(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炎症促進性サイトカインがTNFα、IL-6、IL-lb、RANTES、IL-17、IL-23、CCL-1、MCP-5、およびCXCL2からなる群より選択される請求項1記載の使用。
前記薬剤が、p62コーディング核酸を含み、前記p62コーディング核酸が配列番号2と95%以上同一であるポリペプチドをコードし、かつ前記p62コーディング核酸が、さらにプラスミド、RNAまたはウィルスベクターを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
前記p62/SQSTM1ポリペプチドまたはp62/SQSTM1コーディング核酸が、さらに融合ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする核酸それぞれ含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
前記アジュバントが、ゲルタイプアジュバント、微生物アジュバント、微粒子アジュバント、油状乳剤アジュバント、界面活性剤ベースのアジュバントおよび合成アジュバントからなる群より選択される請求項14記載の使用。
前記非がん慢性炎症性疾患が、肥満、メタボリック症候群、2型糖尿病、脂肪肝、クローン病、膵臓炎、喘息、慢性閉そく性肺炎、関節炎、骨粗鬆症、変形性関節症、多発性硬化症、乾癬、うつ血性心不全、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患、うつ病、統合失調症、痛風、石綿症および珪肺症からなる群より選択される請求項8記載の使用。
前記対象が、炎症性疾患と診断される対象、過去に炎症性疾患の治療を受けた対象、炎症性疾患の家族歴をもつ対象および炎症性疾患に罹患しやすい対象からなる群より選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
前記抗炎症性の生物学的薬剤が、抗TNF抗体、抗IL1抗体、抗IL6抗体、抗IL6受容体抗体、抗IL12/23抗体、抗IL17抗体、抗IL1R抗体、抗IL1受容体拮抗剤および可溶性IL-1受容体からなる群より選択される請求項19記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書では慢性炎症の治療のためのp62組成物および方法が提供される。本発明者らは、対象へのp62コーディング核酸などのp62投与が炎症性サイトカインの産生を抑制することを発見した。その結果として、対象にに投与されたp62ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはp62ポリペプチドが、炎症関連疾患の進行を予防および/または軽減するために使用できる(このような疾患に含まれるものとして、骨粗鬆症、肥満、メタボリック症候群、2型糖尿病、脂肪肝、炎症性腸疾患、胃炎、慢性膵臓炎、喘息、慢性閉そく性肺疾患(COPD)、リューマチ性関節炎(RA)、骨関節症、多発性硬化症(MS)、乾癬、うっ血性心不全(CHF)、アテローム性動脈硬化症、 神経変性疾患(ALS、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティントン病)、痛風、石綿症および珪肺症が挙げられるものの、これらには限定されない。
【0033】
本明細書で使用されているごとく、「p62ポリペプチド」は全長62/SQSTM1タンパク質に相当するポリペプチドを意味する。また、本用語はp62/SQSTM1タンパク質のあらゆる相同体、類似体、フラグメントまたは誘導体を含める。ある実施形態では、単離p62ポリペプチドは
図2に示されるアミノ酸配列を有する(配列番号2)。「p62コーディング核酸」は、p62ポリペプチドあるいはその変異体の少なくとも一部をコードするDNAまたはRNAを意味する。
【0034】
いくつかの実施形態では、その対象はヒトである。その他の実施形態では、その対象は非ヒト系哺乳類であり、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、シカ、イヌ、ネコ、ラットまたはマウスが挙げられるががこれらに限定されるわけではない。
【0036】
また、本発明のポリペプチドには、全長アミノ酸配列またはそのポリペプチドコーディング核酸に加えて、フラグメントまたは切断物、類似体、ならびに本明細書で説明されるp62ポリペプチドおよびその切断物の相同体も含まれる。フラグメントは全長ポリペプチドの5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、50以上、100以上、200以上、または300以上のアミノ酸残基のペプチドを含める(またはペプチドをコードする)ことができる。
【0037】
また、p62/SQSTM1タンパク質のアミノ酸配列からの1つ以上のアミノ酸の欠失、または解離部分の欠失も含まれる。欠失されたアミノ酸は連続していてもまたは連続していなくてもよい。欠失突然変異により生じる類似体の下限長は、およそ10、およそ20、およそ50またはおよそ100アミノ酸である。
【0038】
一部の実施形態において、p62ポリペプチド(またはそのポリペプチドをコードする核酸)は1つ以上の欠失ドメインを有する。理論に固執することを望まないとはいえ、本発明者らはp62ポリペプチドの1つ以上のドメインの欠失が、免疫応答を指示するためのより小型でかつより操作可能なポリペプチドを提供できると考える。例えば、p62ポリペプチドの1つ以上のドメインを破壊または排除することによって、抗炎症効果は、より小型の分子内に保持され(あるいは欠失または破壊されたドメインがこの効果に寄与しない場合には改善され)得、そして重量ベースでは増加する可能性がある。
【0039】
p62ポリペプチドは下の表2に提供され、かつ
図3に示されるドメイン構造を有する。
【0041】
一部の実施形態では、1つ以上の上記ドメインが、下記に示される通り、p62核酸の核酸領域に相当するコドンでヒトのp62ポリペプチドから欠失される(インフレーム欠失)。
【0043】
例えば、ヌクレオチド102〜122から開始して167〜183で終了する任意のコーディング核酸配列の欠失はZZ欠失と見なされる。従って、例えば、ヌクレオチド110〜175の欠失はZZ欠失である。インフレーム欠失を生み出すための技術は当業者に十分に知られている。
【0044】
本明細書において使用される場合、「生物学的に活性である」とは個々の野生型ポリペプチドと同様の構造的機能(必ずしも同程度とは限らない)、および/または同様の調節機能(必ずしも同程度とは限らない)、および/または同様の生物化学的機能(必ずしも同程度とは限らない)を有する本発明によるポリペプチドを指す。
【0045】
本明細書において使用される場合、「欠失」とは、それぞれ野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに比べて、1つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が欠けているヌクレオチドまたはアミノ酸配列内の変化として定義される。
【0046】
本明細書において使用される場合、「挿入」または「付加」とは、野生型のポリヌクレオチドまたはポリペプチドにそれぞれ比べて、1つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の付加を生じるヌクレオチドまたはアミノ酸配列における変化である。
【0047】
本明細書において使用される場合、「置換」とは、野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとそれぞれ比較して、1つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸がそれぞれ異なるヌクレオチドまたはアミノ酸により置き換えられることより生じる。いくつかのの実施形態では、アミノ酸置換突然変異はC145RまたはQ418Rである。
【0048】
本明細書において使用される場合、用語「変異体」とは、野生型のポリペプチドと比べて、対立遺伝子の変異を含め、1つ以上のアミノ酸のその配列からの置換、欠失またはその配列への付加(または任意のこれらの組み合わせ)を有する任意のポリペプチド(対応する核酸によりコードされたポリペプチドを含む)を意味する。いくつかの実施形態では、得られるポリペプチドは、本発明で使用される場合、野生型のポリペプチドと比べて少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上の生物学的活性を保持する。p62ポリペプチドの変異体(その対応する核酸によりコードされたポリペプチドを含む)は、表1に掲げられるアミノ酸配列のいずれかに対して80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列同一性を有し得る。
【0049】
配列同一性または相同性はDevereux他、Nucl. Acid Res. 12:387-395(1984)に記載されているBest FitシーケンスプログラムまたはBLASTXプログラム(Altschul他、J Mol. 215:403-410)などの当技術において知られる標準手法を使用して決定できる。アラインメントは整列すべき配列におけるギャップの導入を含めてもよい。また、本明細書に開示されるタンパク質より多いかあるいはより少ないかのいずれかのアミノ酸を含む配列につき、相同性パーセンテージはアミノ酸の総数に対する相同性アミノ酸の数に基づいて決定されるものと理解される。従って、当然、p62ポリペプチドの変異体(その対応する核酸によりコードされるポリペプチドを含む)は、表1に掲げられるポリペプチド配列のいずれかに対して、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列相同性を有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドの変異体または誘導体はアミノ酸配列のその疎水性/親水性を維持する。保存されたアミノ酸置換は当技術分野において既知であり、例えば、1、2または3から10、20または30までの置換がなされ得る。アミノ酸置換は、天然には存在しない、例えば、血漿半減期を増加させる類似体の使用を含み得る。
【0051】
アミノ酸配列に関して本明細書で使用される用語「誘導体」とは本発明のポリペプチドの化学的修飾を意味する。
【0052】
この修飾の非限定的な例としては、カルボキシル末端あるいはカルボキシル側鎖を含む残基の脂肪族エステルまたはアミド、ヒドロキシル基含有残基のO−アシル誘導体、およびアミノ末端アミノ酸またはアミノ基含有残基、例えばリシンまたはアルギニンのN−アシル誘導体が挙げられるがそれらに限定されることはない。
【0053】
付加的な修飾としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーと共役されたポリペプチドの産生、または本発明のポリペプチドの化学合成中でのPEGの付加などが挙げられる。
【0054】
また、ポリペプチドまたはその一部分の修飾としては、還元/アルキル化、適当な担体への化学的結合、あるいは軽度のホルマリン処理を挙げることができる。
【0055】
用語「翻訳後段階で修飾される」または「修飾される」は、ポリペプチド鎖へのその組込み後のアミノ酸の任意の修飾を指す。該用語は同時翻訳インビボ修飾、翻訳後インビボ修飾および翻訳後インビボ修飾を包含するがこれらに限定されるものではない。
【0056】
本発明のポリペプチドのその他の誘導体は、非天然アミノ酸残基、またはリン酸チロシン、リン酸セリンもしくはリン酸スレオニン残基などのリン酸化アミノ酸残基の組込みを含む。その他考えられる修飾には、スルホン化、ビオチン化、またはその他部分、特に、リン酸基に類似した分子形状を有するものの付加を含む。
【0057】
また、誘導体はグリコシル化により修飾されたポリペプチドも含む。これらは様々な代替的真核生物宿主発現系中での合成およびプロセシング中あるいは追加のプロセシング段階でのグリコシル化パターンの修飾により作ることができる。グリコシル化修飾の生成方法は、哺乳類のグリコシル化酵素などの本来そのようなプロセシングを行う細胞由来のグリコシル化酵素に融合タンパク質を暴露させることを含む。若しくは、脱グリコシル化酵素を真核生物発現系における産生中に付着した炭水化物の除去に使用できる。さらに、また、グルコシル化部位が追加されるか、またはグルコシル化部位が欠失されるかもしくは機能不能にされるようにコーディング配列を修飾することができる。また、グリコシル化を望まない場合、タンパク質は原核生物宿主発現系において産生可能である。
【0058】
本発明のポリペプチドの変異体および/または誘導体は、本発明のp62ポリペプチドをコードする核酸を修飾するためにDaugherty他(Nucleic Acids Res. 19:2471(1991))により例示されているように、化学合成により、若しくは部位特異的突然変異誘発により(Gillman他、Gene 8:81 (1979年)、Roberts他、Nature 328:731 (1987年)、あるいはInnis(Ed.)、1990年、 PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications, Academic Press, New York, N.Y.)、あるいはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(サイキ他、Science 239:487 (1988))を利用して製造することができる。
【0059】
もう一つの実施形態では、本発明のポリペプチドはそのN末端において異種シグナル配列を含んでもよい。ある宿主細胞(例えば、哺乳類宿主細胞)において、融合タンパク質の発現および/または分泌は、異種シグナル配列の使用を通じて増加し得る。シグナル配列は、通常、疎水性アミノ酸のコアにより特徴づけられ、このコアは一般的に1回以上の切断事象での分泌の間に成熟したタンパク質から切断される。このシグナルペプチドは、分泌経路を通過しながらシグナル配列の成熟したタンパク質からの切断を可能にするプロセシング部位を含んでいる。こうして、本発明は、シグナル配列がタンパク質分解的に切断されたポリペプチド(すならち、切断生成物)だけでなく、シグナル配列を有する記載されたポリペプチドにも関連する。安定性および/または反応性を高めるために、本発明のポリペプチドは、天然の対立遺伝子変異から生じるアミノ酸配列の中に1つ以上の多型性を組み込んで修飾することも可能である。さらに、D−アミノ酸、非天然アミノ酸または非アミノ酸類似体は置換され、あるいは付加されて本発明の範囲内の修飾p62ポリペプチドを産生することができる。
【0060】
本発明のポリペプチドは、好適な発現系においてそれをコードするヌクレオチド配列の発現により産生されてもよい。
【0061】
付加的に、あるいは代替的に、ポリペプチドは化学的手法を利用して所望のアミノ酸配列を全体的にあるいは部分的に合成することで産生できる。例えば、ポリペプチドは固相法により合成して、樹脂から切断し、分取高性能液体クロマトグラフィ(例えば、Creighton(1983年) Proteins Structures And Molecular Principles, WH Freeman and Co、New York N.Y.)によって精製できる。合成ポリペプチドの組成はアミノ酸解析または配列決定により確認できる(例えば、エドマン分解法)。さらに、p62ポリペプチドのアミノ酸配列、またはその任意の部分は、直接合成を通して変更するか、および/または化学的方法を利用して、他のサブユニット由来の配列またはその任意の部分組み合わされて、変異体ポリペプチドを産生可能である。
【0062】
本明細書において使用される場合、用語「融合タンパク質」は2種以上の異なるタンパク質のアミノ酸配列を含むキメラタンパク質を指す。通常、融合タンパク質は当技術で良く知られるインビトロ遺伝子組み換え技術から生じる。
【0063】
さらなる実施形態では、本発明の融合タンパク質は、タンパク質精製を促進し、遺伝子組み換えタンパク質の発現を増加し、あるいは組換えタンパク質の溶解性を増加するために加えられた1つ以上の付加的ポリペプチドドメインをさらに含み得る。この精製/発現/溶解性促進ドメインは、固定化金属上への精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュールなどの金属キレートペプチド(Porath J(1992) Protein Expr Purif 3-.26328 1)、固定化イムノグロブリン上への精製を可能にするタンパク質Aドメイン、およびFLAGS伸張/アフィニティー精製系に用いられるドメイン(イムネクス社、シアトル、ワシントン州)などを含むがこれらに限定されることはない。精製ドメインとタンパク質間のXa因子またはエンテロキナーゼ(インビトロジェン、サンディエゴ、カリフォルニア州)などの開裂可能なリンカー配列の組み入れは精製の促進に有用である。
【0064】
追加の融合発現ベクターとしては、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトースB結合蛋白質、または蛋白質Aをそれぞれ標的の組換えタンパク質に融合するpGEX(ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)、pMAL(ニュー・イングランド・バイオラボ、ベバリー、マサチューセッツ州)およびpRITS(GEヘルスケア・バイオサイエンス、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)が挙げられる。EBV、BKVおよびその他のエピソーム発現ベクター(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)も使用できる。
【0065】
本発明の別の実施態様においては、p62ポリペプチドは、輸送部分またはトランスフェクション剤に非共有結合で連結できる。非共有結合で連結されるペプチドトランスフェクション剤の例は、チャリオットタンパク質送達システムである(米国特許第6,841,535号明細書、Morris他(1999年) J. Biol. Chem. 274(35):24941-24946、およびMorris他(2001年) Nature Biotech. 19:1173-1176)。
【0066】
ある実施形態では、p62ポリペプチドをコードする核酸分子が利用される。核酸分子は、1つ以上のp62ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、またはそのフラグメント(任意順番でドメイン、または1つ以上のドメインが欠失しているかまたは破壊されているポリペプチドをコードするフラグメントを含む)もしくは誘導体、例えばATCC寄託物におけるDNAインサートなどを含むかまたはそれからなる。p62ポリペプチドをコードするp62核酸分子の変異体は、配列番号1に対して80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列同一性を有し得る。
【0067】
用語「核酸配列」または「核酸分子」はDNAまたはRNA配列を指す。この用語は、とりわけ、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシ-メチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソ-ペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチル-グアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノ-メチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエウオシン、5'-メトキシカルボニル-メチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、クエウオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、クエウオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、クエウオシン、2-チオシトシンおよび2,6-ジアミノプリンなどのDNAおよびRNAの任意の既知塩基類似体から形成される分子を包含するものの、これらに限定されるものではない。
【0068】
本発明のある実施形態では、ベクターはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞への移動に使用される。ベクターは、核酸配列の宿主細胞への移動に使用される任意の分子である。特定の場合には、発現ベクターが利用される。発現ベクターは宿主細胞への導入および/または宿主細胞内での伝播に好適な核酸分子であり、移転された核酸配列の発現を指示するおよび/または制御する核酸配列を含む。発現とは、転写、翻訳およびスプライシング(イントロンが存在する場合)などのプロセスを含むがこれらに限定さるものではない。発現ベクターは、通常、ポリペプチドをコードする異種核酸配列に作動可能に連結される1つ以上のフランキング配列を含む。フランキング配列は、例えば、同種(すなわち、宿主細胞としての同一種および/または株由来)、異種(すなわち、宿主細胞種または株以外の種由来)、ハイブリッド(すなわち、2種以上の起源由来のフランキング配列の組み合わせ)あるいは合成でありえる。
【0069】
フランキング配列はコーディング配列の複製、転写および/または翻訳を行うことが可能であり、コーディング配列に作動可能に連結される。本明細書で使用される場合、用語、作動可能にに連結されるとは、機能的関係におけるポリヌクレオチド要素のつながりを指す。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コーディング配列の転写に影響を与えるとすれば、コーディング配列に作動可能に連結される。しかし、フランキング配列は、正しく機能する限り、コーディング配列と必ずしも接触している必要はない。つまり、例えば、未翻訳だが転写される介在配列はプロモーター配列とコーディング配列との間に存在可能であり、プロモーター配列は、なおコーディング配列に作動可能に連結されている見なしてよい。同様にして、エンハンサー配列はコーディング配列から上流または下流に配置でき、配列の転写に影響を与える。ある実施形態では、フランキング配列は、標的細胞における高レベル遺伝子発現を誘導する転写調節領域である。その転写調節領域としては、例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、リプレッサー要素またはそれらの組み合わせが挙げられる。転写調節領域は構造性があり、組織特異的で、細胞型特異的で(すなわち、該領域は、ある1つの種類の組織または細胞において、他と比較してより高レベルの転写を推進する)、あるいは調節可能(すなわち、分子との相互作用に反応する)であリ得る。転写調節領域の源は、フランキング配列が細胞においてその細胞内で核酸の転写を生じさせることにより機能することを条件に、任意の原核生物あるいは真核生物、任意の脊椎動物、あるいは無脊椎動物、あるいは任意の植物であってよい。多様な転写調節領域が利用できる。
【0070】
好適な転写調節領域としては、例えば、以下のものを含む。すなわち、CMVプロモーター(すなわち、CMV最初期プロモーター);真核生物遺伝子由来のプロモーター(すなわち、エストロゲン誘導型ニワトリ卵白アルブミン遺伝子、インターフェロン遺伝子、グルコ-コルチコイド-誘導型チロシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子、およびチミジンキナーゼ遺伝子);および主要初期および後期アデノウイルス遺伝子プロモーター;SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon、1981、Nature 290:304-10)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の3'の長い末端反復配列(LTR)に含まれるプロモーター(ヤマモト他、1980、Cell 22:787-97);単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)プロモーター(ワグナー他、1981年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1444-45);メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster他、1982、Nature 296:39-42)、ベータ−ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物発現ベクター(VIIIa-Kamaroff他、1978年、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 75:3727-31);または、tacプロモーター(DeBoer他、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:21-25)である。組織-および/または細胞-型特異的転写制御領域としては、例えば、なかでも、膵臓粒状果細胞内で活性であるエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift他、1984年、Cell 38:639-46;Ornitz他、1986年、Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409 (1986年);MacDonald、1987年、Hepalology 7:425-515);膵臓ベータ細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan、1985年、Nature 315:115-22);リンパ細胞内で活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl他、1984年、Cell 38:647-58;Adames他、1985、Nature 318:533-38;Alexander他、1987年, Mol. Cell. Biol., 7:1436-44);精巣、乳房、リンパおよび肥満細胞におけるマウス乳腺腫瘍ウィルス制御領域(Leder他、1986年、Cell 45:485-95)、肝臓におけるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert他、1987年、Genes and Devel. 1:268-76);
肝臓におけるアルファフェトプロテイン遺伝子制領域(Krumlauf他、1985年、Mol. Cell. Biol., 5:1639-48;Hammer他、1987年、Science 235:53-58);肝臓におけるアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey他、1987年、Genes and Devel. 1:161-71);骨髄細胞のベータグロビン遺伝子制御領域(Mogram他、1985年、Nature 315:338-40;Kollias他、1986年、Cell 46:89-94);脳内乏突起膠細胞におけるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead他、1987年、Cell 48:703-12);骨格筋におけるミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani、1985年、Nature 314:283-86);視床下部における性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason他、1986年、Science 234:1372-78)、および黒色腫細胞におけるチロシナーゼプロモーター(Hart, I. Semin Oncol 1996 February、23(1):154-8;Siders他、Cancer Gene Ther 1998年 Sep-Oct; 5(5):281-91)が挙げられる。また、例えば、ある分子の存在下、または光、熱、放射線、テトラサイクリンまたはヒートショックタンパク質などの条件下で活性化される誘導性プロモーターも使用できる(例えば、国際公開第00/10612号を参照)。当技術ではその他の好適なプロモーターが知られている。
【0071】
上述のように、エンハンサーもまた好適なフランキング配列である。エンハンサーはDNAのシス作用エレメントであり、通常、約10〜300bpの長さであって、プロモーターに作用して転写を増加させる。エンハンサーは通常、方向および位置に依存せず、制御されたコーディング配列に5'および3'の両方で同定されている。哺乳類遺伝子から入手できる複数エンハンサー配列が知られている(すなわち、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファフェトプロテインおよびインスリン)。同様に、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが真核生物プロモーター配列と共に有用である。エンハンサーが、核酸コーディング配列に対して5'または3'位置でベクターにスプライスされることがあるものの、普通はプロモーターから5'位に置かれる。当技術ではその他好適なエンハンサーも知られていてそれらも本発明に応用できよう。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態では、p62ポリヌクレオチドまたはp62ポリペプチドを含むワクチンが本明細書により提供される。また、このワクチンはアジュバントを含むことができる。任意の多様なアジュバントが本発明のワクチンに採用され免疫反応を高めることができる。大半のアジュバントは、水酸化アルミニウムまたは鉱物油などの、抗原を急速な異化作用から保護するために設計された物質、ならびに免疫反応の非特異的刺激剤を含む。好適なアジュバントは市販で入手でき、例えば、不完全フロイントアジュバントおよび完全フロイントアジュバント(ディフコ・ラボラトリーズ)ならびにメルクアジュバント65(メルク&カンパニー社、ローウェー、ニュージャージー州)がある。好適なアジュバントのタイプは、ゲルタイプ、微生物、微粒子、油状乳剤、界面活性剤ベースおよび合成アジュバントを含むがこれらにだけは限定されない。
【0073】
ある実施形態では、本発明の組成物において、p62ポリペプチド、p62ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体の、細胞表面タンパク質やサイトカイン、ケモカインまたはシグナル伝達分子などの1つ以上の共刺激成分との組み合わせが有利であり得る。共刺激成分は、例えば、組成物中にポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸として含めてもよい。好適な共刺激分子としては、例えば、CD28結合ポリペプチド B7.1(CD80;Schwartz、1992年;Chen他、1992年;Ellis他、J. Immunol., 156(8): 2700-9)およびB7.2(CD86; Ellis他、J. Immunol., 156(8): 2700-9)などのCD28ファミリーのメンバー(すなわち、CD28, ICOS; Hutloff他、Nature 1999, 397: 263-265; Peach他、J Exp Med 1994, 180: 2049-2058)に結合するポリペプチド;ICAMファミリーのメンバー(すなわち、ICAM-1、-2または-3)などのインテグリンファミリーのメンバー(すなわち、LFA-1(CD11a/CD18);Sedwick他、J Immunol 1999、162:1367-1375;Wulfing他、Science 1998、282:2266-2269;Lub他、Immunol Today 1995, 16:479-483)を結合するポリペプチド;CD58(LFA-3;CD2リガンド;Davis他、Immunol Today 1996、17: 177-187)あるいはSLAMリガンド(Sayos他、Nature 1998, 395: 462-469)などのCD2ファミリーメンバー(すなわち、CD2、シグナル伝達リンパ球活性化分子(CDw150 または「SLAM」;Aversa他、J Immunol 1997年 158:4036-4044))を結合するポリペプチド;熱安定抗原を結合するポリペプチド(HSAまたはCD24、Zhou他、Eur J Immunol, 1997, 27:2524-2528);TNF受容体(TNFR)ファミリーのメンバー(すなわち、4-1BB(CD137、Vinay他、Semin Immunol 1998, 10:481-489)、OX40 (CD134;Weinberg他、Semin Immunol 1998, 10: 471-480;Higgins他、J Immunol 1999, 162:486-493)およびCD27(Lens他、Semin Immunol 1998、10:491-499))に結合するポリペプチド、例えば、CD2族メンバー4-1BBL(4-1BBリガンド;Vinay他、Semin Immunol 1998, 10:481-48、DeBenedette他、J Immunol 1997、158:551-559)、TNFR関連因子-1(TRAF-1;4-1BBリガンド;Saoulli他、J Exp Med 1998, 187:1849-1862、Arch他、Mol Cell Biol 1998, 18:558-565)、TRAF-2(4-1BBおよびOX40リガンド;Saoulli他、J Exp Med 1998、187:1849-1862;Oshima他、Int Immunol 1998、10:517-526、Kawamata他、J Biol Chem 1998、273:5808-5814)、TRAF-3(4-1BBおよびOX40リガンド;Arch他、Mol Cell Biol 1998、18:558-565;Jang他、Biochem Biophys Res Commun 1998、242:613-620;Kawamata S他、J Biol Chem 1998, 273:5808-5814)、OX40L(OX40リガンド;Gramaglia他、J Immunol 1998、161:6510-6517)、TRAF-5(OX40リガンド;Arch他、Mol Cell Biol 1998, 18:558-565;Kawamata他、J Biol Chem 1998、273:5808-5814)、およびCD70(CD27リガンド;Couderc他、Cancer Gene Ther., 5(3):163-75)などが挙げられる。CD154(CD40リガンドすなわち「CD40L」;Gurunathan他、J. Immunol., 1998、161:4563-4571; Sine他、Hum. Gene Ther., 2001、12:1091-1102)も好適である。
【0074】
核酸による免疫付与の効率を改善するために採用できる追加の戦略もある。例えば、自己複製ウイルス・レプリコン(Caley他、1999, Vaccine 17:3124-2135;Dubensky他、2000, Mol. Med. 6:723-732;Leitner他、2000, Cancer Res. 60:51-55)、コドン最適化(Liu他、2000, Mol. Ther., 1:497-500;Dubensky、既掲;Huang他、2001、J. Virol. 75:4947-4951)、インビボエレクトロポーレーション(Widera他、2000、J. Immunol. 164:4635-3640)、CpG刺激性モチーフの組込み(Gurunathan他、Ann. Rev. Immunol., 2000、18:927-974;Leitner、既掲;Cho他、J. Immunol. 168(10):4907-13)、エンドサイトーシスまたはユビキチンプロセッシング経路のターゲッティング用配列(Thomson他、1998、J. Virol. 72:2246-2252;Velders他、2001、J. Immunol. 166:5366-5373)、マレック病ウイルス1型 VP22配列(J. Virol. 76(6):2676-82、2002)、プライム・ブースト投与計画(Gurunathan、既掲;Sullivan他、2000、Nature, 408:605-609;Hanke他、1998、Vaccine、16: 439-445;Amara他、2001、Science、292:69-74)、ならびにサルモネラなどの粘膜送達ベクターの使用(Darji他、1997、Cell 91: 765-775;Woo他、2001、Vaccine, 19:2945-2954)である。当技術においては、その他の方法も知られており、その一部について下記に記す。
【0075】
p62ポリペプチドをコードする核酸は複数の利用可能な手法によって対象に投与することができる。核酸の宿主への導入に上手く利用されてきた様々なウイルスベクターとしては、なかでもレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルスおよび痘疹ウイルスが挙げられる。当技術分野においてはこのような多数のウイルスベクターが利用できるものと当技術分野において理解されている。当業者に広く利用可能な標準的な組み換え技術を利用してベクターを構築することができる。このような技術の多くは、分子クローニング:実験室マニアル(Sambrook他、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press)、遺伝子発現技術(Methods in Enzymology, Vol. 185, D. Goeddel編集、1991、Academic Press, San Diego, Calif.)、およびPCRプロトコル:メソッド&アプリケーションガイド(Innis他、1990、Academic Press、San Diego, Calif.)に開示されている。
【0076】
好適なレトロウイルスは、ネズミまたは鳥類由来のレトロウイルスの誘導体だけでなくレンチウイルス誘導体を含む。好適なレトロウイルスベクターの例としては、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーヴェイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)がある。数多くのレトロウイルスベクターが複数の外因性核酸配列を組み込むことができる。組み換えレトロウィルスは不完全であるため、感染性ベクター粒子を産生するためには手助けを必要とする。この手助けは例えば、レトロウイルスの構造遺伝子をコードするヘルパー細胞株によりもたらされる。好適なヘルパー細胞株としては、なかでもとくに、PSI.2、PA317およびPA12が挙げられる。この細胞株を用いて産生したベクタービリオンは、NIH 3T3細胞などの組織細胞株に感染させるために使用して大量のキメラレトロウイルスビリオンを産生できる。レトロウイルスベクターは、伝統的な方法(すなわち注射)、または標的細胞集団のすぐ近くへの「産生細胞株」の移植によって投与できる(Culver, K.他、1994、Hum. Gene Ther., 5(3):343-79;Culver, K.他、Cold Spring Harb. Symp; Quant. Biol., 59:685-90);Oldfield、E., 1993、Hum. Gene Ther., 4(1):39-69)。産生細胞株はウィルスベクターを産生して、ターゲット細胞近傍にウィルス微粒子を放出するよう設計される。放出されたウィルス微粒子の一部分はターゲット細胞に触れてそれらの細胞に感染することで本発明の核酸をターゲット細胞に送達する。ターゲット細胞の感染に続き、ベクターの核酸の発現が起こる。
【0077】
アデノウイルスベクターは遺伝子の真核生物細胞への移転に有用である。(Rosenfeld, M.他、1991、Science、252 (5004): 431-4;Crystal、R.他、1994、Nat. Genet. 8 (1):42-51)。組み換えアデノウィルスをインビボで種々の組織に投与するルートとしては、なかでも、気管内点滴(Rosenfeld, M.他、1992、Cell、68(1):143-55)、筋肉内注射(Quantin, B.他、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89(7)、2581-4)、末梢静脈注射(Herz、J.および Gerard, R., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90(7):2812-6)および脳に対する定位固定接種(Le Gal La Salle, G.他、1993、Science、259(5097):988-90)がある。
【0078】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は宿主細胞ゲノムへの組込みに際し、高レベルの感染力、幅広い宿主範囲および特異性を示す(Hermonat, P.他、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81(20):6466-70)。単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)は、特に、その神経向性特性のため神経系での用途に対し、なおもう一つの魅力的なベクターシステムである(Geller, A.他、1991、Trends Neurosci., 14(10):428-32;Glorioso他、1995、Mol. Biotechnol., 4(1):87-99;Glorioso他、1995、Annu. Rev. Microbiol., 49:675-710)。
【0079】
痘疹ウイルスはまたべつの有用な発現ベクターである(Smith他、1983、Gene、25(1):21-8;Moss他、1992、Biotechnology, 20:345-62;Moss他、1992、Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:25-38;Moss他、1991、Science, 252:1662-1667)。有用であることが示されている種疹ウイルスは、なかでも、牛痘、NYVAC、アビポックス、鶏痘、カナリア痘、ALVAC、およびALVAC(2)である。
【0080】
NYVAC(vP866)は、既知のまたは潜在的な病原性因子をコードするゲノムの6つの非必須領域の欠失による牛痘ウイルスのコペンハーゲンワクチン株から誘導された(例えば、米国特許第5,364,773号明細書および第5,494,807号明細書参照)。欠失遺伝子座は外来遺伝子の挿入用の受容遺伝子座としても設計された。NYVAC(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4Lリバース、pMPC6H6K3E3、およびpC3H6FHVBもまた、ブタペスト条約の条項に基づいてATCCに寄託されており、それぞれ受託番号VR-2559、VR-2558、VR-2557、VR-2556、ATCC-97913、ATCC-97912、およびATCC-97914である。
【0081】
ALVACベースの組み換えウイルス(すなわち、ALVAC-1およびALVAC-2)もまた、好適なベクターである(例えば、米国特許第5,756,103号明細書参照)。ALVAC(2)は、ALVAC(2)ゲノムが牛痘プロモーターの制御下で牛痘E3LおよびK3L遺伝子を含む点を除き、ALVAC(1)と同じである(米国特許第6,130,066号明細書;Beattie他、1995a、1995b、1991;Chang他、1992;Davies他、1993)。ALVACはブタペスト条約の条項に基づいてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110-2209、USAにATCC受託番号 VR-2547で寄託された。
【0082】
もう1つの有用な痘疹ウィルスベクターはTROVACである。TROVACは日齢1日の予防接種のライセンスを受けた鶏の痘疹ウィルスのP-1ワクチン菌株から得たプラーククローン化分離株であった弱毒化された鶏痘ウィルスを指す。TROVACは同様にしてATCCに受託番号2553で、ブタペスト条約の条項に基づいて寄託された。
【0083】
「非ウィルス」プラスミドベクターも本発明を用いる際に好適である。好適なプラスミドベクターはバクテリアや昆虫、および/または哺乳類宿主細胞と適合性がある。このベクターとしては、例えば、PCR-II、pCR3、およびpcDNA3.1 (サーモフィッシャー)、pBSII(アジレントテクノロジー、サンタクララ、CA)、pET15(EMD ミリポア、ビルリカ(Bullerica)、MA)、pGEX(GEヘルスケアバイオサイエンス、ピスカタウェイ、N.J.)、pEGFP-N2(クローンテック、パロアルト、Calif.)、pETL(BlueBacll、サーモフィッシャー)、pDSR-アルファ(国際公開第90/14363号)、およびpFastBacDual(サーモフィッシャー)、ならびにBluescript(登録商標)プラスミド誘導体(高コピー数のCOLE1-ベースファージミド(アジレントテクノロジー、サンタクララ、Calif.)、Taq-増幅PCR産物をクローニングするために設計されたPCRクローニングプラスミド(例えば、TOPO(商標)TAクローニング(登録商標).キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体)などが挙げられる。サーモフィッシャーのバクテリアベクターが本発明とともに使用できる。これらのベクターとしては、例えば、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ラクロバチルス(Laclobacillus)、カルメットゲラン桿菌(Bacille calmette guerin)(BCG)、およびストレプトコッカス(Streptococcus)がある(例えば、国際公開第88/6626号; 国際公開第90/0594号、国際公開第91/13157号、国際公開第92/1796号、および国際公開第92/21376号を参照のこと)。当技術においてはその他にも多くの非ウィルスプラスミド発現ベクターおよびシステムが知られており、本発明を用いて使用できる。
【0084】
好適な核酸送達技術としては、なかでも、DNAリガンド複合体、アデノウィルス−リガンド−DNA複合体、DNAの直接注入、CaP04沈殿、遺伝子銃技術、電気穿孔法ポリマー遺伝子送達システム、細胞透過ペプチド遺伝子送達システム、およびコロイド拡散システムがある。ポリマー遺伝子送達システムはとしてはポリエーテルイミド系送達システムおよびプルロニック系送達システムがある。細胞透過ペプチドに基づくシステムとしては、細胞膜を横切るDNAの移動を媒介する9〜35マーの陽イオン性および/または両親媒性のペプチド。コロイド拡散システムとして、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型乳剤、ミセル、混合ミセルおよびリポソームなどの脂質ベースのシステムが挙げられる。リポソームは生体内外の送達ビヒクルとして有用な人工膜小胞である。RNA、DNAおよび無傷のビリオンは水性の内部にカプセル化され生物学的に活性な形態で細胞まで搬送できる(Fraley, R.他、1981、Trends Biochem. Sci., 6:77)。リポソームの組成は、通常、リン脂質、特に高い相転移温度のリン脂質の組み合わせで、普通はステロイド、特にコレステロールと併用される。その他のリン脂質またはその他の脂質も使用される。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価のカチオンの存在に依存する。リポソーム産生における有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのホスファチジル化合物、スフィンゴ脂質、セレブロシドならびにガングリオシドなどが挙げられる。脂質はジアシルホスファチジルグリセロールである。ジアシルホスファチジルグリセロールの脂質部分としては14〜18個の炭素原子を有し得る。ジアシルホスファチジルグリセロールの脂質部分としては16〜18個の炭素原子を有し得る。ジアシルホスファチジルグリセロールの脂質部分は飽和され得る。リン脂質の例示としては、エッグホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドならびにガングリオシドがある。
【0085】
ある実施形態では、炎症性疾患の治療方法が提供される。様々な実施形態において、ガンに関係しない炎症性疾病の治療方法が提供される。一部の実施形態では、炎症疾患の治療は、治療有効量のp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸を所望の成果を得るため必要な量とタイミングとで所要の患者に投与することを含む。本発明の一定の実施形態において、発明標的微粒子の「治療有効量」とは、炎症性疾患の1種以上の症状あるいは特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の軽減に有効な量である。
【0086】
本発明の1実施態様では、p62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸の炎症性疾患あるいは再発を患う対象への投与方法が提供される。一部の実施形態では、p62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は所望の成果(つまり、炎症性疾患の治療)を得るのに必要なだけの量とタイミングで対象に投与される。本発明のある実施形態では、p62ポリペプチドおよびp62コーディング核酸の「治療に有効な量」は、炎症性疾患の1種以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延、進行の抑制、重症度の軽減、および/またはの発生率の低減に有効な量である。一部の実施形態では、本発明のp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は過去に炎症性疾患の治療を受けた対象に投与される。一部の実施形態では、本発明のp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は炎症性疾病の家族歴のある対象に投与される。一部の実施形態では、本発明のp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は炎症性疾患性向のある対象に投与される。例えば、炎症性疾患(ALS、パーキンソン病、ハンティントン病)に対して遺伝的に体質であるか、もしくは炎症性疾患を引き起こす環境因子(例えば、たばこの煙、アスベスト、シリカ微粒子)を受けている対象である。ALSに対する遺伝子体質はスーパーオキシド・ディスムターゼあるいはTAR・DNA結合タンパク質43(TDP-43)の遺伝子突然変異と関係づけられる。パーキンソン病に対する遺伝的体質はパーキンおよびシヌクレイン遺伝子と関係付けられる。ハンティントン病に対する遺伝的体質はハンティントン遺伝子突然変異と関係付けられる(Glass, C. K., K. Saijo他 (2010)「神経変性における炎症の基本機構」、Cell 140(6):918-934)。たばこの煙、アスベスト、シリカ微粒子は、分解しにくいアレルゲンや非消化性異質微粒子として、良く知られる慢性炎症の誘導因子である。これらは慢性的閉そく性肺炎症、珪肺症、石綿症につながる(Medzhitov 2010. Inflammation 2010: New Adventures of an Old Flame. Cell 140:771-776)。
【0087】
一部の実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、炎症性疾患、障害および/または状態の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の軽減に使用できる。一部の実施形態では、炎症性疾患、障害、および/または状態は非ガン関連である。該疾病としては、骨粗鬆症、肥満、メタボリック症候群、2型糖尿病、脂肪肝、炎症性腸疾患、胃炎、慢性膵臓炎、喘息、慢性閉そく性肺疾患(COPD)、リューマチ性関節炎(RA)、骨関節症、多発性硬化症(MS)、乾癬、うっ血性心不全(CHF)、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患(ALS、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティントン病)、痛風、石綿症および珪肺症が含まれるがこれらに限定されることはない。
【0088】
一部の実施例では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、骨粗鬆症の1つ以上の症状また特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。骨粗鬆症は骨喪失に関連するとともに閉経をきっかけに多くの女性に影響を与える最もありふれた骨の病気である。閉経はエストロゲンレベルの減少をもたらし、このため、エストロゲンの発生の停止をもたらす齧歯目の卵巣切除は骨粗鬆症のごく普通のモデルとなる。閉経後の期間はIL-6、TNF−アルファ、およびIL-1ベータなどのサイトカインの上昇が目立ち、同じサイトカインが卵巣切除状態で上昇する。TNFおよびIL-1は骨粗鬆症において強力な抗アポトーシス作用を有し、OC寿命を長くし、骨の再吸収を加速して骨の形成を抑制すると同時に、TNF−アルファおよびIL-1ベータの遮断はエストロゲン欠乏による骨粗鬆症を防止する(Mundy、2007年、骨粗鬆症と炎症栄養摂取レビュー 65:S147-S151; LencelおよびMagne 2011. Inflammaging: The driving force in osteoporosis? Medical Hypotheses 76:317-321)。
【0089】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、肥満、2型糖尿病および脂肪肝の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の軽減に使用できる。肥満は人々の中にますます広がっており、インスリン抵抗性の進展、2型糖尿病(T2D)およびメタボリック症候群の両方の基本特性と強く関連付けられる。インスリン抵抗性は、グルコース不耐性、インスリン抵抗性、肥満、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール、高血圧、および進行性アテローム性動脈硬化症を含むメタボリック症候群の重要な特性として認識されてきた。慢性、亜急性の炎症状態を肥満の進展とインスリン抵抗性やT2Dとメタボリック症候群の共存状態に関係づける証拠が増えている。炎症性サイトカインTNF-aが、多数の齧歯目肥満モデルが肥満した結果としてインスリン抵抗性をもたらすことが実証されてきた。TNFアルファだけでなく、多様なその他炎症性メディエーターやサイトカインもまた、肥満の実験マウスモデルやヒトでもその脂肪及びその他組織内で過剰発現される。炎症性サイトカインはインスリン抵抗性の原因となり得ると同時に、抗炎症性薬はその抵抗性を後退させるため、炎症が直接的にインスリン抵抗性に関与していることを示唆している(Hotamisligil 2006. Inflammation and metabolic disorders. Nature 444:860-867)。
【0090】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、メタボリック症候群の肝臓症状として認識され、5%を超える肝臓を冒す脂肪過多湿潤物の蓄積が特徴である。NAFLDの臨床上の意義は,
それのもつ脂肪性肝炎(NASH)、線維症、肝硬変、および一部のケースでは肝細胞がんへの進行のための潜在力から生じる。NAFLDの罹患率は肥満の上昇率と並行して上昇しつつあり、この地球規模のトレンドは西洋式生活スタイルの食事に起因する。NAFLDの発病は十分に理解されていないが、「二撃」のプロセスであることが提案される。第1「撃」は脂質蓄積と脂肪症にむすびつく。この脂質蓄積の機序ははっきりしないが、ベータ酸化、ごく低密度リポタンパク質の分泌、デノボ脂質合成、ならびに脂質の輸送および貯蔵などの無調節な脂質恒常性にかかわっているようである。この肝臓脂肪症は、脂肪性肝炎の重要な病態生理学的特徴である炎症、および進行性の肝臓疾患につながる第2「撃」に対して肝臓を敏感にする(Renaud他、2014. 「マウスの脂質代謝、酸化によるストレス、および炎症に関係する遺伝子発現に対する食事効果-脂肪肝症の機構洞察」 PLoS ONE 9:e88584)。
【0091】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、潰瘍性大腸炎やクローン病だけに限らない疾患を含めたIBDの1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の軽減に使用できる。炎症性腸疾患(IBD)は消化管の慢性炎症性障害である。IBDの例としては潰瘍性大腸炎やクローン病がある。ヒトの遺伝子研究や発病前のIBDモデルに基づく重要な証拠は、粘膜上皮層または免疫系のいずれかが内肛部微生物集落と適切に相互作用できないことが発病プロセスの根底にあることを示唆している。また、IBDは大腸がん腫発達の重大リスク因子であり、そこでは炎症性サイトカインTNFα、インターロイキン-1、IL-6が大きな働きを演じる(Danese & Mantovani 2010.炎症性腸疾患と腸ガン:炎症とがんの間の陰陽相互連携のパラダイム、Oncogene, 29:3313-3323)。
【0092】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、喘息の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の軽減に使用できる。喘息は気道での炎症性疾患であり、気道過敏性、閉塞、粘液過剰産生および気道壁リモデリングにつながる。喘息は古典的には、IgEレベルの上昇と、気道内の好酸球炎症とを伴う典型的なTh2疾患として認識されている。Th2サイトカインの出現は気道炎症を調節して気道のリモデリングを誘発する。しかし、この比較的単純なパラダイムは、Th2機能抑制を意図した戦略が臨床試験中の患者にとり必ずしもすべてに十分有効というわけではないという認識を理由に疑われている。(Kudo他、2013. Pathology of asthma. Frontiers in Microbiology 4:263)。
【0093】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、COPD(慢性閉そく性肺炎)の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の軽減に使用できる。COPDは主に肺実質および末梢気道に影響を及ぼす慢性炎症と関係付けられ、多くは不可逆的かつ進行性の気流制約を生じる。この炎症は血液循環により集められた肺胞マクロファージ、好中性白血球、およびTリンパ球の数の上昇によって特徴付けられる。酸化性ストレスはこの炎症が進む上で重要な役目を果たす。肺炎症は肺がんの進行と成長を昂じさせる。末梢の炎症は循環中に広がり、同じ炎症性タンパク質による全身性の炎症を生じる。全身性炎症は並存症を悪化させる。従って、肺炎症の治療は、有益な作用を有する(Barnes 2014. Cellular and Molecular Mechanisms of Chronic Obstructive Pulmonary Disease. Clinics in Chest Medicine 35:71-86)。
【0094】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、リューマチ性関節炎(RA)の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。RAは西欧諸国全人口の約1%に影響を及ぼす慢性の炎症性、全身性自己免疫疾患であって、女性では男性よりも2、3倍多いのが普通である。RAの病因および発病はまだ十分に把握されていないが、この疾患は進行性の滑液過形成(パンヌス形成)および炎症(滑膜炎)が特徴であり、治療しないと軟骨や骨の進行性破壊に至る。破壊的な病変部は免疫反応および非抗原特異的先天的な炎症性プロセスが原因で生じる。
【0095】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、世界中で数百万人の人々に影響を与える関節疾患である変形性関節症(OA)の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。この疾患は主として可動関節に関係し、慢性的でありかつ何十年にもわたりゆっくり進展する。OAの病態生理機能における滑液炎症の役割は現在広く受け入れられている。滑液は軟骨変化に対して二次的と考えられてきたにもかかわらず、調査結果は滑液炎症がOAの臨床段階につながる初期の事象の構成要素であり得ることを示している。滑液炎症は炎症性サイトカイや数種の炎症メディエーターの産生と放出に結びつく。これらの因子の一部は、炎症性サイトカインを含め、軟骨へ滑液を通して拡散することで、自動的かつパラクリン機序による異化作用因子の軟骨細胞産生活動を促進する。
【0096】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、多発性硬化症(MS)の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。MSは、CNSにおける炎症、脱髄および軸索変性を特徴とする。個体は慢性の痛み、疲労、うつ、睡眠障害、痙性、歩行および調節の不均衡、偏頭痛、感覚器官機能不全ならびに全体認知障害などのMS関連並存症に苦しめられる(Damal他、2013. 「多発性硬化症患者管理における治療の最適化:薬物効能、投薬、および作用機構のレビュー」. Biologics 7:247-258)。この病理はニューロンに対して二次作用を生じる髄鞘成分を対象とする免疫系統の大きな欠陥が原因で生ずる。MSはCNSにおける炎症性脱髄病変部の存在が特徴の免疫媒介性疾患と考えられる。バクテリアあるいはウィルスによる感染あるいはその他の環境刺激物は、多発性硬化症(MS)内の小膠細胞および星状膠細胞の活性化の引き金となって、転写因子NFカッパBおよびAP-1の活性化を通じて炎症性サイトカインの産生に至る(Luessi他、2012年、多発性硬化症における神経変性:最新治療ストラテジー、Expert Rev Neurother 12:1061-1076)。
【0097】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、アテローム性動脈硬化症の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。アテローム性動脈硬化症はリューマチ性関節炎を含め従来からの炎症性疾患と特性を共にする。アテローム性動脈硬化症は冠動脈と脳血管疾病の主原因であり、これらは世界中の死亡の主な原因である。アテローム形成は全身性リスク因子対する血管壁の曝露や局部の血行動態が原因の内皮機能不全の発達から始まると考えられている。引き続き起こる内皮活性化が血管壁における炎症性細胞の蓄積を促進する。アテロームが進行するにつれ、炎症性細胞はサイトカインや成長因子を産生して、これらが脈管内膜への平滑筋細胞移動を引き起こす。脈管内膜構造が変化して、病変部の二分区画、繊維質被膜ならびに壊死性核の形成に深く結びつく。また、炎症性細胞は繊維質被膜または組織因子などの凝血促進性分子の健全性を破壊させるマトリックス分解酵素を産生して、究極的に、プラーク(粥腫)崩壊および血栓症に至る(Cole他、2011. Toll-like receptors in atherosclerosis: a "Pandora’s box" of advances and controversies. Trends in Pharmacological Sciences 34:629-636)。
【0098】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、胃炎の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。胃炎の原因は慢性炎症を起こす胃炎粘膜に集落を作るヘリコバクタ―・ピロリ(Helicobactor pylori)であり、これは多数の炎症性遺伝子の発現強化を特徴とする。
【0099】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、慢性膵臓炎(CP)の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。慢性膵臓炎(CP)は漸進的に破壊され繊維症組織に置換された膵臓実質組織に関係する繊維炎症性疾患である。組織学的には、粒状果細胞損傷、単核細胞浸潤ならびに繊維症が所見される。CPに至ることもある多種多様な原因があるものの、該疾病の正確な病態生理機能まではいまだに明確でない。
【0100】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、1つ以上の症状または特徴の乾癬の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。乾癬は慢性炎症性皮膚疾患であり、赤色および銀色のうろこ状プラークを発生するのが一番普通で、全人口のおよそ2〜3%が罹る。その発病原因は完全には把握されていないが、多数の免疫エフェクター細胞と異常な超増殖それにケラチン産生表皮細胞の分化との間に基礎となる相互作用がある。これはTNF-アルファ、IFN-ガンマ、IL-6、およびIL-12などのTH1炎症性サイトカインが媒介する免疫調節不全の原型である(Goldminz他、2012、「NF-カッパB: 乾癬必須転写因子」 Journal of Dermatological Science 69:89-94)。
【0101】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、うつ血性心不全(CHF)の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。CHFは西欧における入院と死亡のともに主要原因である。その有病率は心不全に関する標準化された証拠に基づく治療アルゴリズムの広範な実施に伴いかなり上昇しつつある。心不全の症状は心臓収縮および/または心臓拡張障害ならびに、疲労、呼吸困難、体液貯留、不健全状態などの多種多様な臨床兆候が特徴である。CHF患者の炎症の活性化が認知されてから長い期間がたつ。免疫機序は、まさに、間質性繊維症、心筋細胞アポトーシスおよび肥大を調節するが、これらすべてが多種多様な刺激物に応答した不適応リモデリングにつながる中心的なプロセスなのである。特に、大掛かりな心筋梗塞から進展する心不全については、疾患の経過の早い段階における免疫の因果関係についての確実な証拠がある。全身性サイトカイン発生が複数の臨床試験においてモニターされてきた。最も広範な範囲のデータが腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)に関して集められ、CHF患者の運動能力および神経分泌ホルモン活性化などの多様な臨床や実験のパラメーターと十分に相関することが実証された。
【0102】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、神経変性疾患の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、アルツハイマー病(AD)の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。ADは短期記憶を含め多数の認知機能の進行性の低下を生じる老人における痴ほう症の一番ありふれた形態である。ADは、老人斑を形成する細胞外ベータアミロイドの沈着、および微小管関連タンパク質タウから構成される細胞内神経原繊維もつれという2種の特徴的病変部の形成を特徴とする。臨床データと研究室研究の両方において、炎症性サイトカインが主として介在した炎症とADとの間の強力な連関が確立されてきた。また、最近の調査結果も、ADがIL-1、IL-6、TNF-アルファ、TGF-ベータ、およびIL-18の増大した末梢血中濃度が特徴である拡大した炎症状態と関連付けられることを示唆している(Smith他、2012、「神経変性疾患の小膠細胞から放出される炎症促進性サイトカインの役割」 Brain Res Bull 87:10-20)。
【0103】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、パーキンソン病(PD)の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。PDはごくありふれた神経変性動作障害であり、線条体の神経を正常に刺激する黒質緻密部ドーパミン作動性ニューロンの進行性喪失が原因で生じる。PDの病理学的特徴はレビー小体形成にむすびつくアルファ・シヌクレインの細胞内蓄積である。PDは腫瘍、緩慢動作、歯車様硬直、および眩暈を含め、多数の様々な症状をもたらす。多数の研究に基づく疫学的な調査結果は、炎症がPDの発病に関わっていることを示唆している。また、これも、脳脊髄液および脳の検視分析により一部裏付けられ、PD患者における炎症性サイトカインのタンパク質レベルの上昇を実証する(Smith他、2012、「神経変性疾患における小膠細胞から放出される炎症促進性サイトカインの役割」 Brain Res Bull 87:10-20)。
【0104】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)またはルー・ゲーリック病の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。ALSは進行性の命取りになる神経変性疾患で、脳幹、脊髄、および運動皮質内の運動ニューロンを冒す。ALSは発症の平均年齢が55才で、症状が始まって2〜5年生存した後、例外なく死に至る。ヒトのALS患者と該疾患のマウスモデルの両方のCNSの病理学的に冒された領域および脊髄において、顕著な神経炎症が容易に所見できる。ALSの炎症は、グリオーシスと活性化された多数の小膠細胞および星状膠細胞の蓄積とにより特徴づけられるのが一般的である。ALSにおける神経膠の活性化は、ROSなどの潜在的な細胞毒分子、COX-2などの炎症性メディエーターに加えて、IL-1ベータ、TNF-アルファおよびIL-6などの炎症性サイトカインの産生量上昇により広く特徴付けられ、またその証とされる(Smith他、2012年、神経変性疾患の小膠細胞から放出された炎症促進性サイトカインの役割、Brain Res Bull 87:10-20)。
【0105】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、ハンティントン病の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。ハンティントン病(HD)は最初の症状が発生してから死亡までの15〜20年間にわたる疾患進行性の経過が特徴であり、ハンティントン(htt)タンパク質内のCAG反復配列が拡大した突然変異が原因で生ずる。神経変性の主たる理由は線条体中の突然変異体htt(mhtt)であると考えられる。HDの中では先天性免疫系と適応免疫系の両方が重要な役目を果たす。炎症性サイトカインの発現による小膠細胞の活性化、マクロファージの遊走障害ならびに線条体中の補完因子の沈殿が、先天性免疫系の活性化を示唆する(Ellrichmann他、2013、「ハンティントン病における免疫系の役割」、Clinical and Developmental Immunology 2013:11)。星状膠細胞におけるNFkB介在炎症性反応の亢進がHD発病原因に寄与する(Hsiao他、2013、「ハンティントン病における星状膠細胞介在核因子kB依存炎症の決定的役割」、Human Molecular Genetics 22:1826-1842)。
【0106】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、うつ病または統合失調症の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。うつ病は負の免疫調節プロセスを特徴とし、慢性低グレード炎症反応、細胞介在免疫の活性化ならびに補完的抗炎症性反射システム(CIRS)の活性化の両方ともに関係付けられる。インビボで提供された100を越える研究のメタ解析は、統合失調症が一部分は炎症の不均衡により説明できることを証拠だてている。
【0107】
ある実施例では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、石綿症の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。石綿症とは慢性炎症で石綿繊維の吸入や保有が原因で肺の柔組織を冒す繊維症という医学的状態である。通常、高い度合でおよび/または長期にわたる石綿へのばく露の後に(特に、石綿を含有する製品の製造または末端利用中に作業する人たちの中に)生じるため、肺の職業病と見なされる。被害者は深刻な呼吸困難(息切れ)を体験し、肺癌もあるものの特に中皮腫という一定の悪性腫へのリスクが増す状態となる。特に、石綿症とは石綿に由来する間質性(柔組織)繊維症で肋膜繊維症若しくはプラーク化ではないものを指す。石綿症の主症状は、一般的に、特に、遅発性の労作時呼吸困難である。石綿症の臨床的に進んだ事例として呼吸不全に至ることがある。石綿症で見られる特徴的な肺機能は拘束性換気障害である。さらに深刻なケースでは、肺の硬直による肺機能の劇的な低下であり、TLCの減少が右心不全を引き起こす(肺性心)。石綿症は拘束性障害に加え、拡散能力の低下および動脈低酸素血症を引き起こす。
【0108】
一つの実施形態では、本発明によるp62ポリペプチドまたはp62コーディング核酸は、珪肺症の1つ以上の症状または特徴の治療、緩和、改善、軽減、発症の遅延(予防)、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低減に使用できる。珪肺症(昔の鉱山癆(ろう)、研ぎ屋喘息、陶芸家消耗性疾患ならびにその他職業関連名称病)は、結晶性シリカ粉塵の吸入が引き起こす肺の職業病の形態であり、炎症と、両肺葉上部の節のある病変部の形態での傷つき具合を特徴とする。これは塵肺の1種である。珪肺症(特に、急性様態)は息切れ、咳、熱およびチアノーゼ(皮膚の青ざめ)が特徴である。前兆や症状としては、呼吸困難、咳、疲労、頻呼吸、食欲喪失ならびに体重喪失、胸痛それに発熱がある。進行したケースでは、症状としてはチアノーゼ、肺性心、および呼吸不全がある。珪肺症の患者は、特に、珪肺結核として知られる結核(TB)感染に冒されやすい。また、珪肺症の肺合併症としては、慢性気管支炎および気流制限(喫煙が原因のものと区別のつかない)、非結核マイコバクテリウム感染、真菌性肺感染、代償性肺気腫、および気胸がある。特に、データの一部には、急性あるいは加速性珪肺症において、珪肺症と、腎炎、強皮症および全身性紅斑性狼瘡などのある種の自己免疫疾患との間の関係を明らかにするデータがある。
【0109】
また、本発明の方法は対象への1種以上の抗炎症性治療の施療を含める。抗炎症性化学療法薬剤は炎症を少なくする任意の化学成分または薬物である。抗炎症性化学療法剤には、非ステロイド系抗炎症性薬物(NSAID)、糖質コルチコイド、メトトレキサート、シクロスポリン、ならびにラパマイシンが挙げられるがこれらに限定はされない。NSAIDはシクロオキシゲナーゼ阻害剤である。NSAIDの例としてはアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジンがある。糖質コルチコイドは糖質コルチコイド受容体に結合するステロイドホルモンの類である。メトトレキサートは葉酸の代謝を阻害する葉酸の化学的類似体である。シクロスポリンおよびラパマイシンの抗拒絶薬は抗炎症性特性を有する。
【0110】
抗炎症性生物学薬剤は、任意の炎症を減らす自然に存在する生物学的物質である。抗炎症性生物学薬剤は、抗TNF抗体、抗IL1抗体、抗IL6抗体、抗IL6受容体抗体、抗IL12/23抗体、抗IL17抗体、抗IL1R抗体、抗IL1受容体拮抗剤および可溶性IL-1受容体を含めるがこれらに限定はされない。
【0111】
本明細書で説明される化合物および組成物は、製剤上許容され得る担体を用いて調合される製剤または医薬として投与される。従って、本化合物および組成物は医薬または医薬組成物の製造において使用できる。本発明の医薬組成物は、非経口投与向けの溶液あるいは真空凍結乾燥粉末として調合できる。粉末は使用前に好適な希釈液またはその他の薬学的に許容され得る担体の添加により再構成できる。液体製剤は、緩衝化した、等浸透圧の水溶液としてもよい。また、粉末は、乾燥形態で吹き付けることもできる。好適な希釈液の例は普通の等浸透圧生理食塩水、標準水中5%デキストロース、または緩衝化された酢酸ナトリウムもしくは酢酸アンモニウム溶液である。この製剤は、特に、非経口投与に好適であるが経口投与に使用されることも、あるいは定量吸入器または吹送のためのネブライザーに含ませることもよい。ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの賦形剤の添加も望ましい。
【0112】
また、化合物は、経口投与用にカプセル化、錠剤化あるいは乳剤またはシロップ剤に製剤化することができる。薬学的に許容され得る固体または液体の担体を添加して組成の安定性を向上するか、若しくは組成物の製剤化を容易にすることが可能である。固体担体としては、澱粉、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウム、あるいはステアリン酸、滑石、ペクチン、アカシア、寒天、またはゼラチンを含める。液体担体としてはシロップ、ピーナツオイル、オリーブオイル、生理食塩水および水を含める。また、該担体としては、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの持続放出材料を、単独若しくはワックスと共に含める。固体担体の含有量は変動するが、服用単位当たり約20mgから約1gの間にあることが好ましい。医薬製剤は、錠剤形状に相応しい必要に応じた、粉砕、混合、粒状化ならびに圧縮;若しくは、硬質ゼラチンカプセル形状に合わせた粉砕、混合および充填を伴う従来からの製薬技術を受けて作製される。液体担体が使用される場合、製剤はシロップ、エリキシール剤、乳剤、または水性あるいは非水性懸濁液の形態である。直腸投与向けに本発明の化合物はココア脂、グリセリン、ゼラチンまたはポリエチレングリコールなどの賦形剤と組み合わせて、座薬の型の中に入れて製造される。
【0113】
化合物または組成物は、その他の医療上有益な薬物あるいは生物学的薬剤を含めるために製剤化される。また、該化合物または組成物は、本発明の化合物または組成物の対象となる疾患や状態に役立つその他薬物または生物学的薬剤の投与と連携させて投与できる。
【0114】
本明細書で採用されるごとく、用語、「有効量」とは、その受容者に有益な効果を与えるのに十分なだけの高い濃度を与えるに十分な用量を指す。任意の特定対象に関する具体的な治療上有効な服用量レベルは、治療を受ける障害、その障害の深刻度、具体的化合物または組成物の活性、投与経路、化合物または組成物のクリアランスの速度、治療期間、化合物または組成物との組合せであるいはそれと同時に使用される薬物、対象の年齢、体重、性別、食事、ならびに全般健康状態等、医療技術および科学技術において良く知られる多種多様な要因に応じて変化する。「治療上有効な量」の決定に際して考慮される多種多様な一般的検討事項は、当技術分野の専門技術者には弁えられており、例えば、Gilman他、eds.Goodman And Gilmanの「治療製剤の基礎」、第8版、Pergamon Press、1990、およびRemingtonの「製剤科学」、第17版、Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990に記載されている。服用量レベルの範囲は通常、約0.001〜100mg/kg/日にあり、一般的に適用されるのは約0.05〜10mg/kg/日の範囲である。化合物は血管内、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下などの非経口投与が可能である。また、投与は経口腔、経鼻孔、経直腸、経皮吸収、経膣またはエアロゾルによる吸入などの方法によっても可能である。化合物または組成物は炎症関連病変部に投与可能である。化合物または組成物はボーラス投与または緩慢注入として投与、若しくは皮内、皮下または筋肉内または腹腔内注射としての投与も可能である。
【0115】
治療上有効な服用量は、最初にp62をコードするDNAまたはRNAの細胞内導入時のp62発現レベルを測定することで細胞培養アッセイに基づき推定可能である。その後の服用量は炎症性サイトカインの発生抑制および/または炎症軽減を行う実験動物モデル中で確認できる。このデータを使用してヒトに使える最初の服用量をより正確に決定することができる。厳密な調合、投与経路ならびに薬用量は患者の受診の見地から医療専門家による選択が可能である。
【実施例】
【0116】
実施例1
材料および方法
ベクターの構築
p62をコードするcDNAのソースとして、全RNAをヒーラ細胞から抽出した。p62のより長いアイソフォームをコードする全長cDNA(転写変異体1、ジーンバンク参照番号NP_003891)をPCR(HotStar HiFidelity Polymerase Kit、キアゲン)により、プライマー、FW:5-CCCGCTAGCATGGCGTCGCTCACCGTG-3およびREV:5'-CCCAAGCTTTCACAACGGCGGGGGATGCTTTG-3'を用いて増幅した。PCR産物を精製し、NheI−Hind III消化フラグメントがpcDNA3.1に対応する核酸配列を有するDNAベクター内にクローニングされ、結果としてp62プラスミドを産生した。pcDNA3.1内にクローニングされた全長卵白アルブミン遺伝子(pOVA)を参照プラスミドとして採取した。内毒素をもたないプラスミドの大規模製造は、Endo Free Plasmid Kit(キアゲン)あるいはGen Elute HPSelect Plasmid Giga Prep columns(シグマ、番号NA0800)のいずれかを用いたアルカリ溶菌法により日常的に実施された。DNA構築物は配列決定により確認した。
【0117】
動物および処置
3月齢の雌性FVBおよびBalb/cマウス(ハーランイタリー社(Harlan Italy SrL)、コッレツァーナミラノ、イタリア)を使用した。マウスは標準化環境条件下のラミナーフロー・ケージ内で飼育した。予防試験において、マウスをランダムに3グループ(G1〜G3)に分け、筋肉内注射を、食塩水(G1、n=12)のみと、pcDNA3.1(G2、n=12)またはhp62 DNA(G3、n=12)とで、0、1、2の各週に行った。最後の注射から45日後、各グループのマウスをランダムに2つのサブグループに分けて、擬似手術(SO; n=6)あるいは卵巣切除(OVX n=6)を行った。2か月後、「イタリア倫理委員会」の推奨に従ってマウスは、C02麻酔により犠牲死された。治療試験のため、マウスは卵巣切除(OVX)が行われ、2か月間未処置のまま放置した。その後、マウスは4つのサブグループにランダムに分けられ、上述と同様のプラスミド注射を行った。2か月後、マウスを解析のため犠牲死させた。
【0118】
組織学的骨分析と免疫蛍光検査
接着組織の切断された大腿骨を4%パラホルムアルデヒド(PFA)中に24時間固定し、14%EDTA溶液中で3日間石灰質を除去した上、30%蔗糖中で一晩浸漬した。Tissue-Tek OCT化合物に埋め込まれた試料を、回転式-30°Cミクロトーム低温槽(Ames Cryostat Miles)を使って切片化し(8μm厚薄片)、トルイジンブルーで染色した。その他の薄片は、0.3% Triton X-100で透過処理した後、ラビット抗p62希釈比1:800 (Enzo Life Sciences; Vinci-Biochem s.r.l. Firenze, Italy) 希釈比1:400で培養を行った。リンスした後、薄片をチキン抗-ラビットIgG Alexa Fluor 488コンジュゲート(Molecular Probes; Invitrogen, Milano Italy) 希釈比1:100で培養した。対照実験は然るべき一次抗体を省くことで、若しくは一次抗体を相対ブロッキングペプチドと複合化することで実施した。スライドをLeica DM 2500蛍光顕微鏡を用いて画像化した。蛍光分析を蛍光計Tecan Infinite [29]を使って実施した。
【0119】
体外二重エネルギーX線吸収法(DXA)解析
大腿骨を上述同様に切断し、固定した。骨密度(BMD)および骨含量(BMC)はPIXImus DEXAを使って測定した。
【0120】
骨髄細胞(BMSC)調製
マウスグループからの長骨(大腿骨、脛骨および上腕骨)を切断して接着組織がない状態にした。端部は除去し骨髄空洞を洗い流した上、DMEM内で培養した。
【0121】
サイトカインおよびケモカインアッセイ
BMSC上清のサイトカイン/ケモカインプロファイルはELISAに基づくサイトカインアレイによりMouse Cytokine Array Panel A kit (R&D Systems, Milano, Italy)を利用してメーカー使用説明書に従って評価した。免疫活性点はLiteAblot Turboルミノール試薬(Euroclone, Milano, Italy)ならびにHyperfilm-ECLフィルム(Euroclone, Milano, Italy)を用いて視覚化し、密度計測により定量化した。
【0122】
ウェスタンイムノブロッティング
骨髄空洞部を洗い流した直後に、Cell Lysis Buffer(Cell Signaling Euroclone, Milano, Italy)中に全骨髄細胞集団のタンパク質を抽出し、濃度をBCAタンパク質アッセイ試薬(Pierce, Euroclone Milano, Italy)で測定した。ウェスタンブロッティングは標準手法により行った。
【0123】
統計解析
インビトロおよびインビボ試験はすべて少なくとも3回は繰り返した。t-スチューデント検定を使用し、2グループ間の有意差を調べ、差*p<0.05で有意とみなした。
【0124】
実施例2
p62ワクチンはマウスモデルの骨粗鬆症を予防する
p62ワクチンが骨粗鬆症を予防できたか否かの評価のため、まず、マウスグループにp62DNAまたは参照プラスミド(pcDNA 3.1、pOVA)のいずれかを注射し、その後卵巣切除(OVX)を行った。試験毎に、擬似手術(SO)対照グループマウスを含めた。マウスは術後2か月でと殺され、長骨を回収して組織学的試験に付した。pcDNA3.1-OVX(対照)マウス由来の遠位大腿骨の骨幹端領域の骨喪失が多くなり、薄くなって脱臼した棒状組織構造が特徴の従来の骨粗鬆症特性を示した。一方、p62-OVX骨(処置マウス)はSOマウスで見られたものに対して本質的に区別ができないミクロ構造を示した。さらに、p62DNA-OVXマウスの横断面大腿骨骨端部試験は、(参照プラスミド処置マウスから得られたものとは相違し)、p62治療の同化作用を示唆する新たな皮質骨付加から明らかなように同化−骨芽細胞活性の増加を明らかにした。
【0125】
BMCは骨空洞部から洗い流し3日間培養した。その後、上清と細胞はいずれも回収され、それぞれ炎症性サイトカインの放出についてあるいは骨形成マーカーの発現について解析を行った。
図4に示されるように、SO施術マウスに比べ、OVX由来のBMCにより炎症性サイトカインの顕著な上方調節と放出がp62-DNA事前治療により劇的に抑制された。p62-DNAのこの抑制効果は、すべてが炎症性疾患と骨喪失との重要な誘導因子として知られるTNFα、IL-6、IL-1b、IL-17などの多数のサイトカインまで拡大した。新たな骨形成を誘導するp62DNAの能力に関する限り、p62-OVX BMC抽出物のウェスタン・ブロッティング解析では、Runx2およびOsterix転写因子などの骨形成性マーカーの強力でかつ選択的な上昇が実証された。Runx2およびOsterixの上昇は弱いながらも、p62SOマウスにおいても認められた(
図5)。
【0126】
従って、p62プラスミドの投与はマウスモデルにおいて骨粗鬆症を予防した。
【0127】
実施例3
p62ワクチンはマウスモデルにおける骨粗鬆症を後退させる
これらの試験では、マウスは卵巣切除を行い、その2か月後、p62-DNAあるいは参照プラスミドのいずれかを使って注射を行った(詳細にはM&Mを参照)。最終プラスミド注射の2か月後、骨を回収し組織学的に評価を受けさせた。OVX-p62処置マウスグループ(対照グループに照らして)は、遠位大腿骨の骨幹端領域における棒状組織マイクロ構造の回復と皮質骨の多孔性の減少を示した。また、p62-DNA処置は、DXA解析から判断された通り、骨密度(BMD)もその量(BMC)も、ともに増加させることが判明した(
図6)。最終的に、骨芽細胞形成Runx2とOsterixの顕著な上方調節(
図7、パネルA)とセットになって、OVX-p62マウスからのBMC中にTNFαおよびRANKLなどの2大骨吸収性因子の強力な抑制も観察された。RANKLは骨芽細胞前駆体上のその受容体RANKと結合することで、細胞内NF-kBシグナル伝達を介して骨芽細胞形成を育てる重要な炎症メディエーターである。また、OVX-p62 BMCにおけるNF-カッパ-Bの下方調節も観察された(
図7、パネルB)。従って、p62投与はマウスモデルにおける骨粗鬆症を後退させた。
【0128】
実施例4
p62ワクチンはマウスモデルにおいて内因性p62を上方調節する
卵巣切除前にプラスミド注射を受けたマウスから回収したBMCにおけるp62の発現レベルを測定した。驚くべきことに、BMC内のp62発現は卵巣切除により下方調節されたが、p62DNAを事前注射されたマウスからのBMCはp62の上方調節を見せた(
図8、パネルA)。上昇したp62免疫ラベリングはp62-OVXマウスの大腿骨の骨端領域にて一貫して観察された(
図8、パネルB)。
【0129】
ヒト(外因性)とマウス(内因性)p62間の違いを特定できるウェスタン・ブロッティング解析を実施した。
図8、パネルCにおいて示される通り、p62DNA投与は骨髄居住細胞における内因性p62タンパク質を上方調節する。依って、p62プラスミドの投与はマウスモデルにおける内因性p62レベルを高めた。
【0130】
実施例5
マウスモデルにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)症状のp62投与による低減
図9はALSのマウスモデルに及ぼすp62の効果を示す。神経炎症はALSの患者の脊髄における顕著な病理学的特色であると同時に神経膠活性化とT細胞浸潤により特徴付けられる。類似の炎症性応答がALSマウスの脊髄にも存在する。これはSODのG93A突然変異形態を発現するALSの一番ありふれたマウスモデルであり、同一の突然変異がALSにかかったヒトにおいても発生し、このモデルはALSに対する薬物の試験に広く使用される。マウスは、75日齢からp62プラスミドまたはpcDNA 3.1プラスミドを用いて処置し(150 μg/ マウス、筋肉内投与、で週当たり6回)を用いて治療し(1グループにつき6匹)、ALS向けの標準試験(後肢伸展反射作用)を適用した。この反射作用は実験動物が尻尾で吊るされたときの後肢の完全な伸展を行う能力として評価された。ALSでない場合、対照もp62処置マウスも、ともに強力な反射能力を示し、ALSマウスにおいては生後60日後には低下し始め、100日後には100%からゼロまで低下した、しかし、p62を使っての治療では、顕著に反射能力の低下が遅れた。従って、p62プラスミドの投与はマウスモデルにおけるALS関連症状を低減した。
【0131】
実施例6
マウスモデルにおける多発性硬化症(MS)の症状のp62投与による減少
MSは、原因が分かっておらず、限られた治療選択肢しかない、中枢神経系(CNS)全体を通じて脱髄および軸索喪失を生じさせる慢性炎症疾患である(Noseworthy, J.H., C. Lucchinetti他、(2000)「多発性硬化症」、N Engl J Med 343(13): 938-52;Lassmann他、2001、「多発性硬化症病原の不均一性: 診断と治療の関わり合い」 Trends Mol Med 7(3):115-21)。MS研究用に一番普通に使用される実験動物モデルは、MOGポリペプチド投与によって誘導されるマウス実験用アレルギー性脳脊髄炎(EAE)である。このモデルは、ヒトの疾患で所見されるように、炎症段階の自動反応性ミエリン特有T細胞の発生、ならびに該疾病の神経変性段階の軸索周囲の髄鞘の破壊とその後続く軸索の喪失の両方ともに似ている(Steinman, 2001,「多発性硬化症: 2段階疾病」 Nat Immunol 2(9):762-4.)。
図10はrMOG誘導EAEの臨床兆候を指摘した平均的臨床成績を示している。マウス(グループあたり4匹)はEAEの臨床兆候につき毎日試験を行い、結果は無疾患0;尻尾無力1;後肢虚弱2;後肢完全麻痺3;後肢プラス前肢麻痺4;そして活動停止または死亡5であった。MOGワクチン接種ゼロ日目。p62DNA(100μg/50μl)は、MOGワクチン接種後16日および22日に、赤色矢印にて表示されるとおり投与した。見て分かるように、対照マウスのEAEスコアは観察終了(31日目)まで高かったにも関わらず、p62プラスミドで治療したマウスではこのスコアが漸進的に低下した(31日目で約0.5に)。依って、p62プラスミドの投与はMSマウスモデルにおけるMS様症状を緩和した。
【0132】
実施例7
腫瘍成長およびマウスの生存に対するp62投与
慢性炎症は肉腫、特にカポジ肉腫の病原に関係している(Douglas JL、2010、「カポジ肉腫病因:ウィルス感染試験、腫瘍形成ならびに慢性炎症」 Transl Biomed 1(2))。腫瘍成長に及ぼすp62予防接種効果の調査にマウスの中で移植可能な肉腫37が使用された。マウス(グループ当たり6匹)に、p62プラスミドまたは空ベクター(マウス当たり250μg)の筋肉内注射を腫瘍接種14日前、7日前、1日後、8日後、14日後におこない、カリパスを使って腫瘍の成長をチェックした。p62プラスミドの注射がほぼ完全に肉腫37の成長を防止した。従って、p62プラスミドの投与はマウスS37肉腫の成長を減らした。
【0133】
慢性炎症が乳がんに伴うとともに、IL-6レベルの上昇は、予後のマイナス要因である(Lippitz, B. E. (2013)「ガン患者のサイトカイン・パターンと系統的レビュー」 The Lancet Oncology 14(6):e218-e228)。最も攻撃的であり予後不良のIBC(炎症性乳がん)という乳がん特有の形態がある(Fernandez, Robertson他、2013 「炎症性乳がん(IBC):標的治療への糸口」 Breast Cancer Research and Treatment 140(1):23-33)。p62接種がCa755乳がんのマウス生存に及ぼす効果を調査するため、マウスはp62ポリヌクレオチドを用いて治療し、それらの生存をチェックした。p62治療は、成長が早遅両方の腫瘍場合に、乳がんのマウス平均生存を56%(25日から39日に)増加させた(
図12)。
【0134】
実施例8
p62ポリヌクレオチド投与の腫瘍転移に及ぼす効果
LLCは転移肺がんの広く使用されるモデルである。マウス横腹への腫瘍細胞の皮下接種後、3週間以内に、簡単に数えられる肺の転移を形成する。p62ポリヌクレオチドでのマウスの治療は、大小転移の両方の形成を顕著に抑制するため、転移プロセスの阻止に効果を発揮する(
図13)。依って、p62プラスミドの投与はマウスモデルにおける肺がんを抑制する。
【0135】
B16黒色腫細胞を静脈注射(尻尾静脈)したことで、腫瘍細胞がすでに血流内にあればがんと診断される臨床状況を模擬した。腫瘍細胞は肺内の転移を形成して、その転移が検知されて数えられる。p62ポリヌクレオチドの投与は腫瘍細胞の接種の1、8、および15日後に行った。
図14で見られるように、p62ポリヌクレオチドを用いた治療は転移腫瘍の数とサイズを減少させたことで抗転移性効果を実証した。
【0136】
実施例9
肥満とメタボリック症候群
新生雄マウスの3グループに、グルタミン酸ナトリウム(MSG)のi)プラセボまたはii)およびiii)3mg/kgの皮下注射を10日間にわたり毎日受けさせた。その後、グループ3にp62コーディングプラスミド200μgの筋肉内注射を1週間に5回受けさせた。3グループすべての生命体体重を測定、比較した。MSGは対照グループと比べて両グループにおいて顕著に体重を増やした(p<0.01とp<0.05)。しかし、p62プラスミドを受けたグループにおける体重上昇はMSGだけを受けたグループにおけるよりもかなり少なかった。すなわち、p62コーディングプラスミド投与はマススモデルでの肥満を減少させた。
【0137】
実施例10
2型糖尿病
2型糖尿病標準モデル、Zucker Diabetic Fatty (ZDF)ラットの2グループに6.5%脂肪過多食餌を与えた。1グループは1回当たり200μgのp62プラスミド注射を週に5回受けさせた一方で、もう1グループは対照として使用した。対照グループでは、高血糖症が8〜10週齢の間に所見された一方で、プラスミド治療グループでは高血糖症は平均して3週間遅れで所見された。従って、p62プラスミドの投与はラットモデルの2型糖尿病発生を遅延させた。
【0138】
実施例11
脂肪肝
2グループのマウスにMCD食餌(10%脂肪、40%蔗糖、コリン無し、メチオニン無し)を与えた。各グループには15匹のマウスを入れた。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清レベルのチェックを給餌10週後から開始した。試験グループは1回当たりp62コーディングプラスミド200μgを週に5回筋肉内注射を受けた。プラセボグループにはプラスミド介入なしでMCD食餌を受けさせた。対照グループには全調査期間を通じてプラスミド無しの普通の食事を受けさせた。MCD給餌中の両グループの示したALTレベルが、対照グループと比較して上昇した(両グループともp<0.01)。しかし、p62治療はプラセボグループに比べてALTレベルを下げた(p<0.05)。従って、p62プラスミド投与はマウスモデルの脂肪肝臓疾患の発生を減らした。
【0139】
実施例12
クローン病
マウスに8%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)含有の飲み水を2週間与えた。平行して、マウスの1グループは、週に5回、p62コーディングプラスミドの200μgの注射を行った一方で、別のグループは対照にした(各グループ当たり10実験動物)。p62治療実験動物は血便と下痢の減少を示した。また、各実験動物の体重を個別に週1回チェックした。p62は体重ロスを抑制した(p<0.05)ものの、完全には止まらなかった。従って、p62プラスミドの投与はマウスモデルにおけるクローン病関連症状を低減した。
【0140】
実施例13
膵臓炎
マウスは、膵臓炎を誘導するため、LPSを4mg/実験動物およびセルレインを1μg/実験動物で、10週間、週2回、処置した。対照グループとして3匹のマウスを使用し、3匹に週5回、p62ワクチンを1回当たり200μgで筋肉内注射を行った。15週後、マウスをと殺し、組織学的解析を行った。p62プラスミド治療は慢性膵臓炎の所見の程度を減らした。従って、p62プラスミドの投与はマウスモデルにおいて膵臓炎を軽減した。
【0141】
実施例14
喘息
マウスに1%卵白アルブミン溶液の腹腔内注射を3回行った。注射は14日の間隔で行った。3回目の注射の1週間後、喘息様疾患を誘導するため、実験動物を3日間毎日1%卵白アルブミンエアロゾルに30分間ばく露を行った。この5週の間に、1グループのマウスに週に5回、p62プラスミド200μgの筋肉内注射を行った一方で、もう一方は対照として飼育した。最終のばく露の2日後、気道過敏性(AHR)を測定して、対照と治療グループで比較した。冷気あるいは換気亢進のいずれかによりAHRを誘導した。AHR症状がp62治療グループで大きく低減された。依って、p62プラスミドの投与はマウスモデルにおける喘息症状を減らした。
【0142】
実施例15
関節炎、骨関節症
2グループのマウス(グループ当たり10実験動物)にコラーゲンII(CII)と完全フロイントアジュバントを投与し、コラーゲン誘導関節炎を誘導した。実験動物は6週齢とし、これより年長の実験動物で観察され得る自然発生関節炎を回避した。また、実験グループに週に5回、p62コーディングプラスミド200μfの注射を行った。対照グループはCII投与後、30〜33週で最初の関節炎の兆候を見せた。p62治療グループには、CII注射後、38〜43週でコラーゲン誘導関節炎が現れた。依って、p62プラスミドの投与はマウスモデルにおけるコラーゲン誘導関節炎の発症を遅らせた。
【0143】
実施例16
アテローム性動脈硬化症
ApoE(-/-)マウスを高脂肪食餌状態に8週間維持した。対照グループにはワクチン接種を行わなかったが、実験グループには週に5回、p62コーディングプラスミド200μgの注射を行った。プラスミド治療はアテローム性動脈硬化症プラーク区域とプラーク新生血管密度を低下させた。プラスミド治療はプラークコラーゲンとエラスチン含有量を増やすと同時に、プラスマアンジオテンシンIIレベルとプラークマクロファージ浸潤物とカテプシンS(Cats)タンパク質とを減少させた。また、p62投与は、大動脈根においてAT1R、gp91phox、TLR2、単核白血球走化性タンパク質-1のレベルを減少させた。従って、p62プラスミドの投与はマウスモデル内のアテローム性動脈硬化症を軽減した。
【0144】
実施例17
パーキンソン病
雄のWistarラットは週5回、1回当たり200μgのp62コーディングプラスミドの注射で事前治療するか若しくは対照グループとして採用した。その後、片側線条体注射により6−ヒドロキシドーパミン、6-OHDA(正規食塩水中0.1%アスコルビン酸中に10マイクログラム)を実験と対照のグループのラットに投与してパーキンソン病を刺激した。6-OHDA注入後3週間、ラットを神経行動活動に関して試験を行った(オープンフィールドテストおよびロータロッド筋肉協調テスト)。プラスミドも6-OHDAも受けなかった対照グループを利用して6-OHDAの効果の評価を行った。p62プラスミドでの事前治療はラットモデルにて6-OHDAによる誘導されたパーキンソン様の症状を顕著に減少させた。
実施例18
ハンティントン病とアルツハイマー病
【0145】
卵巣切除はマウスにおいてハンティントン病やアルツハイマー病に類似した神経変性変化を誘導する。マウスに擬似手術または卵巣切除を受けさせた。両施術グループは、一方はp62プラスミド接種を受け、他方は受けなかった2つのサブグループに分けられた。行動テストのバッテリーは下記の説明のように行った。各テストでは、p62接種が卵巣切除の神経変性効果を大幅に緩和したことが観察され、アルツハイマー病やハンティントン病の治療および/または予防において強力な潜在性をもつ可能性を示した。
【0146】
行動テスト
実験はすべて実験室動物の保護と使用に関する欧州共同体審議会指令(86/609/EEC)に従って明期中に行った。
【0147】
行動テストは4連続日の間に行った。初日は、実験動物に感覚運動のテストの全バッテリーを受けさせた。二日目、オープンフィールドテストを行った。三日目、実験動物にポーソルトテストを受けさせた。最後に、最終日、十字迷路テストまたは明暗テストを行った。
【0148】
テストの順番は複数著者による過去のレポートをベースにした(Johansson他、Proc Natl Acad Sci USA. 2001、7月31;98(16):9407-12およびGimeenez-Llort他、Eur J Neurosci. 2002 8月;16(3):547-50; Baeza他、J Neuroimmunol. 2010 2月 26;219(1-2):90-9)。行動は3名の独立した観察者が評価した。テストの実施前にマウスがみな同様に活動的である状態を確保するため負荷をかけた。それぞれのテストの後は器具の表面をクリーニングして嗅覚器官の臭跡を除去した。
【0149】
感覚運動能力
視覚位置認識反射神経
視覚系統機能評価のために視覚による位置認識反射神経テストを行った。この位置認識応答実績についてマウスを尻尾で中吊にして濃い黒色面の方に向け下げた。前肢の完全な伸展をポジティブな応答と見なした。3回のテストの応答平均で評価した(Baeza他、2010)。
後肢伸展反射能力
【0150】
この反射作用の評価は実験動物を尻尾で吊したときの後肢の完全な伸展能力として行った。この応答をポジティブであるものと見なした。3回のテストの応答の平均で評価した(Baeza他、2010)。
【0151】
タイトロープテスト
この方法は5秒のトレーニングテスト2回ならびに60秒のテスト試験での筋肉活力、運動協調および牽引力を試験することにより老化するマウスのバイタリティー喪失の評価に使用される(MiquelおよびBlasco、Ex p Gerontol. 1978;13(6):389-96ならびにBaeza他、2010)。マウスは水平なタイトロープを真ん中で持ち上げ前肢で宙づりにした(高さ40cm、長さ60cmで10cmのセグメントに分割した)。筋肉活力はロープから落下するマウスのパーセンテージおよび落下するまでの待ち時間(秒)として評価した。運動協調は少なくとも1セグメントを歩くマウスのパーセンテージ(判定基準1)ならびにテストを成功させるマウスのパーセンテージ(判定基準2)を含めた。牽引力は宙づりのままとどまるのに使われる体の複数部分(前肢、後肢および尻尾)の分析により評価して、それ以降、引き続き、最大(前肢、後肢および尻尾)および最小(前肢のみ)の牽引能力を示すマウスのパーセンテージを各グループの範囲内で評価した。
【0152】
探検および不安状態行動テスト
このグループには実験動物におけるうつ状態と不安状態行動を調査するFST、オープンフィールド、明暗ならびにEPMテストの複数テストを含めた。
【0153】
強制水泳テスト(FST)
強制水泳テストは齧歯目での抗うつ状活動の評価用にベストの認知薬理学モデルテストである(Porsolt他、1977a Arch Int Pharmacodyn Ther 229:327-336、Porsolt他、1977b Nature 266:730-732; Willner、 1990 Pharmacol Ther 45:425-455; Al-Rahbi他、Biomed Res Int. 2013; 2013:493643. doi: 10.1155/2013/493643)。マウスが逃げることの不可能な水を張ったシリンダー内に置かれたとき、不動時間が増えることにより粘り強い逃亡志向行動の中止を反映させて学習性無気力症候の発達が分かる(Lucki, 1997 Behav Pharmacol 8:523-532)。不動の減少は抗うつ様行動と一致した一つの行動プロファイルと見なされる(Cryan他、2002 Trends Pharmacol Sci 23:238-245; Waif and Frye、 2010 Physiol Behav. 2010 Feb 9;99(2):169-74; Al-Rahbi他、2013)。簡単にいえば、水(23±1℃)を深さ15cmまで満たしたカラス性シリンダー(高さ20cm、直径14cm)内にマウスを個別に入れた。この水深さにて、マウスは尻尾がジャーの底に触れる可能性があるものの、後肢で自立することはできない。それぞれのマウスに6分間の水泳テストを与え、最初の2分間は実験動物が環境に慣れるために使われるため、テストの残りの4分間の間の不動時間を記録にとった。水泳試験セッションはすべてシリンダー上部に直接位置するビデオカメラで記録した。治療条件を知らない2名の熟練観察者がビデオテープ内容の評価点数をつけた。マウスがもがくことなく頭部を水面上部に保つ必要のあるごく僅かの動作しかしない間水中に浮いて費やした時間を不動時間と見なした。これらの水泳セッションの後、マウスをタオルで乾かし収容ケースに戻した。各実験動物は1回だけテストした。
【0154】
オープンフィールドテスト
移動活動は、水平および垂直方向の活動を測定する16個の光電池2系統を備える四角い広場(43.2cm×43.2cm)から構成されるオープンフィールド器具により測定した。該広場を1個の赤色ランプ(25W)で照明を行い、部屋内のホワイトノイズジェネレーターで70dB.の周辺バックグラウンドノイズを発生させた。データはすべて隣接する制御室内のパソコン(MED-PCオープンフィールド活動ソフトウェア)に記録した。マウスは器具の中央に置きテストを5分間行った。多数の従来のそして動物行動学のパラメーター(Choleris他、2001 Neurosci Biobehav Rev 25:353-360; PerfumiおよびMattioli、Phytother Res. 2007 1月;21(1):37-43)をセッション中に収集した。中央および周辺区域での水平活動(すなわち、走行距離、歩行時間、休息時間)および垂直活動(すなわち、棒立ち)を自動的に記録した。中央区域で費やす時間、この区域での歩行時間および垂直活動、ならびに出発中央地点を離れるまでの時間および周辺部に到達する(「凍結挙動」)までの時間をマウスの情緒的反応のインジケーターとして測定した(Baeza他、2010)。さらに、老化は排便行動の減少および尿失禁の増加に関係する。従って、複数の世代グループの中の丸薬糞便数および尿の存在にも注意を払った(成熟した実験動物の卵巣切除が老化した実験動物中で観察されるものにより類似した行動を引き起こしたのか否かを調査しようとして)。
【0155】
明/暗テスト
マウスにおける不安関連行動を検知する適切なテストシステムが明/暗探検テストであって、このテストは齧歯目が光輝き照らされた広い空間を嫌がる性質を利用するものである(Hascoet他、2001 Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 25:141-166; BourinおよびHascoet、2003 Eur J Pharmacol 463: 55-65)。明/暗装置は小区画(18×30cm)と大区画(27×30cm)とに分割した床レベルで間仕切りの中央に位置する開口部扉(7.5×7.5cm)付きの上面が開放した(45×30×30cm; l×b×h)の長方形のプレキシガラスボックスで構成した。小区画では黒色塗装で暗闇を保った一方、大区画は白色塗装を行い60W(400 lx)の光源で明るく照らした。つまりは、実験動物はそれぞれ暗闇の区域の1面に面して照らされた区画の中央に置いた。明るい区画から暗闇の区画までの最初の通行までの時間、各区画に入る回数、照明が行われた区画で費やされる時間、ならびに、明るい空間でマウスが後足で立ち上がる(棒立ちになる)回数を5分間記録した(WaifおよびFrye. 2010)。
【0156】
高架十字迷路テスト(EPM)
高架十字迷路は不安様行動を評価すると同時に、2本の開いたアーム付きの黒色プレクシグラス(30×3.5cm)と同一サイズの2本の閉じたアーム(高さ14cmの壁)で構成された。4本のアームは中央広場(6×6cm四方)に接合され、地上よりおおよそ74cmの高さに持ち上げられた。つまり、マウスは閉じたアームの1本に面する中央広場に置かれ、その行動を5分間記録した。アームの範囲内に4本のすべての足が入る回数とアーム内で費やされた時間を開いたアームと閉じたアームにつき別々に記録した。明るく照明された高架十字迷路の開いたアーム上で費やされた、生の時間の長い方およびより長い方の時間割合(%)を不安様行動の指標と見なした(Kolosova他、老化(Albany NY). 2013 6月;5(6):474-84; WaifおよびFrye、2010)。
【0157】
これにより、本明細書で参照された各特許、特許出願、刊行物および文書の一式全体は参照により組み込まれる。上記特許、特許出願、刊行物および文書の引用は、前述内容のいずれも関連先行技術であるという承認でもなければ、これらの出版物あるいは文書の内容あるいは日付に関する承認となるものでも決してない。
【0158】
前述の内容につき本技術の基本的様相から逸脱することなく修正が行われることもある。本技術は、1例以上の特定の実施形態に関して実質的に詳細に説明が行われたが、本技術の通常技量の専門家は、本明細書にて具体的に開示された実施形態に対して変更が行われることもあるだけでなく、これらの修正や改良も本技術の適用範囲と精神の範囲内であることを認めるだろう。
【0159】
例示的に本明細書で適切に説明された本技術は、本明細書で具体的には一切開示されていない任意の構成要素がない状態で実施されることもある。従って、例えば、本明細書の各事例の中で、用語「含む(compriding)」、「本質的にからなる(consisting essentially of)」、および「からなる(consisitng of)」はいずれも残りの2用語と入れ替えてもよい。採用された用語と表現は説明のためのまた制限とならない用語として使用されるとともに、この用語および表現の使用は、示されかつ説明されたいずれの特性の等価物またはその1部分たりとも除外しないと同時に、多種多様な修正も請求された本技術の範囲内と考えられる。用語としての「不定冠詞」は、それが修飾する1構成要素、または1構成要素以上のいずれもについて説明されていることが文脈上明瞭でない限り、それが修飾する1つまたは複数の構成要素のいずれかを指し得る(例えば、「試薬(a reagent)」は1つ以上の試薬を意味することができる)。本明細書で使用される用語「約」は、基礎となるパラメーターの10%以内の数値(つまり、±10%)を指すと同時に、数値列の冒頭の該用語「約」の使用は該数値のそれぞれを修正する(つまり、「約1、2、および3」は約1、約2、および約3を指す)。例えば、「約100グラム」の重量とは90グラムと110グラムの間の重量を含めることができる。また、本明細書で数値の列挙につき説明が行われる場合(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%、または86%)、列挙はすべての中間およびその分数の値(例えば、54%、85.4%)を含む。従って、本技術は代表的な実施例および選択肢の特性により詳細に開示されたものの、本明細書で公開された考え方の修正および変型は当技術の熟練技術者に頼ることができ、この修正や変型はこの技術の範囲内にあるとみなされるものと理解されるべきである。
【0160】
本技術の一定の実施形態が以下の特許請求の範囲の中に規定される。