特許第6498259号(P6498259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498259
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】時計用ばねハウジング
(51)【国際特許分類】
   G04B 1/16 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   G04B1/16
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-223078(P2017-223078)
(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公開番号】特開2018-91838(P2018-91838A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】10 2016 122 936.9
(32)【優先日】2016年11月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506100185
【氏名又は名称】ランゲ ウーレン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル ウーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュレンカー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ レーマン
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0249045(US,A1)
【文献】 米国特許第02628690(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 −26
A63H 29/02
F16F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用のばねハウジングであって、回転可能に支持された第1ばねハウジングドラム(1)を備え、
該第1ばねハウジングドラム(1)が、回転可能に支持された第1ばねコア(9)を半径方向に離隔して同軸状に包囲し、前記第1ばねコア(9)が、渦巻状の第1引張りばね(10)により包囲され、
該第1引張りばね(10)は、内端部が前記第1ばねコア(9)に接続され、かつ、外端部が前記第1ばねハウジングドラム(1)に接続され、前記第1ばねハウジングドラム(1)に、歯付き外周部を有する巻き締め車(3)が相対回転不能に結合されているばねハウジングにおいて、前記第1ばねコア(9)には、第2ばねハウジングドラム(7)が相対回転不能に同軸結合され、該第2ばねハウジングドラム(7)が、回転可能に支持された第2ばねコア(11)を半径方向に離隔して同軸状に包囲し、前記第2ばねコア(11)が、渦巻状の第2引張りばね(12)に包囲され、該第2引張りばね(12)は、内端部が前記第2ばねコア(11)に接続され、かつ、外端部が前記第2ばねハウジングドラム(7)に接続され、前記第2ばねコア(11)に、前記時計における輪列に含まれる歯車(17)が相対回転不能に同軸配置されていることを特徴とするばねハウジング。
【請求項2】
請求項1に記載のばねハウジングであって、前記第1ばねハウジングドラム(1)及び/又は前記第2ばねハウジングドラム(7)は、第1及び/又は第2底部(2,8)を有する平皿状に形成されていることを特徴とするばねハウジング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のばねハウジングであって、前記第1ばねコア(9)は、スリーブ状に形成されると共に、前記第2ばねコア(11)における同軸状の支持突部(13)上に回転可能に支持されていることを特徴とするばねハウジング。
【請求項4】
請求項3に記載のばねハウジングであって、前記第2ばねハウジングドラム(7)は、前記第1ばねコア(11)に沿って軸方向にスリーブ状に延長されたスリーブ状延長部(22)を有し、前記第2ばねコア(11)における前記支持突部(13)の自由端が、前記第2ばねハウジングドラム(7)における前記スリーブ状延長部(22)から突出すると共に、ラジアル軸受(14)により回転可能に支持されていることを特徴とするばねハウジング。
【請求項5】
請求項4に記載のばねハウジングであって、前記第2ばねハウジングドラム(7)における前記スリーブ状延長部(22)が、前記ラジアル軸受(14)により軸線方向に支持されていることを特徴とするばねハウジング。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のばねハウジングであって、前記第1ばねハウジングドラム(1)は同心状の支持突部(23)を備え、該支持突部(23)、車受け(18)に設けられた車受け孔(19)内で回転可能に支持されていることを特徴とするばねハウジング。
【請求項7】
請求項2を引用する請求項3に記載のばねハウジングであって、前記第2ばねコア(11)が、前記支持突部(13)よりも大径を有し、前記第2ばねハウジングドラム(7)における前記第2底部(8)が、前記支持突部(13)へと繋がる前記第2ばねコア(11)の半径方向移行部(16)上において、軸線方向に支持されていることを特徴とするばねハウジング。
【請求項8】
請求項に記載のばねハウジングであって、前記第1ばねハウジングドラム(1)が、前記巻き締め車(3)を指向する側においてステップ状に形成され、半径方向外側のステップと前記巻き締め車(3)との間に、半径方向外方に向けて開放すると共に周方向に延在し、かつ前記車受け(18)の厚さと同じ幅を有するガイド溝(4)が形成され、該ガイド溝(4)内に、前記車受け孔(19)を有する前記車受け(18)が配置されていることを特徴とするばねハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用ばねハウジングに関し、特に、回転可能に支持された第1ばねハウジングドラムを備え、その第1ばねハウジングドラムは、回転可能に支持された第1ばねコアを半径方向に離隔して同軸状に包囲し、第1ばねコアは、渦巻状の第1引張りばねにより包囲され、その第1引張りばねは、内端部が第1ばねコアに接続され、かつ、外端部が、第1ばねハウジングドラムに接続され、第1ばねハウジングドラムには、歯付き外周部を有する巻き締め車が相対回転不能に結合されているばねハウジングに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の課題は、上述した形式の時計用ばねハウジングとして、省スペースであっても蓄積動力(パワーリザーブ)の大きなばねハウジングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題を解決するため、本発明によれば、前記第1ばねコアに対して第2ばねハウジングドラムが相対回転不能に同軸結合されている。2ばねハウジングドラムは、回転可能に支持された第2ばねコアを半径方向に離隔して同軸状に包囲する。第2ばねコアは、内端部が第2ばねコアに接続され、かつ、外端部が第2ばねハウジングドラムに接続される渦巻状の第2引張りばねに包囲されている。第2ばねコアには、時計における輪列に含まれる歯車が同軸状かつ相対回転不能に配置されている。
【0004】
2個の引張りばねは、互いに平行に配置されているが、直列接続されている。これにより、ほぼ同じトルクでも、より大きな動力を蓄積することが可能である。
【0005】
2個の引張りばねを使用すれば、単一の引張りばねのみを使用する場合に比べて、引張りばねの高さ対厚さ比がより有利となる。従って、大きなトルクを生じさせる引張りばねを、より容易に製造することができる。更に、単一の引張りばねのみを使用する場合に比べて、寿命を大幅に延ばすことができる。
【0006】
第1ばねハウジングドラム及び/又は第2ばねハウジングドラムは、第1及び/又は第2底部を有する平皿状に形成することにより、壁厚が小さくても頑丈な構成とすることができる。
【0007】
第1ばねコアがスリーブ状に形成されると共に、第2ばねコアにおける同軸の支持突部上に回転可能に支持されていれば、両方のばねハウジングドラムが互いに確実にガイドされた状態で支持され、従ってばねハウジングドラムの傾きを少なくとも実質的に回避することができる。
【0008】
更に、この構成によれば、ばねハウジングを小型化することも可能となる。
【0009】
この構成においては、第2ばねコアにおける支持突部の自由端が、第2ばねハウジングドラムにおけるスリーブ状延長部から突出すると共に、ラジアル軸受により回転可能に支持される構成とすることが容易である。
【0010】
第2ばねハウジングドラムにおけるスリーブ状突起は、同軸状に容易に配置するために、ラジアル軸受により軸線方向に支持される構成とすることができる。
【0011】
第2ばねハウジングドラムにおけるスリーブ状延長部の内側には、摩擦を低減するための支持ブロックを設け、その支持ブロックにて第2ばねコアの支持突起が回転可能に支持される構成とすることができる。
【0012】
第1ばねハウジングドラムは、半径方向に位置決め可能とするために、同心状の支持突部を備え、その支持突部は、固定的な輪受けに設けられた支持孔内に回転可能に支持される構成とすることができる。
【0013】
第2ばねコアは、第1及び第2ばねハウジングドラムを軸線方向に互いに正確に位置決めするために、支持突部よりも大径を有することができる。この場合、第2ばねハウジングドラムにおける第2底部は、支持突部へと繋がる第2ばねコアの半径方向移行部上において、軸線方向に支持される。
【0014】
第1ばねハウジングドラムにおける第1底部が、巻き締め車を指向する側においてステップ状に形成され、半径方向外側のステップと巻き締め車との間に、半径方向外方に向けて開放すると共に周方向に延在し、かつ車受けの厚さと同じ幅を有するガイド溝が形成され、該ガイド溝内に、車受け孔を有する車受けが配置される構成とすることができる。この場合、第1ばねハウジングドラムは、固定的な輪受けの軸線方向だけでなく半径方向においても容易にガイドされる。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】時計におけるばねハウジングの平面図である。
図2図1のX−X線に沿うばねハウジングの断面図である。
図3】巻き締め車と歯車との機能(用途)を入れ替えた例を示す、図2と同様な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に示す時計用ばねハウジングは、第1ばねハウジングドラム1を備える。ばねハウジングドラム1は、上側に第1底部2を有する。
【0018】
第1底部2は、ばねハウジングドラム1の内部から離れた側においてステップ状に形成されている。この場合、第1底部2において、内部を指向する側における直径は、内部から離れた側における直径よりも大きく、また内部を指向する側における厚さは、内部から離れた側における厚さよりも小さい。
【0019】
第1ばねハウジングドラム1において、内部から離れた側の第1底部2上には、第1底部2とほぼ同じ外径を有する巻き締め車3が配置されている。巻き締め車3は、周方向に分布させて配置した複数本のねじ21により、第1底部2と堅固に結合されている。
【0020】
第1底部2において、より小さな厚さを有する領域と巻き締め車3との間には、環状ガイド溝4が形成されている。
【0021】
時計における固定的な車受け18には、車受け孔19が設けられている。車受け孔19の直径は、より大きな厚さを有する半径方向内方領域におけるガイド溝4底部20の直径に対応している。即ち、半径方向内方領域は、支持突部23として機能する。
【0022】
第1ばねハウジングドラム1における第1底部2を巻き締め車3とねじ固定する前に、第1底部2における支持突部23が車受け孔19内に嵌め込まれ、その後に巻き締め車3がねじ21によって第1底部2上にねじ固定される。この場合、第1底部2は、車受け18に当接するため、第1ばねハウジングドラム1の傾きを回避することができる。
【0023】
巻き締め車3は、その中央部に孔5を有する。孔5内には、第1底部2の環状カラー6が突入している。
【0024】
第2ばねハウジングドラム7は、第1ばねハウジングドラム1に対して平行に配置されており、第1ばねハウジングドラム1を指向する側に第2底部8を有する。
【0025】
第2底部8は、同軸状のスリーブ状延長部22を有する。延長部22は、第1ばねハウジングドラム1の内部に突入すると共に、第1ばねコア9にねじ固定されている。
【0026】
第1ばねハウジングドラム1内には、第1ばねコア9を包囲する渦巻状の第1引張りばね10が配置されている。第1引張りばね10は、外端部が第1ばねハウジングドラム1に接続され、内端部が第1ばねコア9に接続されている。
【0027】
第2ばねハウジングドラム7の内部には、渦巻状の第2引張りばね12により包囲される第2ばねコア11が同軸状に配置されている。第2引張りばね12は、外端部が第2ばねハウジングドラム7に接続され、内端部が第2ばねコア11に接続されている。
【0028】
第2ばねコア11は、小径の支持突部13を有する。支持突部13には、第2ばねハウジングドラム7のスリーブ状延長部22が回転可能に支持されている。
【0029】
支持突起13の自由端は、スリーブ状延長部22から突出し、ラジアル軸受14の支持ブロックにおいて回転可能に支持されている。そのために、支持ブロックは、第1ばねハウジングドラム1のカラー6によって形成されたスリーブ状孔15に堅固に配置されている。
【0030】
スリーブ状延長部22の端面は、支持ブロックにおいて軸線方向に支持されている。
【0031】
第2ばねハウジングドラム7の第2底部8は、支持突起13へと繋がる第2ばねコア11の半径方向移行部16上にて軸線方向に支持されている。
【0032】
第2ばねコア11において、巻き締め車3から離れた側の端部領域には、時計における輪列に含まれる歯車17が相対回転不能に同軸配置されている。
【0033】
巻き締め車3は、例えば、時計のリューズによって回転可能であり、これにより2個の引張りばね10,12が巻き締められる。
【符号の説明】
【0034】
1 第1ばねハウジングドラム
2 第1底部
3 巻き締め車
4 ガイド溝
5 孔
6 カラー
7 第2ばねハウジングドラム
8 第2底部
9 第1ばねコア
10 第1引張りばね
11 第2ばねコア
12 第2引張りばね
13 支持突部
14 ラジアル軸受
15 スリーブ状孔
16 半径方向移行部
17 歯車
18 車受け
19 車受け孔
20 底部
21 ねじ
22 スリーブ状延長部
23 支持突部
図1
図2
図3