【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するレンズ装置によって解決される。
【0010】
このレンズ装置の好ましい実施形態が対応する従属請求項に記載されており、以下で説明される。
【0011】
請求項1により、レンズ装置は、光学素子を、レンズ成形部材に対して軸方向に(例えば、レンズ成形部材に向けて及びそれから離れるように)移動させて体積の中に存在する流体の圧力及びそれにより膜の曲率を調節するように設計されたアクチュエータ手段を備え、ここで、前記軸方向はレンズ成形部材が広がる平面に垂直に向き、及び/又は前記アクチュエータ手段は光学素子を前記平面に対して傾斜させ、具体的には体積を、体積内を進む光を
偏向させるためのプリズムに成形するように設計される。
【0012】
具体的には、流体が体積内に存在し、その結果、膜に及ぼされる(例えば、レンズ成形部材を介して)圧力(又は力)を調節することによって膜の曲率を調節することができる。具体的には、流体が体積を完全に充填する。
【0013】
しかし、本発明の一態様(例えば、自動焦点用途のための)により、傾斜移動はオプション機能とすることができ、例えば、単に光学素子とレンズ成形部材の間の(相対的)軸方向移動だけが必要となる。
【0014】
一般に、本発明の一態様により、アクチュエータ手段は、むしろレンズ成形部材を光学素子に対して軸方向に移動させるように設計することもできる。その結果、前記軸方向は、代りに光学素子がそれに沿って延びる平面に垂直(例えば、光学素子に垂直)に向く。さらに、アクチュエータ手段は、それゆえに、レンズ成形部材を前記平面(光学素子)に対して傾斜させ、具体的には体積を、体積内を進む光を
偏向させるためのプリズムに成形するように設計される。
【0015】
この意味で、具体的には、光学素子をレンズ成形部材に対して軸方向に移動させることは、例えば、光学素子が静止し、レンズ成形部材が動かされるこれらの構成要素間の相対的移動を意味する場合もある。同様に、この意味で、具体的には、光学素子を前記平面に対して傾斜させ、具体的には、体積を、体積を透過する光を
偏向させるためのプリズムに成形することは、光学素子が静止し、前記平面(即ち、レンズ成形部材)が傾斜させられることを意味する場合もある。
【0016】
さらに、具体的には、レンズ成形部材が平面に広がるという概念は、レンズ成形部材が仮想平面に広がる若しくはそれを定める又はその仮想(拡張)平面に沿って延びることを意味する。具体的には仮想平面であるこの平面は、方向、例えば、前記平面に垂直に伸びる軸方向などを定めるのに使用することができる。具体的には、前記軸方向はレンズ成形器に垂直に伸びると言うこともできる。実施形態において、レンズ成形器が環状構造体である場合、前記構造体又はその表面は前記平面内に延びる(及び従って前記平面を定める又はそれに広がる)。
【0017】
具体的には、光学素子が軸方向に沿って動かされると、それに応じてレンズ成形部材が膜を押圧するか又は膜を引っ張る。
【0018】
レンズ成形部材が、固定されたレンズ成形部材に向かう光学素子/壁部材の移動により、膜を押圧すると、流体の基本的に不変の体積のために流体の圧力が上昇して膜を膨張させ、膜の前記曲率を増加させる。同様に、レンズ成形部材が膜をあまり押さないか又はさらに膜を引っ張るとき、流体の圧力が低下して膜を収縮させ、膜の前記曲率を減少させる。それに関して、増加する曲率は、膜がより顕著な凸型隆起を作ることができること、又は膜が凹若しくは平坦状態から凸状態に変化することを意味する。同様に、減少する曲率は、膜が顕著な凸状態からあまり顕著でない凸状態、又はさらには平坦若しくは凹状態に変化する、或は平坦又は凹状態からさらにより顕著な凹状態に変化する、ことを意味する。
【0019】
従って、換言すれば、本発明は、1つのみの構成要素、ここでは光学素子(又はそれに結合された壁部材などの1つの要素)をレンズ成形部材に対して軸方向に移動させることにより、及び前記構成要素を傾斜させることにより、膜を変形して調整可能なプリズムを設けることによって、自動焦点及び手ぶれ補正を可能にする。
【0020】
それゆえに、有利なことに、本発明は、膜を変形させるのに使用されるのと同じアクチュエータをx‐y走査(手ぶれ補正並びにビーム偏向のスキャナの構築を可能にする)のためにも使用することを可能にし、同時に膜は固定されたレンズ成形要素に取付けたままにすることができる。これはまた、合焦のために使用される可変レンズ表面の横ずれを防止して、光学システム全体のより優れた光学的品質をもたらすことを可能にする。
【0021】
傾斜するとき、アクチュエータ手段は、壁部材/光学素子を傾斜させても流体内の圧力が一定に保たれ、膜の曲率が一定に保たれるように制御されるように、設計することが好ましい。
【0022】
膜は、以下の材料、即ち、ガラス、ポリマ、エラストマ、プラスチック又は任意の他の透明且つ伸縮可能若しくはフレキシブルな材料のうちの少なくとも1つから作成することができる。例えば、膜は、PDMSとしても知られるポリ(ジメチルシロキサン)などのシリコーンベースのポリマ、又はPET若しくは二軸配向ポリエチレンテレフタレート(例えば、「マイラ(Mylar)」)などのポリエステル材料、から作成することができる。
【0023】
さらに、膜はコーティングを備えることができる。さらに、膜は構造化すること、例えば構造化された表面を備えることができる。
【0024】
さらに、前記流体は、液体金属、ゲル、液体、気体、又は変形させることができる任意の透明、吸収性若しくは反射性の材料とするか、或はそれらを含むことが好ましい。例えば、この流体はシリコーン油(例えば、ビスフェニルプロピルジメチコーン)とすることができる。さらに、この流体は、ペルフルオロポリエーテル(PFPE:perfluorinated polyether)不活性液体などのフッ素化ポリマを含むことができる。
【0025】
さらに、光学素子は、膜に比べて硬いことが好ましい。光学素子は、ガラス、プラスチック、ポリマ、又は金属から形成されるか、又はそれらを含むことが好ましい。光学素子は、(例えばガラスの)フラット窓、レンズ、ミラー、屈折、回折及び/又は反射構造部を有する微細構造素子を含むことができ、又はそれらとして形成することができる。
【0026】
さらに、本発明の好ましい実施形態に対して、光学素子はコーティング(例えば、反射防止)を備えることができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は、光学素子を軸方向に移動させ、同時に傾斜させるように設計される。軸方向移動及び傾斜移動を制御変数として定めることができることが好ましい。
【0028】
本発明の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は、壁部材に作用して光学素子を軸方向に移動させ及び光学素子を傾斜させるように設計される。代替的に、アクチュエータ手段は、レンズ成形部材に作用して、レンズ成形部材を移動及び/又は傾斜させるように設計される。さらに、上記の意味で、アクチュエータ手段は、光学素子とレンズ成形部材の間の相対的移動を生じるように設計することができ、この場合、光学素子及びレンズ成形部材は軸方向に沿って互いに対して移動させられるか又は互いに対して傾斜させられる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態により、壁部材は、例えば、連続的窪みを有する(例えば、プレートの中央に)矩形プレートによって形成され、この窪みは壁部材の第1側面から壁部材の第2側面まで延び、この第2側面は第1側面から離れる方向を向き、ここで、光学素子は第1側面に結合されて前記窪みを覆うことが好ましく、前記膜は壁部材の第2側面に結合されることが好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ成形部材は壁部材に、好ましくは壁部材の第2側面に、変形可能壁を介して結合される。本発明の別の好ましい実施形態により、レンズ成形部材は、変形可能壁を介して光学素子に結合することができる。次に、変形可能壁が壁部材/プレートの窪みを通して光学素子まで延び、それゆえに前記体積(窪みの内側ではなく)の範囲を定めることが好ましい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態により、前記変形可能壁はベローズとして形成される。
【0032】
前記ベローズは複数の領域を備えることが好ましく、2つの隣接する領域の各々が互いに折り目を介して結合され、その結果、前記隣接する領域が、それぞれの折り目の周りで互いに向けて及び互いから離れるように折畳まれる、具体的には光学素子がレンズ成形部材に向かって移動/傾斜されるときに前記隣接する領域が互いに向かって折畳まれる(少なくとも、光学素子とレンズ成形部材が互いに近づく領域において)こと、及び、光学素子がレンズ成形部材から離れるように移動/傾斜されるときに前記隣接する領域が互いから離れるように折畳まれる(少なくとも、光学素子とレンズ成形部材が互いから離れる領域において)ことが可能であることが好ましい。
【0033】
ベローズの折り目は、剛性細長部材によって構造的に補強することができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、ベローズは、ベローズの単一の環状折り目を介して結合された2つの環状領域を備える。
【0035】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ成形部材は、膜の光学的活性且つ弾性膨張可能(例えば円形)領域の範囲を定め、具体的には、前記領域がレンズ成形部材の(例えば、環状の)内縁まで延び、及び具体的には前記領域が、調節される膜の前記曲率を備える。
【0036】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ成形部材は支持体に堅く結合され、具体的にはこの支持体が壁部材の第2側面と向き合う。この支持体は、光学アセンブリを備えるか又はそれによって形成することができる。光学アセンブリは、画像センサ及び/又はレンズスタックに形成することができ、又はそれらを備えることができ、具体的には、前記レンズスタックは画像センサ(例えば、CCDセンサ)と膜の間に配置される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は、複数の導電コイル、具体的には少なくとも3つのコイル、又は4つのコイルを備え、これらのコイルは、具体的には窪みに沿って、壁部材の上に配置されるか又はそれに組み込まれる。各々のコイルは、窪みに沿って、2つの隣接するコイルから等間隔に配置されることが好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は、支持体に結合された磁石手段を備える。前記磁石手段は、それぞれが支持体に結合された複数の磁石を備えることが好ましく、それぞれの磁石が異なるコイルに関連付けられることが好ましい。前記磁石手段又は前記磁石は、前記コイルと相互作用し、コイルに電流が印加されるときに、それぞれの電流の方向に応じて、それぞれのコイルが支持体に向かって(前記軸方向に沿って)又は支持体から離れるように(前記軸方向に沿って)移動するように設計されることが好ましい。壁部材/プレートの変位量は電流に比例する。
【0039】
本発明の好ましい実施形態により、それぞれの磁石によって生成される磁束を成形するための磁束誘導構造体(例えば、磁気的に軟らかい例えば鉄などの材料製の)が各々の磁石に対して設けられ、ここで各々の磁束誘導構造体は、壁部材の関連する開口を通して、並びにそれぞれの磁石に関連付けられるコイルの中に又はそれを通して、突き出る末端領域を備える。磁束誘導構造体は、それぞれ支持体に結合されることが好ましい。
【0040】
さらに別の実施形態により、アクチュエータ手段は、支持体に接続された複数の、具体的には2つ、3つ又は4つの導電コイルを備える。コイルは、各々、関連付けられる磁束帰還構造体(例えば、磁気的に軟らかい例えば鋼などの材料製の)に隣接して配置されることが好ましい。
【0041】
さらに、アクチュエータ手段は、壁部材内又は上に配置された対応する複数の磁束誘導構造体を備えることが好ましく、ここで、各々の磁束誘導構造体は異なるコイルに関連付けられ、それぞれのコイル/磁束帰還構造体と向き合うか又は対向し、その結果、それぞれの帰還構造体/コイルと、関連付けられた磁束誘導構造体との間に間隙が存在する。
【0042】
しかし、さらに別の実施形態により、アクチュエータ手段が、コイルと向き合う又は対向する単一の磁束誘導構造体のみを備えることも可能である(例えば、壁部材自体が磁束誘導構造体を形成することができる)。さらに、さらに別の実施形態により、アクチュエータ手段が前記コイルに隣接する単一の帰還構造体のみを備えることも可能である。
【0043】
次に、コイルを電流が流れると、磁束は、それぞれの帰還構造体及びそれぞれの磁束誘導構造体を通して誘導される。システムは磁気抵抗を減らそうとするので、それぞれの磁束誘導構造体が、関連付けられる帰還構造体に引き付けられて、2つの磁気的に軟らかい構造体の間の間隙が減り、及び磁束の抵抗が減ることになる。それゆえに、壁部材及び光学素子が動かされる。これは、それぞれのコイル内の電流に応じて、壁部材を前記軸方向に沿って軸方向に動かすこと、及び/又は、壁部材をレンズ成形部材が広がる平面に対して傾斜させること、を可能にする。そのようなアクチュエータ手段はまた、リラクタンスアクチュエータとも呼ばれる。
【0044】
さらに別の実施形態により、アクチュエータ手段は、壁部材内又は上に配置された、複数の、具体的には、2つ、3つ又は4つの第1電極、並びに、支持体に結合された対応する複数の第2電極を備えることができ、ここで、各々の第1電極は異なる第2電極に関連付けられ、それぞれの第2電極と向き合うか又は対向し、その結果、それぞれの関連付けられる電極の間に間隙が存在する。それぞれの第1及び第2電極の間に電圧を印加することにより、光学素子を前記平面に対して軸方向に移動させ及び/又は傾斜させることができる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ装置は、光学素子、又は光学素子に結合された構成要素、例えば壁部材の、例えば、レンズ成形部材の位置などの基準位置に対する、空間位置を検出するための位置センサ手段を備える。光学素子の空間位置を定められた状態に調節することにより、レンズ装置の光学特性を定めることができる。これは、変形可能膜によって形成されるレンズの屈折力及び可変プリズムの角度を含む。
【0046】
リラクタンスアクチュエータの形態のアクチュエータ手段を使用するとき、位置センサ手段は、コイルを介して壁部材/光学素子の空間位置を計測するのに高周波電流信号を使用するように、有利に設計することができる。換言すれば、本発明の一実施形態において、具体的には、磁束誘導構造体(単数又は複数)740と帰還構造体(単数又は複数)700との間の間隙に関連付けられるリラクタンスアクチュエータのリラクタンスを直接検知するように設計することによって、壁部材/光学素子の空間位置を検出するのにアクチュエータ手段が使用される。
【0047】
壁部材が、移動によってコイルにより近づくと、コイル/帰還構造体と壁部材の間の間隙がより小さくなり、磁界のリラクタンスが減少し、従ってコイルのインダクタンスが増加し、それゆえに、これが前記間隙の幅及びそれゆえに壁部材/光学素子の空間位置の尺度となる。この方法の最大の利点は、これが出力信号と壁部材/光学素子の変位量(間隙幅)との間の線形関係を示すことである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態により、光学素子は透明である。この場合、レンズ装置はカメラの一部分とすることができ、又は、それ自体でカメラ、例えば、携帯電話のカメラを形成することができる。
【0049】
本発明の別の実施形態により、光学素子は、例えば、前記体積の方に向く反射表面を有するミラーとして形成される。例えば、前記ミラーは、膜を通してレンズに入り、前記体積内を進み、ミラーに当たり、次いで膜に向けて反射される光を、反射するように適合させることができる。
【0050】
この場合、レンズ装置はスキャナの一部分とすることができ、又はそれ自体でスキャナを形成することができる。
【0051】
さらに、光学素子はコーティングを備えることができる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態により、前記光学素子がミラーとして形成されるとき、壁部材はジョイントを介して、ブッシング内に摺動可能に配置された細長ピンに結合され、ここで、具体的には前記ブッシングは、レンズ装置の筐体及び/又は前記支持体に結合される。このようにして、光学要素/壁部材の移動/傾斜を安全に誘導することができる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態により、レンズ装置は、例えば、相殺すべきレンズ装置の意図しない急激な移動を検知するための移動センサ手段をさらに備える。この移動センサ手段は、揺れ移動及び/又は高さ移動、即ち、各々が光軸/軸方向に直交する2つの直交軸の周りの回転を検出するように設計することができる。
【0054】
本発明のさらに別の好ましい実施形態により、手ぶれ補正をもたらすために、レンズ装置は前記移動センサ手段と相互作用する制御ユニットを備え、この制御ユニットは、移動センサ手段によって検知される相殺すべき移動に応じてアクチュエータ手段を制御するように設計され、その結果、レンズ成形部材が広がる平面に対して光学素子がアクチュエータ手段により傾斜させられ、レンズ装置を透過する入射光ビームの方向を、前記検知された意図しない急激な移動を相殺するように変更する。このことは、意図しない移動が、例えば、画像センサの表面上のある特定の画像点の変位を生じ、これを、光学素子を傾斜させること及び従ってレンズ装置を通る入射光の光路を変更することによって補償することができるので可能であり、その結果、レンズ装置の望ましくない移動及び傾斜の前と同じ画像センサ位置に同じ対象点が行き着く。
【0055】
制御ユニットは、アクチュエータ手段が位置センサ手段によって検知された光学素子の実際の空間位置を、光学素子の基準空間位置に近づくように変更するように、アクチュエータ手段を制御するように設計されることが好ましく、その場合、光学素子(及びそれゆえに入射光ビームの方向)がレンズ成形部材に対して、意図しない急激な移動が相殺又は補償される(上記参照)ように傾斜される。ここで、代替的に、アクチュエータ手段は、位置センサ手段によって検知されたレンズ成形部材の実際の空間位置を変えることもできる(即ち、光学素子が静止する)。
【0056】
本発明のさらに別の一態様は、請求項28に記載の特徴を有する、レンズ装置を調節する方法、具体的には本発明によるレンズ装置を使用する方法に関する。
【0057】
請求項28によれば、レンズ装置は、透明で弾性膨張可能な膜、膜に向き合う又は対向する光学素子、壁部材であって、光学素子及び膜が壁部材に結合されて体積が形成される、壁部材、前記体積内に存在する流体、及び、膜の外側に結合されたレンズ成形部材を備え、膜の外側は前記体積から離れる方向を向き、及び、光学素子(又は代替的にレンズ成形部材)が、レンズ成形部材が広がる平面に対して(又は代替的にレンズ成形部材が傾斜される場合には光学素子に対して)傾斜されて体積を、体積内を透過する光を
偏向させるためのプリズムに成形する。
【0058】
この方法はカメラ並びにスキャナなどに使用することができる。
【0059】
光学素子はまた、レンズ成形部材に対して(又は逆も同様)軸方向に、例えば、レンズ成形部材に向かうように及びそれから離れるように移動させて、体積の中に存在する流体の圧力及びそれゆえに前記膜の曲率を調節する(具体的にはレンズ装置の焦点を自動的に調節する)ことが好ましく、ここで、前記軸方向は前記平面に(又は、場合により、光学素子に対して)垂直に向く。
【0060】
光学素子は、壁部材又はプレートを前記軸方向に沿って軸方向に移動させることによって、軸方向に移動させることが好ましい。光学素子は、前記平面に対して壁部材又はプレートを傾斜させることによって、傾斜させることが好ましい。
【0061】
本発明のさらに別の態様は、請求項29に記載の特徴を有する手ぶれ補正をもたらす方法、具体的には、本発明によるレンズ装置を使用する方法、に関する。
【0062】
請求項29によれば、レンズ装置は、透明で弾性膨張可能な膜と、膜に向き合う又は対向する光学素子と、壁部材であって、光学素子及び膜が壁部材に結合されて体積が形成される、壁部材と、前記体積内に存在する流体と、膜の外側であって、前記体積から離れる方向を向く外側に結合されたレンズ成形部材とを備え、レンズ装置の、相殺すべき意図しない急激な移動が検知され(例えば、移動センサ手段により)、前記検知された相殺すべき移動に応じてアクチュエータ手段が制御され(例えば、制御ユニットにより)、その結果アクチュエータ手段によって光学素子が、レンズ成形部材が広がる平面に対して傾斜されて(又は、アクチュエータ手段によってレンズ成形器が、光学素子がそれに沿って延びる平面に対して傾斜されて)、レンズ装置内を透過する入射光ビームの方向を、前記検知された移動を相殺するように変更する(上記も参照されたい)。傾斜するとき、アクチュエータ手段は、流体内の圧力が一定に保たれ、従って膜の曲率が一定に保たれるように設計される(又は制御される)ことが好ましい。
【0063】
この方法の好ましい実施形態により、具体的にはレンズ装置の自動焦点をもたらすために、並行して、具体的には同時に、アクチュエータ手段によって光学素子がレンズ成形部材に対して(又は逆に)軸方向に、例えば、レンズ成形部材に向かって及びそれから離れるように動かされ、その結果、体積の中に存在する流体の圧力及びそれにより前記膜の曲率が調節され、ここで前記軸方向は、レンズ成形部材が広がる前記平面に垂直に向く。
【0064】
光学素子は、壁部材又はプレートを前記軸方向に沿って軸方向に移動させることによって、軸方向に移動させることが好ましい。光学素子は、壁部材又はプレートを前記平面に対して傾斜させることによって、傾斜させることが好ましい。
【0065】
本発明のさらに別の好ましい実施形態により、アクチュエータ手段は少なくとも1つの磁石を備える。この少なくとも1つの磁石は第1側面、及び第1側面から離れる方向を向く第2側面を有することができる。具体的には、この少なくとも1つの磁石は環状又は輪状の形状を備え、それにより、この少なくとも1つの磁石が、この少なくとも1つの磁石の第1側面から前記第2側面まで延びる連続的窪みを有する。
【0066】
具体的には、この少なくとも1つの磁石(又は複数の磁石、下記参照)は、前記平面に垂直に軸方向に磁化される。
【0067】
さらに、レンズ装置は具体的には、磁束を前記磁石に向けて誘導するための磁束帰還構造体を備える。具体的には前記帰還構造体(可能な材料に関しては上記も参照)は少なくとも1つの磁石に沿って延びる。
【0068】
この点において、具体的には、帰還構造体は環状又は輪状形状を備え、具体的には、少なくとも1つの磁石の第1側面又は第2側面に沿って延び又はそれと向き合う。
【0069】
さらに、具体的には、前記アクチュエータ手段は、前記少なくとも1つの磁石に関連付けられた少なくとも1つのコイルを備え、この少なくとも1つのコイルは、前記平面又は前記光学素子に対して垂直に伸びるコイル軸の周りに巻かれた導線を備える。具体的には、コイル軸は、少なくとも1つの磁石の円筒軸と一致するか又は少なくとも1つの磁石の該円筒軸に平行に伸びる。具体的には、さらに、少なくとも1つの磁石の磁化は、前記コイル軸及び/又は円筒軸に平行に伸びる。
【0070】
さらに、一実施形態により、前記コイルは少なくとも1つの磁石に沿って延び、少なくとも1つの磁石と向き合い(ここで、前記少なくとも1つのコイルは、具体的には、少なくとも1つの磁石の第1側面又は第2側面と向き合う)、その結果、電流がコイルに印加されると、ローレンツ力が生成され、このローレンツ力が、少なくとも1つのコイル内の電流の方向に応じて、少なくとも1つの磁石と少なくとも1つのコイルが互いに引き合うか又は互いに反発するようにさせ、具体的にはその結果、光学素子がレンズ成形部材に対して軸方向に動かされ(又は逆に、結果としてレンズ成形部材が光学素子に対して軸方向に動かされる。上記参照)、それにより体積の中に存在する流体の圧力及びそれゆえに前記膜の曲率が調節され(前記軸方向は、レンズ成形部材がそれに沿って、又は光学素子がそれに沿って延びる平面に垂直に向く。上記参照)、及び/又は、光学素子を、前記平面、例えば、レンズ成形部材に対して傾斜させ(又は逆に、レンズ成形部材を光学素子に対して傾斜させる。上記参照)、それにより、具体的には体積が、体積内を透過する光を
偏向させるためのプリズムに成形される。
【0071】
上記において、前記少なくとも1つのコイルは全体にわたり1つのみの巻方向を有することができる。一実施形態において、1つのみのそのようなコイルが存在してよい。従って、コイルは、具体的には関連付けられる(例えば、単一の)磁石に沿って、前記磁石の環状又は輪状の経路に従って延び、磁石の一方又は他方の側面と向き合う。
【0072】
さらに、別の実施形態において、磁力及びそれらの効率を高めるために、少なくとも1つのコイルは、コイルの内側の第2部分を囲む外側の第1部分を備え(この第2部分は導電様式で第1部分に結合される)、ここで導線が前記平面又は前記光学素子に対して垂直に伸びる前記コイル軸の周りに巻かれ、その結果、コイルの各々の部分が少なくとも1つの磁石(この実施形態においては単一の磁石とすることができる)に沿って延び且つこの少なくとも1つの磁石と向き合い、ここで、前記第1部分において導線は、コイルの第2部分における導線の巻方向とは反対の巻方向を有し、その結果、電流がコイルに印加されると、電流は第1部分では一方向に流れ、コイルの第2部分においては反対方向に流れ、ローレンツ力が生成され、このローレンツ力が、コイルの前記部分内の電流の方向に応じて、コイル又は磁石をレンズ成形部材の方に引き付け、或はコイル又は磁石をレンズ成形部材から離れるように押しのける。具体的には、これは、上述の光学素子とレンズ成形部材の間の前記軸方向移動を生じるのを可能にする。
【0073】
ここで、(単一の)コイルの電気的に結合された複数部分を有する代りに、逆向きの巻方向又は逆方向の電流を有する2つの分離したコイルを備えることもできる。
【0074】
さらに別の実施形態により、具体的には、レンズ成形部材を光学素子に対して又は逆に傾斜させるために、この場合具体的にはレンズ装置の軸の周り(即ち、レンズ装置の体積の周り又は前記環状帰還構造体に沿って)に配置された複数の磁石が備えられる。次いで、具体的には、各々の磁石に対して、複数のコイルのうち、それぞれの磁石(例えば、その第1又は第2側面)と向き合う異なるコイルが関連付けられることが好ましい。
【0075】
そのような複数の磁石の場合、コイルは上記の前記第1及び第2部分を有する必要はない。具体的には、関連付けられた磁石の(具体的に細長の及び/又は湾曲した)輪郭(例えば、それぞれの磁石の第1又は第2側面の輪郭)に追随して、各々のコイルが具体的には細長の及び/又は湾曲した輪郭を有し、その結果、コイルの一方(例えば、外側)の半分(この半分は、具体的にはコイルの細長い寸法に沿って延びる)の中で電流が関連付けられた磁石に沿った第1の方向に流れるのと同時に、コイルの他方(例えば、内側)の半分(この他方の半分は具体的にはまたコイルの細長い寸法に沿って延びる)の中で電流が逆方向に流れる。
【0076】
上記において、一実施形態により、壁部材、又は壁部材の少なくとも一部分を少なくとも1つの磁石によって形成することができる。少なくとも1つの磁石(又は複数の磁石)を保持材料で取り囲むことができる。具体的には、壁部材は単一の磁石で形成することができる。具体的には、次に光学素子が少なくとも1つの磁石(又は壁部材)の第1側面に結合される。さらに、具体的には、次に前記膜が少なくとも1つの磁石(壁部材)の第2側面に結合される。さらに、この実施形態において、帰還構造体が具体的には少なくとも1つの磁石(壁部材)の第1側面に結合され、光学素子が具体的には前記帰還構造体を介して少なくとも1つの磁石(壁部材)の第1側面に結合される。
【0077】
さらに、この実施形態において、少なくとも1つのコイル又は複数のコイル(例えば、複数の関連付けられる磁石を有するときだけでなく単一の関連付けられる磁石を有するとき)が、具体的には環状又は輪状の形状を有するコイルフレームによって保持される。具体的には、前記コイルフレームは少なくとも1つの(又は単一の)磁石(例えば、膜が取付けられた磁石の第2側面)と向き合う。具体的には、レンズ成形部材がコイルフレームに、具体的には一体的に、結合される。
【0078】
上記において、別の実施形態により、壁部材は少なくとも1つのコイル(又は前記複数のコイル)を保持し、それにより具体的には少なくとも1つのコイルが前記体積を取り囲むように、設計することができる。さらに、位置センサ手段又はフィードバックセンサ、例えば、少なくとも1つの(又は単一の)コイルに対する少なくとも1つの(又は単一の)磁石の又は逆の空間位置を検出するためのホールセンサを壁部材に結合することができる。ここで、具体的には、壁部材は、光学素子及び膜と一緒に、流体並びに少なくとも1つのコイル又は複数のコイル及び結局は前記センサを保持するための容器(体積)を形成する。コイル及び壁部材はプリント回路基板とすることができる。
【0079】
具体的には、この実施形態において、少なくとも1つの磁石又は複数の磁石が、レンズ成形部材に、具体的には一体的に、結合される。
【0080】
さらに別の実施形態により、レンズ装置は、レンズ装置の温度を計測する温度センサを備える。計測された温度は、レンズを較正し、制御信号に応答してレンズの屈折力の温度感受性をより小さくするのに使用することができる。
【0081】
さらに、本発明の一実施形態により、磁界誘導プレートが、少なくとも1つの(又は単一の)磁石と磁界誘導プレートとの間の引力が高まるように、配置され、その結果、レンズ(例えば、膜)がより撓むときに前記磁石が磁界誘導プレートに向かって移動すると、引力が増加する。
【0082】
さらに、一実施形態により、レンズ装置はいわゆる2層液体レンズとして形成することができる。ここで、レンズ装置は、前記流体で充填されている前記体積から離れる方向に向いた側にさらに別の体積を備え、ここで、さらに別の体積はさらに別の流体で充填される。ここで、膜がまた前記さらに別の体積の一方の側の範囲を定める。そのような構成の利点は、さらに別の液体が、例えば、垂直に延びる膜が重力のために変形するのを防ぐことである。そのようなレンズ装置の実施形態は、例えば、
図31〜
図36に示す。
【0083】
具体的には、本発明によるレンズ装置は、照明器具、ライトショー、プリンター、医療機器、ファイバ結合、頭部装着グラス、レーザ加工、生体測定、計量、電子拡大鏡、ロボットカム、ファイバ結合、移動追跡、眼内レンズ、携帯電話、軍用、デジタルスチルカメラ、ウェブカメラ、顕微鏡、望遠鏡、内視鏡、双眼鏡、研究、工業用途、監視カメラ、自動車、プロジェクタ、眼科用レンズ、視覚システム、距離計、バーコードリーダに応用することができる。
【0084】
本発明のさらに別の特徴及び利点並びに本発明の実施形態を以下で図面を参照しながら説明する。