特許第6498319号(P6498319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498319
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】窒素化合物半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/22 20100101AFI20190401BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20190401BHJP
【FI】
   H01L33/22
   H01L33/32
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-559578(P2017-559578)
(86)(22)【出願日】2016年5月11日
(65)【公表番号】特表2018-520506(P2018-520506A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016060575
(87)【国際公開番号】WO2016184752
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2018年1月10日
(31)【優先権主張番号】102015107661.6
(32)【優先日】2015年5月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ヘアトコアン
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ ジーニ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー フライ
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−260737(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0061694(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/22
H01L 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素化合物半導体デバイスの製造方法であって、
第1の窒素化合物半導体層(1)を成長基板(10)上に成長させるステップと、
マスク層(11)を成膜するステップと、
前記マスク層(11)上に第2の窒素化合物半導体層(2)を成長させるステップと、
第3の窒素化合物半導体層(3)が非平面状の構造(3a)を有するように、前記第2の窒素化合物半導体層(2)上に当該第3の窒素化合物半導体層(3)を成長させるステップと、
第4の窒素化合物半導体層(4)が実質的に平面状の表面を有するように、前記非平面状の構造(3a)上に当該第4の窒素化合物半導体層(4)を成長させるステップと、
前記窒素化合物半導体デバイスの機能的積層体(8)を前記第4の窒素化合物半導体層(4)上に成長させるステップであって、当該機能的積層体(8)は、n型半導体領域(5)、p型半導体領域(7)、および、当該n型半導体領域(5)と当該p型半導体領域との間に配置された活性層(6)を備えている、ステップと、
前記機能的積層体(8)の、前記成長基板(10)とは反対側に位置する面を、支持体(13)に結合するステップと、
前記成長基板(10)を除去するステップと、
前記第1、第2および第3の窒素化合物半導体層(1,2,3)除去するエッチングプロセスを用いて、前記窒素化合物半導体デバイスの、前記支持体(13)から離れた方を向いた表面に、放射取り出し構造(14)を作製するステップと
記載の順で有する、製造方法。
【請求項2】
前記非平面状の構造(3a)は、錐体形の構造である、
請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記非平面状の構造(3a)は、[1−101]結晶面または[11−22]結晶面により構成された側面ファセット(9)を有する、
請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記取り出し構造の少なくとも一部は、[1−101]結晶面または[11−22]結晶面によって構成される、
請求項1から3までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
前記非平面状の構造(3a)の平均高さは、1μm〜5μmの間である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
前記エッチングプロセスは、湿式化学エッチングプロセスである、
請求項1から5までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2の窒素化合物半導体層(2)および/または前記第4の窒素化合物半導体層(4)を、1,050℃超の成長温度で作製する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
前記第3の窒素化合物半導体層(3)を、前記第2の窒素化合物半導体層(2)の成長温度より少なくとも40℃低い成長温度で作製する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
有機金属気相エピタクシー法を用いて前記窒素化合物半導体層(1,2,3,4)を作製し、
反応ガスとしてNHを使用し、
前記第2の窒素化合物半導体層の作製時と前記第3の窒素化合物半導体層(3)の作製時とにおけるNHガス流は、前記第4の窒素化合物半導体層(4)の作製時より少なくとも70%少ない、
請求項1から8までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
前記マスク層(11)は窒化シリコン層である、
請求項1から9までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
前記マスク層(11)は、横方向の平均寸法が100nm〜1,000nmの間である複数の開口を有する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
前記成長基板(10)はサファイア基板である、
請求項1から11までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項13】
前記窒素化合物半導体デバイスは発光ダイオードである、
請求項1から12までのいずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素化合物半導体デバイスの製造方法、特にオプトエレクトロニクス窒素化合物半導体デバイスの製造方法に関する。
【0002】
本特許出願は、独国特許出願第102015107661.6号に基づく優先権を主張するものであり、同出願の開示内容は、参照をもって本願の開示内容に含まれるものとする。
【0003】
LEDまたは半導体レーザ等の窒素化合物半導体デバイスを製造するためには、通常はデバイスの機能層を適切な成長基板上にエピタクシー法により成膜する。基板上に窒素化合物半導体層を成長させるためには、サファイア基板が特に適している。窒素化合物半導体をヘテロエピタクシー法によりサファイア上に成長させる場合、格子不整合の存在に起因して半導体材料に欠陥が形成されることがあり、この欠陥はデバイスの特性を損ない得る。
【0004】
窒素化合物半導体ベースのデバイスについては、エピタキシャル積層体の、成長基板とは反対側に配置された面を、支持体に結合し、その後、エピタキシャル積層体から成長基板を除去することが有利であることが判明している。成長基板を窒素化合物半導体デバイスから除去するためには、特に、自明のレーザリフトオフ法を使用することができる。このようにして製造されたLEDは、「薄膜LED」とも称される。放射の取り出しを改善するためには、支持体とは反対側に位置する表面に、取り出し構造または粗面加工領域を設けることができる。
【0005】
解決すべき課題は、特に欠陥密度が低くなるように改善された、窒素化合物半導体デバイスの製造方法を実現することである。さらに、デバイスの放射特性に影響を及ぼす、取り出し構造の特定の形成を容易にすべきである。
【0006】
前記課題は、独立請求項1に記載の方法によって解決される。従属請求項に本方法の有利な実施形態および他の改良形態が記載されている。
【0007】
本方法の少なくとも1つの実施形態では、成長基板を設け、その後、成長基板上に第1の窒素化合物半導体層を成長させる。
【0008】
上記および下記において、1つの層または要素が他の層または他の要素「上」または「上方」に位置する、または配置されているとの文言は、当該1つの層または要素が当該他の層または他の要素と機械的および/または電気的に直接接触して、当該他の層または要素上に直接配置されていることを意味し得る。さらに、当該1つの層または要素が当該他の層または他の要素上またはその上方に間接的に配置されていることも意味し得る。この場合には、当該1つの層と当該他方の層との間に追加の層を配置すること、および/または、当該1つの要素と当該他の要素との間に追加の要素を配置することも可能である。
【0009】
第1の窒素化合物半導体層を成長させる前に、核層、たとえば窒化アルミニウムを含む層を、好適には先に成膜する。核層は、たとえばスパッタリングによって成膜することができる。第1の窒素化合物半導体層と、次の追加のステップにおいて成膜される追加の窒素化合物半導体層とは、好適にはエピタキシャル成膜され、特に、有機金属気相エピタクシー(MOVPE)によって成膜される。
【0010】
有利には、第1の窒素化合物半導体層上にマスク層を成膜する。その構造および/または表面特性に起因して、マスク層により、第2の窒素化合物半導体層を当該マスク層上に選択的に成長させることできる。マスク層は特に、SiNまたはSiGaNを含み、またはこれから成ることができる。マスク層は好適には、複数のランダムに分布している開口を有する非連続層である。具体的には、マスク層を島の形態の層とすることができる。すなわち、1つの連続層を得るためにクリスタリットが完全に融合して一体化できるようになる前に初期段階において成長を停止された層とすることができる。マスク層の厚さは好適には、1つまたは少数の原子層のみである。マスク層はたとえば、約0.2nm〜2nmの平均厚さとすることができる。好適には、マスク層はMOVPEを用いて成膜される。
【0011】
他の一ステップにおいて、マスク層上に第2の窒素化合物半導体層を成長させる。第2の窒素化合物半導体層を成長させると、マスク層の構造および/または表面特性に起因して、窒素化合物半導体材料から3次元の島が形成される。たとえば、第2の窒素化合物半導体層の窒素化合物半導体材料の核形成は、マスク層の開口内にて開始する。この3次元の島は、少なくとも部分的にマスク層材料上にて成長することができる。好適には、連続層を形成するために3次元の島が融合して一体化する前に、第2の窒素化合物半導体層の成長を停止させる。
【0012】
次のステップにおいて、第2の窒素化合物半導体層上に第3の窒素化合物半導体層を成長させる。第3の窒素化合物半導体層を成長させる際には、主に3次元の成長を達成するように、成長条件、特に温度および/またはガス流量を調整する。「主に3次元の成長」とは特に、第3の窒素化合物半導体層の表面の大部分が、成長基板に対して平行でない結晶面によって構成されていることを意味する。具体的には、第3の窒素化合物半導体層の結晶面の大部分の方位が、c面内ではない、ということである。c面は特に、窒素化合物半導体材料の[0001]結晶面に相当する。[0001]結晶方位での第3の窒素化合物半導体層の成長は、好適には、無視できる程度に小さい。成長条件に起因して、第3の窒素化合物半導体層は非平面状の3次元構造を形成し、特に錐体形構造を形成する。
【0013】
本方法では、第4の窒素化合物半導体層を、有利には第3の窒素化合物半導体層の非平面状の構造上に成長させる。こうするためには、主に2次元の成長を達成するように成長条件を設定する。「主に2次元の成長」とは特に、第4の窒素化合物半導体層の表面の大部分が、成長基板に対して平行である結晶面によって構成されていることを意味する。特に第4の窒素化合物半導体層の表面の大部分の方位は、窒素化合物半導体材料の[0001]結晶面に相当するc面内にある。第4の窒素化合物半導体層は、好適には第3の窒素化合物半導体層の非平面状の構造を完全に覆い、実質的に平面状の表面を有する。換言すると、第4の窒素化合物半導体層の非平面状の構造は、好適には完全に平坦化される。
【0014】
一実施形態では、第3の窒素化合物半導体層を成長させた後であって第4の窒素化合物半導体層を成長させる前に、追加のマスク層を成長させ、その後、主に3次元の成長条件下で、すなわち、第3の窒素化合物半導体層について説明したのと同様の成長条件下で、他の1つの窒素化合物半導体層を成長させる中間ステップを実施することができる。この追加のマスク層は、好適にはSiNから成る。この中間ステップは、必要な場合、1回または複数回繰り返すことができる。このことによって、錐体形構造の形成を強化することができる。本実施形態ではこの中間ステップの次に、上述のように第4の窒素化合物半導体層を成長させる。
【0015】
その後、次のステップにおいて、窒素化合物半導体デバイスの機能的半導体積層体を、第4の窒素化合物半導体層の好適には完全に平面状の表面上に成長させる。機能的半導体積層体は特に、発光ダイオード積層体とすることができる。
【0016】
有利な一実施形態では、他のステップにおいて、機能的半導体積層体の、成長基板とは反対側の面を、支持体に結合する。その後、このようにして作製された半導体積層体から成長基板を除去する。成長基板の除去は好適には、レーザリフトオフ法を用いて行われる。しかし代替手段として、湿式化学的手法を用いて、超音波を印加して、たとえば温度処理よる機械的な剪断力の発生によって、または機械的力を印加することによって、成長基板を除去することも可能である。特にサファイアを含む比較的高価な成長基板は、有利にはその除去後に再利用することができる。
【0017】
有利な一実施形態では他のステップにおいて、デバイスの、支持体から離れた方を向いた表面上に、エッチングプロセスを用いて取り出し構造を生成する。このエッチングプロセスは、第1,第2および第3の窒素化合物半導体層の少なくとも一部を除去するように作用する。
【0018】
第3の窒素化合物半導体層と第4の窒素化合物半導体層との間の境界面は、エッチングプロセスの際にエッチングストップ層のように機能することが判明している。エッチングプロセスはこの境界面において緩慢化し、または完全に停止することもあり得る。このことは特に、第3の窒素化合物半導体層の作製と第4の窒素化合物半導体層の作製との間に成長条件を変化させた場合、第3の窒素化合物半導体層の非平面構造の表面にある欠陥が折れ曲がることによる結果として生じると考えられる。よって、取り出し構造を作製している際には、特に第3の窒素化合物半導体層と第4の窒素化合物半導体層との間の非平面の境界面において、エッチングプロセスが停止する。したがって取り出し構造の少なくとも一部は、既に第3の窒素化合物半導体層との境界面となっている、第4の窒素化合物半導体層の非平面状の表面によって構成されることとなる。エッチングプロセス中に、第3の窒素化合物半導体層の全部または一部が除去される。換言すると取り出し構造は、第3の窒素化合物半導体層の作製中に形成された非平面構造を反転したものである。
【0019】
本方法では有利には、取り出し構造の形状および/またはサイズは、第2および第3の窒素化合物半導体層の作製中に形成される非平面構造によって定まる。この非平面構造には、サイズおよび分布についてはマスク層によって影響を及ぼすことができる。さらに、第3の窒素化合物半導体層の作製中の条件および成長期間を適切に設定することにより、非平面構造の形状を決定することも可能である。
【0020】
好適には、第3の窒素化合物半導体層を成長させるときの非平面構造の形成は、適切な手法によって、特にインシチュでの反射率測定によってモニタリングされる。たとえば、レーザビームの反射を垂直入射で測定することができる。非平面構造のサイズが拡大するにつれて、垂直入射での反射は低減していく。というのも、非平面構造のサイズはレーザビームを横方向において偏向または拡散するように作用するからである。このことによって、非平面構造が所望のサイズに達したときに、第3の窒素化合物半導体層の成長を停止させることが可能になる。
【0021】
第3の窒素化合物半導体層の非平面構造は特に、実質的に錐体形の構造とすることができる。この錐体形構造は有利には、第3の窒素化合物半導体層の3次元成長中に自己組織化で形成される。具体的には、錐体形構造は、[1−101]結晶面または[11−22]結晶面によって構成された側面ファセットを有することができる。エッチング中に形成された取り出し構造も同様に、[1−101]結晶面または[11−22]結晶面によって構成された側面ファセットを有する。
【0022】
他の有利な一実施形態では、非平面構造の平均高さは1μm〜5μmの間であり、好適には2μm〜3μmの間である。
【0023】
取り出し構造を作製するためのエッチングプロセスは有利には、湿式化学的に、好適にはエッチング剤としてKOHを用いて行われる。湿式化学エッチングプロセスでは、エッチング剤は特に、垂直方向に延在する転位部に沿って半導体材料を貫通する。よって、転位部が垂直方向から逸れて折れ曲がる境界面、たとえば、転位部が横方向に延在するc面内へ折れ曲がる境界面は、エッチングプロセスを緩慢化させ、または停止させる。
【0024】
他の有利な一実施形態では、第2の窒素化合物半導体層および/または第4の窒素化合物半導体層を、1,050℃超の成長温度で作製する。かかる成長温度によって、主に2次元の成長が達成される。
【0025】
第3の窒素化合物半導体層は好適には、第2および/または第4の窒素化合物半導体層を成長させるために使用される成長温度より少なくとも40℃低い成長温度、好適には50℃〜80℃低い成長温度で作製される。第3の窒素化合物半導体層を成長させるために使用される成長温度が低いことは、3次元の非平面構造の形成のために有利である。
【0026】
好適には、有機金属気相エピタクシー法(MOVPE)を用いて、窒素成分を供給するための反応ガスとしてNHを使用して、窒素化合物半導体層を作製する。好適には、第2および第3の窒素化合物半導体層を作製するときのNHガス流は、第4の窒素化合物半導体層を作製するときより少なくとも70%、好適には70%〜90%少ない。成長温度を低くすることと同様、NHガス流を少なくすることは、3次元の非平面構造の形成のために有利である。
【0027】
本方法において使用されるマスク層は、好適には窒化シリコン層である。窒素化合物半導体を窒化シリコン上に成長させることは、比較的困難である。よって窒化シリコンマスク層により、当該マスク層の開口内に、および/または、マスク層にラテラルオーバーグロースする複数の個々の島の形態で、第2の窒素化合物半導体層の選択的な成長が達成される。
【0028】
本方法に使用される成長基板は、好適にはサファイア基板である。本方法は有利には、支持体に結合された後に除去すべき成長基板を提供するので、これによって、比較的高価な成長基板を有利に再利用することができる。
【0029】
機能的積層体は好適には、n型ドープ半導体領域、p型ドープ半導体領域、および、n型ドープ半導体領域とp型ドープ半導体領域との間に配置された活性層を備えている。この活性層は好適には、電磁波の放出のために適した層である。特に、窒素化合物半導体デバイスを発光ダイオードとすることができる。
【0030】
以下、図1〜7に示された実施形態を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態の方法の1つの中間ステップを示す概略図である。
図2】一実施形態の方法の1つの中間ステップを示す概略図である。
図3】一実施形態の方法の1つの中間ステップを示す概略図である。
図4】一実施形態の方法の1つの中間ステップを示す概略図である。
図5】一実施形態の方法の1つの中間ステップを示す概略図である。
図6】一実施形態の方法の1つの中間ステップを示す概略図である。
図7】一実施形態の方法の1つの中間ステップを示す概略図である。
【0032】
図面中、同一または同一作用の構成要素には、それぞれ同一の符号を付している。図示されている各構成要素、および各構成要素の相互間のサイズ比は、実寸の比率通りであるとみなしてはならない。
【0033】
図1中に概略的に示されている方法の第1のステップでは、第1の窒素化合物半導体層1が成長基板10上に成長完了している。成長基板10は好適には、サファイア基板である。
【0034】
同図に示されている第1の窒素化合物半導体層1は、III 窒素化合物半導体材料を含み、好適にはInAlGa1−x−yNを含む。ここで、0≦x≦1、0≦y≦1、かつx+y≦1である。これは、次のステップにおいて成膜される追加の窒素化合物半導体層についても同様である。しかし、この材料は必ずしも、上述の化学式に数学的に厳密に従った組成である必要はない。実際には、InAlGa1−x−yNの特徴的な物理的特性を基本的には変化させない1つまたは複数のドーパントを含むことができ、また、そのような追加の成分を含むこともできる。簡素化のため、上述の化学式は、結晶格子の最も本質的な成分(In,Al,Ga,N)のみを含んでいるが、これらの一部は、少量の他の物質と置き換えることができる。第1の窒素化合物半導体層1は、特にGaN層とすることができる。
【0035】
第1の窒素化合物半導体層1の成長は、追加の窒素化合物半導体層と同様に行われ、好適には有機金属気相エピタクシー(MOVPE)によって行われる。第1の窒素化合物半導体層1は好適には、10nm〜1,000nmの間の厚さを有し、たとえば約300nmの厚さを有する。
【0036】
第1の窒素化合物半導体層1を成長させる前に、成長基板10上に薄い核層(図示されていない)を、たとえばスパッタリングによって成膜することができる。この核層は、特にAlNを含むことができる。
【0037】
図2の中間ステップにおいて、第1の窒素化合物半導体層1上にマスク層11が成膜完了している。マスク層11は、窒素化合物半導体が成長しにくい材料から成る。マスク層11は好適には、窒化シリコン層である。マスク層11は好適には、横方向の平均寸法が約100nm〜1,000nmの複数の開口を有する。有利には開口間に位置するマスク層11の領域の横方向の寸法bは、約10nm〜500nmの間である。
【0038】
図3の中間ステップにおいて、第1の窒素化合物半導体層1上とマスク層11上とに第2の窒素化合物半導体層2が成長完了している。第2の窒素化合物半導体層2は主に、マスク層の開口内において成長する。かかる場合には、第2の窒素化合物半導体層2の材料はマスク層11の少なくとも一部にラテラルオーバーグロースすることができる。第2の窒素化合物半導体層2はたとえば、MOVPEを用いて、10slm〜50slmの間のNHのガス流を使用して1μm/hの成長速度で成膜される。
【0039】
好適には、第2の窒素化合物半導体層2を1,050℃超の成長温度で成長させる。成長温度はとりわけ、実質的に2次元の成長を達成するように選択される。換言すると、第2の窒素化合物半導体層1の窒素化合物半導体材料を実質的に[0001]結晶方位で成長させ、このとき、成長するクリスタリットの表面は主に、「c面」とも称される[0001]結晶面によって構成される、ということである。有利には、成長するクリスタリットが凝集完了する前に、第2の窒素化合物半導体層2の成長を停止させる。
【0040】
図4に概略的に示されている他の一ステップにおいて、第2の窒素化合物半導体層2上に第3の窒素化合物半導体層3が成長完了している。第3の窒素化合物半導体層3を成長させるためには、クリスタリットの実質的に3次元の成長を達成するように、成長条件を変化させる。特にこのことは、成長温度を第2の窒素化合物半導体層2の成長温度に対して少なくとも40℃低下させ、好適には約50℃〜80℃低下させることにより、引き起こすことができる。
【0041】
具体的には、第3の窒素化合物半導体層3は実質的に、[0001]結晶方位に相当しない結晶方位に成長する。第3の窒素化合物半導体層3の成長により、3次元の非平面構造が生成され、これは特に錐体形とすることができる。この錐体形構造の側面ファセット3aは特に、[1−101]結晶面または[11−22]結晶面によって構成されている。
【0042】
好適には、成長する3次元構造が完全に凝縮して所望の高さの錐体形の構造が得られた後に、第3の窒素化合物半導体層3の成長を停止させる。たとえば、コーティング設備においてインシチュで反射率測定を用いて成長をモニタリングすることができる。こうするためにはたとえば、成長表面上へ垂直入射角で、すなわち成長方向に対して平行にレーザビームを送り、検出器を用いて測定された反射された強度から、表面の反射率を求める。錐体形構造のサイズが大きくなるにつれて反射率は低下していく。表面の反射率の調整により、このようにして、錐体形構造のサイズについての情報が得られる。有利には、1μm〜5μmの間の高さ、好適には2μm〜3μmの間の高さを有する錐体形構造を生成する。
【0043】
図5に示されている更なる一ステップにおいて、第3の窒素化合物半導体層3の非平面の構造上に第4の窒素化合物半導体層4が成長完了している。第4の窒素化合物半導体層4を成長させるためには、成長条件を再度変化させる。第2の窒素化合物半導体層2を成長させる場合と同様、実質的に2次元の成長を達成するように成長条件を設定する。このことによって、実質的に平面状の表面になるように錐体形構造をオーバーグロースすることができる。非平面構造の、成長基板に対して斜めになっている境界面において、特に[1−101]結晶面または[11−22]結晶面において、欠陥が折れ曲がることが分かっている。よって、第4の窒素化合物半導体層4の欠陥密度は特に低くなる。特に、実質的に2次元の成長から実質的に3次元の成長へ、またその逆に、成長条件を2回変化することにより、第4の窒素化合物半導体層4の窒素化合物半導体材料において特に低い欠陥密度を達成することができる。
【0044】
第4の窒素化合物半導体層4を成長させる際の成長条件は、特に、第2の窒素化合物半導体層2を成長させるための成長条件と同一とすることができる。特に第4の窒素化合物半導体層4を成長させる際には、成長温度を第3の窒素化合物半導体層3の成長温度より上昇させ、好適には50℃〜80℃上昇させる。たとえば、成長温度を約75℃上昇させる。第4の窒素化合物半導体層4を成長させる際には、NHガス流も増加させることができる。好適なのは、第2および第3の窒素化合物半導体層2,3を成長させる際のNHガス流が、第4の窒素化合物半導体層4を成長させる際の値の約10%〜30%の間であることである。第2の窒素化合物半導体層2を成長させる際、および、第3の窒素化合物半導体層3を成長させる際には、NHガス流を約10slmとし、かつ、第4の窒素化合物半導体層4を成長させる際にはNHガス流を約50slmとすることができる。しかし、NHガス流を一定に維持し、第4の窒素化合物半導体層4を成長させる際には成長温度のみを上昇させることも可能である。
【0045】
その後、図6に示されている次のステップにおいて、第4の窒素化合物半導体層4の実質的に平面状の表面を使用して、当該表面上に機能的半導体積層体8を成長させる。機能的半導体積層体8の品質は特に、当該機能的半導体積層体8を成長させる第4の窒素化合物半導体層4の欠陥密度が低いことにより達成される。とりわけ機能的半導体積層体8は、特にその下の窒素化合物半導体層2,3,4の成長条件を2回変化させることによって達成される非常に低い欠陥密度を特徴とする。
【0046】
機能的半導体積層体8は特に、オプトエレクトロニクスデバイスの発光半導体積層体とすることができる。たとえば、窒素化合物半導体デバイスはLEDであり、機能的半導体積層体8は発光ダイオード積層体である。とりわけ、機能的半導体積層体8はn型半導体領域5と、活性層6と、p型半導体領域7とを有することができる。簡素化した形態でのみ図示されているこの発光ダイオード積層体は、複数の単層から構成することができ、かかる積層体は自明であるから、これについてはここでは詳細に説明しない。
【0047】
さらに、図6に示されている中間ステップでは、機能的半導体積層体8の、成長基板10とは反対側の面を、支持体13に結合することができる。この支持体13は、特にシリコンウェハとすることができる。たとえばはんだ層等の結合層12を用いて、支持体13を機能的半導体積層体8に結合することができる。有利には、機能的半導体積層体8を支持体13に結合する前に、機能的半導体積層体8に鏡面層9を設ける。この鏡面層9は、完成後の窒素化合物半導体デバイスにおいて支持体13の方向に放出された放射を、反対側の放射出射面に向かって反射することによって、放射効率を向上させるためのものである。鏡面層9は、たとえば銀またはアルミニウムを含むことができる。さらに、機能的半導体層に電気的コンタクト部(図示されていない)を設けることもできる。電気的コンタクト部は、たとえば導電性の鏡面層9によって構成することができる。さらに、電気的コンタクトのために、n型半導体領域7内へ延在するビアを設けることも可能である。電気的コンタクトのためのかかる手段は自明であるから、図面では詳細に示されていない。
【0048】
図7に示されているステップでは、作製された積層体から成長基板10が除去完了している。成長基板10はたとえば、レーザリフトオフ法を用いて積層体から除去することができる。代替手段として、超音波、湿式化学プロセスを用いて、特に温度処理よる剪断力の発生によって、または純粋な機械的力を印加することによって、成長基板10を除去することができる。
【0049】
さらに、ここではエッチングプロセスを行った。このエッチングプロセスは、第1の窒素化合物半導体層1、マスク層11、第2の窒素化合物半導体層2および第3の窒素化合物半導体層3の少なくとも一部を除去するために使用された。このエッチングプロセスは好適には、エッチング剤としてKOHを使用して湿式化学的に行われる。エッチングプロセスは、デバイスの、支持体13とは反対側に位置する表面上に、取り出し構造14を作製するために使用される。当該表面は特に、放射出射領域とすることができる。
【0050】
エッチングプロセスは特に、錐体形構造の側面ファセットが既に形成されている境界面において停止することが分かっている。側面ファセットにおいて、垂直方向に延在する転位部が終了しており、好適には、この転位部を通ってエッチング剤が半導体材料を貫通し、このことによって側面ファセットにおけるエッチングプロセスが緩慢化し、または停止することもあり得る。よって、錐体形構造の側面ファセットはエッチングストップ層として機能する。
【0051】
したがって、取り出し構造14の側面ファセット14aの少なくとも一部は、[1−101]結晶面または[11−22]結晶面によって構成することができる。取り出し構造14は有利には、第3の窒素化合物半導体層3を成長させる際に作製される非平面状の3次元構造を少なくとも部分的に反転した3次元構造である。
【0052】
よって、特に第3の窒素化合物半導体層3の作製中の成長期間および成長条件によって、取り出し構造14のサイズおよび形状に影響を及ぼすことができる。さらに、先に成膜されるマスク層11によって、取り出し構造の空間的分布およびサイズに所望の通りに影響を及ぼすこともできる。このことによって、取り出し構造14のサイズに依存して放射取り出しが改善されるだけでなく、必要な場合には、特に空間的放射特性に影響を及ぼすことも可能になる。その結果、空間的角度を使用して放射特性に影響を及ぼすことができ、これにより、エピタクシープロセスが未だ進行中である間にオプトエレクトロニクスデバイスの遠方場にも影響を及ぼすことができる。
【0053】
取り出し構造14はまた、第4の窒素化合物半導体層4に、第3の窒素化合物半導体層3の錐体形構造を反転したものと一致しない凹部を有することもできる。この凹部は図7において、大きい錐体部の隣、および大きい錐体部間にある小さい錐体の形態で示されており、第4の窒素化合物半導体層4の表面の平面状であった領域に基づいてエッチングプロセスで作製されたものである。この場合には、エッチングプロセスは特に、c結晶面に対して平行に未だ存在している転位部において停止する。通常、エッチング剤が好適には半導体材料を貫通する際に通る、垂直方向に延在する転位部は、上述の横方向に延在する転位部において終了する。したがって、c面に対して平行に延在する転位部も、エッチングストップ層と同様の作用を有する。
【0054】
本発明は、実施例を参照した上記説明によっては限定されない。むしろ本発明は、他のいかなる特徴も、また各特徴のいかなる組み合わせも包含しており、これには特に、請求項にて記載した各特徴のいかなる組み合わせも包含されている。このことは、他の特徴または他の組み合わせ自体が、特許請求の範囲または実施例に明示的に記載されていない場合にも同様に当てはまる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7