる。ここで、レンズ装置は、前記流体で充填されている前記体積から離れる方向に向いた側にさらに別の体積を備え、ここで、さらに別の体積はさらに別の流体で充填される。ここで、膜がまた前記さらに別の体積の一方の側の範囲を定める。そのような構成の利点は、さらに別の液体が、例えば、垂直に延びる膜が重力のために変形するのを防ぐことである。そのようなレンズ装置の実施形態は、例えば、図31図36に示す。
【0083】
具体的には、本発明によるレンズ装置は、照明器具、ライトショー、プリンター、医療機器、ファイバ結合、頭部装着グラス、レーザ加工、生体測定、計量、電子拡大鏡、ロボットカム、ファイバ結合、移動追跡、眼内レンズ、携帯電話、軍用、デジタルスチルカメラ、ウェブカメラ、顕微鏡、望遠鏡、内視鏡、双眼鏡、研究、工業用途、監視カメラ、自動車、プロジェクタ、眼科用レンズ、視覚システム、距離計、バーコードリーダに応用することができる。
【0084】
本発明のさらに別の特徴及び利点並びに本発明の実施形態を以下で図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】本発明による、調整可能レンズの体積を透過する光ビームを屈折させるための、膜に対して平行に向いた透明の光学素子を有するレンズ装置の略断面図を示す。
図2】本発明による、調整可能レンズの体積を透過する光ビームを屈折させるための、膜に対して傾斜した透明の光学素子を有するレンズ装置の略断面図を示す。
図3】本発明による、調整可能レンズの体積を透過する光ビームを屈折させるための、膜に対して傾斜した透明の光学素子を有するレンズ装置の略断面図を示す。
図4】さらに、膜に作用するレンズ成形部材によって、光ビームを合焦するように膜の曲率が調節される、図1に示すレンズ装置の略断面図を示す。
図5】さらに、膜に作用するレンズ成形部材によって、光ビームを合焦するように膜の曲率が調節される、図2に示すレンズ装置の略断面図を示す。
図6】さらに、膜に作用するレンズ成形部材によって、光ビームを合焦するように膜の曲率が調節される、図3に示すレンズ装置の略断面図を示す。
図7】本発明による、調整可能レンズの体積を透過する光ビームを屈折するための、膜に対して平行に向いたミラーの形態の光学素子を有するさらに別のレンズ装置の略断面図を示す。
図8】本発明による、調整可能レンズの体積を透過する光ビームを屈折するための、膜に対して傾斜したミラーの形態の光学素子を有するさらに別のレンズ装置の略断面図を示す。
図9】本発明による、調整可能レンズの体積を透過する光ビームを屈折するための、膜に対して傾斜したミラーの形態の光学素子を有するさらに別のレンズ装置の略断面図を示す。
図10】さらに、膜に作用するレンズ成形部材によって、光ビームを合焦するように膜の曲率が調節される、図7に示すレンズ装置の略断面図を示す。
図11】さらに、膜に作用するレンズ成形部材によって、光ビームを合焦するように膜の曲率が調節される、図8に示すレンズ装置の略断面図を示す。
図12】さらに、膜に作用するレンズ成形部材によって、光ビームを合焦するように膜の曲率が調節される、図9に示すレンズ装置の略断面図を示す。
図13】本発明による、ベローズ及び透明な光学素子を有するレンズ装置の断面図を示す。
図14】本発明による、ベローズ及び透明な光学素子を有するレンズ装置の断面図を示す。
図15】本発明による、ベローズ及び透明な光学素子を有するレンズ装置の断面図を示す。
図16】本発明による、透明な光学素子を有するさらに別のレンズ装置の異なる図を示す。
図17】本発明による、透明な光学素子を有するさらに別のレンズ装置の異なる図を示す。
図18】本発明による、透明な光学素子を有するさらに別のレンズ装置の異なる図を示す。
図19】本発明による、ミラーの形態の光学素子を有するさらに別のレンズ装置の異なる図を示す。
図20】本発明による、ミラーの形態の光学素子を有するさらに別のレンズ装置の異なる図を示す。
図21】本発明による、レンズ装置のアクチュエータ手段の磁石と共に使用できる磁束誘導構造体の略断面図を示す。
図22】本発明による、レンズ装置のアクチュエータ手段の磁石と共に使用できる磁束誘導構造体の略断面図を示す。
図23】本発明による、レンズ装置のアクチュエータ手段の磁石と共に使用できる磁束誘導構造体の略断面図を示す。
図24】本発明のフレームワーク内で使用することができるさらに別のアクチュエータ手段の略図を示す。
図25】本発明のフレームワーク内で使用することができるさらに別のアクチュエータ手段の略図を示す。
図26】本発明のフレームワーク内で使用することができるさらに別のアクチュエータ手段の略図を示す。
図27】本発明による、輪状磁石に向き合う2つの部分を有するコイルを用いたアクチュエータ手段を有するレンズ装置の略断面図並びに細部を示す。
図28図27に示すレンズ装置、並びに光学素子の傾斜を可能にするこのレンズ装置の変形例の略図を示す。
図29】付加的な磁界誘導プレートを有する図28に示すレンズ装置の略図を示す。
図30】本発明による、レンズ成形部材が、それぞれ壁部材に取付けられている膜及び光学素子の支援によって流体をも保持する壁部材によって保持される少なくとも1つのコイルに対して磁石を移動させるアクチュエータの磁石に結合される、レンズ装置の略断面図を示す。
図31】本発明による、図30に示すレンズ装置の変形例であるレンズ装置の断面図を示す。
図32】本発明による、図31に示すレンズ装置の変形例であるレンズ装置の断面図を示す。
図33】本発明による、流体で充填された2つの体積を有する(いわゆる2液層レンズ)4つの異なるレンズ装置の略断面図を示す。
図34図33に示すレンズ装置の略断面図を示す。
図35図34に示すレンズ装置の変形例を示す。
図36図33に示すレンズ装置の略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1図3は、本発明による調整可能なレンズ装置1の略断面図を示す。レンズ装置1は、透明で弾性膨張可能な膜10、膜10と向き合う又は対向する透明(例えば、平坦)光学素子20、プレート300の中央に形成された連続的円形窪み301を有する矩形プレート300の形態の壁部材300を備え、この窪み301はプレート300の第1側面300aからプレート300の第2側面300bまで延び、この第2側面300bは第1側面300aから離れる方向を向く。剛性光学素子20が第1側面300aに結合され、他方、前記膜10は第2側面300bに結合されて、体積(volume)又は容器(container)Vが形成され、この体積は、少なくとも、膜10、光学素子20、及び前記プレート300によって範囲が定められる。体積Vは透明な流体Fで完全に充填される。光学素子20、流体Fが内部に存在する前記体積V、及び膜10が調整可能なレンズを形成する。曲率、具体的にはこのレンズの焦点を調節するために、レンズ装置1は膜10の外面10aに取付けられたレンズ成形部材11をさらに備え、この外面10aは前記体積Vから離れる方向を向く。それに関してレンズ成形部材11は、膜10の光学的活性且つ弾性膨張可能な(例えば、円形の)領域10cの範囲を定め、ここで、具体的には前記領域10cはレンズ成形部材11の(例えば、環状の)内側縁部まで延び、及び、具体的には前記領域10cは、膜10の調節されるべき前記曲率を備える。レンズ成形部材11は、球面調整可能レンズを生成するための輪状(例えば、円形)フレームとして形成することができるが、任意の他の幾何学的形状を有することもできる。例えば、平行な対向する2つの線形フレーム部材(即ち、互いに向き合う2つのフレーム部材)を有するレンズ成形部材を用いて調整可能な円柱レンズを生成することができる。
【0087】
図1図3に示すように、レンズ装置1は、レンズ成形部材11が広がる平面(即ち、レンズ成形部材11が仮想平面を定めるか或は前記仮想平面内で又はそれに沿って延びる)に対して光学素子20を傾斜させるように設計されたアクチュエータ手段40を備え、これが光学素子20の下の体積Vにプリズムの形態を与え、その結果、体積Vを通る光を図2及び図3に示すように偏向させるようにすることを可能にする。これは、手ぶれ補正並びに走査のために使用することができる。
【0088】
レンズ装置1がカメラ内で又はカメラとして使用されるとき、画像センサ52(例えば、図16参照)の表面上の画像点は、レンズ装置1の意図しない急激な移動によってシフトする可能性がある。これは、物点に関連する入射光ビームA’と画像センサ52の表面との間の交点を反対方向にシフトさせることによって相殺することができる。このために、レンズ装置1は、レンズ装置1の、相殺されるべき前記意図しない急激な移動を検知するための移動センサ手段を備えることができ、ここで、レンズ装置1は移動センサ手段に結合された制御ユニットをさらに備えることができ、この制御ユニットは、移動センサ手段によって検知された相殺すべき移動に応じてアクチュエータ手段40を制御し、光学素子20が、レンズ成形部材11が広がる前記平面(即ち、この平面に沿ってレンズ成形部材が延びる)に対してアクチュエータ手段40によって傾斜され、物点に関連する入射光ビームA’の経路を変更して、前記検知された移動を相殺するように、即ち、レンズ装置1の急激且つ意図しない移動による画像センサの表面(又は画像面)上の画像点のシフトを、物点に関連する前記入射光ビームA’と画像センサ(画像面)の交点の反対方向のシフトによって補償するように、設計される。
【0089】
図4図6に示すように、本発明によるレンズ装置1はさらに、レンズ成形部材11で膜10を押圧することによって、同時に膜10を変形させることができる。これは、光学素子20をレンズ成形部材11に対して軸方向A(レンズ成形部材11が広がる/定める平面に垂直に向いた)に移動させて体積Vの中に存在する流体Fの圧力及びそれにより前記膜10の曲率を調節するようにも設計された同じアクチュエータ手段40を用いて達成することができる(上記も参照)。これは、具体的には、2つの異なる凸面曲率半径又は2つの異なる凹面曲率の間で、或は凸面曲率と凹面曲率の間でさえも、曲率を変えることを可能にする。従って、調整可能なレンズの焦点を非常に効果的に変えることができる。アクチュエータ手段40は、壁部材300に作用して、固定されたレンズ成形部材11に対して光学素子20を軸方向に移動させるように、並びに光学素子20を傾斜させるように、設計されることが好ましい。
【0090】
図7図9はまた、本発明によるレンズ装置1の傾斜移動を示し、ここで、図1図6とは対照的に、レンズ装置1はここではミラーの形態の光学素子20を備え、このミラーは調整可能なレンズの体積Vに向き合う反射表面を有する。ここで、光学素子20の傾斜は、2D画像面を走査することを可能にする。
【0091】
図10図12に示すように、これはまた、図4図6に関して前述したような調整可能レンズの焦点を調節するために膜10を変形させることと組み合せることができ、その結果3D走査が可能になる。
【0092】
図13図15は、カメラ、具体的には携帯電話のカメラの一部分を形成することができる、図1図6に示した種類のレンズ装置1を示す。前記装置1は、さらに環状ベローズ30を備え、これが、膜10の外面10aに取付けられて前記領域10cを定めるレンズ成形部材11を、プレート300の窪み301に隣接するプレート300の第2側面300bに結合させる。ベローズ30は、図13に示すように、レンズ成形部材11に沿って延びる2つの環状領域31を有し、この領域31は、前記レンズ成形部材11に沿って延びる環状折り目32を介して互いに結合される。これは、ベローズ30を軸方向Aに沿って収縮及び引き延すことを可能にし、従って、プレート300/光学素子20の顕著な傾斜移動/軸方向移動を可能にする。プレート300のレンズ成形部材11に向かう軸方向移動によって収縮したベローズ30を図14に示す。結果として、膜10の前記領域10cが顕著な凸型隆起を生じる。膜10の平坦領域10cをもたらすベローズ30のより引き延された状態を図13に示す。さらに、図15は、プレート300/光学素子20のレンズ成形部材11に向かう軸方向移動による膜10の領域10cの凸型隆起と組み合せた傾斜したプレート300/光学素子20を示す。
【0093】
図13図15に示すように、レンズ成形部材11はさらに、プレート300の第2側面300bと向き合う支持体50に結合される。前記支持体50は、レンズスタック51及び/又は画像センサ52(図16参照)などの光学アセンブリを備えることができ、又はそのような光学アセンブリとして形成することができる。従って、レンズ成形部材11が固定され、レンズ成形部材11に対する光学素子20の軸方向移動及び傾斜は、前記アクチュエータ手段40によってプレート300を単に軸方向に移動させ/傾斜させることによって達成される。
【0094】
図10図13から分かるように、アクチュエータ手段40は、プレート300内に円形窪み301に沿って組み込まれた4つの導電コイル41を備え、ここで、各々のコイル41は、円形窪み301に沿って2つの隣接するコイル41から等間隔に配置される。
【0095】
アクチュエータ手段40は4つの磁石42をさらに備え、ここで、各々の磁石42がコイル41のうちの1つに関連付けられ、前記磁石42は支持体50に結合され、関連付けられたコイル41に隣接して配置され、それぞれの磁石42は、関連付けられたコイル41よりも半径方向にさらに外側に配置される。
【0096】
前記磁石42は、それぞれ関連付けられたコイル41と相互作用し、電流がコイル41に印加されると、それぞれのコイル41が、それぞれの電流の方向に応じて、支持体50に向かって又は支持体50から離れる方向に移動するように、設計される。
【0097】
さらに、図12図15に示すように、磁石42の磁束を誘導するために、磁束誘導構造体70が各々の磁石42に備えられ、ここで、各々の磁束誘導構造体70は、図21に示すように、軸方向Aに沿って延びる第1アーム72と、構造体70の第3アーム73を介して第1アームに結合される対向する平行の第2アーム74(即ち、アーム72がアーム74と向き合う)とを備え、この第3アーム73は軸方向Aに垂直に延び、第1アーム72の下端部を第2アーム74の下端部に結合する。構造体70は、第2アーム74の末端領域71をさらに備え、ここで4つの末端領域71の各々は、プレート300内に形成された関連する開口302を通り、並びにそれぞれの関連するコイル41の中に又はそれを通って、突き出る。磁石42は、それぞれの第1アーム72に隣接して配置され、その結果、それぞれの磁石42の磁化が第2アーム74の方を向き、それぞれの磁石42が、それぞれの第1アーム72とそれぞれのコイル41との間に配置される。
【0098】
図22及び図23に示すように、他の磁束誘導構造体70もまた可能である。図22は、2つの対向する磁石42、42’(即ち、磁石42が磁石42’と向き合う)を有する、図21に示す構造体70の変形例である、さらに別の構造体70を示す。図22において、第3アーム73は、第1アーム72及び第2アーム74に平行に伸びる第4アーム75に向かってさらに延び、ここで、第2アーム74はここでは第3アーム73の中央から突き出て、第1アーム72と第4アーム75の間に配置される。さらに別の磁石42’が第4アーム75に隣接し且つ第4アーム75と第2アーム74の間に配置され、ここで、さらに別の磁石42’の磁化は第2アーム74の方に向く。
【0099】
さらに、図23に示す構造体70は、図21に示す構造体70の変形例である。図23において、磁石42は第3アーム73の上に配置され、ここで、関連付けられるコイル41を収容する前記末端領域71は磁石42の上に配置され、磁石42の磁化はここでは構造体70の前記末端領域71の方に向く。
【0100】
光学素子20/プレート300の実際の空間位置を検出するために、レンズ装置1は位置センサ手段60を備える。このセンサ手段60は、プレート300の上、具体的には、プレート300の第2側面300bの上に配置されるホールセンサ62として形成することができ、支持体50に結合された関連付けられる信号磁石61を検知し、この信号磁石61はそれに関連付けられるホールセンサ62と向き合う又は対向する。具体的には、それぞれの信号磁石61は関連付けられるホールセンサ62に比べて半径方向外側に配置される。
【0101】
レンズ装置1は、ホールセンサ62と信号磁石61のそのような対を備えることができ、ここで、信号磁石61は支持体50の外周に沿って等間隔に配置される。同様に、ホールセンサ62はプレート300の外周に沿って等間隔に配置される。
【0102】
勿論、他の位置センサ手段、例えば、容量センサ、磁気抵抗センサ、又は歪みセンサなどを使用することもできる。
【0103】
図16図18は、カメラ、具体的には携帯電話のカメラの一部分を形成することができる、さらに別のレンズ装置1を示す。レンズ装置1は図13図15に関して説明したように設計されるが、ここではベローズ30が省かれている点で異なる。ここで、膜10は、例えば、図17から分かるように、プレート300の第2側面300bに直接取付けられる。
【0104】
図16に示すように、プレート300上のコイル41及び/又は位置センサ手段62への電気接続はフレキシブル配線80によって構成することができ、このフレキシブル配線は、光学素子20/プレート300の空間位置を歪みセンサによって計測する方法をもたらし、ここで、その歪みセンサは各々のフレキシブル配線80に取付けられる。プレート300の空間位置がアクチュエータ手段40によって変えられる場合(上記参照)、フレキシブル配線80が変形することになり、これを前記歪みセンサによって検出することができる。
【0105】
最後に、図19及び図20は、本発明による、図16図19に関して説明したように構築されるが、ここでは光学素子20が、調整可能レンズの体積Vに向き合う反射表面を有するミラーとして形成される点で異なる、さらに別のレンズ装置1を示す。さらに、図16図19とは対照的に、コイル41がプレート300の第1側面300aの上に配置される。
【0106】
図19図20に示すレンズ装置1は、画像を走査するための3Dスキャナの一部分を形成することができる。既に上述したプレート300の移動を安全に誘導するために、プレート300はボールベアリングの形態の継手93を介して、ブッシング90内に摺動可能に配置された細長ピン91に結合される。ブッシング90はレンズ装置1の筐体及び/又は前記支持体50に結合されることが好ましい。さらに、プレート300への電気接続は、壁部材300から、具体的にはコイル41から延びる4つのフレキシブル配線92によって構成されることが好ましい。フレキシブル配線92は、プレート300の移動と干渉しないように、多少のたるみを備える。フレキシブル配線92はプレート300からブッシング90に向かって延び、そこでブッシング90に固定されることが好ましい。
【0107】
レンズ装置1のプレート300/光学素子20を軸方向に移動させ及び/又は傾斜させるのに使用することができるアクチュエータ手段のさらに別の実施形態を図24に示す。それによれば、アクチュエータ手段は、支持体50に堅く結合された複数の、具体的には、2つ、3つ又は4つの導電コイル41を備える。コイル41は、各々関連付けられる磁束帰還構造体700(例えば、磁気的に軟らかい鋼などの材料製の)に隣接して配置されることが好ましい。磁束帰還構造体700は、それぞれのコイル41の両側の横方向に延びる領域720、730並びにそれぞれのコイル41の中に突き出る領域710を備えることができる。各々の磁束帰還構造体700が、横方向に、即ち、それぞれのコイル41より半径方向にさらに内側に延びる領域720並びにそれぞれのコイル41の中に突き出る領域710を有する変形例を図25に示す。ここでは、各々のコイル41が、プレート300を越えて、コイル41のそれぞれの領域の両側に帰還構造体の領域がないプレート300の拡張平面内に突き出る領域を有する。
【0108】
アクチュエータ手段は、プレート300の中又は上に配置された対応する複数の磁束誘導構造体740をさらに備え、ここで、各々の磁束誘導構造体740には異なるコイル41が関連付けられ、それぞれのコイル41/磁束帰還構造体700に向き合い又は対向し、その結果、一方の側のそれぞれの帰還構造体700/コイル41と他方の側の関連付けられた磁束誘導構造体740との間に間隙が存在する。複数の磁束誘導構造体740はまた、1つの磁気的に軟らかい部分から作成することもできる。同じことは帰還構造体700にも当てはまる。即ち、単一の磁束帰還構造体700に隣接して配置されたコイルに向き合う又は対向する単一の磁束誘導構造体が存在してもよい。
【0109】
ここで、電流がコイル41を流れると、磁束がそれぞれの帰還構造体700及びそれぞれの磁束誘導構造体740を通して誘導される。システムは磁気抵抗を減らそうとするので、それぞれの磁束誘導構造体740は関連付けられる帰還構造体700に引き付けられて、2つの磁気的に軟らかい構造体の間の間隙を減らし、磁束に対する抵抗を減らすことになる。従って、プレート300及び光学素子20が動かされる。このことは、それぞれのコイル41内の電流に応じて、プレート300を前記軸方向に沿って軸方向に移動させ、及び/又は、レンズ成形部材11が広がる/定める平面に対してプレート300を傾斜させることを可能にする。そのようなアクチュエータ手段は、リラクタンスアクチュエータとも呼ばれる。
【0110】
アクチュエータ手段のこの実施形態は、コイル41及びホールセンサ62を支持体50(例えば、図16参照)の上、即ち、固定光学系51のレンズ鏡筒に対して固定された位置に取付けることができるので屈曲接続部80が必要ないという利点を有する。さらに、必要な構成要素がより少なくなる。この場合、信号磁石61は、磁束誘導構造体740を備えた又はそれによって形成された可動/傾斜可能なプレート300に取付けられることになる。さらに、永久磁石は(ホールセンサを除いて)必要ない。欠点は引力のみが可能であることである。さらに、ホールセンサは、磁束誘導構造体740と帰還構造体700の間の間隙の変化に関連する、リラクタンスアクチュエータの可変リラクタンスを直接検知することで置換えることができる。
【0111】
プレート30/光学素子20を軸方向に移動させ及び/又は傾斜させるために使用することができるアクチュエータ手段のさらに別の実施形態によれば、図26に示すように、アクチュエータ手段は、複数の、具体的には、プレート300の中又は上に配置された2つ、3つ又は4つの、第1(上部)電極810、並びに、支持体50に堅く結合された対応する複数の第2電極800を備えることができ、ここで、各々の第1電極810は、異なる第2電極800に関連付けられ、それぞれの第2電極800と向き合い又は対向し、その結果、それぞれ関連付けられた電極810、800の間に間隙が存在する。それぞれの第1及び第2電極810、800の間に電圧を印加することにより、プレート300/光学素子20を、レンズ成形部材11が広がる/定める前記平面に対して軸方向に移動させ及び/又は傾斜させることができる。従って、磁気作動に加えて静電作動も可能になる。さらに、アクチュエータ電極810、800は、電極間の容量値を読み取ることによって電極間の距離を検知するのに使用することができる。
【0112】
図27は、本発明によるさらに別の調整可能なレンズ装置1の略断面図を示す。前述と同様に、レンズ装置1は、透明で弾性膨張可能な膜10と、膜10と向き合う又は対向する透明(例えば、平坦)な光学素子20と、磁石300の中央に形成された連続的円形窪み301であって、磁石300の第1側面300aから磁石300の第2側面300bまで延びる窪み301を内部に有する輪状磁石300の形態の壁部材300とを備え、ここで、磁石の第2側面300bは、その第1側面300aから離れる方向を向く。さらに、磁石300は軸方向に磁化される(軸方向Aに)。剛性光学素子20が磁石300の第1側面300aに、プレート様の輪状磁束帰還構造体305を介して結合され、この構造体305は、磁石300への磁束帰還を誘導するのに役立ち、光学素子20と磁石300の間に配置される。前記膜10は磁石の第2側面300bに結合され、その結果、少なくとも膜10、光学素子20、前記容器の環状壁部材300を形成する前記磁石300、及び帰還構造体305(これもまた容器の壁の一部分を形成する)によって範囲が定められる体積又は容器Vが形成される。前述と同様に、体積Vは透明な流体Fで完全に充填される。光学素子20、流体Fが内部に存在する前記体積V及び膜10が調整可能レンズを形成する。このレンズの曲率、具体的には焦点を調節するために、レンズ装置1は、膜10の外面10aに取付けられたレンズ成形部材11をさらに備え、この外面10aは前記体積Vから離れる方向を向く。それゆえに、レンズ成形部材11は、膜10の光学的活性且つ弾性膨張可能な(例えば、円形の)領域10cの範囲を定め、ここで、具体的には前記領域10cはレンズ成形部材11の(例えば、環状の)内縁部に至るまで延び、及び具体的には、前記領域10cは、調節される膜10の前記曲率を備える。レンズ成形部材11は、球面調整可能レンズを生成するための輪状(又は円形)フレームとして形成することができるが、任意の他の幾何学的形状を有してもよい(上記参照)。
【0113】
さらに、レンズ装置1は、図27の右側に詳しく示したアクチュエータ手段40を備える。前記アクチュエータ手段40は、レンズ成形部材11が定める平面に垂直に伸びる軸方向Aに対する光学素子の軸方向移動を起こすように設計される。従って、レンズ装置1は、光学素子20をレンズ成形部材11に対して軸方向に移動させることによって、レンズの焦点(即ち、膜10の曲率)を前述のように制御することができる自動焦点用途に使用することができる。
【0114】
このために、前記磁石300に加えて、アクチュエータ装置40は、磁石300の第2側面300bと向き合い且つ磁石300に対して同軸上に配置された輪状コイルフレーム406によって支持されるコイル400を備える。レンズ成形器11はコイルフレーム406に、具体的には一体的に結合され、コイルフレーム406から膜10に向かって突き出て、上記のように膜に接触する。さらに、コイルフレーム406は、磁石300の窪み301に位置合せされて窪みを取り囲み、その結果、光が体積V及びコイルフレーム406を軸方向Aに透過することができる。
【0115】
図28、具体的には下左側に示すように、コイル400はコイルフレーム406内で環状に延び、また磁石300に沿って(磁石300と同軸に)延び、磁石の第2側面300bと向き合い、その結果、磁石300はコイル400と磁束帰還構造体305の間に配置される。
【0116】
さらに、図27、並びに図28の下左側及び図28の上左側に示す実施形態において、コイル400は、軸方向Aに一致するコイル軸(即ち、平面又はレンズ成形部材11に垂直に伸びる)の周りに巻かれた導線を備え、ここでコイル400は、コイル400の内側の第2部分402を取り囲む外側の第1部分401を備え、導線は、コイル400の前記2つの部分401、402の各々が磁石300に沿って延び、磁石300の第2側面300bに向き合うように、前記コイル軸の周りに巻かれる。次に、図28の下左側に示すように、前記第1部分401内で、導線は、コイル400の第2部分402内の導線の巻方向と反対の巻方向を有し、その結果、電流がコイル400に印加されるとき、電流はコイル400の第1部分401内で一方向(投影面から外へ)に流れ、第2部分402内では反対の方向(投影面の中へ)に流れる。これは、図27の右側に示すような非常に効率的な方式で、コイル400の前記部分401、402の内部の電流の方向に応じて、磁石300とコイル400を互いに引き合うか又は互いに反発するようにさせるローレンツ力を生成する。このような磁石‐コイル構成により、光学素子20を、レンズ成形部材11に向けて及びそれから離れるように軸方向Aに移動させる、即ち、例えば、図28の上中央パネル内に示すように、膜10の曲率を大きくしてレンズの焦点を変える、ことができる。
【0117】
この磁石‐コイル構成の変形例を図28の下右側に示す。この変形例はまた、例えば、レンズ装置1を自動焦点レンズとして使用するときに必要であるように光学素子を軸方向に移動させることに加えて、前記平面(即ち、レンズ成形部材11)に対して光学素子20を傾斜させることを可能にする。この変形例において、単一の磁石300の代りに、レンズ装置1のアクチュエータ手段40は複数の磁石303、例えば、図28の下右側に示すように3つの磁石303を備え、これら磁石は輪状帰還構造体305に沿って、即ち、体積Vの周りに、例えば帰還構造体305又は体積Vの外周に沿って等間隔になるように配置される(即ち、換言すれば、レンズ装置1の中心軸Aの周りに配置される)。3つの磁石303は全て、軸方向Aに磁化される。ここで、各々の磁石303は、第1側面303a及び第2側面303bを備え、第2側面303bは第1側面303aから離れる方向を向き、ここで、帰還構造体305が第1側面303a(300a)に結合され、同時に膜10が磁石303の第2側面303bに取付けられる。磁石303は帰還構造体305の中に埋め込むことができ、又は帰還構造体305を磁石303の第1側面303aに単に結合することもできる。磁石303は、レンズの流体で充填された体積Vを取り囲む壁部材300の一部分を形成する。図28の下右側に示すように、磁石303の第2側面303bは各々、それぞれの磁石303が取付けられる輪状(円形)帰還構造体305の一部分の輪郭に追随する細長い湾曲した輪郭のような、特定の輪郭をさらに備えることができる。
【0118】
次に、単一のコイル400の代りに、レンズ装置1は、磁石303の数に対応する複数のコイル403(ここでは、例えば3つのコイル403)を備え、ここで、複数のコイルのうちの各々のコイル403が異なる磁石303に関連付けられ、それぞれのコイル403は軸方向Aにおいて、関連付けられる磁石303と向き合う。
【0119】
具体的には、前記コイル403の各々は、関連付けられる磁石303の第2側面303bの輪郭を模倣した外輪郭を備え、例えば、各々のコイルは細長い湾曲した輪郭を備えることができ、その結果、それぞれのコイル403の外半分403a内に、関連付けられた磁石303に沿った第1の方向に電流が流れ、一方それぞれのコイル403の残りの内半分403b内には電流が逆方向に流れる。従って、コイル403のうちの1つに電流が印加されると、前記コイル403内の電流の方向に応じて、関連付けられた磁石303と前記コイル403が互いに引き合うか又は互いに反発するようにさせるローレンツ力が生成される。これは、光学素子20を、レンズ成形部材11が広がる平面に対して又はレンズ成形部材11自体に対して傾斜させることを可能にし、これは、光学素子20の下の体積Vにプリズムの形状を与え、体積Vを透過する光が図28の上右側パネルに示すように偏向するようにすることを可能にする。これは、例えば、上記の手ぶれ補正のために使用することができる。勿論、全てのコイル403が対称的に駆動される場合、レンズ成形部材11に対する光学素子20の軸方向移動により、さらに膜10の曲率を変えることができ、その結果、自動焦点機能を手ぶれ補正と組み合せることができる。
【0120】
特に別に断らなければ、上記の磁石‐コイル構成(単一コイル及び単一磁石並びに複数コイル及び磁石)は両方共に、以下で説明する実施形態に適用することができる。さらに、単一磁石及び複数コイルの構成もまた可能である。
【0121】
図29は、図27及び図28に示す実施形態の変形例を示し、ここで、これらの実施形態に加えて、図29によるレンズ装置1は、磁石300から離れる方向を向くコイルフレーム406の1つの側に、コイルフレーム406に対して同軸上に配置された輪状磁界誘導プレート407を備える。磁石300がコイル400に向かって下方に移動するとき、コイル400内の電流によって生成されるローレンツ力のために、磁石300は磁界誘導プレート407にますます引き付けられ始める。この引力が膜10を変形するのに役立ち、ローレンツ力を支援し、従ってレンズ装置1をより効率的なものにする。さらに、磁界誘導プレート407はまた、装置1を磁気遮蔽するのに役立つ。
【0122】
図30は、本発明によるさらに別のレンズ装置1を示す。ここで、図27図29とは対照的に、その第1側面300aに帰還構造体305が結合される輪状磁石300は、レンズ成形部材11に結合され、このレンズ成形部材が磁石300から膜10に向かって下方に突き出て膜10に上から接触し、次にこの膜10が環状壁部材406に結合され、この壁部材406はまた磁石300の第2側面300bと向き合うコイル400(又はコイル403)を支える。ここで、環状壁部材406は、膜10、及び膜10が結合される壁部材406の側面から離れる方向を向く側面上で壁部材406に結合されるか又はその一体部分(例えば、多層プリント回路基板)である光学素子20、と共に、流体F用の体積Vの容器を形成する。上記のように、アクチュエータ手段40を制御するのに使用することができる磁石300の移動を検出するために、壁部材406の上に配置することができるホールセンサ408が備えられる。図29に示す実施形態において、磁石300及びそれに結合されたレンズ成形部材11は、アクチュエータ手段により上記のように光学素子20に対して軸方向に動かされ及び/又は傾けられ、他方図27図29においてはその逆である。
【0123】
図31は、図30に示す実施形態の変形例を示し、ここで、図30とは対照的に、コイル400は、一様な巻方向のコイルであり、輪状磁石300の第1側面300aの上に配置され、他方、帰還構造体は磁石300の第2側面300bの上に配置される。ここで、コイル400は、磁石300を囲む軸方向に延びたスペーサ409を介して帰還構造体305に結合される。
【0124】
さらに、図32は、図31に示す実施形態の変形例を示し、ここで、帰還構造体305が省かれ、レンズ成形部材11は輪状磁石300自体によって形成される。
【0125】
図33は、1つの変形可能膜10及び2つの液体体積V、V’を有する構成において、膜10に対して磁石300及びコイル400を配置する4つの異なる方法を示す。異なる屈折率、しかし類似の密度を有する2つの液体F、F’を選択することによって、重力の影響を受けにくいレンズを構築することができる。
【0126】
図34は、図33の下左側に示す構成を詳細に示す。ここで、膜10は、膜10に上から接触する輪状上部レンズ成形部材11aと、膜10に下から接触する(例えば、同一の)底部レンズ成形部材11bとの間に配置される。膜10はさらに、環状上部スペーサ410と環状底部スペーサ411の間に保持され、ここで、透明上部ガラス20の形態の光学素子20が上部スペーサ410に結合され、その結果、上部スペーサ410、上部ガラス20、及び膜10が、(上部)流体Fで充填される(上部)体積Vを形成し、及び、透明底部ガラス21の形態のさらに別の光学素子21が底部スペーサ411に結合され、その結果、底部スペーサ411、底部ガラス21、及び膜10が、(底部)流体F’で充填される(底部)体積Vを形成する。次に、上記の原理によって膜10を変形させるために、上部レンズ成形部材11aが体積V内に存在する輪状上部磁石300に結合され、及び底部レンズ成形部材11bが、軸方向Aにおいて上部磁石300と向き合い且つ上部磁石300に対して同軸上に配置される輪状底部磁石300’に結合され、ここで、2つのレンズ成形部材11a、11bは、軸方向Aにおいて2つの磁石300、300’の間に配置される。さらに、2つの磁石300、300’は軸方向に磁化される(軸方向Aにおいて)。ここで、磁石300、300’の各々は、関連付けられたコイル、即ち、上部コイル400及び底部コイル400’によって作動することができ、これらコイルは各々、プリント回路基板(PCB)の上に配置するか又はその中に埋め込むことができ、ここで上部磁石300に関連付けられた上部コイル400は、上部磁石300と向き合うように上部ガラス20の上に配置することができ、他方、底部磁石300’に関連付けられた底部コイル400’は、底部磁石300’と向き合うように底部ガラス21の上に配置することができる。具体的には、磁石300、300’及び関連付けられたコイル400、400’は、図27及び図28に関して上述したように構成することができる。上部及び底部コイル400、400’が、両方のコイル400、400’が磁石300、300’を上下に移動させるように結合される場合、磁石の非常に効率的な作動を実現することができる。
【0127】
さらに、図35は、図34に示す実施形態の変形例を示し、この場合、図34とは対照的に、上部磁石300、上部レンズ成形部材11a及び上部コイル400が省かれる。
【0128】
図36は、図33の下左側に示す構成を詳細に示す。ここで、膜10に上から接触する輪状レンズ成形部材11は、レンズ成形部材11の中に埋め込まれるコイル400を支持するためのコイルフレームとしても機能する。コイル(単数又は複数)400への電気接続をもたらすために、レンズ成形部材11がコンタクトバネ412に接続され、これを介してレンズ成形部材が環状上部スペーサ410及び環状底部スペーサ411に接続される。さらに、軸方向Aにおいて、レンズ成形部材/コイルフレーム11が輪状上部磁石300と輪状底部磁石300’の間に配置され、ここで、上部磁石300が上部帰還構造体305に結合され、次にこの帰還構造体305が、上部スペーサ410に結合された上部ガラス20に結合され、及び、底部磁石300’が底部帰還構造体305’に結合され、次にこの帰還構造体305’が、底部スペーサ411に結合された底部ガラス21に結合される。上部磁石300及び底部磁石300’は両方共に軸方向Aに磁化される。次に、環状変形可能上部壁(例えば、上部ベローズの形態の)413が上部磁石300からレンズ成形部材11に向かって延び、その結果、上部流体Fで充填され且つ上部ガラス20(21)、上部ベローズ413及び膜10によって範囲が定められる上部体積Vが形成される。同様に、環状変形可能底部壁(例えば、底部ベローズの形態の)414が底部磁石300’からレンズ成形部材11に向かって延び、その結果、底部流体F’で充填され且つ底部ガラス21、底部ベローズ414及び膜10によって範囲が定められる底部体積V’が形成される。
【0129】
2つの体積V、V’及びそれらの中の流体F、F’を有する実施形態において、流体は、屈折率は異なるが密度が同様のものにすることができる。具体的には、さらに別の(底部)流体F’を上記の流体のうちの1つとすることができる。2流体充填体積及びそれらの間の膜10を有することの具体的な利点は、重力誘起のコマ収差を殆ど完全に除去することができるので、レンズが衝撃の影響を遥かに受けにくくなることである。
【0130】
ここでもまた、上記の原理に従って、コイル400及び磁石300、300’を用いてレンズ成形部材11を移動させ、膜10(11)を変形させることができる。
【0131】
最後に、図33の上左側及び上右側に示す実施形態は、図34に示す実施形態の変形例であり、ここで、図33の上左側に示す実施形態は図34の実施形態に対応するが、上部コイル400が上部ガラス20に隣接する上部体積Vの中に配置され、底部コイル400’が底部ガラス21に隣接する底部体積内に配置される点で異なる。さらに図33の上右側に示す実施形態は、上左側に示す実施形態に対応するが、この場合には、上部コイルが上部磁石と入れ替わった位置を有し、同時に底部コイルが底部磁石と入れ替わった位置を有する。

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