特許第6498345号(P6498345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6498345情報処理装置、プログラム及び表示制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6498345
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 13/00 20060101AFI20190401BHJP
   G06Q 30/02 20120101ALI20190401BHJP
【FI】
   G06F13/00 540A
   G06Q30/02 446
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-155183(P2018-155183)
(22)【出願日】2018年8月22日
【審査請求日】2018年11月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年2月24日 ディップ株式会社で行われた、機械学習に関するイベント(第21回 Machine Learning 15minutes!)にて、Webサイトに強化学習を適用することで、将来的にコンバージョンに繋がる動線を強化する技術を公開した。 平成30年2月24日 ウェブサイト(https://recruit−tech.co.jp/news/180224_002164.html)にて、Webサイトに強化学習を適用することで、将来的にコンバージョンに繋がる動線を強化する技術を公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518135412
【氏名又は名称】株式会社リクルート
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 和麻
(72)【発明者】
【氏名】阿内 宏武
(72)【発明者】
【氏名】石川 信行
【審査官】 北川 純次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−001955(JP,A)
【文献】 特開2011−154591(JP,A)
【文献】 特開2018−045476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 13/00
G06Q 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブサイトの中で遷移可能なウェブページに対し、該ウェブページに遷移することについての価値を示す価値情報を出力する学習済みモデルを記憶する記憶部と、
前記ウェブサイトにおける所定のウェブページを参照するユーザの状態を示す状態情報であって前記ウェブサイトにおいて前記ユーザが辿ったウェブページの遷移に関する情報を含む状態情報を取得する第1取得部と、
前記所定のウェブページを示す情報と前記第1取得部にて取得された状態情報とを前記学習済みモデルに入力することで、前記所定のウェブページから遷移可能な複数の遷移先ウェブページの各々についての価値情報を取得する第2取得部と、
前記ウェブサイトの表示を制御する表示制御部であって、前記第2取得部が取得した価値情報に基づいて、前記複数の遷移先ウェブページのいずれかに前記ユーザを誘導する情報を前記所定のウェブページに表示させる表示制御部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記複数の遷移先ウェブページのうち、前記第2取得部が取得した価値情報が示す値が最も大きい遷移先ウェブページにユーザを誘導する情報を、前記所定のウェブページに表示させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記複数の遷移先ウェブページのうち、前記第2取得部が取得した価値情報が示す値の大きさが所定の順位以上である遷移先ウェブページのうち少なくともいずれか一方にユーザを誘導する情報を、前記所定のウェブページに表示させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ユーザを誘導する情報は、前記所定のウェブページに表示されるポップアップである、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ユーザを誘導する情報は、前記ユーザを誘導する遷移先ウェブページへのリンク情報を含む、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記学習済みモデルは、前記ウェブサイトにアクセスしたユーザの状態情報と、当該ユーザが前記ウェブサイトにおいて所定の目標を達成したか否かの情報とに基づく強化学習により生成される学習済みモデルであり、
前記価値情報は、Q値である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
ウェブサイトの中で遷移可能なウェブページに対し、該ウェブページに遷移することについての価値を示す価値情報を出力する学習済みモデルを記憶する記憶部と、
前記ウェブサイトにおける所定のウェブページを参照するユーザの状態を示す状態情報であって前記ウェブサイトにおいて前記ユーザが辿ったウェブページの遷移に関する情報を含む状態情報を取得する第1取得部と、
前記所定のウェブページを示す情報と前記第1取得部にて取得された状態情報とを前記学習済みモデルに入力することで、前記所定のウェブページから遷移可能な複数の遷移先ウェブページの各々についての価値情報を取得する第2取得部と、
前記ウェブサイトの表示を制御する表示制御部であって、前記第2取得部が取得した価値情報に基づいて、前記複数の遷移先ウェブページのいずれかに前記ユーザを誘導する情報を前記所定のウェブページに表示させる表示制御部と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
情報処理装置が行う表示制御方法であって、
ウェブサイトの中で遷移可能なウェブページに対し、該ウェブページに遷移することについての価値を示す価値情報を出力する学習済みモデルを記憶部に記憶させるステップと、
前記ウェブサイトにおける所定のウェブページを参照するユーザの状態を示す状態情報であって前記ウェブサイトにおいて前記ユーザが辿ったウェブページの遷移に関する情報を含む状態情報を取得するステップと、
前記所定のウェブページを示す情報と取得された状態情報とを前記学習済みモデルに入力することで、前記所定のウェブページから遷移可能な複数の遷移先ウェブページの各々についての価値情報を取得するステップと、
前記ウェブサイトの表示を制御する表示制御部であって、取得した価値情報に基づいて、前記複数の遷移先ウェブページのいずれかに前記ユーザを誘導する情報を前記所定のウェブページに表示させるステップと、
を含む表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブサイトに関する指標としてコンバージョン率が知られている。コンバージョン率とは、ウェブサイトを訪れたユーザのうち、商取引などの所定の目標を達成するに至ったユーザの割合を示す指標である。ウェブサイトでは、コンバージョン率を高めるために様々な工夫がなされている。特許文献1には、コンテンツにおける広告枠の配置を最適化することで、コンバージョン率を高めることが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6346684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば商取引をするためにウェブサイトを訪れたユーザは、ウェブサイト内の様々なページを参照することで商品やサービスに関する情報収集を行い、最終的に商取引を行うか否かを判断する。しかしながら、ユーザがウェブサイトを訪れた場合であっても、商取引の判断に有益な情報にたどりつけず、商取引に至る前にウェブサイトから離脱してしまうことも多いと考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、ウェブサイトにおけるユーザのページ遷移を適切に誘導することで、コンバージョン率を高めることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、ウェブサイトの中で遷移可能なウェブページに対し、該ウェブページに遷移することについての価値を示す価値情報を出力する学習済みモデルを記憶する記憶部と、ウェブサイトにおける所定のウェブページを参照するユーザの状態を示す状態情報を取得する第1取得部と、所定のウェブページを示す情報と第1取得部にて取得された状態情報とを学習済みモデルに入力することで、所定のウェブページから遷移可能な複数の遷移先ウェブページの各々についての価値情報を取得する第2取得部と、ウェブサイトの表示を制御する表示制御部であって、第2取得部が取得した価値情報に基づいて、複数の遷移先ウェブページのいずれかにユーザを誘導する情報を所定のウェブページに表示させる表示制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウェブサイトにおけるユーザのページ遷移を適切に誘導することで、コンバージョン率を高めることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るウェブシステム1のシステム構成例を示す図である。
図2】本実施形態に係るサーバの機能ブロック構成例を示す図である。
図3】学習処理部が行う処理手順の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係るサーバが行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態に係るサーバが提供するウェブサイトにおけるページ遷移の一例を示す図である。
図6】端末に表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係るウェブシステム1のシステム構成例を示す図である。ウェブシステム1は、サーバ10と端末20とを有する。図1には端末20が1つ図示されているが、ウェブシステム1は複数の端末20を有していてもよい。
【0011】
サーバ10は、ウェブサイトを提供するサーバである。サーバ10は、1又は複数の物理的な情報処理装置から構成されていてもよいし、1又は複数の仮想的な情報処理装置であってもよい。また、クラウドサービスにより提供されるサーバであってもよい。
【0012】
サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等である。
【0013】
端末20は、サーバ10が提供するウェブサイトを参照するための端末であり、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機、パーソナルコンピュータ(PC)、ノートPC、携帯情報端末(PDA)、家庭用ゲーム機器など、サーバ10と通信可能な通信機能を備えた端末であればあらゆる端末を用いることができる。
【0014】
前述したように、例えば商取引をするためにウェブサイトを訪れたユーザは、ウェブサイト内の様々なページを参照することで商品やサービスに関する情報収集を行い、最終的に商取引を行うか否かを判断する。例えば宿泊施設の予約サイトを例に挙げると、ホテルの予約を行うために予約サイトを訪れたユーザは、予約をしたいホテルの場所や日程から候補となるホテルを検索し、ウェブサイト内のリンクをクリックしながら、候補となるホテルに関する様々な情報を収集することでホテルの絞り込みを行う。最終的に、ユーザは、ホテルの予約を決断するために十分な情報を得ることができた場合はホテルの予約を行い、十分に情報が得られない場合は、当該予約サイトでのホテル予約を諦めて他のウェブサイトに移動することになる。なお、本実施形態では、成約に至ることをコンバージョンといい、成約に至らないことを離脱というが、ウェブサイトの目的に応じて、コンバージョン及び離脱の意味を様々に定義してもよい。
【0015】
ここで、ユーザがホテル予約を決断するためにどのような情報を必要としているかについては、ユーザがどのようなリンクを辿ってきたのかで異なることが考えられる。例えば、ウェブサイトのTOPページからビジネスホテルの一覧を表示するリンクを経由してホテルAの基本情報ページAにたどり着いたユーザを想定する。このユーザは、ビジネス目的でホテルを予約するユーザであると想定されることから、割引率が高いといった情報や駅から近いといった情報に基づいてホテルAの予約を決めることが考えられる。従って、このユーザに対しては、ホテルAの基本情報ページから、価格や立地に関する情報が記載されたページに誘導することができれば、コンバージョン率(CVR: Conversion Rate)を高めることが可能になると考えられる。
【0016】
同様に、ウェブサイトのTOPページから観光地に近いホテル一覧を表示するリンクを経由して、ホテルAの基本情報ページAに辿り着いたユーザを想定する。このユーザは、旅行でホテルを予約するユーザであると想定されることから、快適であるといったクチコミや観光に便利であるといったクチコミに基づいてホテルの予約を決めることが考えられる。従って、このユーザに対しては、ホテルAの基本情報ページから、ホテルAのクチコミページに誘導することができれば、コンバージョン率を高めることが可能になると考えられる。
【0017】
そこで、本実施形態に係るサーバ10は、ウェブサイトを訪れたユーザの状態を示すデータ(ユーザが辿ってきたリンク等)を用いて強化学習を行うことで生成された学習済みモデルを用いることで、コンバージョン率を高めるために有効なウェブページにユーザを誘導する情報を端末20に表示させるように制御する。これにより、ユーザが商取引を決断するのに必要な情報をユーザに対して積極的に提供することが可能になることから、ウェブサイトのコンバージョン率を高めることが可能になる。
【0018】
<機能ブロック構成>
図2は、本実施形態に係るサーバ10の機能ブロック構成例を示す図である。サーバ10は、記憶部100と、記録部101と、学習処理部102と、状態情報取得部103(第1取得部)と、価値情報取得部104(第2取得部)と、Web処理部105とを有する。記録部101と、学習処理部102と、状態情報取得部103と、価値情報取得部104と、Web処理部105とは、CPU11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD−ROM等の記憶媒体であってもよい。また、記憶部100は、サーバ10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。
【0019】
記憶部100は、ウェブサイトに利用登録しているユーザのユーザ情報を格納するユーザDBと、ウェブサイトにアクセスしてきたユーザの特徴を示す情報を格納する状態情報DBと、学習処理部102が強化学習を行うことで生成した学習モデル(学習済みモデル)とを記憶する。
【0020】
ユーザDBには、ウェブサイトに利用登録をしているユーザに関する情報が格納される。例えば、ユーザDBには、ユーザのログインID及び認証情報、ユーザの属性(例えば、氏名、年齢、性別及び/又は職業等)を示す情報等が格納される。
【0021】
状態情報DBには、ウェブサイトへのアクセスごとに、ウェブサイトにアクセスしたユーザの状態を示す情報(以下、「状態情報」と言う。)と、ユーザがウェブサイトにおいて所定の目標を達成したか否かを示すフラグ(以下、「達成フラグ」と言う。)が対応づけて格納される。状態情報は、ウェブサイト内におけるユーザの動線に関する情報(ユーザがウェブサイトに流入してからコンバージョン又は離脱するまでに辿った全て又は一部のウェブページの遷移を示す情報)を含むが、これに限られない。状態情報には、例えば、ユーザがウェブサイトに流入した際のリンク元(HTTPリファラー)、ユーザが最初にアクセスしたウェブページ(ランディングページ)を示す情報、ウェブサイトにアクセスしたユーザの属性、ユーザがウェブサイトにログインしているか否か、ユーザがウェブサイトにアクセスした月、日、曜日及び/又は時刻、ユーザがサービスを利用する月、日、曜日及び/又は時刻(例えば平日に宿泊する予定等)、及び/又は、ウェブサイトで収集されたタグ情報が更に含まれてもよい。
【0022】
記録部101は、ウェブサイトのアクセスログ、ユーザDB及びサーバ10と通信可能な外部の分析サーバから取得したデータ等を用いることで状態情報を生成して状態情報DBに格納する機能を有する。例えば、記録部101は、サーバ10が備えるウェブサーバ機能により記録されたアクセスログやユーザDBから、状態情報を収集するようにしてもよいし、サーバ10と通信可能な外部の分析サーバに問い合わせることで、状態情報を収集するようにしてもよい。
【0023】
学習処理部102は、状態情報DBから取得した、ウェブサイトにアクセスしたユーザの状態情報と、達成フラグから得られる、当該ユーザがウェブサイトにおいて所定の目標を達成したか否かの情報とを用いて強化学習を行う機能を有する。強化学習を行うことで得られた学習済みモデルは、記憶部100に格納される。強化学習とは、ある状態において行動を与えた場合に、次に行うべき行動として将来的に得られる報酬が最大になるような行動を選択することができるように学習モデルを学習させる方法である。強化学習としては、どのような学習方法を用いることもできるが、以下の説明では、Q学習(Q-learning)を用いる場合を例に説明する。
【0024】
Q学習とは、ある状態sに対して行動aを与えた場合に得られる価値を学習する学習方法である。得られる価値は、Q値と呼ばれ、Q(s,a)で表現することができる。本実施形態における状態sとは、あるユーザが、あるウェブページを参照している状態であり、例えば、現在表示されているウェブページと、当該ウェブページに至るまでの動線に関する情報である。また、ウェブページを参照しているユーザの属性等、他の状態情報を状態sに含めてもよい。行動aとは、当該ユーザが当該ウェブページから次のウェブページに移動する行動である。得られる価値とは、ユーザが最終的にコンバージョンに至ること(例えば商品を購入したりサービスを契約したりすること)である。
【0025】
ここで、Q(s,a)の数は、状態sと行動aの組み合わせの数に等しい。そのため、状態sがとり得る数と行動aがとり得る数が膨大になるとQ(s,a)の数も膨大になり、全てのQ(s,a)をQ学習により求めることが困難になる。そこで、Q(s,a)の表現に深層学習を用いる手法を、DQN(Deep Q Network)と呼ぶ。DQNを利用してニューラルネットワークを学習させることで、状態s及び行動aを入力することでQ値を出力する学習済みモデルが得られる。
【0026】
図3に、学習処理部102が行う処理手順の一例を示す。まず、学習処理部102は、状態情報DBに格納されている状態情報及び達成フラグから、状態sを状態情報に含まれるユーザの状態とし、行動aを現在のウェブページから次に遷移するウェブページとし、ユーザが最終的にコンバージョンした場合の報酬を+1とし、ユーザが最終的にウェブサイトから離脱した場合の報酬を−1とすることで生成される学習データの組み合わせを生成する(S10)。続いて、学習処理部102は、生成した学習データを用いてニューラルネットワークを学習させる(つまりDQNによる学習を行う)ことで、状態s及び行動aを入力した場合にQ値を出力する学習済みモデルを得る(S11)。図2に戻り説明を続ける。
【0027】
状態情報取得部103は、ウェブサイトにアクセスしているユーザの状態情報を取得する機能を有する。より具体的には、状態情報取得部103は、ウェブサイト内における所定のウェブページを参照しているユーザの状態情報を、サーバ10が備えるウェブサーバ機能やユーザDBから取得する。
【0028】
価値情報取得部104は、ユーザが参照している所定のウェブページを示す情報と、状態情報取得部103にて取得された状態情報とを学習済みモデルに入力することで、所定のウェブページから遷移可能な複数の遷移先ウェブページの各々についてのQ値(価値情報)を取得する。なお、所定のウェブページから遷移可能なウェブページとは、所定のウェブページからリンクが張られているウェブページに限定されるものではない。
【0029】
Web処理部105は、ウェブサイト内の各種のウェブページを端末20に表示させる機能、及び、ウェブページ上でのユーザ操作を受け付ける機能等を有する。Web処理部105は、ウェブページを端末20の画面に表示させることから、表示制御部と呼ばれてもよい。また、Web処理部105は、ウェブサイトにアクセスしているユーザのその時点の状態情報を状態情報取得部103に渡す機能を有する。また、Web処理部105は、ウェブサイトにアクセスしているユーザのアクセスログを出力して記録部101に渡す機能を有する。また、Web処理部105は、価値情報取得部104が取得したQ値に基づいて、複数の遷移先ウェブページのいずれかにユーザを誘導する情報を所定のウェブページに表示させる機能を有する。
【0030】
<処理手順>
図4は、本実施形態に係るサーバ10が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、サーバ10は、宿泊施設の予約に関するウェブサイトを提供しているものとする。ユーザは、端末20を用いて当該ウェブサイトにアクセスし、所望の宿泊施設の予約を行うために、宿泊施設に関する情報が掲載されている各種のウェブページを参照しているものとする。
【0031】
まず、状態情報取得部103は、Web処理部105に問い合わせることで、ユーザが参照中のウェブページを示す情報(例えばURLやウェブページを特定するID等)を取得する。また、状態情報取得部103は、当該ウェブページを参照しているユーザの状態情報を、例えばWeb処理部105が出力するアクセスログを分析することで取得する(S20)。また、状態情報取得部103は、ウェブサイトを参照しているユーザがウェブサイトにログイン中である場合、ユーザDBにアクセスすることで、ユーザの属性をユーザの状態情報の一部として取得する。
【0032】
続いて、価値情報取得部104は、ユーザが参照しているウェブページを示す情報と、ユーザの状態情報とを学習済みモデルに入力することで、次のリンク先(遷移先)のウェブページごとのQ値を取得する(S21)。続いて、Web処理部105は、Q値が最も大きいリンク先のウェブページへの遷移を推奨する情報を、ユーザが参照しているウェブページに表示させる(S22)。複数のユーザがウェブサイトを閲覧している場合、ステップS20乃至ステップS22の処理手順は、各ユーザがいずれかのウェブページに遷移する度に、ユーザごとに実行される。
【0033】
図5は、本実施形態に係るサーバ10が提供するウェブサイトにおけるページ遷移の一例を示す図である。例えばトップページからはページ1−1〜ページ1−100までのいずれかに遷移することができ、更にページ1−99からは、ページ2−50〜ページ2−53のいずれかに遷移することができる。同様に、ページ2−50からはページ3−20〜ページ3−23のいずれかに遷移することができる。最終的に契約に至った場合は、CVのページ(例えば予約番号等をユーザに提示するページ)に遷移する。
【0034】
学習済みモデルは、図5に示す全てのページについて、次の遷移先のウェブページごとにQ値を出力するように学習されている。例えば、ユーザがトップページ、ページ1−99、ページ2−50の順にウェブページを参照したとする。この場合、ユーザが参照しているウェブページが2−55であることと、トップページからウェブページ2−55までのページ遷移(トップページ、ページ1−99、ページ2−50の順に遷移してきたこと)を示す情報を含むユーザの状態情報とが学習済みモデルに入力されると、学習済みモデルは、ページ3−20〜ページ3−23の各々についてQ値を出力する。ここでは、出力された各々のQ値のうち、ページ3−23についてのQ値が最も大きかったと仮定する。
【0035】
図6は、端末20に表示される画面の一例を示す図である。図6(a)、図6(b)、図(c)は、それぞれ、トップページの例、ページ1−99の例、ページ2−50の例を示している。図6(c)には、旅館Aに関するメニューを表示するメニューボタンM10が設けられており、メニューボタンM10が押下(タッチ)されると、次の遷移先ウェブページへのリンクとして、「料金・宿泊プラン」を表示するページ、「写真・動画」を表示するページ、「地図・アクセス方法」を表示するページ、「クチコミ」を表示するページへのリンクが表示される。「料金・宿泊プラン」を表示するページ、「写真・動画」を表示するページ、「地図・アクセス方法」を表示するページ及び「クチコミ」を表示するページは、それぞれ、図5のページ3−20、ページ3−21、ページ3−22及びページ3−23に対応しているものとする。
【0036】
前述した通り、学習済みモデルから出力されたQ値のうちページ3−23のQ値が最も大きい。このことは、ユーザが、図6(c)に示すページの次に「クチコミ」を表示するページを参照した場合に、最終的に宿泊施設を契約する可能性が高いことを示している。
【0037】
この場合、Web処理部105は、図6(c)に示すように、複数の遷移先ウェブページのうち、Q値が最も大きい遷移先ウェブページにユーザを誘導する情報をウェブページに表示させる。ユーザを誘導する情報は、所定の行動をユーザに促すための情報であればよく、図6(c)に示すように、ウェブページ上に表示されるポップアップであってもよい。また、当該ポップアップには、「クチコミ」ページのリンク情報が含まれていてもよい。ユーザが「クチコミ」ページを参照する確率を高めることが可能になる。ユーザを誘導する情報は、ポップアップに限定されない。例えば、Web処理部105は、メニューM10に「クチコミ」以外のメニューを表示させないようにしてもよい。また、例えば、Web処理部105は、端末20に、クチコミページの参照を促すメッセージを含むプッシュ通知を送信することとしてもよい。
【0038】
<変形例>
学習処理部102は、コンバージョンに至ったユーザがいた場合に、当該ユーザに関して新たに状態情報DBに追加された状態情報を用いて、学習済みモデルを更に学習させるようにしてもよい。当該学習においては、コンバージョンに至らなかったユーザについても、学習対象に含めることとしてもよい。自動的に学習済みモデルが出力するQ値の精度を向上させることが可能になる。
【0039】
以上説明した実施形態では、Web処理部105は、Q値が最も大きい遷移先ウェブページにユーザを誘導する情報をウェブページに表示させるようにしたが、これに限定されない。例えば、Web処理部105は、複数の遷移先ウェブページのうち、Q値の大きさが所定の順位以上である遷移先ウェブページのうち少なくともいずれか一方にユーザを誘導する情報を、ウェブページに表示させるようにしてもよい。
【0040】
例えば、「料金・宿泊プラン」を表示するページ、「写真・動画」を表示するページ、「地図・アクセス方法」を表示するページ、「クチコミ」を表示するページの順にQ値が大きいと仮定する。また所定の順位以上は2位以上であると仮定する。この場合、Web処理部105は、「地図・アクセス方法を見る」と記載されたポップアップ、及び、「クチコミを見る」と記載されたポップアップのうちいずれか一方又は両方を図6(c)の画面に表示させるようにしてもよい。
【0041】
これにより、状態情報DBに新たに蓄積される状態情報において、ユーザが辿ったウェブページの遷移が特定のパターンに偏ってしまい、学習済みモデルを更に学習させる場合に学習済みモデルの精度が向上しないという可能性を抑制することが可能になる。
【0042】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、ウェブサイトにおけるユーザのページ遷移を適切に誘導することができ、コンバージョン率を高めることが可能になる。また、ユーザに対してページ遷移を適切に誘導することで、コンバージョン率の向上に繋がりにくいページの参照を抑制することができ、サーバ10及び端末20間で送受信されるデータ量を削減することが可能になる。
【0043】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10…サーバ、11…CPU、12…記憶装置、13…通信IF、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…端末、100…記憶部、101…記録部、102…学習処理部、103…状態情報取得部、104…価値情報取得部、105…Web処理部
【要約】
【課題】ウェブサイトにおけるユーザのページ遷移を適切に誘導することで、コンバージョン率を高めることが可能な技術を提供すること。
【解決手段】ウェブサイトの中で遷移可能なウェブページに対し、該ウェブページに遷移することについての価値を示す価値情報を出力する学習済みモデルを記憶する記憶部と、ウェブサイトにおける所定のウェブページを参照するユーザの状態を示す状態情報を取得する第1取得部と、所定のウェブページを示す情報と第1取得部にて取得された状態情報とを学習済みモデルに入力することで、所定のウェブページから遷移可能な複数の遷移先ウェブページの各々についての価値情報を取得する第2取得部と、ウェブサイトの表示を制御する表示制御部であって、第2取得部が取得した価値情報に基づいて、複数の遷移先ウェブページのいずれかにユーザを誘導する情報を所定のウェブページに表示させる表示制御部と、を有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6