(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498293
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】流体を噴射させるための噴射弁、噴射弁の使用方法および噴射弁の製造方法
(51)【国際特許分類】
F02M 51/06 20060101AFI20190401BHJP
F02D 41/20 20060101ALI20190401BHJP
F02M 65/00 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
F02M51/06 U
F02M51/06 R
F02M51/06 D
F02D41/20 330
F02M65/00 306B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-528907(P2017-528907)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公表番号】特表2018-500496(P2018-500496A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】EP2015079898
(87)【国際公開番号】WO2016102255
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】102014226811.7
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ハメドヴィチ,ハリス
(72)【発明者】
【氏名】パウアー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,カルステン
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−538317(JP,A)
【文献】
特開2005−233048(JP,A)
【文献】
特開平06−074124(JP,A)
【文献】
特表2005−515347(JP,A)
【文献】
特開平05−039883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−71/04
F02D 41/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料流を、内燃機関の吸込通路またはシリンダの燃焼室内へ噴射するための噴射弁(18)であって、該噴射弁が、磁気回路を含んでいる電磁アクチュエータを有し、前記磁気回路が、マグネットコイル(26)と、内側極(2)と、前記マグネットコイル(26)および前記内側極(2)と協働するマグネットアーマチュア(30)とを有し、前記磁気回路は、前記電磁アクチュエータが制御電流および/または制御電圧により起動されるときに、前記内側極(2)と前記マグネットアーマチュア(30)との間に、コントロールされる力作用を発生させるために構成され、前記噴射弁(18)が、前記内側極(2)と前記マグネットアーマチュア(30)との間の領域に隙間を有し、前記噴射弁(18)がバルブスリーブ(6)を有している前記噴射弁において、前記バルブスリーブ(6)が、前記内側極(2)と前記マグネットアーマチュア(30)との間の前記隙間の領域において常磁性材料特性を有し、この領域の外側においては強磁性材料特性を有していて、前記バルブスリーブ(6)が深絞り部材として実現され、該バルブスリーブ(6)が、前記内側極(2)と前記マグネットアーマチュア(30)との間の前記隙間の領域において常磁性材料特性を有し、この隙間の外側においては強磁性材料特性を有し、前記バルブスリーブ(6)が前記隙間の領域の外側で特に350℃と700℃の間の温度範囲で焼きなましされ、前記隙間の領域が、焼きなまし工程の間に、冷却した窒素により冷却を蒙ることを特徴とする噴射弁。
【請求項2】
燃料流を、内燃機関の吸込通路またはシリンダの燃焼室内へ噴射するための請求項1に記載の噴射弁(18)であって、該噴射弁が、磁気回路を含んでいる電磁アクチュエータを有し、前記磁気回路が、マグネットコイル(26)と、内側極(2)と、前記マグネットコイル(26)および前記内側極(2)と協働するマグネットアーマチュア(30)とを有し、前記磁気回路は、前記電磁アクチュエータが制御電流および/または制御電圧により規則的に起動されるときに、前記内側極(2)と前記マグネットアーマチュア(30)との間に力作用を発生させるために構成され、前記噴射弁(18)がバルブスプリング(36)を有している前記噴射弁において、前記バルブスプリング(36)のばね力が4Nよりも大きいことを特徴とする噴射弁(18)。
【請求項3】
前記バルブスプリング(36)のばね力が4.5Nよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の噴射弁(18)。
【請求項4】
前記電磁アクチュエータをコントロールして起動させるため、前記電磁アクチュエータの前記マグネットコイル(26)に流れる電流の時間的推移を検知し、これによって、前記マグネットコイル(26)に流れる電流の時間的導関数を取得し、その結果前記マグネットコイル(26)に流れる電流の時間的導関数における局所的極値の検知によって前記噴射弁(18)の開弁時点の特定を検出可能であることを特徴とする、上記請求項1〜3のいずれか一項に記載の噴射弁(18)。
【請求項5】
噴射弁(18)の作動方法で上記請求項1〜4のいずれか一項に記載の噴射弁(18)を使用する使用方法において、前記電磁アクチュエータをコントロールして起動させるため、前記電磁アクチュエータの前記マグネットコイル(26)に流れる電流の時間的推移を、前記噴射弁(18)の試験起動の間に、検知し、これによって、前記マグネットコイル(26)に流れる電流の時間的導関数を取得し、その結果前記マグネットコイル(26)に流れる電流の時間的導関数における局所的極値の検知によって前記噴射弁(18)の開弁時点の特定を検出可能である使用方法。
【請求項6】
請求項1に記載の噴射弁(18)の製造方法であって、前記バルブスリーブ(6)が、前記内側極(2)と前記マグネットアーマチュア(30)との間の前記隙間の領域において常磁性材料特性を有し、この領域の外側においては強磁性材料特性を有している前記製造方法において、前記バルブスリーブ(6)を、前記隙間の領域の外側において、350℃と700℃の間の温度範囲で焼きなましし、この焼きなまし工程の間に前記隙間の領域を冷却した窒素により冷却することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を、特に燃料流を、内燃機関の吸込通路またはシリンダの燃焼室内へ噴射するための噴射弁であって、該噴射弁が磁気回路を含んでいる電磁アクチュエータを有している前記噴射弁に関するものである。
さらに、本発明は、このような噴射弁の使用方法およびこのような噴射弁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の種類の電磁操作式噴射弁は、極めて一般的には、流体を配量するために使用することができる。この噴射弁は、有利には、内燃機関の燃料システムにおいて、燃料を内燃機関の燃焼室内または(シリンダの)吸込通路内へ噴射するために使用され、この場合内燃機関は典型的には複数のシリンダを含んでいる。あらかじめ設定した噴射量を正確に維持することは、内燃機関の噴射特性および消費特性にとって決定的な意味を持っている。噴射される燃料量は、とりわけ弁の開弁時間に依存しており、よって特に弁の実際の液圧開閉時点にも依存しており、実際の弁の場合、液圧開閉時点はアクチュエータの電気起動開始時点と著しく異なっていることがある。それゆえ、電気起動開始時点および終了時点を検知しただけでは、通常正確な流体配量を行うことはできない。基本的には、噴射弁の電気起動をコントロールして実施することが公知であるが、典型的には、今日の噴射弁は純粋制御作動の方向へ向けて設計されており、すなわち電子制御ユニットが固定起動時間をあらかじめ設定し、噴射弁はその磁気回路を介してこれに反応するように設計されている(つまり、燃料の噴射のために開く)。この場合、磁気特性は、磁気回路が噴射の際に可能な限り短い切換え時間と小さな公差とを可能にするように設計される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の課題は、流体を、特に燃料流を、内燃機関の吸込通路またはシリンダの燃焼室内へ噴射するための噴射弁であって、該噴射弁が作動をコントロールされるように最適化されている前記噴射弁を改善することである。噴射弁の作動をコントロールする場合、噴射弁の電磁アクチュエータは、特に、それぞれの噴射弁に個別に整合されている態様でコントロールされて起動される。この場合、電磁アクチュエータの少なくとも1つの電気作動量の時間的推移が、特に反復しても実施され得る噴射弁の試験起動の間に、特に検知され、これによって、噴射弁の少なくとも1つの作動状態に関する情報および/または噴射弁の少なくとも1つの状態変化に関する情報が得られる。少なくとも1つの検証信号を検知することにより、噴射過程の種々の特徴を検出可能であり、特に噴射弁の開弁時点および/または閉弁時点の特定が可能である。それゆえ、本発明の課題は、検証信号における特徴検知の改善に寄与し、その結果検知した信号または特に検証信号の分析により、噴射弁の少なくとも1つの作動状態および/または噴射弁の少なくとも1つの状態変化をより好適に、特により正確にまたはより少ない信号分析コストで検出可能であるようにすることである。特殊な弁特性(たとえば開弁または閉弁の時点或いは騒音低減のための制動のような他のシステム機能の時点)の検証に基づいて、目標量へ向けてコントロールし、よって精度を向上させる。
【0004】
本発明によれば、噴射弁は次のように構成されており、すなわち噴射弁の検証(検証信号を用いて検出可能であり、または、電磁アクチュエータの少なくとも1つの電気作動量の時間的推移の検知、特に電流推移および電圧推移の検知によって検出可能である)が改善されるように構成されている。このとき、開弁時点および閉弁時点のより好適な検出はコントロールの精度を向上させ、または、これを初めて可能にする。
【0005】
並列させた請求項に記載の本発明による噴射弁、本発明による噴射弁の使用方法、噴射弁の製造方法には、技術水準に比べて、検証信号における特徴表現、或いは、噴射弁またはバルブニードルを開閉させるための電流信号または電圧信号における特徴表現を、噴射弁での合目的的な処置によって改善させることができるという利点がある。この場合、噴射弁の電磁特性が重要である。前記処置の目的は、特に弁の隙間(または作業空隙)による磁束の配分を可能な限り向上させ、或いは、バルブスプリングの復帰力をも向上させて、噴射弁のより短い噴射時間またはより短い開弁時間間隔を可能にすることである。これは、技術水準の場合のように噴射弁を孤立した構成要素として最適化するのではなく、コントロールされる作動またはコントロールされる作動態様と協働させるために最適化されることを意味している。ここでは、コントロールを実施するために必要な特徴(噴射弁の検知した信号または検証信号における特徴)の表現が中心的な役割を担う。噴射弁は、技術水準の場合のように孤立した構成要素の特性に関して最適化されるのではなく、コントロールとの協働またはコントロールされる作動との協働のために最適化される。主要な観点は、磁気アクチュエータの隙間(作業空隙)内での磁束を最大化することである。これにより、電流信号および電圧信号に対するアーマチュア運動またはニードル運動の作用が信号内での屈曲の強さの形態で最大化される。本発明によれば、個々の処置が、(たとえば配量の精度のような)弁特性を、従来利用されていた噴射弁の純粋制御作動態様の視点で見て当初悪化させるのを許容する。しかしながら、噴射弁のコントロールされる作動により、弁特性の精度、再現性および寿命安定性を総じて改善させることが可能である。
【0006】
このような背景のもとに、本発明によれば、バルブスリーブは、一貫して、すなわち内側極とマグネットアーマチュアとの間の隙間の領域においても、常磁性材料特性を有しているか、或いは、内側極とマグネットアーマチュアとの間の隙間の領域において常磁性材料特性を有し、この領域の外側においては強磁性材料特性を有しているかのいずれかである。この場合、本発明によれば、このために費やされるコストは比較的少なく、すなわちこのようなバルブスリーブはコスト的に好ましく製造可能である。特に、バルブスリーブは深絞り部材として形成され、該バルブスリーブは、一貫して(つまり、本質的にその全長にわたって)常磁性材料特性を有し、且つ一貫して焼きなましされておらず、特に350℃と700℃の間の温度範囲で焼きなましされていない。これにより、バルブスリーブは特にコスト的に好ましく製造可能であり、それにもかかわらず作業空隙内の磁束は(バルブスリーブの総じて常磁性特性により)大きくなり、或いは、いずれにしろ小さくならない。さらに、特に、本発明によれば、有利には、バルブスリーブは深絞り部材として実現され、該バルブスリーブは、内側極とマグネットアーマチュアとの間の隙間の領域において常磁性材料特性を有し、この隙間の領域の外側においては強磁性材料特性を有し、バルブスリーブは隙間の領域の外側で焼きなましされ、特に350℃と550℃の間の温度範囲で焼きなましされ、隙間の領域は、焼きなまし工程の間に、特に冷却した窒素により冷却を蒙る。これにより、総じて、バルブスリーブが空隙の領域で(比較的コスト的に好ましい態様で)次のように処理され、すなわちそこで磁気抵抗が高くなって、その結果空隙の領域で磁束が大きくなるように処理されることが有利な態様で達成される。なぜなら、磁束のわずかな部分だけしか(バルブスリーブの材料のより高い磁気抵抗のために)バルブスリーブの材料を介して失われず(バイパス)、よって空隙内で作用しないからである。
【0007】
本発明による噴射弁の択一的な実施態様によれば(しかしながら、この実施態様は、バルブスリーブの材料特性の構成に対する処置と組み合わせても利点を持って実現させることができる)、噴射弁はバルブスプリングを有し、該バルブスプリングのばね力は4Nよりも大きく、特に4.5Nよりも大きい。これにより、本発明によれば、流体量または燃料量を噴射弁の1回または複数回の起動時間で可能な限り正確に配量できることが特に有利な態様で可能である。バルブスプリングのばね力が比較的大きいことにより、比較的大きな線形配量範囲を実現可能であることが有利に可能であり、その結果ばね力を線形性に対し最適に調整でき、流体量または燃料量の精度をコントロールによって確保することができる。
【0008】
本発明の有利な構成および更なる構成は、従属請求項および図面を参照した説明から読み取れる。
【0009】
有利な更なる構成によれば、電磁アクチュエータをコントロールして起動させるため、電磁アクチュエータの少なくとも1つの電気作動量の時間的推移を検知し、これによって、噴射弁の少なくとも1つの作動状態に関する情報および/または噴射弁の少なくとも1つの状態変化に関する情報を取得し、その結果少なくとも1つの検証信号の検知によって噴射工程の種々の特徴を検出可能であり、特に噴射弁の開弁時点および/または閉弁時点の特定を検出可能である。これにより、本発明によれば、個々の構造的処置により噴射弁の製造時の再現性が低下し、または、構成部材の公差に関するばらつきが大きくなるにもかかわらず、総じて噴射弁の作動時の精度を向上できることが有利に可能である。
【0010】
本発明の他の対象は、噴射弁の作動方法での本発明による噴射弁の使用に関する。この場合、電磁アクチュエータをコントロールして起動させるため、電磁アクチュエータの少なくとも1つの電気作動量の時間的推移を、特に噴射弁の試験起動の間に、検知し、これによって、噴射弁の少なくとも1つの作動状態に関する情報および/または噴射弁の少なくとも1つの状態変化に関する情報を取得し、その結果少なくとも1つの検証信号の検知によって噴射工程の種々の特徴を検出可能であり、特に噴射弁の開弁時点および/または閉弁時点の特定を検出可能である。
【0011】
この本発明による原理は、本発明による試験起動または複数の試験起動の範囲内で、噴射弁の観察される作動状態または作動状態変化の発生を特に正確に確認することを可能にする。このようにして、対応する特徴の基準値のもとで特に弁の実際の液圧開弁時点をも検出することができる。
【0012】
本発明の他の対象は、本発明による噴射弁の製造方法に関し、この場合バルブスリーブは、内側極とマグネットアーマチュアとの間の隙間の領域において常磁性材料特性を有し、この領域の外側においては強磁性材料特性を有し、バルブスリーブを、隙間の領域の外側において、焼きなましし、特に350℃と55℃の間の温度範囲で焼きなましし、この焼きなまし工程の間に隙間の領域を、特に冷却した窒素により冷却する。
【0013】
これにより、強磁性特性(または対応する材料特性)の構成が回避されるバルブスリーブの領域を、隙間(または作業空隙)の領域へ十分低減できることが有利な態様で可能であり、例えば0.5mmと3mmの間のオーダー、有利には0.8mmと1.2mmの間のオーダーに低減でき、この場合隙間(またはマグネットアクチュエータの作業空隙)は実質的に、強磁性特性の構成が回避される領域に対して心合わせして配置されている。
【0014】
さらなる利点、特徴および詳細は、図面を参照のもとに本発明の種々の実施形態が示されている以下の説明から明らかである。なお、請求の範囲および以下の説明で述べられている特徴はそれぞれ個々に単独でまたは任意の組み合わせで本発明にとって重要なものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に従って作動される複数の噴射弁を備えた内燃機関の図である。
【
図2a】
図1の噴射弁を1つの作動状態で示したし詳細図である。
【
図2b】
図1の噴射弁を他の作動状態で示した詳細図である。
【
図3】本発明に従って作動される噴射弁の異なる作動量の時間的推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
内燃機関は、
図1で全体に参照符号10を担っている。内燃機関はタンク12を含んでおり、タンクから搬送システム14は燃料を分配システム16へ搬送する。分配システムはたとえばコモンレールである。これには複数の電磁操作式噴射弁18が接続され、電磁操作式噴射弁は、燃料をそれに付設した燃焼室20へ直接、または該燃焼室20の吸込管内へも噴射させる。内燃機関10の作動は制御・調整機構22によって制御または調整され、制御・調整機構はとりわけ噴射弁18をも起動させる。
【0017】
図2aと
図2bは、
図1の噴射弁18を2つの異なる作動状態で図示したものである。噴射弁18は電磁アクチュエータを有し、該電磁アクチュエータは、マグネットコイル26と、マグネットコイル26と協働するマグネットアーマチュア30とを有している。マグネットアーマチュア30は、噴射弁18のバルブニードル28と作用結合しており、たとえばマグネットアーマチュア30が
図2aにおいて鉛直方向でのバルブニードル28の運動方向に関して軸線方向に非微小機械的遊びをもってバルブニードル28に対し相対運動可能であるように作用結合している。これにより、電磁アクチュエータ26,30によるバルブニードル28の駆動を生じさせる、たとえば2つの部分から成る質量系28,30が生じる。この2部分構成により、噴射弁18の取り付け性が改善され、バルブニードル28がその弁座38に衝突する際の該バルブニードルの望ましくないリバウンドが減少する。
図2aに図示した本構成の場合、バルブニードル28上でのマグネットアーマチュア30の軸線方向の遊びは2つのストッパー32と34によって制限される。バルブニードル28は、
図2aに図示したようなバルブスプリング36により、ハウジングの領域で弁座38に対し適当なばね力で付勢される。
図2aでは、噴射弁18はその閉弁状態で示されており、燃料噴射は行われない。燃料噴射を生じさせるためには、アクチュエータ26,30を予め設定可能な起動時間にわたって起動電流で付勢する。マグネットコイル26のこの通電により、マグネットアーマチュア30は
図2bにおいて上方へ移動し、その結果マグネットアーマチュアはばね力に抗してバルブニードル28をその弁座38から押し出しストッパー32に係合する。これによって燃料42を噴射弁18から燃焼室20(
図1)内へ噴射させることができる。制御器22(
図1)によるマグネットコイル26の通電が所定の起動時間の満了で終了すると、すぐにバルブニードル28は、バルブスプリング36によって作用するばね力の作用で再びその弁座38上へ移動し、マグネットアーマチュア30を連行する。この場合も、バルブニードル28からマグネットアーマチュア30への力の伝達は上部ストッパー32によって行われる。バルブニードル28が弁座38での衝突に伴ってその閉弁運動を終了すると、マグネットアーマチュア30は軸線方向の遊びにより
図2bで下方へさらに移動して、第2のストッパー34に当接する。これは、
図2aに図示した噴射弁18の閉弁状態にまた相当している。
【0018】
本発明によれば、噴射弁18の少なくとも1つの作動状態または状態変化に関する情報を取得するために作動方法を実施する。第1のステップでは、少なくとも1つの試験起動を実施し、その間アクチュエータ26,30はあらかじめ設定可能な起動電流Iで付勢される。有利には試験起動の実施と同時に、試験起動の間にアクチュエータ26,30の少なくとも1つの電気作動量の少なくとも1つの時間的推移を検知する。その際、電磁アクチュエータ26,30の場合には、特に該アクチュエータのマグネットコイル26に印加される電圧の時間的推移および/またはマグネットコイルを流れる電流Iの時間的推移を考慮する。次に、検知した時間的推移を、噴射弁18のあらかじめ設定可能な作動状態があるかどうか、および/または、噴射弁18のあらかじめ設定可能な作動状態変化を特徴づける特徴があるかどうかに関して評価する。なお、本発明の意味での特徴とは、特に作動量である電流および/または電圧の局所的極値および/または連続する複数の局所的極値および/またはその他の特殊な時間的推移であってよい。興味の対象となる特徴は評価の間に見いだされ、作動状態または作動状態交替について得られた情報は、たとえば噴射弁18の今後の作動をコントロールするために転用される。本発明によれば、複数の試験起動も可能である。特に、本発明によれば、有利には、噴射弁18の実際の液圧開弁時点を検出することが可能である。
【0019】
噴射弁18の液圧開弁時点は、バルブニードル28がその弁座38から離間することによって決定されている。バルブニードル28のこの離間は、マグネットコイル26による起動電流Iの第1の時間的導関数の特殊な時間的推移と関連している。このため、
図3は、噴射弁18をその開弁状態へ変位させるために、(
図2aに図示した弁18の閉弁状態から出発して)マグネットコイル26が起動される起動電流Iの第1の時間的推移I1を示している。第1の起動電流I1による起動の間に生じるニードルストロークhの時間的推移h1も
図3に図示されている。起動電流Iによるアクチュエータ26,30の付勢開始後、時点T1で最初にストローク推移h1に対する非微小値が発生し、すなわち噴射弁18の閉弁状態から開弁状態への作動状態変化が時点T1で行われる。したがって、少なくとも起動電流I1の時間的推移が検知され、評価を行っている間に、前もって検知した第1の起動電流I1の第1の時間的導関数dI1が形成される。これにより、検出した開弁時点T1の認知のもとに、噴射弁18の以後の作動を、たとえば複数の噴射弁18の噴射特性の同等化に関して、コントロールして実施することが可能である。第1の試験起動を実施した後でも局所的極小値Min1が検出されなければ、場合によっては新たに試験起動を実施してよい。
【0020】
図3は、第1の起動電流I1に加えて、わずかに減少させた起動電圧でアクチュエータ26,30を起動して生じるような第2の起動電流I2の時間的推移をも示している。本発明によれば、閉弁状態から開弁状態への移行を特徴づける作動状態変化は、より大きな起動電圧による起動の際に生じるストローク推移h1に対していくぶん遅れて行われる。第2の起動電流I2を使用した起動過程のために、実際の液圧起動開始時点として、すなわち開弁時点として、本発明によれば、第2の起動電流I2の第1の時間的導関数dI2における局所的極小値Min2と対応している時点T2を検出することができる。
【0021】
図4には、燃料噴射装置のための燃料噴射弁の形態で電磁操作可能な噴射弁18が例示され、たとえば混合気圧縮型火花点火式内燃機関で使用される。噴射弁18は、マグネットコイル1によって取り囲まれて内側極としておよび部分的には燃料貫流部として用いる、十分に管状のコア2を有している。マグネットコイル1は、外側のスリーブ状の、段付きで実施される、たとえば強磁性のバルブケース5(外側極として用いる外側磁気回路構成部材である)によって周方向に完全に取り囲まれている。マグネットコイル1とコア2とバルブケース5とは、協働して巻線界磁型操作要素または磁気回路または電磁アクチュエータを形成している。コイル本体3内に埋設されているマグネットコイル1が巻線部4でもってバルブスリーブ6を外側から取り囲んでいるのに対し、コア2は、バルブスリーブ6の、弁長手軸線10’に同心に延在している内側の開口部11内に収納されている。バルブスリーブ6は長尺に且つ薄壁に実施されている。開口部11は、とりわけ、弁長手軸線10に沿って軸線方向に可動なバルブニードル28のための案内穴として用いる。バルブスリーブ6は、たとえば噴射弁の軸線方向全延在距離のほぼ半分にわたって軸線方向に延在している。バルブニードル28は、
図4の例ではアーマチュア30と一体に結合され、管状のアーマチュア30と同様に管状のニードル部分と球形の弁閉鎖体とによって形成される。噴射弁の操作は公知の態様で電磁式に行われる。
【0022】
バルブニードル14を軸線方向に移動させるため、よってバルブニードル28に係合している復帰ばね36のばね力に抗して噴射弁を開弁させるため、または、閉弁させるために、マグネットコイル1と内側コア2と外側バルブケース5とアーマチュア30とを備えた電磁回路を用いる。アーマチュア30はコア2に対して配向されている。コア2の代わりに、たとえば内側極として用いられ、磁気回路を閉じるカバー部材が設けられていてもよい。
【0023】
コア2の、弁長手軸線10’に同心に延びて、弁座面38の方向に燃料を供給するために用いられる流動孔28には、復帰ばね36の外側に、調整スリーブ29の形態で調整要素が押し込められている。調整スリーブ29は、該調整スリーブ29に当接している復帰ばね36のばね予緊張力を調整するために用いられ、復帰ばねはその反対の側でもってアーマチュア30の領域でバルブニードル28で支持されている。
【0024】
本発明によれば、バルブスリーブ6は、一貫して(内側極2とマグネットアーマチュア30との間の隙間の領域でも)常磁性材料特性を有しているか、或いは、内側極2とマグネットアーマチュア30との間の隙間の領域で常磁性材料特性を有し、この領域の外側で強磁性材料特性を有している。この場合、第1の選択肢(内側極2とマグネットアーマチュア30との間の隙間の領域でも常磁性材料特性)によれば、バルブスリーブ6が深絞り部材として実現され、その際バルブスリーブ6が一貫して常磁性材料特性を有し、且つ一貫して焼きなましされておらず、特に350℃と55℃の間の温度範囲で焼きなましされていないようにするのが有利である。第2の選択肢(内側極2とマグネットアーマチュア30との間の隙間の領域で常磁性材料特性、この領域の外側で強磁性材料特性)によれば、バルブスリーブ6が深絞り部材として実現され、その際バルブスリーブ6は、内側極2とマグネットアーマチュア30との間の隙間の領域で常磁性材料特性を有し、この隙間領域の外側で強磁性材料特性を有し、その際バルブスリーブ6が隙間領域の外側で焼きなましされ、特に350℃と55℃の間の温度範囲で焼きなましされ、その際隙間領域が焼きなまし工程の間に特に冷却した窒素により冷却を蒙るようにするのが有利である。
【0025】
この処置の代わりに、または、この処置に加えて、本発明によれば、噴射弁18はバルブスプリング36を有し、バルブスプリング36のばね力は4Nよりも大きく、特に4.5Nよりも大きい。
【0026】
総じて、これにより、噴射弁のコントロールクオリティを、磁気回路の特定の特性とコントロール機能との組み合わせによって改善させることができ、その結果噴射弁によって流体を噴射するためのコントロール機能を実現可能である。すなわち、特にマグネットコイルを取り囲んでいる容器と、磁気抵抗R
mを備えた磁気回路のスリーブとは、噴射弁の検証信号における特徴表現を本発明に従って実現するために決定的である。従来利用されていた、純粋制御式の作動態様に依拠した噴射弁の場合、これらの構成部材は、低減された磁気抵抗R
mを維持するために焼きなましするのが典型的であった。本発明によれば、このような焼きなまし操作は噴射弁の製造時に回避され、このことは、コントロールのための特徴の表現、または、コントロールのための特徴の検出性を改善させる。