(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6498384
(24)【登録日】2019年3月22日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】建材シート
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20190401BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20190401BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20190401BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B9/00 A
E04B1/76 200Z
E04F13/07 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-59349(P2014-59349)
(22)【出願日】2014年3月22日
(65)【公開番号】特開2015-182263(P2015-182263A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】397029873
【氏名又は名称】株式会社大木工藝
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】大木 武彦
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−237274(JP,A)
【文献】
特開2007−077187(JP,A)
【文献】
特開2004−101693(JP,A)
【文献】
特開2007−136694(JP,A)
【文献】
特表2014−534097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
E04B 1/76
E04F 13/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛シートと、
該黒鉛シートの室内空間側の面に設けられた隠蔽層と、
該隠蔽層に塗布され厚さ方向に貫通する多数の気泡を発泡化によって形成した合成樹脂層と、
を備え、
前記隠蔽層は、着色料が混入されたセルロースが塗布されることによって形成されていることを特徴とする建材シート。
【請求項2】
黒鉛シートと、
該黒鉛シートの室内空間側の面に設けられた隠蔽層と、
該隠蔽層に塗布され厚さ方向に貫通する多数の気泡を発泡化によって形成した合成樹脂層と、
を備え、
前記隠蔽層は、アルミニウム箔であることを特徴とする建材シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間の冷暖房のエネルギー効率化に好適な建材シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー節減の観点より、建物の構造によって冷暖房のエネルギー効率化を図ろうとする種々の試みがなされている。その中で、特許文献1において、本願発明者は、壁紙のように壁などに貼り付けるものであって、室内空間の温度を均一化するために面方向に熱を広く拡散する黒鉛シートを用いた建材シートを開示している。この建材シートは、黒鉛シートの室内空間側の面を保護するために布製又は紙製の室内側保護シートを備えており、布製又は紙製の室内側保護シートは、例えば、室内空間の温度が黒鉛シートに良く伝わるように通気性の良いものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2013/039242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、室内空間側の面の保護のためには、一般の壁紙の場合と同様に、布製又は紙製の室内側保護シートの他に、広く用いられている塩化ビニールに代表される合成樹脂を用いることができるようにするのが望ましい。
【0005】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、黒鉛シートの室内空間側の面を合成樹脂によって保護し室内空間の温度を均一化することができる建材シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、
請求項1に記載の建材シートは、
黒鉛シートと、該黒鉛シートの室内空間側の面に設けられた隠蔽層と、該隠蔽層に塗布され厚さ方向に貫通する多数の気泡を発泡化によって形成した合成樹脂層と、を備え、前記隠蔽層は、着色料が混入されたセルロースが塗布されることによって形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の建材シートは、
黒鉛シートと、該黒鉛シートの室内空間側の面に設けられた隠蔽層と、該隠蔽層に塗布され厚さ方向に貫通する多数の気泡を発泡化によって形成した合成樹脂層と、を備え、前記隠蔽層は、アルミニウム箔であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る建材シートによれば、黒鉛シートの室内空間側の面を合成樹脂によって保護し室内空間の温度を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る建材シートを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る建材シート1は、
図1に示すように、黒鉛シート2と、黒鉛シート2の室内空間側の面に設けられた隠蔽層3と、隠蔽層3に塗布され厚さ方向(
図1における左右方向)に貫通する多数の気泡4aを発泡化によって形成した合成樹脂層4と、を備えている。この建材シート1は、合成樹脂層4が室内空間側になるようにして住宅やオフィスビルなどの部屋の壁などに貼り付けることができる。
【0011】
黒鉛シート2は、膨張黒鉛シート(例えば、厚さが0.1〜0.2mm程度)が好適に用いられる黒鉛製シートである。膨張黒鉛シートは、原料の天然黒鉛などの黒鉛を膨張させて膨張黒鉛の形態にしてから加圧してシート状に成形したものである。この黒鉛シート2は、黒鉛成分(炭素成分)の比率を極めて高く(例えば99%以上に)することができる。黒鉛シート2は、面方向(厚さ方向と直交方向)(
図1における上下方向)の熱拡散率が非常に高く、200〜300×10
−6m
2/s程度の熱拡散率を得ることができる。また、黒鉛シート2の熱伝導率は、面方向が200〜300W/(m・K)程度であるのに対し、厚さ方向は面方向に比べて低い(例えば、3〜5W/(m・K)程度)。よって、厚さ方向には断熱性が有る。また、黒鉛シート2は、非常に軽量であり、化学的に安定している。また、少しであるが、セメントや石膏ボードなどに比べて弾性が有る。また、黒鉛シート3は不燃なので、万一の火事のときに火気の拡大を抑制できる効果がある。
【0012】
合成樹脂層4は、厚さ方向に貫通する多数の気泡4aにより通気性の良いものとなっている。この気泡4aを通る空気は、後に詳述する隠蔽層3を介して、黒鉛シート2に室内空間の熱を的確に伝え、また、黒鉛シート2からの熱を的確に室内空間に伝える。この気泡4aは、隠蔽層3に、発泡剤が添加された塩化ビニールなどの合成樹脂を塗布し、高温(例えば、200℃〜250℃)で短時間(例えば、数秒間)加熱して、厚さ方向に貫通するように発泡化することによって形成する。このような発泡化によって形成された気泡4aは、サイズが比較的大きく、合成樹脂層4の裏側(黒鉛シート2側)が視認される。合成樹脂層4の厚みは、例えば、1mm程度とすることができる。
【0013】
隠蔽層3は、合成樹脂層4の気泡4aを通して黒鉛シート2が直接視認されないようにするものである。黒鉛シート2は黒色であるため、合成樹脂層4の気泡4aを通して直接視認されると、室内空間が暗く感じられるからである。
【0014】
隠蔽層3は、着色料が混入されたセルロースを塗布することによって形成することが可能である。セルロースは、耐熱温度が高く、合成樹脂層4の発泡化の際の高温に耐えることができる。着色料の色は、例えば、白色又は白色の近似色である。このセルロースの場合の隠蔽層3は、室内空間と黒鉛シート2との間で熱を良好に伝え合うためには、薄いもの(例えば、厚さが10μm〜20μm程度)が好ましい。
【0015】
隠蔽層3は、また、アルミニウム箔を用いることも可能である。アルミニウム箔は、室内空間からの光を完全に反射し、それによって、黒鉛シート2を隠蔽し、かつ、高級感とともに室内空間を明るく感じさせることができる。アルミニウム箔の場合の隠蔽層3は、強度と可撓性が保たれる厚さ(例えば、20μm〜50μm程度)が好ましい。そうすると、保管及び施工などのために巻き易く、また、施工時に屈曲させても強く、また、施工後に衝撃を受けても破断し難いものとなる。なお、アルミニウム箔の場合の隠蔽層3は、薄く塗布した接着剤を用いて黒鉛シート2に接着することができる。
【0016】
以上説明した建材シート1は、本実施形態では、部屋の壁などへの貼り付けのために、紙製(例えば、防炎紙製)などの貼付用シート5を更に備えている。貼付用シート5は、黒鉛シート2の隠蔽層3側と反対の面に接着剤で接着されている。部屋の壁などに貼り付けるときは、貼付用シート5に糊などを塗布して貼り付ける。なお、場合によっては、貼付用シート5を省略して壁などに貼り付けることも可能である。
【0017】
このような建材シート1を貼り付けた部屋では、冬期などに暖房機を稼働させると、室内空間の暖気は合成樹脂層4の気泡4aを通り、その熱を隠蔽層3を介して黒鉛シート2に伝える。それにより、黒鉛シート2は面方向の熱拡散率が非常に高いので、黒鉛シート2の室内空間側の面全体が急速に暖まって行く。そして、建材シート1の各所で、暖まった黒鉛シート2によって隠蔽層3を介して合成樹脂層4の気泡4aの空気が暖まり、そして、その近傍の空気が暖まって行く。従って、部屋の中で、障害物や暖房機からの距離などのために暖房機によっては通常暖まり難いところでも暖まる。よって、建材シート1は、室内空間の温度を均一化することができ、もって、暖房のエネルギーの効率化に好適である。
【0018】
また、夏期などに冷房機を稼働させると、室内空間の冷気は合成樹脂層4の気泡4aを通り、隠蔽層3を介して黒鉛シート2から熱を吸収する。それにより、黒鉛シート2は面方向の熱拡散率が非常に高いので、黒鉛シート2の室内空間側の面全体が急速に冷えて行く。そして、建材シート1の各所で、冷えた黒鉛シート2によって隠蔽層3を介して合成樹脂層4の気泡4aの空気が冷え、そして、その近傍の空気が冷えて行く。従って、部屋の中で、障害物や冷房機からの距離などのために冷房機によっては通常冷え難いところでも冷える。よって、建材シート1は、室内空間の温度を均一化することができ、もって、冷房のエネルギーの効率化に好適である。
【0019】
以上、本発明の実施形態に係る建材シートについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内での設計変更が可能である。例えば、建材シート1を構成するシート又は層の厚さなどは適宜変更することができる。また、隠蔽層3は、合成樹脂層4の発泡化の際の高温に耐えることができれば、セルロース又はアルミニウム箔以外でも可能である。また、建材シート1は壁のみならず、天井や床などに使用することが可能であり、また、住宅やオフィスビルの部屋に限らず、自動車、電車、飛行機などの室内に使用することも可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 建材シート
2 黒鉛シート
3 隠蔽層
4 合成樹脂層
4a 気泡
5 貼付用シート